説明

浴室排水口用ヌメリ取り器に装着される揮発性薬剤収納容器

【課題】本発明の課題は、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤を収納した容器に取り付けられ、ヌメリ防止剤を溶解した水が混入せずに、芳香等の揮発性薬剤の効果が発揮される容器を提供することにある。
【解決手段】
浴室の排水口に載置され、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤とそれを収納する薬剤収納容器を備えた浴室排水口用ヌメリ取り器に装着できる揮発性薬剤収納容器であって、前記揮発性薬剤収納容器は、上部に開口部を有さず、底部及び側面下部の少なくとも一方に通気用開口部を有することを特徴とする揮発性薬剤収納容器。
好ましくは、浴室排水口用ヌメリ取り器がリング状であって、揮発性薬剤収納容器が浴室排水口用ヌメリ取り器の内側側面に沿って装着できる円弧状の容器である。
また、揮発性薬剤収納容器は浴室排水口用ヌメリ取り器に着脱自在に装着することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の排水口用ヌメリ取り器に装着される揮発性薬剤収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
台所や浴室の排水口は微生物が繁殖しやすく、ヌメリが発生するため、このヌメリを防止する目的で様々なヌメリ防止剤およびその容器が販売されていた。例えば、本発明者らは浴室用排水口のヌメリを防止する目的で、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤を収納した浴室排水口用ヌメリ取り器を提案している(特許文献1、2)。さらに、浴室においては、リラクゼーションを目的に浴室を芳香させることも行なわれ、その目的で様々な芳香剤およびその容器が販売されていた。例えば、本発明者らは排水口のヌメリ防止と芳香の両方を目的として、芳香剤及び/又は消臭剤を具備するヌメリ取り器を提案している(特許文献2、3)。
しかしながら、ヌメリ防止剤と芳香剤を近接してセットすると、ヌメリ防止剤の薬効成分と芳香剤が反応し変質する場合があった。また、浴室の排水には界面活性剤が含まれるため、芳香剤が排水と接触すると芳香成分が排水に溶解、流出してしまい、芳香を発揮する期間が短くなる欠点を有していた。このため、ヌメリ防止と芳香を長期間安定に発揮する芳香剤等の揮発性薬剤の収納容器の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−213754号公報
【特許文献2】特開2004−100389号公報
【特許文献3】特開2007−046393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤(以下、「ヌメリ防止剤」ということもある)を収納した容器に取り付けられ、ヌメリ防止剤を溶解した水が混入せずに、芳香等の揮発性薬剤の効果が発揮される容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究した結果、揮発性薬剤の収納容器の上面部及び側面上部に開口部を有さず、底面部及び側面下部の少なくとも一方に通気用開口部を設けることで、界面活性剤を溶解した排水の流入を防止し、同時に、揮発性薬剤を適度に揮発させることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)浴室の排水口に載置され、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤を収納する薬剤収納容器を備えた浴室排水口用ヌメリ取り器に装着するための揮発性薬剤収納容器であって、
前記揮発性薬剤収納容器は、上部に開口部を有さず、底部及び側面下部の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする揮発性薬剤収納容器、
(2)揮発性薬剤収納容器が浴室排水口用ヌメリ取り器に着脱自在に装着できることを特徴とする上記(1)に記載の揮発性薬剤収納容器、
(3)浴室排水口用ヌメリ取り器がリング状又は円弧状であって、揮発性薬剤収納容器が浴室排水口用ヌメリ取り器の内側側面に沿って装着できる円弧状容器であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の揮発性薬剤収納容器、及び、
(4)開口部を水を通さず揮発性薬剤の蒸気を通気させるシート状物質で塞ぐことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の揮発性薬剤収納容器に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の揮発性薬剤収納容器が装着された浴室排水口用ヌメリ取り器を用いれば、浴室排水口のヌメリの防止と共に、浴室内に揮発薬剤を十分に揮発させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施態様の揮発性薬剤収納容器を上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施態様の揮発性薬剤収納容器を下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施態様の揮発性薬剤収納容器を装着した浴室排水口用ヌメリ取り器の斜視図である。
【図4】本発明の一実施態様の揮発性薬剤収納容器を装着する前の浴室排水口用ヌメリ取り器の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施態様の揮発性薬剤収納容器を上方、下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の他の実施態様の揮発性薬剤収納容器を装着した浴室排水口用ヌメリ取り器を上方、下方から見た斜視図である。
【図7】本発明の一実施態様の揮発性薬剤収納容器を装着した浴室排水口用ヌメリ取り器を浴室の排水口に載置したときの概略図である。
【符号の説明】
【0009】
1 揮発性薬剤収納容器
2、3 小孔(開口部)
4 嵌着用突起
5 揮発性薬剤を含浸させたシート
6 突起
7 浴室排水口用ヌメリ取り器
8 微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤の収納容器
9 毛髪通過部
10 スリット
11 排水口
12 排水口の蓋
【発明を実施するための形態】
【0010】
(浴室排水口用ヌメリ取り器)
本発明の揮発性薬剤収納容器が装着される浴室排水口用ヌメリ取り器は、排水が流入し、ヌメリ防止剤が溶解し、その溶解した排水が流出される構造であれば、どのような形態であってもよいが、特にリング状又は円弧状のものが好ましい。
なお、本発明において、浴室とは、体を水等で洗うことができる所であり、洗った水を排出することができる排出口を有する場所を示す。浴室には、例えば、浴槽と洗い場を有するシステムバスやユニットバス、浴槽とトイレを有するユニットバス、シャワー設備のみのシャワー室、不特定多数が使用する共同浴場も含まれる。特に浴室が設置される場所は限定されないが、具体的には、一般家屋、マンション、ワンルームマンション、集合住宅、ホテル、スポーツジム、銭湯、プール、温泉宿屋等を例示することができる。
【0011】
前記浴室排水口用ヌメリ取り器に揮発性薬剤収納容器を着脱自在に装着する場合は、ヌメリ取り器は、揮発性薬剤収納容器を着脱自在に装着するための機構を有する。例えば、揮発性薬剤収納容器に嵌着用の片やピン等の突起を有する場合は、それを嵌着するためのスリットや穴などをヌメリ取り器に設ける。
前記浴室排水口用ヌメリ取り器は、好ましくは、微生物の発育を抑制する物質を含有する固形薬剤を収納する薬剤収納容器と毛髪が通過しうる毛髪通過部を備え、前記薬剤収納容器の外側周面に排水の一部が流入又は流出する外孔が設けられているものである。
前記薬剤収納容器に収納される微生物の発育を抑制する物質としては、各種公知の殺菌剤、抗菌剤が使用可能であり、一般的な防黴剤又は抗細菌剤として知られている化合物や抗菌作用を有する天然精油類等であればどのようなものでも使用することができるが、広い抗菌スペクトルを有するものが好ましい。
【0012】
前記微生物の発育を抑制する物質として、例えば、塩素系酸化剤としては、ジクロロジメチルヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水和物(2水和物等)、ジクロロイソシアヌル酸カリウムの水和物及びトリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸カルシウム等を例示することができ、また、塩素系酸化剤以外の薬剤としては、過炭素ナトリウム、過硫酸カリウム、過ほう酸ナトリウム、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、パラヒドロキシ安息香酸n−ブチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロロへキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン、メチレンビスチオシアネート、2−ピリジンチオール−1−オキシド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、4,4′−(テトラメチレンジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール等を例示することができる。
【0013】
また、前記微生物の発育を抑制する物質として、防黴剤又は抗細菌剤と多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物を有利に用いることができる。この包接化合物を用いる場合、防黴剤又は抗細菌剤としては、特に限定されないが、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−3−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メトキシカルボニルベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メタンスルホニルピリジン、2−チオシアノメチベンゾチアゾール、2,2−ジチオ−ビス−(ピリジン−1−オキサイド)、3,3,4,4−テトラハイドロチオフェン−1,1−ジオキサイド、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン等を例示することができる。
【0014】
ここで、多分子系ホスト化合物とは、ゲストとなる抗菌剤とともに結晶性錯体(包接化合物)を形成する化合物をいい、上記の性質を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノ−ル類のほか、1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニルヘキサン−2,4−ジイン−1,6−ジオール、1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール、2,5−ビス(2,4−ジメチルフェニル)ハイドロキノン、1,1−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール等を例示することができる。
【0015】
さらに、前記微生物の発育を抑制する物質として、ヌメリを除去できる菌を用いることができる。具体的には枯草菌(バチルス属)等であり、枯草菌としては納豆菌等を例示することができる。
また、固形薬剤の形状としては、球状、錠剤状、円柱状、直方体状、角錐状、ドーナツ状等どのような形態でもよく、その大きさも容器に収容しうる大きさであればどのようなものでもよい。
【0016】
本発明において使用される浴室排水口用ヌメリ取り器が、リング状浴室排水口用ヌメリ取り器の場合は、その実施態様として、例えば以下のものが挙げられる。
例1)複数の円弧状薬剤収納容器を有するリング状浴室排水口用ヌメリ取り器であり、円弧状薬剤収納容器間に、毛髪が通過しうる毛髪通過部が設けられている。すなわち、同一円周上に円弧状薬剤収納容器と毛髪通過部とが交互に連結状態で設けられている。
例2)同一円周上に円弧状薬剤収納容器と毛髪通過部とが交互に設けられ、円弧状薬剤収納容器同士が、中心から半径方向に延びる連結棒で互いに固定されている。
例3)その直径を異にする円弧状薬剤収納容器が全方位的に交互に設けられ、それらの端部同士により形成される段差を毛髪通過部とし、中心から半径方向に延びる連結棒で互いに固定されている。
例4)横長三角状、横長四角状、横長台形状等の薬剤収納容器と毛髪通過部とが交互に設けられ、かかる薬剤収納容器同士が互いに固定、例えば、中心から半径方向に延びる連結棒で互いに固定されている。
製造方法の簡便さ等から、リング状浴室排水口用ヌメリ取り器、特に、円弧状薬剤収納容器間に設けられた毛髪流入穴又は毛髪流入ゲートを毛髪通過部とするリング状浴室排水口用ヌメリ取り器が好ましい。また、本発明の浴室排水口用ヌメリ取り器の大きさは、浴室の排水口の周囲に載置しうる大きさであれば制限されるものではなく、例えば、リング状浴室排水口用ヌメリ取り器の場合、その外直径が105mm以上など、排水口の直径よりも大きいものが用いられる。さらに、浴室排水口には、浴槽排水が配水管を通じて直接排水口に流れ込むタイプの浴室排水口も存在することから、例えば洗い場の排水を集めて排水する目皿の中央部に浴槽の排水を流す排水管が目皿を貫通して設置されている場合は、中央部の浴槽排水管が邪魔になるため、リング状の一部がカットされた円弧状にすることもでき、又はこの形状では保管時に外部の力等で変形しやすいために、手若しくは挟み等の切断具で容易にカットできる切取り予定部が設けられたリング状とすることもできる。
【0017】
前記円弧状薬剤収納容器等の薬剤収納容器としては、固形薬剤を収納することができるものであれば特に制限されないが、下面が平坦な構造の容器が安定的に排水口近傍に載置する上で好ましい。かかる円弧状薬剤収納容器等の薬剤収納容器には、排水の一部が流入し、流入した排水が容器内に収納されている固形薬剤を溶解し、固形薬剤溶解液を比較的高濃度で持続的に流出させるための、容器の外側周面に外孔、好ましくは外側周面下端を含む外孔が複数設けられる。外側周面下端を含む外孔としては、外側周面下端から外側周面の上方に延びるスリット状の外孔を挙げることができる。このように、円弧状薬剤収納容器等の薬剤収納容器に設けられる孔は、容器の外側周面に設けられる外孔が必要であるが、その他容器の内側周面、上面、下面にも孔を適宜設けることもできる。これらの中でも、円弧状薬剤収納容器等の薬剤収納容器の内側周面に排水による薬剤溶解液を排出する内孔を、内孔の面積の和が外孔の面積の和よりも小さくなるように設けることが、比較的高濃度の薬剤溶解液を持続的に流出させる上で好ましい。その他、空気抜きの目的で上面に上孔を設けることもできる。また、上記スリット状の外孔等のスリット状孔のスリットの幅は、0.5〜4mm、さらに0.5〜3mm、特に1〜2mmが好ましい。スリット幅が0.5mm以上であると水の表面張力の均衡が破れ、排水を容器内に流入させることができる。また、スリット幅が4mm以下好ましくは3mm以下であると毛髪等の異物の流入を極力防止することができる。なお、前記の薬剤収納容器外側周面に設ける外孔として、外側周面下端を含む外孔とともに外側周面上端を含む外孔を設けると、本発明のヌメリ取り器の天地を気にすることなく浴室の排水口へ設置することができる。この場合、外側周面下面を含む外孔(下孔)は主に排水の流入又は流出孔として、外側周面上面を含む外孔(上孔)は主に空気抜き及び/又は排水の流入孔としての機能を担うことになる。
【0018】
円弧状薬剤収納容器等の薬剤収納容器は通常プラスチックから作られるが、必要に応じて、容器に親水処理や撥水処理を施すこともできる。親水処理や撥水処理は、例えば、容器に親水性又は撥水性の樹脂材料を用いたり、容器の樹脂に親水性又は撥水性の界面活性剤を練り込んだ材料を用いたり、あるいは容器の表面に親水性又は撥水性のコーティング剤、塗料を塗布することにより行うことができる。容器の材質の全部又は一部、例えば薬剤収納容器を親水性とすることにより、水の表面張力の影響を小さくすることができ、該容器に設けられた外孔から容器内へ排水をより円滑に流入させることができる。反対に、容器の材質の全部又は一部を撥水性とすることにより、水溶性汚れ物質による汚れの付着を防止することができる。
【0019】
前記毛髪通過部としては、毛髪等の異物が通過しうるスペースであればよく、前記リング状浴室排水口用ヌメリ取り器の場合、例えば円周の1/12程度の毛髪通過部を3箇所設けると、円弧状薬剤収納容器部分に比べて、毛髪通過部では排水の流速が大きく、毛髪が円弧状薬剤収納容器部分にまつわりつくことなく、排水口の方に流れ込み、目皿により捕集されることになる。かかる毛髪通過部としては、毛髪流入穴や該流入穴の下部のないゲート状の毛髪流入ゲートを具体的に例示することができ、特に、ゲート状の毛髪流入ゲートを設けると、毛髪が円弧状薬剤収納容器部分に何らまつわりつくことなく、排水口の方に流れ込み、その大部分が目皿により捕集されることになる。また、リング状浴室排水口用ヌメリ取り器の内側周面下端に囲まれる円形部分を、排水口へ流入する毛髪を補集する毛髪補集部として構成しておくと、かかる毛髪補集部に毛髪が捕集され、目皿から毛髪を除去する手間を省くことができる。上記毛髪補集部は通水性素材から作られる。通水性素材から作られる毛髪補集部としては、例えば、布状、フィルム状、紙状、網状等のシート状のプラスチック、紙、繊維、金属等を例示することができ、具体的には、不織布、合成樹脂製網、通水孔を有する合成樹脂シート、通水孔を有する合成樹脂フィルム、フェルト等を挙げることができる。また、浴室排水口には浴槽内の水をホースにより排水するタイプも存在することから、毛髪補集部に、各種排水管口の大きさに合わせて手でカットできるように、1以上の同心円の切取り予定部を設けておくこともできる。
【0020】
(揮発性薬剤収納容器)
本発明の揮発性薬剤収納容器は、揮発性薬剤を収納し、揮発した薬剤を放出するための容器であり、特に大きさ、形状、材質に関して限定されるものではない。但し、容器上部には水の流入を防ぐために開口部がなく、下部にのみ通気用の開口部を有する。容器の下部とは、底部及び側面下部を意味する。開口部は底部及び側面下部の少なくとも一方にあればよい。開口部の形状は特に限定されるものではないが、成形性を考慮すると、略円形、またはスリット状が好ましい。略円形の場合は直径1〜10mmであることが好ましく、さらに好ましくは直径2〜6mmである。スリット状の場合は、狭い部分の距離が、0.5〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜3mmである。下部開口部を不織布やマイクロポーラスフィルム等の水を通さず揮発性薬剤の蒸気を通気させるシート状物質で塞ぐこともできる。
揮発性薬剤収納容器は、揮発性薬剤を出し入れするため、例えば、容器の上部と下部に分割し、上部を下部に着脱自在に被せるようにすることができる。
揮発性薬剤収納容器の形状は、ヌメリ取り器の形状に応じて適宜選択できるが、例えば、直方体もしくは直方体が円弧状に変形した形である。
浴室排水口用ヌメリ取り器がリング状である場合は、揮発性薬剤収納容器が浴室排水口用ヌメリ取り器の内側側面に沿って装着できる円弧状容器が好ましい。
【0021】
浴室の排水口の種類によって、洗い場の排水と浴槽の排水を同時に流すように、排水口の中央部にパイプが設置されている場合があるため、ヌメリ取り器の形状がリング状の場合は、円弧状に変形した形状のものが好ましい。揮発性薬剤収納容器の材質は、各種材質が使用できるが加工性、経済性の面からプラスチック樹脂が好ましく使用され、香料等との接触による変質がないことからポリエチレン、ポリプロピレン等が特に好ましく使用される。
揮発性薬剤収納容器は、ヌメリ取り器と一体に装着してもよく、着脱自在であってもよい。揮発性薬剤収納容器をヌメリ取り器と一体とした場合は製造後使用するまでの保管期間中に揮発性薬剤がヌメリ取り剤の有効成分と反応し変質する可能性が高まるため、着脱自在であることが好ましく、保管時には揮発性薬剤収納容器とヌメリ取り器は別包装にし、使用時に一体とすることがより好ましい。
揮発性薬剤収納容器を着脱自在にする場合は、揮発性薬剤収納容器にはヌメリ取り器に取り付けるためのフックやピン等を設ける。その場合、ヌメリ取り器には、フックやピンが嵌着できるスリットや穴などを設ける。
揮発性薬剤収納容器とヌメリ取り器が一体となった状態で揮発性薬剤収納容器底面はヌメリ取り器の底面より1〜10mm、好ましくは2〜5mm高く設置される。揮発性薬剤収納容器の底面とヌメリ取り器の底面の差が1mm以下であると、ヌメリ取り器を浴室の排水口に設置した場合に排水口床面と揮発性薬剤収納容器の底面の間に排水が常時溜まった状態になり、揮発性薬剤の揮発が阻害される。揮発性薬剤収納容器の底面の高さが10mmより高い場合は揮発性薬剤の揮発は良好であるが、浴室の排水口は排水口床面と排水口の蓋との隙間が狭いものが多いため、揮発性薬剤収納容器をセットしたヌメリ取り器を設置可能な排水口の種類が少なくなる。
【0022】
また、揮発性薬剤収納容器には、内部の底面には、揮発性薬剤を載置し、開口部から離れて保持するため、直方体状、半球体状等の任意形状の突起を複数設けて、揮発性薬剤をその上に載置する。突起の高さは揮発性薬剤収納容器の大きさに応じて適宜設定し得るが、揮発性薬剤収納容器の内寸高さの20〜50%であることが好ましい。特に、揮発性薬剤をシートに含浸させた物を用いる場合は、突起の数を多くすることが好ましい。
【0023】
ヌメリ取り器にセットされた揮発性薬剤収納容器は浴室の排水口に設置された状態で下部の開口部より揮発性薬剤を揮発させ、浴室内や排水口に有効成分を拡散させる。
排水が流されると揮発性薬剤収納容器は一時的に容器の下部または全体が排水内に浸漬するが、容器上部に開口部が無く容器内の気密が保たれているため、空気圧のために排水は容器下部にしか侵入せず、突起によって容器上部に保持されている固形の揮発性薬剤は排水と接触することはない。このため揮発性の有効成分が排水に溶解して無駄に流出することも無く、揮発性薬剤が水に濡れることにより、固形薬剤の表面が水に覆われ有効成分の揮発が阻害されることも無くなる。
【0024】
(揮発性薬剤)
本発明において用いられる揮発性薬剤は突起で保持可能な固形体でなければならないが、その有効成分は室温、常圧下で揮発する化合物であり、芳香剤、消臭剤、忌避剤から選ばれる1種または2種以上であり、固体状、液状であってもよく、具体的には、揮発性薬剤原末、揮発性薬剤充填カプセル、揮発性薬剤含有物質、揮発性薬剤混合物質等を挙げることができる。
揮発性薬剤を固形体とするためには、各種公知の方法でゲル状成形体としてもよく、天然繊維や合成樹脂製繊維からなるシート状物に含浸させたものであってもよい。固体の揮発性薬剤または液状薬剤を粉末に含浸させ賦形剤とともに錠剤にすることもできる。
浴室用ヌメリ取り器にセットして使用する揮発性薬剤収納容器は狭い排水口内に設置するため容器が小容量となり、収納される揮発性薬剤も小容量であることが好ましい。このため揮発性薬剤は通常の芳香剤等に比べて高濃度の有効成分を含有することが好ましい。
【0025】
通常の芳香剤は香料の蒸発速度をコントロールするために、アルコール等の溶剤で希釈したものを容器に充填したり、ゲル化して使用されるが、本発明の芳香剤としては香料の原液をゲル化させたり、シート状物に含浸させて使用することが好ましい。香料原液を含浸させるシート状物としてはポリプロピレンの繊維から成るフェルト状不織布が高濃度の香料を含浸可能であり、香料により変質しないため特に好ましく使用される。
本発明では揮発性有効成分の揮発速度のコントロールは容器下部の開口部の面積によって行われる。
消臭剤としては、不快に思う臭い成分を分解または吸着によって除去する物質であれば、特に限定されるものではなく、消臭剤として販売されている試薬でもよく、市販されている消臭剤の消臭する部分の一部を切り取ったものでも良い。忌避剤としては、蚊や蛾等の虫が好まない物質を含んだものであれば特に限定されるものではない。忌避剤が排水に溶解することで排水管内を登ってくる虫等も忌避することができる。
【0026】
以下に、本発明の実施態様について記載する。
図1及び2は、本発明の揮発性薬剤収納容器(1)を示す。揮発性薬剤収納容器(1)はその上面から見たときに円弧状の容器であり、その底部及び側面には通気用の小孔(2)、(3)を有する。また、容器の外側の側面には、ヌメリ取り器に着脱自在に嵌着するための片状の嵌着用突起(4)を複数個有する。さらに、容器の底面には、揮発性薬剤を含浸させたシート(5)を載置するための突起(6)が複数個設けられている。
図4は、本発明の揮発性薬剤収納容器(1)を装着する前の浴室排水口用ヌメリ取り器(7)を示す。浴室排水口用ヌメリ取り器(7)は、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤を収納した薬剤収納容器(8)と毛髪通過部(9)とが交互に設けられており、毛髪通過部(9)の一部にスリット(10)を設けて、揮発性薬剤収納容器(1)の嵌着用突起(4)を嵌着させることができるようにしてある。
図3は、本発明の揮発性薬剤収納容器(1)を装着した浴室排水口用ヌメリ取り器(7)を示す。揮発性薬剤収納容器(1)は浴室排水口用ヌメリ取り器(7)の内部側面に沿って装着される。
図5及び6は、本発明の揮発性薬剤収納容器の他の実施態様を示す。図1の実施態様とは、ヌメリ取り器に着脱自在に嵌着するための嵌着用突起(4)がピン状であるという点で異なる。揮発性薬剤収納容器(1)の嵌着用突起を着脱自在に嵌着させることができるよう、ヌメリ取り器の上面の一部にピンを受ける孔を設けて、揮発性薬剤収納容器(1)の嵌着用突起を嵌着させることができるようにしてある。
図7は、本発明の揮発性薬剤収納容器(1)を装着した浴室排水口用ヌメリ取り器(7)を浴室の排水口(11)に載置したときの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の排水口に載置され、微生物の発育抑制物質を含有する固形薬剤を収納する薬剤収納容器を備えた浴室排水口用ヌメリ取り器に装着するための揮発性薬剤収納容器であって、
前記揮発性薬剤収納容器は、上部に開口部を有さず、底部及び側面下部の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする揮発性薬剤収納容器。
【請求項2】
揮発性薬剤収納容器が浴室排水口用ヌメリ取り器に着脱自在に装着できることを特徴とする請求項1に記載の揮発性薬剤収納容器。
【請求項3】
浴室排水口用ヌメリ取り器がリング状又は円弧状であって、揮発性薬剤収納容器が浴室排水口用ヌメリ取り器の内側側面に沿って装着できる円弧状容器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の揮発性薬剤収納容器。
【請求項4】
開口部を水を通さず揮発性薬剤の蒸気を通気させるシート状物質で塞ぐことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の揮発性薬剤収納容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−108320(P2013−108320A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256074(P2011−256074)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【出願人】(593088898)ニッソー樹脂株式会社 (2)
【Fターム(参考)】