説明

浴槽

【課題】 炭の遠赤外線効果を浴槽に活用することで、手間や費用をかけることなく、また、面倒な配設作業を必要とすることなく、人体に害をおよぼすことなく、安全に温熱効果を向上させて、体の芯から暖まり、湯冷めしにくい快適な入浴を行うことができる浴槽を提供する。
【解決手段】 遠赤外線を発するように炭を浴槽本体に担持させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人体に害をおよぼすことなく、安全に温熱効果を向上させて、体の芯から暖まり、湯冷めしにくい快適な入浴を行うことができる浴槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチックス製の浴槽は、熱可塑性樹脂板(たとえば、アクリル樹脂板)を、成形型を用いて、真空成形法や圧空成形法、あるいは真空圧空成形法で成形して得られるもの(FRA浴槽)、あるいは、所定の注型用金型に熱硬化性樹脂組成物を注入し、成形硬化させて得られるもの(注型浴槽)、あるいは、熱硬化性樹脂組成物を各種のガラス繊維やガラスマット、あるいはゲルコートと、混合、含浸、コーティング等により組み合わせ、ハンドレイアップ法やスプレイアップ法で樹脂型等を用いて成形硬化させて得られるもの(FRP浴槽)、あるいは、熱硬化性樹脂組成物と各種のガラス繊維とを混合して組み合わせてシート(Sheet)化してシートモールディングコンパウンド法(Sheet Molding Compound、SMC法)、もしくは、バルク(Bulk)化してバルクモールディングコンパウンド法(Bulk Molding Compound、BMC法)により、高温高圧プレス下で成形硬化させて得られるもの(FRP浴槽)等が知られている。
【0003】
一方、浴槽に入浴時のより一層の快適性を与えるために各種の工夫が図られている。
【0004】
たとえば、表面平滑性をより高めて汚れをつきにくくしたり、付着した汚れを落ちやすくしたりして掃除を容易にして快適性を追求したものなどが知られている。また、浴槽の裏面に発泡性樹脂を吹き付けたり、発泡材を貼り付けたりして断熱性を高め、お湯をさめにくくして、いつでも暖かいお湯に入れる快適性を追求したもの、また、浴槽に腰掛け部や枕部を成形一体化して形状的に入浴の快適性を追求したもの等がある。
【0005】
しかしながら、入浴中の快適性として、体の芯から暖まり、湯冷めしにくいという点を追求したものについては、入浴剤等をお湯に溶かし込むことで実現するタイプはあるが、浴槽自体にその機能(快適性)を付与したものはなかった。また、入浴剤をお湯に溶かす作業は、手間がかかり、日常的になると非常に煩わしく、また、費用もかかるという問題があった。
【0006】
特に、高齢化社会へと移行する中にあって、入浴時の快適性の要求はますます強くなっていく傾向にあり、手間や費用をかけることなく、安全な快適性=人体に害を与えないで安全に、体の芯から暖まり、湯冷めしにくい快適な入浴を行うことができる浴槽の出現が望まれていた。
【0007】
そこで、たとえば、浴槽中の湯水の温度変化に対して抵抗が変化する性質を有する感熱電気抵抗組成物を面状に形成するとともに、電極を具備する自己温度調節型面状発熱素子を備えた遠赤外線放射性の加熱体を浴槽に配設することが提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、この特許文献1のような加熱体を配設した浴槽は、浴槽に一体的に配設されたものではないため、別途配設する必要があり、その配設作業が面倒であるという問題があった。また、電極等を備えていることから電源を必要とし、これは浴槽のように水回りで使用するには安全性にも問題があった。
【特許文献1】特開平9−312194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本願発明は上記のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、手間や費用をかけることなく、また、面倒な配設作業を必要とすることなく、人体に害をおよぼすことなく、安全に温熱効果を向上させて、体の芯から暖まり、湯冷めしにくい快適な入浴を行うことができる、浴槽を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴とする浴槽を提供する。
【0011】
第1には、遠赤外線を発するように炭を浴槽本体に担持させてなることを特徴とする。
【0012】
第2には、上記第1の発明において、炭を、浴槽本体を構成する樹脂中に混入させることによって、浴槽本体に担持させてなることを特徴とする。
【0013】
第3には、上記第1の発明において、炭を、塗料中に混入させて浴槽本体表面に塗布することによって、浴槽本体に担持させてなることを特徴とする。
【0014】
第4には、上記第2の発明において、炭の配合量が、樹脂100重量部に対して10〜20重量部の範囲であることを特徴とする。
【0015】
第5には、上記第3の発明において、炭の配合量が、塗料100重量部に対して10〜20重量部の範囲であることを特徴とする。
【0016】
第6には、上記第1から第5いずれかの発明において、炭は、平均粒径が1〜300μmの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記のとおりの本願第1の発明によれば、炭の遠赤外線効果を浴槽に活用することで、手間や費用をかけることなく、また、面倒な配設作業を必要とすることなく、人体に害をおよぼすことなく、安全に温熱効果を向上させて、体の芯から暖まり、湯冷めしにくい快適な入浴を行うことができる。
【0018】
第2から5の発明によれば、上記第1の発明の効果を、さらに効率よく発揮させることができる。
【0019】
第6の発明によれば、上記第1から5の発明の効果に加え、炭を均一に混入、担持させ、浴槽の性能均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳述する。
【0021】
本願発明の浴槽は、炭の遠赤外線効果を浴槽に活用して、手間や費用をかけることなく、また、面倒な配設作業を必要とせずに、入浴時に人体に害をおよぼさずに安全に、体の芯から暖まり、湯冷めにくいという快適性を発揮する機能を付与させたものである。
【0022】
炭は、吸湿効果、消臭効果、抗菌効果、遠赤外線効果、マイナスイオン効果、紫外線吸収効果などの性質を持つことが確認されているが、本願発明では、浴槽に遠赤外線効果を活用している。
【0023】
すなわち、本願発明の浴槽は、遠赤外線を発するように炭を浴槽本体に担持させてなることを特徴としている。
【0024】
なお、本願発明における炭は、温熱効果を発揮するといわれている遠赤外線(通常、およそ3〜1000μmの波長)を発するものであれば特に制限されないが、たとえば、ウバメガシ、アラカシ、アカマツ、スギ、シラカシ、マテバシイ、クヌギ、コナラ等による木炭、マダケや孟宗竹等による竹炭、また、栗、銀杏、くるみ、松ぼっくり等による花炭、さらには、ヤシ殻や石炭等からなる各種活性炭等、各種のものが使用できる。
【0025】
具体的には、本願発明の浴槽は、炭を浴槽本体を構成する樹脂中に混入させることによって、浴槽本体に担持させてなる浴槽と、炭をアクリルラッカー、アクリルウレタン、ウレタン、塩素化ポリオレフィン等の任意の塗料中に混入させて浴槽本体表面に塗布することによって、浴槽本体に担持させてなる浴槽とがあり、これによって浴槽自身が、炭が有する各種の効果を発揮することとなり、特に温熱効果を発揮することができる。
【0026】
なお、塗料中に炭を混入配合して塗布する方法としては、通常のスプレー法や刷毛塗り法等でよく、特に限定されるものではない。また、塗布する表面を、サンドペーパーやサンドブラスト等の方法で研磨して、下地処理を施してもよい。このような下地処理は、基材(浴槽本体表面)への塗膜の密着性が向上することから好ましい。また、浴槽本体の表面性を上げるため、下塗り、中塗り、上塗り等多層塗布することも好ましい。
【0027】
ここで、炭の配合量(添加量)は、特に限定されるものではなく、製造面や製品の性能面に大きく影響しない範囲であれば、どの配合量でも可能であるが、影響の少ない範囲内で最大の配合量を設定することが好ましい。これは、炭の配合量の多い方が遠赤外線効果による快適効果が大きいからである。具体的な配合量としては、たとえば、樹脂中に混入配合する場合は、樹脂100重量部に対して10〜20重量部の範囲で、また、塗料中に混入配合する場合は、塗料100重量部に対して10〜20重量部の範囲とする。
【0028】
本願発明における炭は、均一に混入、担持させて浴槽の性能均一性を向上させるために、炭の平均粒径は、1〜300μmの範囲とすることがさらに好ましい。塗料に混入する場合、炭の平均粒径を1〜300μmの範囲とすることで、塗布面の均一性、基材(浴槽本体)との密着性を向上させることができる。平均粒径が300μmを超えると、塗布面が不均一になりやすく、基材(浴槽本体)との密着性が低下することがある。また、平均粒径が1μmを下回ると、その取り扱いが困難になることがある。
【0029】
本願発明の浴槽本体を構成する樹脂は、たとえば、熱硬化性樹脂であり、さらに添加物として少なくとも充填剤を配合し、その他の添加物として、たとえば、柄材、補強材、内部離型剤、硬化剤、低収縮剤、増粘剤等を添加することもできる。もしくは、樹脂は、熱可塑性アクリル樹脂を用いてもよい。これらによって、浴槽の強度や成形性を向上させることができる。
【0030】
ここで、この熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の内の少なくともいずれか1種類、または、これら2種類以上の混合物、もしくは、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0031】
不飽和ポリエステル樹脂としては、たとえば、無水マレイン酸のような不飽和二塩基酸および無水フタル酸のような飽和二塩基酸とグリコール類とを縮合反応させて合成され、分子内に不飽和結合とエステル結合を有するものである。通常、これらの樹脂には架橋剤として、スチレンモノマー、アクリルモノマー等が配合されている。もちろん、特にこのような組成に限定されるものではない。
【0032】
ビニルエステル樹脂としては、たとえば、代表的には、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂あるいはノボラック型ビニルエステル樹脂あるいはその両方を混合して用いることができる。ここで、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と酸との付加反応物であって、いずれも両末端のみに反応性不飽和基を有するものである。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型等の各種のものを用いることができる。また通常、このビニルエステル樹脂には架橋剤としてスチレンモノマー、アクリルモノマー等が配合されているものであるが、その組成は、特に限定されるものではない。
【0033】
熱硬化型アクリル樹脂としては、たとえば、メチルメタアクリレートモノマーあるいは、多官能のアクリルモノマー、あるいはプレポリマー、あるいはポリマーのそれぞれ2種以上の混合物で構成されたアクリルシロップと称されるものを用いることができる。その組成は、特に限定されるものではない。
【0034】
不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の2種類以上の混合物とする場合には、樹脂それぞれの特性および充填剤との相互作用あるいは、混入配合する炭との相互作用などにより浴槽としての使用目的に合った最適配合が求められるが、その配合量は特に限定されるものではない。
【0035】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等、特に限定されることなく、その1種または2種以上のいずれも用いることができる。エポキシ樹脂の硬化剤は、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどのアミン系、無水フタル酸、テトラおよびヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水HET酸、ドデセニル無水コハク酸などの酸無水物系、ダイマー酸とポリアミンの縮合体として形成されるポリアミド系などに分類されるが、これらの種類は特に限定されるものではない。
【0036】
しかし、通常、常温〜中温硬化系ではポリアミド系硬化剤を、高温系では硬化反応が緩やかで大型の成形品でも硬化歪みの少ない成形品が得られる酸無水物系硬化剤を選定して用いることが好ましい。
【0037】
以上のような熱硬化性樹脂とともに添加物の一つとして配合される充填剤も、上記同様に従来公知のものをはじめとして各種のものが使用可能であるが、より好ましくは、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウムの内の少なくともいずれか1種類、あるいは2種類以上の混合物として用いることができる。
【0038】
そしてまた、本願発明では樹脂組成物を構成する充填剤は、その平均粒径が1〜100μmの範囲のものを用いることが好適に考慮される。
【0039】
充填剤の粒径は、小さいほど浴槽の耐衝撃強度を向上することができるが、樹脂組成物の粘度を急激に上昇させて浴槽の製造が困難となる傾向になるため、本願発明では望ましくは平均粒径の下限を1μmとする。
【0040】
また一方、充填剤の粒径が大きくなると、樹脂組成物の粘度は低下して浴槽の製造上の問題はなくなるが、浴槽の耐衝撃強度が低下してしまう傾向になる。従って、本願発明では、望ましくは平均粒径の上限を100μmとする。また、充填剤の表面にあらかじめシランカップリング処理を施したものを用いると、その充填剤と樹脂との密着性を向上させることができて浴槽の耐衝撃強度を向上させることができる。
【0041】
このような浴槽の製造方法としては、まず、樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合には、上記のとおり、熱硬化性樹脂に少なくとも充填剤を配合し、これに炭を混入配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を、たとえば、注型成形法、または、シートモールディングコンパウンド法(SMC法)、もしくは、バルクモールディングコンパウンド法(BMC法)によって成形することで、本願発明の浴槽を、効率よく製造することができ、コストダウンと生産効率をあげることができる。
【0042】
ここで、注型成形法は、常温または中温領域で、かつ、常圧下または低圧下の領域で、上記樹脂組成物を注型金型に注入して成形硬化させる方法である。また、SMC法は、上記樹脂組成物をSMC化してプレス金型に設置して、高温高圧下で成形硬化する方法であり、BMC法は、上記樹脂組成物をBMC化して、SMC法と同様にプレス金型に設置して、高温高圧下で成形硬化する方法である。このSMC法とBMC法では、作業性や成形性を優れたものにするために、樹脂中の酸(カルボキシル基)および水酸基を利用して、これと反応する無機または有機の化合物を加えて分子量を増大させる増粘操作が必要である。不飽和ポリエステル樹脂は、分子骨格にあるカルボキシル基を利用して、アルカリ土金属酸化物および水酸化物、すなわち酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カリウム、酸化亜鉛等を適宜に添加配合して増粘操作を行うことができる。
【0043】
ビニルエステル樹脂とエポキシ樹脂は、ビスフ工ノール型の場合、分子骨格の中の水酸基を利用してイソシアネート基によるウレタン増粘法で増粘操作を行うことができる。
【0044】
熱硬化型アクリル樹脂および分子骨格中に水酸基を含まないビニルエステル樹脂、あるいは、エポキシ樹脂は、分子骨格中にカルボキシル基や水酸基をペンダントさせる樹脂の改質を行ったものを用いることができる。もちろん、本願発明は、これら増粘の方法等で特に限定するものではない。
【0045】
また、熱硬化性樹脂を用いる場合として、熱硬化性樹脂に充填剤を加え、さらにガラス繊維やガラスマット、ゲルコート等を配合し、炭を混入配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物をハンドレイアップ成形法、または、スプレーアップ成形法によって成形することでも、本願発明の浴槽を効率よく製造することができる。
【0046】
このハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法は、常温または中温領域で、かつ、常圧下または低圧下で成形硬化させる。
【0047】
さらに、本願発明の浴槽の製造方法において、熱可塑性アクリル樹脂を用いる場合は、この熱可塑性アクリル樹脂に炭を混入配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を真空成形法、または、圧空成形法、もしくは、真空圧空成形法によって成形する。具体的には、たとえば、この樹脂組成物を板状(アクリル樹脂板)に成形して、浴槽成形用の金型を用いて、真空成形法、または、圧空成型法、もしくは、真空圧空成形法によって成形することができる。このアクリル樹脂板は、キャスト板と押出板とに分けられ、また、耐衝撃性、帯電防止性、耐擦傷性、耐燃焼性、耐熱性等が改良された各種グレードの異なるものがあるが、本願発明の浴槽では、これら板の種類を限定するものではなく、適宜にこれら板のそれぞれの製造過程で、炭を混入配合して成形したものであれば使用することができる。
【0048】
また、熱可塑性アクリル樹脂を用いる場合においても、上記のとおりの各種の添加物を適宜に添加することで、より高い強度と高い耐煮沸性能を有した浴槽を、効率よく製造することができ、コストダウンと生産効率をあげることができる。
【0049】
このようにして得られた本願発明の浴槽は、遠赤外線を発する炭の配合によって、手間や費用をかけることなく、また、面倒な配設作業を必要とすることなく、人体に害をおよぼすことなく、安全に温熱効果を向上させて、体の芯から暖まり、湯冷めしにくいという快適な入浴を行うことができるのである。
【0050】
そこで以下、本願発明の浴槽を実施例によって詳述する。もちろん以下の例によって本願発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
浴槽の構成成分である樹脂としてメタクリル酸メチル単量体を用い、これにパウダー化された炭(平均粒径=15μm)を、その単量体100重量部に対して、10重量部添加配合し、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを1.0重量部添加配合して樹脂組成物を得た。
【0052】
この樹脂組成物を注型板製造用で2枚の強化ガラスと軟質ビニルチューブのガスケットからなるセルと呼ばれる型を用い、型の注入口を上にして設置して、注入ロから型内へ流し込んだ。これを70〜80℃に加熱して、重合反応を進行させて、炭パウダー含有のアクリル樹脂板(板厚=5mm)を得た。
【0053】
次に得られたこのアクリル樹脂板を、浴槽成形用の真空成形金型に設定し、真空成形の一連の操作を経て、炭パウダー含有の浴槽(FRA浴槽)を得た。
(実施例2)
熱硬化性樹脂として、ビニルエステル樹脂(昭和高分子(株)製 リポキシR−804)と、不飽和ポリエステル樹脂(武田薬品(株) ポリマール5250)を80/20の配合比で混合し、この混合樹脂100重量部に対し、充填剤として、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製 H−320、平均粒径10μm)を110重量部、同じくシリカ(龍森(株)製 CRYSTALITE M−3K、平均粒径20μm)を10重量部配合した。
【0054】
さらに、パウダー化された炭(平均粒径=20μm)を15重量部、硬化剤(日本油脂(株)製 パーキュアHO)を2.5重量部添加して樹脂組成物を得た。
【0055】
これを20Torrの減圧下で30分間真空脱泡処理し、注型成形用の浴槽金型内に注入して金型温度を80〜100℃に加熱し、重合反応を進行させて硬化させ、炭パウダー含有の浴槽(注型浴槽)を得た。
(実施例3)
熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂(武田薬品(株)製 プロミネートP−311)を用い、この樹脂100重量部に対し、充填剤として、水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製 B−153、平均粒径15μm)を170重量部、炭酸カルシウム(日東粉化(株)製 NS−100、平均粒径2.12μm)を100重量部、パウダー化された炭(平均粒径=12μm)を15重量部添加配合した。
【0056】
これに、低収縮剤(日本油脂(株)製 モデイパーSV10B)を20重畳部、また、増粘剤としてMgOを0.5重量部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛を3重量部、硬化剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエ−ト(日本油脂(株)製 パーブチルZ)を3重量部添加し、補強剤としてガラスロービング(日本電気硝子(株)製 ERS−235)から繊維長13mmにカットしたガラスチョップドストランドを30重量部散布してSMC基材を作成し、40℃で70時間養生してSMCを得た。
【0057】
これを、浴槽金型を設置したプレス成形機にセットし、コア型の温度=130℃、キヤビ型の温度=120℃、成形圧力=100kgf/cm、成形時間=5分の成形条件下で成形し、炭パウダー含有の浴槽(SMC浴槽)を得た。
(実施例4)
熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 ポリライトPB−301)を用い、この樹脂100重量部に対し、充填剤として、水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製 B−153、平均粒径15μm)を100重量部、炭酸カルシウム(日東粉化(株)製 NS−100、平均粒径2.12μm)を100重量部、パウダー化された炭(平均粒径=15μm)を10重量部添加配合した。
【0058】
これに、低収縮剤(日本油脂(株)製 モデイパーM202S)を10重量部、また、増粘剤としてMgOを0.5重量部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛を3重量部、硬化割としてt−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製 パーブチルZ)を3重量部添加し、補強剤としてガラスロービング(日本電気硝子(株)製 ERS−235)から繊維長6mmにカットしたガラスチョップドストランドを18重量部散布してBMC基材を作成し、40℃で55時間養生してBMCを得た。
【0059】
これを、浴槽金型を設置したプレス成形機にセットし、コア型の温度=135℃、キヤビ型の温度=125℃、成形圧力=100kgf/cm、成形時間=5分の成形条件下で成形し、炭パウダー含有の浴槽(BMC浴槽)を得た。
(実施例5)
熱硬化性樹脂として、アクリルシロップ樹脂(日本フエロー(株)製 AC−02)を用い、この樹脂100重量部に対し、充填剤として、シリカ(龍森(株)製 CRYSTALITE M−3K、平均粒径20μm)を100重量部配合した。さらに、パウダー化された炭(平均粒径=18μm)を12重量部、硬化剤(化薬アクゾ(株)製 パーカドックス16)を1.5重量部添加して注型用樹脂組成物を得た。
【0060】
これを20Torrの減圧下で40分間真空脱泡処理し、注型成形用の浴槽金型内に注入して金型温度を50〜100℃に加熱し、重合反応を進行させて成形硬化させ炭パウダー含有の浴槽(注型浴槽)を得た。
(実施例6)
上記の実施例3のパウダー化された炭を添加配合しない配合系を用い、他の条件は同様にして炭パウダーを含有しないSMC浴槽を得た。
【0061】
そして、この浴槽の表面にスプレーガンを用いて、ポリウレタン系塗料(ミクニペイント(株)製 ポリデユール)にパウダー化された炭(平均粒径=15μm)を10重量部添加配合したものを、塗布量膜厚平均100μmで塗布した。
【0062】
こうして、炭パウダー含有の塗布表面を持つ浴槽(塗装SMC浴槽)を得た。
(比較例1〜6)
上記の実施例1〜6について、パウダー化された炭成分を添加しない以外は同−の配合組成及び成形条件で、比較例1〜6の浴槽成形品を得た。
(評価試験)
以上の各実施例および各比較例にて得られた浴槽成形品(実施例1〜6、比較例1〜6:計12台)について、モニター10人(男性5人、女性5人)に実際に同一温度のお湯をはり、入浴してもらった。
【0063】
それぞれに、入浴時の「体の温まり度合い」と入浴後の「暖かさの持続度合い」を評価してもらった結果、モニター全員から実施例1〜6の浴槽の方が比較例1〜6よりも良いとの評価を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外線を発するように炭を浴槽本体に担持させてなることを特徴とする浴槽。
【請求項2】
炭を、浴槽本体を構成する樹脂中に混入させることによって、浴槽本体に担持させてなる請求項1記載の浴槽。
【請求項3】
炭を、塗料中に混入させて浴槽本体表面に塗布することによって、浴槽本体に担持させてなる請求項1記載の浴槽。
【請求項4】
炭の配合量が、樹脂100重量部に対して10〜20重量部の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の浴槽。
【請求項5】
炭の配合量が、塗料100重量部に対して10〜20重量部の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の浴槽。
【請求項6】
炭は、平均粒径が1〜300μmの範囲である請求項1から5いずれかに記載の浴槽。

【公開番号】特開2007−29311(P2007−29311A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215115(P2005−215115)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(505154956)松下電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】