説明

浴室用電子機器の防水構造

【課題】浴室テレビなどの浴室用電子機器では、ケース本体と蓋体とからなるケース内に電子部品を格納し、ケース本体に対して蓋体を取り付けケース内を密閉する。密閉構造として、ケース本体に蓋体を溶着させる物があるが、この手法では一旦両者を溶着させるとその後再度両者を離し、再接合できない。一方、浴室用電子機器ではケースに連通孔を設け、外部にコードを延出する場合があり、防水のため、連通孔にブッシュを装着している。ところが、コードを引っ張ることによりブッシュが外れるとケースを開けることができないのでブッシュを再装着できない。
【解決手段】コード5に食い込む固定部材71と、その固定部材71に係合するワッシャ状の環状部材72とを用い、環状部材72とケース本体2の内周面とでブッシュ6に一体成形した鍔部61を挟むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース本体と蓋体とが着脱不能に溶着され密閉されたケース内に電子部品を収納した浴室用電子機器の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室用電子機器として、例えば浴室の壁面に取り付けられる浴室用のテレビ装置では、ケース本体と蓋体とからなるケース内に液晶表示部やその他の電子部品が格納されている。このような浴室用電子機器では、常に湯水がかかり、あるいは水蒸気が充満した環境に晒される。ケース内に湯水や水蒸気が侵入すると、電子機器が故障するので、ケースには十分な密閉性が要求される。
【0003】
ケースを密閉させる構造として、例えば、ケース本体と蓋体とを熱可塑性の樹脂で成形し、ケース本体と蓋体との合わせ部に発熱線を介在させ、この発熱線を発熱させてケース本体と蓋体との双方の合わせ部を局所的に溶融させて両者を接合する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このものでは、ケース本体と蓋体とが溶融して接合されるので、接合された後はケース本体と蓋体とを外すことができない。なお、ケース本体と蓋体とを相互に接合した後であっても、ふたたび発熱線を発熱させ、接合部を溶融させればケース本体と蓋体とを切り離すことはできるが、ふたたび接合させることはできず、実質的にケース本体と蓋体とが一旦接合されると、その後にケース本体から蓋体を外すことができない。
【特許文献1】特許第3053786号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記浴室用の電子機器では、ケースを密閉しなければいけないが、外部からの電力供給や外部との通信のため、ケースの周壁を貫通してコードを通さなければいけない場合が多い。例えば浴室用テレビであれば、チューナ部をテレビとは別に浴室の天井裏に設置する場合があり、そのような場合にはテレビに外部から電力を供給するほか、映像信号や音声信号をチューナ部からテレビに送る必要がある。
【0006】
コードを貫通させる場所は、ケースを浴室の壁面に取り付けた状態で浴室内に露出しない場所が望ましく、そのためケース本体の底部に連通孔が形成され、その連通孔にコードが挿通される。
【0007】
なお、この連通孔にコードを挿通した状態でも可能な限り密閉性を担保するため、連通孔に筒状のゴム製ブッシュを取り付け、このブッシュの中空部分にコードを挿通している。このブッシュの取り付けとブッシュへのコードの挿通とは、ケース本体と蓋体とを相互に接合する前に行われる。そして、その接合の後でケース本体と蓋体とを接合させると、ケース本体と蓋体を分離することができないので、例えばブッシュが連通孔から外れたり、あるいはコードが抜けても、元の状態に復元することができない。
【0008】
そのためブッシュの内側端部にはフランジ状の鍔部を形成し、鍔部がケース本体の内面に係合してブッシュが容易に外れないようにしている。また、コードの先端部分にはコードの外周に巻き付いてコードの被覆より突出する抜け止め部材を設け、この抜け止め部材がブッシュに引っ掛かってコードがブッシュの中空部から抜けないようにしている。
【0009】
ところが、抜け止め部材はブッシュに当接するが、ブッシュはゴム製であるため弾性変形し、コードに引き抜き方向の強い外力が作用すると、抜け止め部材がブッシュを引っ掛け、ブッシュごとコードがケース本体から外れてしまうという不具合が生じる。
【0010】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、コードに引き抜き方向の強い外力が作用してもコードが引き抜かれず、かつブッシュがケース本体から外れない浴室用電子機器の防水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明による浴室用電子機器の防水構造は、ケース本体と蓋体とが着脱不能に溶着され密閉されたケース内に電子部品を収納し、ケース本体の底部に形成した連通孔に、この電子部品に連結されたコードを通した浴室用電子機器の防水構造であって、連通孔に装着される略筒状のゴム製のブッシュを備え、このブッシュのケース内側の端部に、ケース本体の内面に当接するフランジ状の鍔部を形成すると共に、コードをブッシュに挿通した状態で、コードがブッシュから抜け出ることを防止する抜け止め部材をコードの先端側に係合させ、かつコードに引き抜き方向の外力が作用した際に、上記抜け止め部材とケース本体の内面とで上記鍔部を挟むようにしたことを特徴とする。
【0012】
コードに対して引き抜き方向の外力が作用すると、抜け止め部材がブッシュに当接してコードが引き抜かれることが防止される。ただし、抜け止め部材がブッシュに当接してブッシュが変形する。上記構成では、抜け止め部材がブッシュの鍔部に当接し、抜け止め部材とケース本体とでこの鍔部を挟む状態になるので、ブッシュの変形は鍔部のみに限定され、抜け止め部材は鍔部を介してケース本体に係合することになる。そのため、鍔部が大きく変形しても、抜け止め部材がケース本体から引き出されることはなく、また、ブッシュもケース本体から外れることがない。
【0013】
なお、抜け止め部材を1個の部材で構成してもよいが、上記抜け止め部材を、コードが挿通される環状部材と、この環状部材より先端側でコードに固定される固定部材とで構成し、この環状部材とケース本体の内面とで上記鍔部を挟むように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、浴室用電子機器のケースから外部に延出しているコードに引き抜き方向の外力が作用した場合に、コードが延出している連通孔に装着されている防水用のゴム製ブッシュが外れるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照して、1は浴室の壁面に取り付けられる浴室用電子機器である浴室テレビである。この浴室テレビ1は、図2に示すようにケース本体2と蓋体3とからなるケース内に電子部品である回路基板4が内蔵されている。
【0016】
ケース本体2と蓋体3とは上述の背景技術の欄に記載された方法により、合わせ部の全周にわたって相互に熱融着される。このように熱融着されると、熱融着された部分は完全に密閉され、その部分から湯水や水蒸気がケース内に侵入することはない。ただし、熱融着であるため、ケース本体2と蓋体3とを熱融着した後で、ケース本体2から蓋体3を取り外し、ふたたび両者を熱融着することはできない。そのため、ケース本体2と蓋体3とを熱融着するとケース本体2から蓋体3をふたたび取り外すことができない。
【0017】
なお、回路基板4には外部からの電力供給を受け、あるいはアンテナで受信した電波信号を回路基板4に供給するためのコード5が接続されている。このコード5はケースの外に引き出さなければならないので、ケース本体2の底部に連通孔21を形成し、コード5をこの連通孔21を通して外部に引き出している。11は蓋体3に着脱自在に取り付けられる化粧用のカバーである。
【0018】
図3を参照して、連通孔21にはゴム製のブッシュ6が装着されている。このブッシュ6は内部にコード5が挿通される中空形状をしており、さらに、装着された状態でケースの内部に位置するフランジ状の鍔部61が一体に形成されている。この鍔部61はケース本体2の内周面に当接し、したがって、ブッシュ6を外側に引っ張るとこの鍔部61がケース本体2の内周面に引っ掛かる。なお、31は蓋体3に取り付けられているスイッチ用の基板である。
【0019】
また、コード6の先端にはワッシャ状の環状部材72と、コード5の表面に食い込んで固定されている固定部材71とが装着されている。したがって、コード5を引き抜こうとすると、固定部材71が環状部材72に引っ掛かる。環状部材72はケース本体2の内周面と環状部材72とで鍔部61を挟むことのできる大きさに形成されており、そのため、コードに作用する引き抜き方向の外力が大きいほど、環状部材72によって鍔部61を挟む力が大きくなる。このためブッシュ6は鍔部61で押さえられることになり、連通孔21から抜け出ることがない。
【0020】
また、環状部材72は鍔部61を介してケース本体2の内周面に対峙することになるので、連通孔21から環状部材72が引き出されるおそれはない。したがって、コード5に引き抜き方向の大きな外力が作用しても、コード5が引き抜かれることがなく、かつブッシュ6が連通孔21から外側に外れることもない。
【0021】
上記実施の形態では、固定部材71と環状部材72との2個の部材を使用したが、こららを1個の部材で構成してもよい。例えば、図4(a)に示すように、ワッシャ状の抜け止め部材8の中央開口部の周囲に逆止用の爪部81を形成してもよい。この抜け止め部材8をコード5に装着すると、爪部81がコード5の表面に食い込んで、コード5が抜け止め部材8から外れることが防止される。なお、この抜け止め部材8の直径寸法は上記環状部材72の直径寸法と同じである。
【0022】
次に、図4(b)に示すような形状の抜け止め部材9でもよい。この抜け止め部材9は環状の基部91を備えており、この基部91の直径方向にそって折り曲げ用の溝92が形成されている。また、基部91には溝92を挟んで対峙する1対の把持部93が形成されている。この把持部93には各々食い付き用の歯部94が形成されている。基部91を溝92に沿って曲げると歯部94の距離が拡がり、両歯部94の間にコード5を挿通する。その後に基部91を平坦に戻せば歯部94がコード5に食い込む。なお、基部91の直径寸法は上記環状部材72の直径寸法と同じであり、コード5に引き抜き方向の外力が作用すると、基部91は溝92に沿って反対側に曲げられ、歯部94はさらにコード5に食い込むことになる。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】浴室用テレビの分解図
【図3】ブッシュ周りを示す断面図
【図4】他の実施の形態を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 浴室用テレビ
2 ケース本体
3 蓋体
5 コード
6 ブッシュ
8 抜け止め部材
9 抜け止め部材
61 鍔部
71 固定部材
72 環状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と蓋体とが着脱不能に溶着され密閉されたケース内に電子部品を収納し、ケース本体の底部に形成した連通孔に、この電子部品に連結されたコードを通した浴室用電子機器の防水構造であって、連通孔に装着される略筒状のゴム製のブッシュを備え、このブッシュのケース内側の端部に、ケース本体の内面に当接するフランジ状の鍔部を形成すると共に、コードをブッシュに挿通した状態で、コードがブッシュから抜け出ることを防止する抜け止め部材をコードの先端側に係合させ、かつコードに引き抜き方向の外力が作用した際に、上記抜け止め部材とケース本体の内面とで上記鍔部を挟むようにしたことを特徴とする浴室用電子機器の防水構造。
【請求項2】
上記抜け止め部材を、コードが挿通される環状部材と、この環状部材より先端側でコードに固定される固定部材とで構成し、この環状部材とケース本体の内面とで上記鍔部を挟むようにしたことを特徴とする請求項1に記載の浴室用電子機器の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−158096(P2006−158096A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345080(P2004−345080)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】