説明

液体供給具及び液体供給体

【課題】確実に空気孔を形成することができて、液体を円滑に供給することができる液体供給具を提供する。
【解決手段】外筒12内にあって、液体を保持する液体保持部20と、液体保持部20から外筒12の先端開口18aに向かって突出して液体保持部20内の液体を先端開口18aよりも外部へと誘導可能となった液体供給体30と、を備え、液体供給体30は、液体を誘導する中芯32と、中芯32の周囲に設けられた外皮体34とを有する。中芯32と外皮体34とは一体に成形されており、外皮体34は、中芯32の先端部から液体保持部20までに亘り中芯32の外周囲を包囲しており、該外皮体34の筒壁内には、軸方向に貫通して中芯32の先端側から液体保持部20内まで延びる少なくとも1つの空気孔34aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を供給することができる液体供給具及び液体供給具に用いられる液体供給体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体供給具として、特許文献1に記載された筆記具が知られている。これによれば、揮発性インキが充填されたレフィールが軸筒内に設けられており、レフィールの先端にはインキが誘導される液体供給体である先端チップが取り付けられている。先端チップは、その外周が、レフィールから一体的に延びるパイプ状部材によって包囲されている。そして、レフィールと先端チップとは一体的に軸筒内で移動可能となっており、先端チップの先端部が軸筒の先端に設けられた先端開口から突出して使用可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4275577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体供給具においては、レフィール内からの液体を円滑に供給するために、レフィール内とレフィール外との空気の流通を可能にする空気孔が必要である。
【0005】
そこで、特許文献1に示されるような従来の先端チップにおいては、パイプ状部材と先端チップとの間の隙間によって空気孔が形成されている。
【0006】
しかしながら、かかる液体供給具では、パイプ状部材と先端チップとの間の隙間を正確に確保することが困難である、という問題がある。また、パイプ状部材を必要とするために、部品点数が増加してその組立及び製造に手間がかかるという問題がある。
【0007】
パイプ状部材と先端チップとの間の隙間を正確に確保するためにスペーサ部材をパイプ状部材と先端チップとの間に設けて、パイプ状部材と先端チップとを均一の隙間を隔てて同心上に配置することも考えられるが、スペーサ部材が別途必要となるために、さらに部品点数が増加して、その組立及び製造に手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、確実に空気孔を形成することができて、液体を円滑に供給することができる液体供給具及びこの液体供給具に用いられる液体供給体を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、先端に先端開口を有して軸方向に延びる外筒と、
外筒内にあって、液体を保持する液体保持部と、
液体保持部から先端開口に向かって突出して液体保持部内の液体を先端開口よりも外部へと誘導可能となった液体供給体と、を備えた液体供給具において、
前記液体供給体は、液体を誘導する中芯と、中芯の周囲に設けられた外皮体とを有して、中芯と外皮体とは一体に成形されており、外皮体は、中芯の先端部から液体保持部までに亘り中芯の外周囲を包囲しており、該外皮体の筒壁内には、軸方向に貫通して中芯の先端側から液体保持部内まで延びる少なくとも1つの空気孔が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記液体保持部及び前記液体供給体が、外筒に対して軸方向に一体的に移動可能となっており、これにより、中芯の先端が先端開口より引き込んだ位置と、先端開口より突出した位置との間で移動可能であり、
前記中芯の先端が先端開口より引き込んだ位置において、前記中芯の先端は外筒内に形成される密閉空間内に配されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記密閉空間が、外筒内に配置される内筒と、内筒の先端開口を開閉自在に設けられた蓋とから構成されて、内筒の内周面は前記外皮体の外周面に密着可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、液体を供給する液体供給具に用いられる液体供給体であって、
液体を通すことが可能な構造を有し、液体を誘導するための中芯と、
液体を通すことが不可能な構造を有し、中芯の先端と後端を除く中芯の外周囲に設けられた外皮体とを有しており、
前記中芯と前記外皮体とは一体に成形されたものであり、前記外皮体の筒壁内には、軸方向に貫通して中芯の先端側から後端側まで延びる少なくとも1つの空気孔が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体供給体の外皮体の筒壁内に、中芯の先端側から後端側まで延びる空気孔が形成されているために、空気流通路を確保することができる。このため、液体の円滑な供給を図ることができる。
【0014】
また、中芯と外皮体とが一体に成形されているために、部品点数が少なくてすみ、組立性が向上して、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による液体供給具を表す縦断面図であり、液体保持部及び液体供給体が後退位置にある状態を示す。
【図2】本発明の実施形態による液体供給具を表す縦断面図であり、液体保持部及び液体供給体が前進位置にある状態を示す。
【図3】液体供給体の斜視図である。
【図4】液体供給体の(a)側面図、(b)縦断面図、(c)正面図である。
【図5】(a)は係止レバーの平面図、(b)は部分拡大図である。
【図6】図5(a)の6−6線に沿って見た図である。
【図7】液体供給体が後退位置にある状態を示す拡大要部断面図である。
【図8】液体供給体が前進位置にある状態を示す拡大要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1及び図2は、本発明の実施形態による液体供給具を表す全体図である。図示したように、この液体供給具10は、外筒12を有しており、外筒12はさらに、主筒14と、主筒14の先端に結合される継手16と、継手16の先端に結合される先具18とから構成される。先具18の先端部には、先端開口18aが形成される。
【0018】
主筒14内には、液体保持部20が配設されており、液体保持部20は、中筒22と、中筒22の後端に結合される後筒24とから構成され、中筒22と後筒24とによって形成される内部空間が液体を保持するための空間となり、該内部空間内には、液体が含侵された中綿26が配設される。中綿26は、合成繊維と、該合成繊維を包む合成樹脂フィルムとから構成される。但し、中綿26を用いずに液体を内部空間内に直接収容するようにしてもよい。後筒24の一部は、外筒12よりも後方に突出している。
【0019】
液体保持部20の先端からは、液体保持部20よりも小径で先端開口18aの方に向かって突出する液体供給体30が設けられる。液体供給体30は、図3〜4に示すように、中芯32と、中芯32の外周囲に設けられた外皮体34とから構成される。中芯32は、毛細管力により中綿26から液体を吸引してその内部に液体を通すことができるように毛細管現象を実現する構造になっている。また、外皮体34は、液体を通すことができない液体不透過性構造になっている。中芯32及び外皮体34は同一の材料または別の材料から構成することができ、具体的には、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂等から構成することができる。
【0020】
これら別構造からなる中芯32と外皮体34とは、押出成形等により一体に成形されており、両者はその境界において隙間のないように完全に密着している。中芯32と外皮体34は、例えば二色押出成形等により同時に成形してもよく、または、別々に成形したものを一体にしてもよく、または順番に成形していくようにしてもよい。外皮体34は、中芯32の先端と後端を残したそれ以外の外周囲を包囲するようになっている。中芯32と外皮体34とは互いに異なる色の材料から構成することも可能であり、これによって、液体供給体30としての意匠性を向上させるようにしてもよい。
【0021】
中芯32と外皮体34とが一体に成形される際に、外皮体34の筒壁内には、軸方向に貫通する少なくとも1つの空気孔34aが形成される。空気孔34aは、図示したように、周方向に離間して複数個(図の例では4個)設けることが可能である。複数個設ける場合には、軸中心に対して対称性を持って設けることができる。外皮体34の前端と後端はテーパー面となっており、空気孔34aの前端と後端は、このテーパー面からそれぞれ開口している。
【0022】
外皮体34の後端が中筒22の先端部に圧入されることで、液体保持部20と液体供給体30とが一体的に結合される。そして、中芯32の後端は中綿26内に埋入される一方で、外皮体34の空気孔34aの後端は、中綿26に埋入されない位置で、液体保持部20内で開口される。
【0023】
外筒12内には、一体化された液体保持部20と液体供給体30とを軸方向に移動させる繰出し機構40が設けられる。繰出し機構40は、公知の機構を利用することができ、この例では、回転繰出し機構となっている。具体的には、繰出し機構40は、外筒12の主筒14の内周面に形成されたカム本体42と、液体保持部20の中筒22の外側に回転可能に取り付けられた回転カム44と、主筒14の内部に形成された段部14aと中筒22の段部22aとの間に介挿されたノックスプリング46と、から構成される。
【0024】
カム本体42は、先端に鋸歯42aが形成されており、連続する2つの鋸歯42aと連続する2つの鋸歯42aとの間に後方へと延びる溝42bが形成されている。回転カム44は、該溝42b内を摺動可能で且つ鋸歯42aに係止可能な突起44aを有しており、図1に示すように、回転カム44の突起44aが溝42b内にあるときには、液体保持部20及び液体供給体30は後退位置にあり、中芯32の先端は先端開口18aよりも引き込んだ位置にある。また、回転カム44の突起44aが2つの連続する鋸歯42aの間に係止した位置にあるときには、図2に示すように、液体保持部20及び液体供給体30は前進位置にあり、中芯32の先端は先端開口18aよりも突出した位置になる。
【0025】
この前進位置及び後退位置の切替は、外筒12よりも突出した後筒24をノックすることで行われる。後退位置にある状態で、後筒24をノックすると、中筒22と共に回転カム44が前進し、回転カム44の突起44aが溝42bから脱出すると、回転カム44が回転する。ノック力を解除することで、ノックスプリング46のスプリング力によって後方へと中筒22及び回転カム44が戻るため、突起44aが2つの鋸歯42aの間に係止して前進位置に保持される。また、前進位置にある状態で、後筒24をノックすると、中筒22と共に回転カム44が前進し、回転カム44が回転する。ノック力を解除することで、ノックスプリング46のスプリング力によって後方へと中筒22及び回転カム44が戻るため、突起44aが溝42b内に進入して後退位置となる。
【0026】
さらに、外筒12内には、液体保持部20及び液体供給体30が後退位置にあって、中芯32の先端が先端開口18aよりも引き込んだ位置にあるときに、中芯32の先端に密閉空間を形成するための内筒50が設けられる。内筒50の内周面には、弾性材よりなるパッキン52が密着されている。内筒50には、蓋54の基部が軸着されており、蓋54は、内筒50の先端開口を開閉自在となっている。
【0027】
蓋54には、さらに係合部54aが延設されており、係合部54aは、継手16と先具18との間に形成された係合孔56内に挿入されて、係合孔56の前端面と後端面との間を移動可能となっている。
【0028】
内筒50の外周面には、図7及び図8に示すように、その側面に周方向に180度離間して一対の軸方向に延びる摺動溝50bと、各摺動溝50b内の後端に配置された係止突起50aとが形成されている(図ではそれぞれ片側のみ示す)。一方、図5及び図6に示すように、液体保持部20の収容部25である中筒22からは内筒50に向けて周方向に180度離間した一対の係止レバー60が一体に延設されており、係止レバー60は、内筒50の摺動溝50bを摺動可能となっている。また、係止レバー60には、軸方向に延びる係止溝60aが形成されて、この係止溝60aに係止突起50aが摺動可能に嵌入されている。
【0029】
係止溝60aの前端には、係止突起50aを拘束する拘束部60bが形成されており、この拘束部60bは具体的には、係止溝60aの前端付近の一部の溝幅が狭くなることで構成される。よって、拘束部60b内に係止突起50aがあるときには、液体保持部20と内筒50とは一体に動作し、また、拘束部60bによる拘束力を超えて内筒50に抵抗が作用すると、係止突起50aは拘束部60bを脱出して、係止溝60aを相対的に摺動することができるようになっている。
【0030】
以上のように構成される液体供給具10において、その動作を説明する。
【0031】
図1に示すように、液体保持部20及び液体供給体30が後退位置にあるときには、蓋54が内筒50の前面開口の周囲にあるパッキン52に密着して、内筒50の前面開口を閉じており、また、外皮体34の外周面が、内筒50の内面に設けられたパッキン52に弾接されており、よって、内筒50と蓋54とさらには液体供給体30自身によって密閉空間が形成され、密閉空間内に中芯32の先端が配される。こうして、液体供給体30の中芯32の乾燥、液体の揮発、蒸発を防止することができる。
【0032】
次に、この液体供給具10を使用する際には、前述のように、液体保持部20の後筒24をノックすると、液体保持部20及び液体供給体30が共に前進する。このときに、係止レバー60を介して液体保持部20と共に内筒50及び蓋54が一緒に前進する。しかしながら、蓋54の係合部54aが係合孔56の前端面に当接すると、それ以上、内筒50及び蓋54が前進することができなくなる。そうすると、内筒50の係止突起50aは係止レバー60の係止溝60aの拘束部60bから脱出するので、係止レバー60が内筒50の摺動溝50bを摺動し、内筒50に対して液体保持部20が相対的に前進する。そして、蓋54を押し開いて液体供給体30が内筒50内を通り抜けて、図2に示すように、その中芯32が先端開口18aから突出した前進位置に保持される。よって、中芯32を所望の供給個所に当てて適宜動かすことによって、液体保持部20内の中綿26からの液体を中芯32を通過させて供給することができるようになる。
【0033】
このときに、外皮体34に形成された空気孔34aによって、外部空間と液体保持部20内の空間が連通するため、液体保持部20からの液体の供給を円滑に行うことができる。
【0034】
また、使用が終了して、液体保持部20を後退位置に戻すために液体保持部20の後筒24を再びノックすると、前述のようにノックスプリング46のスプリング力によって液体保持部20及び液体供給体30が一緒に後退し、係止レバー60が摺動溝50bを摺動する。途中まで液体保持部20が後退すると、内筒50の係止突起50aは、相対的に係止レバー60の係止溝60aの前方へと移動して、拘束部60b内に再び拘束されるため、内筒50及びパッキン52も共に後退を開始する。一方、蓋54も後退しようとするものの、係合部54aは係合孔56の後端面と協働して、回動されながら後退することとなる。こうして、蓋54は、内筒50の前面開口を閉じて、再び図1の状態に戻る。
【0035】
上記実施形態においては、液体供給体30の中芯32と外皮体34とが一体に成形されるために、部品点数が少なくてすみ、組立性、取扱性が向上して、製造コストを低減することができる。
【0036】
尚、以上の液体供給具10及び液体供給体30は、筆記具用、化粧用として使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 液体供給具
12 外筒
18a 先端開口
20 液体保持部
30 液体供給体
32 中芯
34 外皮体
34a 空気孔
50 内筒
54 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に先端開口を有して軸方向に延びる外筒と、
外筒内にあって、液体を保持する液体保持部と、
液体保持部から先端開口に向かって突出して液体保持部内の液体を先端開口よりも外部へと誘導可能となった液体供給体と、を備えた液体供給具において、
前記液体供給体は、液体を誘導する中芯と、中芯の周囲に設けられた外皮体とを有して、中芯と外皮体とは一体に成形されており、外皮体は、中芯の先端部から液体保持部までに亘り中芯の外周囲を包囲しており、該外皮体の筒壁内には、軸方向に貫通して中芯の先端側から液体保持部内まで延びる少なくとも1つの空気孔が形成されることを特徴とする液体供給具。
【請求項2】
前記液体保持部及び前記液体供給体は、外筒に対して軸方向に一体的に移動可能となっており、これにより、中芯の先端が先端開口より引き込んだ位置と、先端開口より突出した位置との間で移動可能であり、
前記中芯の先端が先端開口より引き込んだ位置において、前記中芯の先端は外筒内に形成される密閉空間内に配されることを特徴とする請求項1記載の液体供給具。
【請求項3】
前記密閉空間は、外筒内に配置される内筒と、内筒の先端開口を開閉自在に設けられた蓋とから構成されて、内筒の内周面は前記外皮体の外周面に密着可能であることを特徴とする請求項2記載の液体供給具。
【請求項4】
液体を供給する液体供給具に用いられる液体供給体であって、
液体を通すことが可能な構造を有し、液体を誘導するための中芯と、
液体を通すことが不可能な構造を有し、中芯の先端と後端を除く中芯の外周囲に設けられた外皮体とを有しており、
前記中芯と前記外皮体とは一体に成形されたものであり、前記外皮体の筒壁内には、軸方向に貫通して中芯の先端側から後端側まで延びる少なくとも1つの空気孔が形成される、ことを特徴とする液体供給体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−16931(P2012−16931A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157227(P2010−157227)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000156134)株式会社壽 (69)
【出願人】(000103600)オーベクス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】