説明

活性エネルギー線硬化性樹脂用帯電防止剤、及び該帯電防止剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂。

【課題】表面抵抗値を低下させることが出来る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物用の帯電防止剤、および該帯電防止剤を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式および/又はそのジアルキルリン酸エステル型の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物用帯電防止剤。


(RはC8〜13のアルキル基を示し、0≦n≦6)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化型樹脂用帯電防止剤、及び該帯電防止剤を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギー線硬化型樹脂組成物は、様々な基材のコーティングや接着等に使用されている。かかるエネルギー線硬化型樹脂組成物においては、帯電し易く、塵や埃が付着しやすいため、用途によっては帯電防止性能が要求される。
そこで、エネルギー線硬化型樹脂組成物の帯電防止性能を向上させるため様々な提案がなされている。例えば、分子中にリン酸エステル、並びにアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を含有する単量体を含有する被覆組成物(特許文献1)、4級アンモニウム塩基および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含む紫外線硬化型樹脂組成物(特許文献2)が開示されている。しかし、これらの組成物は一定の表面抵抗値を下げる効果が認められるが、より優れた帯電防止性能を有するエネルギー線硬化型樹脂組成物用の帯電防止剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−006064号公報
【特許文献2】特開2010−285480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の帯電防止性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物より表面抵抗値を低下させることが出来る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物用の帯電防止剤および該帯電防止剤を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、従来の帯電防止性能を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物においては、帯電防止性能を発揮するリン酸エステル基や4級アンモニウム塩基が樹脂組成物中に分散することにより表面抵抗値が高くなる、すなわち帯電防止性能が低下することに着目し、特定のリン酸エステル化合物の場合は、樹脂組成物表面に局在化し優れた表面抵抗値を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物用帯電防止剤を第一の要旨とする。
【0006】
【化3】

【0007】
【化4】

(式中、Rは炭素数8〜13のアルキル基を示し、0≦n≦6である。)
本発明の第二の要旨は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物用帯電防止剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である。
さらに、本発明は前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の表面抵抗が10の12乗Ω以下である事が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物用帯電防止剤(以下、帯電防止剤と称す)は下記一般式(1)及び/又は(2)で示される化合物である。
【0009】
【化5】

【0010】
【化6】

(式中、Rは炭素数8〜13のアルキル基を示し、0≦n≦6である。)
【0011】
一般式(1)及び/又は(2)におけるRは炭素数8〜13のアルキル基である。これらの置換基はとくに限定されるものではないが、オクチル、ノニレル、デシル、ドデシル、ウンデシル、トリデシル等の直鎖状のアルキレン基或いは、トリメチルヘキシル、メチルヘプチル、ジメチルヘプチル、トリメチルヘプチル、テトラメチルヘプチル、エチルヘプチル、メチルオクチル、メチルノニル、メチルデシル、メチルドデシル、メチルウンデシル、メチルトリデシル等の分岐状のアルキル基を示すことができる。
【0012】
一般式(1)及び/又は(2)におけるnは0以上、6以下である。nが6を超える場合は、帯電防止性能が十分でない、すなわち表面抵抗が10の13乗Ω以上となる問題が生じる。
【0013】
本発明の帯電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いても良い。
【0014】
本発明の帯電防止剤は、市販のアルキル(エーテル)リン酸エステル型界面活性剤を使用することが出来る。例えば、東邦化学株式会社製「フォスファノール(登録商標)シリーズ」、株式会社ADEKA製「アデカコール(登録商標)PS/CS/TSシリーズ」、第一工業製薬株式会社製「プライサーフ(登録商標)シリーズ」等が挙げられる。
【0015】
本発明の帯電防止剤の配合量は特に限定されないが、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して、3〜15重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。 3重量部未満であると十分な導電性能が得られず、15重量部を超えるとブリードという問題が生じる。
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂は、本発明の目的とする用途に従来から使用されているものが特に限定無く使用できる。
【0017】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂の好ましい例としては、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種又は2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーを含有するものを挙げることができる。
【0018】
また、1液タイプや2液タイプのウレタン樹脂、熱重合または放射重合によって重合可能なアクリル樹脂やエポキシ樹脂なども挙げることが出来る。
【0019】
上記放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などが挙げられる。なお、放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤を添加する。光重合開始剤は、放射線反応成分の種類に応じ、その重合反応の引き金となり得る適当な波長の紫外線を照射することにより、ラジカルもしくはカチオンを生成する物質であれば良い。
【0020】
光ラジカル重合開始剤としてはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフニノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステルなどが挙げられる。
【0021】
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどが挙げられる。
【0022】
光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0023】
さらにアミン類などの光開始重合助剤を併用することも可能である。前記光開始助剤としては、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどがあげられる。上記光重合開始助剤については、2種以上併用することも可能である。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は前記活性エネルギー線硬化型樹脂に帯電防止剤を所定量配合して常法により混合することにより得られる。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記重合開始剤や重合開始助剤の他、希釈溶剤、滑剤、レべリング剤、フィラー等を必要に応じて添加することもできる。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の表面抵抗値が10の12乗Ω以下であることが好ましく、より好ましくは10の10乗Ω以下である。表面抵抗値が10の12乗Ωを超える場合は帯電による埃の付着等という問題が生じる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中、部及び%は特に断らない限り重量基準である。
1.活性エネルギー線硬化型樹脂の合成
〔合成例1〕
フラスコにビスフェノールA型グリシジルエーテル(エポキシ当量=450)のアクリル酸エステル3445g(3.3モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.81g、キシレンジイソシアネート188g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1%になるまで反応させ、活性エネルギー線硬化型樹脂を得た。
〔合成例2〕
フラスコにビスフェノールA型グリシジルエーテル(エポキシ当量=450)のアクリル酸エステル3445g(3.3モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.81g、フェノキシエチルアクリレート2422g、キシレンジイソシアネート188g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1%になるまで反応させ、活性エネルギー線硬化型樹脂を得た。
2.活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調整
上記で得られた合成例1又は2に下記表1に示す帯電防止剤を表2に示す割合(重量部)でそれぞれ配合し、更に光重合開始剤であるα−ヒドロキシアルキルフェノン(製品名:イルガキュア184、BASF社製)を3重量%、希釈剤として酢酸ブチルを50重量%を配合し、混合して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

3.活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の評価
<評価サンプルの作成>
上記により得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をPETフィルム(東レ製ルミラー)(コロナ処理面)へスピンコート(500rpm,5sec⇒1500rpm、15sec)し、80℃で10分間乾燥後、高圧水銀灯200mj/cm2の紫外線照射により評価サンプルを作成した。
<表面抵抗測定条件>
株式会社アドバンテスト製 R8340 ULTRA HIGH RESISTANCE METERを用いて、温度20℃、湿度65%の条件下で測定した。評価結果は上記表1に示した。
【0030】
表2に示された結果から帯電防止剤が、一般式(1)におけるR、nが所定の範囲から外れた場合(比較例2〜3)、一般式(1)と構造が異なる場合(比較例5〜7)は表面抵抗値が10の12乗Ωを超えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の帯電防止剤及びこれを用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光学フィルム用ハードコート、光学フィルム、帯電防止保護フィルムに好適に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は(2)で表されることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物用帯電防止剤。
【化1】

【化2】

(式中、Rは炭素数8〜13のアルキル基を示し、0≦n≦6である。)
【請求項2】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物用帯電防止剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
表面抵抗が10の12乗Ω以下である事を特徴とする請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−219157(P2012−219157A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85008(P2011−85008)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)