説明

洗浄ノズル及びこれを用いた洗浄装置

【課題】被洗浄物の洗浄に好適な洗浄ノズル及び洗浄装置を提供する。
【解決手段】内部が洗浄水の圧送通路20とされ、圧送通路20の基端部10a側から圧送する洗浄水にキャビテーション気泡を発生させて先端開口部10bから噴出させる洗浄ノズル8であって、圧送通路内には、軸線方向に直交する方向に隣接配置された第1及び第2の絞り部材21A、21Bを備え、第1の絞り部材21Aは、先端開口部側へ向けて圧送通路の断面積を漸次狭める第1の傾斜面26Aを有し、第2の絞り部材21Bは、先端開口部側へ向けて圧送通路の断面積を漸次拡げる第2の傾斜面26Bを有し、第1、第2の絞り部材は、第1、第2の傾斜面26A、26Bがその中間部で交叉し、圧送通路が前記交叉する部分の上方において連通し、前記中間部の下流側には、洗浄水の圧送方向に突出し先端に向かって漸次縮径した外形を有する突起100が備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管やタンクの内外壁面等、機械その他の物の洗浄に用いることのできる洗浄ノズル及びこれを用いた洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造業において、飲食料、特に乳製品等を製造する装置は、飲食料を貯蔵させるタンクや工程中の配管内に、油成分、蛋白質やカルシウム等の塩類を含んだ残留物が付着することから、定期的に洗浄し、タンク内や配管内を清潔に維持して飲食品の品質を確保することが必要とされている。
これら配管等の内部の洗浄においては、飲食品の各種成分を分解する洗浄剤を順次投入して洗浄するとともに、各洗浄剤を投入する前後に、その都度温水で配管等内をリンスする方法が採用されているが、洗浄に大量の水を使用することによる用水費、水処理コスト、環境への負荷、及び洗浄に長時間掛かるという問題から、効率的な被洗浄物の洗浄として、従来より、例えばキャビテーション噴流を利用して被洗浄物を洗浄する例えば下記特許文献1に開示された装置が提案されている。
【0003】
この洗浄装置のノズルは、水を低圧で噴出する低圧ノズルの中心部に水を高圧で噴出する高圧ノズルを設け、これら低圧ノズルと高圧ノズルのそれぞれから水を噴出することによりキャビテーション噴流を噴射させる構成となっている。
このノズルによると、高圧ノズルの先端から噴出したキャビテーション噴流を被洗浄面に至るまで低圧ノズルから噴出させた水で包み込むようになっており、キャビテーション噴流の流速が衰えてキャビテーション気泡が消滅するのを防ぐとともに、被洗浄面においてキャビテーション噴流を集中させ、圧潰衝撃力による洗浄効果を増大させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−62492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の洗浄装置のノズルでは、水を低圧で噴出する低圧ノズルの中心部に水を高圧で噴出する高圧ノズルを設け、これら低圧ノズルと高圧ノズルのそれぞれから水を噴出することによりキャビテーションを発生させているため、キャビテーションの発生に限界があり、洗浄効果を飛躍的に向上させ得るものではなかった。
【0006】
また、前記洗浄装置のノズルでは、キャビテーション噴流を被洗浄物に噴射する際に、該キャビテーション噴流を包み込み、かつ被洗浄面において噴流が拡散しないように一定の範囲に閉じ込められるだけの水圧を発生させる大量の水が必要となり、洗浄コストが嵩むとともに、環境への負荷が大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の手段を提供している。
すなわち、本願の請求項1に係る洗浄ノズルは、内部が洗浄水の圧送通路とされ、該圧送通路の基端部側から圧送する洗浄水にキャビテーション気泡を発生させて先端開口部から噴出させる洗浄ノズルであって、前記圧送通路内には、該圧送通路の軸線方向に直交する方向に互いに隣接配置された第1及び第2の絞り部材を備え、前記第1の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次狭める第1の傾斜面を有し、前記第2の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次拡げる第2の傾斜面を有し、これら第1及び第2の絞り部材は、これらをその側方から視たときに、前記第1及び第2の傾斜面がこれら各傾斜面の中間部で交叉し、該第1及び第2の傾斜面上の前記圧送通路が前記交叉する部分の上方において互いに連通し、前記中間部の下流側には、洗浄水の圧送方向に突出するとともに先端に向かって漸次縮径した外形を有する突起が備えられていることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項2に係る洗浄ノズルは、請求項1に記載の洗浄ノズルにおいて、前記第1の絞り部材は、前記第1の傾斜面の前記先端開口部側の端部に隣接して、前記先端開口部側を向く第1の平坦面を備え、前記第2の絞り部材は、前記第2の傾斜面の前記基端部側の端部に隣接して、前記基端部側を向く第2の平坦面を備えていることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項3に係る洗浄ノズルは、請求項1に記載の洗浄ノズルにおいて、前記第1および第2の絞り部材は、それぞれ板状に形成されるとともに、これら各々の板面が前記第1および第2の傾斜面とされていることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項4に係る洗浄装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄ノズルと、洗浄水を貯留する洗浄水槽と、該洗浄水槽内の洗浄水を前記洗浄ノズルに圧送するポンプおよび配管と、前記洗浄ノズルへの洗浄水の圧送を調整する調整機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る洗浄ノズル、これを用いた洗浄装置、および洗浄方法によれば、上記した解決手段によって下記の効果を奏する。
すなわち、本願の請求項1に係る洗浄ノズルによれば、第1及び第2の絞り部材によりキャビテーション気泡を発生させるとともに、洗浄水を旋回流とすることができるため、洗浄水の流速を維持するとともに洗浄水を低圧に維持することにより、キャビテーション気泡をより遠くまで噴射させることができる。また、洗浄水の流速を維持して該洗浄水を低圧に維持することにより、キャビテーション気泡の成長する低圧以下に維持される期間が長くなり、キャビテーション気泡をより大きく成長させることができる。これにより、キャビテーション気泡の総量を増やし、又は被洗浄物の内壁面に到達するまでにキャビテーション気泡の量が減ることを抑制することができ、被洗浄物の壁面における洗浄力を向上させることができる。
また、本願の請求項1に係る洗浄ノズルは、先端に向かって外形が漸次縮径する突起を有しているため、第1および第2の絞り部材によって旋回した洗浄水の流速を高めて洗浄水の圧力をさらに低下させ、この圧力が飽和蒸気圧未満に達することにより旋回流にキャビテーション気泡を発生させる。すなわち、本発明の洗浄ノズルは、第1及び第2の絞り部材と突起とによって、キャビテーション気泡の発生量を増加させることができる。
また、第1及び第2の絞り部材及び突起において発生したキャビテーション気泡は、突起の先端よりも下流の旋回流にトラップされる。一旦発生した渦は消滅しにくいので、突起の先端よりも下流の旋回流に含まれるキャビテーション気泡は消滅し難くなり、キャビテーション気泡が発生してから被洗浄物に到達するまでの間に消滅することが抑制され、結果として、被洗浄物に到達するキャビテーション気泡の総量を増加させることができる。
したがって、本願発明の洗浄ノズルによれば、被洗浄物に到達させるキャビテーション気泡の発生を増加させることにより、被洗浄物においてキャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や圧力変動が増加し、衝撃力や圧力変動による洗浄力が向上するという効果を奏する。
また、第1及び第2の絞り部材及び突起によりキャビテーション気泡を効果的に発生させ洗浄力を高められるため、洗剤の使用を抑えられることで大量の水を使用することを回避し、用水費、水処理コスト、環境への負荷を大幅に抑制することができるという効果を奏する。
【0012】
また、請求項2に係る洗浄ノズルによれば、第2の絞り部材の基端部側を向く第2の平坦面が、第2の絞り部材側へ流動した洗浄水を第1の絞り部材の第1の傾斜面に集水させるため、第1の絞り部材を流動する洗浄水の水圧を容易に高めることができ、キャビテーション噴流をより効率よく発生させることができるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項3に係る洗浄ノズルによれば、第1及び第2の絞り部材が板状に形成され、これら第1及び第2の絞り部材を側面視した際に各々の板面が互いにそれぞれの中間部で交叉するよう配置されているため、洗浄水が第1の絞り部材から第2の絞り部材に流れる際に生じるキャビテーション気泡と、洗浄水が第2の絞り部材から第1の絞り部材に流れるキャビテーション気泡とを発生させるとともに、2つの旋回流を発生させることができるため、強力でかつキャビテーション気泡の多い洗浄水を発生させることができるという効果を奏する。
【0014】
また、請求項4に係る洗浄装置によれば、洗浄ノズルの第1及び第2の絞り部材及び突起によりキャビテーション気泡の発生が促進されるため、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や圧力変動が増加し、衝撃力や圧力変動による洗浄力が向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを内部を透視させて示した斜視図である。
【図3】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを示した図であって、(a)は、該洗浄ノズルを示した平面図であり、(b)は、洗浄ノズルを一部断面視して示した側面図であり、(c)は、図(b)を洗浄ノズルの先端から軸線方向に視た正面図である。
【図4】は、本発明の第1の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを構成する第1又は第2の絞り部材を示した斜視図である。
【図5】は、本発明の第2の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを内部を透視して示した斜視図である。
【図6】は、本発明の第2の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを構成する第1又は第2の絞り部材を示した斜視図である。
【図7】は、本発明の第2の実施形態である洗浄装置の洗浄ノズルを一部断面視して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る洗浄装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明を適用した洗浄装置は、洗浄を要するものであれば機械その他の物品について広く適用可能であるが、本実施形態においては、液体又は半液体の飲料品等を流動させるパイプの内壁面を洗浄する洗浄装置を一例として説明する。
【0017】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態を示したものであり、図1は、洗浄装置1の基本的な構成を模式的に示したもので、図2、図3はこの洗浄装置に用いられる洗浄ノズルを示した図である。
【0018】
図1に示すように、洗浄装置1は、飲料品等を流動させるパイプTの内壁面を洗浄する装置であり、原水等からなる洗浄水2を貯留した洗浄水槽3、水中ポンプ4、流量の調整バルブ5、配管6、流量計7、洗浄ノズル8、及び分岐管9を備えている。
【0019】
水中ポンプ4は、モータにより吸排水可能とされたものが用いられ、洗浄水槽3内に配置され、所定の圧で洗浄水2を吸い上げて配管6に洗浄水2を送水するようになっている。
【0020】
配管6は、フレキシブル管により構成されており、水中ポンプ4から洗浄ノズル8へ洗浄水2を流動させるようになっている。
配管6の水中ポンプ4の近傍には、調整バルブ5が具備された分岐管9が設けられており、調整バルブ5によって分岐管9を開口するとその開口面積に応じて、分岐管9に洗浄水2が流動して再び洗浄水槽3に洗浄水2が回帰するようになっている。かくして、調整バルブ5及び分岐管9は、配管6を流動する洗浄水2の量を調整する調整機構を構成している。また、配管6に送水される洗浄水2の流量は流量計7により確認できるようになっている。
【0021】
図2に示すように、洗浄ノズル8は、細長の筒体10と、該筒体10の長手方向の中間部、詳細には中央部先端寄りに配置された第1及び第2の絞り部材21A、21Bと、第1及び第2の絞り部材21A,21Bに設けられた突起100を備えて構成され、キャビテーション気泡を発生させるようになっている。
【0022】
洗浄ノズル8の筒体10は、断面略U字形状に形成された本体10Aと、この本体10Aの上面を塞ぐ蓋体10Bとから構成されている。本体10Aは、底壁部10pと、該底壁部10pの側縁から立ち上がり、上端部に図3に示す螺子穴11、11、・・が形成された側壁部10q、10qとからなっている。
蓋体10Bは、側壁部10q、10q間に跨って配され、これら側壁部10q、10qに螺子留めにより固定される。
本体10Aの基端部10aにはフランジ12が形成され、このフランジ12の中央部に基端開口部12aが形成されている。本体10Aと蓋体10Bとの間に形成された空間は洗浄水2を圧送する圧送通路20となっており、その先端は先端開口部10bとされている。
【0023】
図3(a)に示すように、筒体10の長手方向の中間部には、該筒体10内においてキャビテーション気泡を発生させる第1及び第2の絞り部材21A、21Bが設置可能なように、筒体10の底壁部10pの位置に、螺子等の固定具を底壁部10pの下方から水密に挿通可能な貫通孔22が形成されている。
【0024】
図4に示すように、第1の絞り部材21Aは矩形の底面24と、該底面24の短手方向の一方の縁部24aから垂直に立ち上がる第1の平坦面25Aと、該第1の平坦面25Aの上端25aから底面24の短手方向の他方の縁部24bに向かって傾斜してなる第1の傾斜面26Aと、底面24の長手方向の縁部24c、24dから垂直に立ち上がる側面27、27とにより囲まれてなる三角柱に形成された部材である。
【0025】
図2及び図3(b),(c)に示すように、第1の絞り部材21Aは、その第1の傾斜面26Aが圧送通路20の断面積を漸次狭めるように筒体10の基端部10a側を向くとともに該第1の傾斜面26Aに連接する第1の平坦面25Aが先端開口部10b側を向くように配置されており、かつ、筒体10の内部を基端部10aに向かって軸線L方向に視たときに該筒体10の内部の左側半部を占めるように筒体10内の一方の側壁部10q側に寄せて配置されている。
【0026】
第2の絞り部材21Bは、第1の絞り部材21Aと同形状であり、第2の平坦面25Bが圧送通路20を塞いだ後、先端開口部10bに向かって該圧送通路20の断面積を漸次拡げるように第2の傾斜面26Bが先端開口部10b側を向き、筒体10の内部の前記左半部に隣接する右半部を占めるように、第1の絞り部材21Aに隣接配置されている。
【0027】
上記の構成において、第1及び第2の絞り部材21A、21Bは、筒体10の延在する方向の略中央部において洗浄水2が流動する流路を絞る絞り部29を形成し、図3(a)に示すように、第1の傾斜面26Aの下端縁24b上方の領域は、絞り部29における洗浄水2の導入口29Eとなり、同図(b)に示すように、第1及び第2の傾斜面26A、26Bは、筒体10を側面視する方向から見た場合、それぞれの傾斜面26A、26Bの略中央部において互いに交叉し、該交叉する部分の上部(すなわち第1の傾斜面26Aの前記交叉部よりも先端開口部10b側の面上部と、第2の傾斜面26Bの前記交叉部よりも基端部10a側の面上部)において互いに連通する空間部28を形成し、更に同図(a)に示すように、第2の傾斜面26Bの下端縁24bの上方空間は絞り部29における洗浄水2の導出口29Fとなっている。
図3(b)、(c)に示すように、圧送通路20における絞り部29は、前記空間部28を除いて略封鎖され、キャビテーション気泡を発生させ得るようになっている。
【0028】
図2,図3(c)に示すように、第1の絞り部材21A及び第2の絞り部材21Bには、前記交叉部近傍から先端開口部10bに向けて洗浄水の旋回流の中心軸に略沿って突出する突起100が設けられている。
突起100の外形は、基端から先端に向かって漸次縮径するように先端が先鋭な円筒形状に形成されているとともに、基端部の半部が第1の絞り部材21Aの内側の側面27及び第1の平坦面25Aに沿って嵌着する切欠部となっている。
【0029】
次に、上記洗浄装置1の使用方法及びキャビテーション気泡の発生の作用について説明する。
まず、図1に示すように、洗浄水2を満たした洗浄水槽3内に水中ポンプ4を配置し、洗浄ノズル8を洗浄したいパイプT内に挿入する。
水中ポンプ4を駆動すると、洗浄水2は、配管6を経由して筒体10の基端部10aから洗浄ノズル8内に進入する。
【0030】
図2、図3(b)示すように、筒体10内に進入した洗浄水2は、第2の絞り部材21Bの第2の平坦面25Bに流動を阻まれるため第1の絞り部材21Aの第1の傾斜面26A側に流入し、かつ、該第1の傾斜面26Aが筒体10の基端部10aから先端開口部10b方向に圧送通路20の断面積を漸次狭めるように配置されているため、第1の傾斜面26A上で洗浄水2の水圧が徐々に高まり、第1の傾斜面26Aと第2の傾斜面26Bとの交叉部よりも上部、すなわち空間部28に到った時点で洗浄水2が第2の傾斜面26B側に流入する。
【0031】
この際、第2の傾斜面26Bが筒体10の圧送通路20の断面積を漸次拡げるように配置されているため、洗浄水2が空間部28の第2の絞り部材21Bの側に高速で一気に流れて低圧になり、キャビテーション気泡が発生する。
【0032】
キャビテーション気泡を含んだ洗浄水2は、図2において矢印X、Yで示すように、筒体10内の絞り部29において、第1の傾斜面26Aの上部に集水された後、第2の傾斜面26B側に進路を変えるとともに、第2の絞り部材21Bの第2の傾斜面26Bにより圧送通路20を漸次下方に拡げる流れとなるため、第2の傾斜面26Bを通過した時点で旋回流となる。
【0033】
この旋回流は、第2の傾斜面26Bの交叉部付近から先端開口部10bに向かって突出する突起100の外周面に沿って流れる。突起100は、先端に向かって外径が漸次小さくなっているので、上記の旋回流は、圧送通路20の下流に向かって、回転半径が漸次小さくなり流速が上昇する。そして、旋回する洗浄水の流速が上昇することによって、圧力が低下し、該圧力が飽和蒸気圧未満になった際に、旋回流にキャビテーション気泡が発生する。すなわち、洗浄ノズル8は、突起100が設けられていることによって、キャビテーション気泡の発生量を増加させることができる。
【0034】
また、第1及び第2の絞り部材21A,21B及び突起100による旋回流において生じたキャビテーション気泡は、突起100の先端よりも下流の旋回流にトラップされる。一旦発生した渦は消滅し難いので、突起100の先端よりも下流の旋回流に含まれるキャビテーション気泡は消滅が抑制される。すなわち、本実施形態の洗浄ノズルは、突起100が設けられていることによって、キャビテーション気泡が発生してから被洗浄物のパイプTの内壁面T1に到達するまでの間にキャビテーション気泡が消滅することが抑制され、結果として、パイプTの内壁面T1に到達するキャビテーション気泡の総量を増加させる。
したがって、パイプTの内壁面T1に到達するキャビテーションの量を増すことができ、パイプTの内壁面T1の洗浄力を向上する。
【0035】
以上のように、本発明の洗浄装置1によれば、第1及び第2の絞り部材21A、21B及び突起100により、キャビテーション気泡を発生させることができるとともに、洗浄水を旋回流にするため、洗浄水の流速を維持しキャビテーション気泡をより遠くまで噴射させることができる。また、突起100により発生するキャビテーション気泡の総量(体積)を増加させることによって、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や圧力変動が増加し、衝撃力や圧力変動による洗浄力を向上させて、洗浄効果を飛躍的に向上させることが可能となるという効果が得られる。
【0036】
また、その結果、洗剤を用いずにパイプTの内壁面T1を効率よく洗浄することができることとなるため、大量の水を使用することを回避し、用水費、水処理コスト、環境への負荷を大幅に抑制し、洗浄作業の効率も高めることが可能となる。
【0037】
また、第2の絞り部材21Bの基端部10a側を向く第2の平坦面25Bが、洗浄水2の第2の絞り部材21B側へ流動した洗浄水を第1の絞り部材21Aの第1の傾斜面26Aに集水させるため、第1の絞り部材21Aを流動する洗浄水2の水圧を容易に高めることができ、キャビテーション気泡をより効率よく発生させることができるという効果を奏する。
【0038】
本実施形態において、突起100は、第1の絞り部材21Aの外形に沿う切欠部を有しているが、かかる切欠部を突起100に設ける代わりに、突起100の基端部を完全な円筒形状とし、第1の絞り部材21Aの内側の側面27側において突起100を嵌合させる切欠部を設けたものであってもよい。
【0039】
なお、本実施形態において、図3(a)に示すように、第2の平坦面25Bは、筒体10を平面(蓋体10B側)から視た際に、側面27と直交するように形成されているため、筒体10内に配置された際に軸線Lに直交する面とされているが、かかる形状に代えて、筒体10内に配置された際に絞り部29における洗浄水2の導入口29Eに向かって漸次流路を狭める傾斜面(すなわち側面27と鋭角に連設する面)251となるように形成されたものであってもよい。
かかる形状とすることにより、水中ポンプ4から圧送された洗浄水2の水勢を第2の平坦面25Bによって減衰させることを抑制して洗浄水2の水勢を極力保った状態で円滑に第1の絞り部材21A側に流動させることが可能となって、キャビテーション気泡を効率よく生成することが可能となるという効果が得られる。
【0040】
また、図3(b)に示すように、第1及び第2の絞り部材21A、21Bのそれぞれの傾斜面26A、26Bの上端25aと筒体10の蓋体10Bの内壁面との間には略隙間がないように形成されているが、絞り部29の圧力損失が大きすぎるような場合には、第1及び第2の絞り部材21A、21Bは、筒体10の蓋体10Bの内壁面との間にわずかな隙間が形成されるような寸法としたものであってもよい。要は、絞り部29においてキャビテーション気泡を発生させるための水圧が第1の絞り部材21Aに掛けられるものであればよい。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態について図5から図7を用いて説明する。本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と洗浄ノズルにおいて構成が相違するものであるため、主として洗浄ノズルの構成について説明することとし、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0042】
図5に示すように、洗浄ノズル30は、円筒形の筒体31と、該筒体31の長手方向の中間部、詳細には中央部の先端開口部31b寄りに配置された第1及び第2の絞り部材32A、32Bとを備えて構成され、キャビテーション気泡を発生するようになっている。
【0043】
洗浄ノズル30の筒体31の基端部31aにはフランジ33が設けられ、このフランジ33の中央部に基端開口部33aが形成されている。
筒体31の内部空間は洗浄水2を圧送する圧送通路46となっており、その先端は先端開口部31bとされている。
【0044】
図6に示すように、第1の絞り部材32Aは、楕円形状の平板を長軸mに沿って分割し、半楕円形状の板面35、36と、長軸mを通り板面35に垂直に形成された肉厚面37と、半楕円形の円周を巡る周面38とに囲まれて形成されている。
【0045】
図5、図7に示すように、第1の絞り部材32Aは、基端部31a側を向く板面35が第1の傾斜面として圧送通路46の断面積を先端開口部31bに向かって漸次狭めるように、傾きをもって配置され、かつ、筒体31の内部を基端部31aに向かって軸線L2方向に視たときに該筒体31の内部の半部を略塞ぐ傾斜角度をもって、筒体31の内壁に周面38を略当接させて配置されている。
この配置の下に、第1の絞り部材32Aの板面35の裏面となっている板面36は、第2の傾斜面として圧送通路46の断面積を先端開口部31bに向かって漸次拡げている。
【0046】
第2の絞り部材32Bは、第1の絞り部材32Aと同形状であり、先端開口部31bを向く板面39が第2の傾斜面として圧送通路46の断面積を先端開口部31bに向かって漸次拡げるように配置され、筒体31内の第1の絞り部材32Aの反対側の半部を略塞ぐ傾斜角度をもって筒体31の内壁に周面42を略当接させて配置されている。
この配置の下に、第2の絞り部材32Bの板面39の裏面となっている板面40は、第1の傾斜面として圧送通路46の断面積を先端開口部31bに向かって漸次狭めている。
【0047】
この際、図7に示すように、第1及び第2の傾斜面35、39は、筒体31を側面視する方向から見た場合、それぞれの傾斜面35、39の略中央部において互いに交叉し、該交叉する部分の上部(すなわち、第1の傾斜面35の中央部(交叉部)よりも先端開口部31b側の面上部と第2の傾斜面39の中央部(交叉部)よりも基端部31a側の面上部)において互いに連通する空間部43を形成し、第1の傾斜面40と第2の傾斜面36とは、空間部43と反対側において互いに連通する空間部44を形成している。
この第1の絞り部材32Aと第2の絞り部材32Bとの交差角度、すなわち板面35と板面39との成す角度は20度〜45度であることが好ましく、20度〜30度であることが更に好ましい。
【0048】
上記の構成の下に、第1及び第2の絞り部材32A、32Bは、筒体31の延在する方向の中央部先端寄りにおいて洗浄水が流動する流路を絞る絞り部45を形成し、該絞り部45における圧送通路46は、前記空間部43、44を除いて略封鎖され、キャビテーション気泡を発生させ得るようになっている。
【0049】
第1の絞り部材32A及び第2の絞り部材32Bには、これらの交叉部から先端開口部31bに向けて洗浄水の旋回流の中心軸に略沿って突出する突起100が設けられている。
突起100の形状は、第1の実施形態の突起100と同様に、基端から先端に向かって漸次縮径するように形成されているとともに、基端部の半部が第1の絞り部材32Aの肉厚面37及び板面36に嵌着する切欠部となっている。
【0050】
次に、上記洗浄ノズル30に洗浄水2を圧送した際の作用について説明する。
水中ポンプ4を駆動して、洗浄水2を配管6を経由して筒体31の基端部31aから洗浄ノズル30内に進入させると、図5、図7に示すように、洗浄水2は、第1の絞り部材32Aの板面35と第2の絞り部材32Bの板面40(板面39の裏面)のそれぞれの面上下部(矢印X、W方向)に流入し、これら板面35と板面40とは先端開口部31bに向かって圧送通路46の断面積を漸次狭めるように配置されているため、板面35、40のそれぞれの先端開口部31b側で洗浄水2の水圧が徐々に高まり、空間部43、44に到った時点で洗浄水2が互いに他方の絞り部材32B、32Aの側(矢印Y、Z方向)に流入する。
【0051】
この際、他方の絞り部材32A、32Bの板面36、39は、筒体31の圧送通路46の断面積を漸次拡げるように傾斜しているため、空間部43、44内に進入した洗浄水2が第1及び第2の絞り部材32A、32Bから互いに他方の絞り部材32B、32Aに高速で一気に流れて低圧になり、キャビテーション気泡が発生する。
【0052】
また、洗浄水2は、図5において矢印X、Y、W、Zで示すように、筒体31内の絞り部45において、板面35、40のそれぞれの先端開口部31b側に集水された後、他方の板面39、36側に進路を変え圧送通路46の上方又は下方に流路を広げる流れとなるため、絞り部45を通過した時点で二方向の流れにより作られた旋回流となる。
【0053】
この旋回流は、第1の傾斜面35と第2の傾斜面39との交叉部付近から先端開口部31bに向かって突出する突起100の外周面に沿って流れる。突起100は、先端に向かって外径が漸次小さくなっているので、上記の旋回流は、圧送通路46の下流に向かって、回転半径が漸次小さくなり流速が上昇する。そして、旋回する洗浄水2の流速が上昇することによって、圧力が低下し、該圧力が飽和蒸気圧未満になった際に、旋回流にキャビテーション気泡が発生する。すなわち、洗浄ノズル30は、突起100が設けられていることによって、キャビテーション気泡の発生量を更に増すことができる。
【0054】
また、第1及び第2の絞り部材32A,32B及び突起100による旋回流において生じたキャビテーション気泡は、突起100の先端よりも下流の旋回流にトラップされる。一旦発生した渦は消滅し難いので、突起100の先端よりも下流の旋回流に含まれるキャビテーション気泡は、消滅が抑制される。すなわち、本実施形態の洗浄ノズルは、突起100が設けられていることによって、キャビテーション気泡が発生してからパイプTの内壁面T1に到達するまでの間に消滅することが抑制され、結果として、パイプTの内壁面T1に到達するキャビテーション気泡の総量を増加させる。
【0055】
したがって、被洗浄物のパイプTの内壁面T1に到達するキャビテーション気泡の総量を増加することができ、被洗浄物のパイプTの内壁面T1における洗浄力を向上する。
【0056】
以上のように、本実施形態の洗浄ノズル30によれば、第1及び第2の絞り部材32A、32Bによりキャビテーション気泡を発生させることができるとともに、洗浄水を旋回させるため、キャビテーション気泡を含んだ洗浄水がその流速を維持しキャビテーション気泡をより遠くまで噴射させることができる。また、突起100により、キャビテーション気泡を更に発生させて、発生するキャビテーション気泡の総量(体積)が増加させることによって、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃力や圧力変動が増加し、衝撃力や圧力変動による洗浄力が向上し、洗浄効果を飛躍的に向上させることが可能となるという効果が得られる。
【0057】
特に本実施の形態の洗浄ノズル30によれば、絞り部45により二方向の旋回流によってキャビテーション気泡を効果的に発生させることができるため、水中ポンプ4の圧送水量を高めることで、より洗浄能力の高い洗浄水を生成することが可能となるという効果が得られる。また、この2方向の旋回流により、渦がより強力なものとなるため突起100においてより一層多くのキャビテーション気泡を発生させるとともに、流速の衰えが抑えられるためキャビテーション気泡の消滅を抑制することができる。したがって、パイプTの内壁面T1に到達するキャビテーション気泡の総量を増加させることにより、気泡が崩壊する際のエネルギーによって洗浄水2の洗浄能力を一層高めることができるという効果が得られる。
また、その結果、洗剤を用いずに被洗浄物を洗浄することができることとなるため、大量の水を使用することを回避し、用水費、水処理コスト、環境への負荷を大幅に抑制し、洗浄作業の効率も高めることが可能となる。
【0058】
本実施形態において、突起100は、第1の絞り部材32Aの外形に沿う切欠部を有しているが、かかる切欠部を突起100に設ける代わりに、突起100の基端部を完全な円筒形状とし、第1の絞り部材32Aの肉厚面37側において突起100を嵌合させる切欠部を設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 洗浄装置
2 洗浄水
3 洗浄水槽
4 水中ポンプ(ポンプ)
6 配管
10a 基端部
21A 第1の絞り部材
21B 第2の絞り部材
25A 第1の平坦面
25B 第2の平坦面
26A 第1の傾斜面
26B 第2の傾斜面
28 空間部(交叉する部分の上方)
32A 第1の絞り部材
32B 第2の絞り部材
35、40 第1の傾斜面
36、39 第2の傾斜面
43、44 空間部
100 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が洗浄水の圧送通路とされ、該圧送通路の基端部側から圧送する洗浄水にキャビテーション気泡を発生させて先端開口部から噴出させる洗浄ノズルであって、
前記圧送通路内には、該圧送通路の軸線方向に直交する方向に互いに隣接配置された第1及び第2の絞り部材を備え、
前記第1の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次狭める第1の傾斜面を有し、
前記第2の絞り部材は、前記基端部側から前記先端開口部側へ向けて前記圧送通路の断面積を漸次拡げる第2の傾斜面を有し、
これら第1及び第2の絞り部材は、これらをその側方から視たときに、前記第1及び第2の傾斜面がこれら各傾斜面の中間部で交叉し、
該第1及び第2の傾斜面上の前記圧送通路が前記交叉する部分の上方において互いに連通し、
前記中間部の下流側には、洗浄水の圧送方向に突出するとともに先端に向かって漸次縮径した外形を有する突起が備えられていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄ノズルにおいて、
前記第1の絞り部材は、前記第1の傾斜面の前記先端開口部側の端部に隣接して、前記先端開口部側を向く第1の平坦面を備え、
前記第2の絞り部材は、前記第2の傾斜面の前記基端部側の端部に隣接して、前記基端部側を向く第2の平坦面を備えていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項3】
請求項1に記載の洗浄ノズルにおいて、
前記第1および第2の絞り部材は、それぞれ板状に形成されるとともに、これら各々の板面が前記第1および第2の傾斜面とされていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄ノズルと、
洗浄水を貯留する洗浄水槽と、
該洗浄水槽内の洗浄水を前記洗浄ノズルに圧送するポンプおよび配管と、
前記洗浄ノズルへの洗浄水の圧送を調整する調整機構とを備えたことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22538(P2013−22538A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161279(P2011−161279)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(592081427)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】