説明

流量調節装置

【課題】無駄な待ち時間を排して、吐水開始に際し速やかに吐水部から目標とする流量で吐水することのできる流量調節装置を提供する。
【解決手段】流量調節装置を、給水の流路10に設けられた流量調節弁12と、流量計14と、制御部16とを備えて構成する。その制御部16は、吐水開始に際して流量計14からの検出信号が入力されるまでの間は、流量計14からの検出信号待ちの動作を行うことなく流量調節弁12の弁開度を自動的に除々に増大させる制御を行い、検出信号が入力された後は、流量計14により検出された流量に応じて流量調節弁12の弁開度を制御するフィードバック制御に切り換るものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流量調節装置に関し、詳しくは吐水開始に際して速やかに吐水の流量を目的とする流量とすることのできる流量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水部への給水の流路に流量調節弁と流量計とを設け、流量計による検出信号を制御部にフィードバックして、吐水部からの吐水流量を設定した目標の流量とする流量調節装置が公知である。
例えば下記特許文献1にこの種の流量調節装置が開示されている。
【0003】
この流量調節装置の場合、実際に給水の流路を流れる水の流量を、目標とする吐水部からの吐水流量と比較しながら制御部の制御の下に流量調節弁にて調節することから、水圧の変動等があっても吐水部からの実際の吐水流量を目標とする吐水流量に正しく合致させることができる。
【0004】
この流量調節装置における上記の流量計としては、水流の作用で羽根車を回転させて流量測定する羽根車式の流量計がコスト的に安価で好適である。
しかしながらこの羽根車式の流量計の場合、流路を流れる給水の流量が僅かであるとき流量検出の感度が十分でなく、これに起因して吐水開始に際し、目標とする流量で吐水させるまでに長い時間がかかってしまうといった問題を生ずる。
【0005】
例えば上記流量調節装置を水栓に適用した場合、吐水開始に際して最初からいきなり目標とする流量よりも過剰の大流量で吐水を行った後にフィードバック制御にて吐水流量を減少させ、目標とする流量に一致させるといったことは、水栓使用者に不快感を感じさせることから一般的に望ましくなく、先ず小量で吐水を行った上で吐水流量を漸次増大させ、最終的に目標とする流量とすること、また目標とする流量に達するまでの時間をできるだけ短くすることが望ましい。
【0006】
従ってこの場合には先ず流量調節弁を僅かだけ開いて流量計からの検出信号を待ち、そして流量計からの検出信号が入ったところで、検出された信号に応じた弁開度で流量調節弁を開き、目標とする流量に到らしめるといった制御を行うこととなる。
【0007】
ところが上記羽根車式の流量計の場合、流路を流れる水の流量が僅かであると、流量計の反応が鈍いことからなかなか流量計から検出信号が出ず、従ってこの場合のフィードバック制御は、図5に示しているように先ず流量調節弁を少しだけ開いて流量計からの検出信号を待ち、そして流量計の仕様による検出待ち時間(ここでは2秒間)待っても依然として流量計から検出信号が来ないときには、そこでまた更に少しだけ流量調節弁を開き、以下これを繰返し行って、目標とする吐水流量(設定流量)にまで流量を上げて行くといったことを行うこととなる。
この場合、目標とする流量で吐水されるまで非常に長い時間かかってしまい、水栓使用者に不快感を感じさせてしまう。
尚このような羽根車式の流量計の場合、流量に対する感度が不十分である点は下記特許文献2にも指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−49462号公報
【特許文献2】特開平5−88754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、無駄な待ち時間を排して吐水開始に際し速やかに吐水部から目標とする流量で吐水することのできる流量調節装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、(イ)吐水部への給水の流路に設けられた、弁部及び該弁部の駆動部を備えた流量調節弁と、(ロ)該流路に設けられて流量検出し、検出信号を出力する流量計と、(ハ)該検出信号に基づいて前記駆動部を動作制御し、前記流量調節弁の開度制御を行う制御部と、を有しており、該制御部は、吐水開始に際して前記流量計からの検出信号が入力されるまでの間は、該流量計からの検出信号待ちの動作を行うことなく前記流量調節弁の弁開度を自動的に除々に増大させる制御を行い、前記検出信号が入力された後は、前記流量計により検出された流量に応じて前記流量調節弁の弁開度を制御するフィードバック制御に切り換るものとなしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記流量計は水流により羽根車を回転させて流量検出するものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0012】
以上のように本発明は、吐水開始に際して流量計からの検出信号が入力されるまでの間は、流量計からの検出信号待ちの動作を行うことなく、流量調節弁の弁開度を自動的に除々に増大させる制御を行い、そして流量計からの検出信号が入力された後に、そこで初めて流量計により検出された流量に応じて流量調節弁の弁開度を制御するフィードバック制御に切り換えるようになしたもので、本発明によれば、吐水開始に際して流量計からの検出信号が入るまでの間の無駄な待ち時間を排して、速やかに吐水部から目標とする流量での吐水を行わせることができる。
【0013】
而して流量計からの検出信号が入った後は、流量計にて検出された流量と目標とする流量との比較に基づいて、流路を流れる給水の流量を適正に制御することができる。
【0014】
本発明は、羽根車式の流量計以外の様々な流量計を用いた流量調節装置に適用することが可能であるが、特に羽根車式の流量計を用いた流量調節装置に適用して大なる効果を奏する(請求項2)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の流量調節装置を模式的に示した図である。
【図2】図1の流量調節装置を水栓に適用した場合の具体例を示した図である。
【図3】同実施形態における流量調節弁開度,吐水流量,流量計からの検出信号の関係を示した図である。
【図4】同実施形態における制御の内容を示したフローチャートである。
【図5】従来例における流量調節弁開度,吐水流量,流量計からの検出信号の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本実施形態の流量調節装置を模式的に表したもので、図中10は吐水部に向けて給水を行う流路、12は流路10に設けられた流量調節弁、14は同じく流路10に設けられた流量計で、16はその流量計14からの検出信号を受けて流量調節弁12を動作制御する制御部である。
ここで流量調節弁12は弁部18とその駆動部としてのステッピングモータ20とを有している。
【0017】
この流量調節弁12では、ステッピングモータ20にパルス供給するとステッピングモータ20がステップ動作して、弁部18の弁開度をステップ動作分だけ変化させる。
また流量計14はここでは羽根車式の流量計である。
ここで流量計14は、各羽根がセンサ部を通過するごとに図3の立上り信号と立下り信号とを交互に出力する。
【0018】
図2は、図1の流量調節装置を水栓に適用した場合の具体例を示している。
図2において22は水栓で、24は水栓22における吐水管である。
吐水管24は、カウンタ上面等横設された取付面26から起立する形態で設けられている。
吐水管24は、全体として逆U字状のグースネック形状をなしており、その先端に吐水口28が備えられている。
【0019】
また吐水管24には、最上位から先端にかけて下向きに下がった形状の先端側部分24Aに且つその上面に、流量選択スイッチとしての小流量スイッチ30と、大流量スイッチ32とが設けられている。
ここで小流量スイッチ30,大流量スイッチ32はそれぞれ非接触式のスイッチ、即ちそこに手をかざすと手を検知して動作する非接触式のスイッチとなしてある。
【0020】
これら小流量スイッチ30,大流量スイッチ32は、それぞれ吐止水スイッチも兼ねており、従って止水状態で小流量スイッチ30を操作すると、吐水口28から設定された(目標とする)一定小流量で吐水が行われ、次に再び小流量スイッチ30を操作すると、そこで止水が行われる。
一方、止水状態で大流量スイッチ32を操作すると、設定された(目標とする)一定大流量で吐水が行われ、その吐水状態で再び大流量スイッチ32を操作すると、そこで止水が行われる。
【0021】
即ちこれら小流量スイッチ30及び大流量スイッチ32は、操作している間だけ吐水口28から吐水を行わせるものではなく、1回の操作ごとに吐水と止水とを行わせ、且つその吐水時には設定された一定流量で吐水口28から吐水させるものとして構成してある。
【0022】
図2において、10は吐水口28に向けて給水を行う流路で、この流路10に流量調節弁12と、流量計14とが設けられている。
流量調節弁12のステッピングモータ20及び流量計14は、それぞれ制御部16に電気的に接続されている。
【0023】
制御部16は、流量計14からの検出信号に基づいて流量調節弁12、詳しくは駆動部であるステッピングモータ20を動作制御し、弁部18の弁開度を増減変化させる。
この制御部16にはまた小流量スイッチ30,大流量スイッチ32が電気的に接続されている。
【0024】
制御部16は、小流量スイッチ30からの信号が入力されると、閉弁状態にあった流量調節弁12を開動作させ、且つ吐水口28から設定された一定小流量で吐水が行われるように流量調節弁12の弁部18の開度を調節せしめる。
また大流量スイッチ32からの信号が入力されると、流量調節弁12を閉弁状態から開動作させ、且つ吐水口28から設定された一定大流量で吐水が行われるように弁部18の開度を調節せしめる。
【0025】
この例では、使用者が例えば小流量スイッチ30を操作(吐水操作)すると、図3に示すようにこれによる吐水指示によって制御部16が流量調節弁12のステッピングモータ20をステップ動作させ、弁部18を先ず予め設定した微小且つ一定量で1段階だけ開動作させる。
【0026】
従来のフィードバック制御であると、制御部16は流量計14からの検出信号を、流量計の仕様による検出限度待ち時間(図5では2秒間)だけ待って、その上で再びステッピングモータ20の動作により弁部18を予め設定した微小且つ一定量で更に1段階開動作させるが、この例ではそのような長い時間(限度待ち時間)流量計14からの検出信号を待つことなく、設定微小時間t(ここでは4msec。この4msecは弁部18を1段階開ける動作を行うために必要な最小限の時間で、流量計14からの検出信号を待つために必要な時間2secに比べて著しく短い時間である。尚tは最大でもステッピングモータ20の相切換時間(pps:pulse per second)で数10msecまでである)後に、自動的に弁部18の弁開度を更に1段階開かせる。
そしてその後も制御部16は、流量計14からの検出信号が入力されるまでの間、弁部18を時間tごとに且つ1段階だけの開動作を繰返し行わせる。
【0027】
このようにして弁部18が段階的に除々に開かれた結果、流路10の流量が増して流量計14から検出信号が出力され、制御部16に入力されたところで、制御部16は流量計14により検出された流量に応じて弁部18の弁開度を制御するフィードバック制御に切り換る。
詳しくは、ここでは流量計14からの最初の検出信号が入力されたところで、一旦ステッピングモータ20を停止状態即ち弁部18を停止状態に維持し、そして流量計14からの次の検出信号が入力されたところで弁部18の弁開度を大とし、以後流量計14からの検出信号(立上り信号及び立下り信号)が入力されるごとに弁部18の開度を大として、流路10を流れる水の流量を段階的に多くして行く。
【0028】
尚ここでは流量計14からの検出信号ごとに弁開度を同じ量だけ1段ずつ大きくして行くが、流量計により検出される流量が少ないとき、即ち図3の検出信号の立上り信号と立下り信号又は立下り信号と立上り信号との間隔が長いときには、これに応じて1回の弁開度の増大量を大きくし、また信号の間隔が短いときには、即ち検出される流量が多いときには、1回の弁開度の増大量を小さくするように制御するようになすこともできる。
【0029】
このような弁部18の弁開度の段階的な増大に応じて、流路10を流れる水の流量は増大し、そしてその流量が目標流量に到達したところで、制御部16は弁部18の開度を一定に保ち、吐水口28から目標流量で吐水を行わせる。
尚図3の目標流量は、小流量スイッチ30を操作したときにはこれに応じた一定小流量であり、また大流量スイッチ32を操作したときにはそれに応じた一定大流量である。
【0030】
図4は制御部16における制御の内容を具体的に示している。
図4に示しているようにこの例において、制御部16は小流量スイッチ30又は大流量スイッチ32の操作により吐水指示があったときには、流量調節弁12を1段開動作させる(ステップS10,S12)。
そしてステップS14で流量計14からの検出信号の有無を判定して、検出信号が入力されるまでの間ステップS12を繰返し実行し、流量調節弁12を上記のように1段ずつ開動作させて行く。
【0031】
そしてその結果、流路10の流量が多くなって流量計14から検出信号が入力されたところで、そこで本来のフィードバック制御(ステップS16)に切り換ってこれを実行し、吐水口28からの吐水の流量を目標流量とする。
そしてステップS18で止水命令有りと判定したところで、止水を行うべく流量調節弁12を閉弁させる(ステップS20)。
【0032】
以上のような本実施形態の流量調節装置にあっては、吐水開始に際して流量計14からの検出信号が入力されるまでの間は、流量計14からの検出信号待ちの動作を行うことなく流量調節弁12の弁開度を自動的に除々に増大させる制御を行い、そして流量計14からの検出信号が入力された後に、そこで初めて流量計14により検出された流量に応じて流量調節弁12の弁開度を制御するフィードバック制御に切り換えることから、この実施形態によれば、従来のように吐水開始に際して流量計14からの検出信号が入るまでの間の無駄な待ち時間を排して、速やかに吐水口28から目標とする流量での吐水を行わせることができる。
【0033】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上例では小流量スイッチ30と大流量スイッチ32とを設けているが、場合によって1つだけの流量スイッチを設けておくこともできるし、或いは逆に3つ以上の流量スイッチを設けておいて何れかを選択して操作できるようにしておくこと、或いは流量選択の操作部をダイヤル式となして連続的に流量設定を変更できるようにしておくことも可能である。
【0034】
また上例では流量スイッチを手かざし式の非接触の人体感知センサとしているが、場合によってこれを接触式のスイッチとすることも可能であるし、更には検知方向を吐水の方向に向けて人体検知センサを設け、且つその人体検知センサを、人体検知しているときのみ吐水を行わせ、人体非検知となったところで止水を行わせるようなセンサとなしておくことも可能である。
【0035】
更に上記例示した水栓はあくまで一例であって、本発明は湯水混合水栓に適用し、混合水の流路に流量調節弁と流量計とを設けて混合水の流量調節を行う場合においても適用可能である外、その他様々な種類,形式の水栓の流量調節装置として適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 流路
12 流量調節弁
14 流量計
16 制御部
18 弁部
20 ステッピングモータ
28 吐水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)吐水部への給水の流路に設けられた、弁部及び該弁部の駆動部を備えた流量調節弁と、(ロ)該流路に設けられて流量検出し、検出信号を出力する流量計と、(ハ)該検出信号に基づいて前記駆動部を動作制御し、前記流量調節弁の開度制御を行う制御部と、を有しており、
該制御部は、吐水開始に際して前記流量計からの検出信号が入力されるまでの間は、該流量計からの検出信号待ちの動作を行うことなく前記流量調節弁の弁開度を自動的に除々に増大させる制御を行い、前記検出信号が入力された後は、前記流量計により検出された流量に応じて前記流量調節弁の弁開度を制御するフィードバック制御に切り換るものとなしてあることを特徴とする流量調節装置。
【請求項2】
請求項1において、前記流量計は水流により羽根車を回転させて流量検出するものであることを特徴とする流量調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229765(P2010−229765A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80542(P2009−80542)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】