説明

浄水装置

【課題】小型でありながら高い放射性物質除去効果(除染効果)を有し、一般住宅や学校等の施設で使用されるのに好適な浄水装置を提供する。
【解決手段】複数の濾過ユニット3を備える浄水装置1であって、各濾過ユニット3は、液体中の汚染物質を濾過するための濾材を収容しているとともに、水平方向に対して傾斜方向を交互に変えて上下に多段状に連結されている。また、本発明の一態様として、各濾過ユニットは、液体を流入する流入口と、液体を流出する流出口とを備え、各濾過ユニット内において流入口から前記流出口に繋がる流路が蛇行状に形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾材を用いた濾過方式の浄水装置に関し、特に一般住宅や学校等の施設の水道水等を浄化するのに好適な浄水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水に含まれる塩素や重金属、不純物等を除去する様々な浄水装置が開発されている。従来の浄水装置としては、活性炭やセラミック、イオン交換樹脂等の濾材を濾材容器内に充填した浄水装置が代表的であり、このような浄水装置内に水道水を通過させることにより、水道水に含まれる塩素や重金属、不純物などを濾材で吸着、除去することができる(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、塩素や重金属、不純物だけでなく、水道水中にセシウム等の放射性物質が含まれる地域では、これらの有害物質についても除去することのできる浄水装置が望まれている。
【0004】
一方、特許文献2には、放射性汚染水をイオン交換樹脂で処理する装置において、イオン交換樹脂を収容する処理槽と、処理槽の上部に設けたイオン交換樹脂の追加投入手段と、処理槽に放射性汚染水を循環させる循環系統と、循環系統における処理槽の入口側と出口側に設けた放射性核種の濃度を直接的にまたは間接的に測定可能な入口側水質測定手段および出口側水質測定手段と、循環水の流量を測定する流量測定手段を備える放射性汚染水の処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−119388号公報
【特許文献2】特開2004−233307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された装置は、原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設から排出される放射性汚染水を処理対象としており、高レベルの放射性廃液を環境に影響を与えないレベルにまで浄化して排出するための装置である。そのため、当該装置を、飲料水としても使用される水道水を対象にする一般住宅や学校等の施設で使用される浄水装置に適用する場合には、装置が大きすぎたり、また放射性物質の除去レベルが低すぎるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、小型でありながら高い放射性物質除去効果(除染効果)を有し、一般住宅や学校等の施設で使用されるのに好適な浄水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る浄水装置は、複数の濾過ユニットを備える浄水装置であって、各濾過ユニットは、液体中の汚染物質を濾過するための濾材を収容しているとともに、水平方向に対して傾斜方向を交互に変えて上下に多段状に連結されている。
【0009】
また、本発明の一態様として、各濾過ユニットは、液体を流入する流入口と、液体を流出する流出口とを備え、各濾過ユニット内において流入口から流出口に繋がる流路が蛇行状に形成されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、各濾過ユニットは、長尺状の複数の濾過カートリッジを着脱可能に並行に連結することによって構成されており、各濾過カートリッジは、一方の端部に液体を流入する内部流入口を備え、他方の端部に液体を流出する内部流出口とを備え、隣設された各濾過カートリッジの内部流出口と内部流入口とを連結することにより各濾過ユニット内の蛇行状の流路を形成してもよい。
【0011】
また、本発明の一態様として、濾過ユニットの水平方向に対する傾斜角度を10度以上20度以下とすることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、濾材は、少なくともゼオライトを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型でありながら高い放射性物質除去効果(除染効果)を有し、一般住宅や学校等に設置して水道水等の除染をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る浄水装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の濾過カートリッジを示す右側面図である。
【図3】本実施形態の濾過カートリッジを示す左側面図である。
【図4】本実施形態の濾過カートリッジを示す図3の縦断面図である。
【図5】本実施形態の濾過ユニットを示す斜視図である。
【図6】本実施形態における濾過ユニットを示す正面図である。
【図7】図6における7A−7A線断面図である。
【図8】本実施形態における濾過ユニットの傾斜角度を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る浄水装置の実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態の浄水装置1は、図1に示すように、主として、濾材を収容する複数の濾過カートリッジ2を交互に反転させて連結してなる濾過ユニット3と、さらに各濾過ユニット3を連結するための連結パイプ4と、上下複数段に連結した濾過ユニット3を固定するためのフレーム5とから構成される。以下、各構成部について詳細に説明する。
【0017】
濾過ユニット3を構成する複数の濾過カートリッジ2のうち、浄水装置1へ流入する液体を最初に濾過する濾過カートリッジ2を例にとって図2乃至図4に示す。なお、本実施形態において、液体は水道水としているが、一般的に浄水装置で浄化される液体であれば、これに限定されない。
【0018】
本実施形態において、濾過カートリッジ2は、図2乃至図4に示すように、長尺状の直方体形状であるカートリッジ本体21と、濾材(図示せず)を収容するために開口された穴を塞ぐ蓋22と、水道水が流入する内部流入口23と、隣接する濾過カートリッジ2の内部流入口23へ濾材であるゼオライトで濾過した水道水を流出する内部流出口24とを備えている。
【0019】
濾過カートリッジ2の内部流入口23および内部流出口24には、図2乃至図4に示すように、その内側から金網25が取り付けられており、水道水中に含まれる不純物を濾過するフィルターとしての役割と、濾材であるゼオライトを隣接する濾過カートリッジ2に流出させないための仕切りとしての役割を果たしている。図2乃至図4に示す濾過カートリッジ2には、内部流入口23と内部流出口24のいずれにも金網が取り付けられているが、各濾過カートリッジ2の内部流出口24と内部流入口23とが連結されている部分においては、内部流出口24のみに金網を設ければよい。また、内部流入口23と内部流出口24とはそれぞれ濾過カートリッジ2の反対面の対角位置に離れて設けられている。なお、濾過カートリッジ2内に収容する濾材の量は除染すべき水道水の汚染の程度に応じて適宜増減変更することが可能である。
【0020】
次に、浄水装置1を構成する上下3段の濾過ユニット3のうち、中段の濾過ユニット3を例にとって図5乃至図7に示す。
【0021】
本実施形態において、濾過ユニット3は、図5乃至図7に示すように、4本の濾過カートリッジ2を交互に反転させ、隣接する濾過カートリッジ2の内部流出口24と内部流入口23とを連結することによりユニット全体として蛇行状の流路が構成される。このように蛇行状の流路を構成することにより、一般家庭等の限られた狭い空間内で可能な限り長い濾過距離を確保することが可能となる。なお、濾過ユニット3は、図5乃至図7に示すように、流入口31と流出口32を備えており、外側に位置する両側の濾過カートリッジ2の内部流入口23および内部流出口24は、それぞれ濾過ユニット3の流入口31と流出口32を兼ねている。
【0022】
つづいて、本実施形態において、浄水装置1を構成する複数の濾過ユニット3は、図8に示すように、水平方向に対して交互に傾斜方向を変えて多段状に連結されている。本実施形態では、小型化と除染効果のバランスを考慮して3つの濾過ユニット3を3段に連結して特有の効果を得ているが、これに限定されるものではなく、状況に応じて適宜変更してもよい。また、各濾過ユニット3を通過する水道水中の放射性物質を十分に濾過するためには、ゆっくりと時間をかけて放射性物質をゼオライトに吸着させることが必要であることから、好適な傾斜角度を選択することが望ましい。本実施形態では、狭い空間において、より効果的な濾過距離と濾過速度が確保されるようにするため水平方向に対する傾斜角度θは10〜20度に設定されている。
【0023】
連結パイプ4は、上下に配置された各濾過ユニット3を連結するためのものであり、本実施形態では、上段の濾過ユニット3の流出口32と中段の濾過ユニット3の流入口31とを連結し、また、中段の濾過ユニット3の流出口32と下段の濾過ユニット3の流入口31とを連結している。
【0024】
フレーム5は、矩形状の枠体に構成されており、連結された各濾過ユニット3が固定されて所定位置に支持されている。また、本実施形態では、フレーム5の上面中央位置に補強用のフレーム5が架設されているが、このような補強材は使用場所やニーズに応じて適宜増減させてよい。
【0025】
つぎに、上述した本実施形態の浄水装置1の作用について説明する。
【0026】
本実施形態の浄水装置1を使用する場合、最上段の濾過ユニット3の流入口31に水道水を供給する管を連結し、前記濾過ユニット3内に水道水を流入させる。流入した水道水は、最上段の濾過ユニット3を構成する各濾過カートリッジ2内を順次流れることにより蛇行状の流路内の濾材で濾過される。そして、4つめの濾過カートリッジ2で濾過された水道水は流出口32から連結パイプ4を介して図5に示す中段の濾過ユニット3の流入口31に流入する。
【0027】
そして、図7に示すように、左端の濾過カートリッジ2の内部流入口23(31)より流入した水道水はカートリッジ本体21の中を通過してゼオライトによりセシウム等の放射性物質が吸着され、内部流出口24より隣接する濾過カートリッジ2の内部流入口23に流入する。それを繰り返して水道水は蛇行状の流路を流れ、右端の濾過カートリッジ2の内部流入口23に流入し、カートリッジ本体21内でさらにゼオライトによって濾過されて内部流出口24(32)より流出され、最下段の濾過ユニット3へ流入する。
【0028】
このように、流路を全体として蛇行状とすることにより、流路を直列に連結する場合に比べて、浄水装置1を小型化することができる。また、濾過ユニット3を複数の濾過カートリッジ2を連結して構成したことにより、ばらして容易に運搬することができる。
【0029】
以上のような本実施形態の浄水装置1によれば、以下のような効果を奏する。
1.濾過ユニット3内の流路を蛇行状に形成することにより、濾過ユニット3を小型化することができる。
2.濾過ユニット3を傾斜方向を交互に変えて上下に多段状に連結することにより、浄水装置1全体を小型化できるとともに、除染に十分な時間を確保しつつ淀ませ過ぎずに流すことができ、高い放射性物質除去効果、すなわち高い除染効果を得ることができる。
3.各濾過ユニット3の傾斜角度を10〜20度の範囲に設定することにより、より効果的で確実に高い除染効果を奏することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、濾材として高い放射性物質除去効果が確認されているゼオライトを採用しているが、放射性物質を吸着・除去できる物質であれば、ゼオライトに限定されず、また他の放射性物質除去効果(除染効果)を有する物質をゼオライトとともに使用することもできる。
【0031】
そのほか、濾材として放射性物質除去効果を有する物質ともに、貝化石等の物質を使用することにより、放射性物質除去効果(除染効果)のみならず、ミネラル分の豊富な水を得ることもできる。また、濾材として放射性物質除去効果を有する物質でない、活性炭やセラミック、貝化石等の濾材のみを使用することで、水道水に含まれる塩素や重金属、不純物などの除去、またおいしい水を作るためといった、放射性物質除去を目的としない浄水装置としても使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 浄水装置
2 濾過カートリッジ
3 濾過ユニット
4 連結パイプ
5 フレーム
21 カートリッジ本体
22 蓋
23 内部流入口
24 内部流出口
25 金網
31 流入口
32 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の濾過ユニットを備える浄水装置であって、
前記各濾過ユニットは、液体中の汚染物質を濾過するための濾材を収容しているとともに、水平方向に対して傾斜方向を交互に変えて上下に多段状に連結されている浄水装置。
【請求項2】
前記各濾過ユニットは、液体を流入する流入口と、液体を流出する流出口とを備え、前記各濾過ユニット内において前記流入口から前記流出口に繋がる流路が蛇行状に形成されている請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
前記各濾過ユニットは、長尺状の複数の濾過カートリッジを着脱可能に並行に連結することによって構成されており、
前記各濾過カートリッジは、一方の端部に液体を流入する内部流入口を備え、他方の端部に液体を流出する内部流出口とを備え、隣設された前記各濾過カートリッジの前記内部流出口と前記内部流入口とを連結することにより前記各濾過ユニット内の蛇行状の流路を形成してなる請求項1または請求項2に記載の浄水装置。
【請求項4】
前記濾過ユニットの水平方向に対する傾斜角度を10度以上20度以下とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の浄水装置。
【請求項5】
前記濾材は、少なくともゼオライトを含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の浄水装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−71030(P2013−71030A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210034(P2011−210034)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(511216798)有限会社共和商事 (1)
【Fターム(参考)】