説明

流体精製装置及び流体精製方法

【課題】不純物濃度を必要以上に下げず、必要以上に除去材が使用されることを抑えることで、除去材が破過するまでの期間を延ばし、除去材の交換頻度を低減することを可能にし、流体の精製にかかる費用を低減できる流体精製装置を提供する。
【解決手段】流体G中の不純物を除去する除去材2が内部に充填された容器3と、不純物を含む流体Gを容器3に供給する供給路L1と、除去材2により不純物が除去された流体Gを容器3から排出する排出路L2と、を備えた流体精製装置1であって、供給路L1から容器3をバイパスして排出路L2へと連通するバイパス路L3と、バイパス路L3における流量を調整するためのバルブV1と、排出路L2における流体G中の不純物の濃度を測定する分析計4と、分析計4により測定された不純物の濃度が目標濃度以下となるようにバルブV1を制御するバルブ開度制御部5と、を備えた流体精製装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の不純物を除去する除去材が内部に充填された容器と、前記不純物を含む流体を前記容器に供給する供給路と、前記除去材により前記不純物が除去された流体を前記容器から排出する排出路と、を備えた流体精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体中の不純物を除去し流体を精製する技術としては、不純物を除去する除去材を充填した除去容器の中に流体を通流し、不純物濃度を、許容濃度未満にする技術が一般に利用されている。
【0003】
上述の従来技術において、単に除去容器内に流体を通流した場合には、除去材は可能な限り不純物を除去してしまう。このため、一般的に、許容濃度が高い場合であっても、除去材が破過するまでの大部分の期間において、許容濃度以上に不純物濃度が下がることとなる。すなわち、大部分の期間において必要以上に除去材が使用されるために、除去材が破過するまでの期間が短くなり、除去材の交換頻度を不要に高めてしまう、という問題があった。
【0004】
この問題の一部に対応し得る技術としては、特許文献1に開示の技術がある。特許文献1においては、精製対象の流体である多成分ガス媒体に対して、一部の成分(不純物)の濃度が所定値より高い場合には、除去材である活性炭吸着材に通し、所定値より小さい場合には、活性炭吸着材を通さないことで、活性炭吸着材の劣化を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283781号公報(請求項5、段落0020など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記技術では、不純物の濃度が所定値より高い場合には、従来技術同様、単に除去容器内に多成分ガス媒体を通流させている。このため、不純物の濃度が所定値より高い場合には、許容濃度以上に不純物濃度が下がってしまい、除去材が破過するまでの期間が短くなるという問題は依然として残っている。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、不純物濃度を必要以上に下げず、必要以上に除去材が使用されることを抑えることで、除去材が破過するまでの期間を延ばし、除去材の交換頻度を低減することを可能にするものである。そして、これにより流体の精製にかかる費用を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流体精製装置の特徴構成は、流体中の不純物を除去する除去材が内部に充填された容器と、前記不純物を含む流体を前記容器に供給する供給路と、前記除去材により前記不純物が除去された流体を前記容器から排出する排出路と、を備えた流体精製装置であって、前記供給路から前記容器をバイパスして前記排出路へと連通するバイパス路と、前記バイパス路における流量を調整するための流量調整手段と、前記排出路において前記バイパス路が連通する箇所よりも下流側における流体中の前記不純物の濃度を測定する不純物濃度測定手段と、前記不純物濃度測定手段により測定された前記不純物の濃度が目標濃度以下で当該目標濃度から所定の範囲内にある濃度となるように前記流量調整手段を制御する流量制御手段と、を備えた点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、不純物の濃度が、目標濃度以下で所定の範囲内にある濃度となるように流量調整手段を制御することにより、供給路から供給される流体を、除去材が内部に充填された容器とバイパス路とに分配する。これにより、不純物の精製に必要となる量の流体だけを容器に供給することができ、不純物濃度を必要以上に下げず、必要以上に除去材が使用されることを抑えることができる。即ち、容器内を通過した流体にあっては、不純物濃度が限界まで低下するが、バイパス路を通過する流体の不純物濃度は供給路における流体の不純物濃度のままとなる。このため、容器内を通過する流体とバイパス路を通過する流体の比率を調整することで、バイパス路が排出路と連通する箇所より下流においては、流体の不純物濃度を目標濃度に対して所定の範囲内に収められる。よって、除去材が破過するまでの期間を延ばし、除去材の交換頻度を低減することができる。このため、この特徴構成によれば、流体の精製にかかる費用を低減することができる。
【0010】
ここで、前記流量制御手段が、前記不純物濃度測定手段により測定された前記不純物の濃度が前記目標濃度となるように前記流量調整手段を制御するように構成されると好適である。
【0011】
この構成によれば、精製される流体の不純物濃度を許容される目標濃度とし、除去材の使用を必要最小限に抑えることができる。よって、除去材が破過するまでの期間を一層延ばすことができ、除去材の交換頻度を低減することができる。このため、この特徴構成によれば、流体の精製にかかる費用を一層低減することができる。
【0012】
また、前記流体が液化石油ガスであり、前記除去材が活性炭であり、前記不純物が硫黄化合物であると好適である。
【0013】
本発明に係る流体精製装方法の特徴構成は、流体中の不純物を除去する除去材が内部に充填された容器と、前記不純物を含む流体を前記容器に供給する供給路と、前記除去材により前記不純物が除去された流体を前記容器から排出する排出路と、前記供給路から前記容器をバイパスして前記排出路へと連通するバイパス路と、前記バイパス路における流量を調整するための流量調整手段と、を備えた流体精製装置を使用し、前記排出路において前記バイパス路が連通する箇所よりも下流側における流体中の前記不純物の濃度を測定する不純物濃度測定工程を実行するとともに、前記流量調整手段を働かせて、前記バイパス路を流れる流体の流量と、前記容器から前記排出路へと流れる流体の流量との比率を調整し、前記不純物濃度測定工程で測定される前記不純物の濃度を目標濃度以下で、当該目標濃度から所定の範囲内にある濃度とする流量調整工程を実行して、前記不純物の濃度が前記目標濃度以下の流体を精製する点にある。
【0014】
この特徴構成によれば、不純物の濃度が、目標濃度以下で所定の範囲内にある濃度となるように流量調整手段を働かせることにより、供給路から供給される流体を、除去材が内部に充填された容器とバイパス路とに分配する。これにより、不純物の精製に必要となる量の流体だけを容器に供給することができ、不純物濃度を必要以上に下げず、必要以上に除去材が使用されることを抑えることができる。よって、除去材が破過するまでの期間を延ばし、除去材の交換頻度を低減することができる。このため、この特徴構成によれば、流体の精製にかかる費用を低減することができる。
【0015】
ここで、前記流量調整工程で、前記不純物濃度測定工程において測定する前記不純物の濃度が前記目標濃度となるように前記流量調整手段を働かせると好適である。
【0016】
この構成によれば、精製される流体の不純物濃度を許容される目標濃度とし、除去材の使用を必要最小限に抑えることができる。よって、除去材が破過するまでの期間を一層延ばすことができ、除去材の交換頻度を低減することができる。このため、この特徴構成によれば、流体の精製にかかる費用を一層低減することができる。
【0017】
また、前記流体が液化石油ガスであり、前記除去材が活性炭であり、前記不純物が硫黄化合物であると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における流体精製装置の構成図である。
【図2】本実施例における活性炭の硫黄化合物吸着量の変化を示す図である。
【図3】本実施例における流体の流量及び硫黄化合物濃度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.精製装置の構成
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明に係る流体精製装置1の概要を示す。流体精製装置1は、流体G中の不純物を除去する除去材2が内部に充填された容器3と、不純物を含む流体Gを容器3に供給する供給路L1と、除去材2により不純物が除去された流体Gを容器3から排出する排出路L2と、を備えている。また、供給路L1から分岐し容器3をバイパスして排出路L2へと連通するバイパス路L3を備えている。本実施形態においては、供給路L1を通じて容器3に供給される流体Gとして液化石油ガスを、除去材2として活性炭を用いている。また、液化石油ガスに含まれる流体硫黄化合物を不純物としている。
【0020】
加えて流体精製装置1は、バイパス路L3における流体Gの流量を調整するためのバルブV1と、排出路L2においてバイパス路L3が連通する箇所よりも下流側における流体G中の不純物の濃度を測定する分析計4と、を備えている。分析計4としては、例えば、一般に応答速度や感度に優れる半導体ガスセンサーを用いると好適である。なお、流体精製装置1は、排出路L2においてバイパス路L3が連通する箇所よりも上流側に、容器3への流体Gの供給を停止するためのバルブV2を備えている。
【0021】
ここで、バルブV1は本発明における「流量調整手段」に相当し、分析計4は「不純物濃度測定手段」に相当する。
【0022】
さらに流体精製装置1は、分析計4により測定された不純物の濃度が目標濃度Ct以下で当該目標濃度Ctから所定の範囲内にある濃度となるようにバルブV1を制御するバルブ開度制御部5と、を備えている。本実施形態においては、目標濃度Ctとして5mg/m3Nを設定している。所定の範囲としては、例えば、0.2mg/m3Nと設定することができる。すなわち、上記例であれば、分析計4により測定された不純物の濃度が4.8〜5mg/m3Nの間に収まるように流体精製装置1を構成すると良い。
【0023】
ここで、バルブ開度制御部5は本発明における「流量制御手段」に相当する。なお、バルブ開度制御部5は、マイクロプロセッサ及び半導体メモリを含むマイクロコンピュータを主要な機器として構築される。
【0024】
本実施形態においては、除去材2が破過するまでの期間を一層延ばすために、バルブ開度制御部5が、分析計4により測定された不純物の濃度が目標濃度Ctとなるように前記流量調整手段を制御するように構成されている。
【0025】
2.精製装置を用いた精製方法
上記流体精製装置1を用いた流体Gの精製方法について説明する。
まず、排出路L2においてバイパス路L3が連通する箇所よりも下流側における流体G中の不純物の濃度を測定する不純物濃度測定工程を実行する。本実施形態においては、分析計4によって、流体G中の不純物の濃度を測定する。
次に、バルブV1を働かせて、バイパス路L3を流れる流体Gの流量と、容器3から排出路L2へと流れる流体Gの流量との比率を調整し、不純物濃度測定工程で測定される不純物の濃度を目標濃度Ct以下で、当該目標濃度Ctから所定の範囲内にある濃度とする流量調整工程を実行する。本実施形態においては、この流量調整工程において、不純物濃度測定工程において測定する不純物の濃度が目標濃度CtとなるようにバルブV1を働かせる
以上のようにすることで、除去材2の単位時間当たりの使用量を最小限に抑えながら、不純物の濃度が目標濃度Ct以下の流体を精製することができる。
【0026】
3.実施例と比較例
3−1.実施例
〔機器構成〕
精製装置は図1に示す機器構成とし、以下の仕様とした。容器3には内径100mm、高さ600mmでステンレス製のものを用いた。また、容器3には、除去材2として活性炭を1L(リットル)充填した。プロパンを主成分としボンベに充填された市販品の液化石油ガスを、供給路L1から供給する流体G(試験ガス)として用いた。液化石油ガスに含まれる硫黄化合物を本発明における「不純物」とした。ここで、ボンベ中の液化石油ガスの硫黄化合物濃度を確認したところ、10mg/m3N含んでいた。すなわち、容器3に供給される液化石油ガスの硫黄化合物濃度は10mg/m3Nであるとみなせる。
【0027】
供給路L1から供給される液化石油ガスの流量は1m3N/h、供給圧力は0.1MPaとした。排出路L2に設けたポートから流体Gを少量サンプリングし、分析計4により流体Gの硫黄化合物濃度を計測した。また、目標濃度Ctとして5mg/m3Nを設定し、バルブ開度制御部5を、分析計4により測定される不純物の濃度が5mg/m3NとなるようにバルブV1を制御するように構成した。すなわち、本実験においては、液化石油ガス中の硫黄化合物量は10mg/hであるため、活性炭で吸着処理すべき硫黄化合物量は5mg/hと求まる。よって、活性炭で吸着処理される硫黄化合物量は5mg/hとなるようにバルブV1を制御した。バルブV2は開放した。
【0028】
〔試験内容及び結果〕
上記構成で、容器3に供給される液化石油ガスの硫黄化合物濃度が10mg/m3Nで一定となる状態で、試験を行った。当該試験においては、図3に実線(右向き矢印が添えられた方)で示すように、容器3内における活性炭(除去材2)の充填層出口(除去材2の排出路L2側端)での硫黄化合物濃度をモニタリングし、5mg/m3Nを越え始めた時点で、除去材2が寿命に達したと判断した。
【0029】
本試験時における活性炭の硫黄化合物吸着量の変化を図2に実線で示す。また、容器3内(活性炭充填層)を通る液化石油ガスの流量の変化を図3に実線(左向き矢印が添えられた方)で示す。
【0030】
3−2.比較例
実施例1の条件でV1を常時閉止した状態で試験を行った。図3に破線(右向き矢印が添えられた方)で示すように、実施例と同様に、容器3内における活性炭(除去材2)の充填層出口(除去材2の排出路L2側端)での硫黄化合物濃度をモニタリングし、5mg/m3Nに達した時点で、除去材2が寿命に達したと判断した。
【0031】
本試験時における活性炭の硫黄化合物吸着量の変化を図2に破線で示す。また、容器3内(活性炭充填層)を通る液化石油ガスの流量(一定値で1m3N/h)を図3に破線(左向き矢印が添えられた方)で示す。
【0032】
4.結論(考察)
図2に示すように、比較例(従来技術)においては、必要以上に硫黄化合物を活性炭に吸着させていた(10mg/h)が、本実施例においては、必要な分だけ硫黄化合物を活性炭に吸着させる(5mg/h)ことで、活性炭の総吸着量はほぼ同様ながら、大幅に活性炭の寿命を延ばすことができた。
【0033】
なお、図3において、本実施例では、活性炭の寿命が近づくにつれ、容器3内(活性炭充填層)を通る液化石油ガスの流量が増えているが、これは、活性炭の吸着率が低下するためであり、1m3N/hと本実施例のグラフとの差分はバイパス路L3に流れる液化石油ガスの流量に対応している。
〔その他の実施形態〕
【0034】
上記実施形態においては、流体Gとして液化石油ガスを、除去材2として活性炭を用い、液化石油ガスに含まれる流体硫黄化合物を不純物とする場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、流体Gとしてバイオガスを、除去材2として脱硫剤を用い、前記バイオガスに含まれる硫化水素を不純物とする場合にも本発明を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
流体中の不純物を除去する除去材が内部に充填された容器と、前記不純物を含む流体を前記容器に供給する供給路と、前記除去材により前記不純物が除去された流体を前記容器から排出する排出路と、を備えた流体精製装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 :流体精製装置
2 :除去材
3 :容器
4 :分析計(不純物濃度測定手段)
5 :バルブ開度制御部(流量制御手段)
G :流体
L1 :供給路
L2 :排出路
L3 :バイパス路
V1 :バルブ(流量調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の不純物を除去する除去材が内部に充填された容器と、前記不純物を含む流体を前記容器に供給する供給路と、前記除去材により前記不純物が除去された流体を前記容器から排出する排出路と、を備えた流体精製装置であって、
前記供給路から前記容器をバイパスして前記排出路へと連通するバイパス路と、
前記バイパス路における流量を調整するための流量調整手段と、
前記排出路において前記バイパス路が連通する箇所よりも下流側における流体中の前記不純物の濃度を測定する不純物濃度測定手段と、
前記不純物濃度測定手段により測定された前記不純物の濃度が目標濃度以下で当該目標濃度から所定の範囲内にある濃度となるように前記流量調整手段を制御する流量制御手段と、を備えた流体精製装置。
【請求項2】
前記流量制御手段が、前記不純物濃度測定手段により測定された前記不純物の濃度が前記目標濃度となるように前記流量調整手段を制御するように構成された請求項1に記載の流体精製装置。
【請求項3】
前記流体が液化石油ガスであり、前記除去材が活性炭であり、前記不純物が硫黄化合物である請求項1又は2に記載の流体精製装置。
【請求項4】
流体中の不純物を除去する除去材が内部に充填された容器と、前記不純物を含む流体を前記容器に供給する供給路と、前記除去材により前記不純物が除去された流体を前記容器から排出する排出路と、
前記供給路から前記容器をバイパスして前記排出路へと連通するバイパス路と、
前記バイパス路における流量を調整するための流量調整手段と、を備えた流体精製装置を使用し、
前記排出路において前記バイパス路が連通する箇所よりも下流側における流体中の前記不純物の濃度を測定する不純物濃度測定工程を実行するとともに、
前記流量調整手段を働かせて、前記バイパス路を流れる流体の流量と、前記容器から前記排出路へと流れる流体の流量との比率を調整し、前記不純物濃度測定工程で測定される前記不純物の濃度を目標濃度以下で、当該目標濃度から所定の範囲内にある濃度とする流量調整工程を実行して、前記不純物の濃度が前記目標濃度以下の流体を精製する流体精製方法。
【請求項5】
前記流量調整工程で、前記不純物濃度測定工程において測定する前記不純物の濃度が前記目標濃度となるように前記流量調整手段を働かせる請求項4に記載の流体精製方法。
【請求項6】
前記流体が液化石油ガスであり、前記除去材が活性炭であり、前記不純物が硫黄化合物である請求項4又は5に記載の流体精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−79336(P2013−79336A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220348(P2011−220348)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】