説明

波長選択性を有する光学部材

【課題】 基材の透過光の色刺激と反射防止膜による反射光の色刺激との関係に何ら注意が払われないため、眼鏡レンズが基材の色とは異なる色に見えるという問題がある。
【解決手段】 染色レンズ1が、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する吸収率が長波長側の緑、赤色成分に対する吸収率より低く、青色成分の透過率が相対的に高い分光透過率を有し、反射防止膜2が、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する反射率が長波長側の緑、赤色成分に対する反射率より高くなるような分光反射率を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば染色された眼鏡レンズのような透過光束の波長を選択する機能を有する光学部材に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の眼鏡用染色レンズは、レンズを形成するプラスチックの基材に特定の色成分を吸収するような染料を浸透させることにより作製される。眼鏡レンズが基材のみで構成される場合には、眼鏡レンズの装用者の眼に入る透過光の色刺激と、眼側から眼鏡レンズを透過して装用者以外の者の眼に入る透過光の色刺激、すなわち、レンズの色として認識される色刺激とは等しい。
【0003】一方、眼鏡レンズには、レンズ表面での反射を防止するため、一般にレンズ表面に反射防止膜がコーティングされる。反射防止膜は、通常複数の誘電体層から構成される干渉膜であり、基準となる中心波長については反射光の発生をほぼ完全に防ぐことができるが、可視域の全波長において反射率を0%にすることはできない。従来は、基材の色に拘わりなく緑色成分の反射率が相対的に高いような分光反射率分布を有する反射防止膜が一般に用いられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来は眼鏡レンズの基材の透過光の色刺激と反射防止膜による反射光の色刺激との関係に何ら注意が払われないため、反射防止膜からの反射光により、眼鏡レンズが本来意図していた基材の色とは異なる色に見え、特に両者の色刺激のバランスが悪い場合には濁った色に見えるため、眼鏡レンズのファッション性が損なわれるという問題がある。
【0005】この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、反射光により付される色により染色された眼鏡レンズ等の基材の色合いを損なうことがない波長選択性を有する光学部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明にかかる波長選択性を有する光学部材は、上記の目的を達成させるため、可視波長域の特定の波長域の成分を主として透過させる基材と、基材の表面に施されたコーティング層とから構成される光学部材において、波長による吸収率の違いにより生じる基材の分光透過率分布と、コーティング層の分光反射率分布とをほぼ一致させるようにしたことを特徴とする。
【0007】すなわち、基材が青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する吸収率が長波長側の緑、赤色成分に対する吸収率より低く、青色成分の透過率が相対的に高い分光透過率分布を有する場合には、コーティング層は、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する反射率が長波長側の緑、赤色成分に対する反射率より高くなるような分光反射率分布を有する。
【0008】また、基材が、赤−緑境界波長より長波長側の赤色成分に対する吸収率が短波長側の緑、青色成分に対する吸収率より低く、赤色成分の透過率が相対的に高い分光透過率分布を有する場合には、コーティング層は、赤−緑境界波長より長波長側の赤色成分に対する反射率が短波長側の緑、青色成分に対する反射率より高くなるような分光反射率を有する。
【0009】このような構成により、反射防止膜等のコーティング層を設けた場合にも、反射光の色刺激が基材を透過する光の色刺激にほぼ一致し、例えば眼鏡レンズを対象にした場合には、白色光を入射させた場合に装用者に見える透過光の色刺激と、表面で反射された光による装用者以外の者から見えるレンズの色刺激とを一致させることができる。
【0010】基材を透過する光とコーティング層での反射光との色刺激を一致させる場合、主波長、若しくは補色主波長の値をほぼ等しい範囲とすることが望ましい。主波長および補色主波長は、色度から純度を除いた要素であり、対象となる光の色度が無彩色刺激とCIE色度座標のスペクトル軌跡上の単色光刺激との加法混色により等色される場合の単色光刺激の波長が主波長、対象となる光と単色色刺激との加法混色により特定の無彩色刺激に等色される場合の単色光刺激の波長が補色主波長である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、この発明にかかる波長選択性を有する光学部材の実施形態を説明する。発明の波長選択性を有する光学部材は、例えば図1(A)に示すような眼鏡レンズとして、あるいは図1(B)に示すようなパワーを持たない平板状で、ショーウィンドウやショーケースのガラス板として使用される。
【0012】図1(A)において、符号1は可視波長域の特定の波長域の成分を主として透過させる基材としての染色レンズであり、2は染色レンズ1の表面に施されたコーティング層としての反射防止膜である。染色レンズ1は、吸収率に波長依存性を有するよう、すなわち、染色レンズ1を透過した白色光に特定の色が付くよう染料を浸透、あるいは混合して形成されている。一方、反射防止膜2は、誘電体を積層して構成される干渉膜であり、染色レンズ1の分光透過率分布に合わせ、透過光と反射光との色刺激とが互いにほぼ等しくなるよう各層の屈折率、膜厚等が決定されている。
【0013】この例の染色レンズ1は、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する吸収率が長波長側の緑、赤色成分に対する吸収率より低く、青色成分の透過率が相対的に高い分光透過率を有し、反射防止膜2は、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する反射率が長波長側の緑、赤色成分に対する反射率より高くなるような分光反射率を有する。
【0014】したがって、図中左側となる反射防止膜2側から白色光Li(w)が入射した場合、殆どの光束は反射防止膜2の作用により反射されずに染色レンズ1に入射するが、青色成分の光束のみが僅かに反射光Lr(b)として反射する。染色レンズ1を透過した光束Lt(b)の分光分布は、染色レンズ1内での緑、赤色成分の吸収により青色成分の輝度が相対的に大きなものとなる。染色レンズ1内での波長による吸収率の差は、反射防止膜2の波長による反射率の差より格段に大きく設定されている。したがって、反射防止膜2により染色レンズ1に入射する光束の青色成分の輝度が緑、赤色成分より僅かに低下させられるものの、この反射防止膜2の作用による分光分布の変化は透過光Lt(b)の分光分布には殆ど影響せず、透過光Lt(b)の分光分布は主として染色レンズ1の分光透過率分布のみに依存して決定され、青色成分の輝度が相対的に高くなる。
【0015】上記のように構成される染色レンズを使用すれば、眼鏡レンズとしてはレンズを透過して装用者の眼に入る光の色刺激と、レンズでの反射光を見た装用者以外の者から見えるレンズの色刺激とを一致させることができる。
【0016】図1(B)において、符号10は平板状の基材としてのガラス板であり、特定波長域の成分の透過率が他の成分に対して大きくなるよう染色されている。符号20は、ガラス板10上に施されたコーティング層としての反射防止膜であり、ガラス板10の分光透過率分布に合わせ、透過光と反射光との色刺激とが互いにほぼ等しくなるよう構成されている。白色光Li(w)を入射させた場合の作用は図1(A)に示した眼鏡レンズの例と同様であり、反射防止膜20からの反射光Lr(b)は青色成分の輝度が相対的に高く、ガラス板10を透過した光束Lr(b)も青色成分の輝度が相対的に高い。
【0017】なお、上記の2つの実施形態では、反射光、透過光の分光分布において青色成分の輝度が相対的に高くなるよう構成しているが、同様にして赤色成分の輝度が相対的に高くなるよう構成することもできる。
【0018】
【実施例】次に、上記の実施形態に基づく波長選択性を有する光学部材の具体的な実施例を説明する。ここでは、青色に染色された基材であるプラスチック製の染色レンズ上に青色成分に対する反射率が相対的に高い反射防止膜を付した実施例1、そして、赤色に染色されたプラスチック製の染色レンズ上に赤色成分に対する反射率が相対的に高い反射防止膜を付した実施例2について順に説明する。なお、この明細書では、CIE 1931標準表色系を用いて各光学素子の色特性を表示しており、この際の白色光源としては、相関色温度が約6774Kとなる標準光源Cを用いている。
【0019】以下の表1は、実施例1の反射防止膜の膜構成を示す。第1層が染色レンズに接する層、第7層が空気に接する層である。
【0020】
【表1】中心波長λ=550nm層番号 物質名 光学膜厚1 SiO2 0.150λ/42 TiO2 0.237λ/43 SiO2 0.392λ/44 TiO2 0.759λ/45 SiO2 0.145λ/46 TiO2 0.678λ/47 SiO2 1.066λ/4
【0021】上記の膜構成による実施例1の反射防止膜の光学特性について説明する。上記の反射防止膜の反射率を可視域全域で総合的にみると、入射した光束に対する反射光束の比である視感反射率は3%である。反射光の色度は、CIE色度座標上ではx=0.1790,y=0.1913の点として表される。この色刺激は、無彩色刺激とCIE色度座標のスペクトル軌跡上の主波長477.5nmの単色光刺激との加法混色により等色され、主波長の単色光刺激に対する反射光の色度の刺激純度は62.69%である。なお、反射光の色刺激と混色されることにより無彩色刺激に等色する単色光刺激の波長を示す補色主波長は、577.4nmである。実施例1の反射防止膜の分光反射率分布は図2、反射光のCIE色度座標中での位置は図6に示される。
【0022】また、実施例1で用いられる染色レンズの光学特性は、視感反射率が59.7%、透過光の色度がCIE色度座標でx=0.2709,y=0.2880、主波長が481.6nm、補色主波長が582.1nm、主波長に対する透過光の色度の刺激純度は17.29%である。実施例1の染色レンズ自体の分光透過率分布は、図3に実線で示されており、透過光のCIE色度座標中での位置は図6に示される。また、染色レンズに反射防止膜を施した場合の両者の特性を考慮に入れた総合的な透過光の分光分布は、図3中に破線で示されている。
【0023】図2に示されるように反射防止膜の反射率は可視域全体においてほぼ1%以下に抑えられており、その中で400〜500nmの青色成分の反射率が比較的高くなっている。反射光の色度を膜の物体色として見た場合、明度5の状態では膜の色は「青」である。また、染色レンズの透過率は、図3中の実線で示されるように400〜500nmの青色成分の透過率が比較的高くなっている。透過光の色度を染色レンズの物体色としてみた場合、明度5の状態ではレンズの色は「うすい紫みの青」である。さらに、図3中の実線と破線とに示されるように、透過光の分光分布はほぼ染色レンズの分光透過率分布に一致している。したがって、実施例1の構成によれば、光学部材を透過する光の色刺激と反射される光の色刺激とを共に青系統の色に揃えることができる。
【0024】表2は、実施例2の反射防止膜の膜構成を示す。第1層が染色レンズに接する層、第7層が空気に接する層である。
【0025】
【表2】中心波長λ=550nm層番号 物質名 光学膜厚1 SiO2 0.161λ/42 TiO2 0.227λ/43 SiO2 0.440λ/44 TiO2 0.640λ/45 SiO2 0.199λ/46 TiO2 0.694λ/47 SiO2 0.960λ/4
【0026】上記の膜構成による実施例2の反射防止膜の光学特性は、視感反射率が3%、反射光の色度がCIE色度座標でx=0.4400,y=0.3024、主波長が625.7nm、補色主波長が492.6nm、主波長に対する反射光の色度の刺激純度は31.09%である。実施例2の反射防止膜の分光反射率分布は図4、反射光のCIE色度座標中での位置は図6に示される。
【0027】また、実施例2で用いられる染色レンズの光学特性は、視感反射率が49.2%、透過光の色度がCIE色度座標でx=0.3566,y=0.3230、主波長が601.9nm、補色主波長が489.1nm、主波長に対する透過光の色度の刺激純度は14.28%である。実施例2の染色レンズ自体の分光透過率分布は、図5に実線で示されており、透過光のCIE色度座標中での位置は図6に示される。また、染色レンズに反射防止膜を施した場合の両者の特性を考慮に入れた総合的な透過光の分光分布は、図5中に破線で示されている。
【0028】図4に示されるように反射防止膜の反射率は可視域全体においてほぼ2%以下に抑えられており、その中で700nmに近い領域の赤色成分の反射率が比較的高くなっている。反射光の色度を膜の物体色として見た場合、膜の色は明度5の状態では「紫みの赤」である。また、染色レンズの透過率は、図5中の実線で示されるように620〜700nmの赤色成分の透過率が比較的高くなっている。透過光の色度を染色レンズの物体色として見た場合、レンズの色は明度5の状態では「うすい紫みの赤」である。さらに、図5中の実線と破線とに示されるように、透過光の分光分布はほぼ染色レンズの分光透過率分布に一致している。したがって、実施例2の構成によれば、光学部材を透過する光の色刺激と反射される光の色刺激とを共に赤系統の色に揃えることができる。
【0029】なお、上記の反射防止膜の光学特性の説明は、いずれも光束のコーティング層に対する入射角度が0deg.(度)の場合を前提にしている。しかしながら、実施形態のような眼鏡レンズ等を実際に使用する場合には、光はあらゆる方向から膜に入射するため、見る方向によって反射光の色刺激が大きく変化しないようにするためには、入射角度の変化に対する反射光の主波長の変化を小さく抑えることが望ましい。
【0030】一般に、反射防止膜等の干渉膜に対する光の入射角度が大きくなると、反射光の分光分布は短波長側にシフトする。ただし、従来の緑色成分を主として反射させる分光反射率分布を有する反射防止膜と比較すると、実施例1に示した青色成分を主として反射させる分光反射率分布を有する反射防止膜の方が入射角度の変化に対する反射光の色度の変化が小さい。
【0031】緑色成分を主として反射させる場合、主たる反射成分の範囲を限定するためには、可視域内で長波長側、短波長側の両側の境界波長が存在しなければならない。入射角度が大きくなって分光分布が短波長側にシフトすると、主たる反射成分の帯域幅は殆ど変化せずに、これを限定している短波長側、長波長側の境界波長が共に短波長側にシフトすることとなる。したがって、主波長が短波長側に移動する。
【0032】これに対して、実施例1のように青色成分を主として反射させる分光反射率を持つ反射防止膜の場合、主たる反射成分の範囲を限定しているのは可視域内では長波長側の境界波長のみであり、入射角度が大きくなって分光分布が短波長側にシフトした場合にも長波長側の境界波長が短波長側にシフトするのみであり、主たる反射成分の帯域幅は狭くなるものの、主波長の変化は比較的小さい。
【0033】このため、実施例1の構成によれば、従来の緑色成分を主として反射させる分光反射率分布を有する反射防止膜と比較すると、入射角度の変化に対する反射光の主波長の変化が小さい。表3は、緑色成分の反射率が相対的に高い従来の代表的な反射防止膜と、実施例1、2の反射防止膜とにおける、入射角度の変化に対する反射光の色度のCIE色度座標上での座標点の変化を示す。
【0034】
【表3】
角度 緑色成分(従来例) 青色成分(実施例1) 赤色成分(実施例2)(deg.) x y x y x y 0 0.1844 0.3912 0.1790 0.1913 0.4400 0.3024 5 0.1834 0.3865 0.1787 0.1902 0.4443 0.307010 0.1813 0.3721 0.1778 0.1873 0.4561 0.320615 0.1798 0.3482 0.1770 0.1832 0.4723 0.341920 0.1818 0.3160 0.1779 0.1797 0.4869 0.367525 0.1905 0.2798 0.1837 0.1802 0.4926 0.390530 0.2078 0.2468 0.1994 0.1909 0.4845 0.403935 0.2325 0.2245 0.2294 0.2172 0.4637 0.404540 0.2603 0.2171 0.2681 0.2554 0.4366 0.3950
【0035】図7は、表3に示される座標点をCIE色度座標中に表示したグラフ、図8はその一部を拡大したグラフであり、図8では入射角度と座標点との対応が示されている。これらのグラフに示されるように、従来の反射防止膜では、入射角度0〜40deg.の範囲で反射光の純度の変化は比較的小さいが、主波長の変化が約500nm〜430nmと比較的広いため、見た目の色の変化が比較的大きくなる。この変化は、例えば明度5の状態では、「あざやかな青みの緑」から「明るい青みの紫」までの変化に相当する。
【0036】一方、実施例1の構成では、反射光の主波長の変化が入射角度0〜40deg.の範囲でほぼ470nmを中心とした±5nm程度の範囲内に収まるため、純度の変化はあるものの見た目の色刺激の変化は従来例より小さくなる。この変化は、明度5の状態では、「青」から「明るい青みの紫」までの変化に相当する。
【0037】なお、入射角度0deg.での色と40deg.での色との色差をCIE1964色差公式により求めると、従来例が12.7199で最も大きくなり、実施例1では6.8962、実施例2では4.8577となる。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、青または赤に見えるレンズ等の基材に対して同系色の反射光が得られるコーティング層を施すことにより、装用者に見える透過光の色刺激と、表面で反射された光による装用者以外の者から見えるレンズの色刺激とを一致させることができる。したがって、例えばこの発明を眼鏡レンズに適用した場合には、反射光により付される色により染色された眼鏡レンズ等の基材の色合いを損なうことがないファッション性に優れた眼鏡レンズを提供することができる。
【0039】また、基材を透過する光の色刺激と、コーティング層で反射される光の色刺激とを共に青色に揃えた場合には、他の色を利用する場合と比較して光の入射角度の変化に基づくコーティング層の反射光の主波長の変化を小さく抑えることができ、反射光の色刺激の角度依存性の少ない光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施形態にかかる光学部材の構成の概略を示す説明図である。
【図2】 実施例1の反射防止膜の分光反射率分布を示すグラフである。
【図3】 実施例1の染色レンズの分光透過率分布を示すグラフである。
【図4】 実施例2の反射防止膜の分光反射率分布を示すグラフである。
【図5】 実施例2の染色レンズの分光透過率分布を示すグラフである。
【図6】 実施例1、2の反射防止膜の反射光、染色レンズの透過光の色度をCIE色度座標上で示すグラフである。
【図7】 従来例、実施例1、実施例2の反射防止膜の入射角度の変化に基づく色度の変化をCIE色度座標中に示したグラフである。
【図8】 図7の主要部分を拡大して示すグラフである。
【符号の説明】
1 染色レンズ(基材)
10 ガラス板(基材)
2、20 反射防止膜(コーティング層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 可視波長域の特定の波長域の成分を主として透過させる基材と、該基材の表面に施されたコーティング層とから構成される光学部材において、前記基材は、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する吸収率が長波長側の緑、赤色成分に対する吸収率より低く、青色成分の透過率が相対的に高い分光透過率分布を有し、前記コーティング層は、青−緑境界波長より短波長側の青色成分に対する反射率が長波長側の緑、赤色成分に対する反射率より高くなるような分光反射率分布を有することを特徴とする波長選択性を有する光学部材。
【請求項2】 可視波長域の特定の波長域の成分を主として透過させる基材と、該基材の表面に施されたコーティング層とから構成される光学部材において、前記基材は、赤−緑境界波長より長波長側の赤色成分に対する吸収率が短波長側の緑、青色成分に対する吸収率より低く、赤色成分の透過率が相対的に高い分光透過率分布を有し、前記コーティング層は、赤−緑境界波長より長波長側の赤色成分に対する反射率が短波長側の緑、青色成分に対する反射率より高くなるような分光反射率分布を有することを特徴とする波長選択性を有する光学部材。
【請求項3】 前記基材を透過する光束の主波長あるいは補色主波長と、前記コーティング層により反射される光束の主波長あるいは補色主波長とがほぼ等しい範囲にあることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の波長選択性を有する光学部材。
【請求項4】 前記基材と前記コーティング層との主波長、あるいは補色主波長の差が、±10nmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の波長選択性を有する光学部材。
【請求項5】 前記基材は、パワーを持つレンズであり、前記コーティング層は、反射防止膜であることを特徴とする請求項1に記載の波長選択性を有する光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平9−281317
【公開日】平成9年(1997)10月31日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−115399
【出願日】平成8年(1996)4月12日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)