説明

波高値測定用ブイの構造

【課題】小形で製造コストが安く、しかも波高値を正確に測定できる波高値測定用ブイを提供する。
【解決手段】胴部1の周囲から垂直軸に直交する面上に延びるフランジ2の下面または上面から垂直方向に延びるフィン3を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は海面に漂流させるように浮かべるブイに係わり、特に、その波高値測定用ブイの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から海面に漂流状態に浮かべ海上の気圧、水温等の各種データを測定し、自位置をGPS受信機で求めそれらのデータを送信するブイが使用されている。そのようなブイの例を図4に示す。
【0003】
このデータ測定用ブイ40は胴部が球形胴部1なっており、風の影響や潮流の影響を受けにくいように胴部の喫水線から水平に延びるフランジ2が形成されている。そして、このようなブイは海上の気圧・水温、位置等を測定し、頂上に設けられたアンテナ4から送信するもので、波の高さを測定するものは少なかった。
【0004】
従来のデータ測定用ブイの他の例を図6に示す。このデータ測定用ブイ50も図4に示すものと同様の球形胴部1、フランジ2およびアンテナ4を備えており、さらに、球形胴部1の底部に垂直下方に延びる底部フィン11、11…が設けられていた。
【0005】
波高値を測定する目的のブイは図7(a)に示すように、円筒形胴部12の中にジャイロ付Gセンサ14(加速度計)がオイルを満たした容器中に封入されており、円筒形胴部12の周囲には水平方向に延びるフランジ13が設けられ、円筒形胴部12の頂部中央には送信用のアンテナ4が設けられている。このブイは円筒形胴部12が垂直軸回りに回転してもジャイロ付Gセンサ(加速度計)14自体は静止状態に保たれる。
【0006】
上記した図4に示すブイは、波高値を測定する場合、図5(a)に示すようにフランジ2が波面5に追従するように上下し、波面5の上下により図5(a)に矢印Gの長さ示す大きさの加速度が加わる状態となる。
【0007】
しかしながら、胴部1が風や波の影響を受けて、図5(b)に示すように中心軸回りに回転したときは、波面5の上下による加速度に回転で生じる加速度が加わり、図5(b)に矢印G1の長さで示す大きい加速度が加わる状態となる。加速度の値を2回時間で積分すると波の高さが得られるが図4で示す従来のブイは上記したように、回転の影響を受けて実際の波高値が得にくいため波高値測定用として用いられることが少なかった。
【0008】
特開平61−212729号公報に提案されたブイもリング状物体(フランジ)が設けられていたがこのリング状物体にフィンが取付けられていなかった。
【0009】
図6で説明した従来のブイは、球形胴部1の直径が同じ場合にブイ全体の大きさが大きくなり、フィンを球面に取付けるため、フィンの強度が不足する。さらに、フランジ部にフィンが取付けられていないため、フランジの強度が不足するという問題があった。また、フィンが中心軸から近い位置に取りけられているため、回転を止めるダンパとしての機能を十分に果たせないという問題があった。
【0010】
図7(a)に示す従来の波高値測定用のブイは図7(b)に示すように円筒形胴部12が回転し、円筒形胴部12の加速度がG1の矢印で示すように大きくなっても、ジャイロ付Gセンサ11が回転の影響を受けないため、Gの矢印で示す上下動のみの加速度が測定される。そして、回転の影響を受けない波高値のデータを送信できる。
【0011】
しかしながらこのジャイロ付Gセンサ14のジャイロは部品点数が多く組み立て精度を必要とするため、熟練した組み立て作業員が必要であり、製造コストが高くなる上に、ジャイロの重量も大きくなるため、ブイが大型化してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平61−212729号公報、明細書第2頁左下欄、第2図
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−174021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、小形で製造コストが安く、しかも波高値を正確に測定できる波高値測定用ブイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の波高値測定用ブイの構造は、胴部と、前記胴部の周囲から垂直軸に直交する面上に延びるフランジ部と、前記胴部の表面および前記フランジ部の下面から垂直方向に延びるフィン部と、を備え、水平台上に置かれ、前記胴部の表面と前記フィン部とで前記胴部が支えられた状態において、前記フランジ部と前記水平台との間にクリアランスが生じるように構成されていることを特徴とする。
前記フランジ部が前記胴部の喫水線から延びるように形成されてもよい。
また、前記胴部は、球形であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の波高値測定用ブイによれば、小形で製造コストが安く、しかも波高値を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)はこの発明の実施例1である波高値測定用ブイを示す正面図、図1(b)は同波高値測定用ブイを示す底面図、図1(c)は同波高値測定用ブイを水平面上に置いた状態を示す正面図である。
【図2】図2(a)は同波高値測定用ブイが水平の波面上に浮いた状態を示す正面図、図2(b)は同波高値測定用ブイが傾斜した波面上に浮いた状態を示す正面図である。
【図3】図3(a)はこの発明の参考例である波高値測定用ブイを示す平面図、図3(b)は同波高値測定用ブイを示す正面図、図3(c)は同波高値測定用ブイを示す底面図である。
【図4】従来のデータ測定用ブイの例を示す正面図である。
【図5】同データ測定用ブイの使用状態の例を示す正面図である。
【図6】従来のデータ測定用ブイの他の例を示す正面図である。
【図7】図7(a)は従来の波高値測定用ブイの例を示す正面図である。図7(b)は同波高値測定用ブイの使用状態の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。
【0018】
(実施例1)
図1(a)はこの発明の実施例1である波高値測定用ブイ20を示す正面図、図1(b)は同波高値測定用ブイ20を示す底面図、図1(c)は同波高値測定用ブイ20を水平面上に置いた状態を示す正面図である。
【0019】
図に示す1は球形胴部であり、その頂部にアンテナ4が設けられ、球形胴部1の喫水線から延びるようにドーナツ形円板状のフランジ2が設けられている。フランジ2の下面と球形胴部1の表面との間に略三角形状のフィン3、3…が6個円周方向等間隔に一体に形成されている。図1に示すように、球形胴部1の半径をrとしたときフランジ2の半径1.4r、フィン3の高さおよび幅は0.3r、フィン3の先端の中心軸からの距離は1.3rである。
【0020】
この波高値測定用ブイ20を水平台上においた状態が図1(c)に示されている。球形胴部1の表面とフィン3とで球形胴部1が支えられ、フランジ2と水平台との間にCで示すクリアランスが生じフランジ2が波高値測定用ブイ20の重さで変形することが防止される。
【0021】
図2(a)は同波高値測定用ブイ20が水平の波面5上に浮いた状態を示す正面図、図2(b)は同波高値測定用ブイ20が傾斜した波面5上に浮いた状態を示す正面図である。図2(b)に示すように、波高値測定用ブイ20が波により上下し、波による回転方向の力を受ける場合もフィン3、3…がダンパとして作用し、球形胴部1が回転せず、Gの矢印で示す略上下動のみの加速度が測定され、回転の影響を受けない波高値のデータを送信できる。
【0022】
フィン3、3…はフランジ2の補強となる一方フィン3、3…も球形胴部1とフランジ2とで挟まれるように支持されているために変形に対する大きい剛性が得られている。このように実施例1の波高値測定用ブイはジャイロを用いていないため、小形で製造コストが安くなり、しかも正確な波高値が得られる。
【0023】
(実施例2)
図3(a)はこの発明の参考例である波高値測定用ブイ30を示す平面図、図3(b)は同波高値測定用ブイ30を示す正面図、図3(c)は同波高値測定用ブイ30を示す底面図である。この例では図3(b)に示すように円筒形胴部6の喫水線(波面5上)から円周方向等間隔に4個の喫水線フランジ7、7…が延びている。
【0024】
喫水線フランジ7、7…の下面と円筒形胴部6の表面との間に四角形状のフィン8、8…が一体に形成されている。この例では海中の部分に延びる小形の海中フランジ9、9…が設けられている。この海中フランジ9、9…の上面と円筒形胴部6の表面との間に四角形状のフィン10、10…が一体に形成されている。このフィン10、10…も円筒形胴部6の回転に対してダンパとして作用するため、回転を阻止する作用がさらに高められる。
【0025】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、フランジの形状は四角、三角、楕円等の形状であってもく、全周が繋がっていても切り欠かれていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 球形胴部
2 フランジ
3 フィン
4 アンテナ
5 波面
6 円筒形胴部
7 喫水線フランジ
8 フィン
9 海中フランジ、
10 フィン
11 底部フィン
12 円筒形胴部
13 フランジ
14 ジャイロ付Gセンサ
20 高値測定用ブイ
30 高値測定用ブイ
40 データ測定用ブイ
50 データ測定用ブイ
60 波高値測定用ブイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、
前記胴部の周囲から垂直軸に直交する面上に延びるフランジ部と、
前記胴部の表面および前記フランジ部の下面から垂直方向に延びるフィン部と、
を備え、
水平台上に置かれ、前記胴部の表面と前記フィン部とで前記胴部が支えられた状態において、前記フランジ部と前記水平台との間にクリアランスが生じるように構成されていることを特徴とする波高値測定用ブイの構造。
【請求項2】
前記フランジ部が前記胴部の喫水線から延びるように形成された請求項1の波高値測定用ブイの構造。
【請求項3】
前記胴部は、球形であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の波高値測定ブイの構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219091(P2011−219091A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133407(P2011−133407)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【分割の表示】特願2005−220070(P2005−220070)の分割
【原出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)