浴室用椅子、浴室用椅子と洗面器の組み合わせ、及び、それに用いる洗面器
【課題】洗面器と容易に組み合わせることができ、かつ、水はけにも配慮した浴室用椅子を提供する。また、浴室用椅子に対して有利な構造を有する洗面器を提供する。
【解決手段】浴室用椅子1は、座面10と、座面10を支持する脚20と、を具備する。座面10は、厚み方向に貫通する係止穴30を有し、係止穴30を画定する辺は、座面10の左右方向に直線的に延びる前端辺31及び後端辺32と、を含む。前端辺31又は後端辺32の左右方向への延出長さは、何れか一方が他方よりも短くなるように設定され、係止穴30を画定する辺は、当該短く設定される側の辺(前端辺31又は後端辺32)の両端部から他側の辺(前端辺31又は後端辺32)の両端部に向けて円弧状又は曲線状に延出される円弧辺33・33をさらに含む。
【解決手段】浴室用椅子1は、座面10と、座面10を支持する脚20と、を具備する。座面10は、厚み方向に貫通する係止穴30を有し、係止穴30を画定する辺は、座面10の左右方向に直線的に延びる前端辺31及び後端辺32と、を含む。前端辺31又は後端辺32の左右方向への延出長さは、何れか一方が他方よりも短くなるように設定され、係止穴30を画定する辺は、当該短く設定される側の辺(前端辺31又は後端辺32)の両端部から他側の辺(前端辺31又は後端辺32)の両端部に向けて円弧状又は曲線状に延出される円弧辺33・33をさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内で使用する椅子及び洗面器に関し、特に、その椅子と洗面器との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の浴室、大衆浴場等で体を洗う時、髪の毛を洗う時などに、体を安定させるために椅子が使用されている。このような浴室用椅子の一例として、特許文献1には、臀部によって塞がれる開口を有する凹部を具備する浴室用椅子が開示されている。
【0003】
浴室内では椅子に加えて洗面器が使用される。入浴後には、洗面器を逆さ向けにして椅子の座面に被せた状態、椅子の座面に洗面器を載せた状態、椅子の側面に洗面器を立て掛けた状態など、洗面器を乾燥させるためや、浴室内の省スペースのために椅子と洗面器とをひとまとまりにして置いておくことが多い。
しかし、入浴後濡れたままの洗面器を上記のように椅子にセットして放置すると、洗面器と椅子の接触面、洗面器の底、側面等にぬめりやカビが発生してしまう。また、洗面器と椅子をばらばらに置いておくと、スペースを取る、見た目が悪いなどといった理由で好ましくない。
以上述べたように、従来は浴室用椅子と洗面器との組み合わせに対する工夫はなされてこなかったのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、洗面器と容易に組み合わせることができ、かつ、水はけにも配慮した浴室用椅子を提供する。また、浴室用椅子に対して有利な構造を有する洗面器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浴室用椅子は、座面と、前記座面を支持する脚と、を具備する浴室用椅子であって、前記座面は、厚み方向に貫通する係止穴を有し、前記係止穴を画定する辺は、前記座面の左右方向に直線的に延びる前端辺及び後端辺と、を含む。
前記前端辺又は後端辺の左右方向への延出長さは、何れか一方が他方よりも短く設定され、前記係止穴を画定する辺は、当該短く設定される側の辺の両端部から、他側の(長く設定される側の)辺の両端部に向けて円弧状又は曲線状に延出される円弧辺をさらに含む。
前記浴室用椅子に任意の洗面器を組み合わせる際は、係止穴に洗面器の縁を差し込むことによって行われるが、係止穴の前端辺及び後端辺により、洗面器の縁、及びその背面側の外側面で洗面器を支持することができる。このとき、前端辺及び後端辺を直線に形成することによって、洗面器を前後対称に組み合わせることが可能である。
また、係止穴を画定する辺に円弧状又は曲線状に形成される円弧辺を有することによって、円形状の洗面器の外形形状に沿わせることができ、洗面器との接触点を増やしてより安定的に支持することが可能となる。特に、大型の洗面器を組み合わせる場合に有効である。
なお、浴室用椅子の前後左右方向は、着座時の前後左右方向として規定する。
【0007】
前記浴室用椅子の係止穴は、座面の最下点を含む位置に設けられることが好ましい。
これにより、座面に溜まる水が確実に係止穴を通じて下方に落下することとなり、座面上の水はけを良くすることができる。
【0008】
本発明の浴室用椅子と洗面器との組み合わせは、上記浴室用椅子と、上記浴室用椅子の係止穴に係合する洗面器とによって構成される。
なお、浴室用椅子の係止穴に係合するとは、洗面器の一部を浴室用椅子の座面の上側から下側に向けて係止穴内に挿入し、かつ、洗面器が浴室用椅子の前方又は後方に向けて傾斜して自立した状態で支持される状態を示す。
本発明の洗面器は、前記浴室用椅子の係止穴と係合し、かつ、浴室用椅子の内部側から係止穴の周縁部に当接する係止縁を含み、その係止縁が外周縁の半周に亘って設けられる。
また、上記洗面器において、前記係止縁が設けられる側と反対側の面に設けられる把手面を有し、その把手面は、平坦な外周面として形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な動作で浴室用椅子と洗面器を組み合わせて、浴室内での省スペースおよび見た目の整頓感、清潔感を実現できるとともに、良好な水はけを実現し、浴室用椅子および洗面器におけるカビの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】浴室用椅子の斜視図である。
【図2】浴室用椅子の側面図である。
【図3】浴室用椅子の正面図である。
【図4】浴室用椅子の平面図である。
【図5】浴室用椅子の端面図であり、図4のA−A線断面図である。
【図6】浴室用椅子の背面図である。
【図7】浴室用椅子の底面図である。
【図8】係止穴の別形状を示す図である。
【図9】浴室用椅子の使用状態を示す図であり、浴室用椅子と洗面器との組み合わせを示す図である。
【図10】浴室用椅子の使用状態を示す図であり、浴室用椅子と洗面器との組み合わせを示す拡大斜視図である。
【図11】浴室用椅子の使用状態を示す図であり、浴室用椅子と洗面器との組み合わせの別形態を示す図である。
【図12】係止穴の別実施形態を示す図である。
【図13】係止穴の好ましい実施形態を示す端面図である。
【図14】洗面器の斜視図である。
【図15】洗面器の正面図である。
【図16】洗面器の右側面図である。
【図17】洗面器の左側面図である。
【図18】洗面器の平面図である。
【図19】洗面器の底面図である。
【図20】洗面器の断面図である。
【図21】洗面器の使用状態を示す断面図であり、洗面器と浴室用椅子の組み合わせを示す図である。
【図22】洗面器の使用状態を示す図であり、洗面器と浴室用椅子の組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
[浴室用椅子]
図1から図8を参照して、浴室用椅子1の構成について説明する。浴室用椅子1の前後左右方向は、着座時の前後左右方向として規定する。
浴室用椅子1は、座面10と、座面10を支持する脚20とによって構成される椅子状の構造体である。浴室用椅子1は、左右方向中央を中心とした左右対称形状を有する。
浴室用椅子1を構成する材料としては、浴室内での使用に耐え得るものであれば採用できる。例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂等のプラスチック材料、檜、杉等の木製材料が挙げられる。
【0013】
座面10は、浴室用椅子1の一部を構成する天板面であり、平面視略矩形状に形成される平板状の部位である。座面10は、浴室用椅子1の使用に耐え得る強度を確保できる程度の厚みを有する。
浴室用椅子1を使用する際は、座面10の上に着座する。このため、座面10には、使用者の臀部、大腿部の裏側、腰回り等に密着することとなる。
【0014】
座面10の後端部には、背もたれ11が形成される。背もたれ11は、座面10から上方に向けて突出し、後端部に向けて徐々に反り上がる形状に形成される。つまり、座面10は背もたれ11によって、側面視において後方が反り上がる形状を有する。このように座面10に背もたれ11を形成することによって着座した際の安定性を向上できる。
また、座面10の後端部は、平面視において中央部が最も後方に位置するように、中央部から両側端部にかけて緩い湾曲形状に形成されている。このように、座面10の後端部に湾曲形状を有することで、腰回りの形状に沿わせることができ、着座した際のフィット感を向上できる。
【0015】
脚20は、浴室用椅子1の底部、すなわち床との接地部として構成されるとともに、座面10にかかる荷重を受ける支持部として構成される。脚20と床との接地部分には、ゴム(不図示)が配置され、浴室用椅子1にかかる衝撃を吸収して床面を傷つけないように配慮されている。
脚20は、座面10の形状に応じた略角筒状の部位として形成される。本実施形態の脚20は、座面10の周縁から下方に向けて延びる筒状の壁面として構成される。
【0016】
図2に示すように、脚20の側面には、排水用・通気用の開口21・21が設けられる。また、図3に示すように、脚20の正面には、同様に排水用・通気用の開口22が設けられる。これらの開口21・22は、入浴時に脚20の内周側に流入する水を外側に排出するため、かつ、入浴後に浴室用椅子1を浴室内に放置している際、脚20の内部に空気を通して換気するための開口である。
このように、脚20の外側面に内外を連通する開口部を設けることにより、筒状に形成される脚20内部の通気性を確保できる。なお、十分な通気性を確保できれば、脚20の外側面底部の任意の二箇所の開口を設ける構成としても良い。
【0017】
脚20の側面に設けられる開口21・21は、浴室用椅子1の底面側に設けられており、側面視において略直角三角形状に形成される。より詳細には、開口21は、浴室用椅子1の前方側に位置する垂直の切り欠きと、その上端から後方に向かうにつれて下方に傾斜する斜めの切り欠きとによって構成される。
脚20の正面に設けられる開口22は、浴室用椅子1の底面側に設けられており、正面視において半円形状に形成される。
以上のように、開口21・21・22を設けることによって、脚20内部の風通しを良くするとともに、脚20の外観を美しくする効果を有する。
【0018】
図3及び図4に示すように、座面10及び脚20の正面中央部において、座面10から下端(開口22)にかけて、凹部23が形成されている。凹部23は、浴室用椅子1の左右方向中央部において前端部から後方に向かって緩やかに凹む湾曲形状に形成されており、凹部23によって浴室用椅子1の前部を左右に分割するように配置される。
すなわち、浴室用椅子1の前部に凹部23を設けることによって、凹部23によって分割された座面10に左右の足を自然にフィットさせることができるとともに男性器と座面10との接触を避けることができるため、着座時の安定感及び使用感を向上できる。
【0019】
なお、脚20は、浴室用椅子1の使用に耐え得る形状、つまり座面10を十分な強度で支えられる形態であれば良く、上下方向に延びる柱状に形成しても良い。このように、筒状の形態以外を採用した場合、排水用・通気用の開口21・22は特に設ける必要はなく、さらに凹部23については、座面10の前端面に設けるのみで良い。
【0020】
[係止穴]
図4に示すように、座面10には、係止穴30が設けられる。
係止穴30は、座面10の厚み方向(上下方向)に貫通して設けられている。係止穴30は、左右方向に長い形状を有し、前後方向に所定の幅を有する貫通穴である。より詳細には、係止穴30は、左右方向に直線的に延びる前端辺31・後端辺32と、後端辺32の左右方向両端部から前端辺31の左右方向両端部に向かってそれぞれ延出される円弧辺33・33とによって画定されている。
【0021】
前端辺31は、座面10の前後中央部において、左右方向に延びる直線の辺であり、座面10の左右方向の長さに対して二分の一から四分の三程度の長さにて設けられる。
後端辺32は、前端辺31から所定距離だけ後方において、左右方向に設けられる直線の辺であり、座面10の左右方向の長さに対して三分の一から三分の二程度の長さにて設けられる。
つまり、後端辺32の延出長さは、前端辺31の延出長さに対して短くなるように設定されており、後端辺32の両側端と前端辺31の両側端とが円弧辺33・33によって接続されている。
【0022】
円弧辺33・33は、座面10の中央部の前方に位置する点を中心とする大円の一部として形成される。言い換えれば、円弧辺33・33は、所定位置を中心とした円のうち、前端辺31及び後端辺32と交差する各点によって切り取られる円弧として形成される。
なお、円弧辺33・33は厳密な円弧として形成する必要はなく、円弧状に近い曲線状であっても良い。例えば、図8に示すように、円弧辺33・33の形状を前端辺31と後端辺32の両端をそれぞれ滑らかに結ぶ曲線状とすることで、係止穴30の強度の低下を抑制できる。
【0023】
ここで、前端辺31及び後端辺32の左右長さ、並びに、前端辺31と後端辺32との間隔は、係止穴30の開口面積を決定する事項であり、座面10のうち切り欠かれる面積を決定する。このため、これらについては後述する係止穴30の機能を確保した上で、座面10の強度、係止穴30の機能等を考慮して適宜設定されることが好ましい。
例えば、係止穴30の機能を担保するには、前端辺31及び後端辺32の長さは、座面10の左右方向の長さの二分の一以上であることが好ましく、座面10の強度を担保するためには、出来る限り開口面積が小さくなるように設定することが好ましい。
【0024】
また、座面10における係止穴30の形成位置については、座面10上の排水性を考慮すれば、座面10の最下点となる位置を含むように係止穴30を設けることが好ましい。
例えば、座面10の形状を臀部形状に応じて凹形状に形成する場合、その底部に係止穴30を設けることによって、座面10の上面に溜まる水を係止穴30に集めることができ、良好な排水性を実現できる。
【0025】
[浴室用椅子と洗面器の組み合わせ]
以上のように構成される係止穴30を有する浴室用椅子1には、洗面器2を組み合わせることが可能である(図9から図11参照)。
洗面器2は、一般的な容器形状を有する円形の洗面器であり、容器の開口部分の周縁部から外側に向けて延出する縁3を有する。この縁3は、洗面器2を使用する際に持ち手となる部分であり、洗面器2の底部と略平行な平面として形成される。
このような洗面器2としては、一般的に販売されている洗面器、若しくは、浴室用椅子1の専用品を採用することもできる。専用品としては、例えば、浴室用椅子1と洗面器2の意匠性(形状・色・模様等)を考慮した組物となるようにしても良いし、洗面器2の縁3の一部から係止穴30の形状に応じた突起が突出して形成されるものとしても良い。
【0026】
次に、図9及び図10を参照して、洗面器2が浴室用椅子1の前方に傾くようにセットした場合の洗面器2と浴室用椅子1の係止穴30との係わり合いについて説明する。
図9は、浴室用椅子1の使用状態を示す参考図であり、洗面器2を前傾姿勢でセットした状態を示す斜視図である。図10は、浴室用椅子1と洗面器2との係合状態を示す拡大斜視図であり、図10(a)は前方斜視図、図10(b)は後方斜視図である。
【0027】
図9に示すように、洗面器2は、その一部が係合穴30を介して浴室用椅子1の内部に挿入された状態で、係合穴30と係合することにより、浴室用椅子1にセットされる。このとき、洗面器2は、浴室用椅子1の左右中央部を中心として略左右対称となるようにセットされているものとするが、厳密に左右対称とする必要はなく、係止穴30の大きさ・幅、洗面器2の大きさ・厚み等に応じて任意の位置にセット可能である。
【0028】
図10(a)に示すように、係止穴30の前端辺31と洗面器2の縁3の二点P1・P2とが接触している。図10(b)に示すように、係止穴30の後端辺32と洗面器2の外側面の一点P3とが接触している。言い換えれば、洗面器2の傾倒方向側の辺(前端辺31)と洗面器2とは、洗面器2の縁3で接触するため二点で接触し、傾倒方向と反対側の辺(後端辺32)と洗面器2とは一点で接触している。
このように、洗面器2の縁3の二点P1・P2と外側面側の点P3との三点によって洗面器2が係止穴30に支持されている。より具体的には、洗面器2の自重により点P1・P2に対しては、下向きのモーメント、点P3に対しては、上向きのモーメントがかかっており、これら点P1・P2にかかるモーメントと点P3にかかるモーメントが釣り合うことによって、洗面器2が回転不能に係合されている。
こうして、洗面器2の開口を下に向けた状態で、洗面器2の縁3を係止穴30に対して前側から挿入することによって、図9及び図10に示すような前傾姿勢での係止が可能である。
【0029】
以上のように、係止穴30に洗面器2を挿入するという簡単な動作で、浴室用椅子1の係止穴30に洗面器2を組み合わせることが可能である。
また、洗面器2の円形状と係止穴30の円弧辺33・33の円弧形状とが対応することとなるため、洗面器2を支持するポイントを円弧辺33・33にも存在させることができ、浴室用椅子1にセットされる洗面器2の安定性を向上できる。特に、洗面器2として大型のものを採用した場合に有効である。
さらには、係止穴30の側端部に円弧辺33・33を設けることによって、洗面器2の円形状に沿わせた状態で洗面器2を係止穴30に係合させることができる。これにより、係止穴30を必要最小限の開口面積とすることができ、座面10の強度低減を抑えることができる。
このように、洗面器2を係止穴30に挿入する際に、洗面器2の円形状を係止穴30の円弧辺33・33に沿わせて挿入することで、物理的にも視覚的にも自然なセッティングが可能である。
【0030】
浴室用椅子1の座面10には、係止穴30が設けられるため、座面10に溜まった水は係止穴30を通じて下方に流れ落ちる。言い換えれば、係止穴30は従来の水切り穴としての機能を兼ね備える。
また、洗面器2の開口を下向きにした逆さ向けの状態で浴室用椅子1にセットすることで、洗面器2内に残った水分が係止穴30を通じて流れ落ちることによって洗面器2内の水切れが良くなるとともに、洗面器2と浴室用椅子1との接触部分における水分の滞留を防止できる。
ひいては、浴室用椅子1及び洗面器2を使用した後(入浴後)に、洗面器2を浴室用椅子1にセットすることで、良好な水はけを実現し、浴室用椅子1および洗面器2におけるカビの発生を抑制できる。また、浴室用椅子1と洗面器2とを一体的に保管することができ、浴室内での省スペースおよび見た目の整頓感、清潔感を実現できる。
【0031】
[浴室用椅子と洗面器の組み合わせの別形態]
また、図11に示すように、洗面器2を図9及び図10に示す姿勢と逆向きに係止穴30に挿入することによっても洗面器2を浴室用椅子1にセットすることが可能である。すなわち、前傾姿勢に加えて、洗面器2を後傾姿勢で浴室用椅子1にセットすることが可能である。
この場合も図10に示す作用と同様に、洗面器2が係止穴30の前端辺31及び後端辺32によって係止され、洗面器2が浴室用椅子1に後傾姿勢でセットされる。このとき、洗面器2は、開口を下に向けた状態で浴室用椅子1の係止穴30に対して後側から挿入される。
本実施形態において、洗面器2を図11に示すように、後傾姿勢で浴室用椅子1にセットする場合、洗面器2に上方からの力が加わった際に、洗面器2の縁3が円弧辺33・33に沿って前方に向けて移動可能であるため、座面10(特に係止穴30)に掛かる力を分散させることができ、強度を損なうことがない。
【0032】
以上において説明した実施形態では、洗面器2を浴室用椅子1の前側から及び後側から挿入し、前傾姿勢及び後傾姿勢にてセットするために、係止穴30の前端辺31及び後端辺32を左右方向に延びる直線としている。
しかし、洗面器2の挿入方向、つまり傾倒方向を前傾又は後傾の何れか一方に限定する場合には、その傾倒側と反対側の辺(洗面器2の外側面と接触する辺)を湾曲形状、若しくは屈曲形状に適宜形成することにより、洗面器2との接触点を増やす構成としても良い。このように接触点を増大させることにより、洗面器2をより安定的に係止できる。
【0033】
[係止穴の別実施形態]
以上の実施形態では、係止穴30に対する洗面器2の設置姿勢について、前傾姿勢又は後傾姿勢の何れかを選択可能な形態を示したが、何れか一方に限定した場合、図12に示すように、係止穴30全体を円弧状に形成しても良い。
このとき、係止穴30の円弧形状は、洗面器2の円形状に応じた形状とすることが好ましい。また、係止穴30への洗面器2の挿入作業を考慮すると、後端側の円弧の径を前端側の円弧の径よりも大きく設定することが好ましい。
【0034】
[係止穴の好ましい実施形態]
図13に示すように、係止穴30の周縁部から下方に向けて、リブ35が設けられることが好ましい。リブ35は、座面10の内側面から下方に向けて突出して設けられる。リブ35は、係止穴30によって切り取られる座面10の一部の強度を補う補強部として機能する。
なお、リブ35は、補強部材としての観点から係止穴30の周縁部全周に設けられることが好ましく、かつ、座面10の内側面から下方に向けて十分な長さで突出することが好ましい。また、リブ35を洗面器2の傾斜に応じて傾斜面として形成しても良い。
【0035】
なお、係止穴30は、外観上の美感、強度的な観点から座面10に設けることが好ましいが、脚20に設けても良い。この場合も同様に、洗面器2を逆さ向けにしてセットできるように形成し、かつ、洗面器2の形状に対応する形状の係止穴として形成することが好ましい。
【0036】
以上に説明した実施形態では、座面10の平面形状及び脚20の平面視形状を略矩形状としているが、これに限定されず楕円形状、円形状等でも良く、同様の係止穴30を設けることによって本発明を実施することが可能である。
【0037】
以下、図14から図22を参照して、浴室用椅子1の形状に応じた形状を有する洗面器40の構成について説明する。洗面器40は、係止縁41と把手面42を具備することを特徴とする。
係止縁41は、洗面器40の開口側外縁部に、略半周に亘って設けられる縁部であり、上端部から下方に向けて折り返すように設けられている。係止縁41は、洗面器40を浴室用椅子1の係止穴30に差し込む際に、内部側から係止穴30の周縁部と接触する。言い換えれば、係止縁41は、洗面器40と浴室用椅子1との引っ掛かりに寄与する返しとして機能する。このように、係止縁41を有することによって、洗面器40と浴室用椅子1の係合状態を良好に維持できる。
【0038】
把手面42は、係止縁41が設けられる側と対角側に設けられる面である。把手面42は、平面として設けられており、略半球体状に形成される洗面器40の外周面のうちの一部を方形面として形成している。
また、把手面42が設けられる部位において、洗面器40の外周縁部の一部に直線となる部分が存在することとなる。このように、洗面器40の外側面に平坦面である把手面42を有することにより、洗面器40を持つ際の持ち易さが向上する。
【符号の説明】
【0039】
1:浴室用椅子、2:洗面器、10:座面、20:脚、21:開口、22:開口、23:凹部、30:係止穴、31:前端辺、32:後端辺、33:円弧辺
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内で使用する椅子及び洗面器に関し、特に、その椅子と洗面器との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の浴室、大衆浴場等で体を洗う時、髪の毛を洗う時などに、体を安定させるために椅子が使用されている。このような浴室用椅子の一例として、特許文献1には、臀部によって塞がれる開口を有する凹部を具備する浴室用椅子が開示されている。
【0003】
浴室内では椅子に加えて洗面器が使用される。入浴後には、洗面器を逆さ向けにして椅子の座面に被せた状態、椅子の座面に洗面器を載せた状態、椅子の側面に洗面器を立て掛けた状態など、洗面器を乾燥させるためや、浴室内の省スペースのために椅子と洗面器とをひとまとまりにして置いておくことが多い。
しかし、入浴後濡れたままの洗面器を上記のように椅子にセットして放置すると、洗面器と椅子の接触面、洗面器の底、側面等にぬめりやカビが発生してしまう。また、洗面器と椅子をばらばらに置いておくと、スペースを取る、見た目が悪いなどといった理由で好ましくない。
以上述べたように、従来は浴室用椅子と洗面器との組み合わせに対する工夫はなされてこなかったのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、洗面器と容易に組み合わせることができ、かつ、水はけにも配慮した浴室用椅子を提供する。また、浴室用椅子に対して有利な構造を有する洗面器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浴室用椅子は、座面と、前記座面を支持する脚と、を具備する浴室用椅子であって、前記座面は、厚み方向に貫通する係止穴を有し、前記係止穴を画定する辺は、前記座面の左右方向に直線的に延びる前端辺及び後端辺と、を含む。
前記前端辺又は後端辺の左右方向への延出長さは、何れか一方が他方よりも短く設定され、前記係止穴を画定する辺は、当該短く設定される側の辺の両端部から、他側の(長く設定される側の)辺の両端部に向けて円弧状又は曲線状に延出される円弧辺をさらに含む。
前記浴室用椅子に任意の洗面器を組み合わせる際は、係止穴に洗面器の縁を差し込むことによって行われるが、係止穴の前端辺及び後端辺により、洗面器の縁、及びその背面側の外側面で洗面器を支持することができる。このとき、前端辺及び後端辺を直線に形成することによって、洗面器を前後対称に組み合わせることが可能である。
また、係止穴を画定する辺に円弧状又は曲線状に形成される円弧辺を有することによって、円形状の洗面器の外形形状に沿わせることができ、洗面器との接触点を増やしてより安定的に支持することが可能となる。特に、大型の洗面器を組み合わせる場合に有効である。
なお、浴室用椅子の前後左右方向は、着座時の前後左右方向として規定する。
【0007】
前記浴室用椅子の係止穴は、座面の最下点を含む位置に設けられることが好ましい。
これにより、座面に溜まる水が確実に係止穴を通じて下方に落下することとなり、座面上の水はけを良くすることができる。
【0008】
本発明の浴室用椅子と洗面器との組み合わせは、上記浴室用椅子と、上記浴室用椅子の係止穴に係合する洗面器とによって構成される。
なお、浴室用椅子の係止穴に係合するとは、洗面器の一部を浴室用椅子の座面の上側から下側に向けて係止穴内に挿入し、かつ、洗面器が浴室用椅子の前方又は後方に向けて傾斜して自立した状態で支持される状態を示す。
本発明の洗面器は、前記浴室用椅子の係止穴と係合し、かつ、浴室用椅子の内部側から係止穴の周縁部に当接する係止縁を含み、その係止縁が外周縁の半周に亘って設けられる。
また、上記洗面器において、前記係止縁が設けられる側と反対側の面に設けられる把手面を有し、その把手面は、平坦な外周面として形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な動作で浴室用椅子と洗面器を組み合わせて、浴室内での省スペースおよび見た目の整頓感、清潔感を実現できるとともに、良好な水はけを実現し、浴室用椅子および洗面器におけるカビの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】浴室用椅子の斜視図である。
【図2】浴室用椅子の側面図である。
【図3】浴室用椅子の正面図である。
【図4】浴室用椅子の平面図である。
【図5】浴室用椅子の端面図であり、図4のA−A線断面図である。
【図6】浴室用椅子の背面図である。
【図7】浴室用椅子の底面図である。
【図8】係止穴の別形状を示す図である。
【図9】浴室用椅子の使用状態を示す図であり、浴室用椅子と洗面器との組み合わせを示す図である。
【図10】浴室用椅子の使用状態を示す図であり、浴室用椅子と洗面器との組み合わせを示す拡大斜視図である。
【図11】浴室用椅子の使用状態を示す図であり、浴室用椅子と洗面器との組み合わせの別形態を示す図である。
【図12】係止穴の別実施形態を示す図である。
【図13】係止穴の好ましい実施形態を示す端面図である。
【図14】洗面器の斜視図である。
【図15】洗面器の正面図である。
【図16】洗面器の右側面図である。
【図17】洗面器の左側面図である。
【図18】洗面器の平面図である。
【図19】洗面器の底面図である。
【図20】洗面器の断面図である。
【図21】洗面器の使用状態を示す断面図であり、洗面器と浴室用椅子の組み合わせを示す図である。
【図22】洗面器の使用状態を示す図であり、洗面器と浴室用椅子の組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
[浴室用椅子]
図1から図8を参照して、浴室用椅子1の構成について説明する。浴室用椅子1の前後左右方向は、着座時の前後左右方向として規定する。
浴室用椅子1は、座面10と、座面10を支持する脚20とによって構成される椅子状の構造体である。浴室用椅子1は、左右方向中央を中心とした左右対称形状を有する。
浴室用椅子1を構成する材料としては、浴室内での使用に耐え得るものであれば採用できる。例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂等のプラスチック材料、檜、杉等の木製材料が挙げられる。
【0013】
座面10は、浴室用椅子1の一部を構成する天板面であり、平面視略矩形状に形成される平板状の部位である。座面10は、浴室用椅子1の使用に耐え得る強度を確保できる程度の厚みを有する。
浴室用椅子1を使用する際は、座面10の上に着座する。このため、座面10には、使用者の臀部、大腿部の裏側、腰回り等に密着することとなる。
【0014】
座面10の後端部には、背もたれ11が形成される。背もたれ11は、座面10から上方に向けて突出し、後端部に向けて徐々に反り上がる形状に形成される。つまり、座面10は背もたれ11によって、側面視において後方が反り上がる形状を有する。このように座面10に背もたれ11を形成することによって着座した際の安定性を向上できる。
また、座面10の後端部は、平面視において中央部が最も後方に位置するように、中央部から両側端部にかけて緩い湾曲形状に形成されている。このように、座面10の後端部に湾曲形状を有することで、腰回りの形状に沿わせることができ、着座した際のフィット感を向上できる。
【0015】
脚20は、浴室用椅子1の底部、すなわち床との接地部として構成されるとともに、座面10にかかる荷重を受ける支持部として構成される。脚20と床との接地部分には、ゴム(不図示)が配置され、浴室用椅子1にかかる衝撃を吸収して床面を傷つけないように配慮されている。
脚20は、座面10の形状に応じた略角筒状の部位として形成される。本実施形態の脚20は、座面10の周縁から下方に向けて延びる筒状の壁面として構成される。
【0016】
図2に示すように、脚20の側面には、排水用・通気用の開口21・21が設けられる。また、図3に示すように、脚20の正面には、同様に排水用・通気用の開口22が設けられる。これらの開口21・22は、入浴時に脚20の内周側に流入する水を外側に排出するため、かつ、入浴後に浴室用椅子1を浴室内に放置している際、脚20の内部に空気を通して換気するための開口である。
このように、脚20の外側面に内外を連通する開口部を設けることにより、筒状に形成される脚20内部の通気性を確保できる。なお、十分な通気性を確保できれば、脚20の外側面底部の任意の二箇所の開口を設ける構成としても良い。
【0017】
脚20の側面に設けられる開口21・21は、浴室用椅子1の底面側に設けられており、側面視において略直角三角形状に形成される。より詳細には、開口21は、浴室用椅子1の前方側に位置する垂直の切り欠きと、その上端から後方に向かうにつれて下方に傾斜する斜めの切り欠きとによって構成される。
脚20の正面に設けられる開口22は、浴室用椅子1の底面側に設けられており、正面視において半円形状に形成される。
以上のように、開口21・21・22を設けることによって、脚20内部の風通しを良くするとともに、脚20の外観を美しくする効果を有する。
【0018】
図3及び図4に示すように、座面10及び脚20の正面中央部において、座面10から下端(開口22)にかけて、凹部23が形成されている。凹部23は、浴室用椅子1の左右方向中央部において前端部から後方に向かって緩やかに凹む湾曲形状に形成されており、凹部23によって浴室用椅子1の前部を左右に分割するように配置される。
すなわち、浴室用椅子1の前部に凹部23を設けることによって、凹部23によって分割された座面10に左右の足を自然にフィットさせることができるとともに男性器と座面10との接触を避けることができるため、着座時の安定感及び使用感を向上できる。
【0019】
なお、脚20は、浴室用椅子1の使用に耐え得る形状、つまり座面10を十分な強度で支えられる形態であれば良く、上下方向に延びる柱状に形成しても良い。このように、筒状の形態以外を採用した場合、排水用・通気用の開口21・22は特に設ける必要はなく、さらに凹部23については、座面10の前端面に設けるのみで良い。
【0020】
[係止穴]
図4に示すように、座面10には、係止穴30が設けられる。
係止穴30は、座面10の厚み方向(上下方向)に貫通して設けられている。係止穴30は、左右方向に長い形状を有し、前後方向に所定の幅を有する貫通穴である。より詳細には、係止穴30は、左右方向に直線的に延びる前端辺31・後端辺32と、後端辺32の左右方向両端部から前端辺31の左右方向両端部に向かってそれぞれ延出される円弧辺33・33とによって画定されている。
【0021】
前端辺31は、座面10の前後中央部において、左右方向に延びる直線の辺であり、座面10の左右方向の長さに対して二分の一から四分の三程度の長さにて設けられる。
後端辺32は、前端辺31から所定距離だけ後方において、左右方向に設けられる直線の辺であり、座面10の左右方向の長さに対して三分の一から三分の二程度の長さにて設けられる。
つまり、後端辺32の延出長さは、前端辺31の延出長さに対して短くなるように設定されており、後端辺32の両側端と前端辺31の両側端とが円弧辺33・33によって接続されている。
【0022】
円弧辺33・33は、座面10の中央部の前方に位置する点を中心とする大円の一部として形成される。言い換えれば、円弧辺33・33は、所定位置を中心とした円のうち、前端辺31及び後端辺32と交差する各点によって切り取られる円弧として形成される。
なお、円弧辺33・33は厳密な円弧として形成する必要はなく、円弧状に近い曲線状であっても良い。例えば、図8に示すように、円弧辺33・33の形状を前端辺31と後端辺32の両端をそれぞれ滑らかに結ぶ曲線状とすることで、係止穴30の強度の低下を抑制できる。
【0023】
ここで、前端辺31及び後端辺32の左右長さ、並びに、前端辺31と後端辺32との間隔は、係止穴30の開口面積を決定する事項であり、座面10のうち切り欠かれる面積を決定する。このため、これらについては後述する係止穴30の機能を確保した上で、座面10の強度、係止穴30の機能等を考慮して適宜設定されることが好ましい。
例えば、係止穴30の機能を担保するには、前端辺31及び後端辺32の長さは、座面10の左右方向の長さの二分の一以上であることが好ましく、座面10の強度を担保するためには、出来る限り開口面積が小さくなるように設定することが好ましい。
【0024】
また、座面10における係止穴30の形成位置については、座面10上の排水性を考慮すれば、座面10の最下点となる位置を含むように係止穴30を設けることが好ましい。
例えば、座面10の形状を臀部形状に応じて凹形状に形成する場合、その底部に係止穴30を設けることによって、座面10の上面に溜まる水を係止穴30に集めることができ、良好な排水性を実現できる。
【0025】
[浴室用椅子と洗面器の組み合わせ]
以上のように構成される係止穴30を有する浴室用椅子1には、洗面器2を組み合わせることが可能である(図9から図11参照)。
洗面器2は、一般的な容器形状を有する円形の洗面器であり、容器の開口部分の周縁部から外側に向けて延出する縁3を有する。この縁3は、洗面器2を使用する際に持ち手となる部分であり、洗面器2の底部と略平行な平面として形成される。
このような洗面器2としては、一般的に販売されている洗面器、若しくは、浴室用椅子1の専用品を採用することもできる。専用品としては、例えば、浴室用椅子1と洗面器2の意匠性(形状・色・模様等)を考慮した組物となるようにしても良いし、洗面器2の縁3の一部から係止穴30の形状に応じた突起が突出して形成されるものとしても良い。
【0026】
次に、図9及び図10を参照して、洗面器2が浴室用椅子1の前方に傾くようにセットした場合の洗面器2と浴室用椅子1の係止穴30との係わり合いについて説明する。
図9は、浴室用椅子1の使用状態を示す参考図であり、洗面器2を前傾姿勢でセットした状態を示す斜視図である。図10は、浴室用椅子1と洗面器2との係合状態を示す拡大斜視図であり、図10(a)は前方斜視図、図10(b)は後方斜視図である。
【0027】
図9に示すように、洗面器2は、その一部が係合穴30を介して浴室用椅子1の内部に挿入された状態で、係合穴30と係合することにより、浴室用椅子1にセットされる。このとき、洗面器2は、浴室用椅子1の左右中央部を中心として略左右対称となるようにセットされているものとするが、厳密に左右対称とする必要はなく、係止穴30の大きさ・幅、洗面器2の大きさ・厚み等に応じて任意の位置にセット可能である。
【0028】
図10(a)に示すように、係止穴30の前端辺31と洗面器2の縁3の二点P1・P2とが接触している。図10(b)に示すように、係止穴30の後端辺32と洗面器2の外側面の一点P3とが接触している。言い換えれば、洗面器2の傾倒方向側の辺(前端辺31)と洗面器2とは、洗面器2の縁3で接触するため二点で接触し、傾倒方向と反対側の辺(後端辺32)と洗面器2とは一点で接触している。
このように、洗面器2の縁3の二点P1・P2と外側面側の点P3との三点によって洗面器2が係止穴30に支持されている。より具体的には、洗面器2の自重により点P1・P2に対しては、下向きのモーメント、点P3に対しては、上向きのモーメントがかかっており、これら点P1・P2にかかるモーメントと点P3にかかるモーメントが釣り合うことによって、洗面器2が回転不能に係合されている。
こうして、洗面器2の開口を下に向けた状態で、洗面器2の縁3を係止穴30に対して前側から挿入することによって、図9及び図10に示すような前傾姿勢での係止が可能である。
【0029】
以上のように、係止穴30に洗面器2を挿入するという簡単な動作で、浴室用椅子1の係止穴30に洗面器2を組み合わせることが可能である。
また、洗面器2の円形状と係止穴30の円弧辺33・33の円弧形状とが対応することとなるため、洗面器2を支持するポイントを円弧辺33・33にも存在させることができ、浴室用椅子1にセットされる洗面器2の安定性を向上できる。特に、洗面器2として大型のものを採用した場合に有効である。
さらには、係止穴30の側端部に円弧辺33・33を設けることによって、洗面器2の円形状に沿わせた状態で洗面器2を係止穴30に係合させることができる。これにより、係止穴30を必要最小限の開口面積とすることができ、座面10の強度低減を抑えることができる。
このように、洗面器2を係止穴30に挿入する際に、洗面器2の円形状を係止穴30の円弧辺33・33に沿わせて挿入することで、物理的にも視覚的にも自然なセッティングが可能である。
【0030】
浴室用椅子1の座面10には、係止穴30が設けられるため、座面10に溜まった水は係止穴30を通じて下方に流れ落ちる。言い換えれば、係止穴30は従来の水切り穴としての機能を兼ね備える。
また、洗面器2の開口を下向きにした逆さ向けの状態で浴室用椅子1にセットすることで、洗面器2内に残った水分が係止穴30を通じて流れ落ちることによって洗面器2内の水切れが良くなるとともに、洗面器2と浴室用椅子1との接触部分における水分の滞留を防止できる。
ひいては、浴室用椅子1及び洗面器2を使用した後(入浴後)に、洗面器2を浴室用椅子1にセットすることで、良好な水はけを実現し、浴室用椅子1および洗面器2におけるカビの発生を抑制できる。また、浴室用椅子1と洗面器2とを一体的に保管することができ、浴室内での省スペースおよび見た目の整頓感、清潔感を実現できる。
【0031】
[浴室用椅子と洗面器の組み合わせの別形態]
また、図11に示すように、洗面器2を図9及び図10に示す姿勢と逆向きに係止穴30に挿入することによっても洗面器2を浴室用椅子1にセットすることが可能である。すなわち、前傾姿勢に加えて、洗面器2を後傾姿勢で浴室用椅子1にセットすることが可能である。
この場合も図10に示す作用と同様に、洗面器2が係止穴30の前端辺31及び後端辺32によって係止され、洗面器2が浴室用椅子1に後傾姿勢でセットされる。このとき、洗面器2は、開口を下に向けた状態で浴室用椅子1の係止穴30に対して後側から挿入される。
本実施形態において、洗面器2を図11に示すように、後傾姿勢で浴室用椅子1にセットする場合、洗面器2に上方からの力が加わった際に、洗面器2の縁3が円弧辺33・33に沿って前方に向けて移動可能であるため、座面10(特に係止穴30)に掛かる力を分散させることができ、強度を損なうことがない。
【0032】
以上において説明した実施形態では、洗面器2を浴室用椅子1の前側から及び後側から挿入し、前傾姿勢及び後傾姿勢にてセットするために、係止穴30の前端辺31及び後端辺32を左右方向に延びる直線としている。
しかし、洗面器2の挿入方向、つまり傾倒方向を前傾又は後傾の何れか一方に限定する場合には、その傾倒側と反対側の辺(洗面器2の外側面と接触する辺)を湾曲形状、若しくは屈曲形状に適宜形成することにより、洗面器2との接触点を増やす構成としても良い。このように接触点を増大させることにより、洗面器2をより安定的に係止できる。
【0033】
[係止穴の別実施形態]
以上の実施形態では、係止穴30に対する洗面器2の設置姿勢について、前傾姿勢又は後傾姿勢の何れかを選択可能な形態を示したが、何れか一方に限定した場合、図12に示すように、係止穴30全体を円弧状に形成しても良い。
このとき、係止穴30の円弧形状は、洗面器2の円形状に応じた形状とすることが好ましい。また、係止穴30への洗面器2の挿入作業を考慮すると、後端側の円弧の径を前端側の円弧の径よりも大きく設定することが好ましい。
【0034】
[係止穴の好ましい実施形態]
図13に示すように、係止穴30の周縁部から下方に向けて、リブ35が設けられることが好ましい。リブ35は、座面10の内側面から下方に向けて突出して設けられる。リブ35は、係止穴30によって切り取られる座面10の一部の強度を補う補強部として機能する。
なお、リブ35は、補強部材としての観点から係止穴30の周縁部全周に設けられることが好ましく、かつ、座面10の内側面から下方に向けて十分な長さで突出することが好ましい。また、リブ35を洗面器2の傾斜に応じて傾斜面として形成しても良い。
【0035】
なお、係止穴30は、外観上の美感、強度的な観点から座面10に設けることが好ましいが、脚20に設けても良い。この場合も同様に、洗面器2を逆さ向けにしてセットできるように形成し、かつ、洗面器2の形状に対応する形状の係止穴として形成することが好ましい。
【0036】
以上に説明した実施形態では、座面10の平面形状及び脚20の平面視形状を略矩形状としているが、これに限定されず楕円形状、円形状等でも良く、同様の係止穴30を設けることによって本発明を実施することが可能である。
【0037】
以下、図14から図22を参照して、浴室用椅子1の形状に応じた形状を有する洗面器40の構成について説明する。洗面器40は、係止縁41と把手面42を具備することを特徴とする。
係止縁41は、洗面器40の開口側外縁部に、略半周に亘って設けられる縁部であり、上端部から下方に向けて折り返すように設けられている。係止縁41は、洗面器40を浴室用椅子1の係止穴30に差し込む際に、内部側から係止穴30の周縁部と接触する。言い換えれば、係止縁41は、洗面器40と浴室用椅子1との引っ掛かりに寄与する返しとして機能する。このように、係止縁41を有することによって、洗面器40と浴室用椅子1の係合状態を良好に維持できる。
【0038】
把手面42は、係止縁41が設けられる側と対角側に設けられる面である。把手面42は、平面として設けられており、略半球体状に形成される洗面器40の外周面のうちの一部を方形面として形成している。
また、把手面42が設けられる部位において、洗面器40の外周縁部の一部に直線となる部分が存在することとなる。このように、洗面器40の外側面に平坦面である把手面42を有することにより、洗面器40を持つ際の持ち易さが向上する。
【符号の説明】
【0039】
1:浴室用椅子、2:洗面器、10:座面、20:脚、21:開口、22:開口、23:凹部、30:係止穴、31:前端辺、32:後端辺、33:円弧辺
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面と、前記座面を支持する脚と、を具備する浴室用椅子であって、
前記座面は、厚み方向に貫通する係止穴を有し、
前記係止穴を画定する辺は、
前記座面の左右方向に直線的に延びる前端辺及び後端辺を含み、
前記前端辺又は後端辺の左右方向への延出長さは、何れか一方が他方よりも短く設定され、前記係止穴を画定する辺は、当該短く設定される側の辺の両端部から、他側の辺の両端部に向けて円弧状又は曲線状に延出される円弧辺をさらに含むことを特徴とする浴室用椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室用椅子と、前記浴室用椅子の係止穴に係合する洗面器とによって構成される浴室用椅子と洗面器の組み合わせ。
【請求項3】
請求項2に記載の浴室用椅子と洗面器の組み合わせに用いる洗面器であって、
前記浴室用椅子の係止穴と係合し、かつ、浴室用椅子の内部側から係止穴の周縁部に当接する係止縁を含み、その係止縁が外周縁の半周に亘って設けられることを特徴とする洗面器。
【請求項4】
前記係止縁が設けられる側と反対側の面に設けられる把手面を有し、その把手面は、平坦な外周面として形成される請求項3に記載の洗面器。
【請求項1】
座面と、前記座面を支持する脚と、を具備する浴室用椅子であって、
前記座面は、厚み方向に貫通する係止穴を有し、
前記係止穴を画定する辺は、
前記座面の左右方向に直線的に延びる前端辺及び後端辺を含み、
前記前端辺又は後端辺の左右方向への延出長さは、何れか一方が他方よりも短く設定され、前記係止穴を画定する辺は、当該短く設定される側の辺の両端部から、他側の辺の両端部に向けて円弧状又は曲線状に延出される円弧辺をさらに含むことを特徴とする浴室用椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室用椅子と、前記浴室用椅子の係止穴に係合する洗面器とによって構成される浴室用椅子と洗面器の組み合わせ。
【請求項3】
請求項2に記載の浴室用椅子と洗面器の組み合わせに用いる洗面器であって、
前記浴室用椅子の係止穴と係合し、かつ、浴室用椅子の内部側から係止穴の周縁部に当接する係止縁を含み、その係止縁が外周縁の半周に亘って設けられることを特徴とする洗面器。
【請求項4】
前記係止縁が設けられる側と反対側の面に設けられる把手面を有し、その把手面は、平坦な外周面として形成される請求項3に記載の洗面器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−6014(P2013−6014A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45945(P2012−45945)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(511056932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(511056932)
【Fターム(参考)】
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