説明

洗浄具及び基板洗浄装置

【課題】 被洗浄基板に接触するスポンジ等の洗浄部材の装着が容易で、被洗浄基板の縁部まで洗浄範囲とすることができ、洗浄部材の押付力の変化によって被洗浄基板との接触面積が変化しにくく、被洗浄基板の膜面にダメージを与えることがない洗浄具及び該洗浄具を用いた基板洗浄装置を提供すること。
【解決手段】 基板洗浄装置に用いる洗浄具であって、洗浄具は被洗浄基板の洗浄面に接触させる洗浄部材1と該洗浄部材1を保持する洗浄部材保持機構2とを具備し、洗浄部材保持機構2は下方部が複数のチャック爪4aに分割された挟持部材(スリーブ)4と、該挟持部材の外周に嵌入されるリング部材5を具備し、該挟持部材の複数のチャック爪4aで形成された挿入穴に該洗浄部材1の端部を挿入し、該リング部材5を該挟持部材の外周に嵌入することにより、該複数のチャック爪4aで該洗浄部材1を締め付け固定する構造、即ちコレットチャック構造とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体ウエハ等の被洗浄基板を水平姿勢に保持して回転させながら該被洗浄基板上に洗浄液を供給しながら洗浄具で洗浄する洗浄装置に用いる洗浄具及び該洗浄具を用いた基板洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来この種の洗浄具としては図1に示す構造のものがあった。洗浄具は図1に示すように、洗浄部材である円板状のスポンジ部材101と、該スポンジ部材101を保持する洗浄部材保持機構102とからなる。洗浄部材保持機構102は下方が円錐台状で上端部に鍔部が形成された円柱状の保持部本体103と、該保持部本体103の外周部に嵌合し、下方が保持部本体103の円錐台状の外周と所定の間隔の隙間を形成するよう絞られた形状のリング部材104とからなる。
【0003】保持部本体103の円錐台状部にスポンジ部材101を当接し、リング部材104を該保持部本体103の外周部に嵌合させることにより、保持部本体103の外周とリング部材104の内周の間にスポンジ部材101が挟持され、洗浄部材保持機構102にスポンジ部材101が装着されるようになっている。保持部本体103には該洗浄具を保持し回転するための回転軸の先端が螺合するネジ穴106が形成されている。また、保持部本体103とリング部材104はネジ105で互いに固着される。上記構造の洗浄具は、下記のような問題があった。
【0004】■スポンジ部材101を保持部本体103とリング部材104で挟持する構造であるため、スポンジ部材101を洗浄部材保持機構102に正しく装着するためには治具を必要とし、その装着作業に熟練を必要とする。
【0005】■また、図5(a)に示すように、被洗浄基板Wfを保持し回転させる基板保持回転機構の突起状部(チャック)111と洗浄部材保持機構102及びスポンジ部材101の干渉を避ける範囲でスポンジ部材101と洗浄部材保持機構102を回転中の被洗浄基板Wfに接触させて該被洗浄基板Wfの略直径方向に移動させる際に、スポンジ部材101の被洗浄基板Wfとの接触面が被洗浄基板Wfの縁部Wfaを充分カバーできず、洗浄範囲が該縁部Wfaまで及ばない。即ち、洗浄具の洗浄範囲の半径R1が小さく被洗浄基板Wfの洗浄残り縁部E1が大きくなる。
【0006】■また、スポンジ部材101の被洗浄基板接触面の隅部がアール形状のため、該スポンジ部材101の被洗浄基板への押付力の変化により、該スポンジ部材101の被洗浄基板接触面積(外径)が変化し易く、押付力の変化により洗浄範囲が変化する。
【0007】また、この種の従来の洗浄具の他の例としては、図2に示す構造のものもあった。該洗浄具は図2に示すように、上方側外径が大きく下方側外径が小さい段付の円柱状のスポンジ部材201と、該スポンジ部材201を保持する洗浄部材保持機構202とからなる。洗浄部材保持機構202は上方側外径が大きく下方側外径が小さい段付の円柱状の保持部本体203と、該保持部本体203の下側外周部に螺合するリング部材204からなる。また、リング部材204はその先端に内側に突出する突起部204aが形成されている。
【0008】保持部本体203のスポンジ部材201を当接し、リング部材204を該保持部本体203の下方外周部に螺合させることにより、リング部材204の突起部204aがスポンジ部材201の段部に当接し、該突起部204aと保持部本体203の間にスポンジ部材201の上方部が挟持され、洗浄部材保持機構202にスポンジ部材201が装着されるようになっている。保持部本体203には該洗浄具を保持し回転するための回転軸の先端が螺合するネジ穴205が形成されている。上記構造の洗浄具は、下記のような問題があった。
【0009】■保持部本体203とリング部材204の結合がネジ結合のため、スポンジ部材201の脱着の際に、リング部材204の緩め、締め付けの手間がかかる。
【0010】■スポンジは使用状態では洗浄水等で膨潤し、若干堆積が増加するが、図2に示す構造の洗浄具では洗浄部材保持具203、204でこれを押えるため、スポンジ部材201の被洗浄基板接触面で膨張が顕著となり、中央部が膨らんだ形状となり易い傾向があって(図2中の二点鎖線)、被洗浄基板の表面に形成された膜種によっては、被洗浄基板の膜面にダメージを与えてしまうことがある。
【0011】■また、この洗浄具のスポンジ部材201の被洗浄基板の接触面積は、図1の洗浄部材と異なり、スポンジ部材201の下面外周部が直角(R形状では無い)なので広く見える。しかしながら、この洗浄具の場合は図示しないチャックと洗浄部材保持機構202との干渉を避けるためにスポンジ部材201の突出量Lを長くしなければならない。そのためスポンジ部材201を基板の外周方向に移動させると図2中の一点鎖線のように基板の中心側に変形する。実際には基板外周部でのスポンジ部材201の接触外径は狭くなり、外周部の洗浄残りが生じ易い。またその変形によりスポンジ部材201の基板との接触圧力が変化(減少)する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、被洗浄基板に接触するスポンジ等の洗浄部材の装着が容易で、洗浄部材が変形しても被洗浄基板の縁部まで洗浄範囲とすることができ、洗浄部材の押付力の変化によって被洗浄基板との接触面積が変化しにくく、被洗浄基板の膜面にダメージを与えることがない洗浄具及び該洗浄具を用いた基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、基板洗浄装置に用いる洗浄具であって、洗浄具は被洗浄基板の洗浄面に接触させる洗浄部材と該洗浄部材を保持する洗浄部材保持機構とを具備し、洗浄部材保持機構は下方部が複数のチャック爪に分割された挟持部材と、該挟持部材の外周に嵌入されるリング部材を具備し、該挟持部材の複数のチャック爪で形成された挿入穴に該洗浄部材の端部を挿入し、該リング部材を該挟持部材の外周に嵌入することにより、該複数のチャック爪で該洗浄部材を締め付け固定する構造、即ちコレットチャック構造としたことを特徴とする。
【0014】上記のように、洗浄部材を洗浄部材保持機構に装着する構造をコレットチャック構造とすることにより、挟持部材の複数のチャック爪で形成された挿入穴に該洗浄部材の端部を挿入し、該リング部材を該挟持部材の外周に嵌入するという簡単な操作で、洗浄部材を洗浄部材保持機構に装着することができる。
【0015】また、請求項2に記載の発明は請求項1に記載の洗浄具において、洗浄部材の被洗浄基板に接触する部分の隅部の垂直断面形状を角形状としたことを特徴とする。
【0016】上記のように、洗浄部材の被洗浄基板に接触する部分の隅部の垂直断面形状を角形状としたことにより、被洗浄基板の縁部も洗浄範囲に含ませることが可能となる。また、隅部がアール形状でなく角形状であるため、洗浄部材に加わる押し圧力が変化しても洗浄範囲が変化することがない。
【0017】また、請求項1又は2に記載の洗浄具において、洗浄部材はその縦断面形状が被洗浄基板に接触する面側が広く挟持部材挿入端側が狭い段付き形状であり、該挟持部材の複数のチャック爪の先端を該洗浄部材の段部に押し当てる構造であることを特徴とする。
【0018】上記のように、洗浄部材の縦断面形状を被洗浄基板に接触する面側が広く挟持部材挿入端側が狭い段付き形状とすることにより、該洗浄部材を被洗浄基板の縁部まで移動させた場合でも、被洗浄基板を保持する基板保持回転機構の突起状部が洗浄部材を保持する洗浄部材保持機構の外周部に干渉することがなく、被洗浄基板の縁部も洗浄範囲に含ませることが可能となる。また、チャック爪の先端を洗浄部材の段部に押し当てる構造としたので、洗浄部材の被洗浄基板接触面が被洗浄基板の反対側に押し上げられるのをチャック爪の先端で押えることとなり、洗浄部材の被洗浄基板の接触面圧の中央部が低くなり、被洗浄基板の表面に形成された膜面にダメージを与えることがない。
【0019】また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の洗浄具において、挟持部材のチャック爪の洗浄部材に接する面及び/又は該洗浄部材の挿入端面が接する面に突起を設けたことを特徴とする。
【0020】上記のように、挟持部材のチャック爪の洗浄部材に接する面及び/又は該洗浄部材の挿入端面が接する面に突起を設けたので、洗浄部材保持機構の回転力を洗浄部材に充分に伝達し、洗浄部材を被洗浄基板に押し付けた場合でも洗浄部材保持機構が洗浄部材と関係なく空転することがない。
【0021】また、請求項4に記載の発明は、基板に接触させて、該基板を洗浄するための洗浄具であって、洗浄部材とそれを保持する洗浄部材保持機構を備えており、該洗浄部材を被洗浄基板に接触する面側の外径が前記洗浄部材保持機構側の外径より大きい段部を有し、その中心を通る垂直断面形状が凸形状であることを特徴とする。
【0022】上記のように、洗浄部材を被洗浄基板に接触する面側の外径が前記洗浄部材保持機構側の外径より大きい段部を有し、その中心を通る垂直断面形状を凸形状とするので、被洗浄基板の縁部も洗浄範囲に含ませることが可能となる。
【0023】また、請求項1乃至4のいずれか1に記載の洗浄具において、洗浄部材は多孔質体又はクロス保持体にクロスを貼り付けたものであることを特徴とする。
【0024】また、請求項5に記載の発明は、基板保持回転機構及び洗浄具を具備し、該基板保持回転機構で被洗浄基板を水平姿勢に保持して回転させながら該被洗浄基板上に洗浄液を供給し、洗浄具を被洗浄基板面に接触させながら洗浄する基板洗浄装置において、洗浄具として請求項1乃至4のいずれか1に記載の洗浄具を用いたことを特徴とする。
【0025】上記のように基板洗浄装置の洗浄具として、請求項1乃至4のいずれか1に記載の洗浄具を用いることにより、該洗浄具が有する上記作用を発揮できる基板洗浄装置が実現できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図3及び図4は本発明の洗浄具の構造例を示す図で、図3は断面図、図4は分解斜視図である。図示するように、本洗浄具は被洗浄基板に直接接触する洗浄部材1と、該洗浄部材1を保持する洗浄部材保持機構2とを具備する。該洗浄部材保持機構2は保持芯体3、スリーブ4及びリング部材5を具備する。
【0027】保持芯体3は円柱状で、下端面の外周部に4個の突起3aが形成され、上部に外径寸法の大きい鍔体3bが形成された形状である。そして鍔体3bにはネジ6が貫通する貫通孔3cが形成されている。また、保持芯体3の中央部には本洗浄具を保持し回転するための回転軸の先端が螺合するネジ穴3dが形成されている。
【0028】スリーブ4は上部と下部が肉厚で中央部が肉薄の円筒状で外周に4本の切り溝を設けて下方を4本のチャック爪4aに分割されている。該4本のチャック爪4aは円周上に配置され、該4本のチャック爪4aの内周面で洗浄部材1の上部が挿入される挿入穴7を形成している。各々のチャック爪4aの内周面には突起4bが設けられている。また、チャック爪4aの上部にはネジ6が螺入されるネジ穴4cが形成され、先端部外周の外周面には突起部4dが形成され、該突起部4dから上方の外周面にはリング部材5の内周面に形成された溝5aが嵌合する突起4eが形成されている。
【0029】リング部材5はその内径がスリーブ4の外周と略同じ円筒体でその内周面にはスリーブ4のチャック爪4aの外周に形成された突起4eが嵌合する溝5aが形成されている。
【0030】洗浄部材1はその縦断面形状が下端側、即ち被洗浄基板に接触する面側が広く、上端側、即ちスリーブ4のチャック爪4aの内周面で形成された挿入穴7に挿入される部分が狭い段付きの円柱形状である。また、洗浄部材1の下端隅部はその垂直断面が角形(直角)状となっている。
【0031】上記洗浄部材1、洗浄部材保持機構2、保持芯体3、スリーブ4及びリング部材5を具備する洗浄具を組み立てる場合、保持芯体3をスリーブ4の中央の穴にその鍔体3bの下面がスリーブ4の上端面に当接するまで挿入する。ネジ6を保持芯体3の貫通孔3cを通し、スリーブ4のネジ穴4cに螺合させて、保持芯体3とスリーブ4を固着する。このスリーブ4の組立体で洗浄部材1を挟持する挟持部材を構成している。
【0032】次に洗浄部材1の上部をスリーブ4の4本のチャック爪4aの内周面で形成された挿入穴7にその段部面が該チャック爪4aの先端面に当接するまで挿入し、続いてリング部材5の上端から先端がチャック爪4aの先端の突起部4dに当接するまで挿入する。
【0033】上記のように、洗浄部材1の上部をスリーブ4に挿入し、次にリング部材5をスリーブ4の外周に嵌入することにより、外周方向に広がったチャック爪4aは内周方向に押され、その内周面に設けられた突起4bが洗浄部材1の外周に食い込み、洗浄部材1をチャック爪4aに充分な固着力で固着する。また、この時保持芯体3の下端面に設けられた4個の突起3aも洗浄部材1の上端面に食い込み、洗浄部材1の固着力を増す。また、この時リング部材5の内周面に設けられた溝5aはチャック爪4aの外周に形成された突起4eに嵌合し、リング部材5はスリーブ4に固定される。
【0034】また、洗浄部材1を洗浄部材保持機構2から取り外す場合は、リング部材5を押し上げることにより、チャック爪4aは外側に屈曲自在になるから、洗浄部材1を下方に引き抜くことにより、容易に取り外すことができる。また、新しい洗浄部材1を取り付ける場合は、上記洗浄部材1をチャック爪4aの内周面で形成された挿入穴7に挿入し、リング部材5を押し下げることにより行う。このように、洗浄部材1の洗浄部材保持機構2からの脱着は洗浄部材1の脱着とリング部材の押し上げ下げで行うことができるので、脱着作業が極めて容易になる。
【0035】洗浄部材1の被洗浄基板に接触する部分の隅部の垂直断面形状を従来のようにアール形状(図5(a)参照)ではなく、各形(直角)状とし、また洗浄部材1の段部がチャック爪4aの先端で保持されており、しかも洗浄部材の突出量Lを小さくできるので、洗浄部材1が変形しにくい。従って、図5(b)に示すように、洗浄部材1の被洗浄基板Wfへの押付力を変化させても洗浄部材1の被洗浄基板Wfへの接触面が殆ど変化することがない。従って、洗浄範囲が殆ど変化しない。
【0036】なお、洗浄する被洗浄基板Wf表面に形成される膜種等に応じて洗浄部材との摩擦力が変わるため、また設定する押圧力に応じて、洗浄部材1の変形量が異なる。この場合はその変形量に応じて洗浄部材の突出量と外径を洗浄範囲が可能な限り広くなるように最適に設定すれば良い。
【0037】また、洗浄部材1をその縦断面形状が被洗浄基板に接触する面側が広くスリーブ挿入端側が狭い段付き形状としたので、洗浄部材1を基板保持回転機構の被洗浄基板Wfを保持する突起状部(チャック)111に接近する位置迄移動させても、洗浄部材保持機構2の外周が該突起状部に干渉することがない。即ち、図5(b)に示すように、洗浄具の洗浄範囲の半径R2が大きく被洗浄基板Wfの洗浄残り縁部E2が小さくなる。図5(a)の従来例と図5(b)の本発明の例を比較した場合、R2>R1、E1>E2となる。
【0038】また、スリーブ4の複数のチャック爪4aの先端を洗浄部材1の段部に押し当てる構造としたので、洗浄部材1の被洗浄基板接触面が被洗浄基板の反対側に押し上げる力が作用しても、チャック爪4aの先端で押えるから、該被洗浄部材接触面が凸状になることなく、洗浄部材1の被洗浄基板の接触面圧が中央部で低くなる。従って、被洗浄基板の表面に形成された膜面にダメージを与えることがない。
【0039】また、スリーブ4の複数のチャック爪4aの内周面に突起4bを、保持芯体3の下端面に突起3aを形成しているので、洗浄部材保持機構2の回転力を洗浄部材に充分に伝達でき、洗浄部材1を被洗浄基板に押し付けた場合でも洗浄部材保持機構2が洗浄部材1を空転させることがない。
【0040】また、洗浄部材1を洗浄部材保持機構2に装着する際、洗浄部材1をスリーブ4のチャック爪4aの内周面で形成された挿入穴7に挿入することにより、チャック爪4aの内周面の突起4bが外側に押され、チャック爪4aが外側に押し出されるが、リング部材5を押し下げることにより、チャック爪4aが内側に押され、その内周面が洗浄部材1の外周面に密接すると共に、突起4bが外周面に食い込むことにより、洗浄部材1の保持が確実となる。
【0041】図6は本発明の洗浄具の他の構造例を示す図で、図6(a)は断面図、図6(b)は洗浄部材の底面図である。本洗浄具において、洗浄部材保持機構2の構造は図3及び図4に示す洗浄具の洗浄部材保持機構と同じ構造である。相違する点は洗浄部材1の下端面の外周部の下面(被洗浄基板への接触面)に平坦な環状突起1aを設けている点である。洗浄部材1をこのような形状とすることにより、チャック爪4aの先端は該洗浄部材1の段部面に当接しているから、被洗浄基板は環状突起1aの接触面で均等な接触圧で洗浄されることになる。
【0042】図7は本発明の洗浄具の他の構造例を示す図で、図7(a)は断面図、図7(b)は洗浄部材の底面図である。本洗浄具において、洗浄部材保持機構2の構造は図3及び図4に示す洗浄具の洗浄部材保持機構と同じ構造である。本洗浄具が図6に示す洗浄具と相違する点は洗浄部材1の下端面の外周部に設けた環状突起1aに半径方向に複数本の切り溝1bを設けて、環状突起1aを複数(図では4個)に分割している点である。このように、切り溝1bを設けることにより、被洗浄基板上に供給された洗浄液は該切り溝1bを通して流れ、洗浄効果が向上する。
【0043】図8は本発明の洗浄具の他の構造例を示す図で、図8(a)は断面図、図8(b)は洗浄部材の底面図である。本洗浄具において、洗浄部材保持機構2の構造は図3及び図4に示す洗浄具の洗浄部材保持機構と同じ構造である。本洗浄具が図6及び図7に示す洗浄具と相違する点は洗浄部材1の下端面に複数の円板状突起部1c、1dを同心円状に等ピッチで配置した点である。ここでは外周側に直径の大きい複数の円板状突起部1cを等ピッチで配置し、その内側に直径の小さい複数の円板状突起部1dを等ピッチで配置している。このようにすることにより、洗浄液は円板状突起部1c、1dの間を通って流れ、洗浄効果が向上する。
【0044】上記図3乃至図8に示す洗浄具において、洗浄部材保持機構2を構成する保持芯体3、スリーブ4及びリング部材5の材料は特に限定しないが、例えば、プラスチック材を用いる。プラスチック材としては、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトロフロロエチレン)等が使用される。
【0045】また、洗浄部材1の材料としては吸液性の多孔質体であれば、特に限定しないが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)スポンジ(=多孔質基気質PVF(ポリビニルホルマール))を使用する。
【0046】また、上記例では洗浄部材保持機構2にスポンジ等の多孔質体からなる洗浄部材1を装着する例を示したが、このような洗浄部材は多孔質体に限定されるものではなく、図9に示すように、下面に環状のクロス9を貼り付けたクロス保持部材8を洗浄部材保持機構2に装着するようにしてもよい。この場合、クロス保持部材8の形状は図6に示す洗浄具の洗浄部材1と略同一形状とする。
【0047】上記クロス保持部材8の材料としては上記保持芯体3、スリーブ4及びリング部材5の材料と同じプラスチック材でも良く、またFKM(フッ素ゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ウレタンゴム等も使用できる。また、クロス9の材料としては発砲ウレタン、繊維をウレタン樹脂で固めた不繊布やスエードタイプの研磨布等のように表面に微細な孔が形成されており、この孔の中にクロス9と被洗浄基板との摩擦で被洗浄基板の洗浄面から除去されたダスト等の異物が取り込まれる性質のクロスであればよい。
【0048】上記のようにクロス9を用いた洗浄具としては、軟質(例えばゴム類)のクロス保持部材8に、それよりも硬質のクロス9を貼り合わせた構造のものが好ましいが、これに限定されるものではなく、クロス9とクロス保持部材8を一体的に形成したもの、或いは弾性の無いプラスチック類からなるクロス保持部材8にクロス9を貼り付けた構造のものでもよい。
【0049】図10は上記本発明の洗浄具を用いる基板洗浄装置の概略構成を示す図である。図示するように、基板洗浄装置は被洗浄基板Wfを保持し回転させる基板保持回転機構10と洗浄具21を装着する洗浄具装着機構20を具備する。基板保持回転機構10は被洗浄基板Wfを水平姿勢に保持するチャック11が装着された複数本(図では4本)のアーム12を具備し、該アーム12が一体的に基台13に取り付けられ、回転軸14で矢印A方向に回転できるようになっている。
【0050】また、洗浄具装着機構20は揺動アーム23を有し、該揺動アーム23の先端に回転軸22が設けられ、該回転軸22の先端に本発明の洗浄具21が装着されるようになっている。回転軸22は図示しない回転機構により矢印B方向に回転し、洗浄具21を同方向に回転させるようになっている。また、揺動アーム23の後端部には揺動軸24が設けられ、揺動アーム23を矢印C方向に揺動させるようになっている。また、揺動軸24は揺動アーム23を矢印Dに示すように昇降させるようにもなっている。
【0051】上記構成の基板洗浄装置において、基板保持回転機構10で水平姿勢に保持され矢印A方向に回転している被洗浄基板Wfの上面にノズル25から純水等の洗浄液を噴射すると同時に、洗浄具装着機構20により洗浄具21を矢印B方向に回転させると共に揺動アーム23を洗浄具21が被洗浄基板Wfの回転中心部を通過するように矢印C方向に揺動させることにより、被洗浄基板Wfの上面を洗浄する。洗浄が終了すると揺動アーム23を旋回させ洗浄具21を洗浄液が収容された容器26内に浸漬させる。また、洗浄の終了した被洗浄基板Wfは基板保持回転機構10で高速回転させ、スピン乾燥させた後、ロボットアーム(図示せず)等で次の処理行程に移送される。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように各請求項に記載の発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
【0053】請求項1に記載の発明によれば、洗浄部材を洗浄部材保持機構に装着する構造をコレットチャック構造とすることにより、スリーブの複数のチャック爪で形成された挿入穴に該洗浄部材の端部を挿入し、該リング部材を該スリーブの外周に嵌入するという簡単な操作で、洗浄部材を洗浄部材保持機構に装着することができる。
【0054】また、請求項2に記載の発明によれば、洗浄部材の被洗浄基板に接触する部分の隅部の垂直断面形状を角形状としたことにより、被洗浄基板の縁部も洗浄範囲に含ませることが可能となり、該縁部も洗浄することができる。
【0055】また、請求項3に記載の発明によれば、挟持部材のチャック爪の洗浄部材に接する面及び/又は該洗浄部材の挿入端面が接する面に突起を設けたので、洗浄部材保持機構の回転力を洗浄部材に充分に伝達し、洗浄部材を被洗浄基板に押し付けた場合でも洗浄部材保持機構が洗浄部材と関係なく空転することがない。
【0056】また、請求項4に記載の発明によれば、洗浄部材を被洗浄基板に接触する面側の外径が前記洗浄部材保持機構側の外径より大きい段部を有し、その中心を通る垂直断面形状を凸形状とするので、被洗浄基板の縁部も洗浄範囲に含ませることが可能となる。
【0057】また、請求項5に記載の発明によれば、基板洗浄装置の洗浄具として、請求項1乃至4のいずれか1に記載の洗浄具を用いることにより、該洗浄具が有する上記作用を発揮できる基板洗浄装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の洗浄具の構造例を示す断面図である。
【図2】従来の洗浄具の構造例を示す断面図である。
【図3】本発明の洗浄具の構造例を示す断面図である。
【図4】本発明の洗浄具の構造例を示す分解斜視図である。
【図5】従来の洗浄具と本発明の洗浄具の作用上の比較例を示す図で、図5(a)は従来例、図5(b)は本発明例をそれぞれ示す図である。
【図6】本発明の洗浄具の構造例を示す図で、図6(a)は断面図、図6(b)は洗浄部材の底面図である。
【図7】本発明の洗浄具の構造例を示す図で、図7(a)は断面図、図7(b)は洗浄部材の底面図である。
【図8】本発明の洗浄具の構造例を示す図で、図8(a)は断面図、図8(b)は洗浄部材の底面図である。
【図9】本発明の洗浄具の構造例を示す図で、図9(a)は断面図、図9(b)は洗浄部材の底面図である。
【図10】本発明の洗浄具を用いる基板洗浄装置の概略構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 洗浄部材
2 洗浄部材保持機構
3 保持芯体
4 スリーブ
5 リング部材
6 ネジ
7 挿入穴
8 クロス保持部材
9 クロス
10 基板保持回転機構
11 チャック
12 アーム
13 基台
14 回転軸
20 洗浄具装着機構
21 洗浄具
22 回転軸
23 揺動アーム
24 揺動軸
25 ノズル
26 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板洗浄装置に用いる洗浄具であって、前記洗浄具は被洗浄基板の洗浄面に接触させる洗浄部材と該洗浄部材を保持する洗浄部材保持機構とを具備し、前記洗浄部材保持機構は下方部が複数のチャック爪に分割された挟持部材と、該挟持部材の外周に嵌入されるリング部材を具備し、該挟持部材の複数のチャック爪で形成された挿入穴に前記該洗浄部材の端部を挿入し、該リング部材を該挟持部材の外周に嵌入することにより、該複数のチャック爪で該洗浄部材を締め付け固定する構造であることを特徴とする洗浄具。
【請求項2】 請求項1に記載の洗浄具において、前記洗浄部材の前記被洗浄基板に接触する部分の隅部の垂直断面形状を角形状としたことを特徴とする洗浄具。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の洗浄具において、前記挟持部材のチャック爪の前記洗浄部材に接する面及び/又は洗浄部材の挿入端面が接する面に突起を設けたことを特徴とする洗浄具。
【請求項4】 基板に接触させて、該基板を洗浄するための洗浄具であって、洗浄部材とそれを保持する洗浄部材保持機構を備えており、該洗浄部材を被洗浄基板に接触する面側の外径が前記洗浄部材保持機構側の外径より大きい段部を有し、その中心を通る垂直断面形状が凸形状であることを特徴とする洗浄具。
【請求項5】 基板保持回転機構及び洗浄具を具備し、該基板保持回転機構で被洗浄基板を水平姿勢に保持して回転させながら該被洗浄基板上に洗浄液を供給し、前記洗浄具を被洗浄基板面に接触させながら洗浄する基板洗浄装置において、前記洗浄具として請求項1乃至4のいずれか1に記載の洗浄具を用いたことを特徴とする基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2000−173966(P2000−173966A)
【公開日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−348572
【出願日】平成10年12月8日(1998.12.8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】