説明

浴槽循環流路切替装置、およびこれを用いた風呂給湯システム

【課題】浴槽が空の場合に、風呂循環回路内の残留水だけで循環が成立しないようにした浴槽循環流路切替装置を提供する。
【解決手段】熱源機3から浴槽2に至る往き流路39と、浴槽2から熱源機3に至る戻り流路40と、往き流路39と戻り流路40を短絡するバイパス流路41と、流通する湯水の温度が高い場合にバイパス流路41側を閉塞して往き流路39の熱源機3側と浴槽2側とを連通し、かつ流通する湯水の温度が低い場合に往き流路39の浴槽2側を閉塞してバイパス流路41側と往き流路39の熱源機3側とを連通する感温切替弁42とを備えたものにおいて、戻り流路40途中に気水分離部43を設け、戻り流路40の熱源機3側を気水分離部43の上部に接続し、戻り流路40の浴槽2側を気水分離部43の戻り流路40の熱源機3側の接続高さより所定の高低差を有した下部に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽水を加熱する風呂熱交換器と浴槽とを接続する風呂循環回路内に残留する冷水の浴槽への吐出を防止する浴槽循環流路切替装置、およびこれを用いた風呂給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽の側壁に取り付けられた浴槽用循環具と給湯機とを風呂循環回路で接続し、浴槽内の湯水を風呂給湯機で循環加熱するようにしたものにおいて、風呂循環回路の浴槽近傍に循環する湯水の温度が低い場合に浴槽用循環具をバイパスさせるワックスサーモ式のバイパス弁機構を設け、例えば、冬季等の風呂循環回路の凍結を防止するために浴槽内の湯水を風呂給湯機に循環させて凍結を防止する際に、浴槽と風呂給湯機とを接続する風呂循環回路を循環する湯水の温度が低い場合は、浴槽の近傍で浴槽用循環具をバイパスして循環することで、浴槽内の湯水の温度を低下させずに風呂循環回路の凍結を防止するようにし、さらに、風呂追焚き運転開始時の低温の湯水はバイパスさせ、風呂給湯機で加熱された高温の湯水だけを浴槽内に吐出するようにしたものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−1950号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこの従来のものでは、浴槽が空でかつ風呂循環回路内に低温の残留水がある状態で風呂給湯機の風呂循環ポンプを駆動すると、バイパス弁機構が浴槽側を閉じてバイパス側を開いた状態となり、風呂給湯機への戻り流路へ流入した残留水が再度風呂給湯機側へ引き込まれて残留水による循環が成立してしまう。
【0005】
一般に、風呂給湯機においては、風呂循環回路内で湯水を循環できていることを検知すると、浴槽内に湯水があると判別するようにしているため、浴槽が空なのに風呂循環回路内の残留水で循環が成立してしまうと、浴槽が空なことを風呂給湯機が認識することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、浴浴槽水を加熱する熱源機から浴槽に至る往き流路と、前記浴槽から前記熱源機に至る戻り流路と、前記往き流路と前記戻り流路を短絡するバイパス流路と、流通する湯水の温度が高い場合に前記バイパス流路側を閉塞して前記往き流路の熱源機側と浴槽側とを連通し、かつ流通する湯水の温度が低い場合に前記往き流路の浴槽側を閉塞して前記バイパス流路側と前記往き流路の熱源機側と連通する感温切替弁とを備えたものにおいて、前記戻り流路途中に気水分離部を設け、前記戻り流路の熱源機側を前記気水分離部の上部に接続し、前記戻り流路の浴槽側を前記気水分離部の前記戻り流路の熱源機側の接続高さより所定の高低差を有した下部に接続した。
【0007】
また、請求項2では、前記バイパス流路の戻り流路側の端部を前記気水分離部または前記戻り流路の前記気水分離部よりも浴槽側に接続した。
【0008】
また、請求項3では、前記感温切替弁は、流通する湯水の温度に応じて伸縮する感温変形部材と、この感温変形部材によって移動される弁体と、この弁体を前記感温変形部材とは逆方向に付勢するバイアスバネとを有しているものとした。
【0009】
また、請求項4では、前記浴槽循環流路切替装置は、浴槽内に吐出する吐出口と浴槽内の水を吸い込む吸い込み口とを有して浴槽壁面に取り付けられる浴槽循環口と熱源機との間かつ浴槽循環口の近傍に設けらるものとした。
【0010】
また、請求項5では、前記熱源機として、浴槽水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを浴槽水が循環可能に接続する風呂循環回路と、前記風呂循環回路途中に設けられた風呂循環ポンプと、前記風呂循環回路内を湯水が循環しているか否かを検出する流水センサとを備え、前記風呂循環ポンプを駆動した後に前記流水センサが湯水の循環を判別することで前記浴槽内に湯水があるか否かを判別するようにした風呂給湯機を用い、前記浴槽循環口と前記風呂給湯機との間かつ前記浴槽循環口近傍に前記請求項4記載の浴槽循環流路切替装置を設けた風呂給湯システムとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浴槽が空の状態で風呂循環回路内の低温の残留水が浴槽循環流路切替装置の往き流路から流入すると、感温切替弁が往き流路の浴槽側を閉塞してバイパス流路側を連通し、湯水は立ち上げ流路部に流入する。立ち上げ流路部に流入した湯水は戻り流路を介して浴槽に排出されると同時に戻り流路の浴槽側から空気が流入し、立ち上げ流路部を介して戻り流路の熱源機側には空気が流入することとなる。そのため、浴槽が空の状態では、風呂循環回路内の残留水だけで循環が成立することがなくなる。
【0012】
また、風呂給湯機では、浴槽が空なことを確実に認識することができ、誤検知による不具合の発生を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の風呂給湯システムの概略構成図
【図2】湯張り運転時の作動を説明するフローチャート
【図3】浴槽が空の場合の空判定時の状況を説明するための図
【図4】湯張り運転初期の状況を説明するための図
【図5】湯張り運転時の状況を説明するための図
【図6】浴槽に湯水がある場合の残湯判定時の状況を説明するための図
【図7】風呂追焚き運転時の作動を説明するフローチャート
【図8】追焚き運転初期の状況を説明するための図
【図9】追焚き運転時の状況を説明するための図
【図10】凍結防止運転の作動を説明するフローチャート
【図11】浴槽循環流路切替装置の別の実施形態の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態の風呂給湯システムを図面に基づいて説明する。
1は浴室、2は浴槽、3は浴室1外に設置された風呂給湯機、4は浴室1内に設けられた風呂給湯機3のリモコン、5はカランである。
【0015】
6は浴槽2の壁面に設けられ浴槽2に吐出する吐出口6aと浴槽2内の湯水を吸い込む吸込口6bを有した浴槽循環口、7は風呂給湯機3と浴槽循環口6とを接続する風呂循環回路、8は風呂循環回路7途中に介設され浴室1内の浴槽2裏側空間の浴槽循環口6近傍に配置され、風呂循環回路7から浴槽2への冷水の吐出を防止するための浴槽循環流路切替装置である。
【0016】
<風呂給湯機>
風呂給湯機3について説明すると、9は湯水を貯湯する貯湯タンク、10は貯湯タンク9内の湯水を加熱するヒータ、11は貯湯タンク9底部に市水を供給する給水管、12は貯湯タンク9頂部から出湯する出湯管、13は給水管11から分岐された給水バイパス管、14は出湯管12からの湯と給水バイパス管13からの水とを給湯設定温度に混合する給湯混合弁、15は給湯混合弁14で混合された湯水をカラン5へ導く給湯管、16は給湯混合弁14で混合された湯水の温度を検出する給湯温度センサ、17は給湯量を検出する給湯流量カウンタ、18は給水温度を検出する給水温度センサ、19は貯湯タンク9内の貯湯温度を検出する貯湯温度センサである。
【0017】
20は貯湯タンク9内上部に配置されて浴槽水を加熱する風呂熱交換器、21は風呂循環回路7を構成し風呂熱交換器20で加熱された湯水を浴槽2へ供給する往き管、22は風呂循環回路7を構成し浴槽2の湯水を風呂熱交換器20へ戻す戻り管、23は戻り管22に設けられた風呂循環ポンプ、24は戻り管22に設けられ循環する浴槽水の温度を検出する風呂温度センサ、25は戻り管22に設けられ浴槽水が循環しているか否かを検出する流水センサ、26は往き管21と戻り管22とを風呂熱交換器20を迂回するようにバイパスする風呂バイパス管、27は戻り管22からの湯水を風呂熱交換器20に流通させるか、風呂熱交換器20を迂回して往き管21にバイパスさせるかを切り替える風呂三方弁である。
【0018】
28は給湯管15から分岐されて風呂循環回路7へ接続された湯張り管、29は湯張り管28を開閉する湯張り弁、30は湯張り管28から湯張りされる湯水の量をカウントする風呂流量カウンタ、31は浴槽2側からの湯水の逆流を防止する逆止弁である。
【0019】
リモコン4には、給湯設定温度、風呂設定温度、湯張り量等の必要な表示を行うための表示部32と、給湯設定温度および風呂設定温度を設定する温度設定スイッチ33と、湯張り量を設定するための湯量設定スイッチ34と、浴槽2への設定湯張り量の湯張り運転の開始を指示する湯張りスイッチ35と、浴槽水を風呂設定温度以上に加熱させる風呂追焚き運転の開始を指示する追焚きスイッチ37とが備えられている。
【0020】
38は、給湯温度センサ16、給湯流量カウンタ17、給水温度センサ18、貯湯温度センサ19、風呂温度センサ24、流水センサ25、風呂流量カウンタ30の検出値が入力され、ヒータ10、給湯混合弁14、風呂循環ポンプ20、風呂三方弁27、湯張り弁29の作動を制御すると共に、リモコン4と通信可能に接続された制御部である。この制御部38は、演算、比較、記憶機能、時計機能を有し、風呂給湯機3の作動を制御するためのプログラムが予め記憶され、給湯流量カウンタ17による給湯検知によってリモコン4で指示された給湯設定温度の給湯運転を行うと共に、リモコン4の湯張りスイッチ35の操作に応じて湯張り運転を行い、追焚きスイッチ37の操作に応じて風呂追焚き運転を行うものである。
【0021】
<浴槽循環流路切替装置>
次に、浴槽循環流路切替装置8について説明すると、39は往き管21と接続される往き流路、40は戻り管22と接続される戻り流路、41は往き流路39と戻り流路40とを短絡するバイパス流路、42は往き流路39とバイパス流路41との分岐点に設けられ、流通する湯水の温度が高い場合にバイパス流路41側を閉塞しかつ前記往き流路39の浴槽2側を開放すると共に、流通する湯水の温度が低い場合にバイパス流路41側を開放しかつ往き流路39の浴槽2側を閉塞する感温切替弁、43は戻り流路40途中に設けられた気水分離部としての立ち上げ流路部である。
【0022】
感温切替弁42は、流通する湯水の温度に応じて伸縮する感温変形部材44と、この感温変形部材44によって移動される弁体45と、この弁体45を感温変形部材44とは逆方向に付勢するバイアスバネ46とがケーシング47内に設けられ、このケーシング47には往き流路39の風呂給湯機3側からの湯水を感温変形部材44側に流通させる入口48と、流通する湯水の温度が低い場合に弁体45によって閉塞される浴槽側出口49と、流通する湯水の温度が高い場合に弁体45によって閉塞されるバイパス側出口50とが開口されている。
【0023】
ここで、感温変形部材44は、温度が高い場合に伸張し、温度が低い場合に収縮する形状記憶合金圧縮コイルバネより構成され、この形状記憶合金圧縮コイルバネとバイアスバネ46の力関係によって弁体45が移動されるもので、感温変形部材44が伸びた際に弁体45が位置する部位にバイパス側出口50が開口され、感温変形部材44が縮んだ際に弁体45が位置する部位に浴槽側出口49が開口されている。
【0024】
なお、この形状記憶合金圧縮コイルバネは、浴槽2内に流入させても低温感の少ない温度で、かつ、浴槽2の湯水をユーザーが任意に設定可能な風呂設定温度より低い温度(例えば30℃)以上を形状回復温度として設計されているもので、形状回復温度以下の雰囲気下では、形状記憶合金圧縮コイルバネのバネ力はバイアスバネ46のバネ力よりも弱く、バイアスバネ46に押されて圧縮し、形状回復温度以上の雰囲気下では、形状記憶合金圧縮コイルバネのバネ力はバイアスバネ46のバネ力よりも強く、バイアスバネ46に抗して伸張する。そして、本明細書中の低温とは、形状回復温度以下の温度を示し、高温とは形状回復温度以上の温度を示すものである。
【0025】
立ち上げ流路部43は、その上端には戻り流路40の風呂給湯機3側が接続され、立ち上げ流路部43の戻り流路40が接続された高さ位置よりも下方に所定の高低差を有して戻り流路40の浴槽2側が接続され、立ち上げ流路部43の下端にバイパス流路41が接続されているおり、戻り流路40の立ち上げ流路部43から浴槽2側は、立ち上げ流路部43との接続点の高さ最高点として浴槽2へ向けて少なくとも水平、好ましくは下り勾配とされているものである。
【0026】
そして、往き流路39の浴槽2側は浴槽循環口6の吐出口6aに接続され、戻り流路40の浴槽2側は浴槽循環口6の吸込口6bに接続されている。
【0027】
<給湯運転>
次に、この風呂給湯システムの作動について、給湯運転から説明する。
カラン5が開かれて給湯流量カウンタ17が所定の流量以上の流量を検出して給湯検知すると、制御部38は、給湯温度センサ16で検出する温度がリモコン4で予め設定していた給湯設定温度に一致するように給湯混合弁14の開度をフィードバック制御し、カラン5が閉じられて給湯流量カウンタ17が所定の流量未満を検出すると、給湯運転を終了する。
【0028】
<湯張り運転>
湯張り運転について図2のフローチャートに基づいて説明すると、浴槽2が空の状態で、リモコン4の湯張りスイッチ35がオン操作されると(ステップS1でYes)、制御部38は、風呂三方弁27をバイパス側に切り替え(ステップS2)、給湯混合弁14を水側に開いた状態で湯張り弁29を開いて風呂流量カウンタ30が所定量をカウントしたら湯張り弁29を閉じて風呂循環ポンプ23へ呼び水を行い(ステップS3)、その後に、風呂循環ポンプ23を駆動開始する(ステップS4)。
【0029】
このとき、図3に示すように、風呂循環ポンプ23の駆動によって、往き管21内および戻り管22内の低温の残留水および呼び水動作によって供給された水が往き管21から浴槽循環流路切替装置8の往き流路39へ流入する。感温切替弁42に流入した水が低温のため感温変形部材44を縮ませ、弁体45が浴槽側出口49を閉塞し、バイパス側出口50が開放され、往き流路39からの水はバイパス流路41を流通し、立ち上げ流路部43へ流入する。立ち上げ流路部43に流入した水は、戻り流路40の浴槽2側から浴槽循環口6の吸込口6bを介して浴槽2内に排出されると同時に、浴槽循環口6の吸込口6bから吸い込まれた空気が戻り流路40の浴槽2側から逆流して立ち上げ流路部43に流れ込み、立ち上げ流路部43の上部に接続された戻り流路40の風呂給湯機3側へ吸い込まれていく。
【0030】
ここで、立ち上げ流路部43において所定の高低差を有して上部に戻り流路40の風呂給湯機3側が、下部に戻り流路40の浴槽2側が接続されているため、バイパス流路41から立ち上げ流路部43へ流入した湯水と戻り流路40の浴槽2側から吸い込まれた空気とが十分に分離され、空気のみが戻り流路40の風呂給湯機3側へ流れることとなる。
【0031】
そして、制御部38は、風呂循環ポンプ23を駆動開始してから流水センサ25が所定時間継続して流水を検知するかどうかを判断し(図2のステップS5)、この時、戻り管22からは空気が戻ってくるため、流水センサ25は流水を検知できずにステップS5でNoとなって浴槽2の空判定を行い、制御部38は、風呂循環ポンプ23を駆動停止して(ステップS6)、湯張り弁29を開弁し(ステップS7)、給湯温度センサ16で検出する温度がリモコン4で設定されている風呂設定温度に一致するように給湯混合弁14の開度をフィードバック制御する。
【0032】
このとき、湯張り管28から流入した湯水は往き管21および戻り管22を介して浴槽循環流路切替装置8へ流入し、戻り流路40から流入した湯水は、立ち上げ流路部43を通過して戻り流路40の浴槽2側を流れ、浴槽循環口6の吸込口6bから浴槽2内へ湯張りされると同時に、往き流路39から感温切替弁42に流入した湯水が冷えている場合は、図4に示すように、感温切替弁42が浴槽側出口49を閉塞してバイパス側出口50を開放するので、往き流路39から感温切替弁42に流入した湯水はバイパス流路41と戻り流路40の浴槽2側から流出し、浴槽循環口6の吸込口6bから浴槽2内へ流出する。
【0033】
そして、給湯混合弁14で風呂設定温度に調整された湯が往き管21および戻り管22を介して浴槽循環流路切替装置8へ流入するようになると、図5に示すように、感温切替弁42はバイパス側出口50を閉塞して浴槽側出口49を開放した状態に切り替わるので、往き流路39から感温切替弁42に流入した湯水は、往き流路39の浴槽2側から流出し、浴槽循環口6の吐出口6aから浴槽2内へ流出し、往き管21と戻り管22の両経路を利用した両搬送湯張りを行うことができる。
【0034】
図2の前記ステップS7で湯張り弁29を開弁してから風呂流量カウンタ30が積算した流量が設定湯張り量に到達すると(ステップS8でYes)、制御部38は、湯張り弁29を閉弁して(ステップS9)、湯張り運転を終了する(ステップS10)。
【0035】
一方、浴槽2内に浴槽循環口6が水没する量以上の残湯がある状態で湯張りスイッチ35がオン操作された場合は、図6に示すように、戻り流路40も水没状態となっているため、感温切替弁42が往き流路39の浴槽2側を閉塞していても循環が成立し、制御部38は、図2の前記ステップS5で流水センサ25が流水を所定時間継続したことを検知し、浴槽2内に残湯があると判断して、風呂循環ポンプ23の駆動を停止し(ステップS11)、湯張り運転を中止する(ステップS12)。
【0036】
このように、浴槽2が空の状態で風呂循環回路7内の低温の残留水が浴槽循環流路切替装置8の往き流路39から流入すると、感温切替弁42が往き流路39の浴槽2側を閉塞してバイパス流路41側を連通し、湯水は立ち上げ流路部43に流入する。立ち上げ流路部43に流入した湯水は戻り流路40を介して浴槽2に排出されると同時に戻り流路40の浴槽2側から空気が流入し、立ち上げ流路部43を介して戻り流路40の風呂給湯機3側には空気が流入することとなる。そのため、浴槽2が空の状態では、風呂循環回路7内の残留水だけで循環が成立することがなくなり、風呂給湯機3では、浴槽2が空なことを確実に認識することができ、誤検知による不具合の発生を防止できるものである。
【0037】
<風呂追焚き運転>
次に、風呂追焚き運転について図7のフローチャートに基づいて説明すると、浴槽2内に浴槽循環口6が水没する量以上の残湯がある状態で追焚きスイッチ37がオン操作されると(ステップS21でYes)、制御部38は、風呂三方弁27を風呂熱交換器20側に切り替え(ステップS22)、風呂循環ポンプ23を駆動開始する(ステップS23)。
【0038】
このとき、図8に示すように、風呂循環ポンプ23の駆動によって往き管21内の低温の残留水が浴槽循環流路切替装置8の往き流路39へ流入する。感温切替弁42に流入した水が低温のため感温変形部材44を縮ませ、弁体45が浴槽側出口49を閉塞し、バイパス側出口50が開放され、往き流路39からの水はバイパス流路41を流通して立ち上げ流路部43へ流入し、立ち上げ流路部43の上部から戻り流路40の風呂給湯機3側を流れて循環する。
【0039】
そして、風呂熱交換器20で加熱された湯水が循環してきて浴槽循環流路切替装置8の感温切替弁42に流入すると、図9に示すように、感温変形部材44が伸びて弁体45が浴槽側出口49を開放すると共に、バイパス側出口49を閉塞し、往き流路39からの湯水は浴槽側出口49から往き流路39の浴槽2側を介して浴槽循環口6の吐出口6aから浴槽2内に流出すると同時に、浴槽循環口6の吸込口6bから吸い込まれた浴槽水が戻り流路40を流れて循環する。
【0040】
この感温切替弁42の流路切替の動作と同時にまたは前後して、流水センサ25が所定時間以上継続して流水を検知すると(図7のステップS24でYes)、風呂追焚き運転が継続され、風呂温度センサ24で検出する浴槽水の温度が風呂設定温度より高い温度(ここでは、風呂設定温度+1℃)に達すると(ステップS25でYes)、風呂循環ポンプ23の駆動を停止し(ステップS26)、風呂三方弁27をバイパス側に戻して(ステップS27)、風呂追焚き運転を終了する(ステップS28)。
【0041】
このように、風呂追焚き運転の開始初期において、往き管21に残留する低温の残留水は浴槽2内に流出しないので、浴槽水温度を低下してしまうことがないと共に、風呂追焚き運転によって熱い湯の供給を期待している入浴者に不快感を与えることを防止することができる。
【0042】
一方、浴槽2が空の状態で追焚きスイッチ37がオン操作された場合は、風呂追焚き運転開始初期は往き管21内の低温の残留水が浴槽循環流路切替装置8の感温切替弁42に流入し、浴槽側出口49を閉塞、バイパス側出口50が開放された状態となるが、図3と同じように、立ち上げ流路部43に流入した水は、戻り流路40の浴槽2側から浴槽循環口6の吸込口6bを介して浴槽2内に排出されると同時に、浴槽循環口6の吸込口6bから吸い込まれた空気が戻り流路40の浴槽2側から逆流して立ち上げ流路部43に流れ込み、立ち上げ流路部43の上部に接続された戻り流路40の風呂給湯機3側へ吸い込まれる。
【0043】
そして、立ち上げ流路部43において所定の高低差を有して上部に戻り流路40の風呂給湯機3側が、下部に戻り流路40の浴槽2側が接続されているため、バイパス流路41から立ち上げ流路部43へ流入した湯水と戻り流路40の浴槽2側から吸い込まれた空気とが十分に分離され、空気のみが戻り流路40の風呂給湯機3側へ流れることとなる。
【0044】
そして、風呂熱交換器20で加熱された湯水が循環してきて浴槽循環流路切替装置8の感温切替弁42に流入すると、感温変形部材44が伸びて弁体45が浴槽側出口49を開放すると共に、バイパス側出口49を閉塞し、往き流路39からの湯水は浴槽側出口49から往き流路39の浴槽2側を介して浴槽循環口6の吐出口6aから浴槽2内に流出すると同時に、浴槽循環口6の吸込口6bから空気が吸い込まれ、循環が成立しない。
【0045】
よって、流水センサ25が所定時間以上継続して流水を検知することができず、図7のステップS24でNoとなり、制御部38は、風呂循環ポンプ23の駆動を停止し(ステップS29)、風呂三方弁27をバイパス側に戻し(ステップS30)、風呂追焚き運転を中止する(ステップS31)。
【0046】
このように、風呂追焚き運転においても、浴槽2が空の状態であることを確実に判別することができ、無駄な運転を継続してしまうことがなく、誤検知による不具合の発生を防止することができる。
【0047】
<凍結防止運転>
次に、冬季等において、風呂給湯機3内の往き管21、戻り管22、および風呂給湯機3と浴槽循環流路切替装置8とを接続する往き管21、戻り管22の凍結を防止するための凍結防止運転について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
先ず風呂温度センサ24または給水温度センサ18が予め定められた凍結防止開始温度以下を検出すると(ステップS41でYes)、制御部38は、風呂三方弁27をバイパス側に切り替え(ステップS42)、風呂循環ポンプ23の駆動を開始する(ステップS43)。
【0049】
このとき、浴槽2内に湯水がある状況では、図6に示すように、風呂循環ポンプ23の駆動によって往き管21内の低温の残留水が浴槽循環流路切替装置8の往き流路39へ流入する。感温切替弁42に流入した水が低温のため感温変形部材44を縮ませ、弁体45が浴槽側出口49を閉塞し、バイパス側出口50を開放し、往き流路39からの水はバイパス流路41を流通して立ち上げ流路部43へ流入し、立ち上げ流路部43の上部から戻り流路40の風呂給湯機3側を流れて循環する。
【0050】
そして制御部38は、流水センサ25が所定時間以上継続して流水を検知すると(図7のステップS44でYes)、風呂循環ポンプ23の駆動を継続して湯水の循環による配管内の湯水の凍結防止を行い、風呂循環ポンプ23を駆動開始してからの時間が予め定められたポンプオン時間(ここでは10分間)以上となると(ステップS45でYes)、一旦風呂循環ポンプ23の駆動を停止する(ステップS46)。
【0051】
風呂循環ポンプ23を駆動停止してからの時間が予め定められたポンプオフ時間(ここでは20分間)以上となると(ステップS47でYes)、風呂温度センサ24または給水温度センサ18が凍結防止開始温度より高い予め定められた凍結防止終了温度以上を検出しているかどうかを判断し(ステップS48)、凍結防止終了温度以下であると前記ステップS43に戻り、再度風呂循環ポンプ23を駆動して凍結防止運転を継続する一方、凍結防止終了温度以上を検出している場合は(ステップS48でYes)、一旦凍結防止運転を中断して前記ステップS41に戻り、凍結防止運転の開始を待機するようにしている。
【0052】
一方、浴槽水が排水されて浴槽2内に湯水がない状況または凍結防止運転を開始した後に浴槽水が排水されて浴槽2内に湯水がなくなった状況においては、往き管21内の低温の残留水が浴槽循環流路切替装置8の感温切替弁42に流入し、浴槽側出口49を閉塞、バイパス側出口50が開放された状態となるが、図3と同じように、立ち上げ流路部43に流入した水は、戻り流路40の浴槽2側から浴槽循環口6の吸込口6bを介して浴槽2内に排出されると同時に、浴槽循環口6の吸込口6bから吸い込まれた空気が戻り流路40の浴槽2側から逆流して立ち上げ流路部43に流れ込み、立ち上げ流路部43の上部に接続された戻り流路40の風呂給湯機3側へ吸い込まれ、循環が成立しない。
【0053】
そのため、図10のステップS44にて流水センサ25が所定時間継続してオン状態となることがないためステップS44でNoとなり、制御部38は風呂循環ポンプ23を駆動停止して(ステップS49)、無駄な風呂循環ポンプ23の駆動を中止して、ポンプオフ時間経過後にステップS47へ進み、再度ステップS48からステップS41またはステップS43へ進んで、風呂循環ポンプ23内に残留する湯水の凍結を防止するようにしている。
【0054】
このように、凍結防止運転においても、浴槽2が空の状態であることを確実に判別することができ、無駄な運転を継続してしまうことがなく、誤検知による不具合の発生を防止することができる。
【0055】
以上のように、本発明の浴槽循環流路切替装置8は、浴槽2内に湯水がある状態では循環時に低温の湯水を浴槽2内に排出することを防止することができると共に、浴槽2内が空の状態では往き流路39から流入してきた湯水を浴槽2内に排出することができるため、浴槽2内が空の状態で風呂給湯機3と浴槽2との間で湯水が循環してしまうことがないものである。
【0056】
また、このような浴槽循環流路切替装置8を、風呂循環ポンプ23を駆動した後に前記流水センサ25が湯水の循環を判別することで浴槽2内に湯水があるか否かを判別するようにした風呂給湯機3と共に用いることによって、風呂給湯機3での浴槽2内の残湯の有無の判別が正確となって、浴槽2内が空であるのに湯水があると誤認した場合の風呂給湯機3の誤動作を防止できるものである。
【0057】
なお、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、例えば、浴槽循環流路切替装置8に内蔵される感温切替弁42の感温変形部材44として、形状回復温度より温度が高い場合に収縮し、形状回復温度より温度が低い場合に伸張する形状記憶合金引張コイルバネや、形状回復温度相当の温度より温度が高い場合に膨張し、形状回復温度相当の温度より温度が低い場合に収縮するワックスサーモエレメント等を用いてもよい。
【0058】
また、浴槽循環流路切替装置8は、戻り流路40途中に気水分離部として作用する立ち上げ流路部43を設けた構成であればよく、図11に示すように、往き流路39と戻り流路40の上下を入れ替えた構成でもよいもので、さらに、バイパス流路41は戻り流路40の立ち上げ流路部43よりも浴槽2側に接続してもよい。ここで、バイパス流路41は、少なくとも立ち上げ流路部43の上端から浴槽2側に接続することで、風呂給湯機3側への流れを気水分離できるものである。
【0059】
また、熱源機としての風呂給湯装置3として、貯湯タンク9内にヒータ10を設けた構成としたが、これに限らず、貯湯タンク9外にヒートポンプ式の加熱装置を設け、貯湯タンク9内の湯水を循環加熱する構成としたり、風呂熱交換器20を貯湯タンク9外に配置して、貯湯タンク9内の湯水を風呂熱交換器の一次側に循環させる構成としたり、給水や浴槽水をガスバーナや石油バーナで加熱する瞬間式熱交換器(風呂熱交換器)を有した構成としたものでもよい。
【0060】
また、流水センサ25は、風呂循環回路7内を湯水が循環しているかどうかを判別できればよいものであり、所定量以上の流れがあるとスイッチがオンする流水スイッチや、流れの量自体を検出する流量カウンタ等、種々の公知のもので構成することができる。
【0061】
また、本実施形態では、凍結防止開始温度および凍結防止終了温度を給水温度センサ18または風呂温度センサ24にて検出するようにしているが、これに限らず、外気温度を検出する外気温度センサや、風呂給湯機3内の雰囲気温度を検出する機内温度センサを設け、これらによって凍結防止開始温度および凍結防止終了温度を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
2 浴槽
3 風呂給湯機
6 浴槽循環口
6a 吐出口
6b 吸込口
7 風呂循環回路
8 浴槽循環流路切替装置
20 風呂熱交換器
21 往き管
22 戻り管
23 風呂循環ポンプ
25 流水センサ
26 風呂バイパス管
39 往き流路
40 戻り流路
41 バイパス流路
42 感温切替弁
43 立ち上げ流路部(気水分離部)
44 感温変形部材
45 弁体
46 バイアスバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽水を加熱する熱源機から浴槽に至る往き流路と、前記浴槽から前記熱源機に至る戻り流路と、前記往き流路と前記戻り流路を短絡するバイパス流路と、流通する湯水の温度が高い場合に前記バイパス流路側を閉塞して前記往き流路の熱源機側と浴槽側とを連通し、かつ流通する湯水の温度が低い場合に前記往き流路の浴槽側を閉塞して前記バイパス流路側と前記往き流路の熱源機側と連通する感温切替弁とを備えたものにおいて、前記戻り流路途中に気水分離部を設け、前記戻り流路の熱源機側を前記気水分離部の上部に接続し、前記戻り流路の浴槽側を前記気水分離部の前記戻り流路の熱源機側の接続高さより所定の高低差を有した下部に接続したことを特徴とする浴槽循環流路切替装置。
【請求項2】
前記バイパス流路の戻り流路側の端部を前記気水分離部または前記戻り流路の前記気水分離部よりも浴槽側に接続したことを特徴とする請求項1記載の浴槽循環流路切替装置。
【請求項3】
前記感温切替弁は、流通する湯水の温度に応じて伸縮する感温変形部材と、この感温変形部材によって移動される弁体と、この弁体を前記感温変形部材とは逆方向に付勢するバイアスバネとを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽循環流路切替装置。
【請求項4】
前記浴槽循環流路切替装置は、浴槽内に吐出する吐出口と浴槽内の水を吸い込む吸い込み口とを有して浴槽壁面に取り付けられる浴槽循環口と熱源機との間かつ浴槽循環口の近傍に設けらることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の浴槽循環流路切替装置。
【請求項5】
前記熱源機として、浴槽水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを浴槽水が循環可能に接続する風呂循環回路と、前記風呂循環回路途中に設けられた風呂循環ポンプと、前記風呂循環回路内を湯水が循環しているか否かを検出する流水センサとを備え、前記風呂循環ポンプを駆動した後に前記流水センサが湯水の循環を判別することで前記浴槽内に湯水があるか否かを判別するようにした風呂給湯機を用い、前記浴槽循環口と前記風呂給湯機との間かつ前記浴槽循環口近傍に前記請求項4記載の浴槽循環流路切替装置を設けたことを特徴とする風呂給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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