説明

液体供給ポンプ

【課題】長期にわたって使用することができる液体供給ポンプを提供すること。
【解決手段】液体を供給する水供給流路40に接続された管状部材52と、この管状部材52に注入された磁性流体60と、管状部材52の径方向外側に配設された永久磁石54と、永久磁石54の径方向外側に配設された磁場発生手段56と、を備えた液体供給ポンプ。磁場発生手段56により第1方向の磁場が発生すると、永久磁石54が水体供給流路40側に移動して磁性流体60が流動し、この磁性流体60の流動に伴って、管状部材52内の水が水供給流路40に流出し、また磁場発生手段56により第2方向の磁場が発生すると、永久磁石54が水供給流路40とは反対側に移動して磁性流体60が流動し、この磁性流体60の流動に伴って、水供給流路40の水が管状部材52内に流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体を供給する小型の液体供給ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
小型の液体供給ポンプとして、ダイヤフラムを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この液体供給ポンプは、吸水口及び排水口を有するポンプハウジングと、このポンプハウジングに装着されたポンプ側壁と、ポンプハウジングの開口側を覆うダイアフラムと、を備えている。ダイアフラムはポンプ側壁に取り付けられ、これらポンプハウジング、ポンプ側壁及びダイアフラムがポンプ室を規定する。このダイアフラムは、ポンプハウジングの開口側を閉塞する弾性シム板と、この弾性シム板にたわみ振動を付与する圧電素子から構成され、吸水口には、吸水の際に開放される吸水弁が配設され、排水口には,排水の際に開放される排水弁が配設されている。
【0003】
この液体供給ポンプにおいては、圧電素子からの振動によってポンプ室が膨張すると、吸水弁が開放されて吸水口を通して水がポンプ室に流入し、またポンプ室が収縮すると、排水弁が開放されて排水口を通して水がポンプ室から流出し、このようなポンプ室の膨張及び収縮の繰り返しによって、水が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−22770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような液体供給ポンプには、次の通りの解決すべき問題がある。即ち、ダイアフラムを支持するポンプ側壁が高分子ポリマから形成されるので、長期にわたって使用すると、ポンプ側壁が劣化するおそれがある。また、使用に際してダイアフラムに振動が付与されるので、ダイアフラムを長期にわたって安定してポンプ側壁に支持することが難しくなる。
【0006】
このようなことから、長期にわたって使用するときには、故障に対する対策が必要となり、例えば、スタンバイ用のもの(使用中のものと同じ液体供給ポンプ)を準備するなどの不経済的な対応が必要となる。
【0007】
また、このような機械的な液体供給ポンプでは、機械的損失が大きく、また省エネ性も低く、機械的損失の少ない新規な液体供給ポンプの実現が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、長期にわたって安定して使用することができる液体供給ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の液体供給ポンプは、液体を供給する液体供給流路に接続された管状部材と、前記管状部材に注入された磁性流体と、前記管状部材の径方向外側に配設された永久磁石と、前記永久磁石の径方向外側に配設された磁場発生手段と、を備え、
前記磁場発生手段により第1方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記液体供給流路側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記管状部材内の液体が前記液体供給流路に流出し、また前記磁場発生手段により前記第1方向と反対の第2方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記液体供給流路とは反対側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記液体供給流路の液体が前記管状部材内に流入することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の液体供給ポンプでは、前記磁場発生手段は、前記永久磁石の径方向外側に配設された導電性コイルから構成され、所定方向の電流が流れると前記第1方向の磁場を発生し、前記所定方向とは反対方向の電流が流れると前記第2方向の磁場を発生することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の液体供給ポンプでは、前記管状部材との接続部の上流側に第1逆止弁が配設され、前記接続部の下流側に第2逆止弁が配設され、前記第1及び第2逆止弁は、液体の供給方向の流れを許容することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の液体供給ポンプでは、前記磁性流体の溶剤がパラフィン系溶剤であり、液体が水であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の液体供給ポンプは、液体を供給する第1液体供給流路に一端側が接続され且つ液体を供給する第2液体供給流路に他端側が接続された管状部材と、前記管状部材に注入された磁性流体と、前記管状部材の径方向外側に配設された永久磁石と、前記永久磁石の径方向外側に配設された磁場発生手段と、を備え、
前記磁場発生手段により第1方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記第1液体供給流路側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記管状部材の前記一端側内の液体が前記第1液体供給流路に流出するとともに、前記第2液体供給流路の液体が前記管状部材の前記他端側内に流入し、また前記磁場発生手段により前記第1方向と反対の第2方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記第2液体供給流路側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記管状部材の前記他端側内の液体が前記第2液体供給流路に流出するとともに、前記第1液体供給流路の液体が前記管状部材の前記一端側内に流入することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の請求項6に記載の液体供給ポンプでは、前記液体供給流路は、燃料電池システムの改質器に改質用水を供給する改質用水供給流路であり、前記管状部材から流出した改質用水が前記改質用水供給流路を通して前記改質器に送給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の液体供給ポンプによれば、液体供給流路に接続された管状部材に磁性流体が注入され、この管状部材の径方向外側に永久磁石が配設され、更に永久磁石の径方向外側に磁場発生手段が配設され、磁場発生手段により発生される磁場の変化によって永久磁石が移動し、この磁石の移動により管状部材内で磁性流体が流動する。例えば、磁場発生手段により第1方向の磁場が発生すると、永久磁石が液体供給流路側に移動して磁性流体が流動し、この磁性流体の流動に伴って、管状部材内の液体が液体供給流路に流出し、また第2方向の磁場が発生すると、永久磁石が液体供給流路とは反対側に移動して磁性流体が流動し、この磁性流体の流動に伴って、液体供給流路の液体が管状部材内に流入し、このように磁場の変化による永久磁石の移動により磁性流体を流動させるので、機械的に動作する部分がなく、長期にわたって安定して作動させることができる。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の液体供給ポンプによれば、磁場発生手段は、永久磁石の径方向外側に配設された導電性コイルから構成されているので、導電性コイルに所定方向の電流を流すと第1方向の磁場が発生し、またこの導電性コイルに所定方向と反対方向の電流を流すと第2方向の磁場が発生し、比較的簡単な構成であって永久磁石に作用する磁場を変化させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の液体供給ポンプによれば、管状部材との接続部の上流側に第1逆止弁が配設され、この接続部の下流側に第2逆止弁が配設されているので、磁性流体がこの接続部から離れる方向に流動したときには、第1逆止弁が開放されて上流側からの液体が管状部材内に流入し(このとき、第2逆止弁は閉状態に保たれて下流側からの液体の逆流が防止される)、また磁性流体がこの接続部に近づく方向に流動したときには、第2逆止弁が開放されて管状部材内の液体が流出して下流側に送給され(このとき、第1逆止弁は閉状態に保たれて管状部材内の流体が上流側に逆流することがない)、このようにして液体を所要の通りに供給することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の液体供給ポンプによれば、磁性流体の溶剤が水に不溶のパラフィン系溶剤で、液体が水であるので、燃料電池システム用の改質用液体を供給するポンプとして好都合に適用することができる。即ち、パラフィン系溶剤が長期運転期間中に極僅かに水に溶出したとしても、この溶剤が改質器における水蒸気改質によって水素、二酸化炭素及び一酸化炭素に分解されて燃料電池の燃料の一部となって消費されることにより、改質器の運転には支障が無いので、溶剤の溶出による不都合が生じることはない。
【0019】
また、本発明の請求項5に記載の液体供給ポンプによれば、一端側が第1液体供給流路に接続され且つ他端側が第2液体供給流路に接続された管状部材に磁性流体が注入され、この管状部材の径方向外側に永久磁石が配設され、永久磁石の径方向外側に磁場発生手段が配設され、磁場発生手段により発生される磁場の変化によって永久磁石が移動される。例えば、磁場発生手段により第1方向の磁場が発生すると、永久磁石が第1液体供給流路側に移動して磁性流体が流動し、この磁性流体の流動に伴って、管状部材の一端側内の液体が第1液体供給流路に流出するとともに、第2液体供給流路の液体が管状部材の他端側内に流入し、また磁場発生手段により第2方向の磁場を発生させると、永久磁石が第2液体供給流路側に移動して磁性流体が流動し、この磁性流体の流動に伴って、管状部材の他端側内の液体が第2液体供給流路に流出するとともに、第1液体供給流路の液体が管状部材の一端側内に流入し、このように液体を送給するので、長期にわたって安定して作動させることができ、加えて第1及び第2液体供給流路からの交互の送給となるので、液体の脈動を少なくして送給することができる。
【0020】
更に、本発明の請求項6に記載の液体供給ポンプによれば、液体供給流路が燃料電池システムの改質器に改質用水を供給する改質用水供給流路であるので、この改質器に所要の通りに改質用水を送給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従う液体供給ポンプを備えた燃料電池システムの一例を簡略的に示す図。
【図2】図1の燃料電池システムにおける液体供給ポンプを簡略的に示す図。
【図3】図2の液体供給ポンプにおける永久磁石を示す斜視図。
【図4】図2の液体供給ポンプにおいて磁性流体が液体供給流路側に流動するときの液体の流れを説明するための説明図。
【図5】図2の液体供給ポンプにおいて磁性流体が液体供給流路と反対側に流動するときの液体の流れを説明するための説明図。
【図6】他の実施形態の液体供給ポンプを簡略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う液体供給ポンプの実施形態について説明する。まず、図1を参照して、この液体供給ポンプを適用する一例としての燃料電池システムについて概説する。図1において、この燃料電池システム2は、原燃料としての原燃料ガス(例えば、天然ガス)を改質するための改質器4と、改質器4にて改質された改質燃料ガス及び酸化材としての空気の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池6(例えば、固体酸化物型燃料電池)と、空気を燃料電池6に送給するための送風装置8とを備え、燃料電池6は、複数の電池セルを備えたセルスタック10から構成され、この燃料電池及6び改質器4が、断熱されたハウジング本体12内に収納されている。
【0023】
セルスタック10の各電池セルは、酸素イオンを伝導する電解質14(例えば、固体電解質)と、この電解質14の一方側に設けられた燃料極16と、電解質14の他方側に設けられた酸素極18とを備えている(図1においては、一つの電池セルの構成を概略的に大きく示している)。
【0024】
燃料電池6(セルスタック10)の燃料極16の導入側は、改質燃料ガス送給流路20を介して改質器4に接続され、この改質器4は、原燃料ガス供給流路22を介して原燃料ガスを供給するための原燃料ガス供給源24(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続されている。原燃料ガス供給流路22には、原燃料ガスを送給するための燃料ガス供給ポンプ26が配設されている。また、燃料電池6の酸素極18の導入側は、空気送給流路28を介して空気を予熱するための空気予熱器30に接続され、この空気予熱器30は、空気供給流路32を介して送風装置8に接続されている。
【0025】
燃料電池6の燃料極16及び酸素極18の排出側には燃焼室34が配設され、燃料極16側から排出された反応燃料ガス(残余燃料ガスを含む)と酸素極18側から排出された空気(酸素を含む)とがこの燃焼室34に送給されて燃焼される。この燃焼室34は燃焼排ガス送給流路36を介して空気予熱器38に接続され、この空気予熱器30には燃焼排ガス排出流路38が接続されている。
【0026】
この燃料電池システム2では、更に、改質器4に改質用水を供給する水供給流路40(液体供給流路を構成する)が設けられ、この水供給流路40が改質用水を供給するための水供給源42(例えば、水タンクなど)に接続されている。水供給流路40には、本発明に従う液体供給ポンプ44が配設され、この液体供給ポンプ44によって改質用水が水供給流路40を通して改質器4に送給される。
【0027】
この燃料電池システム2の稼働運転は、次のようにして行われる。原燃料ガス供給源24からの原燃料ガス及び水供給源42からに改質用水が改質器4に供給され、この改質器4において、原燃料ガスの一部と改質用水とが改質反応して水蒸気改質される。水蒸気改質された改質燃料ガスが燃料電池6(セルスタック10)の燃料極側16側に送給され、また送風装置8からの空気が、空気予熱器30を通して燃料電池6の酸素極18側に送給される。燃料電池6(セルスタック1)の燃料極16側は、改質された改質燃料ガスを酸化し、またその酸素極18側は空気中の酸素を還元し、燃料極16側の酸化及び酸素極18側の還元による電気化学反応により発電が行われる。燃料電池6の燃料極16側からの反応燃料ガス及び酸素極18側からの空気は燃焼室34に送給され、空気中の酸素を利用して余剰の燃料ガスが燃焼される。そして、燃焼室34からの燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出流路38を通して大気に排出される。
【0028】
次に、図2及び図3を参照して、この燃料電池システム2に適用された液体供給ポンプ44について説明する。図示の液体供給ポンプ44は、管状部材52、永久磁石54及び磁場発生手段56を備えている。管状部材52は、中空円管状部材から構成され、一端側が開放され、この一端部が、燃料電池システム2における水供給流路40(液体供給流路)に接続され、その他端部に空気穴58が設けられる。
【0029】
この管状部材52は、非磁性材料、例えばガラス、ステンレス鋼、合成樹脂などから形成され、その肉厚は薄く、例えば1〜3mm程度とするのが好ましく、またその内径も比較的小さく、例えば1〜3mm程度とするのが望ましく、その長さも内径の1〜5倍程度とすることができる。
【0030】
この管状部材52内に、磁性を有する磁性流体60が注入され、永久磁石54は、この管状部材52の径方向外側に配設される。この永久磁石54は、図3に示すように環状に形成され、その内径r1は、管状部材52の外径より幾分大きく、管状部材52を被嵌するように配置される。この永久磁石54は、軸方向(図3において上下方向)に磁化され、その一端部(図3において上端部)が例えばN極に、その他端部(図3において下端部)が例えばS極に磁化される。
【0031】
磁性流体60としては、溶剤としてパラフィン系溶剤を用いたものが望ましい。このようなパラフィン系溶剤は、水に溶解することがなく、燃料電池システム2を長期にわたって稼働運転しても磁性流体60の特性が変化することがなく、長期間安定して使用することができる。このような磁性流体を用いた場合において、仮に極僅かにパラフィン系溶剤が水に溶出したとしても、溶出した溶剤は水とともに改質器4に送給され、この改質器4における水蒸気改質によって水素、二酸化炭素及び一酸化炭素に分解されて改質燃料ガスの一部となるために、燃料電池6にて消費され、システム上何ら問題となることはない。
【0032】
この永久磁石54の径方向外側に円筒状のスリーブ部材62が配設される。スリーブ部材62の一端部(図2において上端部)には、径方向内方に突出する第1内フランジ64が設けられ、その他端部(図2において下端部)には、径方向内方に突出する第2内フランジ66が設けられている。第1及び第2内フランジ64,66の内径R1は、永久磁石54の外径r2よりも小さく、第1及び第2内フランジ64,66は、永久磁石54の移動拘束手段として機能する。この永久磁石66は、通常、その自重によって下方に落下し、第2内フランジ66に当接することによって下方への移動が拘束され、図2に示す降下位置に保持され、またその上方への移動は、第1内フランジ64に当接することによって上方への移動が拘束される。このスリーブ部材6も非磁性材料、例えばステンレス鋼、合成樹脂、アルミニウムなどから形成される。
【0033】
永久磁石54は、後述するようにスリーブ部材62の径方向内側にて図2において上下方向に移動可能であり、この永久磁石54の移動をスムースに行うために、管状部材52の外周面及び/又はスリーブ部材62の内周面に、潤滑用のワックスなどの被覆層を設けるようにしてもよく、或いは永久磁石54の内周面及び/又は外周面に、潤滑用の高分子(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)のコーティング層を設けるようにしてもよい。
【0034】
管状部材52の径方向外側に永久磁石54を配設すると、この永久磁石54からの磁力が管状部材52を通して内側の磁性流体60に作用し、この磁性流体60は、この永久磁石54の径方向内側に磁気的に保持される。このようなことから、永久磁石54は、磁性流体60を磁気的に保持するに充分な磁力を有するように構成され、磁性流体60は、永久磁石54の高さlとほぼ等しくなる、或いはこの高さlよりも幾分低くなるように管状部材52内に注入される。
【0035】
磁場発生手段56は、このスリーブ部材62の径方向外側に配設される。この形態では、磁場発生手段56は、スリーブ部材62の外周面に巻かれた導電性コイル68から構成され、この導電性コイル68が電流制御手段70に電気的に接続される。電流制御手段70は、例えば、導電性コイル68に供給する電流を制御する電流制御回路から構成され、その電流の供給方向、供給時間、電流値などを制御する。
【0036】
この電流制御手段70から導電性コイル68に所定方向の電流(図2及び図4において上端側から下端側に流れる電流)が供給されると、図4に示すように、導電性コイル60の一端側(図2において上端側)がS極に、その他端側(図2において下端側)がN極になるように磁場が発生し、導電性コイル60の径方向内側における磁力線は、矢印72で示す方向に流れる。また、導電性コイル68に所定方向に対して反対方向の電流(図2及び図4において下端側から上流端側に流れる電流)が供給されると、図5に示すように、導電性コイル60の上記一端側がN極に、その上記他端側がS極になるように磁場が発生し、導電性コイル60の径方向内側における磁力線は、矢印74で示す方向流れる。
【0037】
このような構成においては、管状部材52が垂直方向に延び、この管状部材52に同心状にスリーブ部材62が配設されるので、管状部材52内の磁性流体60、永久磁石54及び導電性コイル68の磁気的バランスによって、この永久磁石54は管状部材52及びスリーブ部材62(換言すると、導電性コイル60)に同心状に保たれ、径方向のズレに対して元の同心状の状態に戻るような磁気的力が発生する。従って、永久磁石54の内周面は、管状部材52の外周面に接触することがなく、またその外周面は、スリーブ部材62の内周面に接触することがなく、このような状態で図2において上下方向に後述する如く移動され、これらの間に摩擦が生じることがない。
【0038】
この液体供給ポンプ44では、水供給流路40(液体供給流路)における管状部材52との接続部76より上流側(換言すると、この接続部76と水供給源42との間)に第1逆止弁78が配設され、またこの接続部76より下流側(換言すると、この接続部76と改質器4との間)に第2逆止弁80が配設されている。第1及び第2逆止弁78,80は、液体(この形態では、改質用水)の矢印82で示す供給方向の流れを許容するが、この供給方向と反対方向の流れを阻止する。
【0039】
次に、図2とともに図4及び図5を参照して、上述した液体供給ポンプ44の作用について説明する。この液体供給ポンプ44によって液体(例えば、改質用水)を供給するには、導電性コイル68に送給される電流の流れを、電流制御手段70によって所定方向及び所定方向に対して反対方向と交互に切り換えればよい。
【0040】
電流制御手段70から導電性コイル68に所定方向の電流が送給されると、図4に示すように、導電性コイル68が磁場を発生し、この磁場における磁力線の流れ方向は矢印72で示す第1方向となる。かくすると、この磁場の作用によって、永久磁石54が矢印84で示す方向(即ち、水供給流路40に近づく方向)に移動し、この移動に伴って磁性流体60も矢印84で示す方向に流動する。このとき、管状部材52の他端部に空気穴58が設けられているので、外部から管状部材52内に空気が流入し、磁性流体60の流動がスムースに行われる。磁性流体60がかく移動すると、その移動に伴って、管状部材52内の水が矢印86で示すように押し出され、押し出された水が第2逆止弁80を通して下流側に改質器4に送給される(尚、この水は、第1逆止弁78の作用によって上流側に逆流することはない)。
【0041】
また、電流制御手段70から導電性コイル68に所定方向と反対方向の電流が送給されると、図5に示すように、導電性コイル68が磁場を発生し、この磁場における磁力線の流れ方向は矢印74で示す第2方向(第1方向と反対方向)となる。かくすると、この磁場の作用によって、永久磁石54が矢印88で示す方向(即ち、水供給流路40から離れる方向)に移動し、この移動に伴って磁性流体60も矢印88で示す方向に流動する。このとき、管状部材52の他端部に空気穴58が設けられているので、管状部材52内の空気が流出し、磁性流体60の流動がスムースに行われる。磁性流体60がかく移動すると、その移動に伴って、水供給手段42からの水が第1逆止弁78を通して流れ、矢印90で示すように管状部材52内に流入する(尚、このとき、下流側からの水の逆流は、第2逆止弁80によって阻止される)。
【0042】
このように導電性コイル68に送給する電流の切換えを繰り返し行うことにより、永久磁石54を介して磁性流体60が図2において上下方向に流動し、この流動によって、水の管状部材52への流入及び流出が繰り返し行われ、このようにして水供給流路40を通して水を少しずつ下流側に改質器4に向けて供給することができる。
【0043】
この液体供給ポンプ44においては、容易に理解される如く、磁性流体60の流動速度を速くする(又は遅くする)ことによって、液体供給ポンプ44の供給量を多く(又は少なく)することができ、その供給量を容易に制御することができる。導電性コイル68を流れる電流の大きさと導電性コイル68により発生する磁場の大きさとは比例関係にあり、またこの磁場の大きさと永久磁石54の移動速度(換言すると、磁性流体60の流動速度)とは比例関係にあるために、導電性コイル68に送給する電流の大きさを制御することによって、液体供給ポンプ44の供給量を制御することができる。
【0044】
この液体供給ポンプ44の供給量を多くするためには、導電性コイル68により発生する磁場に関連して、例えば導電性コイル68の巻数を多くする、導電性コイル68に送給する電流の大きさを大きくするなどにより対応が可能である。また、永久磁石54に関連して、磁性流体60の磁力を大きくする、永久磁石60の移動距離を長くするなどにより対応可能であり、設計段階で容易に設定することが可能となる。
【0045】
液体供給ポンプは、図6に示すように構成することもでき、この場合、水供給流路を通して供給される水の供給流量を増やすことができるとともに、供給の際の水の脈動を抑えることができる。尚、図6に示す水供給ポンプの他の実施形態において、図1〜図5に示す実施形態と実質上同一の構成要素には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図6において、この他の実施形態においては、水供給源(図示せず)からの水供給系は、上流側においては2系統設けられ、下流側においては一系統にまとめられて改質器(図示せず)に送給される。即ち、一方の水供給系統である水供給流路40A(第1液体供給流路を構成する)は、液体供給ポンプ44Aの管状部材52Aの一端側に接続され、この水供給流路40Aには、上述したと同様にして第1及び第2逆止弁78,80が配設され、また他方の水供給系統である水供給流路41A(第2液体供給流路を構成する)は、この管状部材52Aの他端側に接続され、この水供給流路41Aには、一方の水供給流路40Aと同様に、第1及び第2逆止弁78A,80Aが配設される。
【0047】
管状部材52A内には、上述した実施形態と同様に、磁性流体60が注入されている。また、管状部材52Aの径方向外側には永久磁石54が配設され、この永久磁石54の径方向外側にスリーブ部材62が配設され、このスリーブ部材62に磁場発生手段56としての導電性コイル68が巻き付けられている。永久磁石54、磁性流体60、スリーブ部材62及び導電性コイル68の構成並びにその他の構成は、上述した実施形態と実質上同一でよい。
【0048】
この他の形態の液体供給ポンプ44Aにおいては、導電性コイル68に所定方向の電流が送給されると、導電性コイル68が第1方向の磁場を発生し、この磁場の作用によって、永久磁石54が図6において上方(即ち、第1液体供給流路としての水供給流路40Aに近づく方向)に移動し、この移動に伴って磁性流体60も図6において上方に流動する。従って、一方の水供給流路40A側においては、磁性流体60の移動に伴って、管状部材52の一端側の水が押し出され、押し出された水が第2逆止弁80を通して下流側に改質器4に送給され、また他方の水供給流路41Aにおいては、磁性流体60の移動に伴って、水供給手段(図示せず)からの水が第1逆止弁78Aを通して流れ、管状部材52Aの他端側に流入する。
【0049】
また、導電性コイル68に所定方向と反対方向の電流が送給されると、導電性コイル68が第2方向の磁場を発生し、この磁場の作用によって、永久磁石54が図6において下方(即ち、第2液体供給流路としての水供給流路41Aに近づく方向)に移動し、この移動に伴って磁性流体60も図6において下方に流動する。従って、他方の水供給流路41A側においては、磁性流体60の移動に伴って、管状部材52の他端側の水が押し出され、押し出された水が第2逆止弁80Aを通して下流側に改質器4に送給され、また一方の水供給流路40Aにおいては、磁性流体60の移動に伴って、水供給手段(図示せず)からの水が第1逆止弁78を通して流れ、管状部材52Aの一端側に流入する。
【0050】
このように導電性コイル68に送給する電流の切換えを繰り返し行うことにより、永久磁石54を介して磁性流体60が図6において上下方向に流動し、この流動によって、水の管状部材52Aの一端部からの流出(このとき、その他端側への流入が行われる)及びその他端側かの流出(このとき、その一端側への流入が行われる)が繰り返し行われ、このようにして水供給流路40,41Aを通して水を少しずつ下流側に改質器4に向けて連続的に供給することができ、水供給の際の脈動を少なくすることができる。
【0051】
以上、本発明に従う液体供給ポンプの実施形態について説明した、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 燃料電池システム
4 改質器
6 燃料電池
44,44A 液体供給ポンプ
40,40A,41A 水供給流路(液体供給流路)
52,52A 管状部材
54 永久磁石
56 磁場発生手段
60 磁性流体
62 スリーブ部材
68 導電性コイル
78,78A 第1逆止弁
80,80A 第2逆止弁






【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する液体供給流路に接続された管状部材と、前記管状部材に注入された磁性流体と、前記管状部材の径方向外側に配設された永久磁石と、前記永久磁石の径方向外側に配設された磁場発生手段と、を備え、
前記磁場発生手段により第1方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記液体供給流路側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記管状部材内の液体が前記液体供給流路に流出し、また前記磁場発生手段により前記第1方向と反対の第2方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記液体供給流路とは反対側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記液体供給流路の液体が前記管状部材内に流入することを特徴とする液体供給ポンプ。
【請求項2】
前記磁場発生手段は、前記永久磁石の径方向外側に配設された導電性コイルから構成され、所定方向の電流が流れると前記第1方向の磁場を発生し、前記所定方向とは反対方向の電流が流れると前記第2方向の磁場を発生することを特徴とする請求項1に記載の液体供給ポンプ。
【請求項3】
前記管状部材との接続部の上流側に第1逆止弁が配設され、前記接続部の下流側に第2逆止弁が配設され、前記第1及び第2逆止弁は、液体の供給方向の流れを許容することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体供給ポンプ。
【請求項4】
前記磁性流体の溶剤がパラフィン系溶剤であり、液体が水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体供給ポンプ。
【請求項5】
液体を供給する第1液体供給流路に一端側が接続され且つ液体を供給する第2液体供給流路に他端側が接続された管状部材と、前記管状部材に注入された磁性流体と、前記管状部材の径方向外側に配設された永久磁石と、前記永久磁石の径方向外側に配設された磁場発生手段と、を備え、
前記磁場発生手段により第1方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記第1液体供給流路側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記管状部材の前記一端側内の液体が前記第1液体供給流路に流出するとともに、前記第2液体供給流路の液体が前記管状部材の前記他端側内に流入し、また前記磁場発生手段により前記第1方向と反対の第2方向の磁場が発生すると、前記永久磁石が前記第2液体供給流路側に移動して前記磁性流体が流動し、前記磁性流体の流動に伴って、前記管状部材の前記他端側内の液体が前記第2液体供給流路に流出するとともに、前記第1液体供給流路の液体が前記管状部材の前記一端側内に流入することを特徴とする液体供給ポンプ。
【請求項6】
前記液体供給流路は、燃料電池システムの改質器に改質用水を供給する改質用水供給流路であり、前記管状部材から流出した改質用水が前記改質用水供給流路を通して前記改質器に送給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体供給ポンプ。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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