説明

洗浄ノズル、これを用いた洗浄装置、および洗浄方法

【課題】被洗浄物の洗浄に好適な洗浄ノズル、洗浄装置、及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】本発明は、内部が洗浄水の圧送通路とされ、該圧送通路内に通路絞り部29を設けて圧送される洗浄水にキャビテーション気泡を発生させて先端開口部から噴出させる洗浄ノズル8であって、圧送通路内には、前記キャビテーション気泡が発生する領域においてガスを供給するガス供給部材51が備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管やタンクの内外壁面等、機械その他の物の洗浄に用いることのできる洗浄ノズル、これを用いた洗浄装置、および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造業において、飲食料、特に乳製品等を製造する装置は、飲食料を貯蔵させるタンクや工程中の配管内に、油成分、蛋白質やカルシウム等の塩類を含んだ残留物が付着することから、定期的に洗浄し、タンク内や配管内を清潔に維持して飲食品の品質を確保することが必要とされている。
これら配管等の内部の洗浄においては、飲食品の各種成分を分解する洗浄剤を順次投入して洗浄するとともに、各洗浄剤を投入する前後に、その都度温水で配管等内をリンスする方法が採用されているが、洗浄に大量の水を使用することによる用水費、水処理コスト、環境への負荷、及び洗浄に長時間掛かるという問題から、効率的な被洗浄物の洗浄として、従来より、例えばキャビテーション噴流を利用して被洗浄物を洗浄する例えば下記特許文献1に開示された装置が提案されている。
【0003】
この洗浄装置のノズルは、水を低圧で噴出する低圧ノズルの中心部に水を高圧で噴出する高圧ノズルを設け、これら低圧ノズルと高圧ノズルのそれぞれから水を噴出することによりキャビテーション噴流を噴射させる構成となっている。
このノズルによると、高圧ノズルの先端から噴出したキャビテーション噴流を被洗浄面に至るまで低圧ノズルから噴出させた水で包み込むようになっており、キャビテーション噴流の流速が衰えてキャビテーション気泡が消滅するのを防ぐとともに、被洗浄面においてキャビテーション噴流を集中させ、圧潰衝撃力による洗浄効果を増大させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−62492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の洗浄装置のノズルでは、水を低圧で噴出する低圧ノズルの中心部に水を高圧で噴出する高圧ノズルを設け、これら低圧ノズルと高圧ノズルのそれぞれから水を噴出することによりキャビテーションを発生させているため、キャビテーションの発生に限界があり、洗浄効果を飛躍的に向上させ得るものではなかった。
【0006】
また、前記洗浄装置のノズルでは、キャビテーション噴流を被洗浄物に噴射する際に、該キャビテーション噴流を包み込み、かつ被洗浄面において噴流が拡散しないように一定の範囲に閉じ込められるだけの水圧を発生させる大量の水が必要となり、洗浄コストが嵩むとともに、環境への負荷が大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の手段を提供している。
すなわち、本願の請求項1に係る洗浄ノズルは、内部が洗浄水の圧送通路とされ、該圧送通路内に通路絞り部を設けて圧送される洗浄水にキャビテーション気泡を発生させて先端開口部から噴出させる洗浄ノズルであって、前記圧送通路内には、前記キャビテーション気泡が発生する領域においてガスを供給するガス供給部材が備えられていることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項2に係る洗浄ノズルは、請求項1に記載の洗浄ノズルであって、前記通路絞り部は、該圧送通路の軸線方向に直交する方向に互いに隣接配置された第1及び第2の絞り部材を備え、前記第1の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次狭める第1の傾斜面を有し、前記第2の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次拡げる第2の傾斜面を有し、これら第1及び第2の絞り部材は、これらをその側方から視たときに、前記第1及び第2の傾斜面がこれら各傾斜面の中間部で交叉し、該第1及び第2の傾斜面上の前記圧送通路が前記交叉する部分の上方において互いに連通していることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項3に係る洗浄ノズルは、請求項2に記載の洗浄ノズルにおいて、前記第1の絞り部材は、前記第1の傾斜面の前記先端開口部側の端部に隣接して、前記先端開口部側を向く第1の平坦面を備え、前記第2の絞り部材は、前記第2の傾斜面の前記基端部側の端部に隣接して、前記基端部側を向く第2の平坦面を備えていることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項4に係る洗浄ノズルは、請求項2に記載の洗浄ノズルにおいて、前記第1および第2の絞り部材は、それぞれ板状に形成されるとともに、これら各々の板面が前記第1および第2の傾斜面とされていることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項5に係る洗浄装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄ノズルと、洗浄水を貯留する洗浄水槽と、該洗浄水槽内の洗浄水を前記洗浄ノズルに圧送するポンプおよび配管と、前記洗浄ノズルへの洗浄水の圧送を調整する調整機構とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本願の請求項6に係る洗浄方法は、洗浄ノズル内に洗浄水を圧送し、該洗浄ノズルから前記洗浄水を被洗浄体に噴射させて該被洗浄体を洗浄する洗浄方法であって、前記洗浄水内にキャビテーション気泡を発生させるとともにこの洗浄水を該ノズルの軸線周りに旋回させる工程と、前記キャビテーション気泡が発生する領域においてガスを供給する工程とを備え、前記キャビテーション気泡を有する旋回流として前記被洗浄体に噴射させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る洗浄ノズル、これを用いた洗浄装置、および洗浄方法によれば、上記した解決手段によって下記の効果を奏する。
すなわち、本願の請求項1に係る洗浄ノズルによれば、ガス供給部材から供給されたガスが、キャビテーション気泡が発生するときの気泡核となってキャビテーション気泡の発生を促進するため、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーが増加し、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力が向上するという効果を奏する。
また、洗浄水にガスを供給することによりキャビテーション気泡を効果的に発生させ洗浄力を高められるため、洗剤の使用を抑えられることで大量の水を使用することを回避し、用水費、水処理コスト、環境への負荷を大幅に抑制することができるという効果を奏する。
【0014】
また、請求項2に記載の洗浄ノズルによれば、第1及び第2の絞り部材によりキャビテーション噴流を発生させるとともに、該噴流に螺旋状の回転力を加えることができるため、該噴流がその流速を維持し、かつ洗浄水を低圧に維持することにより、キャビテーション噴流をより遠くまで噴射させることができる。また、噴流がその流速を維持し、かつ洗浄水を低圧に維持することにより、洗浄水の圧力がキャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持される期間が長くなり、キャビテーション気泡をより大きく成長させることができる。これにより、キャビテーション気泡の総量を増やし、又は被洗浄物の内壁面に到達するまでにキャビテーション気泡の量が減ることを抑制することができ、被洗浄物の内壁面における洗浄力を向上させることができるという効果を奏する。
【0015】
また、請求項3に係る洗浄ノズルによれば、第2の絞り部材の基端部側を向く第2の平坦面が、第2の絞り部材側へ流動した洗浄水を第1の絞り部材の第1の傾斜面に集水させるため、第1の絞り部材を流動する洗浄水の水圧を容易に高めることができ、キャビテーション噴流をより効率よく発生させることができるという効果を奏する。
【0016】
また、請求項4に係る洗浄ノズルによれば、第1及び第2の絞り部材が板状に形成され、これら第1及び第2の絞り部材を側面視した際に各々の板面が互いにそれぞれの中間部で交叉するよう配置されているため、洗浄水が第1の絞り部材から第2の絞り部材に流れる際に生じるキャビテーション噴流と、洗浄水が第2の絞り部材から第1の絞り部材に流れるキャビテーション噴流との二つ流れにより効果的に旋回流を発生させることができるため、強力でかつキャビテーション気泡の多い噴流を発生させることができるという効果を奏する。
【0017】
また、請求項5に係る洗浄装置によれば、キャビテーション気泡が発生する領域に供給されたガスをキャビテーション気泡が発生するときの気泡核とすることができ、キャビテーション気泡の発生が促進されるため、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーが増加し、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力が向上できるという効果を奏する。
【0018】
また、請求項6に係る洗浄方法によれば、キャビテーション噴流に螺旋状の回転力を加えられるため、該噴流がその流速を維持しキャビテーション噴流をより遠くまで噴射させることができるとともに、キャビテーション気泡が発生する領域に供給されたガスをキャビテーション気泡が発生するときの気泡核とすることができ、キャビテーション気泡の発生が促進されるため、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーが増加し、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力を向上することができるという効果を奏する。
また、噴流がその流速を維持し、かつ洗浄水を低圧に維持することにより、洗浄水の圧力がキャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持される期間が長くなり、キャビテーション気泡をより大きく成長させることができる。これによっても、キャビテーション気泡の総量を増すことや、被洗浄物の内壁面に到達するまでにキャビテーション気泡の量が減ることを抑制することができ、被洗浄物の内壁面における洗浄力を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを内部を透視させて示した斜視図である。
【図3】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを示した図であって、(a)は、該洗浄ノズルを示した平面図であり、(b)は、洗浄ノズルを一部断面視して示した側面図であり、(c)は、図(b)を洗浄ノズルの先端から軸線方向に視た正面図である。
【図4】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを構成する第1又は第2の絞り部材を示した斜視図である。
【図5】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルの変形例である。
【図6】は、本発明の第2の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを内部を透視して示した斜視図である。
【図7】は、本発明の第2の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを構成する第1又は第2の絞り部材を示した斜視図である。
【図8】は、本発明の第2の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを一部断面視して示した側面図である。
【図9】は、洗浄結果を表すグラフを示したものである。
【図10】は、洗浄結果を表すグラフを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る洗浄装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明を適用した洗浄装置は、洗浄を要するものであれば機械その他の物品について広く適用可能であるが、本実施形態においては、乳飲料の製造装置の貯留タンクの内部を洗浄する洗浄装置を一例として説明する。
【0021】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態を示したものであり、図1は、洗浄装置1の基本的な構成を模式的に示したもので、図2、図3はこの洗浄装置に用いられる洗浄ノズルを示した図である。
【0022】
図1に示すように、洗浄装置1は、乳飲料を貯留する貯留タンクTの内部を洗浄する装置であり、原水等からなる洗浄水2を貯留した洗浄水槽3、水中ポンプ4、流量の調整バルブ5、配管6、流量計7、及び洗浄ノズル8、分岐管9、及びガス供給装置50を備えている。
【0023】
水中ポンプ4は、モータにより吸排水可能とされたものが用いられ、洗浄水槽3内に配置され、所定の圧で洗浄水2を吸い上げて配管6に洗浄水2を送水するようになっている。
【0024】
配管6は、フレキシブル管により構成されており、水中ポンプ4から洗浄ノズル8へ洗浄水2を流動させるようになっている。
配管6の水中ポンプ4の近傍には、調整バルブ5が具備された分岐管9が設けられており、調整バルブ5によって分岐管9を開口するとその開口面積に応じて、分岐管9に洗浄水2が流動して再び洗浄水槽3に洗浄水2が回帰するようになっている。かくして、調整バルブ5及び分岐管9は、配管6を流動する洗浄水2の量を調整する調整機構を構成している。また、配管6に送水される洗浄水2の流量は流量計7により確認できるようになっている。
【0025】
図2に示すように、洗浄ノズル8は、細長の筒体10と、該筒体10の長手方向の中間部、詳細には中央部先端寄りに配置された第1及び第2の絞り部材21A、21Bとを備えて構成され、キャビテーション噴流を噴出させるようになっている。
【0026】
洗浄ノズル8の筒体10は、断面略U字形状に形成された本体10Aと、この本体10Aの上面を塞ぐ蓋体10Bとから構成されている。本体10Aは、底壁部10pと、該底壁部10pの側縁から立ち上がり、上端部に図3に示す螺子穴11、11、・・が形成された側壁部10q、10qとからなっている。底壁部10pには、第1及び第2の絞り部材21A,21Bよりも上流側に開口部10tが形成され、ガス供給部材51を水密に挿入できるようになっている。蓋体10Bは、側壁部10q、10q間に跨って配され、これら側壁部10q、10qに螺子留めにより固定される。
本体10Aの基端部10aにはフランジ12が形成され、このフランジ12の中央部に基端開口部12aが形成されている。本体10Aと蓋体10Bとの間に形成された空間は洗浄水2を圧送する圧送通路20となっており、その先端は先端開口部10bとされている。
【0027】
図3(a)に示すように、筒体10の長手方向の中間部、より詳細には中央部先端寄りには、該筒体10内においてキャビテーションを発生させる第1及び第2の絞り部材21A、21Bが設置可能なように、筒体10の底壁部10pの位置に、螺子等の固定具を底壁部10pの下方から水密に挿通可能な貫通孔22が形成されている。
【0028】
図4に示すように、第1の絞り部材21Aは矩形の底面24と、該底面24の短手方向の一方の縁部24aから垂直に立ち上がる第1の平坦面25Aと、該第1の平坦面25Aの上端25aから底面24の短手方向の他方の縁部24bに向かって傾斜してなる第1の傾斜面26Aと、底面24の長手方向の縁部24c、24dから垂直に立ち上がる側面27、27とにより囲まれてなる三角柱に形成された部材である。
【0029】
図2、図3(c)に示すように、第1の絞り部材21Aは、その第1の傾斜面26Aが圧送通路20の断面積を漸次狭めるように筒体10の基端部10a側を向くとともに該第1の傾斜面26Aに連接する第1の平坦面25Aが先端開口部10b側を向くように配置されており、かつ、筒体10の内部を基端部10aに向かって軸線L方向に視たときに該筒体10の内部の左側半部を占めるように筒体10内の一方の側壁部10q側に寄せて配置されている。
【0030】
第2の絞り部材21Bは、第1の絞り部材21Aと同形状をなしており、第2の平坦面25Bが圧送通路20を塞いだ後、先端開口部10bに向かって該圧送通路20の断面積を漸次拡げるように第2の傾斜面26Bが先端開口部10b側を向き、筒体10の内部の前記左半部に隣接する右半部を占めるように、第1の絞り部材21Aに隣接配置されている。
【0031】
図1、図2に示すように、ガス供給装置50は、圧送通路20内に気体等のガスを供給する装置であり、管状のガス供給部材51、バルブ52、圧力計53、及びコンプレッサー54を備えている。
ガス供給部材51は、圧送通路20内に挿入されて空気又は蒸気等のガスを供給する筒部材であり、第1及び第2の絞り部材21A,21Bよりも上流側に配置されている。また、ガス供給部材51の開口先端部は、ガスが筒体10の下流側に向かって圧送されるように下流側に向けられている。
【0032】
上記の構成において、第1及び第2の絞り部材21A、21Bは、筒体10の延在する方向の略中央部において洗浄水2が流動する流路を絞る絞り部29を形成し、図3(a)に示すように、第1の傾斜面26Aの下端縁24b上方の領域は、絞り部29における洗浄水2の導入口29Eとなり、同図(b)に示すように、第1及び第2の傾斜面26A、26Bは、筒体10を側面視する方向から見た場合、それぞれの傾斜面26A、26Bの略中央部において互いに交叉し、該交叉する部分の上部(すなわち第1の傾斜面26Aの前記交叉部よりも先端開口部10b側の面上部と、第2の傾斜面26Bの前記交叉部よりも基端部10a側の面上部)において互いに連通する空間部28を形成し、更に同図(a)に示すように、第2の傾斜面26Bの下端縁24bの上方空間は絞り部29における洗浄水2の導出口29Fとなっている。
図3(b)、(c)に示すように、この絞り部29における圧送通路20は、前記空間部28を除いて略封鎖され、キャビテーション噴流を発生させ得るようになっている。
【0033】
次に、上記洗浄装置1の使用方法及びキャビテーション噴流の発生の作用について説明する。
まず、図1に示すように、洗浄水2を満たした洗浄水槽3内に水中ポンプ4を配置し、洗浄ノズル8を洗浄したい貯留タンクTの内壁面に近接させる。
水中ポンプ4を駆動し、この水中ポンプ4の駆動と同時又は駆動後に、ガス供給装置50を駆動すると、洗浄水2は、配管6を経由して筒体10の基端部10aから洗浄ノズル8内に進入するとともに、ガス供給部材51から圧送通路20内に気体が供給される。
【0034】
図2、図3(b)示すように、筒体10内に進入した洗浄水2は、第2の絞り部材21Bの第2の平坦面25Bに流動を阻まれるため第1の絞り部材21Aの第1の傾斜面26A側に流入し、かつ、該第1の傾斜面26Aが筒体10の基端部10aから先端開口部10b方向に圧送通路20の断面積を漸次狭めるように配置されているため、第1の傾斜面26A上で洗浄水2の水圧が徐々に高まり、第1の傾斜面26Aと第2の傾斜面26Bとの交叉部よりも上部、すなわち空間部28に到った時点で洗浄水2が第2の傾斜面26B側に流入する。
【0035】
この際、第2の傾斜部26Bが筒体10の圧送通路20の断面積を漸次拡げるように配置されているため、洗浄水2が空間部28の第2の絞り部材21Bの側に高速で一気に流れて低圧になり、キャビテーション気泡が発生する。また、ガス供給部材51から供給された気体は、洗浄水2によって空間部28の第2の絞り部材21Bの側(キャビテーション気泡が発生する領域)へ運ばれて(供給されて)、キャビテーション気泡が発生するときの気泡核になる。したがって、キャビテーション気泡が発生する領域に気体を供給しない場合と比較して、キャビテーション気泡の発生が促進され、発生するキャビテーション気泡の総量(体積)が増加する。よって、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーが増加し、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力が向上する。
【0036】
キャビテーション気泡を含んだ洗浄水2は、図2において矢印X、Yで示すように、筒体10内の絞り部29において、第1の傾斜面26Aの上部に集水された後、第2の傾斜面26B側に進路を変えるとともに、第2の絞り部材21Bの第2の傾斜面26Bにより圧送通路20を漸次下方に拡げる流れとなるため、第2の傾斜面26Bを通過した時点で縦方向に旋回するうねりを伴うこととなる。
【0037】
したがって、圧送通路20が第1の絞り部材21Aの第1の平坦面25Aの先端側で拡がり、洗浄ノズル8の先端から噴射されても、水流の広がりが抑制されるので水流の速度低下が抑制される。よって、水流の圧力がキャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持される期間が長くなり、キャビテーション気泡をより大きく成長させることができる。これにより、キャビテーション気泡の総量を増加させ、又は被洗浄物の貯留タンクTの内壁面に到達するまでにキャビテーション気泡の量が減ることが抑制される。そしてその結果として、被洗浄物の貯留タンクTの内壁面に到達するキャビテーションの量を増すことができ、被洗浄物の貯留タンクTの内壁面における洗浄力を向上する。
【0038】
以上のように、本発明の洗浄装置1によれば、第1及び第2の絞り部材21A、21Bによりキャビテーション噴流を発生させることができるとともに、該噴流に螺旋状の回転力を加えることができるため、キャビテーション噴流がその流速を維持しキャビテーション噴流をより遠くまで噴射させることができる。また、キャビテーション気泡の発生を促進して、発生するキャビテーション気泡の総量(体積)を増加させることによって、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーを増加させ、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力を向上させて、洗浄効果を飛躍的に向上させることが可能となるという効果が得られる。
【0039】
また、その結果、洗剤を用いずに被洗浄物を効率よく洗浄することができることとなるため、大量の水を使用することを回避し、用水費、水処理コスト、環境への負荷を大幅に抑制し、洗浄作業の効率も高めることが可能となる。
【0040】
また、第2の絞り部材21Bの基端部10a側を向く第2の平坦面25Bが、洗浄水2の第2の絞り部材21B側へ流動した洗浄水を第1の絞り部材21Aの第1の傾斜面26Aに集水させるため、第1の絞り部材21Aを流動する洗浄水2の水圧を容易に高めることができ、キャビテーション噴流をより効率よく発生させることができるという効果を奏する。
【0041】
なお、本実施形態において、図3(a)に示すように、第2の平坦面25Bは、筒体10を平面(蓋体10B側)から視た際に、側面27と直交するように形成されているため、筒体10内に配置された際に軸線Lに直交する面とされているが、かかる形状に代えて、筒体10内に配置された際に絞り部29における洗浄水2の導入口29Eに向かって漸次流路を狭める傾斜面(すなわち側面27と鋭角に連設する面)251となるように形成されたものであってもよい。
かかる形状とすることにより、水中ポンプ4から圧送された洗浄水2の水勢を第2の平坦面25によって減衰させることを抑制して洗浄水2の水勢を極力保った状態で円滑に第1の絞り部材21A側に流動させることが可能となって、キャビテーション噴流を効率よく生成することが可能となるという効果が得られる。
【0042】
また、図3(b)に示すように、第1及び第2の絞り部材21A、21Bのそれぞれの傾斜面26A、26Bの上端25aと筒体10の蓋体10Bの内壁面との間には略隙間がないように形成されているが、絞り部29の圧力損失が大きすぎるような場合には、第1及び第2の絞り部材21A、21Bは、筒体10の蓋体10Bの内壁面との間にわずかな隙間が形成されるような寸法としたものであってもよい。要は、絞り部29においてキャビテーション噴流を発生させるための水圧が第1の絞り部材21Aに掛けられるものであればよい。
【0043】
次に試験例を示して本発明の効果を検証する。
[試験例1]
この試験は、ガスの種類別の洗浄力の高低を確認するために行った。
(試験装置)
図1〜図4、および後記実施例1に示す装置について、純粋にガスの影響だけを調べるために、洗浄ノズル8の絞り部29を取り外してガス供給部材51だけを残したものに改造し、使用した。
この改造したノズルを図1に示すとおりの配置にセッティングした。なお貯留タンクTの内部で、洗浄ノズル8から噴出した洗浄水が衝突する壁面に圧力センサー(東陽テクニカ社製、アンプ内蔵型、ピエゾトランスデューサー)を取り付けた。取り付け方式は、ダイヤフラムを壁面よりも引き込んだ取り付け方式(リセスマウント方式)であり、リセスポートは直径1mmであった。
【0044】
(試験方法)
溶解性ガス(洗浄水に溶解するガス)の代表例として蒸気を採用し、蒸気配管内の蒸気圧力を0.3MPa、0.2MPa、0.1MPaに変更しつつ、ガス供給部材51より蒸気を洗浄水に吹き込んだ。また、非溶解性ガス(洗浄水に溶解しないガス)の代表例として空気を採用し、同様に空気配管内の空気圧を0.3MPa、0.2MPa、0.1MPaに変更しつつ、ガス供給部材51より空気を洗浄水に吹き込んだ。
圧力センサーで洗浄水の衝突圧力を測定し、データロガーでデータ集積した。サンプリングは2マイクロ秒の間隔であった。一分間測定すると30000個のデータが取れたため、その算術平均を算出し、衝突圧力の変動幅を測定結果とした。
【0045】
(試験結果)
この試験の結果は、図9に示すとおりである。図9は、蒸気と空気とを吹き込んだ場合の洗浄力の大きさを示す図である。
図9において、縦軸は、洗浄水が洗浄面に当たった時の洗浄面の圧力変動の大きさ(KPa)を示している。洗浄水の気泡が洗浄面で破裂し、洗浄面に圧力変動が発生することから、図9の縦軸の数字が大きいほどキャビテーションの効果が大きく、洗浄力が増加していることを示している。
図9の結果から、空気を吹き込んだ場合のほうが圧力変動が大きく、洗浄力が大きい傾向にあるが、蒸気を吹き込んだ場合であっても一定の効果があることが判明した。
【0046】
[試験例2]
この試験は、蒸気を吹き込んだ場合の洗浄力への影響を確認するために行った。
(試験装置)
前記試験例1と同じく、図1〜図4、および後記実施例1に示す装置について、純粋にガスの影響だけを調べるために、洗浄ノズル8の絞り部29を取り外してガス供給部材51だけを残したものに改造し、使用した。改造したノズルは図1に示すとおりの配置にセッティングした。
【0047】
(試験方法)
事前に、貯留タンクTの内部で、洗浄ノズル8から噴出した洗浄水が衝突する壁面に黒の絵の具を、厚さ0.2mm、100mm×100mmに塗った。次いで洗浄ノズル8から洗浄水を噴出させたが、その際に、蒸気配管内の蒸気圧力を0.3MPa、0.2MPa、0.1MPaに変更しつつ、ガス供給部材51より蒸気を洗浄水に吹き込んだ。
洗浄後、絵の具が除去された状態をカメラで撮像し、その像に対してコンピューター画像処理で黒白の2値化処理を行い、洗浄された面積を算出した。算出した結果は、事前に絵の具を塗った面積を分母にし、洗浄された面積を分子にして百分率「Area ratio」(%)を割り出し、洗浄力を示す指標とした。
【0048】
(試験結果)
この試験の結果は、図10に示すとおりである。図10は、蒸気の吹き込み量と洗浄効果との関係を示す図である。
図10において、横軸は洗浄時間、縦軸は洗浄効果の「Area ratio」(%)である。この図10の結果から、蒸気を吹き込むほど洗浄効果が大きくなることが明らかである。
【0049】
なお、以上の試験例1および試験例2の結果を総合すると、試験例1の結果から、同じ圧力でガスを供給する場合であっても、非溶解性ガス(空気)を供給する方が被洗浄物の洗浄面において気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーを増加させ、高い洗浄力を得ることができるが、溶解性ガス(蒸気)の場合であっても、ガスを何ら供給しない場合に比して高い洗浄力を得ることができることが判明した。
【0050】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
本実施例による洗浄装置1は、全体の回路を閉回路とし、水中ポンプ4((株)川本ポンプ製QSQA−506−0.4SL)により最大流量0.2 m3/minにて水(水温14℃の水道水)を洗浄ノズル8から噴射し得るようになっている。また、洗浄ノズル8の長さは320mm、口径は20mm×20mmの矩形とし、噴出流量は差圧式ディジタル流量計7(長野計器(株)製、NV81−863−55803)にて表示されている。また、ガス供給部材51は、外径10mm×内径8mmの断面円形のパイプで、絞り部29よりも上流側に配置されている。更に、流量制御バルブ5を設けることで、60L/min〜180L/minの流量の制御可能とされている。
【0052】
次に、本実施形態の変形例について図5を用いて説明する。本実施形態の洗浄装置は、上述の第1の実施形態とガス供給部材51の設置位置においてのみ異なり、その他の構成は上述した第1の実施形態と同様であるため、ガス供給部材51の設置位置についてのみ詳細に説明し、他の部分の説明については第1の実施形態と同じ符号で表し詳細な説明を省略する。
【0053】
本変形例において、ガス供給部材51は、絞り部29の下流側であって、洗浄水においてキャビテーションを発生させ得る領域、すなわち洗浄水の水流の圧力がキャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持されている領域内に設置されている。
【0054】
この場合においても、ガス供給部材51から供給される気体を気泡核としてキャビテーションを発生させることができ、キャビテーション気泡の総量が高い洗浄水2を得て、洗浄水2の洗浄力を高めることができる。
【0055】
なお、本変形例において、ガス供給部材は、第2の絞り部21Aの平坦面25Aの下流側近傍に配置されていることが望ましい。ガス供給部材51を平坦面25Aの下流側に設置することによって、洗浄水2の水勢を抑制することを回避しつつキャビテーションを発生させることができる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態について図6から図8を用いて説明する。本実施形態の洗浄装置は、上述の第1の実施形態と洗浄ノズルにおいてのみ異なるため、洗浄ノズルについてのみ詳細に説明し、他の部分の説明については第1の実施形態と同じ符号で表し詳細な説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、洗浄ノズル30は、円筒形の筒体31と、該筒体31の長手方向の中間部、詳細には中央部の先端開口部31b寄りに配置された第1及び第2の絞り部材32A、32Bと、ガス供給部材51を備えて構成され、キャビテーション噴流を噴出できるようになっている。
【0058】
洗浄ノズル30の筒体31の基端部31aにはフランジ33が形成され、このフランジ33の中央部に基端開口部33aが形成されている。
筒体31の内部空間は洗浄水2を圧送する圧送通路46となっており、その先端は先端開口部31bとされている。
【0059】
図7に示すように、第1の絞り部材32Aは、平板状の楕円を長軸mに沿って分割し、半楕円形状の板面35、36と、長軸mを通り板面35に垂直に形成された肉厚面37と、半楕円形の円周を巡る周面38とに囲まれて形成されている。
【0060】
図6、図7に示すように、第1の絞り部材32Aは、基端部31a側を向く板面35が第1の傾斜面として圧送通路46の断面積を漸次狭めるように、傾きをもって配置され、かつ、筒体31の内部を基端部31aに向かって軸線L2方向に視たときに該筒体31の内部の半部を略塞ぐ傾斜角度をもって、筒体31の内壁に周面38を略当接させて配置されている。
【0061】
第2の絞り部材32Bは、第1の絞り部材32Aと同形状をなしており、先端開口部31bを向く板面39が第2の傾斜面として圧送通路46の断面積を先端開口部31bに向かって漸次拡げるように配置され、筒体31内の第1の絞り部材32Aの反対側の半部を略塞ぐ傾斜角度をもって筒体31の内壁に周面42を略当接させて配置されている。
【0062】
この際、図8に示すように、第1及び第2の傾斜面35、39は、筒体31を側面視する方向から見た場合、それぞれの傾斜面35、39の略中央部において互いに交叉し、該交叉する部分の上部(すなわち、第1の傾斜面35の中央部(交叉部)よりも先端開口部31b側の面上部と第2の傾斜面39の中央部(交叉部)よりも基端部31a側の面上部)において互いに連通する空間部43を形成し、板面36と板面40とは、空間部43と反対側において互いに連通する空間部44を形成している。
【0063】
ガス供給部材51は、圧送通路46内に挿入されて気体を供給する部材であり、第1及び第2の絞り部材32A,32Bよりも上流側に配置されている。また、ガス供給部材51の開口先端部は、ガスが筒体10の下流側に向かって圧送されるように下流側に向けられている。
【0064】
上記の構成の下に、第1及び第2の絞り部材32A、32Bは、筒体31の延在する方向の中央部先端寄りにおいて洗浄水2が流動する流路を絞る絞り部45を形成し、該絞り部45における圧送通路46は、前記空間部43、44を除いて略封鎖され、キャビテーション噴流を発生させ得るようになっている。
【0065】
次に、上記洗浄ノズル30に洗浄水2を圧送した際の作用について説明する。
水中ポンプ4及びガス供給装置50を駆動して、洗浄水2を配管6を経由して筒体31の基端部31aから洗浄ノズル30内に進入させるとともに圧送通路46内に気体を供給すると、図6、図8に示すように、洗浄水2は、第1の絞り部材32Aの板面35と第2の絞り部材32Bの板面40(板面39の裏面)のそれぞれの面上下部(矢印X、W方向)に流入し、これら板面35と板面40とは先端開口部31bに向かって圧送通路46の断面積を漸次狭めるように配置されているため、板面35、40のそれぞれの先端開口部31b側で洗浄水2の水圧が徐々に高まり、空間部43、44に到った時点で洗浄水2が互いに他方の絞り部材32B、32Aの側(矢印Y、Z方向)に流入する。
【0066】
この際、該他方の絞り部材32A、32Bの板面36、39は、筒体31の圧送通路46の断面積を漸次拡げるように傾斜しているため、空間部43、44内に進入した洗浄水2が第1及び第2の絞り部材32A、32Bから互いに他方の絞り部材32B、32Aに高速で一気に流れて低圧になり、キャビテーション気泡が発生する。
また、ガス供給部材51から供給された気体は、洗浄水2によって空間部43,44の第1の絞り部材32Aの側又は第2の絞り部材32Bの側(キャビテーション気泡が発生する領域)へ運ばれて(供給されて)、キャビテーション気泡が発生するときの気泡核になる。したがって、キャビテーション気泡が発生する領域に気体を供給しない場合と比較して、キャビテーション気泡の発生が促進され、発生するキャビテーション気泡の総量(体積)が増加する。よって、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーが増加し、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力が向上する。
【0067】
洗浄水2は、図6において矢印X、Y、W、Zで示すように、筒体31内の絞り部45において、板面35、40のそれぞれの先端開口部31b側に集水された後、他方の板面39、36側に急速に流動してキャビテーション気泡を発生させるとともに、進路を変え圧送通路46の上方又は下方に流路を広げる流れとなるため、絞り部45を通過した時点で二方向の流れにより作られた縦方向に旋回流となる。
【0068】
したがって、圧送通路46が絞り部45の通過後に拡がり、洗浄ノズル30の先端から噴射されても、水流の広がりが抑制されるので水流の速度低下が抑制される。よって、水流の圧力がキャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持される期間が長くなり、キャビテーション気泡をより大きく成長させることができる。これにより、キャビテーション気泡の総量を増加させ、又は被洗浄物の貯留タンクTの内壁面に到達するまでにキャビテーション気泡の量が減ることが抑制される。そしてその結果として、被洗浄物の貯留タンクTの内壁面に到達するキャビテーションの量を増すことができ、被洗浄物の貯留タンクTの内壁面における洗浄力を向上する。
【0069】
以上のように、本実施形態の洗浄ノズル30によれば、第1及び第2の絞り部材32A、32Bによりキャビテーション噴流を発生させることができるとともに、該噴流に螺旋状の回転力を加えることができるため、キャビテーション噴流がその流速を維持しキャビテーション噴流をより遠くまで噴射させることができる。また、キャビテーション気泡の発生を促進して、発生するキャビテーション気泡の総量(体積)が増加させることによって、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーを増加させ、衝撃力や熱エネルギーによる洗浄力が向上し、洗浄効果を飛躍的に向上させることが可能となるという効果が得られる。
【0070】
特に本実施の形態の洗浄ノズル30によれば、絞り部45により二方向の流れに基づくキャビテーション噴流を効果的に発生させることができるため、水中ポンプ4の圧送水量を高めることで、より洗浄能力の高い洗浄水2を生成することが可能となるという効果が得られる。また、キャビテーション気泡が発生する領域が空間部43,44と拡くなっているため、二方向の流れにおいてキャビテーションを発生させることができ、ガス供給部材51から供給された気体に基づいてより一層多くのキャビテーション気泡を発生させることによって、洗浄水2の洗浄能力を一層高めることができるという効果が得られる。
また、その結果、洗剤を用いずに被洗浄物を洗浄することができることとなるため、大量の水を使用することを回避し、用水費、水処理コスト、環境への負荷を大幅に抑制し、洗浄作業の効率も高めることが可能となる。
【0071】
本実施形態においても、ガス供給部材51を第1及び第2の絞り部材32A,32Bの下流側であって、洗浄水2においてキャビテーションを発生させ得る領域、すなわち水流の圧力がキャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持されている領域内に設置することにより、第1の実施形態の変形例の洗浄ノズル8と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、洗浄ノズル8内に、ガスとして気体を供給したが、気体に代えて蒸気を供給してもよい。図10に示すように、同じ圧力で供給する場合であっても気体を供給する方が被洗浄物の洗浄面において気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や熱エネルギーを増加させ、高い洗浄力を得ることができるが、蒸気の場合であっても、ガスを何ら供給しない場合に比して高い洗浄力を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 洗浄装置
2 洗浄水
3 洗浄水槽
4 水中ポンプ(ポンプ)
6 配管
10a 基端部
21A 第1の絞り部材
21B 第2の絞り部材
25A 第1の平坦面
25B 第2の平坦面
26A 第1の傾斜面
26B 第2の傾斜面
28 空間部(交叉する部分の上方)
32A 第1の絞り部材
32B 第2の絞り部材
35、40 第1の傾斜面
36、39 第2の傾斜面
43、44 空間部
51 ガス供給部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が洗浄水の圧送通路とされ、該圧送通路内に通路絞り部を設けて圧送される洗浄水にキャビテーション気泡を発生させて先端開口部から噴出させる洗浄ノズルであって、
前記圧送通路内には、前記キャビテーション気泡が発生する領域においてガスを供給するガス供給部材が備えられていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄ノズルであって、
前記通路絞り部は、該圧送通路の軸線方向に直交する方向に互いに隣接配置された第1及び第2の絞り部材を備え、
前記第1の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次狭める第1の傾斜面を有し、
前記第2の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次拡げる第2の傾斜面を有し、
これら第1及び第2の絞り部材は、これらをその側方から視たときに、前記第1及び第2の傾斜面がこれら各傾斜面の中間部で交叉し、
該第1及び第2の傾斜面上の前記圧送通路が前記交叉する部分の上方において互いに連通していることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項3】
請求項2に記載の洗浄ノズルにおいて、
前記第1の絞り部材は、前記第1の傾斜面の前記先端開口部側の端部に隣接して、前記先端開口部側を向く第1の平坦面を備え、
前記第2の絞り部材は、前記第2の傾斜面の前記基端部側の端部に隣接して、前記基端部側を向く第2の平坦面を備えていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項4】
請求項2に記載の洗浄ノズルにおいて、
前記第1および第2の絞り部材は、それぞれ板状に形成されるとともに、これら各々の板面が前記第1および第2の傾斜面とされていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄ノズルと、
洗浄水を貯留する洗浄水槽と、
該洗浄水槽内の洗浄水を前記洗浄ノズルに圧送するポンプおよび配管と、
前記洗浄ノズルへの洗浄水の圧送を調整する調整機構とを備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
洗浄ノズル内に洗浄水を圧送し、
該洗浄ノズルから洗浄水を被洗浄体に噴射させて該被洗浄体を洗浄する洗浄方法であって、
前記洗浄水内にキャビテーション気泡を発生させるとともにこの洗浄水を該ノズルの軸線周りに旋回させる工程と、
前記キャビテーション気泡が発生する領域においてガスを供給する工程とを備え、
前記キャビテーション気泡を有する旋回流として前記被洗浄体に噴射させることを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−213708(P2012−213708A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80445(P2011−80445)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(592081427)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】