説明

注射装置

【課題】2室シリンジを装填して薬剤の正しい混合と多数回に分けて所望液量の注射を行うことができる、反復使用可能な注射装置を提供する。
【解決手段】2室シリンジを装填して薬剤成分の混合及び注射を行うための注射装置であって、2室シリンジを後端側から挿入できる筒状の胴部24と、2室シリンジの後側可動壁を押して前進させるためのピストンロッド26と、2室シリンジが挿入されたとき圧縮されてピストンロッド24を前方へ押し戻す前部ばね30と、胴部の後部の外周面上に前後移動可能に螺合した、ピストンロッド26の前進を阻止するスリーブ36と、を備える注射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射装置に関し、より詳しくは、薬剤を2つの区画に分離して収容した2室シリンジを装填して、それらの薬剤の混合及びそれに続く注射を行うための注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモン等の注射用ペプチド製剤では、安定性を保持するために、凍結乾燥等による乾燥薬剤成分と、これを溶解して注射液とするための液状の薬剤成分(緩衝剤等の溶解液)とからなる、2剤形の形態で製剤が提供されている。また患者における扱いを簡便かつ確実にするために、例えばヒト成長ホルモン製剤の場合、1本のシリンジ(注射筒)内にそれらの成分を区分して別々に収容した2室シリンジ(多室シリンダーアンプルともいう)が広く用いられている(図1)。
【0003】
2室シリンジは、図1(図面左方向を上方とする)に側方断面図で示すように、内部が2つの可動壁(前側可動壁2、後側可動壁3)で液密に仕切られて、前側スペース4と後側スペース5とが形成されている。前側スペース4の僅かに前方において2室シリンジの内壁には、前側可動壁2の厚みを跨ぐ長さの(すなわち、前側可動壁2の厚みより幾分長い)、前後方向の1本の細長い溝6が設けられており、それにより、前側可動壁2の全体が溝6の範囲内にあるときには溝6を通るバイパスが形成されるようになっている。前側スペース4には、凍結乾燥粉末等の乾燥薬剤10が封入されており、これを溶解させるための溶解液11が後側スペース5に封入されている。2室シリンジ1の前端には、両頭針を刺入できる隔壁が備えられており、図では、隔壁に両頭針15が刺入された状態で固定され、これに保護キャップ16が被せられている。
【0004】
2室シリンジ内での乾燥薬剤10と溶解液11との混合及び注射は次のように行われる。すなわち、シリンジ先端側を上にして隔壁に両頭針15が刺入された状態で、後側可動壁3が押し込まれ、これにつれて前側可動壁2も押し込まれる。前側可動壁2の後縁から溝6の後部が露出したとき溝6を通るバイパスが前側スペース4と後側スペース5の間に形成され、これを通って後側スペース5内の溶解液11が前側スペース4内へと送られ始め、前側可動壁はその位置に止まる。後側可動壁3が前側可動壁2に当接することにより、後側スペース5中の溶解液11は全て前側スペース4内に移され、そこで薬剤10と混合してこれを溶解させ、注射液を構成する。その後は、後側可動壁3と前側可動壁2とが一体で押されるため、通常の1室のシリンジと同様に操作される。
【0005】
成長ホルモンのようなペプチドホルモン製剤の場合、長期間にわたる日常的な少量ずつの反復投与が必要である。この投与は、患者自身又はその家族(以下、あわせて「患者等」という。)によって自宅なされ、患者等は、溶解前の薬剤を収容した数本の2室シリンジ及びこれを装填する注射装置を受け取って、自ら2室シリンジ内の薬剤の混合・溶解の操作を行う。
【0006】
2室シリンジを用いた患者等の自宅での薬剤混合操作において、後側可動壁を無理やり急激に押し込むと、前後の可動壁2、3の連携が十分に行われず溶解液の後方への液漏れが起こる場合のあることが、本発明者によって見出されている。従って、2室シリンジ内の薬剤の混合がスムーズに行われることを保証する装置、及びそのような装置であってその後の複数回にわたる所定量の注射を容易に正しく行うことができる装置が求められている。また、そのような装置は、製造コストを抑制できるよう、構造を複雑にせずに目的を達成できるものであるのが好ましい。
【0007】
2室シリンジを用いて薬剤を混合し少量ずつ複数回に分けて注射をするための注射装置は、幾つか知られているが、薬剤の混合・溶解操作において患者が後側可動壁を急激に押し込むことの可能な装置(特許文献1及び2参照)では、上述の液漏れ問題発生の可能性を伴う。ねじを回すことによってピストンロッドを漸進させそれにより後側可動壁を徐々に押し込むようにした注射装置が知られている(特許文献4及び5参照)が、ピストンロッドを押し込むためにねじを手で回さねばならないのは、それを日常的に行う患者にとって非常に煩わしいことである。
【0008】
2室シリンジの後側可動壁を漸進させるばねを備えた注射器が知られている(特許文献6参照)。これによれば、2室シリンジを保持した本体の前半部分を後半部分に奥まで押し込んだとき、ロックが解除されて筒状のプランジャーが後方からばねで押しだされ、それによる後側可動壁の前進により薬剤が混合される。混合後、プランジャーの後部に挿入されているインジェクターロッドに螺旋状の配置で設けた僅かな個数のステップの何れかをプランジャー内側の1つのリブに合わせて押すことにより、所定量の注射液が針から押し出される。この装置によれば2室シリンジ内の薬剤の混合が急激に行われるおそれは防止できるもものの、装置が複雑で部品点数が多く、また注射液量の調節が細いインジェクターロッドの周囲に螺旋的に設けられたステップとプランジャー内側のリブの係合によるものであるため、細かな調節段階を正確に設けることも、多くの回数に分けた反復投与に適合させることも困難である。また、注射終了後には、ばねはロックが解除されて伸びておりプランジャーも最も前進した位置にあって、それらは、空になった2室シリンジを取り除き或いはインジェクターロッドを後方へ引いても復帰しない。従って、このままでは注射装置を初期状態(ばねがロックされている)に戻すことが困難であり、少なくとも患者等が自身で操作して装置を反復使用するには不都合である。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4874381号公報
【特許文献2】米国特許第6053893号公報
【特許文献3】米国特許第6419656号公報
【特許文献4】米国特許第4968299号公報
【特許文献5】米国特許第5080649号公報
【特許文献6】米国特許第6793646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の背景において、本発明は、2室シリンジを装填して、中に収容された薬剤を溶解しその後の多数回に分けた注射を行うことが可能な注射装置であって、薬剤の溶解に際して、後側可動壁が急激に押し込まれるのを確実に防止して正しい混合を保証し、且つ、その後複数回に分けて所望液量の注射を行うことができ、空になった2室シリンジを取出し新たな2室シリンジを装填することで何度でも使用でき、注射液量の調整もより細かく正確に行うことも容易にする注射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、ピストンロッドをスライド可能に設け、これをばねにより前方へ支持しておき、2室シリンジを装填したとき後方へ一旦押し戻されるピストンロッドを介して圧縮されるばねの反発力を利用して、ピストンロッドを前進させて薬剤の溶解に必要な後側可動壁の押し込みを行わせるようにすると共に、それ以上のピストンロッドの前進距離については、ねじ機構により位置を調節できるストッパーによって、ピストンロッドの押し込み可能な距離を制御することにより、上記目的を達成できることに着目し、更に検討を加えたて本発明を完成させた。すなわち本発明は以下を提供するものである。
【0012】
1.両頭針を刺入できる隔壁を備えた前端及び筒状の側壁を有し、該側壁内に液密にスライド可能にはめ込まれた前側可動壁及び後側可動壁と、該前端と該前側可動壁との間において該側壁の内面に該前側可動壁の厚みを跨ぐ前後長のバイパスを備えた2室シリンジの、該前端と該前側可動壁との間に規定される前側スペース内に第1の薬剤成分を収容し、該前側可動壁と該後側可動壁との間に規定される後側スペース内に液状の第2の薬剤成分を収容したものを装填して、該2室シリンジ内において第1の薬剤成分及び第2の薬剤成分の混合及び得られた注射液の注射を行うための注射装置であって、
該2室シリンジを該2室シリンジの後端側から所定の深さまで挿入することができるように構成された概略筒状の胴部と、
該後側可動壁を後方から押して前進させるための、該胴部内に前後移動可能に挿入され該胴部の後方から前方へと押すことができるものであるピストンロッドと、
該2室シリンジが該胴部に挿入され、該2室シリンジの該後側可動壁に押されて該ピストンロッドの先端が後退するときに圧縮されて該ピストンロッドを前方へと押し戻すように、該ピストンロッドの先端とこれより後方における該胴部の中間部との間の領域に配置された前部ばねと、そして
該胴部の外周面上に螺合して該胴部の後部に備えられ、該胴部に対して回すことにより前後移動させて該胴部の後端より後方への突出距離を変化させることのできるスリーブと、
を備え、該スリーブが該ピストンロッドの後部に当接することにより、該当接したときの該ピストンロッド位置よりも前方への該ピストンロッドの前進を阻止するよう、該ピストンロッドと該スリーブの形状が与えられているものである、注射装置。
2.該前部ばねが、該ピストンロッドを中に通して配置されたつる巻きばねである、上記1の注射装置。
3.該前部ばねの先端が該ピストンロッドの先端部と係合するものである上記2の注射装置。
4.該前部ばねの後端が該胴部の中間部の内側に設けられた突起に支持されるものである、上記2又は3の注射装置。
5.該前部ばねが、該隔壁が両頭針により刺入されて前側スペースが外部と連通した状態の該2室シリンジを該胴部に挿入したとき、該2室シリンジの該後側可動壁に押されて後退する該ピストンロッドによって一旦圧縮され次いで復元力により該ピストンロッドを介して該後側可動壁を押しそれよって第2の薬剤成分を該前側スペース内へと注入するに足る長さ及び強さを有するものである、上記1ないし4の何れかの注射装置。
6.該前部ばねが、該ピストンロッドを介して該後側可動壁を該前側可動壁に当接するまで押すものである、上記2の注射装置。
7.後端側から所定深さまで該胴部に挿入された該2室シリンジを、該2室シリンジと係合し且つ該胴部と着脱可能に係合することにより、該胴部に固定するように構成されたシリンジ固定部材を更に含むものである、上記1ないし6の何れかの注射装置。
8.該シリンジ固定部材と該2室シリンジとの係合が、該2室シリンジの先端側の肩に該シリンジ固定部材が当接することによるものである、上記7の注射装置。
9.該シリンジ固定部材と該胴部との係合が、該シリンジ固定部材が該胴部の周面上に螺合することによるものである、上記7又は8の注射装置。
10.該胴部が、該スリーブの少なくとも前側部分を覆う筒状の外部壁を更に備えており、該スリーブが該外部壁とその内側の胴部の壁との間隙に挿入されているものである、上記1ないし9の何れかの注射装置。
11.該外部壁に、該スリーブの外周面上の、該外部壁に対し所定の位置にある部位を指示する照準手段が設けられており、該スリーブの回転角度に応じて該照準手段が指示する該スリーブの外周面上の部位に、該回転角度に対応付けられた数値が記されているものである、上記9の注射装置。
12.該照準手段が、該外部壁に形成された窓である、上記11の注射装置。
13.該回転角度に対応付けられた数値が、該回転角度に比例するものである、上記12の注射装置。
14.該外部壁又は該胴部と該スリーブとが、それらの対向面の何れか一方に等間隔の長手方向窪みを備え、他方に、該長手方向窪みスナップ式に係合して該スリーブを回すとき脱係合することのできる弾性的に支持された突起を備えるものである、上記1ないし13の何れかの注射装置。
15.該ピストンロッドの後端とこれより前方における該胴部の中間部との間の領域に配置された後部ばねを更に備え、該後部ばねは、該後側可動壁を該前側可動壁に当接させるピストンロッドの位置より前方のピストン位置において、該ピストンロッドを後方へ付勢するものである、上記1ないし14の何れか注射装置。
16.該後部ばねが、該ピストンロッドを中に通して配置されたつる巻きばねである、上記15の注射装置。
17.装填された該2室シリンジを更に備えてなる、上記1ないし16の何れかの注射装置。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成になる本発明の注射装置によれば、2室シリンジ内の薬剤の混合のための後側可動壁の押し込みがばねによってなされるため、急激な押し込みが防止され、薬剤の確実な混合が保証される。また、胴部に螺合したスリーブの回転により、ピストンロッドの押込み距離を制御できるため、混合により得られた注射液を多数回に分けて所定量ずつ反復注射することが容易となる。特に、照準手段を更に備えると共に、これが指示する数値をスリーブに記した場合は、予め定められた注射量の投与のために必要なスリーブ位置を、使用者が眼で容易に確認することが可能である。また本発明の注射装置は、反復使用が可能であり、1つの2室シリンジを使い切った後はこれを除去し、新たな2室シリンジを挿入して、初回と同様にして薬剤の混合及び多数回に分けた反復注射を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の注射装置に装填して注射に用いられる2室シリンジは、周知のものであり、複数の製品が販売されているから、それらのうち、混合し調製すべき注射液の量に応じて、適当なサイズのものを選択して使用し、注射装置の各寸法は、それらに適合するように設定すればよい。
【0015】
本発明において、「胴部」は、2室シリンジをその後端側から所定の深さまで挿入することができ、且つ、ピストンロッドを挿入することができるものである限り、その形状は特に限定されない。2室シリンジが挿入される胴部の前側部分の内側は、2室シリンジの外径より僅かに大きい程度の内径の円筒形とするのが、無駄がなく好ましいが、必ずしもこれに限られず、2室シリンジを収容できる大きさの正六角形、正方形等の多角形その他の非円形の断面を有する形状としてもよい。胴部の後側部分の内側の形状は、前側部分のそれと一致させればよいが、異なっていても差し支えない。2室シリンジが一定の深さまで挿入されて止まるようにするには、胴部の内側に、2室シリンジの後端の縁に当接してその後退を阻止する突起、例えば環状の1個の突起又は分離した複数の突起を設けておけばよい。胴部の先端からのそのような突起の位置は、注射に不便でない限り適宜であり、例えば、2室シリンジの後端側3/4が胴部内に挿入されて止まる位置とすればよい。
【0016】
ピストンロッドは、その先端が2室シリンジの奥まで押し込まれたときに後端が胴部より後方へ出ている長さのものとすることが好ましい。本明細書において「ピストンロッド」というときは、2室シリンジの後側可動部材に当接する先端部から、胴部の後方より指で押される後端部までを含む、全体として一体となって前後移動(好ましくは前後にスライド)する部材の全体をいう。ピストンロッドに関連して設けられる前部ばねは、好ましくはつる巻きばねであり、ピストンロッドをその中に通した状態で配置される。前部ばねとピストンロッドとが力を及ぼしあうためには、前部ばねの先端がピストンロッドの先端付近と係合できる構造とすることが好ましい。そのような構造の一例は、ピストンロッドの先端部の外径を拡大して前部ばねの内径よりも大きく形成したものであり、別の一例は、ピストンロッドの先端付近に設けられた、前部ばねの内径よりも大きな外径の環状突起若しくはそのような高さまで突出した複数の突起であるが、これらに限定されず適宜の構造であってよい。前部ばねの後端を支持する構造も適宜であってよく、例えば、胴部の中間部(すなわち胴部の先端部と後端部との間の部分、好ましくは中央部分)の内側の適宜な位置に設けられた突起であってよい。そのような突起は、2室シリンジの後退を阻止する前記の突起であってよく、その場合、突起の先端は、2室シリンジの肉厚を超えて内方へと、少なくとも前方ばねの外周より内側へと延びて、前部ばねの後端と係合する領域を提供するものとしておけばよい。なお、より後方に別個の突起を設けて前部ばねの後端と係合させることもできる。
【0017】
前部ばねの強さ及び長さは、2室シリンジを胴部に挿入したとき、ピストンロッドの頭部を介して2室シリンジの後側可動壁に押されて一旦後退し圧縮されて生ずる復元力によって、2室シリンジの後側可動壁を押して、それにより前側可動壁もバイパスまで前進させて、後側スペースの溶解液を前側スペース内へ移行させることができるように設定すればよい。挿入される2室シリンジにおいて、例えば、後側可動壁が前側可動壁に当接することとなる位置、及びその位置まで後側可動壁を押し込むのに必要な力の強さとから、そのような前部ばねの長さと強さは容易に選択できる。例えば、バイパスによって前側スペースと後側スペースが連通した状態では、前部ばねは後側可動壁のみをこれと2室シリンジ内面との摩擦力に抗して前進させればよいが、後側可動壁が前側可動壁に当接した後は、後側可動壁の前進には両可動壁と2室シリンジ内面との摩擦力がばねの復元力に対抗する。従って、その位置で両可動壁を前進させない程度の強さにばねを設定しておけばよい。なお、前側スペースと後側スペースが連通する迄の段階では、後側可動壁の前進は前側可動壁の前進も伴うが、この段階では、ばねがより圧縮状態にあるため、前部ばねは両可動壁を一緒に押し込むに十分な力で後側可動壁を押すことができる。
【0018】
上記の構成により、隔壁が注射針により外部と連通下状態の2室シリンジを胴部に挿入することで、2室シリンジの後側可動壁は、一旦圧縮されたばねの復元力によって前進して溶解液を前側スペースに移行させ、それにより薬剤の混合による注射液の調製が行われる。後側可動壁が前部ばねによって押し込まれるとき、後側可動壁(バイパスの連通前には更に前側可動壁も)と2室シリンジの内壁面との摩擦力のため、後側可動壁の急激な前進が防止されるから、2室シリンジ内における薬剤の正しい混合プロセスが、確実に達成できる。
【0019】
胴部と、その後部に備えられる可動のスリーブとを螺合させるためには、それぞれに、対応する雄ねじ及び雌ねじを形成しておけばよい。それらの対応する雄ねじ又は雌ねじは、螺合という目的に適う限り、完全に連続した一本の螺旋状のねじ山を有するものである必要はない。例えば、一方が完全に連続した一本の螺旋状のねじ山を有し、他方がこれに係合するように配置された複数の突起であってもよい。胴部に螺合したスリーブは、手で回すことができるため、それによって胴部に対する前後位置を変化させることができる。こうして、スリーブの後端を、胴部の後端から後方へと突出させることができ、その突出距離は、スリーブの回転角度によって調節することができる。
【0020】
スリーブは、それ自身の位置に応じてピストンロッドの可動範囲を制限する可動のストッパーとして機能する。このためには、ピストンロッドの後部とスリーブとは、ピストンロッドが前進するとき、ピストンロッドの後部の何れかの部位がスリーブの何れかの部位と当接して、ピストンロッドのそれ以上の前進が阻止されるように、相互の形状を与えておけばよい。そのような形態は任意である。例えば、ピストンロッドの後端付近に突起を設けるか、後端を大きな径のプレートとしておくことが挙げられるが、それらの形態に限定されない。また、スリーブを最大限まで後方へ突出させた状態で、ピストンロッドを後方から、スリーブによって阻止されるまで押したときに2室シリンジ内からのエア抜きが完了した状態となっているよう、装填されるべき2室シリンジに合わせてスリーブとピストンロッドとの当接位置を設計上調整しておくことが好ましい。注射剤にはエア抜き時に失われる液量を想定して規格液量より多い液量が充填されているため、この調整は、エア抜き完了時のピストンロッド位置からピストンロッドが最も奥まで移動する間に丁度2室シリンジの規格液量が押し出されることとなるようにすればよい。
【0021】
本発明において、胴部に挿入された2室シリンジを固定するためのシリンジ固定部材は、2室シリンジ及び胴部の双方と係合するものであればよく、その構造は限定されない。シリンジ固定部材と2室シリンジとの係合には、例えば、2室シリンジの先端側の肩(すなわち、シリンジの筒状の本体の先端側周縁部)にシリンジ固定部材が当接するようにシリンジ固定部材の形状を設定すればよい。このためには、例えば、シリンジ固定部材の前部を、2室シリンジの先端側と嵌合する筒状の形状とし、その先端部内周縁に内方への突起(例えば、環状突起)を設けておけばよい。シリンジ固定部材と胴部との係合も、適宜であってよい。例えば、シリンジ固定部材の後部が注射装置の胴部の外周面又は内周面(本明細書において、「内周面」と「外周面」とを併せて、「周面」という。)上に螺合するものとすればよい。これは例えば、シリンジ固定部材の後部が胴部の外周面上に螺合するよう、シリンジ固定部材の後部を、胴部を収容できる寸法の筒状の形状として内周面に雌ねじを設け、これに対応する部位の胴部の外周に雄ねじを設けることにより行うことができる。代わりとして、シリンジ固定部材の後部が注射装置の胴部の前端側の内周面上に内側から螺合するようにしてもよい。これは例えば、シリンジ固定部材の後部を前部と同径の筒状の形状としてその外周に雄ねじを設け、胴部の少なくとも前部を、シリンジ固定部材の後部を収容できる寸法の筒状の形状としその内周面に、シリンジ固定部材の雄ねじに対応する雌ねじを設けておけばよい。
【0022】
ピストンロッドを後方へ付勢するための後部ばねを設けておくことは、好ましい。設ける場合、後部ばねは、後側可動壁を前側可動壁に当接させるピストンロッドの位置より前方へピストンが押されたとき、ピストンロッドを元の位置まで戻まで後方へ付勢するものであり、それを超えて後方へとピストンを付勢するものである必要はない。後部ばねを設けておくことにより、多数回に分けられた注射操作の各回において、押し込む前のピストンロッドを常に同程度に後方へ突出させておくことができる。後部ばねは、好ましくははつる巻きばねであり、ピストンロッドをその中に通した状態で配置される。後部ばねとピストンロッドとが力を及ぼし合うためには、例えば、後部ばねの後端がピストンロッドの適宜の部位に当接するよう、その部位から後方のピストンロッドの外周を後部ばねの内径より大きくしておくか、又はその部位に後部ばねの内径よりも大きな外径の環状突起若しくはそのような高さまで突出した複数の突起を設けておけばよい。後部ばねの前端を支持する構造も適宜であってよく、例えば、胴部の中間部の内側の適宜な位置に設けられ突起であってよい。そのような突起は、前部ばねの後端を支持する突起と同一のものであっても、またこれより後方に設けられたものであってもよい。
【0023】
前部ばねと後部ばねの長さは適宜であるが、何れか一方がその自然長にあるとき他方がほぼその自然長又はこれより僅かに圧縮されているようにしておくことが好ましい。そのようにしておけば、両者の力の均衡により、各回の注射時において、押し込む前のピストンロッドの位置が一定するからである。
【0024】
スリーブの少なくとも前側部分を覆う筒状の外部壁を胴部に設けておくことが好ましい。外部壁を設けておくことにより、各回の注射時にピストンロッドを押し込む際に、胴部を持つ指がスリーブを不用意に回転させてしまうことを防止できるためである。また、外部壁には、スリーブの外周面上の部位を指示する照準手段を設けておくことが好ましい。「照準手段」は、手で回されて回転しつつ前方へ移動するスリーブに対して、外部壁に対し所定の位置に来たスリーブの外周面上の部位を特定するものであればよい。そのような照準手段の例としては、外部壁の縁の一箇所にスリーブの外周面に向けて記された縦線や形成されたノッチ又は三角の突起、或いは、スリーブの外周面を視認できる内径で外部壁の一箇所にあけられた窓(例えば、貫通孔)等が挙げられる。スリーブの回転角度の一定の増分毎に、回転角度に応じて照準手段が指示するスリーブ外周面上の部位に、その回転角度に対応付けられた数値(例えば、回転角度の大きさそのものを示す数値、又はそれによって決まるスリーブの前後方向位置を示す数値、又は、回転角の大きさに対し適宜の係数を以って比例する等の適宜の仕方で相関する数値等)を記しておくことにより、各回の注射に際してスリーブを幾らの角度だけ回転させるか(これにより各回の注射液量が決定される)を、担当医が使用者(患者)に指示することが容易となる。それらの数値のうち、スタート点(ゼロ点)は、例えば、スリーブを最大限まで後方へ突出させたときに照準手段が指示するスリーブの外周面上の部位に、記しておけばよい。
【0025】
スリーブは、任意の角度に回転できるものであってもよいが、所定角度毎にスナップ式に止めることのできるものとするのが好ましい。そのためには、例えば、スリーブの周面とこれに対向する側の外部壁(又は胴部)の表面のうちの一方に長手方向窪みを形成しておき、他方にはこれにスナップ式に係合する弾性的に支持された突起を設けておけばよい。それにより、所定の角度毎にスリーブと外部壁又は胴部とがスナップ係合し、各回の角度調節を安定させることができる。そのような弾性的に支持された突起は、例えば、スリーブの先端側に弾性的に撓ることができるカンチレバーを設け、これに、相手方の外部壁(又は胴部)の周面上の長手方向窪みにスナップ式に契合する例えば横断面三角状の突起を形成しておけばよい。カンチレバーは、例えばスリーブの先端部から前方へ突出するように設けてもよく、また、スリーブの外周面の一部に概略U字形又はコの字形のスリットを入れることによって形成してもよい。また、上記とは逆に、長手方向窪みをスリーブの外周面又は内周面に設けておき、外部壁又は胴部のこれに対向する側の周面に弾性的に支持された突起を設けて、相互がスナップ式に契合するようにしてもよい。なお、上記の照準手段が設けられている場合は、弾性的に支持された突起と長手方向窪みがスナップ係合したとき、照準手段が支持する部位にスリーブ外周面上に記された何れかの数値が来るように、突起の位置と長手方向窪みの本数及び位置とが設定される。
【実施例】
【0026】
以下、典型的な実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0027】
図2は、図1の2室シリンジ1を後端側から挿入し始めた段階の実施例の注射装置20を示す断面図であり、図3は、その側面図である。これらの図は、何れも図面左方を実際の操作における上方とする。図2において、22、24は何れも円筒状で、各々胴部の一部であり、一体となって一つの筒状の胴部を形成している。胴部内には、ピストンロッド26が通されており、ピストンロッド26は、先端付近で大径となって頭部26hを形成し、後端では大径のプレート26rを形成している。ピストンロッド26には、頭部26hの後方につる巻きばね30(前部ばね)が配置されている。図において、つる巻きばね30は、その先端がピストンロッドの頭部26hの縁に当接しており、後端が胴部の中間部の内側に設けられた環状突起32の前面に当接して支持されている。2室シリンジ1の後側可動壁3は、ピストンロッドの頭部26hに当接しており、今やピストンロッド26は、2室シリンジの挿入に伴って後方へと押されようとしている。突起32より後方において、ピストンロッド26には別のつる巻きばね34(後部ばね)が配置されており、図の状態において、後部ばね34の先端は突起32の後面に当接すると共に突起32の後方の胴部内面の肉厚部に挟持されることにより支持されている。
【0028】
胴部の後部には、スリーブ36がねじ部38で螺合している。スリーブ36の後端は、ピストンロッドの後端のプレート26rの縁に当接しており、ピストンロッド26に対して前方への移動を阻止するストッパーとして機能している。スリーブ36は、胴部に対して手で回すことにより前後に移動させることができ、図においては、最も後退した位置にある。
【0029】
胴部は、スリーブ36の前側部分を覆う筒状の外部壁40を備えており、スリーブ36は、前側の部分において外部壁40とその内側の胴部の壁との間隙に挿入されている。外部壁40より後方には、スリーブ36の外側に筒状の後部保護キャップ42が被せられておいる。後部保護キャップ42は、以下に述べる2室シリンジ1内の薬剤混合操作段階において一旦後方へ突出するピストンロッド26を保護するためのものであり、手で後方へ引くことにより取り除くことができる。
【0030】
図4は、2室シリンジ1を注射装置の胴部の奥へと止まるまで挿入した直後の状態を示す断面図であり、図面左方を実際の操作における上方とする。図において、ピストンロッド26は図2の状態より後退しており、後端のプレート26rは、スリーブ36の後端から離れている。前部ばね30は、後退したピストンロッドの頭部26hと胴部の突起32との間で圧縮されていると同時に、復元力でピストンロッドの頭部26hを介して2室シリンジ1の後側可動壁3を押して、溶解液を溝6(バイパス)を通して前側スペース4内へ注入させつつある。
【0031】
図5は、シリンジ固定部材を取り付け、後部保護キャップ42を抜き取った状態の注射装置の断面図である。シリンジ固定部材44は、2室シリンジがフィットする内径を有する筒状部分の先端部内周縁に、内方の環状突起48を有しており、これが2室シリンジ1の先端側の肩50に係合している。その上で、シリンジ固定部材44は、胴部の先端部外周に設けられた雄ねじ52に螺着する雌ねじを有する後部54で胴部に自らを固定することによって、2室シリンジ1を、前方へ脱落しないよう固定している。図5に示した段階では、ピストンロッド26は、前部ばね30の復元力によって、2室シリンジの後側可動壁3を前側可動壁2に当接させるまで2室シリンジ内へ押し込まれている。
【0032】
図6は、図5に示した状態の注射装置の側面図であり、図7は、図5に示した状態のスリーブ36付近の拡大側面図である。これらの図に見られるとおり、スリーブ36の外周面には、1ずつ増加する多数の数字60が、螺旋形の配列で、等間隔に記されている。スリーブ36の先端側を覆う外部壁40の末端付近に、窓62が設けられ、これを通してスリーブ36の外周面に記された記号(黒三角)が見えている。スリーブ36は胴部に右ねじで螺合しており、多数記された数字が形成する螺旋のピッチはスリーブ36の雌ねじと一致させてある。上記の記号は、数字60がなす螺旋の延長上にあり、スリーブを時計回りに回転させると数値の初期値「0」が窓62内に現われるように構成されている。
【0033】
図8は、スリーブ36を回して窓62内に数字「0」を出現させた状態を示す注射装置の側面図であり、図9はそのときのスリーブ36付近の拡大側面図、図10はその状態における注射装置の断面図である。窓62内に数字「0」が現われる時のスリーブの位置は、その状態でピストンロッド26をスリーブ36に阻止されるまで押したとき、図10に示すように、丁度2室シリンジ1のエア抜きが完了し、ピストンが注射可能な最初の位置となるように、予め定められている。図示した例では、螺旋状に配列された数字60は、スリーブ36の外周の360°を24等分するように付されており、従って、窓62に数字「0」が現われた位置から数字「i」が現われまでスリーブ36を時計回りに回したとき、その差「i」に対応する角度量、すなわち15×n(°)だけスリーブ36が回転する。他の数字間でスリーブ36を回転させた場合も同様である。スリーブ36は、時計回りに回転するとその回転角度に対応するねじ部38のピッチ分だけ前進し、ピストンロッド26をその分だけ更に押し込むことを、すなわち定まった液量を注射することを、可能にする。従って、注射装置の使用者は、各回の注射操作に際して、予め担当医から指示されている数字の増分だけ、スリーブ36を時計回りに回した上で、身体に針15を刺入しピストンロッド26を押すことで、所定液量の注射をすることができる。図示した例では、360°を24等分して数字を付しているが、12等分、6等分など、適宜の仕方で数値を付すことができる。
【0034】
スリーブ36の回転角度による注射液量の調節に関連して、スリーブ36の先端側には、側方へ突出した横断面3角形の突起を備えた1対のカンチレバー70が、側方へ付勢された状態で前方へと延びており、それらの突起の先端で外部壁40の内面に等間隔に形成された24本の長手方向窪み72とスナップ式に係合している。カンチレバー70上の突起と長手方向窪み72とは、それらが係合しているときに、スリーブ36の外周面に記された数値の何れかが外部壁40の窓62内に現われるように、相互の位置関係が設定されている。スリーブ36を手で回すとき、僅かな抵抗を伴って突起はそのときに係合している窪みから脱し、隣の窪みと移行してこれに新たに係合する。従って、スリーブ36の回転角度は常に設定された回転角度の何れかとなることが保証され、回転角度にブレが生じるのが防止される。
【0035】
こうして、患者は、各回の注射毎にスリーブ36を所定角度だけ回してピストンロッドを押し、所定量の注射液の反復注射を簡単に行うことができる。2室シリンジ1内の注射液を使い切った場合には、シリンジ固定部材44を外して空の2室シリンジ1を取り出し、スリーブ36を反時計回りに回して最初の位置まで戻し、その後は、上記と全く同様に新たな2室シリンジ1を挿入して、同じように再注射を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、2室シリンジシリンジ内の薬剤の適正な混合を保証すると共に、注射液の所定量を反復注射することを容易にし、2室シリンジを新たなものに交換して繰り返し使用することが可能な、取り扱いやすい簡便な注射装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】2室シリンジの概要断面図
【図2】2室シリンジを挿入し始めた状態の実施例の注射装置の断面図
【図3】2室シリンジを挿入し始めた状態の実施例の注射装置の側面図
【図4】2室シリンジを注射装置の奥まで挿入した直後の状態を示す断面図
【図5】シリンジ固定部材を取り付け、後部保護キャップを抜き取った状態の注射装置の断面図
【図6】シリンジ固定部材を取り付け、後部保護キャップを抜き取った状態の注射装置の側面図
【図7】図5に示した状態のスリーブ付近の拡大側面図
【図8】窓内に数字「0」を出現させた状態を示す注射装置の側面図
【図9】図8に示した状態のスリーブ付近の拡大側面図
【図10】図8に示した状態の注射装置の断面図
【符号の説明】
【0038】
1=2室シリンジ、2=前側可動壁、3=後側可動壁、4=前側スペース、5=後側スペース、6=溝、10=乾燥薬剤、11=溶解液、15=両頭針、16=保護キャップ、20=注射装置、22、24=胴部、26=ピストンロッド、26h=ピストンロッド頭部、26r=プレート、30=つる巻きばね、32=突起、34=つる巻きばね、36=スリーブ、38=ねじ部、40=外部壁、42=後部保護キャップ、44=シリンジ固定部材、48=環状突起、50=肩、52=雄ねじ、54=シリンジ固定部材基部、60=数字、62=窓、70=カンチレバー、72=長手方向窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両頭針を刺入できる隔壁を備えた前端及び筒状の側壁を有し、該側壁内に液密にスライド可能にはめ込まれた前側可動壁及び後側可動壁と、該前端と該前側可動壁との間において該側壁の内面に該前側可動壁の厚みを跨ぐ前後長のバイパスを備えた2室シリンジの、該前端と該前側可動壁との間に規定される前側スペース内に第1の薬剤成分を収容し、該前側可動壁と該後側可動壁との間に規定される後側スペース内に液状の第2の薬剤成分を収容したものを装填して、該2室シリンジ内において第1の薬剤成分及び第2の薬剤成分の混合及び得られた注射液の注射を行うための注射装置であって、
該2室シリンジを該2室シリンジの後端側から所定の深さまで挿入することができるように構成された概略筒状の胴部と、
該後側可動壁を後方から押して前進させるための、該胴部内に前後移動可能に挿入され該胴部の後方から前方へと押すことができるものであるピストンロッドと、
該2室シリンジが該胴部に挿入され、該2室シリンジの該後側可動壁に押されて該ピストンロッドの先端が後退するときに圧縮されて該ピストンロッドを前方へと押し戻すように、該ピストンロッドの先端とこれより後方における該胴部の中間部との間の領域に配置された前部ばねと、そして
該胴部の外周面上に螺合して該胴部の後部に備えられ、該胴部に対して回すことにより前後移動させて該胴部の後端より後方への突出距離を変化させることのできるスリーブと、
を備え、該スリーブが該ピストンロッドの後部に当接することにより、該当接したときの該ピストンロッド位置よりも前方への該ピストンロッドの前進を阻止するよう、該ピストンロッドと該スリーブの形状が与えられているものである、注射装置。
【請求項2】
該前部ばねが、該ピストンロッドを中に通して配置されたつる巻きばねである、請求項1の注射装置。
【請求項3】
該前部ばねの先端が該ピストンロッドの先端部と係合するものである請求項2の注射装置。
【請求項4】
該前部ばねの後端が該胴部の中間部の内側に設けられた突起に支持されるものである、請求項2又は3の注射装置。
【請求項5】
該前部ばねが、該隔壁が両頭針により刺入されて前側スペースが外部と連通した状態の該2室シリンジを該胴部に挿入したとき、該2室シリンジの該後側可動壁に押されて後退する該ピストンロッドによって一旦圧縮され次いで復元力により該ピストンロッドを介して該後側可動壁を押しそれよって第2の薬剤成分を該前側スペース内へと注入するに足る長さ及び強さを有するものである、請求項1ないし4の何れかの注射装置。
【請求項6】
該前部ばねが、該ピストンロッドを介して該後側可動壁を該前側可動壁に当接するまで押すものである、請求項2の注射装置。
【請求項7】
後端側から所定深さまで該胴部に挿入された該2室シリンジを、該2室シリンジと係合し且つ該胴部と着脱可能に係合することにより、該胴部に固定するように構成されたシリンジ固定部材を更に含むものである、請求項1ないし6の何れかの注射装置。
【請求項8】
該シリンジ固定部材と該2室シリンジとの係合が、該2室シリンジの先端側の肩に該シリンジ固定部材が当接することによるものである、請求項7の注射装置。
【請求項9】
該シリンジ固定部材と該胴部との係合が、該シリンジ固定部材が該胴部の周面上に螺合することによるものである、請求項7又は8の注射装置。
【請求項10】
該胴部が、該スリーブの少なくとも前側部分を覆う筒状の外部壁を更に備えており、該スリーブが該外部壁とその内側の胴部の壁との間隙に挿入されているものである、請求項1ないし9の何れかの注射装置。
【請求項11】
該外部壁に、該スリーブの外周面上の、該外部壁に対し所定の位置にある部位を指示する照準手段が設けられており、該スリーブの回転角度に応じて該照準手段が指示する該スリーブの外周面上の部位に、該回転角度に対応付けられた数値が記されているものである、請求項9の注射装置。
【請求項12】
該照準手段が、該外部壁に形成された窓である、請求項11の注射装置。
【請求項13】
該回転角度に対応付けられた数値が、該回転角度に比例するものである、請求項12の注射装置。
【請求項14】
該外部壁又は該胴部と該スリーブとが、それらの対向面の何れか一方に等間隔の長手方向窪みを備え、他方に、該長手方向窪みスナップ式に係合して該スリーブを回すとき脱係合することのできる弾性的に支持された突起を備えるものである、請求項1ないし13の何れかの注射装置。
【請求項15】
該ピストンロッドの後端とこれより前方における該胴部の中間部との間の領域に配置された後部ばねを更に備え、該後部ばねは、該後側可動壁を該前側可動壁に当接させるピストンロッドの位置より前方のピストン位置において、該ピストンロッドを後方へ付勢するものである、請求項1ないし14の何れか注射装置。
【請求項16】
該後部ばねが、該ピストンロッドを中に通して配置されたつる巻きばねである、請求項15の注射装置。
【請求項17】
装填された該2室シリンジを更に備えてなる、請求項1ないし16の何れかの注射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−143957(P2007−143957A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344094(P2005−344094)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(591039540)前田産業株式会社 (9)
【出願人】(000228545)日本ケミカルリサーチ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】