説明

液体ホーニング用噴射ガン

【課題】ガン本体とノズルの接合部がラフな為、ノズル交換の際、芯ズレが起きやすい。
【解決手段】端面中央にスラリー排出口7が形成されているスラリーチャンバー6内に、高圧エア導入管8が、挿入されていると共に、スラリーチャンバー6の軸芯に対して斜めにスラリー供給管路9の末端がスラリーチャンバー6の周壁面に開口しており、更に、円筒状のノズル取付部10が一体的に形成されているガン本体1と;軸芯に沿って、スラリー用管路9が貫通しており、外周面にはスナップリング係止溝が形成されているノズル本体13を、スクリューキャップ状のナット部材14のノズル本体挿通孔19に挿通せしめ、それぞれスナップリングを嵌め込むことにより、ノズル本体13にナット部材14を取り付けたノズル構成体12;とからを構成し、ナット部材14のメネジをガン本体1のオネジに螺合させることにより、ノズル構成体12をガン本体1に着脱自在に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体ホーニング用噴射ガン、詳しくは、交換が容易で、ノズル交換の際に芯ズレを起こしにくい液体ホーニング用噴射ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細な研磨材を水に分散させた懸濁液であるスラリーを被加工物表面に向けて噴射する液体ホーニング加工は、金属部品や各種樹脂加工品などの表面処理に多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−132542
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体ホーニング加工においては、スラリーに含まれる研磨材は摩耗性が極めて強いので、スラリーを被加工物へ向かって噴射するノズルは摩耗することが避けられず、噴射ガンを一定期間稼動させたら、摩耗が進行したノズルを交換することが行われている。図1は従来の噴射ガンの一例を示したものであり、1はガン本体、2はノズルであり、ノズル2はその軸芯aに対して直交する方向に締め込まれるセットボルト3によって、ガン本体1に締め付けて固定される様になっている。
【0006】
しかしながら、この従来の固定方法では、ガン本体1とノズル2の接合部がラフな為、ノズル2を交換した際にガン本体1のスラリー排出口4の軸芯とノズル2の軸芯aとがズレやすく、芯ズレにより所期の噴射性能を発揮し得なくなることが多かった。又、接合部に研磨材が詰まりやすく、ノズル2の交換を困難にしていた。
【0007】
本発明者は液体ホーニングに用いる噴射ガンに関する上記問題点を解決すべく研究を行った結果、ノズル交換の際に、芯ズレが起きにくく、接合部への研磨材の目詰まりもなく、交換作業も容易な液体ホーニング用噴射ガンを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
略円筒状をなし、軸芯方向一方の端面中央にスラリー排出口が形成されているスラリーチャンバー内に、先端にエアノズルを有する高圧エア導入管が、その先端のエアノズルが前記スラリー排出口近傍に位置する様に、スラリーチャンバーの軸芯と同軸状に挿入されていると共に、スラリーチャンバーの軸芯に対して斜めに偏位して設置されたスラリー供給管路の末端がスラリーチャンバーの周壁面に開口しており、更に、スラリー排出口と同心円状に、それを囲む様に、外周面にオメジが刻まれている円筒状のノズル取付部が一体的に形成されているガン本体と;
軸芯に沿って、一方の端面から他方の端面に達するスラリー用管路が貫通しており、外周面には一対のスナップリング係止溝が形成されている円筒状をなしたノズル本体を、有底円筒形をなし、内周面にはメネジが、底面中央にはノズル本体挿入孔がそれぞれ形成されたスクリューキャップ状のナット部材の前記ノズル本体挿通孔に挿通せしめ、ノズル本体外周面の一対のスナップリング係止溝にそれぞれスナップリングを嵌め込むことにより、ノズル本体にナット部材を取り付けたノズル構成体;
とから液体ホーニング用噴射ガンを構成し、ノズル構成体のナット部材のメネジをガン本体のノズル取付け部のオネジに螺合させることにより、ノズル構成体をガン本体に着脱自在に取付けられる様にして上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
ノズル本体を、そのスラリー用管路の軸芯がスラリーチャンバーの軸芯と一致する様に位置決めして、ナット部材のメネジをノズル取付部のオネジに螺合させて、ナット部材をノズル取付部にねじ込めば、ノズル本体はガン本体の外殻にその軸芯方向から圧接して、正確に芯出しされた状態でガン本体に取付けられる。このとき、ノズル本体のスラリー用管路とスラリー排出口と高圧エア導入管のそれぞれの軸芯は完全に一致しており、スラリー供給管路を通ってスラリーチャンバー内に送り込まれたスラリーは、高圧エア導入管によって送り込まれる高圧エアによって加速され、ノズル本体のスラリー用管路を通って噴射され、ホーニング加工の用に供される。
【0010】
一方、ノズル本体を交換したいときは、ナット部材を緩む方向に回転させて、オネジとメネジの螺合関係を解除すれば、ノズル本体はガン本体のノズル取付部から容易に離脱させることが出来る。そして、新しいノズル本体に一対のスナップリングでナット部材を取付け、これをノズル取付け部に強くネジ込めば、軸芯が一致した状態で新しいノズル本体の取付は完了する。
【0011】
この様に、この発明に係る液体ホーニング用噴射ガンにおいては、ノズル本体をナット部材の螺合により、軸芯方向からガン本体に圧接して固定しているので、芯出しが正確で、芯ズレが起きにくく、しかも、接合部に研磨材が詰まるおそれもなく、ノズル本体の着脱を迅速容易に実施でき、従来の液体ホーニング用噴射ガンに比べ、噴射性能はもちろん、操作性、耐久性、信頼性においても格段に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の液体ホーニング用噴射ガンの正面図。
【図2】この発明に係る液体ホーニング用噴射ガンの実施例1の縦断面図。
【図3】同じく、その要部の拡大縦断面図。
【図4】同じく、その要部であるノズル取付部の拡大斜視図。
【図5】同じく、その要部であるノズル本体の拡大縦断面図。
【図6】同じく、その要部であるナット部材の下方向から見た拡大斜視図。
【図7】同じく、その要部であるナット部材の上方向から見た拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ノズル本体をスクリューキャップ状のナット部材の螺合により、軸方向からガン本体のスラリー排出口に、それぞれの軸芯が一致する様に圧接させて固定する様にした点に最大の特徴がある。
【実施例1】
【0014】
図中、5はこの発明に係る液体ホーニング用噴射ガンの主要構成要素であるガン本体であり、その外殻27の内部には、略円筒状をなしたスラリーチャンバー6が形成されている。そして、このスラリーチャンバー6の軸芯a方向一方の端面中央には、スラリー排出口7が成形されている。又、このスラリーチャンバー6の軸芯a方向他方の端面中央からは、その軸芯aに沿って、高圧エア導入管8が挿入され、この高圧エア導入管8の先端に設けられたエアノズル28は、スラリー排出口7近傍に位置している。又、外殻27内には、スラリーチャンバー6の軸芯aに対して斜めに偏位してスラリー供給管路9が形成されており、このスラリー供給管路9の末端は、スラリーチャンバー6の内壁面に開口している。なお、これら構成は、従来の液体ホーニングに用いる噴射ガンと基本的に同一である。
【0015】
更に、外殻27の外側には、スラリー排出口7と同心円状で、かつそれを囲う様に、円筒状のノズル取付部10が一体的に突設している。又、このノズル取付部10の外周面にはオネジ11が刻まれている。
【0016】
一方、図中12は、ノズル本体13とこのノズル本体13に取付けられたナット部材14とから構成されたノズル構成体である。ノズル本体13は、耐摩耗性にすぐれた素材からなる円柱状を呈した部材であり、その軸芯に沿って、一方の端面から他方の端面に達するスラリー用管路15が貫通しており、該スラリー用管路15の始端側はテーパー状に拡径して漏斗状部16となっている。又、漏斗状部16が形成されている始端側の外周面には若干の間隔をあけて一対のスナップリング係止溝17,18が設けられている。
【0017】
一方、ナット部材14は有底円筒状をなし、内周面にはメネジ24が形成されたスクリューキャップ状の部材であり、その底面中央には、同心円状に、ノズル本体挿通孔19があけられており、外周面にはローレット加工が施されている。
そして、ノズル本体13は、前記ナット部材14のノズル本体挿通孔19に挿通され、スナップリング係止溝17,18にスナップリング20,21を嵌め込むことにより、ナット部材14に固定され、ノズル本体13とナット部材14とでノズル構成体12を構成している、又、前記ノズル取付部10の内周面の根元付近にはOリング25を嵌め込むOリング嵌め込み溝22が、ナット部材14の開口端面内側にはOリング26を嵌め込むOリング嵌め込み溝23がそれぞれ形成されている。
【0018】
そして、ノズル本体13を、そのスラリー用管路15の軸芯がスラリーチャンバー6の軸芯aと一致し、かつ、漏斗状部16がスラリー排出口7直下に来る様に位置決めして、ナット部材14のメネジ24をノズル取付部10のオネジ11に螺合させて、ナット部材14をノズル取付部10にねじ込めば、ノズル本体13はガン本体5の外殻27にその軸芯方向から圧接して、正確に芯出しされた状態でガン本体5に取付けられる。
【0019】
この状態において、ノズル本体13のスラリー用管路15とスラリー排出口7と高圧エア導入管8のそれぞれの軸芯は完全に一致しており、スラリー供給管路9を通ってスラリーチャンバー6内に送り込まれたスラリーは、高圧エア導入管8によって送り込まれる高圧エアによって加速され、ノズル本体13のスラリー用管路15を通って噴射され、ホーニング加工の用に供される。
【0020】
一方、ノズル本体13を交換したいときは、ナット部材14を緩む方向に回転させて、オネジ11とメネジ24の螺合関係を解除すれば、ノズル本体13はガン本体5のノズル取付部10から容易に離脱させることが出来る。
【0021】
そして、新しいノズル本体13にスナップリング20,21でナット部材14を取付け、これをノズル取付け部10に強くネジ込めば、軸芯が一致した状態で新しいノズル本体13の取付は完了する。なお、ノズル本体13とノズル取付部10の接触箇所及びナット部材14とノズル取付部10の接触箇所は、それぞれOリング25及び26で確実に封止されているので、スラリーに含まれる研磨材が接合部に詰まることはなく、ノズル本体13の着脱は、いつでもスムーズに行うことが出来る。
【0022】
この発明に係る液体ホーニング用噴射ガンは、ノズル本体をナット部材の螺合により、軸芯方向からガン本体に圧接して固定しているので、芯出しが正確で、芯ズレが起きにくく、しかも、接合部に研磨材が詰まるおそれもなく、ノズル本体の着脱を迅速容易に実施でき、従来の液体ホーニング用噴射ガンに比べ、噴射性能はもちろん、操作性、耐久性、信頼性においても格段に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
液体ホーニングが実施される各種金属部品や合成樹脂加工品の表面処理や表面加工の際に大いに利用価値がある。
【符号の説明】
【0024】
1.ガン本体
2.ノズル
3.セットボルト
4.スラリー排出口
5.ガン本体
6.スラリーチャンバー
7.スラリー排出口
8.高圧エア導入管
9.スラリー供給管路
10.ノズル取付け部
11.オネジ
12.ノズル構成体
13.ノズル本体
14.ナット部材
15.スラリー用管路
16.漏斗状部
17.スナップリング係止溝
18.スナップリング係止溝
19.ノズル本体挿通孔
20.スナップリング
21.スナップリング
22.Oリング嵌め込み溝
23.Oリング嵌め込み溝
24.メネジ
25.Oリング
26.Oリング
27.外殻
28.エアノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状をなし、軸芯方向一方の端面中央にスラリー排出口が形成されているスラリーチャンバー内に、先端にエアノズルを有する高圧エア導入管が、その先端のエアノズルが前記スラリー排出口近傍に位置する様に、スラリーチャンバーの軸芯と同軸状に挿入されていると共に、スラリーチャンバーの軸芯に対して斜めに偏位して設置されたスラリー供給管路の末端がスラリーチャンバーの周壁面に開口しており、更に、スラリー排出口と同心円状に、それを囲む様に、外周面にオメジが刻まれている円筒状のノズル取付部が一体的に形成されているガン本体と;
軸芯に沿って、一方の端面から他方の端面に達するスラリー用管路が貫通しており、外周面には一対のスナップリング係止溝が形成されている円筒状をなしたノズル本体を、有底円筒形をなし、内周面にはメネジが、底面中央にはノズル本体挿入孔がそれぞれ形成されたスクリューキャップ状のナット部材の前記ノズル本体挿通孔に挿通せしめ、ノズル本体外周面の一対のスナップリング係止溝にそれぞれスナップリングを嵌め込むことにより、ノズル本体にナット部材を取り付けたノズル構成体;
とからなり、ノズル構成体のナット部材のメネジをガン本体のノズル取付け部のオネジに螺合させることにより、ノズル構成体をガン本体に着脱自在に取付けたことを特徴とする液体ホーニング用噴射ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228743(P2012−228743A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98021(P2011−98021)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)