説明

洗浄液、その製造方法及び製造装置並びに洗浄方法

【課題】洗浄力を確保しつつ製造の簡素化が図られる洗浄液、その製造方法及び製造装置並びに洗浄方法を提供する。
【解決手段】隔壁を有さない電解槽21に被電解液として炭酸水素ナトリウムを溶質とした水溶液を供給して電気分解する。そしてその電解液にクエン酸を添加することにより洗浄水を生成するようにした。隔壁を有する電解槽を使用して洗浄水を生成するようにした場合と異なり、被電解液を電気分解して得られた陽極水と陰極水とを電気分解終了後に混合する必要がない。また、単にクエン酸を電解液に投入するだけで所定の洗浄力が得られる。このため、洗浄水の製造の簡素化が図られる。洗浄水の洗浄力も確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料品、食器類、医療用器具及び手洗い等の洗浄に適した洗浄液、その製造方法及び製造装置並びに洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料品、食器類、医療器具及び手洗い等の洗浄は、薬品及び石鹸等の界面活性剤を使用して行われている。しかし、洗濯時の手荒れ及び被洗浄物への残留による人体に対する安全性並びに廃水処理後の有害物質の残留等が問題となっている。そうした問題を解決するために、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示されるような界面活性剤を使用しない洗浄液が従来提案されている。
【0003】
特許文献1には、洗浄液として電解水を使用することが開示されている。これは、電解質を含む水を電気分解して得られるアルカリ性電解水の蛋白質除去作用及び酸性電解水の殺菌作用を利用したものである。具体的には、隔膜により仕切られた陰極室と陽極室とを有する電解槽の陽極室及び陰極室の両方に被電解液を供給して電気分解し、得られた陰極水と陽極水とを電気分解終了後に混合し、これを洗浄液とする。被電解液としては炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩及び炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩のうち少なくとも一方を含む水溶液が使用される。
【0004】
また、同文献には電解槽に供給された被電解液を電気分解することにより得られた陰極水、陽極水又はそれらの混合水に、電気分解の終了後さらにアルカリ金属の炭酸塩及び重炭酸塩の少なくとも一方を添加溶解し、これを洗浄剤とすることが示されている。そしてその場合における陽極水はpH6〜pH8の中性の洗浄液原液として使用可能であり、クエン酸等の軟水化剤を洗浄助剤として添加し、それを洗浄剤とすることも開示されている。
【0005】
特許文献2には、電解水を使用した被洗浄物の洗浄方法として、炭酸イオン及び重炭酸イオンのうち少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する洗浄液(電解水)を軟水化しながら又は軟水化した後、被洗浄物を洗浄することが開示されている。軟水化とは洗浄液中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオン等を除去することである。炭酸イオンは炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩を水溶液とすることで得られ、また重炭酸イオンは炭酸水素ナトリウム等のアルカリ重炭酸塩を水溶液とすることで得られる。洗浄液の軟水化と、そのとき生じる組成物によるクレンザー効果及び吸着効果により、所定の洗浄力が発揮される。
【0006】
特許文献3には、炭酸水素ナトリウムと、酒石酸及びクエン酸のうち少なくとも一方とを含有する口腔清浄用の洗浄液が開示されている。この洗浄液は、炭酸水素ナトリウムの粉末と、酒石酸及びクエン酸のうち少なくとも一方の粉末とを水に溶解することにより生成される。炭酸水素ナトリウム並びに酒石酸及びクエン酸はそれぞれ粉末であるので携帯に適しており、必要なときに水に溶解して使用する。
【0007】
また前述の炭酸水素ナトリウム及びクエン酸を含む洗浄剤として例えば特許文献4に示されるようなものもある。この洗浄剤は、メタケイ酸ソーダ等の洗浄剤に重炭酸ソーダ(炭酸水素ナトリウム)等の炭酸塩及びクエン酸等の有機酸を配合してなる固形の発泡洗浄剤である。この発泡洗浄剤は例えば水洗式トイレのタンク内に吊り下げたり便器内に投入したりして水洗便器内の洗浄に使用される。
【特許文献1】特許第3317505号公報
【特許文献2】特許第3181927号公報
【特許文献3】特開平3−279321号公報
【特許文献4】特開昭56−163199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記従来の洗浄液には次のような問題があった。即ち、特許文献1の洗浄液は、被電解液を電気分解して得られた陽極水と陰極水とを電気分解終了後に混合する必要があった。具体的には陽極水及び陰極水はそれぞれ配管を介して所定の貯水槽に送られ、その送られる間に混合されるようになっている。そしてその陰陽両極水の混合工程は洗浄液の製造効率の向上を阻害する一因となっていた。
【0009】
特許文献2の洗浄液は、それを軟水化することにより洗浄力を確保するようにしている。しかし、洗浄水の軟水化の手法として、洗浄水の加熱、撹拌、曝気又は放置といった手法を採用しているので、洗浄水の軟水化、ひいては所定の洗浄力を有する洗浄液の製造に時間がかかるおそれがあった。
【0010】
特許文献3の洗浄液は、炭酸水素ナトリウムの粉末と、酒石酸及びクエン酸のうち少なくとも一方の粉末とを単に水に溶解することにより生成されるものである。また、特許文献4の洗浄剤も単に水に溶解して所定の洗浄力を発揮するだけである。このため、電解水を使用しない特許文献3及び特許文献4の洗浄液の洗浄力は、電解水を利用した特許文献1又は特許文献2の洗浄液の洗浄力におよばない。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、洗浄力を確保しつつ製造の簡素化が図られる洗浄液、その製造方法及び製造装置並びに洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、陰陽両極を有する電解槽に所定の被電解液を供給して電気分解を行うことにより得られた電解液を利用して生成された洗浄液であって、前記電解槽は陰陽両極間に隔膜を有しない無隔電解槽とし、その無隔電解槽に前記被電解液として炭酸水素ナトリウムを溶質とした水溶液を供給して電気分解することにより得られた電解液にクエン酸を添加することにより生成されたことをその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄液において、炭酸水素ナトリウムの濃度を1.0〜8.0重量%とし、クエン酸の濃度を0.1〜2.0重量%としたことをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、陰陽両極間に隔膜を有しない無隔電解槽内で炭酸水素ナトリウム水溶液を被電解液として電気分解することにより電解液を生成し、その後当該電解液にクエン酸を添加するようにしたことをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の洗浄液の製造方法において、炭酸水素ナトリウムの濃度が1.0〜8.0重量%に、またクエン酸の濃度が0.1〜2.0重量%となるように、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸をそれぞれ溶媒である水に添加するようにしたことをその要旨とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の洗浄液の製造方法において、被電解液としての炭酸水素ナトリウム水溶液は、前記無隔電解槽内に溶媒である水と溶質である炭酸水素ナトリウムとを投入して撹拌することにより生成し、その生成した炭酸水素ナトリウム水溶液を電気分解することにより電解液を生成し、その生成した電解液にクエン酸を添加した後に撹拌するようにしたことをその要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、隔膜を有しない無隔電解槽と、当該無隔電解槽内に収容された一対の電極とを備え、両電極間に所定の電圧を印加することにより前記無隔電解槽内の被電解液を電気分解して電解液を生成し、その生成した電解液を利用して所定の洗浄液を製造するようにした洗浄液の製造装置であって、前記両電極は前記無隔電解槽に対して着脱可能に設けると共に、当該無隔電解槽には当該無隔電解槽内の被電解液又は電解液を撹拌する撹拌手段を設けるようにしたことをその要旨とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、洗浄方法において、請求項1又は請求項2に記載の洗浄液を被洗浄物に噴霧して拭き取るようにしたことをその要旨とする。
請求項8に記載の発明は、洗浄方法において、請求項1又は請求項2に記載の洗浄液を水で希釈するとともにその希釈した洗浄液を撹拌槽へ投入し、被洗浄物とともに撹拌するようにしたことをその要旨とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、洗浄方法において、請求項1又は請求項2に記載の洗浄液に被洗浄物を浸漬するようにしたことをその要旨とする。
(作用)
請求項1に記載の洗浄液は、隔壁を有さない無隔電解槽に被電解液として炭酸水素ナトリウムを溶質とした水溶液を供給して電気分解することにより得られた電解液にクエン酸を添加することにより生成される。隔壁を有する電解槽を使用して洗浄液を生成するようにした場合と異なり、被電解液を電気分解して得られた陽極水と陰極水とを電気分解終了後に混合する必要がない。また例えば電解液の加熱、撹拌、曝気又は放置といった手法により電解液を軟水化して洗浄力を確保する必要がなく、単にクエン酸を電解液に投入するだけである。このため、洗浄液の製造の簡素化が図られる。電解液を使用することにより洗浄液の洗浄力も確保される。
【0020】
そして、請求項2に記載するように、炭酸水素ナトリウムの濃度が1.0〜8.0重量%、またクエン酸の濃度が0.1〜2.0重量%とすれば、所定の洗浄力が確保される。
洗浄液は例えば請求項3に記載するように製造することが望ましい。そのようにすれば、隔壁を有する電解槽を使用して洗浄水を生成するようにした場合と異なり、被電解液を電気分解して得られた陽極水と陰極水とを電気分解終了後に混合する必要がない。また、例えば電解液の加熱、撹拌、曝気又は放置といった手法により電解液を軟水化して洗浄力を確保する必要がなく、単にクエン酸を電解液に投入するだけである。このため、洗浄液の製造の簡素化が図られる。電解液を使用することにより洗浄液の洗浄力も確保される。
【0021】
そして、請求項4に記載するように、炭酸水素ナトリウムの濃度が6.0重量%に、またクエン酸の濃度が2.0重量%となるように、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸をそれぞれ溶媒である水に添加することにより、所定の洗浄力を有する洗浄液が得られる。
【0022】
ここで、炭酸水素ナトリウムは水に溶けにくいことが一般的に知られている。そこで、請求項5に記載するように、無隔電解槽内に溶媒である水と溶質である炭酸水素ナトリウムとを投入して撹拌することにより、当該炭酸水素ナトリウムを好適に水に溶解させることができる。その結果、被電解液としての炭酸水素ナトリウム水溶液の液性の均一化が図られ、炭酸水素ナトリウム溶液の電解も好適に行われる。また、洗浄液の製造過程において、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解液にクエン酸を添加した後に撹拌することにより、クエン酸が電解液に好適に溶解する。その結果、洗浄液の液性の均一化が図られる。
【0023】
一方、請求項6に示されるように、電解液を利用して製造することにより洗浄液の洗浄力が確保される。また、無隔電解槽を使用することにより、当該無隔電解槽に撹拌手段を設けることが可能となる。そしてこの撹拌手段により無隔電解槽内の電解液又は被電解液を撹拌することにより容易に電解液又は被電解液の液性の均一化が図られ、洗浄液の製造効率が向上する。さらに、両電極は無隔電解槽に対して着脱可能であるので、撹拌手段の無隔電解槽への組み立て作業が簡単になる。
【0024】
ところで、請求項1又は請求項2に記載の洗浄液は、例えば次のようにして被洗浄物の洗浄に使用することができる。即ち、請求項7に示すように、洗浄液を被洗浄物に噴霧して拭き取るようにする。また、請求項8のように、洗浄液を希釈した希釈水を撹拌槽へ投入し、被洗浄物と共に撹拌する。さらに請求項9のように、洗浄液に被洗浄物を浸漬することにより、当該被洗浄物を洗浄する。被洗浄物の種類等に応じて好適な洗浄方法を選択すればよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、洗浄力を確保しつつ製造の簡素化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を例えば洗濯水に具体化した一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1に示すように、電解水生成装置11は、上部が開口した有底箱体状の本体ケース12及び当該本体ケース12の上部開口部12aを閉鎖する蓋体13を備えている。
【0027】
<本体ケース>
本体ケース12の上部にはコ字状の取手14が回動可能に軸支されている。電解水生成装置11を運搬する際にはこの取手14を把持する。また、本体ケース12の内部には上部が開口した箱体状の電解槽21が収容されている。電解槽21は隔膜を有しない無隔膜電解槽である。
【0028】
<撹拌手段>
電解槽21の内底面の中央には撹拌部材22が載置されており、当該撹拌部材22は磁性体により棒状に形成されている。また、電解槽21の内底面の中央には撹拌部材カバー23が撹拌部材22を覆うように取り付けられている。撹拌部材カバー23は円錐台状のカバー本体23aと当該カバー本体23aの下部に設けられた円環状のフランジ23bとを備えている。カバー本体23aの側壁には上下方向に延びる複数個の透孔23cが形成されており、各透孔23cを介して水が撹拌部材カバー23の内外を行き来可能となっている。各透孔23cは撹拌部材22が通過不能となるように設形成されており、撹拌部材22は撹拌部材カバー23の内部においてのみ移動可能となっている。フランジ23bは図示しないボルト等により電解槽21の内底面に固定されている。
【0029】
電解槽21の底面には撹拌用のモータ24がブラケット25を介して固定されており、当該モータ24の出力軸24aの先端には磁石26が固定されている。磁石26は電解槽21の底壁を介して撹拌部材22に対向するように、且つ電解槽21の底面との間に所定の間隔が形成されるように配置されている。磁石26により生じる磁界内に電解槽21内の撹拌部材22が位置するように磁石26の強さ及び電解槽21の底面との離間距離等がそれぞれ設定されている。そしてモータ24の駆動により磁石26が所定の方向に回転すると、電解槽21内の撹拌部材22は磁石26により生じる磁界の影響を受けて当該磁石26と同方向に回転するようになっている。
【0030】
<吐水ポンプ>
電解槽21の底面には吐水ポンプ31が設けられている。図2に併せ示すように、吐水ポンプ31の吸入口は吸入管32を介して電解槽21の底壁に接続されている。また吐水ポンプ31の吐出口には連結管33の一端が接続されており、同じく他端は本体ケース12内を立ち上がり、本体ケース12の上壁の前面側に固定されている。その固定された連結管33の上端には逆J字状の吐水管34がワンタッチカップリング35を介して着脱可能に接続されている。
【0031】
即ち、ワンタッチカップリング35は、連結管33の上端に取り付けられ且つ本体ケース12の上壁の前面側に固定されたソケット35a、及び当該ソケット35aに水密状に差し込み接続可能とされたプラグ35bを備えている。ワンタッチカップリング35はプラグ35bをソケット35aに差し込むだけで吐水管34を連結管33に対して水密状に接続可能となるように構成されている。また、ワンタッチカップリング35は、吐水管34を連結管33から取り外すときにはソケット35a側に設けられた図示しないロック部材を操作することによりプラグ35bとソケット35aとの係合が解除されるように構成されている。
【0032】
<吐水管の収納部>
図3に併せ示すように、本体ケース12の背面下部には吐水管34の収納部36が凹設されている。収納部36は四角形の凹部として形成されており、その内底面における上部寄りには2つの係合爪37,37が並ぶように突設されている。両係合爪37,37は収納部36の内周面に対向するように、且つ当該内周面との間に吐水管34の外径よりも若干小さい間隙が形成されるように形成されている。
【0033】
2つの係合爪37,37と収納部36の内周面との間に吐水管34を横に寝かせた状態で押し込むことにより、当該吐水管34は2つの係合爪37,37により収納部36の内周面に押し付けられた状態で且つ収納部36の内周面に沿うように固定されるようになっている。電解水生成装置11の未使用時等には前記吐水管34が取り外されて収納部36に収納される。
【0034】
<操作パネル>
図4(a)に示すように、本体ケース12の上部における前面側には操作パネル41が設けられている。図4(b)に併せ示すように、この操作パネル41には主電源スイッチ42、洗浄水スイッチ43、撹拌スイッチ44、吐水スイッチ45及び除菌水スイッチ46等の各種のスイッチが設けられている。また操作パネル41には各スイッチに対応するように例えばLED(発光ダイオード)からなるランプが設けられており、各スイッチがオンしたときに点灯等するように構成されている。各ランプがそれぞれ点灯等することにより電解水生成装置11の動作状態が表示される。
【0035】
<電極板>
図5に示すように、電解槽21の互いに対向する一対の側壁の内面には、それぞれ上下方向に延びる2つのホルダ部材51,51、合計4つのホルダ部材51が形成されている。各ホルダ部材51はそれらの延びる方向に対して直交する方向に所定間隔をおいて平行に配置されている。各ホルダ部材51にはそれぞれガイド溝51aが上下方向に延びるように形成されている。各ホルダ部材51は電解槽21の互いに対向する側壁に形成されたホルダ部材51と対向するように配置されている。
【0036】
各ホルダ部材51のうち互いに対向する2つのホルダ部材51を1組としたとき、両組のホルダ部材51間にはそれぞれ第1及び第2の電極板52,53が支持されている。即ち、互いに対向するホルダ部材51のガイド溝51a間に第1及び第2の電極板52,53を上方から差し込むことにより、第1及び第2の電極板52,53は電解槽21内に支持されている。第1及び第2の電極板52,53を電解槽21内に支持した状態において、当該第1及び第2の電極板52,53間には前記撹拌部材カバー23が位置するように、各ホルダ部材51はそれぞれ配置されている。
【0037】
図6に示すように、電解槽21(本体ケース12)の開口端面における蓋体13側には2つの端子部54,54(図6では一方のみ図示する。)が設けられており、両端子部54,54にはそれぞれ第1及び第2の電極板52,53から引き出されたリード線52a,53a(図6ではリード線52aのみ図示する。)が接続されている。第1及び第2の電極板52,53には端子部54,54を介して後述する電源基板71からの所定の直流電圧が供給されるようになっている。
【0038】
第1及び第2の電極板52,53は後述する電源基板71によって一方が陽極に、他方が陰極になるように所定の直流電圧が印加可能とされていると共にそれぞれの極性を反転可能とされている。例えば、第1の電極板52が陽極となり第2の電極板53が陰極になるように、第1及び第2の電極板52,53にそれぞれ端子部54,54を介して直流電圧が印加される。逆に、第1の電極板52が陰極となり第2の電極板53が陽極になるように、第1及び第2の電極板52,53にそれぞれ端子部54,54を介して極性反転した直流電圧が印加される。
【0039】
<蓋体>
図7に示すように、蓋体13はヒンジ部55を介して本体ケース12に対して開閉可能に設けられている。また蓋体13には薬剤投入口13aが開口形成されていると共に当該薬剤投入口13aを閉鎖する薬剤投入口蓋56が開閉可能に設けられている。このため、図8に併せ示すように、蓋体13を閉じた状態であっても薬剤投入口蓋56を開放することにより、電解槽21内に所定の薬剤を投入可能となる。
【0040】
尚、電解水生成装置11は本発明の洗浄水の製造装置に相当し、薬剤投入口13aはクエン酸投入手段に相当する。また、撹拌部材22、モータ24、出力軸24a及び磁石26は本発明の撹拌手段を構成する。第1の電極板52は本発明の陰極又は陽極に相当し、第2の電極板53は本発明の陽極又は陰極に相当する。
【0041】
<電気的構成>
次に、電解水生成装置11の電気的構成について説明する。
図1に示されるように、本体ケース12の上壁における操作パネル41の裏面にはスイッチ基板73が配置されている。また図2に併せ示されるように、電解槽21の側壁の外面には、電源基板71及び制御基板72がそれぞれ固定されている。そして図9に示すように、電源基板71、制御基板72及びスイッチ基板73は相互に接続されている。制御基板72にはモータ24が接続されている。
【0042】
スイッチ基板73には主電源スイッチ42、洗浄水スイッチ43、撹拌スイッチ44、吐水スイッチ45及び除菌水スイッチ46等の各種のスイッチ並びに各スイッチに対応する例えばLED(発光ダイオード)からなるランプがそれぞれ実装されている。
【0043】
電源基板71にはレギュレータ74が実装されており、当該レギュレータ74は図示しない電源コードを介して供給される交流電圧(AC100V)を所定の直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を制御基板72、スイッチ基板73並びに第1及び第2の電極板52,53等の電解水生成装置11の各部に供給する。また、レギュレータ74は制御基板72から出力される各種の電流制御信号に応じた値の電流が第1及び第2の電極板52,53にそれぞれ生じるように、第1及び第2の電極板52,53間に所定の直流電圧を印加する。さらに、レギュレータ74は切換リレー75を備えており、この切換リレー75は制御基板72から出力されるリレー切換信号に基づいて第1及び第2の電極板52,53にそれぞれ印加する直流電圧の極性(即ち、陽極又は陰極)を反転させる。
【0044】
制御基板72にはマイクロコンピュータ76が実装されており、当該マイクロコンピュータ76はCPU(中央処理装置)77、ROM(読み取り専用メモリ)78、RAM(読み取り書き込み専用メモリ)79及びタイマ80等を備えている。ROM78には電解水生成装置の各部を統括的に制御するために各種データ及び各種制御プログラム等が予め格納されている。RAM79はROMの制御プログラムを展開してCPUが各種の処理を実行するためのデータ記憶領域(作業領域)である。タイマ80は撹拌時間及び電解時間等を計時して所定時間経過したときにはカウントアップ信号をCPU77に出力する。
【0045】
CPU77は洗浄水スイッチ43がオン操作されたとき、ROM78に格納された所定のプログラム(洗浄水生成プログラム)に従って、撹拌→電解(電気分解)の順に処理を自動的に移行させる。即ち、CPU77は所定の撹拌時間(例えば15分間)だけモータ24を駆動させ、その後、所定の電解時間(例えば4.5時間)だけ第1及び第2の電極板52,53に所定の直流電圧が印加されるようにレギュレータ74を制御する。
【0046】
CPU77は撹拌スイッチ44がオン操作されたとき、所定の撹拌時間(例えば30秒間)だけモータ24を駆動させる。
CPU77は吐水スイッチ45がオン操作されたとき、当該吐水スイッチ45がオン操作されている間だけ吐水ポンプ31を駆動させる。
【0047】
CPU77は除菌水スイッチ46がオン操作されたとき、ROM78に格納された所定のプログラム(除菌水生成プログラム)に従って、撹拌→電解→撹拌の順に処理を自動的に移行させる。即ち、CPU77は所定の撹拌時間(例えば30秒間)だけモータ24を駆動させ、その後所定の電解時間(例えば30分間)だけ第1及び第2の電極板52,53に所定の直流電圧が印加されるようにレギュレータ74を制御する。そして次に所定の撹拌時間(例えば30秒間)だけモータ24を駆動させる。
【0048】
CPU77は電解水の生成が行われる度に、即ち洗浄水スイッチ43又は除菌水スイッチ46がオン操作される度に第1及び第2の電極板52,53の極性が反転するようにレギュレータ74の切換リレー75を切り換え制御する。
【0049】
<電解水生成装置の動作>
次に、前述のように構成した電解水生成装置の動作を説明する。電解水生成装置は例えば洗濯水等に使用される洗浄水を生成する洗浄水生成機能、除菌水を生成する除菌水生成機能、並びに第1及び第2の電極板52,53の洗浄を自動的に行う自動洗浄機能を有している。
【0050】
<1.洗浄水生成機能>
まず洗浄水生成機能について説明する。洗浄水を生成する際にはまず操作パネル41の主電源スイッチ42をオン操作する。これにより、電解水生成装置11の各部には所定の直流電圧が供給され、当該各部は動作可能となる。次に、蓋体13を開けて電解槽21に所定量(例えば4リットル)の水及び所定量(例えば240グラム)の炭酸水素ナトリウム(重曹)をそれぞれ投入する。このとき、炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH8.0程度となる。次に、蓋体13を閉じて操作パネル41の洗浄水スイッチ43をオンする。すると、1)撹拌→2)電解の順に処理が自動的に移行する。
【0051】
1)の撹拌では、モータ24の駆動により磁石26が回転し、それに伴って撹拌部材22が回転する。撹拌部材22が回転することにより電解槽21内の水が撹拌され、炭酸水素ナトリウムが水に好適に溶解して炭酸水素ナトリウム水溶液が生成されると共に当該水溶液の液性の均一化が図られる。所定の撹拌時間(例えば15分間)が経過した後、自動的に電解処理に移行し、2)の電解は所定の電解時間(例えば4.5時間)だけ経過すると自動的に停止される。このとき、炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH8.5程度となる。
【0052】
電解終了後、薬剤投入口蓋56を開けて、所定量のpH降下剤(例えば25グラムのクエン酸)を薬剤投入口13aから電解槽21に投入する。その後、薬剤投入口蓋56を閉じて、撹拌スイッチ44をオン操作する。すると、モータ24の駆動により撹拌部材22が電解槽21内の炭酸水素ナトリウム水溶液が撹拌され、当該水溶液にクエン酸は好適に溶解すると共に電解水の液性の均一化が図られる。撹拌スイッチ44がオンしてから所定時間(本実施形態では30秒間)経過後にモータ24は自動的に停止する。以上で洗浄水の生成は完了となる。この洗浄水の水素イオン濃度はpH7.8程度になる。
【0053】
そして、吐水スイッチ45をオンすると、吐水ポンプ31が駆動し、電解槽21内の洗浄水は連結管33を介して吐水管34から吐出される。電解水は吐水スイッチ45をオン操作している間だけ吐水管34から吐出する。そしてその吐出される洗浄水を容器等に取り出して所定の洗浄に使用する。また、容器等に取り出した洗浄水を水で所定倍率(例えば30倍)に希釈して洗濯水等として使用することもできる。洗浄水を水で30倍に希釈したときの水素イオン濃度はpH8.5以下となる。
【0054】
<2.除菌水生成機能>
次に、除菌水生成機能について説明する。除菌水を生成する際にはまず操作パネル41の主電源スイッチ42をオンする。これにより、電解水生成装置11の各部には所定の直流電圧が供給され、当該各部は動作可能となる。次に、蓋体13を開けて電解槽21に4リットルの水及び40グラムの塩化ナトリウムをそれぞれ投入する。そして蓋体13を閉じて除菌水スイッチ46をオンする。すると、1)撹拌→2)電解→3)撹拌の順に処理が自動的に移行する。1)及び3)の撹拌はそれぞれ例えば30秒間だけ行われ、2)の電解は例えば30分間だけ行われる。ちなみに、1)の撹拌により電解槽21内に投入された塩化ナトリウムが電解槽21内の水に好適に溶解する。3)の撹拌により電解により生成された電解水の液性の均一化が図られる。以上で除菌水の生成は完了となる。この除菌水の水素イオン濃度はpH9.5程度となる。そして、吐水スイッチ45をオンすると、電解槽21内の除菌水は吐水管34から吐出される。その吐出される除菌水を容器等に取り出して所定の除菌に使用する。
【0055】
<3.自動洗浄機能>
次に第1及び第2の電極板52,53の自動洗浄機能について説明する。電解水生成装置11において、電解処理時には第1及び第2の電極板52,53のうちいずれか一方が陽極に、他方が陰極になるように第1及び第2の電極板52,53にそれぞれ所定の電圧が印加される。このとき、陰極側の電極板の表面にはカルシウム等のスケールが析出する。本実施形態では電解水生成装置11による電解水の生成が行われる度に第1及び第2の電極板52,53の極性が反転される。例えばa)洗浄水生成→b)洗浄水生成→c)除菌水生成→d)洗浄水生成→e)除菌水生成の順に電解水の生成が行われた場合において、a)とb)との間、b)とc)との間、c)とd)との間、d)とe)との間において電極板の極性が反転される。即ち、一方の電極に極性が偏らないようにされる。これにより、陰極側の電極板の表面に析出したカルシウム等のスケールが電解される。また、第1及び第2の電極板52,53へのカルシウム等のスケールの付着も抑制される。このような自動洗浄が行われることにより、第1及び第2の電極板52,53の表面はカルシウム等のスケールの付着がほぼ皆無の状態に常に保たれる。その結果、長期にわたって安定した水素イオン濃度の電解水が得られる。
【0056】
<洗浄水の洗浄力の確認>
次に、電解水生成装置11を使用して製造した洗浄水の洗浄力を確認するために、電解の有無による比較及びクエン酸添加の有無による比較を行った。
【0057】
<1.電解の有無による比較>
まず所定濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液を電解した後に所定量のクエン酸を添加した洗浄水と、同濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液を電解することなく当該水溶液に同量のクエン酸を添加した洗浄水とを使用して、所定の洗濯試験を実施し、種々の汚れに関する洗浄力(正確には、洗浄度及び色差)を比較した。
【0058】
<実施例1;電解有り>
実施例1の生成条件は次の通りである。即ち、電解水生成装置11の電解槽21に4リットルの水及び電解質である炭酸水素ナトリウム250グラムをそれぞれ投入し、撹拌することにより約6重量パーセントの炭酸水素ナトリウム水溶液を生成した。この炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH7.92(11.2℃)となった。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を4.5時間だけ電解した。ここで、電解開始時には第1及び第2の電極板52,53にはそれぞれ2.95A(アンペア)の電流が生じ、同じく電解終了時には4.51Aの電流が生じた。電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH8.51(31.5℃)となった。次に、電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液にクエン酸20グラムを投入して撹拌することにより水素イオン濃度の調整を行い洗浄水の原液を得た。この洗浄水の原液の水素イオン濃度はpH7.86(30.5℃)となった。
【0059】
<比較例1;電解無し>
実施例1に対する比較例1の生成条件は次の通りである。即ち、電解水生成装置11の電解槽21に4リットルの水及び電解質である炭酸水素ナトリウム250グラムをそれぞれ投入し、撹拌することにより約6重量パーセントの炭酸水素ナトリウム水溶液を生成した。この炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH7.95(11.2℃)となった。次に、炭酸水素ナトリウム水溶液を電解することなく当該水溶液にクエン酸20グラムを投入して撹拌することにより水素イオン濃度の調整を行い洗浄水の原液を得た。この洗浄水の原液の水素イオン濃度はpH7.24(11.4℃)となった。
【0060】
<洗濯条件>
洗濯条件は次の通りである。即ち、洗濯試験は全自動洗濯機(日立H&L製NW−6EY型)を2台使用して行った。洗濯水としては、前述のようにして生成した実施例1及び比較例1の原液1リットルを水で30倍に希釈し、全体を30リットルとして使用した。そして実施例1及び比較例1の30倍希釈水である洗濯水が満たされた前記洗濯機の洗濯槽に所定の試験布を入れて所定時間だけ洗濯した。
【0061】
洗濯時間は、洗い6分→すすぎ2回→脱水3分とした。試験布としては、湿式人工汚染布((財)洗濯科学協会製)、EMPA101(EMAP Testmaterials製)及びEMPA116(EMAP Testmaterials製)を使用した。EMPA101は、炭素粉末(カーボンブラック)とオリーブオイルとの混合汚れを付着させた汚染布である。EMPA116は、血液とミルクと炭素粉末(カーボンブラック)との混合汚れを付着させた汚染布である。
【0062】
各試験布はそれぞれ20枚のサンプルを用意し、そのうちの10枚を実施例1による洗濯試験用とし、残りの10枚を比較例1による洗濯試験用とした。さらに各試験布において、実施例1による洗濯用の10枚のうちの5枚を一方の全自動洗濯機で洗濯し、残りの5枚を他方の全自動洗濯機で洗濯した。
【0063】
そして洗濯後、試験布はアイロンでしわを伸ばし、24時間乾燥させた後、測定に供するようにした。具体的には、各試験布についてそれぞれ洗浄度(%)及び色差(ΔE)を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0064】
ここで、洗浄度は日本工業規格(JIS C 9811「家庭用電気洗濯機の性能測定方法」)に規定されている次式(ア)により算出した。光の波長は550nmである。
洗浄度(%)=(洗濯後の反射率−洗濯前の反射率)/(原布の反射率−洗濯前の反射率)…(ア)
色差(ΔE)は洗濯試験の前後での色差であり、色差は分光式色差計SQ−2000(日本電色工業(株))を使用して計測した。
【0065】
また表1に示す各試験布の洗浄度及び色差はそれぞれ10枚の試験布の計測値の平均値を示す。
【0066】
【表1】

表1に示されるように、人工汚染布では実施例1を使用した方が比較例1を使用した場合に比べて洗浄度及び色差がそれぞれ大きくなった。EMPA101においても実施例1を使用した方が比較例1を使用した場合に比べて洗浄度及び色差がそれぞれ大きくなった。EMPA116では実施例1を使用した場合と比較例1を使用した場合における洗浄度及び色差はそれぞれほぼ同じとなった。従って、人工汚染布及びEMPA101については実施例1の電解有りの洗浄水の方が比較例1の電解無しの洗浄水よりも洗浄度及び色差はそれぞれ大きくなることがわかる。
【0067】
<2.クエン酸投入の有無による比較>
次に、所定濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液を電解した後に所定量のクエン酸を添加した洗浄水と、同濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液を電解した後にクエン酸を添加しない洗浄水とを使用して、所定の洗濯試験を実施し、種々の汚れに関する洗浄力を比較した。当該洗濯試験は日を変えて4回行った。即ち以下に示す実施例2〜実施例5及び比較例2〜比較例5を生成し、それぞれの洗浄度及び色差について比較した。
【0068】
<実施例2;クエン酸添加有り>
実施例2の生成条件は次の通りである。即ち、電解水生成装置11の電解槽21に4リットルの水(水道水;15.1℃)及び電解質である炭酸水素ナトリウム250グラムをそれぞれ投入し、撹拌することにより約6重量パーセントの炭酸水素ナトリウム水溶液を生成した。この炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH7.97(12.2℃)となった。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を4.5時間だけ電解した。ここで、電解開始時には第1及び第2の電極板52,53にはそれぞれ2.85Aの電流が生じ、同じく電解終了時には4.07Aの電流が生じた。電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH8.50(32.0℃)となった。次に、電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液を2リットルだけ取り出して容器等に保管しておき、残りの2リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液にクエン酸10グラムを投入して撹拌することにより水素イオン濃度の調整を行い洗浄水の原液を得た。この洗浄水の原液の水素イオン濃度はpH7.91(30.2℃)となった。そして前記洗浄水の原液に所定量の水を加えて30倍に希釈した希釈水を得た。
【0069】
<比較例2;クエン酸添加無し>
実施例2に対する比較例2としては、実施例2の洗浄水の製造過程において容器等に取り置きされた電解後の炭酸水素ナトリウムを使用した。
【0070】
洗濯条件については前述の実施例1及び比較例1を使用した洗濯試験の場合と同じであるので、その重複した説明を省略する。
各試験布についてそれぞれ洗浄度(%)及び色差(ΔE)を測定した結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

表2に示されるように、人工汚染布では実施例2を使用した方が比較例2を使用した場合に比べて洗浄度及び色差がそれぞれ大きくなった。EMPA101においては実施例2を使用した場合と比較例2を使用した場合における洗浄度及び色差はそれぞれ同じとなった。EMPA116では実施例2を使用した方が比較例2を使用した場合に比べて洗浄度及び色差はそれぞれ若干大きくなった。従って、人工汚染布及びEMPA116については実施例2のクエン酸入りの洗浄水の方が比較例2のクエン酸無しの洗浄水よりも洗浄度及び色差はそれぞれ大きくなることがわかる。EMPA116では実施例2のクエン酸入りの洗浄水を使用した場合も、比較例2のクエン酸無しの洗浄水を使用した場合も、洗浄度及び色差は変わらない。
【0072】
<実施例3;クエン酸添加有り>
実施例3の生成条件は次の通りである。即ち、電解水生成装置11の電解槽21に4リットルの水(実験室の水道水;15.9℃)及び電解質である炭酸水素ナトリウム250グラムをそれぞれ投入し、撹拌することにより約6重量パーセントの炭酸水素ナトリウム水溶液を生成した。この炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH7.94(13.3℃)となった。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を4.5時間だけ電解した。ここで、電解開始時には第1及び第2の電極板52,53にはそれぞれ3.25Aの電流が生じ、同じく電解終了時には5.17Aの電流が生じた。電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH8.52(37.4℃)となった。次に、電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液を2リットルだけ取り出して容器等に保管しておき、残りの2リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液にクエン酸10グラムを投入して撹拌することにより水素イオン濃度の調整を行い洗浄水の原液を得た。この洗浄水の原液の水素イオン濃度はpH8.07(35.7℃)となった。そして前記洗浄水の原液に所定量の水を加えて30倍に希釈した希釈水を得た。
【0073】
<比較例3;クエン酸添加無し>
実施例3に対する比較例3としては、実施例3の洗浄水の製造過程において容器等に取り置きされた電解後の炭酸水素ナトリウムを使用した。
【0074】
洗濯条件については前述の実施例1及び比較例1を使用した洗濯試験の場合と同じであるので、その重複した説明を省略する。
各試験布についてそれぞれ洗浄度(%)及び色差(ΔE)を測定した結果を表3に示す。
【0075】
【表3】

表4に示されるように、人工汚染布では実施例3を使用した方が比較例3を使用した場合に比べて洗浄度及び色差がそれぞれ大きくなった。EMPA101においては実施例3を使用した場合と比較例3を使用した場合における洗浄度及び色差はそれぞれほぼ同じとなった。EMPA116では実施例3を使用した方が比較例3を使用した場合に比べて洗浄度及び色差はそれぞれ若干大きくなった。従って、これまでの2回(実施例2,3)の洗濯試験結果と同様に、人工汚染布及びEMPA116については実施例3のクエン酸入りの洗浄水の方が比較例3のクエン酸無しの洗浄水よりも洗浄度及び色差はそれぞれ大きくなることがわかる。EMPA116では実施例3のクエン酸入りの洗浄水を使用した場合も、比較例3のクエン酸無しの洗浄水を使用した場合も、洗浄度及び色差は変わらない。
【0076】
<実施例4;クエン酸添加有り>
実施例4の生成条件は次の通りである。即ち、電解水生成装置11の電解槽21に4リットルの水(実験室の水道水;15.9℃)及び電解質である炭酸水素ナトリウム250グラムをそれぞれ投入し、撹拌することにより約6重量パーセントの炭酸水素ナトリウム水溶液を生成した。この炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH7.96(13.4℃)となった。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を4.5時間だけ電解した。ここで、電解開始時には第1及び第2の電極板52,53にはそれぞれ3.23Aの電流が生じ、同じく電解終了時には4.77Aの電流が生じた。電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液の水素イオン濃度はpH8.87(34.0℃)となった。次に、電解後の炭酸水素ナトリウム水溶液を2リットルだけ取り出して容器等に保管しておき、残りの2リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液にクエン酸10グラムを投入して撹拌することにより水素イオン濃度の調整を行い洗浄水の原液を得た。この洗浄水の原液の水素イオン濃度はpH8.16(33.4℃)となった。そして前記洗浄水の原液に所定量の水を加えて30倍に希釈した希釈水を得た。
【0077】
<比較例4;クエン酸添加無し>
実施例4に対する比較例4としては、実施例4の洗浄水の製造過程において容器等に取り置きされた電解後の炭酸水素ナトリウムを使用した。
【0078】
洗濯条件については前述の実施例1及び比較例1を使用した洗濯試験の場合と同じであるので、その重複した説明を省略する。
各試験布についてそれぞれ洗浄度(%)及び色差(ΔE)を測定した結果を表4に示す。
【0079】
【表4】

表5に示されるように、人工汚染布では実施例4を使用した方が比較例4を使用した場合に比べて洗浄度及び色差がそれぞれ大きくなった。EMPA101においては実施例4を使用した場合と比較例4を使用した場合における洗浄度及び色差はそれぞれほぼ同じとなった。EMPA116では実施例4を使用した方が比較例4を使用した場合に比べて洗浄度及び色差はそれぞれ若干大きくなった。従って、これまでの3回(実施例2,3)の洗濯試験結果と同様に、人工汚染布及びEMPA116については実施例4のクエン酸入りの洗浄水の方が比較例5のクエン酸無しの洗浄水よりも洗浄度及び色差はそれぞれ大きくなることがわかる。ただし、これまでの3回(実施例2,3)の洗濯試験結果と比較すると、人工汚染布及びEMPA116について、実施例4の比較例4に対する洗浄度及び色差の向上幅は小さくなっている。EMPA116では実施例4のクエン酸入りの洗浄水を使用した場合も、比較例4のクエン酸無しの洗浄水を使用した場合も、洗浄度及び色差は変わらない。
【0080】
<実施形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)隔壁を有さない電解槽21に被電解液として炭酸水素ナトリウムを溶質とした水溶液を供給して電気分解することにより得られた電解液にクエン酸を添加することにより洗浄水を生成するようにした。隔壁を有する電解槽を使用して洗浄水を生成するようにした場合と異なり、被電解液を電気分解して得られた陽極水と陰極水とを電気分解終了後に混合する必要がない。このため、洗浄水の製造の簡素化が図られる。また、洗浄水の液性のばらつきが抑制され、液性の均一化が図られる。所定の洗浄力も得られる。
【0081】
(2)また、例えば電解液の加熱、撹拌、曝気又は放置といった手法により電解液を軟水化して洗浄力を確保する必要がなく、単にクエン酸を電解液に投入するだけで所定の洗浄力が確保される。このため、洗浄水の製造の簡素化が図られる。
【0082】
(3)炭酸水素ナトリウムの濃度が6.0重量%に、またクエン酸の濃度が2.0重量%となるように、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸をそれぞれ溶媒である水に添加するようにした。これにより、洗浄水において所定の洗浄力が確保される。
【0083】
(4)被電解液としての炭酸水素ナトリウム水溶液は、前記無隔電解槽内に溶媒である水と溶質である炭酸水素ナトリウムとを投入して撹拌することにより生成するようにした。炭酸水素ナトリウムは水に溶けにくいので、撹拌することにより好適に水に溶解させることができる。その結果、炭酸水素ナトリウム溶液の電解も好適に行われる。
【0084】
(5)洗浄水の製造過程において、電解液にクエン酸を添加した後に撹拌するようにした。これにより、クエン酸が電解液に好適に溶解し、洗浄水の液性の均一化が図られる。
(6)無隔の電解槽21を使用することにより、当該電解槽21にモータ24、撹拌部材22、磁石26からなる撹拌手段を設けることが可能となる。このため、電解液又は被電解液の撹拌作業効率が向上し、ひいては洗浄水の生成効率を向上させることができる。ちなみに、隔膜を有する電解槽を使用するようにした場合には、例えば被電解液又は電解液を槽外に取り出し、しかも手動で撹拌作業を行う必要があり、面倒である。また、両電極は無隔の電解槽21に対して着脱可能としたので、モータ24等から構成される撹拌手段の電解槽21への組み立て作業が簡単になる。
【0085】
(7)モータ24等の撹拌手段は、電解槽21の底部に設けるようにした。このため、撹拌手段を例えば電解槽21の開口部近傍に設けるようにした場合に比べて、モータ24等の取付けが簡単である。また、電解槽21への水及びクエン酸の投入作業等の邪魔になることもない。
【0086】
(8)電解槽21にはその底部に配置されたモータ24と、モータ24の出力軸24aに一体回転可能とされた磁石26と、電解槽21の内底面において磁石26により生じる磁界の影響を受け得る位置に移動自在に配置された磁性体よりなる撹拌部材22とを備えた。そして、モータ24の駆動による磁石26の回転に伴って撹拌部材22を回転させるようにした。例えばモータ24の出力軸24aを電解槽21の底壁を貫通させるようにした場合と異なり、当該出力軸24aと電解槽21との間の水密構造等を設ける必要がない。このため、電解水生成装置11の構成の簡素化が図られる。
【0087】
(9)電解槽21を収容する上部が開口した本体ケース12と、当該本体ケース12の上部開口部12aを閉鎖する蓋体13とを備えた。そして、その蓋体13にはクエン酸投入手段として薬剤投入口13aを開口形成するようにした。このため、蓋体13を開けなくてもクエン酸の投入が可能となる。
【0088】
(10)洗浄水は例えば被洗浄物に噴霧して拭き取るようにしたり、当該洗浄水に被洗浄物を浸漬したりして使用される。また、洗浄水を所定倍に希釈し、その希釈した希釈水を例えば全自動洗濯機の洗濯槽(撹拌槽)へ投入し、被洗浄物と共に撹拌するようにして使用することもできる。このように、洗浄水は被洗浄物の種類等に応じて任意の使用形態で使用することができる。
【0089】
<別の実施形態>
尚、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・炭酸水素ナトリウムの濃度は1.0〜8.0重量%の範囲内で、またクエン酸の濃度は0.1〜2.0重量%範囲内で適宜調節するようにしてもよい。この範囲内であれば、洗浄水の洗浄力は確保される。
【0090】
・洗浄水を生成する場合、炭酸水素ナトリウム水溶液を生成するが、その際に撹拌と電気分解とを交互に複数回繰り返すようにしてもよい。
<別の技術的思想>
(イ)所定の被電解液を電気分解して所定の電解液を生成する陰陽両極間に隔膜を有しない無隔電解槽と、前記無隔電解槽に設けられて当該無隔電解槽内の被電解液又は電解液を撹拌する撹拌手段と、を備え、前記被電解液は炭酸水素ナトリウム水溶液とし、前記無隔電解槽にはその内部にクエン酸を投入するためのクエン酸投入手段を設けるようにした洗浄液の製造装置。この構成によれば、無隔電解槽を使用することにより、当該無隔電解槽に撹拌手段を設けることが可能となる。このため、電解液又は被電解液の撹拌作業効率が向上し、ひいては洗浄水の生成効率を向上させることができる。ちなみに、隔膜を有する有隔電解槽を使用するようにした場合には、例えば被電解液又は電解液を槽外に取り出し、しかも手動で撹拌作業を行う必要があり、面倒である。
【0091】
(ロ)前記(イ)項に記載の洗浄液の製造装置において、前記撹拌手段は、前記無隔電解槽の底部に配置されたモータと、前記モータの出力軸に一体回転可能とされた磁石と、前記無隔電解槽の内底面において前記磁石により生じる磁界の影響を受け得る位置に移動自在に配置された磁性体よりなる撹拌部材と、を備え、前記モータの駆動による前記磁石の回転に伴って撹拌部材を回転させるようにした洗浄液の製造装置。この構成によれば、電解槽の底部に配置されたモータの駆動による磁石の回転に伴って撹拌部材が当該磁石により生じる磁界の影響を受けて間接的に回転する。このため、例えばモータの出力軸を無隔電解槽の底壁を貫通させるようにした場合と異なり、当該出力軸と無隔電解槽との間の水密構造等を設ける必要がない。このため、当該製造装置の構成の簡素化が図られる。
【0092】
(ハ)前記無隔電解槽を収容するための上部が開口した本体ケースと、当該本体ケースの上部開口部を閉鎖する蓋体とを備え、前記蓋体には前記クエン酸投入手段としてクエン酸投入口を開口形成するようにした前記(イ)項に記載の洗浄液の製造装置。この構成によれば、無隔電解槽を収容する本体ケースの上部開口部を閉鎖する蓋体にクエン酸投入手段を開口形成するようにしたので、蓋体を開けなくてもクエン酸の投入が可能となる。
【0093】
(ニ)請求項3又は請求項4に記載の洗浄液の製造方法において、前記電解液は、前記無隔電解槽内に溶媒である水と溶質である炭酸水素ナトリウムとを投入して撹拌と電気分解とを交互に複数回繰り返すことにより生成するようにした洗浄液の製造方法。このようにすれば、電解液の液性のいっそうの均一化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態の電解水生成装置の部分断面図。
【図2】同じく電解槽を下部からみた斜視図。
【図3】(a)は同じく吐水管未装着時の収納部を示す電解槽の要部斜視図、(b)は同じく吐水管装着時の収納部を示す電解槽の要部斜視図。
【図4】(a)は同じく電解水生成装置の斜視図、(b)は操作パネルを示す電解水生成装置の要部平面図。
【図5】同じく第1及び第2の電極板のホルダ部材を示す電解槽の平断面図。
【図6】同じく第1及び第2の電極板が接続される端子部を示す電解槽の要部斜視図。
【図7】同じく蓋体を開放した状態の電解水生成装置の斜視図。
【図8】同じく薬剤投入口蓋を開放した状態の電解水生成装置の斜視図。
【図9】同じく電解水生成装置の電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0095】
11…電解水生成装置(洗浄水の製造装置)、12…本体ケース、13…蓋体、13a…薬剤投入口(クエン酸投入手段)、21…電解槽、22…撹拌手段を構成する撹拌部材、24…撹拌手段を構成するモータ、24a…撹拌手段を構成する出力軸、26…撹拌手段を構成する磁石、52…第1の電極板(陰極又は陽極)、53…第2の電極板(陽極又は陰極)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰陽両極を有する電解槽に所定の被電解液を供給して電気分解を行うことにより得られた電解液を利用して生成された洗浄液であって、
前記電解槽は陰陽両極間に隔膜を有しない無隔電解槽とし、その無隔電解槽に前記被電解液として炭酸水素ナトリウムを溶質とした水溶液を供給して電気分解することにより得られた電解液にクエン酸を添加することにより生成された洗浄液。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄液において、
炭酸水素ナトリウムの濃度を1.0〜8.0重量%とし、クエン酸の濃度を0.1〜2.0重量%とした洗浄液。
【請求項3】
陰陽両極間に隔膜を有しない無隔電解槽内で炭酸水素ナトリウム水溶液を被電解液として電気分解することにより電解液を生成し、その後当該電解液にクエン酸を添加するようにした洗浄液の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄液の製造方法において、
炭酸水素ナトリウムの濃度が1.0〜8.0重量%に、またクエン酸の濃度が0.1〜2.0重量%となるように、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸をそれぞれ溶媒である水に添加するようにした洗浄液の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の洗浄液の製造方法において、
被電解液としての炭酸水素ナトリウム水溶液は、前記無隔電解槽内に溶媒である水と溶質である炭酸水素ナトリウムとを投入して撹拌することにより生成し、その生成した炭酸水素ナトリウム水溶液を電気分解することにより電解液を生成し、その生成した電解液にクエン酸を添加した後に撹拌するようにした洗浄液の製造方法。
【請求項6】
隔膜を有しない無隔電解槽と、当該無隔電解槽内に収容された一対の電極とを備え、両電極間に所定の電圧を印加することにより前記無隔電解槽内の被電解液を電気分解して電解液を生成し、その生成した電解液を利用して所定の洗浄液を製造するようにした洗浄液の製造装置であって、
前記両電極は前記無隔電解槽に対して着脱可能に設けると共に、当該無隔電解槽には当該無隔電解槽内の被電解液又は電解液を撹拌する撹拌手段を設けるようにした洗浄液の製造装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の洗浄液を被洗浄物に噴霧して拭き取るようにした洗浄方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の洗浄液を水で希釈するとともにその希釈した洗浄液を撹拌槽へ投入し、被洗浄物とともに撹拌するようにした洗浄方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の洗浄液に被洗浄物を浸漬するようにした洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−23241(P2007−23241A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211813(P2005−211813)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】