説明

浴室用具

【課題】水に濡れた床面に敷いたり、浴槽内に水没させたりしても、あるいは、水に濡れた身体を接触させたりしても、優れた防滑性能を発揮できる浴室用具を提供する。
【解決手段】その外表面における少なくとも一部が防滑構造体によって覆われた浴室用具において、防滑構造体を、40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成し、防滑構造体の外表面に平面視V字状の複数の線状凸部を繰り返し設け、隣り合う線状凸部の間に形成される隙間を全て連続して形成するとともに、それぞれの線状凸部の根元部における一対の側壁を、末広がりとなるように傾斜して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床や浴槽内に設置するための浴室用マットや浴室用椅子などの浴室用具に関する。
【背景技術】
【0002】
全国老人保健施設協会の調査によると、介護施設における最も多い事故は、転倒・転落であり、全体の7割以上を占めている。このため、転倒・転落を防ぐことは、介護施設における事故の数を大幅に減らすことに繋がってくる。特に、被介護者を入浴させる際には、被介護者を抱きかかえながら滑りやすい床面を歩くという危険な作業が介護者に伴うため、浴室内での事故をどのように減らすかが、重要な課題となっている。このような実状に鑑みてか、転倒を防ぐための工夫が施された各種の浴室用具が提案されるようになっている。
【0003】
例えば、床面に接触する下面や、人の足裏などを支える上面の防滑性を考慮した浴室用床マットが提案されている(特許文献1,2を参照)。また、浴槽の内面に接触する下面や、入浴者の身体に接触する上面の防滑性を考慮した浴槽用マットも提案されている(特許文献3を参照)。さらに、床面に接触する脚部底面や、人の身体を支える座面や背凭れ前面の防滑性を考慮した、浴室の床面や浴槽の内底面に設置するための浴室用椅子が提案されている(特許文献4〜9を参照)。
【0004】
これら従来の浴室用具は、防滑性を高めるための何らかの工夫が施されたものではあったが、いずれも、水に濡れた環境で使用されるものとしては、必ずしも十分なものとは言えなかった。また、必ずしも耐久性に優れたものとも言えなかった。さらに、製造コストが嵩むものであったり、衛生的に使用するためには煩雑なメンテナンスが必要であったり、人体へのアレルギーを配慮したものではなかったりなど、何らかの欠点を有するものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平07−039671号公報
【特許文献2】実登第3151650号公報
【特許文献3】特開2007−068873号公報
【特許文献4】実開昭58−149955号公報
【特許文献5】特開2001−113620号公報
【特許文献6】実登第3068236号公報
【特許文献7】特開2007−061509号公報
【特許文献8】特開2007−267823号公報
【特許文献9】特開2008−212530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、水に濡れた床面に敷いたり、浴槽内に水没させたりしても、あるいは、水に濡れた身体を接触させたりしても、優れた防滑性能を発揮できる浴室用具を提供するものである。また、耐久性にも優れ、長期間に亘って使用することのできる浴室用具を提供することも本発明の目的である。さらに、製造コストを抑えることが可能であり、衛生的に保ちやすくメンテナンスが容易であり、人体のアレルギーにも十分に配慮した浴室用具を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、その外表面における少なくとも一部が防滑構造体によって覆われた浴室用具であって、防滑構造体が、40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成され、防滑構造体の外表面には平面視V字状の複数の線状凸部が繰り返し設けられて、隣り合う線状凸部の間に形成される隙間が全て連続して形成されるとともに、それぞれの線状凸部の根元部における一対の側壁が、末広がりとなるように傾斜して形成されたことを特徴とする浴室用具を提供することによって解決される。
【0008】
このように、防滑構造体を40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成することにより、防滑構造体を柔軟性に優れ、防滑性能に優れたものとすることが可能になる。そして、防滑構造体を人体にアレルギー反応を生じさせないものとすることも可能になる。また、防滑構造体の外表面に、平面視V字状の複数の線状凸部を繰り返し設けることにより、さらに防滑性能に優れたものとすることが可能になる。さらに、隣り合う線状凸部の間に形成される隙間を全て連続して形成することにより、浴室用具を、防滑面に水が滞留せず、カビなどの雑菌が繁殖しにくいものとすることも可能になる。さらにまた、線状凸部の根元部における一対の側壁を末広がりに傾斜して形成することにより、線状凸部の根元部の幅を広くして断面係数を増加させ、線状凸部が破損しにくいものとすることも可能になる。
【0009】
複数の線状凸部は、防滑構造体の外表面に繰り返し設けるのであれば、その配置を特に限定されない。例えば、防滑構造体の外表面に、互いに平行な複数本の凸部列を繰り返し設けて、それぞれの凸部列を、同じ向きで1列に配された平面視V字状の複数の線状凸部で構成し、一の凸部列に属する線状凸部の向きと該一の凸部列に隣り合う他の凸部列に属する線状凸部の向きとを逆向きとすると好ましい。これにより、線状凸部を正方向と逆方向の2方向に向け、浴室用具を特定の方向での防滑性に優れたものとすることが可能になる。また、同じ列に属する線状凸部を同じ向きに設けることによって、線状凸部を密に配することができるので、その防滑性をさらに高めることが可能になる。この構成は、特定方向での防滑性が要求される浴室用具(例えば、座る場所が決まっている浴室用椅子など)で採用すると好適である。
【0010】
また、防滑構造体の外表面に、複数組の凸部群を繰り返し設けて、それぞれの凸部群を、N回回転対称(Nは2以上の整数)に配された平面視V字状のN個の線状凸部で構成することも好ましい。これにより、線状凸部をN方向に向け、浴室用具を多方向での防滑性に優れたものとし、転倒事故などの発生をより効果的に防止することが可能になる。この構成は、防滑性を要求される向きが特に決まっていない浴室用具(例えば、浴室用床パネルなど)で採用すると好適である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によって、水に濡れた床面に敷いたり、浴槽内に水没させたりしても、あるいは、水に濡れた身体を接触させたりしても、優れた防滑性能を発揮できる浴室用具を提供することが可能になる。また、耐久性にも優れ、長期間に亘って使用することのできる浴室用具を提供することも可能になる。さらに、製造コストを抑えることが可能であり、衛生的に保ちやすくメンテナンスが容易であり、人体のアレルギーにも十分に配慮した浴室用具を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施態様の浴室用具(浴室用床マット)を示した斜視図である。
【図2】第二実施態様の浴室用具(浴室用浴槽マット)を示した斜視図である。
【図3】第三実施態様の浴室用具(浴室用椅子)を示した斜視図である。
【図4】第四実施態様の浴室用具(浴室用椅子)を示した斜視図である。
【図5】本発明の浴室用具における複数の線状凸部の配置の一例を示した平面図である。
【図6】図5の一部を拡大した平面図である。
【図7】図6における一の線状凸部をX−X面で切断した状態を示した断面図である。
【図8】本発明の浴室用具における複数の線状凸部の配置の他例を示した平面図である。
【図9】図8の一部を拡大した平面図である。
【符号の説明】
【0013】
10 浴室用床マット(浴室用具)
20 浴室用床マット(浴室用具)
30 浴室用椅子(浴室用具)
31 座板
32 脚部
40 浴室用椅子(浴室用具)
41 座板
42 脚部
43 背凭れ
α 線状凸部
α 先端部
α 根元部
β 隙間
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の浴室用具の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様から第四実施態様までの4つの実施態様の浴室用具について説明するが、本発明の浴室用具は、これら4つの実施態様に限定されるものではなく、各種の浴室用具で採用することができる。
【0015】
図1は、第一実施態様の浴室用具10(浴室用床マット)を示した斜視図である。第一実施態様の浴室用床マット10は、図1に示すように、その外周部に凸部と凹部とが所定ピッチで繰り返し設けられた平面視正方形状の板状体となっている。一の浴室用床マット10の凸部は、該一の浴室用床マット10の隣に配される他の浴室用床マット10の凹部に嵌め込まれ、一の浴室用床マット10と他の浴室用床マット10とが連結される。これにより、複数枚の浴室用床マット10を浴室の床面に敷き詰める。
【0016】
図1において、網掛のハッチングで示してある部分は、第一実施態様の浴室用具10(浴室用床マット)における防滑構造体で覆われた部分を指している。この浴室用床マット10は、図1に示すように、その上面(人の足裏などと接触する面)の略全体が防滑構造体によって覆われている。また、図1では見えない浴室用床マット10の下面(浴室の床面と接触する面)も防滑構造体で覆われている。これにより、浴室の床面に対する浴室用床マット10の滑りを防止するだけでなく、浴室用床マット10の上面を歩く人の足の滑りを防止することも可能になり、浴室用床マット10を、転倒事故が発生しにくいものとすることができる。
【0017】
防滑構造体は、40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成される。シリコーンゴムのJIS−A硬度は、45〜75度であると好ましく、50〜70度であるとより好ましい。シリコーンゴムには、発泡剤などを添加して、防滑構造体の弾力性を高めることもできる。また、シリコーンゴムに、抗菌剤や防カビ剤などを添加することも好ましい。これにより、浴室用床マット10をさらに衛生的なものとすることが可能になる。抗菌剤や防カビ剤などは、防滑構造体の表面に塗布してもよい。第一実施態様の浴室用床マット10において、防滑構造体はシート状となっている。防滑構造体は、それのみで浴室用床マット10を構成してもよいし、浴室用床マット10の上面及び下面のみを防滑構造体で構成してもよい。
【0018】
第一実施態様の浴室用具10(浴室用床マット)において、防滑構造体は、図5〜7に示すように、その外表面に、平面視V字状の複数の線状凸部αが繰り返し設けられたものとなっている。図5は、本発明の浴室用具10〜40における複数の線状凸部αの配置の一例を示した平面図である。図6は、図5の一部を拡大した平面図である。図7は、図6における線状凸部αをX−X面で切断した状態を示した断面図である。
【0019】
具体的には、それぞれの線状凸部αは、図5に示すように、複数の線状凸部αを同じ向きで所定の幅Wを隔てて平行に配した複数本の凸部列を平行に設けている。一の凸部列に属する線状凸部αの向きと該一の凸部列に隣り合う他の凸部列に属する線状凸部αの向きは、逆向きとなっている。このため、凸部列に平行な方向(図5の紙面に向かって上下方向)では特に滑りにくくなっている。それぞれの線状凸部αは、隙間βを隔てて設けられており、隣り合う線状凸部αの間に形成される隙間βは、全て連続して形成されている。このため、浴室用床マット10が水に濡れても、その水が隙間βを通じて流れることができるようになっている。このため、カビの繁殖などを抑え、浴室用床マット10を衛生的に保つことが容易となっている。
【0020】
それぞれの線状凸部αの根元部αにおける一対の側壁は、図7に示すように、末広がりとなるように(線状凸部αの根元に近づくになるにつれて線状凸部αの幅が広くなるように)傾斜して形成されている。このため、線状凸部αの根元部αの強度を高めて、線状凸部αが破損しないようにすることが可能となっている。線状凸部αの根元部αの側壁の傾斜角度φ(図7を参照)は、特に限定されないが、小さくしすぎても、大きくしすぎても、線状凸部αの根元部αの強度を高める効果が低くなる。このため、線状凸部αの根元部αの側壁の傾斜角度φは、通常、10〜80°とされる。線状凸部αの根元部αの側壁の傾斜角度φは、20〜70°であると好ましく、30〜60°であるとより好ましい。
【0021】
ところで、線状凸部α寸法は、特に限定されない。しかし、線状凸部αの全体長さ(長手方向での長さ、その屈曲に沿った長さ)を短くしすぎると、優れた防滑性能を発揮できなくなるおそれがある。このため、線状凸部αの全体長さは、通常、5mm以上とされる。線状凸部αの全体長さは、10mm以上であると好ましく、15mm以上であるとより好ましい。一方、線状凸部αの全体長さを長くしすぎると、線状凸部αを密に配置できなくなり、やはり優れた防滑性能を発揮できなくなるおそれがある。このため、線状凸部αの全体長さは、通常、150mm以下とされる。線状凸部αの全体長さは、100mm以下であると好ましく、70mm以下であるとより好ましい。
【0022】
また、線状凸部αの高さH(図7を参照)も特に限定されないが、線状凸部αが低すぎると、優れた防滑性能を発揮できなくなるおそれがある。このため、線状凸部αの高さHは、通常、0.5mm以上とされる。線状凸部αの高さHは、1mm以上であると好ましく、1.5mm以上であるとより好ましい。一方、線状凸部αの高さHが高すぎると、線状凸部αの強度が低下するおそれがある。このため、線状凸部αの高さHは、通常、10mm以下とされる。線状凸部αの高さHは、7mm以下であると好ましく、5mm以下であるとより好ましい。
【0023】
さらに、線状凸部αの幅W(図7を参照)は、隙間βの幅D,D(図6を参照)によっても異なり、特に限定されない。しかし、線状凸部αの幅Wが狭すぎると、線状凸部αの強度が低下するおそれがある。このため、線状凸部αの幅Wは、通常、0.5mm以上とされる。線状凸部αの横断幅Wは、1mm以上であると好ましく、1.5mm以上であるとより好ましい。一方、線状凸部αの幅Wを広くしすぎると、優れた防滑性能を発揮できなくなるおそれがある。このため、線状凸部αの幅Wは、通常、15mm以下とされる。線状凸部αの幅Wは、10mm以下であると好ましく、5mm以下であるとより好ましい。
【0024】
さらにまた、線状凸部αの幅W(図7を参照)に対する隙間βの幅D,D(図6を参照)の比(D/W,D/W)を小さくしすぎると、線状凸部αが密に配置されすぎて、優れた防滑性能を発揮できなくなるおそれがあるし、隙間βの幅D,Dが狭くなりすぎて、隙間βに水などが溜まりやすくなるおそれもある。このため、比D/W,D/Wは、通常、0.2以上とされる。比D/W,D/Wは、0.5以上であると好ましく、1以上であるとより好ましい。一方、比D/W,D/Wを大きくしすぎると、線状凸部αの強度が低下するおそれがあるし、線状凸部αを密に配置することができなくなり、優れた防滑性能を発揮できなくなるおそれもある。このため、比D/W,D/Wは、通常、5以下とされる。比D/W,D/Wは、3以下であると好ましく、1.5以下であるとより好ましい。
【0025】
そして、線状凸部αの屈曲角度θ(図6を参照)は、0°よりも大きく、180°よりも小さければ特に限定されないが、小さくしすぎると、線状凸部αの屈曲部が防滑に効きにくくなるおそれがあるし、隙間βに水が溜まりやすくなるおそれもある。このため、線状凸部αの屈曲角度θは、通常、30°以上とされる。線状凸部αの屈曲角度θは、40°以上であると好ましく、50°以上であるとより好ましい。一方、線状凸部αの屈曲角度θを大きくしすぎると、線状凸部αの強度が低下するおそれがあるし、線状凸部αの長手方向での防滑性が低下するおそれもある。このため、線状凸部αの屈曲角度θは、通常、150°以下とされる。線状凸部αの屈曲角度θは、140°以下であると好ましく、130°以下であるとより好ましい。
【0026】
ところで、上の例では、複数本の凸部列を平行に設けていたが、複数の線状凸部は、以下のように配置することもできる。図8は、本発明の浴室用具10〜40における複数の線状凸部αの配置の他例を示した平面図である。図9は、図8の一部を拡大した平面図である。図8の線状凸部における断面図は、図7と略同様であるために、省略する。この他例では、図8に示すように、防滑構造体の外表面には、複数組の凸部群が繰り返し設けられており、それぞれの凸部群がN回回転対称(Nは2以上の整数)に配されたN個の線状凸部αで構成されている。図8において、Nの値は6となっており、それぞれの凸部群は、概略正六角形を為している。凸部群を概略正六角形とすると、図8に示すように、凸部群を平面的に敷き詰めることが可能であり、複数の線状凸部αを密に効率的に配置することができる。全ての凸部群を同一形状の三角形や四角形(正方形、長方形、平行四辺形などを含む。)としても、凸部群を敷き詰めることができる。
【0027】
一の凸部群を構成する6個の線状凸部αは、図9に示すように、それぞれ線状凸部αの屈曲中心Cが凸部群の中心Cを向き、それぞれの線状凸部αの両端部(外端部)は、凸部群の外側を向いている。このため、それぞれの線状凸部αの屈曲角度θは、60°(=360°÷6)となっている。線状凸部αをこのように配置することにより、1つの凸部群で360°で6方向の防滑性を高めることが可能となっている。この構成は、力の加わり方が特定されない浴室用床パネル10で好適に採用することができる。一の凸部群を構成するそれぞれの線状凸部αは、図9とは逆向き、すなわち、それぞれの線状凸部αにおける屈曲中心Cが凸部群の外側を向くように配置してもよいが、この場合には、それぞれの凸部群の中心C付近にスペースが生じるという欠点がある。
【0028】
それぞれの凸部群を構成する線状凸部αの数Nは、2以上であれば特に限定されないが、小さくしすぎると、優れた防滑性を発揮できる方向が少なくなるおそれがある。このため、Nの値は、通常、3以上とされる。Nの値は、4以上であると好ましく、5以上であるとより好ましい。一方、Nの値を大きくしすぎると、それぞれの線状凸部の寸法が小さくなりすぎて、所望の防滑性や耐久性を発揮できなくなるおそれがある。このため、Nの値は、通常、10以下とされる。Nの値は、8以下であると好ましく、7以下であるとより好ましい。
【0029】
続いて、第二実施態様の浴室用具について説明する。図2は、第二実施態様の浴室用具20(浴室用浴槽マット)を示した斜視図である。第二実施態様の浴室用浴槽マット20は、図2に示すように、平面視略長方形状の板状のものとなっている。この浴室用浴槽マット20は、浴槽の内底面に敷かれ、入浴者の身体が浴槽内で滑らないように支持する。図2において、網掛のハッチングで示してある部分は、防滑構造体で覆われた部分を指している。この浴室用浴槽マット20は、図2に示すように、その上面(人の足裏や臀部、背中などと接触する面)の略全体が防滑構造体によって覆われている。また、図2では見えない浴室用浴槽マット20の下面(浴槽の内床面と接触する面)も防滑構造体で覆われている。これにより、浴室用浴槽マット20が浴槽に対しても滑りにくいものとなっている。第二実施態様の浴室用浴槽マット20において、防滑構造体はシート状となっている。防滑構造体は、それのみで浴室用浴槽マット20を構成してもよいし、浴室用床マット20の上面及び下面のみを防滑構造体で構成してもよい。第二実施態様の浴室用浴槽マット20における防滑構造体の具体的な構成は、第一実施態様の浴室用床マット20と略同様であるために説明を割愛する。
【0030】
続いて、第三実施態様の浴室用具について説明する。図3は、第三実施態様の浴室用具30(浴室用椅子)を示した斜視図である。第三実施態様の浴室用椅子30は、図3に示すように、着席するための座板31と、座板31を所定の高さで支持するための脚部32とで構成されたものとなっている。図3において、網掛のハッチングで示してある部分は、防滑構造体で覆われた部分を指している。この浴室用椅子30は、図3に示すように、座板31の座面31aと、脚部32の下端部32aが防滑構造体によって覆われている。このため、第三実施態様の浴室用椅子30は、その脚部32が床面に対して滑りにくいだけでなく、座板32に着席した人の臀部をも滑らないように支持することが可能なものとなっている。第三実施態様の浴室用椅子30において、座板31の防滑構造体は、プラスチックなどで形成された座板本体の座面31aにシート状の防滑構造体を貼り付けることによって設けている。また、脚部32の防滑構造体は、その外底面に線状凸部αの形成されたキャップ状の防滑構造体を脚部32の下端部に嵌め込むことによって設けている。第三実施態様の浴室用椅子30における防滑構造体の具体的な構成は、第一実施態様の浴室用床マット10と略同様であるために説明を割愛する。
【0031】
続いて、第四実施態様の浴室用具について説明する。図4は、第四実施態様の浴室用具40(浴室用椅子)を示した斜視図である。第四実施態様の浴室用椅子40は、図4に示すように、着席するための座板41と、座板41を所定の高さで支持するための脚部42と、座板41の後側から上方に設けられた背凭れ43とで構成されたものとなっている。図4において、網掛のハッチングで示してある部分は、防滑構造体で覆われた部分を指している。この浴室用椅子40は、図4に示すように、座板41の座面41aと、脚部42の下端部42aに加えて、背凭れ43の前面43aも防滑構造体によって覆われている。このため、第四実施態様の浴室用椅子40は、座板42に着席した人の背中をも滑らないように支持することが可能なものとなっている。この他、浴室用椅子には、図示省略の肘掛などを設けて、該肘掛の外表面を防滑構造体で覆ってもよい。これにより、座板43に着席した人の手を滑らないように支持することも可能になる。第四実施態様の浴室用椅子40において、座板41及び背凭れ43の防滑構造体は、プラスチックなどで形成された座板本体及び背凭れ本体の座面41a及び前面43aにシート状の防滑構造体を貼り付けることによって設けている。また、脚部42の防滑構造体は、その外底面に線状凸部αの形成されたキャップ状の防滑構造体を脚部42の下端部に嵌め込むことによって設けている。第四実施態様の浴室用椅子における防滑構造体の具体的な構成は、第一実施態様の浴室用床マット10と略同様であるために説明を割愛する。
【0032】
これらの他、浴室用台や浴室用靴など、他の浴室用具においても同様の構成を採用することができる。本発明の浴室用具は、一般家庭で用いられるものは勿論のこと、各種施設などの大浴場でも好適に採用することができる。また、介護の必要な被介護者が使用する介護用浴室用具にも好適に採用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外表面における少なくとも一部が防滑構造体によって覆われた浴室用具であって、
防滑構造体が、40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成され、
防滑構造体の外表面には平面視V字状の複数の線状凸部が繰り返し設けられて、隣り合う線状凸部の間に形成される隙間が全て連続して形成されるとともに、
それぞれの線状凸部の根元部における一対の側壁が、末広がりとなるように傾斜して形成されたことを特徴とする浴室用具。
【請求項2】
その外表面における少なくとも一部が防滑構造体によって覆われた浴室用具であって、
防滑構造体が、40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成され、
防滑構造体の外表面には互いに平行な複数本の凸部列が繰り返し設けられて、それぞれの凸部列が同じ向きで1列に配された平面視V字状の複数の線状凸部で構成され、一の凸部列に属する線状凸部の向きと該一の凸部列に隣り合う他の凸部列に属する線状凸部の向きとが逆向きとされ、隣り合う線状凸部の間に形成される隙間が全て連続して形成されるとともに、
それぞれの線状凸部の根元部における一対の側壁が、末広がりとなるように傾斜して形成されたことを特徴とする浴室用具。
【請求項3】
その外表面における少なくとも一部が防滑構造体によって覆われた浴室用具であって、
防滑構造体が、40〜80度のJIS−A硬度を有するシリコーンゴムによって形成され、
防滑構造体の外表面には複数組の凸部群が繰り返し設けられて、それぞれの凸部群がN回回転対称(Nは2以上の整数)に配された平面視V字状のN個の線状凸部で構成され、隣り合う線状凸部の間に形成される隙間が全て連続して形成されるとともに、
それぞれの線状凸部の根元部における一対の側壁が、末広がりとなるように傾斜して形成されたことを特徴とする浴室用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120833(P2011−120833A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283044(P2009−283044)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(592160607)日進ゴム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】