流量制御弁のシール構造
【課題】シールが必要なときに弁体と弁ハウジングの軸方向の摺動面との間の隙間を良好にシールでき、且つ摺動抵抗を可及的に少なくし得る流量制御弁のシール構造を提供する。
【解決手段】弁ハウジング66の軸方向の摺動面86に沿ってバランス弁体76を移動させ、水流入通路72,湯流入通路74の開度を変化させて、水及び湯の流入流量を絞る圧力バランス弁の水側弁体82,湯側弁体84と摺動面86との間の嵌合クリアランスCにより生ずる隙間をシールするシール部材92,94を可撓性の膜状部材にて構成し、シール部材92,94を隙間に導入された液圧で対応するシール壁面100,102に押し付けて密着させ、シールするようになす。
【解決手段】弁ハウジング66の軸方向の摺動面86に沿ってバランス弁体76を移動させ、水流入通路72,湯流入通路74の開度を変化させて、水及び湯の流入流量を絞る圧力バランス弁の水側弁体82,湯側弁体84と摺動面86との間の嵌合クリアランスCにより生ずる隙間をシールするシール部材92,94を可撓性の膜状部材にて構成し、シール部材92,94を隙間に導入された液圧で対応するシール壁面100,102に押し付けて密着させ、シールするようになす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って弁体を移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御する流量制御弁のシール構造、詳しくは弁体と摺動面との間の隙間をシールするシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種流量制御弁の代表的な例として、湯水混合弁における混合弁体の上流側に配置される圧力バランス弁がある。
この圧力バランス弁は、水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧により弁体を移動させて、水の流出液圧と湯の流出液圧とを同圧として湯水混合弁に供給する働きをなす。
【0003】
図14はその具体例を示している。
図において、200は筒形状(ここでは円筒形状)の内筒から成る湯水混合弁の弁ハウジングで、その内部に混合弁体202が図中左右方向即ち軸方向に移動可能に収容されている。
この混合弁体202は、軸方向に一体に移動する水側弁体204と湯側弁体206とを有している。
【0004】
この湯水混合弁は、水側弁体204,湯側弁体206のそれぞれの弁開状態で、弁ハウジング200に形成された水流入口208から、これに続く水流入通路210を通じて内部に水を流入させ、また弁ハウジング200に形成された湯流入口212から、これに続く湯流入通路214を通じて内部に湯を流入させる。
流入した水と湯とは混合室216で混合されて、混合水が流出部218から外部に流出し、所定の吐水部から吐水される。
【0005】
混合弁体202は、水側弁体204と湯側弁体206との弁開度を、即ち上記水流入通路210と湯流入通路214とのそれぞれの開度を互いに逆の関係で大小変化させて、流入する水と湯との混合比率を変化させる。即ち混合水の温度を変化させる。
【0006】
混合室216内には形状記憶合金製の感温ばね217が設けられており、その付勢力が混合弁体202に対して図中左向きに及ぼされている。
混合弁体202にはまた、通常の金属製のコイルばねから成るバイアスばね219の付勢力が図中右向き、即ち感温ばね217による付勢力とは逆向きに及ぼされており、混合弁体202は、それら感温ばね217による図中左向きの付勢力と、バイアスばね219による図中右向きの付勢力とが釣合う位置に(バランスする位置に)、図中左右方向即ち軸方向に移動せしめられる。
【0007】
具体的には、混合水の温度が設定温度よりも高ければ感温ばね217が伸張して図中左向きの付勢力を高め、感温ばね217の付勢力とバイアスばね219の付勢力との釣合い位置を図中左側にシフトさせて、混合弁体202を図中左方向に移動させる。
【0008】
逆に混合水温度が設定温度よりも低ければ、感温ばね217が収縮して付勢力を弱め、感温ばね217による付勢力とバイアスばね219による付勢力との釣合い位置を図中右側にシフトさせ、混合弁体202を図中右方向に移動させる。
これによって流入する水と湯の流入量を変化させ、混合水温度を自動的に設定温度に温度調節する。
尚、水側弁体204は弁ハウジング200に形成された水側弁座220に当接して閉弁し、また湯側弁体206は弁ハウジング200に形成された湯側弁座222に当接して閉弁する。
【0009】
224は筒形状(ここでは円筒形状)の外筒から成る圧力バランス弁の弁ハウジングで、その内部且つ上記の湯水混合弁の弁ハウジング200との間に形成される環状空間に、バランス弁体226が図中左右方向即ち軸方向に移動可能に設けられている。
【0010】
このバランス弁体226は、軸方向の中間部に仕切部236を有している。
仕切部236は、弁ハウジング224と200とに摺動可能に嵌合されており、この仕切部236によって、弁ハウジング224と200との間の上記の環状空間が、弁ハウジング224側の水流入通路230と、湯水混合弁の側の上記の水流入通路210とに連通した水側室と、同じく弁ハウジング224側の湯流入通路234と、湯水混合弁側の上記の湯流入通路214とに連通した湯側室とに区画されている。
【0011】
バランス弁体226は、仕切部236の図中左側と右側とに水側弁体238と湯側弁体240とを一体に備えており、それらが弁ハウジング224の内周面に嵌合され、かかる弁ハウジング224の内周面を軸方向の摺動面242として、仕切部236とともに一体に軸方向の左右方向に移動するようになっている。
【0012】
ここで水側弁体238は、水流入通路230の開度を拡く又は狭く変化させて水の流入量を調節する作用をなし、また湯側弁体240は、湯流入通路234の開度を狭く又は拡く変化させて湯流入通路234からの湯の流入量を調節する作用をなす。
【0013】
この圧力バランス弁において、バランス弁体226は水側室及び湯側室に対する軸方向の受圧面積が等しくされており、従って水の流入液圧が湯の流入液圧よりも高く、水側室の液圧Pcが湯側室の液圧Phに対して高ければ、バランス弁体226がその差圧で図中右向きに移動して、水側弁体238が水流入通路230の開度を狭く、また湯側弁体240が湯流入通路234の開度を拡く変化させる。
【0014】
この結果、水流入通路230からの水流入量が少なくなるとともに、湯流入通路234からの湯流入量が多くなり、そして水側室の液圧Pcと湯側室の液圧Phとが等しくなり、バランスしたところでバランス弁体226がそこに停止し、水側室と湯側室とから水と湯とを等しい液圧で湯水混合弁の側に供給する。
【0015】
詳しくは、湯水混合弁の弁ハウジング200の水流入口208とこれに続く水流入通路210、及び湯流入口212とこれに続く湯流入通路214を通じて、湯水混合弁の内部に水と湯とを供給する。
【0016】
ところで、上記圧力バランス弁においては水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧、即ち水側室の液圧Pcと湯側室の液圧Phとの差圧に基づいてバランス弁体226を応答性良く軽やかにバランス位置まで移動させることが必要であり、そのため図15に拡大して示すようにバランス弁体226の外周面と弁ハウジング224の内周面即ち摺動面242との間に所定の嵌合クリアランスCが確保される。
【0017】
この場合、上記クリアランスCに基づいて水側弁体238と摺動面242との間に形成される隙間がシールされていないと、水側弁体238が閉弁状態となっても、水流入通路230からの水がその隙間を通じて水側室まで回り込んでしまう。即ち水流入通路230からの水がその隙間から水側室へと漏れてしまう。
【0018】
同様にクリアランスCに基づいて湯側弁体240と摺動面242との間に生ずる隙間がシールされていないと、湯側弁体240が閉弁状態となっても、湯流入通路234からの湯がその隙間を通じて湯側室まで回り込んでしまう。即ち湯流入通路234からの湯がその隙間から湯側室へと漏れてしまう。
【0019】
そこで水側弁体238と摺動面242との間の隙間,湯側弁体240と摺動面242との間の隙間をそれぞれシールすることが必要となる。
そのシール構造として、下記特許文献1に開示のものにおいて仕切部と弁ハウジングの摺動面との間をシールしている樹脂製のシールリング244を用い、これを水側弁体238と摺動面242との間のシール、湯側弁体240と摺動面242との間のシール用に用いたシール構造とすることが考えられる。
【0020】
この樹脂製のシールリング244は、図14(B)に拡大して示しているように円形のリング状をなしていて、軸方向の側面244A,244B及び外周面244Cがそれぞれ平坦面をなしており、また周方向所定個所に斜めの切目245が設けてあり、この切目245によってシールリング244が径方向に弾性変形可能とされ、且つこの切目245によってシールリング244を径方向に押し拡げて所定の弁体に装着できるようになしてある。
【0021】
このシールリング244は、図15に拡大して示しているようにこれを水側弁体238,湯側弁体240の溝に嵌込状態に装着したとき、軸方向の側面244A又は244Bを、対応する溝側面246A又は246Bに当接させるとともに、併せて平坦な外周面244Cを上記摺動面242に当接させることによって、上記クリアランスCに基づく水側弁体238と摺動面242との間の隙間,湯側弁体240と摺動面242との間の隙間をシールする。
尚この例では、シールリング244が仕切部236の外周側と内周側にも装着されている。
【0022】
この樹脂製のシールリング244を用いたシール構造では、Oリングを用いて水側弁体238と摺動面242との間,湯側弁体240と摺動面242との間をシールする場合に比べて摺動抵抗を小さくできるものの、バランス弁体226の摺動に際して摺動抵抗を十分に小さくすることができない。
【0023】
而してそのような摺動抵抗が生ずると、バランス弁体226の軸方向移動による圧力バランス作用に悪影響が及び、圧力バランス弁の動作精度を悪化させてしまう。
加えてこのシールリング244には切目245が設けてあるため、その切目245の部分での漏れを避け得ず、これもまた圧力バランス弁の動作精度を悪化させる要因となる。
而して圧力バランス弁の動作精度が悪化すると、下流側の湯水混合弁に対して水と湯とを同圧で供給することができず、湯水混合弁において湯水の混合動作を正確に行えなくなってしまう。
【0024】
そのため、特に上記の漏れが大きな問題となる閉弁時において、上記クリアランスCに基づいて水側弁体238と摺動面242との間に生じる隙間,湯側弁体240と摺動面242との間に生じる隙間を良好にシールでき、且つ摺動抵抗を可及的に少なくすることのできるシール構造が求められていた。
【0025】
同様の問題は、上記湯水混合弁における混合弁体202の水側弁体204,湯側弁体206と対応する弁ハウジング200の内周面即ち軸方向の摺動面248との間のシール構造にも存在する。
図14では、そのためのシールとしてOリング250が用いられているが、この場合、混合弁体202の水側弁体204及び湯側弁体206が図中左右方向即ち軸方向に移動する際に大きな摺動抵抗を生じてしまう。
【0026】
混合弁体202の水側弁体204,湯側弁体206即ち互いに軸方向に逆向きに作用するばねの付勢力をバランスさせるように軸方向に移動して、混合水の温度調節を行う弁体にこのように大きな摺動抵抗が生じてしまうと、その摺動抵抗がこれら弁体のバランス作用に悪影響を及ぼしてしまい、混合水の温度調節を正確に行えなくなってしまう。
【0027】
従って混合弁体202における水側弁体204と摺動面248との間,湯側弁体206と摺動面248との間のシール構造においても、特に上記の漏れが大きな問題となる閉弁時に良好に隙間をシールでき且つ摺動抵抗を可及的に少なくし得るシール構造が求められていた。
またこれらの弁以外においても、弁体を弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御するその他の流量制御弁、特に弁体に対して軸方向に互いに逆向きの力が作用し、それらの力をバランスさせるように弁体が軸方向に移動する弁において同様のシール構造が求められていた。
【0028】
尚、下記特許文献2には自動温度調節機能付きの湯水混合弁における混合弁体と、対応する軸方向の摺動面との間のシール部材としてゴム製のUパッキンを用いたものが開示されているが、このようなUパッキンをシール部材として用いた場合、弁体の移動に際してUパッキンを水圧に逆らって弾性変形させることが必要であり、その際にUパッキンの変形抵抗が弁体の移動に対する抵抗となって加わってしまう問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平11−51219号公報
【特許文献2】実開平6−69549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は以上のような事情を背景とし、必要とされるときに弁体と弁ハウジングの軸方向の摺動面との間の隙間を良好にシールでき、且つ摺動抵抗を可及的に少なくし得る流量制御弁のシール構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
而して請求項1のものは、弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って弁体を移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御する流量制御弁のシール構造であって、前記弁体と前記摺動面との間の隙間をシールするシール部材として可撓性の膜状部材を用い、該シール部材を前記隙間に導入された液圧で対応するシール壁面に押し付けて密着させ、シールするようになしたことを特徴とする。
【0032】
請求項2のものは、請求項1において、前記シール壁面が前記軸方向に対して交差する方向の面となしてあり、前記シール部材によって前記隙間を軸方向にシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0033】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が閉弁位置まで移動して前記液通路を閉じる弁であって、少なくとも該弁体の前記閉弁位置において前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0034】
請求項4のものは、請求項3において、前記弁体が全開側から全閉側に移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0035】
請求項5のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が前記摺動面に沿って移動することで、該弁体に対して軸方向に互いに逆向きに加わる液圧又は/及び弾性体の付勢力をバランスさせるように動作するものであることを特徴とする。
尚、ここで液圧又は/及び弾性体の付勢力をバランスさせるとは、軸方向に互いに逆向きに加わる液圧と液圧とをバランスさせる場合、弾性体の付勢力と弾性体の付勢力とをバランスさせる場合、液圧と弾性体の付勢力とをバランスさせる場合の何れをも含んでいることを意味する。
【0036】
請求項6のものは、請求項5において、前記弁体が水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧により移動して、水の流出液圧と湯の流出液圧とを均等化して流出させる圧力バランス弁の弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び該湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする。
【0037】
請求項7のものは、請求項5において、前記流量制御弁が自動温度調節機能付きの湯水混合弁であって、前記弁体が混合弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする。
【0038】
請求項8のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体に対して軸方向に逆向きに加わる1次側の液圧と2次側の液圧との差圧を一定にするように軸方向に動作して、前記液通路を流通する液の流量を一定流量に制御する定流量弁であって、少なくとも前記弁体の定流量作用位置において前記シール部材を前記シール壁面に密着させてシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0039】
請求項9のものは、請求項8において、前記弁体が前記定流量作用位置に向って移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0040】
請求項10のものは、請求項1〜9の何れかにおいて、前記可撓性の膜状のシール部材が弾性材にて構成してあることを特徴とする。
【0041】
請求項11のものは、請求項1〜10の何れかにおいて、前記弁ハウジングと前記弁体との両方に前記シール壁面を設ける一方、前記シール部材は、それら弁ハウジング側と弁体側とにまたがって且つ該弁ハウジング側及び該弁体側とのそれぞれに対し非固定で、それら弁ハウジング側及び弁体側に対し相対移動可能に設けてあり、前記隙間に導入された液圧により該シール部材を前記両方のシール壁面に密着させてシールするようになしてあることを特徴とする。
【0042】
請求項12のものは、請求項1〜10の何れかにおいて、前記シール部材は前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で該シール部材を密着させてシールするようになしてあることを特徴とする。
【0043】
請求項13のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が閉弁位置に位置したときに前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の閉弁方向に離隔した位置となしてあることを特徴とする。
【0044】
請求項14のものは、請求項8,9の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が前記定流量作用位置に位置したときに、前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の該定流量作用位置の側に離隔した位置となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0045】
以上のように本発明は、弁体と弁ハウジングの軸方向の摺動面との間の隙間をシールするシール部材として可撓性の膜状部材を用い、上記隙間に導入された液圧でシール部材を対応するシール壁面に押し付けて密着させ、シールするようになしたものである。
【0046】
本発明は、弁体と摺動面との間に導入された液圧を利用して、シール部材を対応するシール壁面に密着状態に押し付けてシールするものであり、この場合シール部材が可撓性の膜状部材で構成されているため、シール部材に対して十分に大きなシールのための面圧を作用させることができ、またシール部材はその面圧により自身の可撓性に基づいてシール壁面に良好に密着でき、これによって良好なシール性能を確保できる。
この場合において、上記流量制御弁は筒形の弁となしておくことができる。
【0047】
上記シール壁面は、軸方向に対し交差する方向の面、例えばこれを軸直角方向の面となしておき、シール部材によって上記の隙間を軸方向にシールするものとなしておくことができる(請求項2)。
この請求項2のシール構造はまた、径方向等の軸直角方向のシールは行わず、軸方向のシールだけを行うものとなしておくことができる。
【0048】
上記弁ハウジングの軸方向の摺動面と弁体との間の隙間からの液の漏れは、弁体の開度が大きいとき、即ち液通路の開度が大きいときには、液の全流量に対する上記隙間からの漏れの流量の占める比率が小さいために、それほど大きな問題とはならない。
一方で弁体の開度が小さいとき、即ち液通路の液の流れに対する絞りが大きいときに、全流量に対する漏れの流量の比率が大となるため、大きな問題となる。
【0049】
例えば請求項3に規定するように、弁体が閉弁位置まで移動して液通路を閉じる弁である場合、弁体が閉弁状態であるにも拘らず上記隙間から液が漏れてしまうといったことは大きな問題となる。
【0050】
或いは請求項8に規定するように、弁体が液通路の流れを絞って定流量作用を行う定流量弁である場合、弁体が全開側から全閉側に移動して定流量作用位置に到り、そこで定流量作用を行っているにも拘らず、上記隙間からの漏れがあると定流量作用を正確に行うことができない。
【0051】
特にこのように弁体が閉弁位置に到ったとき、或いは液通路の開度を大きく絞った状態にあるときには、当該弁体の上流側での圧力降下が、弁体が大きく開かれているときに較べて小さくなる結果、隙間に導入される液圧が大きくなるため、隙間からの漏れの量もより大きくなってしまう。
【0052】
しかるに本発明は、上記隙間に導入される液圧を利用し、またシール部材の可撓性を利用して、これを対応するシール壁面に押し付けシールするものであるため、隙間からの液の漏れが特に大きな問題となる弁体の閉弁時、或いは弁体が定流量作用を行っている位置にあるときに、シール部材をシール壁面に密着状態に押し付けてシール作用させ、弁体が大きく開弁した状態にあるときにはシール部材によるシールを行わないようになすことが可能である。
【0053】
この場合において、弁体が全開側から全閉側に移動する途中、詳しくは閉弁位置に到る途中若しくは定流量作用位置に到る途中でシール部材がシール壁面に密着してシールするようになしておくことができる(請求項4,請求項9)。
このようにしておけば、弁体が閉弁位置或いは定流量作用位置直前に到るまではシール部材のシールによる摺動抵抗は発生せず、弁体を軽やかに摺動面に沿って移動させることが可能となる。
【0054】
請求項3,4のシール構造は、弁体に対して軸方向に互いに逆向きに加わる液圧又は/及び弾性体の付勢力の差を駆動力として弁体が移動し、それらをバランスさせるように動作する流量制御弁に適用して好適であり(請求項5)、特に請求項6に規定する圧力バランス弁に適用し効果の大なるものである。
これにより弁体移動時の摺動抵抗や、隙間からの液の漏れが弁体のバランス作用に悪影響を及ぼすのを良好に防止することが可能となる。
【0055】
この請求項5のシール構造はまた、自動温度調節機能付きの湯水混合弁の混合弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体と弁ハウジングの摺動面との間の隙間のシール構造に適用して好適である(請求項7)。
【0056】
本発明においては、上記可撓性の膜状のシール部材をゴム等の弾性材(エラストマー)にて構成しておくことができる(請求項10)。
シール部材をかかる弾性材で構成しておくことで、上記隙間に導入された液圧にてシール部材に面圧を加えたとき、シール部材におけるシール壁面側の面を弾性変形を伴ってシール壁面により十分に密着させることができ、シール性を一層高めることができる。
【0057】
本発明では、弁ハウジングと弁体との両方にシール壁面を設ける一方、シール部材については、それら弁ハウジング側と弁体側とにまたがって且つ弁ハウジング側及び弁体側とのそれぞれに対し非固定で、弁ハウジング側及び弁体側に相対移動可能に設けておき、隙間に導入された液圧によりシール部材を両方のシール壁面に密着させて、シールするようになしておくことができる(請求項11)。
【0058】
或いは請求項12に従って、シール部材を弁ハウジング側又は弁体側の一方に固定状態に取り付けておき、他方に設けたシール壁面に対し、隙間に導入された液圧でシール部材を密着状態に押し付けシールするようになしておくことができる(請求項12)。
【0059】
このようにシール部材を一方に固定状態で取り付けておいた場合、次の利点が得られる。
請求項11に従ってシール部材を非固定状態で設けておいた場合、上記隙間内の液の流れによってシール部材が不規則な変形を生じ、このことによってシール作用を十分に行えない場合が生じる恐れが生ずるが、請求項12に従ってシール部材を一方に固定状態に設けておくことで、このような不都合の発生を防止することが可能となる。
【0060】
このようにシール部材を一方に固定状態に取り付けておく場合において、弁体が閉弁位置まで移動して液通路を閉じるものであるとき、そのシール部材の取付位置を、弁体が閉弁位置に位置したときに他方のシール壁面に対し弁体の閉弁方向に離隔した位置となしておくことができる(請求項13)。
【0061】
或いは流量制御弁が定流量弁であって弁体が閉弁位置まで到らず、液通路を一定量開いた状態で定流量作用を行うものであるとき、上記シール部材の取付位置を、弁体が定流量作用位置に位置したときに他方のシール壁面に対し弁体の定流量作用位置の側に離隔した位置となしておくことができる(請求項14)。
【0062】
この請求項13,請求項14によれば、固定状態に取り付けられたシール部材が、その取付位置において弁体が閉弁方向に移動する際の邪魔となって、弁体が目的とする閉弁方向位置まで或いは定流量作用位置まで移動できなくなるといったことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態のシール構造を有する流量制御弁としての湯水混合弁及び圧力バランス弁を示した断面図である。
【図2】同実施形態の要部拡大図である。
【図3】同実施形態の作用説明図である。
【図4】図3の要部を拡大して示した図である。
【図5】本実施形態のシール特性を従来例と比較して示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図8】本発明の一実施形態の利点を説明するために示した説明図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図14】従来のシール構造を有する流量制御弁の図である。
【図15】図14の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は筒形状(ここでは円筒形状)の内筒から成る湯水混合弁の弁ハウジングで、その内部に混合弁体12が軸方向の図中左右方向に移動可能に収容されている。
この混合弁体12は、軸方向の図中左右方向に離隔して位置する水側弁体14,湯側弁体16と、それらを連結する軸状の連結部18とを有しており、それらが一体に図中左右方向に移動可能とされている。
【0065】
この湯水混合弁は、水側弁体14,湯側弁体16のそれぞれの弁開状態で、弁ハウジング10に形成された水流入口20から、これに続く水流入通路22を通じて内部に水を流入させ、また弁ハウジング10に形成された湯流入口24から、これに続く湯流入通路26を通じて内部に湯を流入させる。
流入した水と湯とは混合室28で混合され、混合水が流出部30から外部に流出し、所定の吐水部から吐水される。
【0066】
混合弁体12は、水側弁体14と湯側弁体16との弁開度を、即ち上記水流入通路22と湯流入通路26とのそれぞれの開度を互いに逆の関係で大小変化させて、流入する水と湯との混合比率を変化させる。即ち混合水の温度を変化させる。
【0067】
混合室28内には形状記憶合金製の感温ばね32が設けられており、その付勢力が混合弁体12に対して図中左向きに及ぼされている。
混合弁体12にはまた、通常の金属製のコイルばねから成るバイアスばね34の付勢力が図中右向き、即ち感温ばね32による付勢方向とは逆向きに及ぼされている。
混合弁体12は、それら感温ばね32による図中左向きの付勢力と、バイアスばね34による図中右向きの付勢力とが釣合う位置に(バランスする位置に)、図中左右方向即ち軸方向に移動せしめられる。
【0068】
具体的には、混合水の温度が設定温度よりも高ければ感温ばね32が伸張して図中左向きの付勢力を高め、感温ばね32の付勢力とバイアスばね34の付勢力との釣合い位置を図中左側にシフトさせて、混合弁体12を図中左方向に移動させる。
【0069】
逆に混合水の温度が設定温度よりも低ければ感温ばね32が収縮して付勢力を弱め、感温ばね32による付勢力とバイアスばね34による付勢力との釣合い位置を図中右側にシフトさせ、混合弁体12を図中右方向に移動させる。
これによって流入する水と湯との流入量を変化させ、混合水温度を自動的に設定温度に温度調節する。
【0070】
尚、水側弁体14は弁ハウジング10に形成された水側弁座36に当接して閉弁し、また湯側弁体16は弁ハウジング10に形成された湯側弁座38に当接して閉弁する。
この湯水混合弁の弁ハウジング10には図中左側位置に、右方に突出した環状の突出部40が設けられている。この突出部40は、後述の圧力バランス弁における弁ハウジングの一部を構成している。
【0071】
尚、円筒形状をなす水側弁体14と湯側弁体16とのそれぞれの外周面には、図2に示しているように環状溝35,37が設けられていて、そこにシール部材としてのOリング39,41が保持されており、水側弁体14及び湯側弁体16が、これらOリング39,41を介して、弁ハウジング10の内周面を摺動面43としてそこに軸方向に水密に且つ摺動可能に嵌合されている。
【0072】
42は、混合弁体12を駆動するための駆動機構を内部に収容する駆動機構のハウジングで、その内部且つ中心部に図中左右方向に延びる駆動軸44が設けられ、この駆動軸44が混合弁体12の上記の連結部18に一体移動状態に結合されている。
【0073】
46はハンドル(図示省略)に一体回転状態に連結される操作軸部で、この操作軸部46には、ハウジング42の内部において大径の円筒部48が一体に設けられている。
円筒部48の内周面には雌ねじ部50が設けられており、この雌ねじ部50に対して、円筒形状をなす進退部材52の外周面の雄ねじ部54が螺合され、操作軸部46即ち円筒部48の回転によって、この進退部材52がねじ送りで図中左右方向に進退移動せしめられるようになっている。
【0074】
この進退部材52の図中右端側には、円筒形状の係合部材56が進退部材52に対して図中左右方向に相対移動可能に連結されており、この係合部材56の図中右端の内向きのフランジ状のばね受58と、進退部材52の段付部60との間に、上記のバイアスばね34が圧縮状態で介装されている。
【0075】
進退部材52の図中右端には、径方向外向きに突出した環状の係合部62が設けられており、また一方、係合部材56の図中左端には径方向内向きのフランジ状の係合部64が設けられ、それら係合部62と64とが軸方向に係合するようになっている。
進退部材52の係合部62は、この係合部材56の係合部64とフランジ状のばね受58との間で、係合部材56に対して相対移動可能である。
【0076】
この湯水混合弁では、操作軸部46を回転操作することによって混合水の温度を設定ないし設定変更する。
このとき、操作軸部46と一体の円筒部48の回転によって、進退部材52が図中左右方向に進退移動して、混合弁体12の位置を図中左右方向に変化させる。
【0077】
詳しくは、操作軸部46を高温側に回転操作すると、進退部材52がねじ送りで図中右方に前進移動し、バイアスばね34を圧縮してその付勢力を増大させる。
この結果バイアスばね34と感温ばね32との付勢力の釣合い位置が図中右方に移行し、混合弁体12が同方向に移動せしめられる。
【0078】
一方、操作軸部46を上記とは逆方向に回転させると、進退部材52が上記とは逆に図中左方向に後退移動してバイアスばね34を伸張させ、バイアスばね34の付勢力を減少させる。
これにより、バイアスばね34と感温ばね32との付勢力の釣合い位置が図中左方に移行し、これとともに混合弁体12が同方向に移行せしめられる。
【0079】
そしてその状態で混合弁体12は、混合水温度の増減に応じて図中左右方向に位置を微動させ、混合水温度を設定温度に向けて低下させ又は上昇させ、混合水温度を自動的に設定温度に調節する。
【0080】
詳しくは、混合水温度が設定温度よりも高ければ感温ばね32の付勢力の増大によって混合弁体12が図中左方に微動し、混合水温度を設定温度に向けて低下させる。
逆に混合水温度が設定温度よりも低ければ感温ばね32が収縮して付勢力を弱め、ここにおいて混合弁体12が図中右方に微動して混合水温度を設定温度に向けて上昇させる。
【0081】
湯水混合弁における混合弁体12の上流側には、圧力バランス弁が配置されている。
図中66は筒形状(ここでは円筒形状)の外筒から成る圧力バランス弁の弁ハウジングで、この弁ハウジング66には、軸方向に離隔した位置に水流入口68と湯流入口70、及びこれらに連続した水流入通路72と湯流入通路74とが形成されている。
【0082】
弁ハウジング66の内部且つ上記の湯水混合弁の弁ハウジング10との間に形成される環状空間には、円筒状をなすバランス弁体76が軸方向の図中左右方向に移動可能に設けられている。
【0083】
このバランス弁体76には、軸方向の中間部に仕切部78が設けられている。
この仕切部78は、図2に詳しく示しているように弁ハウジング66と10とに摺動可能に嵌合されており、この仕切部78によって、弁ハウジング66と10との間の上記の環状空間が、弁ハウジング66の水流入通路72及び弁ハウジング10の水流入通路22とに連通した水側室79と、弁ハウジング66の湯流入通路74及び弁ハウジング10の湯流入通路26に連通した湯側室80とに区画されている。
【0084】
バランス弁体76は、仕切部78の図中左側と右側とに、水側弁体82と湯側弁体84とを有しており、それら水側弁体82と湯側弁体84とが弁ハウジング66の内周面に嵌合され、弁ハウジング66の内周面を軸方向の摺動面86として、仕切部78とともに一体に左右方向に移動するようになっている。
【0085】
ここで水側弁体82は、水流入通路72の開度を拡く又は狭く変化させて、水の流入量を調節する作用をなし、また湯側弁体84は、湯流入通路74の開度を狭く又は拡く変化させて、湯流入通路74からの湯の流入量を調節する作用をなす。
【0086】
この圧力バランス弁において、バランス弁体76は水側室79及び湯側室80に対する軸方向の受圧面積が等しくされており、従って水の流入液圧が湯の液圧よりも高く、水側室79の液圧Pcが湯側室80の液圧Phに対して高ければ、バランス弁体76がその液圧差で図中右向きに移動して、水側弁体82が水流入通路72の開度を狭く、また湯側弁体84が湯流入通路74の開度を拡く変化させる。
【0087】
この結果、水流入通路72からの水流入量が少なくなるとともに、湯流入通路74からの湯流入量が多くなり、そして水側室79の液圧Pcと湯側室80の液圧Phとが等しくバランスしたところで、バランス弁体76がそこに停止し、水側室79と湯側室80とから水と湯と等しい液圧で湯水混合弁の側に供給する。
【0088】
詳しくは、湯水混合弁の弁ハウジング10の水流入口20とこれに続く水流入通路22、及び湯流入口24とこれに続く湯流入通路26とを通じて、湯水混合弁の内部に水と湯とを等しい液圧で供給する。
【0089】
尚この実施形態において、水側弁体82は弁ハウジング66に形成された水側弁座88に当接して閉弁し、また湯側弁体84は弁ハウジング66に形成された湯側弁座90に当接して閉弁する。
【0090】
この実施形態において、バランス弁体76は弁ハウジング66の内周面の摺動面86に対して所定の嵌合クリアランスCをもって嵌合されており、そして水側弁体82,湯側弁体84の外周側には、その嵌合クリアランスに基づく隙間をシールするための円環状のシール部材92,94が設けられている。
【0091】
本実施形態では、このシール部材92,94として可撓性の膜状部材が用いられている。ここではシール部材92,94はゴム等の弾性材(エラストマー)にて構成されている。
シール部材92,94は、軸直角方向に配向されていて外周側の端部が弁ハウジング66に固定状態に取り付けられ、内周側の端部が弁ハウジング66の内周面の摺動面86から径方向内向きに突出せしめられている。
【0092】
一方水側弁体82,湯側弁体84の外周面には環状溝96,98が設けられていて、それら環状溝96,98内にシール部材92,94の内周側の部分が挿入されている。
ここでシール部材92,94は、環状溝96,98の溝底面に対し非接触となる状態で設けられている。
【0093】
また水側のシール部材92の取付位置は、図4(II)に示しているように水側弁体82が水側弁座88に当接して閉弁する位置に到ったときに、環状溝96の溝側面から成る軸直角方向のシール壁面100に対して図中右側位置、即ち水側弁体82の閉弁方向に離隔した位置とされている。
【0094】
同様に湯側のシール部材94の取付位置も、湯側弁体84が湯側弁座90に当接して閉弁位置となったときに、環状溝98の溝側面から成る軸直角方向のシール壁面102に対し、湯側弁体84の閉弁方向に離隔した位置とされている。
尚、仕切部78の外周側と内周側にも同様の構成から成るシール部材104,106が設けられている。
【0095】
ここで外周側のシール部材104は、内周側の端部が仕切部78に固定され、また内周側のシール部材106は、外周側の端部が仕切部78に固定されて、それぞれが径方向外方と内方とに突出せしめられている。
そしてこれに対応して弁ハウジング66と10とには環状溝108と110とが設けられ、シール部材104,106がこれら環状溝108,110内に挿入せしめられている。
【0096】
但し外周側のシール部材104は、環状溝108における一対の溝側面を軸直角方向のシール壁面112としてそこに密着し、シールを行う。
また内周側のシール部材106は、湯水混合弁における弁ハウジング10の環状溝110における一対の溝側面を軸直角方向のシール壁面114として、それぞれに密着しシールを行う。
【0097】
具体的には、バランス弁体76が図2中右方向に一杯まで移動して水側弁体82が閉弁したときには、シール部材104が図中右側のシール壁面112に密着してシール作用をなし、また仕切部78が図中左方向に一杯まで移動して湯側弁体84が湯側弁座90に当接し閉弁したときには、シール部材104が環状溝108の図中左側のシール壁面112に密着してシール作用をなす。
【0098】
一方内周側のシール部材106は、水側弁体82の閉弁時には環状溝110の図中右側のシール壁面114に密着して仕切部78と弁ハウジング10との間の隙間をシール作用し、また湯側弁体84の閉弁時には図中左側のシール壁面114に密着してシール作用する。
【0099】
次に本実施形態の作用を説明する。
図3(I)は、バランス弁体76が水側弁体82及び湯側弁体84をそれぞれ開いた状態として、水側室79の液圧Pcと湯側室80の液圧Phとを同圧にバランスさせているときの作用状態を表している。このとき水側のシール部材92は、図4(I)に示しているように水側弁体82のシール壁面100から図中右側に離間した状態にあって、水側弁体82と摺動面86との間の嵌合クリアランスCに基づく隙間をシール作用せず、同様に湯側のシール部材94もまた、湯側弁体84と摺動面86との間の隙間をシール作用せず、従って水流入通路72から流入した水は、その隙間を通じて水側室79に流れ込むことが可能であり、同様に湯流入通路74からの湯も隙間を通じて湯側室80に回り込むことが可能である。
但し図3(I)の状態では水流入通路72及び湯流入通路74が大きく開かれた状態にあるため、このような水,湯の回込みが生じても液圧Pcと湯側室80の液圧Phとが同圧で、特段の支障を生じない。
一方で、このようにして水側室の液圧Pcと湯側室の液圧Phとをバランスさせるように動作しているバランス弁体76は、シール部材92,94による摺動抵抗を全く受けず、軽やかにバランス動作を行うことができる。
【0100】
他方、例えば水側室79の液圧Pcが湯側室80の液圧Phに対して過大となったときには、水側弁体82が水流入通路72からの水の流れを大きく絞った状態となり、場合によって図3(II)に示すように水側弁体82が水側弁座88に当って閉弁した状態となる。
このとき、水側のシール部材92は水側弁体82と摺動面86との間の隙間に導入される水側の液圧によって図中左方向に押され、図3(II)に示すように水側弁体82のシール壁面100に密着せしめられる。これによってシール部材92が水側弁体82と摺動面86との間の隙間をシールし、その隙間を通じて水流入通路72からの水が水側室79へと回り込むのを防止する。
【0101】
この実施形態において、水側弁体82が閉弁位置近くになると即ち閉弁間際になると、水側弁体82の上流側での圧力降下が、水側弁体82が大きく開かれているときに較べて小さくなる結果、水側弁体82と摺動面86との間の隙間に導入される液圧、即ちシール部材92に作用する液圧も大きくなる。
一方でシール部材92は弾性材から成っており且つ可撓性を有しているため、水側弁体82が完全閉弁状態となる以前に、即ち水側弁体82が閉弁に到る途中でシール部材92がシール壁面100に密着状態に押し付けられてシール作用をなす。
【0102】
従ってこの実施形態では、水流入通路72からの水がクリアランスCによる隙間を通じて水側室79に漏れるのが最も問題となるときにおいて、シール部材92が適正なタイミングで隙間のシール作用をなし、隙間を通じて水側室79への水の漏れを防止作用する。
【0103】
この実施形態ではまた、シール部材92の弁ハウジング66への取付位置が、図3(II),図4(II)に示しているように水側弁体82が閉弁した状態においてシール壁面100よりも図中右側、即ち水側弁体82の閉弁方向に離隔した位置となしてあるため、かかるシール部材92がその取付位置で水側弁体82の閉弁位置への移動の妨げとなる恐れが無い利点を有している。
【0104】
図8(A)に示しているように、シール部材92の弁ハウジング66への取付位置が、水側弁体82が閉弁位置に到る前にシール壁面100に対してシール部材92が当る位置となしてあると、シール部材92が水側弁体82の更なる閉弁方向の移動の妨げとなる恐れがあるが、シール部材92の取付位置を図4(II)に示すような位置としておくことで、このような不都合が生じるのを良好に回避することができる。
【0105】
以上シール部材92が水側弁体82と摺動面86との間の隙間をシールする際の作用を説明したが、湯側のシール部材94が湯側弁体84と摺動面86との間の隙間をシールする際の作用も基本的に同様である。
【0106】
図5は、本実施形態のシール構造のシール特性を、シール部材として図14の樹脂リング204を用いた従来例と比較して示している。
図5の横軸は水側弁体82の弁開度を示し、縦軸は水側室79へ流れ込む水の流量Qを示している。
図5に示しているように、水側弁体82と摺動面86との間の隙間を通じての水の漏れは(湯側弁体84と摺動面86との間の隙間を通じての湯の漏れも同様)、水側弁体82の弁開度が小さくなったときに特に問題となる。
【0107】
詳しくは、従来のシール構造の場合には水側弁体82が閉弁方向に移動して弁開度が一定以下に小さくなったとき、即ち水流入通路72からの水の流れを一定以上に大きく絞った段階で、水の漏れが問題となる。
【0108】
具体的には、水側弁体82が閉弁方向に移動し、閉弁位置に到ってもなお一定量の水の漏れが生じており、水側弁体82の閉弁によっても、水流入通路72から湯水混合弁の側への水の漏れを一定以上に小さくしたり無くしたりすることができない。
【0109】
しかるに本実施形態のシール構造によれば、水側弁体82の閉弁方向の移動により、水側弁体82が閉弁に到るまでの間、水側弁体82の移動に伴って連続して水流入通路72から湯水混合弁側への水の流れを減少でき、最終的に水の漏れを無くして水側室79への水の流入を停止させることが可能となる。
尚、湯側弁体84と摺動面86との間のシール構造についても上記と同様である。
【0110】
以上はシール部材92,94を弁ハウジング66側に固定状態に取り付けた場合の例であるが、これらシール部材92,94を弁ハウジング66の側にも、また水側弁体82,湯側弁体84の側にも非固定で、それらに対し相対移動可能に設けておくといったことも可能である。
【0111】
尚水側のシール部材92,湯側のシール部材94は基本的にその働きが同様であるので、以下は水側のシール部材92、即ち水側弁体82と摺動面86との間の隙間のシール構造を例として以下に説明する。
【0112】
図6はその一例を示している。
この例は、弁ハウジング66の側にも環状溝116を設け、またシール部材92を、水側弁体82と弁ハウジング66とにまたがって且つ弁ハウジング66,水側弁体82の何れに対しても非固定で、それらに対し相対移動可能な状態で設けて、外周側の部分を環状溝116内に、また内周側の部分を環状溝96内に挿入せしめ、そして水側弁体82が閉弁位置近くまで移動した段階でシール部材92を、摺動面86と水側弁体82との間の隙間に導入される液圧で環状溝96のシール壁面100と、環状溝116のシール壁面118との両方に密着状態に押し付け、シール作用させるようになした例である。
尚、水側弁体82側のシール壁面100と、弁ハウジング66側のシール壁面118との軸方向の位置関係は上例以外の位置関係となしておくことも可能である。
【0113】
図7はその例を示している。
図7(A)(イ)の例は、弁ハウジング66側のシール壁面118の軸方向位置を、水側弁体82のシール壁面100に対して図6の例よりも図中左側に位置させた例であり、また図7(ロ)の例はこれとは逆に、シール壁面118の軸方向位置を、水側弁体82のシール壁面100よりも図中右側に位置させた例を示している。
【0114】
上記の例は、弁ハウジング66側の環状溝116を、水流入通路72とは別に独立して設けた場合の例であるが、かかる環状溝116を、図7(B)に示しているように水流入通路72に連続する形態で設けておくといったことも可能である。
【0115】
尚このようにシール部材92を、弁ハウジング66と水側弁体82とに対してそれぞれ非固定でフリーの状態で設けた場合、図8(B)に示しているように上記クリアランスCによる水側弁体82と摺動面86との間の隙間に流れ込む水の流れによって、シール部材92が不規則な変形を生じてしまい、シール部材92がシール作用を発揮できなくなるといったことが生じる可能性がある。
しかるに図1〜図4に示しているようにシール部材92を弁ハウジング66の側に固定状態に取り付けておくことで、このような不具合の発生を防止することができる。
【0116】
以上は水側弁体82を水側弁座88に当接させて、これを閉弁させる場合の例であるが、図9に示しているように弁ハウジング66側に水側弁座88を設けず、水側弁体82をそのような水側弁座88に当接させることなく閉弁させるようになすことも可能である。
図9(A)はその具体例を示している。この例において、水側弁体82は水側弁座への当接によることなく閉弁する。
尚ここでは水側弁体82の閉弁位置を規定するために、水側弁体82と弁ハウジング66とに、ストッパ部120,122を設け、それらを当接させることで水側弁体82を閉弁位置に停止させるようになしている。
【0117】
上記シール部材92を固定状態に設ける場合において、これを水側弁体82の側に固定状態に取り付けておくことも可能である。
図10はその場合の例を示している。
この例は、弁ハウジング66側の水側弁座88を図中下向きに突出状態に設ける一方、水側弁体82には水側弁座88への当り部124を上向きに突をなすように設け、また水側弁体82には水の通路128を設けて、水流入通路72から流入した水をこの通路128、及び水側弁座88と当り部124との間の間隙を通じて内部に流入させるようになしている。
【0118】
また上記シール部材92は、水側弁体82に対して内周側を固定状態に取り付け、そして外周側の部分を、弁ハウジング66に形成した環状溝116内に挿入させて、これを水側弁体82の閉弁時若しくはその直前で、シール壁面118に密着状態に押し付け、シール作用させるようになしている。
【0119】
以上の実施形態では本発明のシール構造を圧力バランス弁の水側弁体82と弁ハウジング66との間、及び湯側弁体84と弁ハウジング66との間に設けているが、本発明のシール構造は、図1の湯水混合弁における混合弁体12の水側弁体14と湯水混合弁の弁ハウジング10との間、或いは湯側弁体16と弁ハウジング10との間に設けることも可能である。
【0120】
図11はその代表として水側弁体14と弁ハウジング10との間に本発明のシール構造を適用した例を示している。但し湯側弁体16と弁ハウジング10との間に本発明のシール構造を適用した場合も左右が逆である点を除いて基本的に図1に示すシール構造と同様となる。
【0121】
この図11に示すシール構造は、上記の例における環状溝96を混合弁体12における水側弁体14に設け、また一方シール部材92を湯水混合弁の弁ハウジング10の側に固定状態に取り付けて、内周側をその環状溝96内に挿入させ、そしてその挿入した部分を、環状溝96のシール壁面100に対して密着状態に押し付けて、シール作用させるようになしたものである。
他の点については基本的に上記のバランス弁体76における水側弁体82と弁ハウジング66との間のシール構造と基本的に同様である。
【0122】
図12及び図13は、本発明を定流量弁におけるシール構造として適用した場合の例を示している。
図において130は定流量弁の円筒形状をなす弁体で、132は弁ハウジングである。
弁体130は、弁ハウジング132の内周面を軸方向の摺動面134として軸方向の図中左右方向に移動運動し、定流量作用を行う。
【0123】
弁体130には、1次側から2次側へと液を流通させる開口136が設けられている。
弁体130にはまた、1次側の液圧P1を受ける1次側受圧面138と、2次側の液圧P2を受ける2次側受圧面140とが設けられている。
この弁体130にはばね142の付勢力が図中左向きに、即ち2次側受圧面140に対する2次側液圧P2の作用方向に及ぼされている。
【0124】
この例の定差圧式の定流量弁では、弁体130に対して図中右向きに働く1次側液圧P1と、弁体130に対して図中左向きに働く2次側液圧P2、及びばね142による図中左向きの付勢力とが釣合うように弁体130が図中左右方向に動作する。
【0125】
即ち、2次側圧力P2が高くなると弁体130が図中左向きに移動して、弁座144との間に形成される液通路146から流出する液の流れに対する絞りを小として2次側液圧P2を低くし、1次側液力P1と2次側液力P2との差圧を一定に保ち、弁体130に対する図中右向きの力と左向きの力とをバランスさせる。
【0126】
また2次側圧力P2が低くなると、弁体130が図中右向きに移動して液通路146の液の流れに対する絞りを大とし、2次側圧力P2高くしてP1とP2との差圧を一定に保ち、弁体130に対する図中右向きの力と左向きの力とをバランスさせる。
この定流量弁において、開口136を流通する液の流量は次の式(1)で与えられる。
【0127】
【数1】
【0128】
但し式(1)中Qは流量で、Aは開口136の流路面積、Cが定数で、ρは水の比重である。
而してこの定流量弁にあっては、差圧P1−P2が一定に保たれるため、開口136を通過して流れる流量は一定流量に保たれる。
【0129】
この例において、弁体130の外周側には上記と同様のシール部材152の内周側が固定状態に取り付けられている。
一方弁ハウジング132の側には環状溝148が形成されていて、そこにシール部材152の外周側の部分が挿入されている。
この定流量弁のシール構造では、弁体130が図中右向きに移動して定流量作用を行う位置の直前で、シール部材152が環状溝148の軸直角方向のシール壁面150に密着してシール作用を行う。
【0130】
即ちこの定流量弁においても、弁体130と弁ハウジング132の軸方向の摺動面134との間には、弁体130の円滑な運動を確保するためにクリアランスCが確保されており、そしてそのクリアランスCによる弁体130と摺動面134との間の隙間からの液の漏れが生じると、弁体130の動作による定流量作用を正確に行えないことから、ここでは上記と同様のシール構造を弁体130と弁ハウジング132との間に設け、弁体130が大きく開弁した状態から弁座144に向けて図中右方向に移動し、定流量作用位置に到る直前で、弁体130と摺動面134との間の隙間に導入される液圧でシール部材152をシール壁面150に密着状態に押し付けてシール作用させ、上記隙間からの液の漏れによって下流側に流れる液の流量が、設定された定流量よりも多くなるのを防止するようになしている。
【0131】
図13もまた定流量弁に本発明のシール構造を適用した場合の例で、この図13に示す例では、開口136が、弁体130とは別体に流路内に設けられた固定部材154に形成されている。
また弁体130の図中右側の背後には、1次側と連通路156で連通した背圧室158が形成されており、そこに1次側液圧P1が導かれるようになっている。
【0132】
而して弁体130には、1次側受圧面138に対して背圧室158の1次側液圧P1が図中左向きに作用し、また2次側受圧面140に対し2次側液圧P2が図中右向きに作用する。
また弁体130に対しては、ばね142の付勢力が図中右向きに及ぼされている。
【0133】
この図13に示す定流量弁においても、弁体130が1次側液圧P1と2次側液圧P2との差圧を一定にするように図中左右方向に移動して、液通路146から下流側に流出する液の流量を絞り、そしてその絞り作用により、1次側液圧P1と2次側液圧P2との差圧を一定に維持して、開口136を通過して流れる液の流量を定流量化する。
【0134】
而してこの定流量弁において、弁体130と弁ハウジング132との間に上記のシール構造が適用され、弁体130が弁座144に接近して液通路146の流れを絞り、定流量作用をする位置若しくはその直前の位置に到ると、弁体130と弁ハウジング132との間の嵌合クリアランスCによる隙間からの液の漏れを防止するようにしている。
【0135】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は、自動温度調節機能付きの湯水混合弁の混合弁体が水圧駆動又は湯圧駆動で動作し、混合水温度を調節するものにおいて、その混合弁体の水側弁体,湯側弁体と弁ハウジングとの間のシール構造として適用するといったことも可能である。
【0136】
湯水混合弁として、混合弁体に一体的に構成した水側弁体の背後に背圧室を形成して、そこに導入小孔を通じて1次側の水路の水を導入し、そして混合弁体をその背圧室による閉弁方向の押圧力と、1次側の給水の液圧による開弁方向の押圧力とのバランスで混合弁体を移動させるようになすとともに、背圧室から水を流出させるパイロット水路を設けて、そのパイロット水路の開度をパイロット弁体の進退移動により変化させることで背圧室の液圧を増減変化させ、これによってパイロット弁体の移動方向に追従して混合弁体を同方向に移動させる形式の湯水混合弁、或いは混合弁体に一体的に構成した湯側弁体の背後に背圧室を形成して、そこに導入小孔を通じて1次側の湯路の湯を導入し、上記と同様にしてパイロット弁体の移動により混合弁体を追従して移動させる形式の湯水混合弁が従来知られており、このような形式の湯水混合弁における水側弁体又は/及び湯側弁体と弁ハウジングとの間のシール構造として本発明のシール構造を適用するといったことも可能である。
また上記実施形態ではシール壁面が何れも軸直角方向の面となしてあるが、場合によってこのシール壁面を軸直角方向以外の、軸方向に交差した方向の面として形成しておくことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0137】
10,66,132 弁ハウジング
12 混合弁体
14,82 水側弁体
16,84 湯側弁体
22,72 水流入通路
26,74 湯流入通路
32 感温ばね
34 バイアスばね
43,86,134 摺動面
76 バランス弁体
92,94,104,106,152 シール部材
100,102,112,114,118,150 シール壁面
128 通路
130 弁体
146 液通路
C 嵌合クリアランス
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って弁体を移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御する流量制御弁のシール構造、詳しくは弁体と摺動面との間の隙間をシールするシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種流量制御弁の代表的な例として、湯水混合弁における混合弁体の上流側に配置される圧力バランス弁がある。
この圧力バランス弁は、水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧により弁体を移動させて、水の流出液圧と湯の流出液圧とを同圧として湯水混合弁に供給する働きをなす。
【0003】
図14はその具体例を示している。
図において、200は筒形状(ここでは円筒形状)の内筒から成る湯水混合弁の弁ハウジングで、その内部に混合弁体202が図中左右方向即ち軸方向に移動可能に収容されている。
この混合弁体202は、軸方向に一体に移動する水側弁体204と湯側弁体206とを有している。
【0004】
この湯水混合弁は、水側弁体204,湯側弁体206のそれぞれの弁開状態で、弁ハウジング200に形成された水流入口208から、これに続く水流入通路210を通じて内部に水を流入させ、また弁ハウジング200に形成された湯流入口212から、これに続く湯流入通路214を通じて内部に湯を流入させる。
流入した水と湯とは混合室216で混合されて、混合水が流出部218から外部に流出し、所定の吐水部から吐水される。
【0005】
混合弁体202は、水側弁体204と湯側弁体206との弁開度を、即ち上記水流入通路210と湯流入通路214とのそれぞれの開度を互いに逆の関係で大小変化させて、流入する水と湯との混合比率を変化させる。即ち混合水の温度を変化させる。
【0006】
混合室216内には形状記憶合金製の感温ばね217が設けられており、その付勢力が混合弁体202に対して図中左向きに及ぼされている。
混合弁体202にはまた、通常の金属製のコイルばねから成るバイアスばね219の付勢力が図中右向き、即ち感温ばね217による付勢力とは逆向きに及ぼされており、混合弁体202は、それら感温ばね217による図中左向きの付勢力と、バイアスばね219による図中右向きの付勢力とが釣合う位置に(バランスする位置に)、図中左右方向即ち軸方向に移動せしめられる。
【0007】
具体的には、混合水の温度が設定温度よりも高ければ感温ばね217が伸張して図中左向きの付勢力を高め、感温ばね217の付勢力とバイアスばね219の付勢力との釣合い位置を図中左側にシフトさせて、混合弁体202を図中左方向に移動させる。
【0008】
逆に混合水温度が設定温度よりも低ければ、感温ばね217が収縮して付勢力を弱め、感温ばね217による付勢力とバイアスばね219による付勢力との釣合い位置を図中右側にシフトさせ、混合弁体202を図中右方向に移動させる。
これによって流入する水と湯の流入量を変化させ、混合水温度を自動的に設定温度に温度調節する。
尚、水側弁体204は弁ハウジング200に形成された水側弁座220に当接して閉弁し、また湯側弁体206は弁ハウジング200に形成された湯側弁座222に当接して閉弁する。
【0009】
224は筒形状(ここでは円筒形状)の外筒から成る圧力バランス弁の弁ハウジングで、その内部且つ上記の湯水混合弁の弁ハウジング200との間に形成される環状空間に、バランス弁体226が図中左右方向即ち軸方向に移動可能に設けられている。
【0010】
このバランス弁体226は、軸方向の中間部に仕切部236を有している。
仕切部236は、弁ハウジング224と200とに摺動可能に嵌合されており、この仕切部236によって、弁ハウジング224と200との間の上記の環状空間が、弁ハウジング224側の水流入通路230と、湯水混合弁の側の上記の水流入通路210とに連通した水側室と、同じく弁ハウジング224側の湯流入通路234と、湯水混合弁側の上記の湯流入通路214とに連通した湯側室とに区画されている。
【0011】
バランス弁体226は、仕切部236の図中左側と右側とに水側弁体238と湯側弁体240とを一体に備えており、それらが弁ハウジング224の内周面に嵌合され、かかる弁ハウジング224の内周面を軸方向の摺動面242として、仕切部236とともに一体に軸方向の左右方向に移動するようになっている。
【0012】
ここで水側弁体238は、水流入通路230の開度を拡く又は狭く変化させて水の流入量を調節する作用をなし、また湯側弁体240は、湯流入通路234の開度を狭く又は拡く変化させて湯流入通路234からの湯の流入量を調節する作用をなす。
【0013】
この圧力バランス弁において、バランス弁体226は水側室及び湯側室に対する軸方向の受圧面積が等しくされており、従って水の流入液圧が湯の流入液圧よりも高く、水側室の液圧Pcが湯側室の液圧Phに対して高ければ、バランス弁体226がその差圧で図中右向きに移動して、水側弁体238が水流入通路230の開度を狭く、また湯側弁体240が湯流入通路234の開度を拡く変化させる。
【0014】
この結果、水流入通路230からの水流入量が少なくなるとともに、湯流入通路234からの湯流入量が多くなり、そして水側室の液圧Pcと湯側室の液圧Phとが等しくなり、バランスしたところでバランス弁体226がそこに停止し、水側室と湯側室とから水と湯とを等しい液圧で湯水混合弁の側に供給する。
【0015】
詳しくは、湯水混合弁の弁ハウジング200の水流入口208とこれに続く水流入通路210、及び湯流入口212とこれに続く湯流入通路214を通じて、湯水混合弁の内部に水と湯とを供給する。
【0016】
ところで、上記圧力バランス弁においては水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧、即ち水側室の液圧Pcと湯側室の液圧Phとの差圧に基づいてバランス弁体226を応答性良く軽やかにバランス位置まで移動させることが必要であり、そのため図15に拡大して示すようにバランス弁体226の外周面と弁ハウジング224の内周面即ち摺動面242との間に所定の嵌合クリアランスCが確保される。
【0017】
この場合、上記クリアランスCに基づいて水側弁体238と摺動面242との間に形成される隙間がシールされていないと、水側弁体238が閉弁状態となっても、水流入通路230からの水がその隙間を通じて水側室まで回り込んでしまう。即ち水流入通路230からの水がその隙間から水側室へと漏れてしまう。
【0018】
同様にクリアランスCに基づいて湯側弁体240と摺動面242との間に生ずる隙間がシールされていないと、湯側弁体240が閉弁状態となっても、湯流入通路234からの湯がその隙間を通じて湯側室まで回り込んでしまう。即ち湯流入通路234からの湯がその隙間から湯側室へと漏れてしまう。
【0019】
そこで水側弁体238と摺動面242との間の隙間,湯側弁体240と摺動面242との間の隙間をそれぞれシールすることが必要となる。
そのシール構造として、下記特許文献1に開示のものにおいて仕切部と弁ハウジングの摺動面との間をシールしている樹脂製のシールリング244を用い、これを水側弁体238と摺動面242との間のシール、湯側弁体240と摺動面242との間のシール用に用いたシール構造とすることが考えられる。
【0020】
この樹脂製のシールリング244は、図14(B)に拡大して示しているように円形のリング状をなしていて、軸方向の側面244A,244B及び外周面244Cがそれぞれ平坦面をなしており、また周方向所定個所に斜めの切目245が設けてあり、この切目245によってシールリング244が径方向に弾性変形可能とされ、且つこの切目245によってシールリング244を径方向に押し拡げて所定の弁体に装着できるようになしてある。
【0021】
このシールリング244は、図15に拡大して示しているようにこれを水側弁体238,湯側弁体240の溝に嵌込状態に装着したとき、軸方向の側面244A又は244Bを、対応する溝側面246A又は246Bに当接させるとともに、併せて平坦な外周面244Cを上記摺動面242に当接させることによって、上記クリアランスCに基づく水側弁体238と摺動面242との間の隙間,湯側弁体240と摺動面242との間の隙間をシールする。
尚この例では、シールリング244が仕切部236の外周側と内周側にも装着されている。
【0022】
この樹脂製のシールリング244を用いたシール構造では、Oリングを用いて水側弁体238と摺動面242との間,湯側弁体240と摺動面242との間をシールする場合に比べて摺動抵抗を小さくできるものの、バランス弁体226の摺動に際して摺動抵抗を十分に小さくすることができない。
【0023】
而してそのような摺動抵抗が生ずると、バランス弁体226の軸方向移動による圧力バランス作用に悪影響が及び、圧力バランス弁の動作精度を悪化させてしまう。
加えてこのシールリング244には切目245が設けてあるため、その切目245の部分での漏れを避け得ず、これもまた圧力バランス弁の動作精度を悪化させる要因となる。
而して圧力バランス弁の動作精度が悪化すると、下流側の湯水混合弁に対して水と湯とを同圧で供給することができず、湯水混合弁において湯水の混合動作を正確に行えなくなってしまう。
【0024】
そのため、特に上記の漏れが大きな問題となる閉弁時において、上記クリアランスCに基づいて水側弁体238と摺動面242との間に生じる隙間,湯側弁体240と摺動面242との間に生じる隙間を良好にシールでき、且つ摺動抵抗を可及的に少なくすることのできるシール構造が求められていた。
【0025】
同様の問題は、上記湯水混合弁における混合弁体202の水側弁体204,湯側弁体206と対応する弁ハウジング200の内周面即ち軸方向の摺動面248との間のシール構造にも存在する。
図14では、そのためのシールとしてOリング250が用いられているが、この場合、混合弁体202の水側弁体204及び湯側弁体206が図中左右方向即ち軸方向に移動する際に大きな摺動抵抗を生じてしまう。
【0026】
混合弁体202の水側弁体204,湯側弁体206即ち互いに軸方向に逆向きに作用するばねの付勢力をバランスさせるように軸方向に移動して、混合水の温度調節を行う弁体にこのように大きな摺動抵抗が生じてしまうと、その摺動抵抗がこれら弁体のバランス作用に悪影響を及ぼしてしまい、混合水の温度調節を正確に行えなくなってしまう。
【0027】
従って混合弁体202における水側弁体204と摺動面248との間,湯側弁体206と摺動面248との間のシール構造においても、特に上記の漏れが大きな問題となる閉弁時に良好に隙間をシールでき且つ摺動抵抗を可及的に少なくし得るシール構造が求められていた。
またこれらの弁以外においても、弁体を弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御するその他の流量制御弁、特に弁体に対して軸方向に互いに逆向きの力が作用し、それらの力をバランスさせるように弁体が軸方向に移動する弁において同様のシール構造が求められていた。
【0028】
尚、下記特許文献2には自動温度調節機能付きの湯水混合弁における混合弁体と、対応する軸方向の摺動面との間のシール部材としてゴム製のUパッキンを用いたものが開示されているが、このようなUパッキンをシール部材として用いた場合、弁体の移動に際してUパッキンを水圧に逆らって弾性変形させることが必要であり、その際にUパッキンの変形抵抗が弁体の移動に対する抵抗となって加わってしまう問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平11−51219号公報
【特許文献2】実開平6−69549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は以上のような事情を背景とし、必要とされるときに弁体と弁ハウジングの軸方向の摺動面との間の隙間を良好にシールでき、且つ摺動抵抗を可及的に少なくし得る流量制御弁のシール構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
而して請求項1のものは、弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って弁体を移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御する流量制御弁のシール構造であって、前記弁体と前記摺動面との間の隙間をシールするシール部材として可撓性の膜状部材を用い、該シール部材を前記隙間に導入された液圧で対応するシール壁面に押し付けて密着させ、シールするようになしたことを特徴とする。
【0032】
請求項2のものは、請求項1において、前記シール壁面が前記軸方向に対して交差する方向の面となしてあり、前記シール部材によって前記隙間を軸方向にシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0033】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が閉弁位置まで移動して前記液通路を閉じる弁であって、少なくとも該弁体の前記閉弁位置において前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0034】
請求項4のものは、請求項3において、前記弁体が全開側から全閉側に移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0035】
請求項5のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が前記摺動面に沿って移動することで、該弁体に対して軸方向に互いに逆向きに加わる液圧又は/及び弾性体の付勢力をバランスさせるように動作するものであることを特徴とする。
尚、ここで液圧又は/及び弾性体の付勢力をバランスさせるとは、軸方向に互いに逆向きに加わる液圧と液圧とをバランスさせる場合、弾性体の付勢力と弾性体の付勢力とをバランスさせる場合、液圧と弾性体の付勢力とをバランスさせる場合の何れをも含んでいることを意味する。
【0036】
請求項6のものは、請求項5において、前記弁体が水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧により移動して、水の流出液圧と湯の流出液圧とを均等化して流出させる圧力バランス弁の弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び該湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする。
【0037】
請求項7のものは、請求項5において、前記流量制御弁が自動温度調節機能付きの湯水混合弁であって、前記弁体が混合弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする。
【0038】
請求項8のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体に対して軸方向に逆向きに加わる1次側の液圧と2次側の液圧との差圧を一定にするように軸方向に動作して、前記液通路を流通する液の流量を一定流量に制御する定流量弁であって、少なくとも前記弁体の定流量作用位置において前記シール部材を前記シール壁面に密着させてシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0039】
請求項9のものは、請求項8において、前記弁体が前記定流量作用位置に向って移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0040】
請求項10のものは、請求項1〜9の何れかにおいて、前記可撓性の膜状のシール部材が弾性材にて構成してあることを特徴とする。
【0041】
請求項11のものは、請求項1〜10の何れかにおいて、前記弁ハウジングと前記弁体との両方に前記シール壁面を設ける一方、前記シール部材は、それら弁ハウジング側と弁体側とにまたがって且つ該弁ハウジング側及び該弁体側とのそれぞれに対し非固定で、それら弁ハウジング側及び弁体側に対し相対移動可能に設けてあり、前記隙間に導入された液圧により該シール部材を前記両方のシール壁面に密着させてシールするようになしてあることを特徴とする。
【0042】
請求項12のものは、請求項1〜10の何れかにおいて、前記シール部材は前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で該シール部材を密着させてシールするようになしてあることを特徴とする。
【0043】
請求項13のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が閉弁位置に位置したときに前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の閉弁方向に離隔した位置となしてあることを特徴とする。
【0044】
請求項14のものは、請求項8,9の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が前記定流量作用位置に位置したときに、前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の該定流量作用位置の側に離隔した位置となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0045】
以上のように本発明は、弁体と弁ハウジングの軸方向の摺動面との間の隙間をシールするシール部材として可撓性の膜状部材を用い、上記隙間に導入された液圧でシール部材を対応するシール壁面に押し付けて密着させ、シールするようになしたものである。
【0046】
本発明は、弁体と摺動面との間に導入された液圧を利用して、シール部材を対応するシール壁面に密着状態に押し付けてシールするものであり、この場合シール部材が可撓性の膜状部材で構成されているため、シール部材に対して十分に大きなシールのための面圧を作用させることができ、またシール部材はその面圧により自身の可撓性に基づいてシール壁面に良好に密着でき、これによって良好なシール性能を確保できる。
この場合において、上記流量制御弁は筒形の弁となしておくことができる。
【0047】
上記シール壁面は、軸方向に対し交差する方向の面、例えばこれを軸直角方向の面となしておき、シール部材によって上記の隙間を軸方向にシールするものとなしておくことができる(請求項2)。
この請求項2のシール構造はまた、径方向等の軸直角方向のシールは行わず、軸方向のシールだけを行うものとなしておくことができる。
【0048】
上記弁ハウジングの軸方向の摺動面と弁体との間の隙間からの液の漏れは、弁体の開度が大きいとき、即ち液通路の開度が大きいときには、液の全流量に対する上記隙間からの漏れの流量の占める比率が小さいために、それほど大きな問題とはならない。
一方で弁体の開度が小さいとき、即ち液通路の液の流れに対する絞りが大きいときに、全流量に対する漏れの流量の比率が大となるため、大きな問題となる。
【0049】
例えば請求項3に規定するように、弁体が閉弁位置まで移動して液通路を閉じる弁である場合、弁体が閉弁状態であるにも拘らず上記隙間から液が漏れてしまうといったことは大きな問題となる。
【0050】
或いは請求項8に規定するように、弁体が液通路の流れを絞って定流量作用を行う定流量弁である場合、弁体が全開側から全閉側に移動して定流量作用位置に到り、そこで定流量作用を行っているにも拘らず、上記隙間からの漏れがあると定流量作用を正確に行うことができない。
【0051】
特にこのように弁体が閉弁位置に到ったとき、或いは液通路の開度を大きく絞った状態にあるときには、当該弁体の上流側での圧力降下が、弁体が大きく開かれているときに較べて小さくなる結果、隙間に導入される液圧が大きくなるため、隙間からの漏れの量もより大きくなってしまう。
【0052】
しかるに本発明は、上記隙間に導入される液圧を利用し、またシール部材の可撓性を利用して、これを対応するシール壁面に押し付けシールするものであるため、隙間からの液の漏れが特に大きな問題となる弁体の閉弁時、或いは弁体が定流量作用を行っている位置にあるときに、シール部材をシール壁面に密着状態に押し付けてシール作用させ、弁体が大きく開弁した状態にあるときにはシール部材によるシールを行わないようになすことが可能である。
【0053】
この場合において、弁体が全開側から全閉側に移動する途中、詳しくは閉弁位置に到る途中若しくは定流量作用位置に到る途中でシール部材がシール壁面に密着してシールするようになしておくことができる(請求項4,請求項9)。
このようにしておけば、弁体が閉弁位置或いは定流量作用位置直前に到るまではシール部材のシールによる摺動抵抗は発生せず、弁体を軽やかに摺動面に沿って移動させることが可能となる。
【0054】
請求項3,4のシール構造は、弁体に対して軸方向に互いに逆向きに加わる液圧又は/及び弾性体の付勢力の差を駆動力として弁体が移動し、それらをバランスさせるように動作する流量制御弁に適用して好適であり(請求項5)、特に請求項6に規定する圧力バランス弁に適用し効果の大なるものである。
これにより弁体移動時の摺動抵抗や、隙間からの液の漏れが弁体のバランス作用に悪影響を及ぼすのを良好に防止することが可能となる。
【0055】
この請求項5のシール構造はまた、自動温度調節機能付きの湯水混合弁の混合弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体と弁ハウジングの摺動面との間の隙間のシール構造に適用して好適である(請求項7)。
【0056】
本発明においては、上記可撓性の膜状のシール部材をゴム等の弾性材(エラストマー)にて構成しておくことができる(請求項10)。
シール部材をかかる弾性材で構成しておくことで、上記隙間に導入された液圧にてシール部材に面圧を加えたとき、シール部材におけるシール壁面側の面を弾性変形を伴ってシール壁面により十分に密着させることができ、シール性を一層高めることができる。
【0057】
本発明では、弁ハウジングと弁体との両方にシール壁面を設ける一方、シール部材については、それら弁ハウジング側と弁体側とにまたがって且つ弁ハウジング側及び弁体側とのそれぞれに対し非固定で、弁ハウジング側及び弁体側に相対移動可能に設けておき、隙間に導入された液圧によりシール部材を両方のシール壁面に密着させて、シールするようになしておくことができる(請求項11)。
【0058】
或いは請求項12に従って、シール部材を弁ハウジング側又は弁体側の一方に固定状態に取り付けておき、他方に設けたシール壁面に対し、隙間に導入された液圧でシール部材を密着状態に押し付けシールするようになしておくことができる(請求項12)。
【0059】
このようにシール部材を一方に固定状態で取り付けておいた場合、次の利点が得られる。
請求項11に従ってシール部材を非固定状態で設けておいた場合、上記隙間内の液の流れによってシール部材が不規則な変形を生じ、このことによってシール作用を十分に行えない場合が生じる恐れが生ずるが、請求項12に従ってシール部材を一方に固定状態に設けておくことで、このような不都合の発生を防止することが可能となる。
【0060】
このようにシール部材を一方に固定状態に取り付けておく場合において、弁体が閉弁位置まで移動して液通路を閉じるものであるとき、そのシール部材の取付位置を、弁体が閉弁位置に位置したときに他方のシール壁面に対し弁体の閉弁方向に離隔した位置となしておくことができる(請求項13)。
【0061】
或いは流量制御弁が定流量弁であって弁体が閉弁位置まで到らず、液通路を一定量開いた状態で定流量作用を行うものであるとき、上記シール部材の取付位置を、弁体が定流量作用位置に位置したときに他方のシール壁面に対し弁体の定流量作用位置の側に離隔した位置となしておくことができる(請求項14)。
【0062】
この請求項13,請求項14によれば、固定状態に取り付けられたシール部材が、その取付位置において弁体が閉弁方向に移動する際の邪魔となって、弁体が目的とする閉弁方向位置まで或いは定流量作用位置まで移動できなくなるといったことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態のシール構造を有する流量制御弁としての湯水混合弁及び圧力バランス弁を示した断面図である。
【図2】同実施形態の要部拡大図である。
【図3】同実施形態の作用説明図である。
【図4】図3の要部を拡大して示した図である。
【図5】本実施形態のシール特性を従来例と比較して示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図8】本発明の一実施形態の利点を説明するために示した説明図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態のシール構造の要部を示した図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図14】従来のシール構造を有する流量制御弁の図である。
【図15】図14の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は筒形状(ここでは円筒形状)の内筒から成る湯水混合弁の弁ハウジングで、その内部に混合弁体12が軸方向の図中左右方向に移動可能に収容されている。
この混合弁体12は、軸方向の図中左右方向に離隔して位置する水側弁体14,湯側弁体16と、それらを連結する軸状の連結部18とを有しており、それらが一体に図中左右方向に移動可能とされている。
【0065】
この湯水混合弁は、水側弁体14,湯側弁体16のそれぞれの弁開状態で、弁ハウジング10に形成された水流入口20から、これに続く水流入通路22を通じて内部に水を流入させ、また弁ハウジング10に形成された湯流入口24から、これに続く湯流入通路26を通じて内部に湯を流入させる。
流入した水と湯とは混合室28で混合され、混合水が流出部30から外部に流出し、所定の吐水部から吐水される。
【0066】
混合弁体12は、水側弁体14と湯側弁体16との弁開度を、即ち上記水流入通路22と湯流入通路26とのそれぞれの開度を互いに逆の関係で大小変化させて、流入する水と湯との混合比率を変化させる。即ち混合水の温度を変化させる。
【0067】
混合室28内には形状記憶合金製の感温ばね32が設けられており、その付勢力が混合弁体12に対して図中左向きに及ぼされている。
混合弁体12にはまた、通常の金属製のコイルばねから成るバイアスばね34の付勢力が図中右向き、即ち感温ばね32による付勢方向とは逆向きに及ぼされている。
混合弁体12は、それら感温ばね32による図中左向きの付勢力と、バイアスばね34による図中右向きの付勢力とが釣合う位置に(バランスする位置に)、図中左右方向即ち軸方向に移動せしめられる。
【0068】
具体的には、混合水の温度が設定温度よりも高ければ感温ばね32が伸張して図中左向きの付勢力を高め、感温ばね32の付勢力とバイアスばね34の付勢力との釣合い位置を図中左側にシフトさせて、混合弁体12を図中左方向に移動させる。
【0069】
逆に混合水の温度が設定温度よりも低ければ感温ばね32が収縮して付勢力を弱め、感温ばね32による付勢力とバイアスばね34による付勢力との釣合い位置を図中右側にシフトさせ、混合弁体12を図中右方向に移動させる。
これによって流入する水と湯との流入量を変化させ、混合水温度を自動的に設定温度に温度調節する。
【0070】
尚、水側弁体14は弁ハウジング10に形成された水側弁座36に当接して閉弁し、また湯側弁体16は弁ハウジング10に形成された湯側弁座38に当接して閉弁する。
この湯水混合弁の弁ハウジング10には図中左側位置に、右方に突出した環状の突出部40が設けられている。この突出部40は、後述の圧力バランス弁における弁ハウジングの一部を構成している。
【0071】
尚、円筒形状をなす水側弁体14と湯側弁体16とのそれぞれの外周面には、図2に示しているように環状溝35,37が設けられていて、そこにシール部材としてのOリング39,41が保持されており、水側弁体14及び湯側弁体16が、これらOリング39,41を介して、弁ハウジング10の内周面を摺動面43としてそこに軸方向に水密に且つ摺動可能に嵌合されている。
【0072】
42は、混合弁体12を駆動するための駆動機構を内部に収容する駆動機構のハウジングで、その内部且つ中心部に図中左右方向に延びる駆動軸44が設けられ、この駆動軸44が混合弁体12の上記の連結部18に一体移動状態に結合されている。
【0073】
46はハンドル(図示省略)に一体回転状態に連結される操作軸部で、この操作軸部46には、ハウジング42の内部において大径の円筒部48が一体に設けられている。
円筒部48の内周面には雌ねじ部50が設けられており、この雌ねじ部50に対して、円筒形状をなす進退部材52の外周面の雄ねじ部54が螺合され、操作軸部46即ち円筒部48の回転によって、この進退部材52がねじ送りで図中左右方向に進退移動せしめられるようになっている。
【0074】
この進退部材52の図中右端側には、円筒形状の係合部材56が進退部材52に対して図中左右方向に相対移動可能に連結されており、この係合部材56の図中右端の内向きのフランジ状のばね受58と、進退部材52の段付部60との間に、上記のバイアスばね34が圧縮状態で介装されている。
【0075】
進退部材52の図中右端には、径方向外向きに突出した環状の係合部62が設けられており、また一方、係合部材56の図中左端には径方向内向きのフランジ状の係合部64が設けられ、それら係合部62と64とが軸方向に係合するようになっている。
進退部材52の係合部62は、この係合部材56の係合部64とフランジ状のばね受58との間で、係合部材56に対して相対移動可能である。
【0076】
この湯水混合弁では、操作軸部46を回転操作することによって混合水の温度を設定ないし設定変更する。
このとき、操作軸部46と一体の円筒部48の回転によって、進退部材52が図中左右方向に進退移動して、混合弁体12の位置を図中左右方向に変化させる。
【0077】
詳しくは、操作軸部46を高温側に回転操作すると、進退部材52がねじ送りで図中右方に前進移動し、バイアスばね34を圧縮してその付勢力を増大させる。
この結果バイアスばね34と感温ばね32との付勢力の釣合い位置が図中右方に移行し、混合弁体12が同方向に移動せしめられる。
【0078】
一方、操作軸部46を上記とは逆方向に回転させると、進退部材52が上記とは逆に図中左方向に後退移動してバイアスばね34を伸張させ、バイアスばね34の付勢力を減少させる。
これにより、バイアスばね34と感温ばね32との付勢力の釣合い位置が図中左方に移行し、これとともに混合弁体12が同方向に移行せしめられる。
【0079】
そしてその状態で混合弁体12は、混合水温度の増減に応じて図中左右方向に位置を微動させ、混合水温度を設定温度に向けて低下させ又は上昇させ、混合水温度を自動的に設定温度に調節する。
【0080】
詳しくは、混合水温度が設定温度よりも高ければ感温ばね32の付勢力の増大によって混合弁体12が図中左方に微動し、混合水温度を設定温度に向けて低下させる。
逆に混合水温度が設定温度よりも低ければ感温ばね32が収縮して付勢力を弱め、ここにおいて混合弁体12が図中右方に微動して混合水温度を設定温度に向けて上昇させる。
【0081】
湯水混合弁における混合弁体12の上流側には、圧力バランス弁が配置されている。
図中66は筒形状(ここでは円筒形状)の外筒から成る圧力バランス弁の弁ハウジングで、この弁ハウジング66には、軸方向に離隔した位置に水流入口68と湯流入口70、及びこれらに連続した水流入通路72と湯流入通路74とが形成されている。
【0082】
弁ハウジング66の内部且つ上記の湯水混合弁の弁ハウジング10との間に形成される環状空間には、円筒状をなすバランス弁体76が軸方向の図中左右方向に移動可能に設けられている。
【0083】
このバランス弁体76には、軸方向の中間部に仕切部78が設けられている。
この仕切部78は、図2に詳しく示しているように弁ハウジング66と10とに摺動可能に嵌合されており、この仕切部78によって、弁ハウジング66と10との間の上記の環状空間が、弁ハウジング66の水流入通路72及び弁ハウジング10の水流入通路22とに連通した水側室79と、弁ハウジング66の湯流入通路74及び弁ハウジング10の湯流入通路26に連通した湯側室80とに区画されている。
【0084】
バランス弁体76は、仕切部78の図中左側と右側とに、水側弁体82と湯側弁体84とを有しており、それら水側弁体82と湯側弁体84とが弁ハウジング66の内周面に嵌合され、弁ハウジング66の内周面を軸方向の摺動面86として、仕切部78とともに一体に左右方向に移動するようになっている。
【0085】
ここで水側弁体82は、水流入通路72の開度を拡く又は狭く変化させて、水の流入量を調節する作用をなし、また湯側弁体84は、湯流入通路74の開度を狭く又は拡く変化させて、湯流入通路74からの湯の流入量を調節する作用をなす。
【0086】
この圧力バランス弁において、バランス弁体76は水側室79及び湯側室80に対する軸方向の受圧面積が等しくされており、従って水の流入液圧が湯の液圧よりも高く、水側室79の液圧Pcが湯側室80の液圧Phに対して高ければ、バランス弁体76がその液圧差で図中右向きに移動して、水側弁体82が水流入通路72の開度を狭く、また湯側弁体84が湯流入通路74の開度を拡く変化させる。
【0087】
この結果、水流入通路72からの水流入量が少なくなるとともに、湯流入通路74からの湯流入量が多くなり、そして水側室79の液圧Pcと湯側室80の液圧Phとが等しくバランスしたところで、バランス弁体76がそこに停止し、水側室79と湯側室80とから水と湯と等しい液圧で湯水混合弁の側に供給する。
【0088】
詳しくは、湯水混合弁の弁ハウジング10の水流入口20とこれに続く水流入通路22、及び湯流入口24とこれに続く湯流入通路26とを通じて、湯水混合弁の内部に水と湯とを等しい液圧で供給する。
【0089】
尚この実施形態において、水側弁体82は弁ハウジング66に形成された水側弁座88に当接して閉弁し、また湯側弁体84は弁ハウジング66に形成された湯側弁座90に当接して閉弁する。
【0090】
この実施形態において、バランス弁体76は弁ハウジング66の内周面の摺動面86に対して所定の嵌合クリアランスCをもって嵌合されており、そして水側弁体82,湯側弁体84の外周側には、その嵌合クリアランスに基づく隙間をシールするための円環状のシール部材92,94が設けられている。
【0091】
本実施形態では、このシール部材92,94として可撓性の膜状部材が用いられている。ここではシール部材92,94はゴム等の弾性材(エラストマー)にて構成されている。
シール部材92,94は、軸直角方向に配向されていて外周側の端部が弁ハウジング66に固定状態に取り付けられ、内周側の端部が弁ハウジング66の内周面の摺動面86から径方向内向きに突出せしめられている。
【0092】
一方水側弁体82,湯側弁体84の外周面には環状溝96,98が設けられていて、それら環状溝96,98内にシール部材92,94の内周側の部分が挿入されている。
ここでシール部材92,94は、環状溝96,98の溝底面に対し非接触となる状態で設けられている。
【0093】
また水側のシール部材92の取付位置は、図4(II)に示しているように水側弁体82が水側弁座88に当接して閉弁する位置に到ったときに、環状溝96の溝側面から成る軸直角方向のシール壁面100に対して図中右側位置、即ち水側弁体82の閉弁方向に離隔した位置とされている。
【0094】
同様に湯側のシール部材94の取付位置も、湯側弁体84が湯側弁座90に当接して閉弁位置となったときに、環状溝98の溝側面から成る軸直角方向のシール壁面102に対し、湯側弁体84の閉弁方向に離隔した位置とされている。
尚、仕切部78の外周側と内周側にも同様の構成から成るシール部材104,106が設けられている。
【0095】
ここで外周側のシール部材104は、内周側の端部が仕切部78に固定され、また内周側のシール部材106は、外周側の端部が仕切部78に固定されて、それぞれが径方向外方と内方とに突出せしめられている。
そしてこれに対応して弁ハウジング66と10とには環状溝108と110とが設けられ、シール部材104,106がこれら環状溝108,110内に挿入せしめられている。
【0096】
但し外周側のシール部材104は、環状溝108における一対の溝側面を軸直角方向のシール壁面112としてそこに密着し、シールを行う。
また内周側のシール部材106は、湯水混合弁における弁ハウジング10の環状溝110における一対の溝側面を軸直角方向のシール壁面114として、それぞれに密着しシールを行う。
【0097】
具体的には、バランス弁体76が図2中右方向に一杯まで移動して水側弁体82が閉弁したときには、シール部材104が図中右側のシール壁面112に密着してシール作用をなし、また仕切部78が図中左方向に一杯まで移動して湯側弁体84が湯側弁座90に当接し閉弁したときには、シール部材104が環状溝108の図中左側のシール壁面112に密着してシール作用をなす。
【0098】
一方内周側のシール部材106は、水側弁体82の閉弁時には環状溝110の図中右側のシール壁面114に密着して仕切部78と弁ハウジング10との間の隙間をシール作用し、また湯側弁体84の閉弁時には図中左側のシール壁面114に密着してシール作用する。
【0099】
次に本実施形態の作用を説明する。
図3(I)は、バランス弁体76が水側弁体82及び湯側弁体84をそれぞれ開いた状態として、水側室79の液圧Pcと湯側室80の液圧Phとを同圧にバランスさせているときの作用状態を表している。このとき水側のシール部材92は、図4(I)に示しているように水側弁体82のシール壁面100から図中右側に離間した状態にあって、水側弁体82と摺動面86との間の嵌合クリアランスCに基づく隙間をシール作用せず、同様に湯側のシール部材94もまた、湯側弁体84と摺動面86との間の隙間をシール作用せず、従って水流入通路72から流入した水は、その隙間を通じて水側室79に流れ込むことが可能であり、同様に湯流入通路74からの湯も隙間を通じて湯側室80に回り込むことが可能である。
但し図3(I)の状態では水流入通路72及び湯流入通路74が大きく開かれた状態にあるため、このような水,湯の回込みが生じても液圧Pcと湯側室80の液圧Phとが同圧で、特段の支障を生じない。
一方で、このようにして水側室の液圧Pcと湯側室の液圧Phとをバランスさせるように動作しているバランス弁体76は、シール部材92,94による摺動抵抗を全く受けず、軽やかにバランス動作を行うことができる。
【0100】
他方、例えば水側室79の液圧Pcが湯側室80の液圧Phに対して過大となったときには、水側弁体82が水流入通路72からの水の流れを大きく絞った状態となり、場合によって図3(II)に示すように水側弁体82が水側弁座88に当って閉弁した状態となる。
このとき、水側のシール部材92は水側弁体82と摺動面86との間の隙間に導入される水側の液圧によって図中左方向に押され、図3(II)に示すように水側弁体82のシール壁面100に密着せしめられる。これによってシール部材92が水側弁体82と摺動面86との間の隙間をシールし、その隙間を通じて水流入通路72からの水が水側室79へと回り込むのを防止する。
【0101】
この実施形態において、水側弁体82が閉弁位置近くになると即ち閉弁間際になると、水側弁体82の上流側での圧力降下が、水側弁体82が大きく開かれているときに較べて小さくなる結果、水側弁体82と摺動面86との間の隙間に導入される液圧、即ちシール部材92に作用する液圧も大きくなる。
一方でシール部材92は弾性材から成っており且つ可撓性を有しているため、水側弁体82が完全閉弁状態となる以前に、即ち水側弁体82が閉弁に到る途中でシール部材92がシール壁面100に密着状態に押し付けられてシール作用をなす。
【0102】
従ってこの実施形態では、水流入通路72からの水がクリアランスCによる隙間を通じて水側室79に漏れるのが最も問題となるときにおいて、シール部材92が適正なタイミングで隙間のシール作用をなし、隙間を通じて水側室79への水の漏れを防止作用する。
【0103】
この実施形態ではまた、シール部材92の弁ハウジング66への取付位置が、図3(II),図4(II)に示しているように水側弁体82が閉弁した状態においてシール壁面100よりも図中右側、即ち水側弁体82の閉弁方向に離隔した位置となしてあるため、かかるシール部材92がその取付位置で水側弁体82の閉弁位置への移動の妨げとなる恐れが無い利点を有している。
【0104】
図8(A)に示しているように、シール部材92の弁ハウジング66への取付位置が、水側弁体82が閉弁位置に到る前にシール壁面100に対してシール部材92が当る位置となしてあると、シール部材92が水側弁体82の更なる閉弁方向の移動の妨げとなる恐れがあるが、シール部材92の取付位置を図4(II)に示すような位置としておくことで、このような不都合が生じるのを良好に回避することができる。
【0105】
以上シール部材92が水側弁体82と摺動面86との間の隙間をシールする際の作用を説明したが、湯側のシール部材94が湯側弁体84と摺動面86との間の隙間をシールする際の作用も基本的に同様である。
【0106】
図5は、本実施形態のシール構造のシール特性を、シール部材として図14の樹脂リング204を用いた従来例と比較して示している。
図5の横軸は水側弁体82の弁開度を示し、縦軸は水側室79へ流れ込む水の流量Qを示している。
図5に示しているように、水側弁体82と摺動面86との間の隙間を通じての水の漏れは(湯側弁体84と摺動面86との間の隙間を通じての湯の漏れも同様)、水側弁体82の弁開度が小さくなったときに特に問題となる。
【0107】
詳しくは、従来のシール構造の場合には水側弁体82が閉弁方向に移動して弁開度が一定以下に小さくなったとき、即ち水流入通路72からの水の流れを一定以上に大きく絞った段階で、水の漏れが問題となる。
【0108】
具体的には、水側弁体82が閉弁方向に移動し、閉弁位置に到ってもなお一定量の水の漏れが生じており、水側弁体82の閉弁によっても、水流入通路72から湯水混合弁の側への水の漏れを一定以上に小さくしたり無くしたりすることができない。
【0109】
しかるに本実施形態のシール構造によれば、水側弁体82の閉弁方向の移動により、水側弁体82が閉弁に到るまでの間、水側弁体82の移動に伴って連続して水流入通路72から湯水混合弁側への水の流れを減少でき、最終的に水の漏れを無くして水側室79への水の流入を停止させることが可能となる。
尚、湯側弁体84と摺動面86との間のシール構造についても上記と同様である。
【0110】
以上はシール部材92,94を弁ハウジング66側に固定状態に取り付けた場合の例であるが、これらシール部材92,94を弁ハウジング66の側にも、また水側弁体82,湯側弁体84の側にも非固定で、それらに対し相対移動可能に設けておくといったことも可能である。
【0111】
尚水側のシール部材92,湯側のシール部材94は基本的にその働きが同様であるので、以下は水側のシール部材92、即ち水側弁体82と摺動面86との間の隙間のシール構造を例として以下に説明する。
【0112】
図6はその一例を示している。
この例は、弁ハウジング66の側にも環状溝116を設け、またシール部材92を、水側弁体82と弁ハウジング66とにまたがって且つ弁ハウジング66,水側弁体82の何れに対しても非固定で、それらに対し相対移動可能な状態で設けて、外周側の部分を環状溝116内に、また内周側の部分を環状溝96内に挿入せしめ、そして水側弁体82が閉弁位置近くまで移動した段階でシール部材92を、摺動面86と水側弁体82との間の隙間に導入される液圧で環状溝96のシール壁面100と、環状溝116のシール壁面118との両方に密着状態に押し付け、シール作用させるようになした例である。
尚、水側弁体82側のシール壁面100と、弁ハウジング66側のシール壁面118との軸方向の位置関係は上例以外の位置関係となしておくことも可能である。
【0113】
図7はその例を示している。
図7(A)(イ)の例は、弁ハウジング66側のシール壁面118の軸方向位置を、水側弁体82のシール壁面100に対して図6の例よりも図中左側に位置させた例であり、また図7(ロ)の例はこれとは逆に、シール壁面118の軸方向位置を、水側弁体82のシール壁面100よりも図中右側に位置させた例を示している。
【0114】
上記の例は、弁ハウジング66側の環状溝116を、水流入通路72とは別に独立して設けた場合の例であるが、かかる環状溝116を、図7(B)に示しているように水流入通路72に連続する形態で設けておくといったことも可能である。
【0115】
尚このようにシール部材92を、弁ハウジング66と水側弁体82とに対してそれぞれ非固定でフリーの状態で設けた場合、図8(B)に示しているように上記クリアランスCによる水側弁体82と摺動面86との間の隙間に流れ込む水の流れによって、シール部材92が不規則な変形を生じてしまい、シール部材92がシール作用を発揮できなくなるといったことが生じる可能性がある。
しかるに図1〜図4に示しているようにシール部材92を弁ハウジング66の側に固定状態に取り付けておくことで、このような不具合の発生を防止することができる。
【0116】
以上は水側弁体82を水側弁座88に当接させて、これを閉弁させる場合の例であるが、図9に示しているように弁ハウジング66側に水側弁座88を設けず、水側弁体82をそのような水側弁座88に当接させることなく閉弁させるようになすことも可能である。
図9(A)はその具体例を示している。この例において、水側弁体82は水側弁座への当接によることなく閉弁する。
尚ここでは水側弁体82の閉弁位置を規定するために、水側弁体82と弁ハウジング66とに、ストッパ部120,122を設け、それらを当接させることで水側弁体82を閉弁位置に停止させるようになしている。
【0117】
上記シール部材92を固定状態に設ける場合において、これを水側弁体82の側に固定状態に取り付けておくことも可能である。
図10はその場合の例を示している。
この例は、弁ハウジング66側の水側弁座88を図中下向きに突出状態に設ける一方、水側弁体82には水側弁座88への当り部124を上向きに突をなすように設け、また水側弁体82には水の通路128を設けて、水流入通路72から流入した水をこの通路128、及び水側弁座88と当り部124との間の間隙を通じて内部に流入させるようになしている。
【0118】
また上記シール部材92は、水側弁体82に対して内周側を固定状態に取り付け、そして外周側の部分を、弁ハウジング66に形成した環状溝116内に挿入させて、これを水側弁体82の閉弁時若しくはその直前で、シール壁面118に密着状態に押し付け、シール作用させるようになしている。
【0119】
以上の実施形態では本発明のシール構造を圧力バランス弁の水側弁体82と弁ハウジング66との間、及び湯側弁体84と弁ハウジング66との間に設けているが、本発明のシール構造は、図1の湯水混合弁における混合弁体12の水側弁体14と湯水混合弁の弁ハウジング10との間、或いは湯側弁体16と弁ハウジング10との間に設けることも可能である。
【0120】
図11はその代表として水側弁体14と弁ハウジング10との間に本発明のシール構造を適用した例を示している。但し湯側弁体16と弁ハウジング10との間に本発明のシール構造を適用した場合も左右が逆である点を除いて基本的に図1に示すシール構造と同様となる。
【0121】
この図11に示すシール構造は、上記の例における環状溝96を混合弁体12における水側弁体14に設け、また一方シール部材92を湯水混合弁の弁ハウジング10の側に固定状態に取り付けて、内周側をその環状溝96内に挿入させ、そしてその挿入した部分を、環状溝96のシール壁面100に対して密着状態に押し付けて、シール作用させるようになしたものである。
他の点については基本的に上記のバランス弁体76における水側弁体82と弁ハウジング66との間のシール構造と基本的に同様である。
【0122】
図12及び図13は、本発明を定流量弁におけるシール構造として適用した場合の例を示している。
図において130は定流量弁の円筒形状をなす弁体で、132は弁ハウジングである。
弁体130は、弁ハウジング132の内周面を軸方向の摺動面134として軸方向の図中左右方向に移動運動し、定流量作用を行う。
【0123】
弁体130には、1次側から2次側へと液を流通させる開口136が設けられている。
弁体130にはまた、1次側の液圧P1を受ける1次側受圧面138と、2次側の液圧P2を受ける2次側受圧面140とが設けられている。
この弁体130にはばね142の付勢力が図中左向きに、即ち2次側受圧面140に対する2次側液圧P2の作用方向に及ぼされている。
【0124】
この例の定差圧式の定流量弁では、弁体130に対して図中右向きに働く1次側液圧P1と、弁体130に対して図中左向きに働く2次側液圧P2、及びばね142による図中左向きの付勢力とが釣合うように弁体130が図中左右方向に動作する。
【0125】
即ち、2次側圧力P2が高くなると弁体130が図中左向きに移動して、弁座144との間に形成される液通路146から流出する液の流れに対する絞りを小として2次側液圧P2を低くし、1次側液力P1と2次側液力P2との差圧を一定に保ち、弁体130に対する図中右向きの力と左向きの力とをバランスさせる。
【0126】
また2次側圧力P2が低くなると、弁体130が図中右向きに移動して液通路146の液の流れに対する絞りを大とし、2次側圧力P2高くしてP1とP2との差圧を一定に保ち、弁体130に対する図中右向きの力と左向きの力とをバランスさせる。
この定流量弁において、開口136を流通する液の流量は次の式(1)で与えられる。
【0127】
【数1】
【0128】
但し式(1)中Qは流量で、Aは開口136の流路面積、Cが定数で、ρは水の比重である。
而してこの定流量弁にあっては、差圧P1−P2が一定に保たれるため、開口136を通過して流れる流量は一定流量に保たれる。
【0129】
この例において、弁体130の外周側には上記と同様のシール部材152の内周側が固定状態に取り付けられている。
一方弁ハウジング132の側には環状溝148が形成されていて、そこにシール部材152の外周側の部分が挿入されている。
この定流量弁のシール構造では、弁体130が図中右向きに移動して定流量作用を行う位置の直前で、シール部材152が環状溝148の軸直角方向のシール壁面150に密着してシール作用を行う。
【0130】
即ちこの定流量弁においても、弁体130と弁ハウジング132の軸方向の摺動面134との間には、弁体130の円滑な運動を確保するためにクリアランスCが確保されており、そしてそのクリアランスCによる弁体130と摺動面134との間の隙間からの液の漏れが生じると、弁体130の動作による定流量作用を正確に行えないことから、ここでは上記と同様のシール構造を弁体130と弁ハウジング132との間に設け、弁体130が大きく開弁した状態から弁座144に向けて図中右方向に移動し、定流量作用位置に到る直前で、弁体130と摺動面134との間の隙間に導入される液圧でシール部材152をシール壁面150に密着状態に押し付けてシール作用させ、上記隙間からの液の漏れによって下流側に流れる液の流量が、設定された定流量よりも多くなるのを防止するようになしている。
【0131】
図13もまた定流量弁に本発明のシール構造を適用した場合の例で、この図13に示す例では、開口136が、弁体130とは別体に流路内に設けられた固定部材154に形成されている。
また弁体130の図中右側の背後には、1次側と連通路156で連通した背圧室158が形成されており、そこに1次側液圧P1が導かれるようになっている。
【0132】
而して弁体130には、1次側受圧面138に対して背圧室158の1次側液圧P1が図中左向きに作用し、また2次側受圧面140に対し2次側液圧P2が図中右向きに作用する。
また弁体130に対しては、ばね142の付勢力が図中右向きに及ぼされている。
【0133】
この図13に示す定流量弁においても、弁体130が1次側液圧P1と2次側液圧P2との差圧を一定にするように図中左右方向に移動して、液通路146から下流側に流出する液の流量を絞り、そしてその絞り作用により、1次側液圧P1と2次側液圧P2との差圧を一定に維持して、開口136を通過して流れる液の流量を定流量化する。
【0134】
而してこの定流量弁において、弁体130と弁ハウジング132との間に上記のシール構造が適用され、弁体130が弁座144に接近して液通路146の流れを絞り、定流量作用をする位置若しくはその直前の位置に到ると、弁体130と弁ハウジング132との間の嵌合クリアランスCによる隙間からの液の漏れを防止するようにしている。
【0135】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は、自動温度調節機能付きの湯水混合弁の混合弁体が水圧駆動又は湯圧駆動で動作し、混合水温度を調節するものにおいて、その混合弁体の水側弁体,湯側弁体と弁ハウジングとの間のシール構造として適用するといったことも可能である。
【0136】
湯水混合弁として、混合弁体に一体的に構成した水側弁体の背後に背圧室を形成して、そこに導入小孔を通じて1次側の水路の水を導入し、そして混合弁体をその背圧室による閉弁方向の押圧力と、1次側の給水の液圧による開弁方向の押圧力とのバランスで混合弁体を移動させるようになすとともに、背圧室から水を流出させるパイロット水路を設けて、そのパイロット水路の開度をパイロット弁体の進退移動により変化させることで背圧室の液圧を増減変化させ、これによってパイロット弁体の移動方向に追従して混合弁体を同方向に移動させる形式の湯水混合弁、或いは混合弁体に一体的に構成した湯側弁体の背後に背圧室を形成して、そこに導入小孔を通じて1次側の湯路の湯を導入し、上記と同様にしてパイロット弁体の移動により混合弁体を追従して移動させる形式の湯水混合弁が従来知られており、このような形式の湯水混合弁における水側弁体又は/及び湯側弁体と弁ハウジングとの間のシール構造として本発明のシール構造を適用するといったことも可能である。
また上記実施形態ではシール壁面が何れも軸直角方向の面となしてあるが、場合によってこのシール壁面を軸直角方向以外の、軸方向に交差した方向の面として形成しておくことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0137】
10,66,132 弁ハウジング
12 混合弁体
14,82 水側弁体
16,84 湯側弁体
22,72 水流入通路
26,74 湯流入通路
32 感温ばね
34 バイアスばね
43,86,134 摺動面
76 バランス弁体
92,94,104,106,152 シール部材
100,102,112,114,118,150 シール壁面
128 通路
130 弁体
146 液通路
C 嵌合クリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って弁体を移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御する流量制御弁のシール構造であって
前記弁体と前記摺動面との間の隙間をシールするシール部材として可撓性の膜状部材を用い、該シール部材を前記隙間に導入された液圧で対応するシール壁面に押し付けて密着させ、シールするようになしたことを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項2】
請求項1において、前記シール壁面が前記軸方向に対して交差する方向の面となしてあり、前記シール部材によって前記隙間を軸方向にシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が閉弁位置まで移動して前記液通路を閉じる弁であって、少なくとも該弁体の前記閉弁位置において前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項4】
請求項3において、前記弁体が全開側から全閉側に移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項5】
請求項3,4の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が前記摺動面に沿って移動することで、該弁体に対して軸方向に互いに逆向きに加わる液圧又は/及び弾性体の付勢力をバランスさせるように動作するものであることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項6】
請求項5において、前記弁体が水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧により移動して、水の流出液圧と湯の流出液圧とを均等化して流出させる圧力バランス弁の弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び該湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項7】
請求項5において、前記流量制御弁が自動温度調節機能付きの湯水混合弁であって、前記弁体が混合弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項8】
請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体に対して軸方向に逆向きに加わる1次側の液圧と2次側の液圧との差圧を一定にするように軸方向に動作して、前記液通路を流通する液の流量を一定流量に制御する定流量弁であって、少なくとも前記弁体の定流量作用位置において前記シール部材を前記シール壁面に密着させてシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項9】
請求項8において、前記弁体が前記定流量作用位置に向って移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかにおいて、前記可撓性の膜状のシール部材が弾性材にて構成してあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかにおいて、前記弁ハウジングと前記弁体との両方に前記シール壁面を設ける一方、前記シール部材は、それら弁ハウジング側と弁体側とにまたがって且つ該弁ハウジング側及び該弁体側とのそれぞれに対し非固定で、それら弁ハウジング側及び弁体側に対し相対移動可能に設けてあり、前記隙間に導入された液圧により該シール部材を前記両方のシール壁面に密着させてシールするようになしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項12】
請求項1〜10の何れかにおいて、前記シール部材は前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で該シール部材を密着させてシールするようになしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項13】
請求項3,4の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、
且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が閉弁位置に位置したときに前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の閉弁方向に離隔した位置となしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項14】
請求項8,9の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、
且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が前記定流量作用位置に位置したときに、前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の該定流量作用位置の側に離隔した位置となしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項1】
弁ハウジングの軸方向の摺動面に沿って弁体を移動させ、液通路の開度を変化させて液の流量を制御する流量制御弁のシール構造であって
前記弁体と前記摺動面との間の隙間をシールするシール部材として可撓性の膜状部材を用い、該シール部材を前記隙間に導入された液圧で対応するシール壁面に押し付けて密着させ、シールするようになしたことを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項2】
請求項1において、前記シール壁面が前記軸方向に対して交差する方向の面となしてあり、前記シール部材によって前記隙間を軸方向にシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が閉弁位置まで移動して前記液通路を閉じる弁であって、少なくとも該弁体の前記閉弁位置において前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項4】
請求項3において、前記弁体が全開側から全閉側に移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項5】
請求項3,4の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体が前記摺動面に沿って移動することで、該弁体に対して軸方向に互いに逆向きに加わる液圧又は/及び弾性体の付勢力をバランスさせるように動作するものであることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項6】
請求項5において、前記弁体が水の流入液圧と湯の流入液圧との差圧により移動して、水の流出液圧と湯の流出液圧とを均等化して流出させる圧力バランス弁の弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び該湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項7】
請求項5において、前記流量制御弁が自動温度調節機能付きの湯水混合弁であって、前記弁体が混合弁体における水側弁体又は/及び湯側弁体であり、前記シール部材は、該水側弁体と前記弁ハウジングの摺動面との間の隙間又は/及び湯側弁体と該摺動面との間の隙間をシールするものであることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項8】
請求項1,2の何れかにおいて、前記流量制御弁は、前記弁体に対して軸方向に逆向きに加わる1次側の液圧と2次側の液圧との差圧を一定にするように軸方向に動作して、前記液通路を流通する液の流量を一定流量に制御する定流量弁であって、少なくとも前記弁体の定流量作用位置において前記シール部材を前記シール壁面に密着させてシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項9】
請求項8において、前記弁体が前記定流量作用位置に向って移動する途中で前記シール部材が前記シール壁面に密着してシールするものとなしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかにおいて、前記可撓性の膜状のシール部材が弾性材にて構成してあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかにおいて、前記弁ハウジングと前記弁体との両方に前記シール壁面を設ける一方、前記シール部材は、それら弁ハウジング側と弁体側とにまたがって且つ該弁ハウジング側及び該弁体側とのそれぞれに対し非固定で、それら弁ハウジング側及び弁体側に対し相対移動可能に設けてあり、前記隙間に導入された液圧により該シール部材を前記両方のシール壁面に密着させてシールするようになしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項12】
請求項1〜10の何れかにおいて、前記シール部材は前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で該シール部材を密着させてシールするようになしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項13】
請求項3,4の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は前記弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、
且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が閉弁位置に位置したときに前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の閉弁方向に離隔した位置となしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【請求項14】
請求項8,9の何れかにおいて、前記シール部材は、前記弁ハウジング側又は弁体側の一方に固定状態に取り付けてあり、他方に設けた前記シール壁面に対して前記隙間に導入された液圧で前記シール部材を密着させてシールするようになしてあり、
且つ前記シール部材の取付位置は、前記弁体が前記定流量作用位置に位置したときに、前記他方に設けたシール壁面に対して該弁体の該定流量作用位置の側に離隔した位置となしてあることを特徴とする流量制御弁のシール構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−112209(P2011−112209A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271885(P2009−271885)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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