説明

浮上分離装置

【課題】 被処理水に含まれる汚濁物の量が増減しても水質が一定の値以下の安定した処理水が得られる装置であって、水面上に浮上した気泡が破裂することなく、また、汚濁物が再度処理水に混入することがなく、浮上した汚濁物が下降したとしても処理水に混入する恐れのない浮上分離装置を提供する。
【解決手段】 被処理水17が浮上分離処理される気泡接触エリア10と、気泡接触エリア10で浮上分離処理された泡沫層と処理水11とを分離する気液分離エリア5と、処理水11を浮上分離槽1外へ移送する処理水移送エリア6とで構成された浮上分離槽1を備え、浮上分離処理により分離された汚濁物8が浮上し一時滞留する水面上空間9の圧力を大気圧よりも高くし、かつ、循環ポンプ20にて処理水を循環経路21を経て再度気泡接触エリア10に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関するものであり、更に詳しくは微細気泡を利用した浮上分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泡沫分離装置などの浮上分離装置は、被処理水中に供給する微細気泡により、該被処理水中に溶存する有機物や浮遊する微細な浮遊物を分離除去する装置であり、該被処理水中に該微細気泡を供給して、該被処理水の水面上に、該被処理水中に溶存する有機物や微細な浮遊物などの汚濁物をスカム(泡沫)として浮上させ、該スカム(泡沫)を分離し系外へ排出することで処理が行われる。
【0003】
従来、浮上分離装置における処理性能の向上に関しては、被処理水中に微細気泡を供給し、微細気泡により浮上してくる泡沫を、効率よく浮上分離槽から分離し排出するように構造の改良がなされていた(特許文献1参照)。この浮上分離方法における浮上分離装置は、図9に示すように、泡沫分離装置99内の内筒100の下方には、内筒100に原水107を導入する導入管101が接続されており、外部から空気113を取り込み、内筒100の内部に微細な泡111を発生させる散気管102が設置されている。内筒100の外側には外筒103が設置されており、内筒100で泡沫分離処理された処理水110が外筒103内を上から下に向かって流れていくように構成されている。なお、外筒103の下方には、オーバーフロー管104が接続されており、外筒103の上方には、泡沫と処理水110とを分離する堰105が設けられ、堰105に連通して、汚泡水108を排出する泡排出管106が設けられている。
【0004】
以上のように構成することで、泡沫分離装置99内の水位112を一定に保つことができ、またオーバーフロー管104に接続されている水面高さ調節管114の高さを変更することで、水位112から堰105までの高さを任意に変更できるために、泡沫分離装置99で効率良い処理ができることとなる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−170617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、泡沫分離装置99などの浮上分離装置で処理しようとする原水107は、溶存する有機物や浮遊する微細な懸濁物質などの汚濁物の量が一定にならないことが多い。そのため、従来の泡沫分離装置99で原水107を処理しようとする場合、原水107の汚濁物濃度に泡沫分離装置99の性能が左右されるために、内筒100の内部に内筒100の内部で泡沫分離処理できる汚濁物濃度以上の原水107が導入された場合は、泡沫分離処理後の処理水110に汚濁物が残存し、処理水の水質を一定の値以下に保持できないという問題点があった。また、泡沫分離装置99の欠点である水面上に浮上した気泡が圧力開放を受けて破裂し、水面上に気泡と共に浮上した汚濁物の一部が再度処理水中に混入するという問題点についてはなんら解決されていなかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、被処理水に含まれる汚濁物の量が増減しても水質が一定の値以下の安定した処理水が得られる装置であって、水面上に浮上した気泡が破裂することなく、また、汚濁物が再度処理水に混入することがなく、浮上した汚濁物が下降したとしても処理水に混入する恐れのない浮上分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の浮上分離装置は、被処理水中に微細気泡を供給し、該被処理水中の汚濁物を浮上させることにより、該被処理水から汚濁物を分離除去する浮上分離装置において、
前記浮上分離槽内の前記被処理水の水面上が天板で覆われて水面上空間が形成されており、前記水面上空間に設けられた連通口に外部配管が接続され、前記外部配管の出口端部が、前記浮上分離槽の外部に用意された水槽内に水没させられて設置されていることにより、前記水面上空間が、大気圧よりも高い圧力で保持され、
浮上分離処理された処理水を再度浮上分離槽内へ循環させることにより浮上分離処理が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のような構造をしており、以下の優れた効果が得られる。
【0010】
(1)水面上空間を加圧することで、被処理水中に含まれる汚濁物の濃度が増減しても処理水の汚濁物の濃度を一定の値以下に保つことができ、また処理水を循環させることにより、一度通過させて微細気泡に接触せず処理できなかった被処理水も再度接触することにより処理性能を向上することができる。
【0011】
(2)(1)に加えて、処理水を再循環させることにより、一度通過させて微細気泡に接触せず処理できなかった被処理水も再度接触することにより処理性能を向上させ、さらに水面上空間を加圧することで、水面上に浮上した微細気泡が破壊されにくくなり、被処理水中に含まれる汚濁物の濃度が増減しても処理水の汚濁物の濃度を一定の値以下に保つことにより、濁度の除去率が高い処理水を得ることができる。
【0012】
(3)気泡接触エリアと気液分離エリアを上下に配置することで、処理水に含まれる非常に細かい気泡を除去する為のエリアを別に設けなくてすむことから、浮上分離槽の設置面積を小さくでき、浮上分離槽がコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の浮上分離装置の第1の実施形態の模式図である。
【図2】本発明の浮上分離装置の第2の参考実施形態の模式図である。
【図3】本発明の浮上分離装置の第3の実施形態の模式図である。
【図4】本発明の比較例の浮上分離装置の模式図である。
【図5】実施例1におけるCODの変化を測定した結果を示すグラフである。
【図6】参考実施例2におけるCODの変化を測定した結果を示すグラフである。
【図7】実施例3におけるCODの変化を測定した結果を示すグラフである。
【図8】比較例におけるCODの変化を測定した結果を示すグラフである。
【図9】従来の浮上分離装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明の浮上分離装置の第1の実施形態の模式図である。図2は、本発明の浮上分離装置の第2の参考実施形態の模式図である。図3は、本発明の浮上分離装置の第3の実施形態の模式図である。
【0015】
〔実施形態1〕
図1において、1は浮上分離槽であり、気泡接触エリア10の下方に気液分離エリア5が設けられた縦型の浮上分離槽である。浮上分離槽1内は、被処理水17が浮上分離処理される気泡接触エリア10と、気泡接触エリア10で浮上分離処理された泡沫層と処理水11とを分離する気液分離エリア5と、処理水11を浮上分離槽1外へ移送する処理水移送エリア6とで構成されている。浮上分離槽1の中間付近には、被処理水17を外部から導入させる導入口4が設けられ、導入口4よりも下方に浮上分離槽1に微細気泡を供給する微細気泡発生装置2が架台(図示しない)により被処理水中に固定されている。微細気泡発生装置2には、浮上分離槽1の外部から空気を導入するために空気管3が接続されている。さらに微細気泡発生装置2よりも下方には、被処理水17から分離された汚濁物8と処理水11とを確実に分離するための気液分離エリア5が設けられている。なお、気液分離エリア5は、気液分離エリア5を通過する処理水11の流速に対して、気液分離エリア5に入り込んだ微細気泡の浮上速度が速くなるように構成してある。すなわち、気液分離エリア5の微細気泡の浮上速度が、浮上分離槽1内の水の循環流量と浮上分離槽1内に流入する被処理水17の流量の和を気液分離エリア5の断面積で割った値より、大きくなるように槽の断面積に対する被処理水17の流量を調整している。
【0016】
一方、気液分離エリア5に隣接した位置に、処理水11を外部に移送する処理水移送エリア6が設けられ、気液分離エリア5の下方と処理水移送エリア6の下方が連通する分離板16で仕切られている。さらに、処理水移送エリア6の上方には浮上分離槽1の水位を一定に保つための堰7が設けられ、処理水移送エリア6の下方には、循環ポンプ20が設けられており、循環経路21によって循環ポンプ20と気泡接触エリア10が連通されている。
【0017】
本実施形態では、微細気泡発生装置2は、モーターにより駆動され、空気管3により空気を吸引する自給式であるが、微細気泡を発生することができるものであれば多孔板などの散気装置でも良く、特に限定されるものではない。
【0018】
一方、浮上分離槽1内の水面上には、浮上分離処理により分離された汚濁物8が浮上し一時滞留する水面上空間9が天板19で覆うことにより形成されており、水面上空間9の上方には、随時発生してくる分離された汚濁物8を外部に搬送するための連通口12が設けられている。さらに、連通口12には、外部配管13が接続され、分離された汚濁物8を浮上分離槽1の系外へ移送するよう構成されている。
【0019】
本実施形態では、連通口12は気液分離エリア5の上部に設けられているが、浮上分離槽1の水面上空間9内に位置し、浮上し分離された汚濁物8を水面上空間9から排出されるよう設けられていれば良く、特に限定されるものではない。
【0020】
外部配管13の出口端部は、別途用意された水槽14内に入っている汚濁濃縮水15に水没させられて設置されている。さらに、水槽14には、汚濁物移送口18が設けられている。
【0021】
以下、図1を用いて本実施形態の作用について説明する。浮上分離処理される被処理水17は、浮上分離槽1に設けられた導入口4から浮上分離槽1内の気泡接触エリア10内に導入される。被処理水17中の汚濁物8は、微細気泡発生装置2により発生される微細気泡が付着することにより、気泡接触エリア10内を被処理水17をともなって上方へ移動していく。被処理水17と汚濁物8は、浮上分離槽内1の水面付近に達すると、被処理水17中の微細気泡が付着した汚濁物8は、水面上に浮上し被処理水17から分離される。汚濁物8が分離された被処理水17は処理水11として気泡接触エリア10内の外側を下降していく。処理水11は、微細気泡発生装置2の下方に設けられた気液分離エリア5に向かって下方に進み、気液分離エリア5を通過していく。なお、横型の浮上分離槽に較べると、気泡接触エリア10と気液分離エリアを上下に配置することで、非常に細かい気泡を除去する為のエリアを仕切り板を用いて別に隣接して設けたりする必要がないので、浮上分離槽1の設置面積を小さくできるという効果が生じる。気液分離エリア5を通過した処理水11は処理水移送エリア6を経て堰7を越えて流れ、浮上分離槽1の系外へ流出する。一方、処理水移送エリア6内の処理水11の一部は、循環ポンプ20によって循環経路21を通って再び気泡接触エリア10へ導入され、繰り返し浮上分離処理される。
【0022】
循環ポンプ20にて処理水を循環経路21を経て再度気泡接触エリア10に導入する場合は、微細気泡により汚濁物を浮上させる為に、下向きに流れる槽内の水の流速が、微細気泡の浮上速度よりも遅くなるように設定されている。
【0023】
気泡接触エリア10の水面上は、微細気泡の作用を受けて被処理水17から分離された汚濁物8が被処理水17の水面上に泡沫層を形成する。泡沫層は、浮上分離槽1内に被処理水17が導入され続ける限り分離された汚濁物8が浮上してくるために、泡沫層は水面上空間9の上方へと押し上げられていく。一方、水面上空間9の上方では、浮上分離槽1に斜めに配置された天板19によって、分離された汚濁物8が連通口12に向かって誘導される。このような天板19の配置によって、浮上した分離された汚濁物8はさらに下方から浮上してくる分離された汚濁物8に押し上げられるようにして連通口12付近に収集されることになる。なお、浮上した汚濁物8の性状が、盛り上がりにくく、水面上にとどまるようなスカム状のものであれば、水面上に排出トラフ(図示しない)を設け、掻き寄せ機等で掻き寄せ排出するようにしてもよい。
【0024】
このようにして連通口12付近に分離され収集された汚濁物8は、連通口12を通り、外部配管13へ押し出され、別に用意された水槽14へ移送され、浮上分離槽1より排出される。このとき外部配管13の出口側端部の、水没深さを変えることで被処理水17の水面上空間の圧力を簡単に増減でき、また、外部配管13内を移送される汚濁物8は、水面上空間9に保持されている圧力以上になった圧力により、外部配管13の出口を通り水槽14内にたまっている汚濁濃縮水15の中に押し出されることで、浮上分離槽1の系外に押し出されることとなる。
【0025】
また、浮上分離槽1内の水面上空間9の圧力を上昇させると、浮上分離槽1内の気泡接触エリア10の水位が水面上空間9の圧力により押されて低下していくので、水面上空間9を加圧しすぎると、気泡接触エリア10の水位が、微細気泡発生装置2が露出する位置にまで押下げられ、微細気泡が発生しなくなり、浮上分離処理がなされなくなる。よって、水面上空間9に加える圧力は、気泡接触エリア10が形成される圧力以下、すなわち気泡発生作用が行える範囲の圧力以下としなければならない。さらに、水面上空間9に加える圧力は、水面上に浮上した微細気泡が急激な圧力開放にさらされないように1kPa以上とすることが望ましい。一方、回分式の浮上分離槽(図示しない)で浮上分離を行う場合は、微細気泡発生装置2で供給することができる空気圧力以上の圧力を水面上空間9にかけると、微細気泡発生装置2より微細気泡が供給されなくなるために、浮上分離自体が行われなくなるので、水面上空間9に保持する圧力は微細気泡発生装置2で加圧できる空気圧未満とすることが望ましい。
【0026】
このようにして水面上空間9を大気圧よりも高い圧力にすることで、分離された汚濁物8は、水面上に浮上してきた際に、急激な圧力開放を受けないことから、浮上してきた分離された汚濁物8は、水面上に浮上固定している気泡を崩すことなく泡沫層を形成する。
【0027】
更に処理水11を再度処理するように循環ポンプ20と循環経路21を設けることで、処理水11に含まれる非常に細かい気泡を浮上分離する機会が増すために、従来に比べて処理性能が極めて高くなり、被処理水17に含まれる汚濁物が増減しても汚濁物の濃度が一定の値以下の処理水が得られることとなる。
【0028】
〔参考実施形態2〕
次に本発明の浮上分離装置の第2の参考実施形態を示す。図2において、22は連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板であり、浮上分離槽1内の微細気泡発生装置2よりも上方の気泡接触エリア10に、二つ設けられ、浮上分離槽1内を上下に区画するように配置されている。本実施形態においては、連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22は二つ配置しているが、少なくとも一つ以上であればよく、個数は特に限定されるものではない。
【0029】
浮上分離槽1内に、連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22を設けたことと、循環ポンプ20及び循環経路21が設置されていないこと以外は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0030】
以下、図2を用いて本実施形態の作用について説明する。浮上分離処理される被処理水17は、浮上分離槽1に設けられた導入口4から浮上分離槽1内の気泡接触エリア10内に導入される。被処理水17中の汚濁物8は、微細気泡発生装置2により発生される微細気泡が付着することにより、気泡接触エリア10内を被処理水17をともなって上方へ移動していく。一方、水面付近に達すると気泡が付着した汚濁物8は水面上に浮上し、被処理水17は気泡接触エリア10内の外側を下降することとなる。この際に、汚濁物8の中でも微細な汚濁物23は、浮上しきれずに被処理水17と共に下降していく。このような下降流に乗った微細な汚濁物23の下降を防ぐ為に、気泡接触エリア10には、連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22が気泡接触エリア10を区画するように設けられている。この連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22により、被処理水17と共に下降してきた微細な汚濁物23は気液分離エリア5まで下降することなく、再度上昇する被処理水17の流れに乗って上昇することとなるので処理水11に混入する恐れが無くなる。
【0031】
一方、汚濁物8が除去された処理水11は、微細気泡発生装置2の下方に設けられた気液分離エリア5を下方に向かって進み、気液分離エリア5を通過することで、該処理水11に含まれる微細気泡は確実に分離される。なお、気泡接触エリア10と気液分離エリア5を上下に配置することで、微細気泡の上昇速度が処理水11の下降流速よりも常に速くなり、さらに汚濁物8は微細気泡により常に上向きの浮力を受けるために、気液分離エリア5へ汚濁物8が下降することが殆どなくなる。そのため、気液分離エリア5の高さを低くでき、泡沫分離槽1がコンパクトにできるという効果が生じる。気液分離エリア5を通過した処理水11は処理水移送エリア6を経て堰7を越えて流れ、浮上分離槽1の系外へ流出する。
【0032】
以下、分離された汚濁物8の移送、水面上空間9の加圧方法については、第1の実施形態と同じであるため、説明を割愛する。
【0033】
このようにして水面上空間9を大気圧よりも高い圧力にすることで、分離された汚濁物8は、被処理水17の水面上に浮上してきた際に、急激な圧力開放を受けないことから、浮上してきた分離された汚濁物8は水面上で分離された汚濁物8を浮上固定している気泡を崩すことなく泡沫層を形成する。更に連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22を気泡接触エリア10が区画されるように設けることで、微細な汚濁物23が処理水移送エリア6まで下降することを防ぐことができる。このように作用することで、分離された汚濁物8が処理水11に再度混合されることがなくなり、従来に比べて処理性能が極めて高くなり、被処理水17に含まれる汚濁物が増減しても汚濁物濃度が一定の値以下の処理水が得られることとなる。
【0034】
〔実施形態3〕
次に本発明の浮上分離装置の第3の実施形態を示す。図3において、22は連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板であり、浮上分離槽1内の微細気泡発生装置2よりも上方の気泡接触エリア10に、二つ設けられ、浮上分離槽1内を上下に区画するように配置されている。本実施形態においては、連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22は二つ配置しているが、少なくとも一つ以上であればよく、個数は特に限定されるものではない。
【0035】
浮上分離槽1内に、連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22を設けたこと以外は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0036】
以下、図3を用いて本実施形態の作用について説明する。浮上分離処理される被処理水17は、浮上分離槽1に設けられた導入口4から浮上分離槽1内の気泡接触エリア10内に導入される。被処理水17中の汚濁物8は、微細気泡発生装置2により発生される微細気泡により、気泡接触エリア10内を上方へ移動していく。一方、浮上分離槽内1に導入された被処理水17は、気泡と共に上昇し、水面付近に達すると気泡を含んだ汚濁物8は水面上に浮上し、被処理水17は気泡接触エリア10内を下降することとなる。この際に、汚濁物8の中でも微細な汚濁物23や気泡がはじけて浮力を失った汚濁物24は、浮上しきれずに被処理水17と共に下降していく。このような下降流に乗った微細な汚濁物23や浮力を失った汚濁物24の下降を防ぐ為に、気泡接触エリア10には、連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22が気泡接触エリア10を区画するように設けられている。この連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22により、被処理水17と共に下降してきた微細な汚濁物23は気液分離エリア5まで下降することなく、再度上昇する被処理水17の流れに乗って上昇することとなるので処理水11に混入する恐れが無くなる。
【0037】
更に処理水11を再度処理するように循環ポンプ20と循環経路21を設けることで、処理水11に含まれる非常に細かい気泡を浮上分離する機会が増すために、従来に比べて処理性能が極めて高くなり、被処理水17に含まれる汚濁物が増減しても汚濁物の濃度が一定の値以下の処理水が得られることとなる。
【0038】
以下、分離された汚濁物8の移送、水面上空間9の加圧方法については、第1の実施形態と同じであるため、説明を割愛する。
【0039】
このようにして中央に連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板22が気泡接触エリア10を区画するように設けられ、処理水11の一部を再度気泡接触エリア10へ循環させるように構成し、浮上分離槽1内の水面上空間9を大気圧よりも高い圧力で保持できるように構成することにより、分離された汚濁物8は、被処理水17の水面上に浮上してきた際に、被処理水17の下降流によって、浮上してきた分離された汚濁物8が下降し処理水11に混入する恐れがなくなり、更に処理水11の一部を循環ポンプ20を用いて再度気泡接触エリア10へ循環させることで、処理水11に混入または、残存している汚濁物8についても浮上分離処理される機会が増し、更に汚濁物8に付着した微細気泡が水面に達しても急激な圧力開放を受けないことから、浮力を失わず浮上分離槽1内の水面上にとどまることができる。このように作用することで、分離された汚濁物8が処理水11に再度混合されることが殆どなくなり、従来に比べて処理性能が極めて高くなり、被処理水17に含まれる汚濁物が増減しても汚濁物の濃度が一定の値以下の処理水が得られることとなる。
【実施例】
【0040】
本発明の第1の実施形態(実施例1)、第2の参考実施形態(参考実施例2)、第3の実施形態(実施例3)の各装置を用いて評価実験を行った。その結果について以下に示す。試験装置はそれぞれの実施形態に対応する図に示す装置を用いて実施した。導入される被処理水17は、実際に魚市場から発生する荷捌き廃水を用いた。処理性能の確認は、化学的酸素消費量(COD)を実施例と参考実施例と比較例の処理水およびその被処理水について測定し比較を行った。試験条件としては、水面上空間9に掛かる圧力が大気圧よりも1.0kPaだけ加圧された状態とし、循環水量は被処理水17に対し同量の循環水量とした。なお、比較例としてまったく加圧せず、連通孔を有する遮へい板22を設置せず、更に処理水の循環も行わないものを用いて行った。比較例の浮上分離装置の模式図を図4に示す。
【0041】
図5は、実施例1のCOD濃度の変化を測定した結果を示すグラフである。図6は、参考実施例2のCOD濃度の変化を測定した結果を示すグラフである。図7は、実施例3のCOD濃度の変化を測定した結果を示すグラフである。図8は、比較例のCOD濃度の変化を測定した結果を示すグラフである。
【0042】
被処理水17と処理水11のCOD濃度は、JIS K 0102 19に準拠し、アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量により測定した。
【0043】
試験装置の各条件は、以下のとおりである。
浮上分離槽1:有効容積15L、微細気泡発生装置0.04kw、槽内水深90cm
水槽14:有効容積45L、水槽内水深50cm、移送口付
圧力:1kPa
水面上空間9の圧力測定:マノメータを、天板19に接続して水頭差にて測定
連通孔を有する遮へい板22:浮上分離槽1底部より40cm、60cmの位置に設置
被処理水導入量:30L/hr
【0044】
比較例として、外部配管を水没させず、循環を行わず、上向きの連通孔を有する遮へい板を用いずに同様の測定を行った。
【0045】
実施例1、参考実施例2,実施例3において、被処理水のCOD濃度が概ね50〜70mg/Lの間で上下しているものの、処理水のCOD濃度は30mg/L付近で安定している。よって、被処理水17のCOD濃度の変動に関係なく処理水11のCOD濃度が安定していることがわかる。一方、比較例においては、被処理水のCOD濃度が50〜70mg/Lの間で変動すると、それにともなって処理水のCOD濃度も30〜45mg/L付近にまで上昇していることがわかる。
【0046】
また、同様に実施例1、参考実施例2,実施例3及び比較例によって処理された処理水において、HACH社製の携帯用2100P型濁度計でネフェロメトリック法によって濁度を測定した。表1に示すとおり、実施例3の濁度除去率が高く、約75%であった。次いで実施例1、参考実施例2が同程度で、43%前後であった。尚、比較例においては、11%の除去率となり、濁度に関しては殆ど除去されない結果であった。
【0047】
【表1】

【符号の説明】
【0048】
1 浮上分離槽
2 微細気泡発生装置
3 空気管
4 導入口
5 気液分離エリア
6 処理水移送エリア
7 堰
8 汚濁物
9 水面上空間
10 気泡接触エリア
11 処理水
12 連通口
13 外部配管
14 水槽
15 汚濁濃縮水
16 分離板
17 被処理水
18 汚濁物移送口
19 天板
20 循環ポンプ
21 循環経路
22 連通孔を有する上向きの略笠状の遮へい板
23 微細な汚濁物
24 浮力を失った汚濁物
99 泡沫分離装置
100 内筒
101 導入管
102 散気管
103 外筒
104 オーバーフロー管
105 堰
106 泡排出管
107 原水
108 汚泡水
109 架台
110 処理水
111 微細な気泡
112 水位
113 空気
114 調節管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に微細気泡を供給し、該被処理水中の汚濁物を浮上させることにより、該被処理水から汚濁物を分離除去する浮上分離装置において、
前記浮上分離槽内の前記被処理水の水面上が天板で覆われて水面上空間が形成されており、前記水面上空間に設けられた連通口に外部配管が接続され、前記外部配管の出口端部が、前記浮上分離槽の外部に用意された水槽内に水没させられて設置されていることにより、前記水面上空間が、大気圧よりも高い圧力で保持され、
浮上分離処理された処理水を再度浮上分離槽内へ循環させることにより浮上分離処理が行われることを特徴とする浮上分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264449(P2010−264449A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166668(P2010−166668)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【分割の表示】特願2005−96816(P2005−96816)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】