説明

注口具及び液体収容容器

【課題】 液体を収容する容器本体の開閉性を良好に維持しつつ、液体の注出作業を容易に行うことができる注口具を提供する。
【解決手段】 蓋体60を嵌合できるように上部の開口周縁52aに沿って環状に形成された凹溝54を有する容器本体50に対して着脱自在に装着され、容器本体50に収容された液体を注出するための注口具1であって、凹溝54の内周側壁54a及び外周側壁54bの双方に接するように凹溝54内に挿入される挿入部10と、挿入部10との間に開口周縁52aを挟持する挟持部20と、挟持部20に連接されて液体の流路32を構成するガイド部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料や接着剤などの液体を収容する容器本体に対して着脱自在に装着される注口具、及び、この注口具を備える液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料や接着剤などの液体は、持ち運び可能な金属製の缶体に収容されるのが一般的であり、使用時に蓋体を開けて内容液を他の容器に移し、希釈や混合等を行う。缶体の開口周縁には、蓋体を嵌合するための凹溝が環状に形成されているため、缶体を傾けて内容液を注出する際に液体が凹溝に侵入するおそれがあり、侵入液によって蓋体が閉まり難くなったり、侵入液の硬化により蓋体を開け難くなるなどの問題を生じる。
【0003】
このため、特許文献1には、塗料缶の凹溝の上方を覆うように配置される注ぎ口機能を有するミキシングバーが開示されている。ところが、このミキシングバーは、塗料缶には固定せずに単にあてがった状態で塗料を注出するものであるため、ミキシングバーを一方の手で持ちながら他方の手で塗料缶を傾斜させる必要があり、作業性の面で問題があった。また、このような注出作業の困難性から注出中にミキシングバーの位置ずれが生じ易く、これによって生じた隙間から凹溝内に塗料が流れ込み易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−67469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、液体を収容する容器本体の開閉性を良好に維持しつつ、液体の注出作業を容易に行うことができる注口具及び液体収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、蓋体を嵌合できるように上部の開口周縁に沿って環状に形成された凹溝を有する容器本体に対して着脱自在に装着され、前記容器本体に収容された液体を注出するための注口具であって、前記凹溝の内周側壁及び外周側壁の双方に接するように前記凹溝内に挿入される挿入部と、前記挿入部との間に前記開口周縁を挟持する挟持部と、前記挟持部に連接されて液体の流路を構成するガイド部とを備える注口具により達成される。
【0007】
この注口具は、前記ガイド部を挟んで前記挟持部と反対側に設けられ、液体を保持可能な受け溝を有する垂れ受け部を更に備えることが好ましい。
【0008】
また、前記ガイド部は、先端に肉厚の補強部を備えることが好ましい。
【0009】
また、この注口具は、可撓性材料により平板状に一体成形することが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、上述した注口具と、液体を収容し前記注口具が着脱自在に装着される容器本体とを備える液体収容容器により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体を収容する容器本体の開閉性を良好に維持しつつ、液体の注出作業を容易に行うことができる注口具及び液体収容容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る注口具の側面図である。
【図2】図1に示す注口具の平面図である。
【図3】図1に示す注口具の使用方法を説明するための斜視図である。
【図4】図1に示す注口具が容器本体に装着された状態を示す要部断面図である。
【図5】図1に示す注口具の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1及び図2は、それぞれ本発明の一実施形態に係る注口具の側面図及び平面図である。図1及び図2に示すように、注口具1は、挿入部10、挟持部20、ガイド部30及び垂れ受け部40を備えており、全体として矩形平板状に形成されている。
【0014】
挿入部10は、平板状の厚み方向両側に滑らかに膨出するように形成された一対の張出部12,14を備えている。挟持部20は、挿入部10の基部から鉤状に延びており、後述するように、挿入部10との間に容器本体の開口周縁を挟持する。
【0015】
ガイド部30は、挟持部20に連接されて挿入部10と反対方向に延びており、挟持部20の表面と連なる面に液体の流路32を構成する。ガイド部30の先端には、肉厚に形成された補強部34が設けられている。
【0016】
垂れ受け部40は、ガイド部30を挟んで挟持部20と反対側に張り出すように延びている。垂れ受け部40には、側面視の略中央が窪んだ受け溝42が形成されており、先端には肉厚の当接部44が設けられている。
【0017】
上記の構成を有する注口具1は、軟質の合成樹脂やゴム材などの可撓性材料により形成されることが好ましく、例えば成形型を用いて一体成形することが可能である。
【0018】
次に、本実施形態に係る注口具1の使用方法を説明する。まず、図3(a)に示すように、塗料や接着剤などの液体が収容された缶状の容器本体50から蓋体60を取り外す。容器本体50は、上部に形成された開口52の周縁に沿って環状の凹溝54が形成されており、蓋体60を開けることによって蓋体60の環状凸部62が凹溝54から離脱する。
【0019】
次に、図3(b)に示すように、蓋体60の除去によって露出した凹溝54に沿って注口具1を湾曲させ、挿入部10を凹溝54内に挿入する。凹溝54に沿った注口具1の長さは、凹溝54の半周程度であることが好ましいが、これよりも短くてもよい。或いは、凹溝54の略全周を占めるように、注口具1を筒状に湾曲させてもよい。
【0020】
凹溝54への挿入部10の挿入により、図4に示すように、一対の張出部12,14が、凹溝54の内周側壁54a及び外周側壁54bにそれぞれ密着する。また、挿入部10を挿入する際に、挟持部20が容器本体50の開口周縁52aに当接して弾性変形し、この開口周縁52aが挿入部10と挟持部20との間に挟持される。こうして、容器本体50への注口具1の装着が完了すると、ガイド部30は容器本体50の開口面に対して略垂直に起立した状態に支持される。このとき、垂れ受け部40は、先端の当接部44が容器本体50の上部周縁部50a(本実施形態の缶状容器では、缶蓋と缶胴との巻締部)に当接する。
【0021】
この後、容器本体50を傾けることにより、塗料や接着剤等の内容液を抽出する。本実施形態の注口具1は、挿入部10が凹溝54内に密着状態で収容され、挟持部20が挿入部10との間に開口周縁52aを挟持するので、注出作業中も容器本体50に対する注口具1の装着状態を確実に維持することができ、注出を容易に行うことができる。
【0022】
容器本体50の傾斜によって、内容液は挟持部20の表面からガイド部30の流路32を経て外部に注出される。挿入部10は凹溝54の密閉蓋としても機能するため、注出中に内容液が凹溝54内に侵入するのを効果的に防止することができる。また、挟持部20の先端は、凹溝54の内周側壁54aの内側に弾性力により当接していることが好ましく、これによって凹溝54内への内容液の侵入をより確実に防止することができる。
【0023】
ガイド部30の先端には、肉厚の補強部34が設けられているため、注口具1を凹溝54に沿って湾曲させた際に、ガイド部30の先端における滑らかな円弧形状を確実に維持することができ、注出作業をスムーズに行うことができる。補強部34の形状は特に限定されず、例えば側面視において円形や矩形状に形成することも可能であるが、流路32の障害とならない形状が好ましく、本実施形態においては、容器本体50への装着時に補強部34が径方向外方に張り出すように形成されている。補強部34は、必須のものではなく、これを設けない構成であってもよい。
【0024】
注出作業を終了して容器本体50を水平な床面などに載置すると、ガイド部30の先端付近に付着した液体が、ガイド部30の外面側を伝って落下するおそれがある。本実施形態の注口具1は、こうして垂れ落ちた液体を、垂れ受け部40の受け溝42に回収することができるので、注口具1を容器本体50から取り外した後に容器本体50の上面に液体が残留せず、この点からも凹溝54への液体の侵入を確実に防止することができる。本実施形態においては、垂れ受け部40の先端に当接部44を設けることで、受け溝42に収容した液体を確実に保持できるようにしているが、垂れ受け部40が容器本体50に接触しない構成であってもよい。
【0025】
本実施形態の注口具1は、容器本体50への装着が簡単であり、注出作業が容易に行うことができるだけでなく、容器本体50の内容液の注出時に、凹溝54内への液体の侵入を確実に防止することができるので、容器本体50に対する蓋体60の開閉性を良好に維持することができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態には限定されない。例えば、図5に示すように、注口具1において、垂れ受け部40を備えない構成にすることも可能である。この構成であっても、挿入部10及び挟持部20によってガイド部30を起立状態に確実に維持することができ、注出作業を容易に行うことができるだけでなく、ガイド部30に液垂れが生じても、挿入部10による凹溝54の密閉によってガイド溝54への液体の侵入を防止することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、注口具1を可撓性材料により平板状に一体成形しているので、量産性に優れるだけでなく、凹溝54の径の大きさに拘わらず注口具1を適宜の曲率で曲げて凹溝54に装着することができ、汎用性を高めることができる。但し、注口具1の形状は、必ずしも平板状に限定されるものではなく、例えば、硬質樹脂等により凹溝54の曲率に合致するように予め円弧状に形成してもよい。
【0028】
また、注口具1が装着される容器本体50は、金属製の缶体が一般的であるが、例えばプラスチック容器や紙容器であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 注口具
10 挿入部
20 挟持部
30 ガイド部
32 流路
34 補強部
40 垂れ受け部
42 受け溝
50 容器本体
52 開口
52a 開口周縁
54 凹溝
54a 内周側壁
54b 外周側壁
60 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体を嵌合できるように上部の開口周縁に沿って環状に形成された凹溝を有する容器本体に対して着脱自在に装着され、前記容器本体に収容された液体を注出するための注口具であって、
前記凹溝の内周側壁及び外周側壁の双方に接するように前記凹溝内に挿入される挿入部と、
前記挿入部との間に前記開口周縁を挟持する挟持部と、
前記挟持部に連接されて液体の流路を構成するガイド部とを備える注口具。
【請求項2】
前記ガイド部を挟んで前記挟持部と反対側に設けられ、液体を保持可能な受け溝を有する垂れ受け部を更に備える請求項1に記載の注口具。
【請求項3】
前記ガイド部は、先端に肉厚の補強部を備える請求項1又は2に記載の注口具。
【請求項4】
可撓性材料により平板状に一体成形されている請求項1から3のいずれかに記載の注口具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の注口具と、
液体を収容し前記注口具が着脱自在に装着される容器本体とを備える液体収容容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−173604(P2011−173604A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37749(P2010−37749)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(500375486)東洋ベンディング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】