説明

流体機械

【目的】 高圧力であって圧送方向の切り換えを簡単にする。
【構成】 取付角度が可変の動翼11を有した翼車12,13に、その回転方向により最適な角度に自動的に変更させるための動翼調節機構14を形成する。この翼車12,13を同軸上に二台設けると共に、これら翼車12,13を互いに反対方向に正逆回転させる回転駆動機構15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動翼を有する翼車を備えた流体機械に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、道路トンネルや地下空間施設等においては、換気或いは火災時の排気を行うための送風機(ファン)を設置する必要がある。例えば道路トンネルに設置される送風機は、トンネルの天井部や側壁部に道路延長方向に沿って取付けられ、上り下りの交通量や坑口間の気圧差に応じて送風方向を変えることができるようになっている。
【0003】そして近来にあっては、トンネルの長大化等に伴って、より強い換気力を発揮する送風機が望まれている。従来の噴流式換気ファンは、平板状の前後縁対称の動翼を使用しているため、噴流速度は約30m/s が限界であり、例えば50m/s まで昇圧(約2.8 倍の昇圧力)することは困難であった。この送風力の向上を省スペース、省エネルギーで行うものとしては、船舶の推進機等で実績のある二重反転機構を備えた送風機を採用することが考えられる。
【0004】図4に示すように、この種の二重反転送風機は、円筒状のケーシング1内に二台の翼車2,3を同軸上に設けて、一段目の翼車2の裏側に生ずる旋回流(回転エネルギー)4を、二段目の翼車3を一段目の翼車2の回転方向5と逆の方向6に回転させることにより整流し回収して、有効な圧力エネルギーを得ようとするものである(図5参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ただし上記二重反転送風機においては、その送風力を低下させることなく風向を切り換え得るものはなかった。すなわち単にそれぞれの翼車2を逆回転させても、所望する圧力の逆方向送風は得られない。従って道路トンネル等に設置する場合は、ケーシング1の取付け方向をその都度変えるほかなく、これを自動的に行うには複雑で大規模な支持機構を備える必要があった。
【0006】そこで本発明は、上記事情に鑑み、高圧力でしかも圧送方向(風向)を簡単に切り換えることの出来る流体機械を提供すべく創案されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、取付角度が可変の動翼を有した翼車に、その回転方向により最適な角度に自動的に変更させるための動翼調節機構を形成し、この翼車を同軸上に二台設けると共に、これら翼車を互いに反対方向に正逆回転させる回転駆動機構を設けたものである。
【0008】
【作用】上記構成によって、翼車が互いに反対方向に回転することで、二重反転の作用により流体を高加圧すると共に、回転駆動機構による回転方向の切り換えにより、動翼調節機構が動翼の取付角度を変え、加圧力が低下することなく直ちに圧送方向が逆方向に変換される。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0010】図1は、本発明に係わる流体機械の一実施例を示したものであり、道路トンネルに採用される送風装置として構成した場合を示している。
【0011】この送風装置は、取付角度が可変の動翼11を有した二台の翼車12,13に、その回転方向により動翼11を自動的に最適な取付角度とする動翼調節機構14がそれぞれ形成され、これら二台の翼車12,13が同軸(C)上に設けられていると共に、翼車12,13を互いに反対方向に正逆回転させる回転駆動機構15が設けられて構成されている。
【0012】翼車12,13は、円筒状のケーシング16内に収容されており、所定の流線形断面で成る動翼11が軸部17,18の周方向に等間隔で設けられ、その動翼軸19を中心に回転自在となるように支持されている。
【0013】回転駆動機構15は、ケーシング16内に支持ストラッド(図示略)を介して支持されてそれぞれの翼車12,13に連結する二台の駆動モータ20,21と、これら駆動モータ20,21の回転方向を必要に応じて変更するための制御盤22とで構成されている。すなわち実質的に同じ構成の送風機が、背中合わせに二基設けられていることになる。そして図2に示すように、図中右方向aの送風とする場合(A)には、第一の翼車12を左側から見て時計回り方向αに、第二の翼車13を反時計回り方向βに回転させることで、第一の翼車12による旋回流S1 を第二の翼車13が整流すると共にその旋回エネルギーを回収するようになっている。またその逆の方向bの送風を行う場合(B)には、第一の翼車12を反時計回りβに、第二の翼車13を時計回りαにそれぞれ回転させて、第二の翼車13による旋回流S2 を第一の翼車12により整流・回収させることになる。
【0014】動翼調節機構14は、各動翼11の動翼軸19に設けられた小歯車23と、これら小歯車23に噛合する一個の大歯車24と、大歯車24の回転を緩衝させる緩衝装置25と、大歯車24を所定の位置で停止させるための停止部材26とにより構成されている。
【0015】図3に第二の翼車13に備えられた動翼機構14の詳細を示す。なお第一の翼車12も同様に構成されている。その小歯車23は、中空状に形成された軸部18内に設けられ、軸部17の周壁27に回転自在に支持された動翼軸19の内方端に固定されている。大歯車24は、翼車13の主軸(回転軸心C)と同軸上に設けられ、駆動モータ21の出力軸28が連結されている側壁29と反対側の側壁30に回転自在に支持されている。緩衝装置25は、大歯車24の回転軸31に取り付けられた羽根車32と、この羽根車32を収容する羽根箱33とで成り、羽根箱33に満たされた流体(油)の抵抗力により、翼車13の回転始動時において大歯車24を制動して、翼車13との相対的な回転角度を生ぜしめるようになっている。停止部材26は、大歯車24の裏側に取り付けられた突起34と、側壁30に所定の周方向距離を隔てて取り付けられた二個のストッパ35とで成り、突起34がいずれか一方のストッパ35に当接することで、翼車13の正転時及び逆転時に、大歯車24を所定位置に停止させるようになっている。
【0016】次に本実施例の作用を説明する。
【0017】図1中右方向aに送風するに際して、制御盤22の操作によりそれぞれの駆動モータ20,21を作動させて、第一の翼車12を図中左側から見て時計回りに、第二の翼車13を反時計回りに回転させる。このとき大歯車24は、それぞれの翼車12,13と同じ方向に回転するが、緩衝装置14の羽根車32の制動力により翼車12,13よりも回転が遅らされて、回転位相差が生じる。この位相差により小歯車23が回転して動翼11が動翼軸19回りに回転移動し、大歯車24が停止した位置、すなわちストッパ35の位置に相応する最適な角度に調節される。これで、第一の翼車12により生じた旋回流S1 は、逆方向に回転する第二の翼車13が整流すると共にその旋回エネルギーを回収し、所望の強い送風が形成される。
【0018】また逆の方向bの送風を行う場合には、駆動モータ20,21をそれぞれ逆方向の回転に切り換える。この切り換えにより第一の翼車12が反時計回りに、第二の翼車13は時計回りにそれぞれ回転し、翼車12,13と大歯車24との間には逆方向の回転位相差が生じて、各動翼11は約180 度回転して逆方向の送風に最適な角度に位置される。これで、第二の翼車13による旋回流S2 が第一の翼車12により整流される。
【0019】このように、動翼調節機構14を有した翼車12,13と駆動モータ20,21とで成る送風機を二基直列に設けて、各々の駆動モータ20,21を互いに反対の方向に回転させるようにしたので、二重反転の作用により従来のトンネル換気用噴流式送風機に比べて2 倍以上の昇圧力が得られると共に、約10%動力を節減できる。そして、操作盤22の操作により駆動モータ20,21の回転方向を変えるだけで送風方向を切り換えることができ、非常時等の大量排気等にも迅速に対応できると共に、簡単でコンパクトな構造であることで、狭い場所にも容易に設置でき、極めて汎用性に富む。
【0020】また本実施例の動翼調整機構14は、翼車12,13の回転力を利用して動翼11の取付角度を変えるものであるので、従来の動翼可変機構のような複雑な駆動装置を必要とせず、製造コストの低減に寄与できる。
【0021】なお動翼調整機構及び回転駆動機構は本実施例に限るものではなく、同様な機能で成るものであればどのような機構でも構わない。
【0022】また、緩衝装置25は、抵抗力を流体摩擦でなく、特開平1-134099号に示すように電磁力によって与えられる方法(電磁ブレーキ)でもよい。この場合、動翼が所定の角度に設定された後は電磁ブレーキを容易に解放することができるので、緩衝装置25の力が駆動モータ20,21の抵抗となって動力上の損失となることはない。
【0023】さらに本実施例においては道路トンネルに設置される送風装置を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、地下空間施設などの閉鎖空間等に広く適用されるものである。
【0024】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0025】角度可変の動翼を有した翼車に、両方向の圧送に最適な角度に自動的に変更させる動翼調節機構を形成し、この翼車を同軸上に二台設けると共に、これら翼車を互いに反対方向に正逆回転させる回転駆動機構を設けたので、高圧力・高効率の流体加圧が達成されると共に、その加圧方向を容易に且つ迅速に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる流体機械の一実施例を示した側断面図である。
【図2】図1の作用を説明するための側面図であり、(A)は右方向の送風の場合、(B)は左方向の送風の場合を示したものである。
【図3】図1の要部を示した側断面図である。
【図4】従来の流体機械たる二重反転送風機を示した斜視図である。
【図5】図4の作用を示した側面図である。
【符号の説明】
11 動翼
12,13 翼車
14 動翼調節機構
15 回転駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】 取付角度が可変の動翼を有した翼車に、その回転方向により最適な角度に自動的に変更させるための動翼調節機構を形成し、該翼車を同軸上に二台設けると共に、これら翼車を互いに反対方向に正逆回転させる回転駆動機構を設けたことを特徴とする流体機械。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate