説明

液体種菌接種機

【課題】種菌収容器に収容された液体種菌を栽培容器内の培地に接種するまでの間に、雑菌と接触しない状態を維持する。
【解決手段】きのこ栽培用の培地が充てんされた栽培容器12内に液体種菌を接種する液体種菌接種機10であって、液体種菌を収容する種菌収容器と、栽培容器12に種菌収容器に収容されている液体種菌を滴下するノズル77と、種菌収容器とノズル77とを接続する送液管92,94と、種菌収容器から送液管92,94を経由させてノズル77に液体種菌を送液するチューブポンプと、を具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこを栽培する栽培容器内に充てんされた培地に液体種菌を接種する液体種菌接種機に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこの人工栽培では、栽培瓶や栽培袋等の栽培容器内に充填されたコーンコブやおがくず等の培地にきのこの種菌を接種し、栽培容器内できのこの栽培を行うようにしている。
また、栽培容器内の培地に接種する種菌としては、種菌容器内のコーンコブやおがくず等の培地に繁殖させた種菌(以下、種菌培地という)が用いられることが一般的である。栽培容器内の培地に種菌培地を接種する場合には、種菌容器内の種菌培地を掻き出し、掻き出した種菌培地を栽培容器内の培地に落下させることにより接種作業を行っている。
【0003】
しかし、種菌容器から種菌培地を掻き出して栽培容器内に落下させる場合には、掻き出した種菌培地の大きさにばらつきがあり、栽培容器内の培地に接種する種菌培地の量が一定にならないという課題がある。また1つの栽培容器に対して種菌容器が1つ必要であり、装置が大がかりになりすぎてしまい、接種作業の準備にも手間がかかってしまう。
そこで、種菌培地を種菌容器から掻き出して栽培容器内の培地に接種するのではなく、液体状の種菌を栽培容器内の培地に接種する液体種菌接種機が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−9657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている液体種菌接種機では、複数の栽培容器を収容したトレイを搬送し、トレイの搬送経路内で各栽培容器内の培地に液体種菌を接種するものである。液体種菌を接種する際には、大気中に浮遊する雑菌との接触による液体種菌の汚染を防ぐため、圧縮エアを用いずにシリンダポンプを用いて液体種菌を送液する方式が採用されている。しかしながら液体種菌を送液するシリンダポンプが液体種菌と直接接触しているため、シリンダポンプが汚染していると液体種菌も汚染されてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、種菌収容器内に収容されている液体種菌を栽培容器内の培地に接種するまでの間に、雑菌と接触しない状態を維持することが可能な液体種菌接種機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、きのこ栽培用の培地が充てんされた栽培容器内に液体種菌を接種する液体種菌接種機であって、液体種菌を収容する種菌収容器と、前記栽培容器に前記種菌収容器に収容されている液体種菌を滴下するノズルと、前記種菌収容器と前記ノズルとを接続する送液管と、前記種菌収容器から前記送液管を経由させて前記ノズルに液体種菌を送液するチューブポンプと、を具備していることを特徴とする液体種菌接種機である。
【0007】
また、前記送液管には、前記ノズルの直前位置において送液管を送液管の外側から挟持し、送液管を弾性変形させることにより、液体種菌の流路を閉塞するバルブ装置が配設されていることを特徴とする。この構成を採用することにより、ノズルに供給する液体種菌の容量を均一にそろえることができる。
【0008】
また、前記バルブ装置は、当板と、該当板に対して往復動する押圧板と、該押圧板を駆動する駆動手段と、により構成されていて、前記駆動手段が、前記押圧板によって前記送液管を前記当板に押し付けることにより、前記送液管の流路を閉塞することを特徴とする。
また、前記当板には、前記押圧板と当接する部分に、弾性変形させた前記送液管と前記押圧板とが進入可能な凹部が形成されていること、または、前記押圧板には、前記当板と当接する部分に、弾性変形させた送液管と前記当板とが進入可能な凹部が形成されていることを特徴とする。
これらによれば、単純な構造でありながらも、ノズルへの液体種菌の供給量の制御をより精密に行うことができる。
【0009】
また、前記送液管はシリコンチューブであることを特徴とする。これによれば、送液管の耐久性を向上させることができるため好都合である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる液体種菌接種機によれば、液体種菌を収容する種菌収容器から栽培容器内の培地に液体種菌を接種するまでの間、液体種菌は送液管の流路面以外には何ら接触することがないため、清浄な状態で液体種菌を接種することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は種菌接種機10の側面図、図2は正面図(搬出路の出口側から臨んだ図)である。
種菌接種機10は、培地が充填され、キャップ11が装着された栽培容器12が複数本(図では16本)縦横(縦4列、横4列)に整列された状態で収容されたトレイ14を、搬送機構16で搬送し、搬送経路上の所定位置でキャップ脱着機構18によってキャップ11を外し、キャップ11が外された16本の栽培容器12内に、ノズル機構20により、液体種菌を一斉に接種できるように構成されている。
【0012】
続いて各部の詳細について説明する。
搬送機構16は4連のチェーンコンベアよりなる。すなわち、基台22に設けられたスプロケット23,23にチェーン24が掛け渡され、モータ25によって駆動される。
図1、図2において、符号26はストッパであり、常時はチェーンコンベア上から突出していて、チェーンコンベア上を搬送されてくるトレイ14を所定位置(キャップ脱着機構18の直下位置)で停止させる。後記するように、栽培容器12内の培地への一連の液体種菌の接種が終了し、キャップ11が再度栽培容器12の口部に装着されると、電磁ソレノイド27が駆動されてストッパ26がチェーンコンベアの下方に突入するので、トレイ14は出口方向に搬送される。
トレイ14が搬出されるとストッパ26が再度チェーンコンベア上に突出される。
【0013】
次に、図3〜図6によりキャップ脱着機構について説明する。
図3は栽培容器12の肩部押さえ機構30を示す概略図である。
符号31は支持バーであり、トレイ14の搬送方向と直角となるように両端側で基台22に固定されている。この支持バー31は、ストッパ26によって停止しているトレイ14の前方および後方に各1本ずつ配置されている。すなわち、トレイ14上からは外れた位置に配置されている。
【0014】
符号32は固定押え板である。固定押え板32は、図3で紙面に垂直な方向に延びており、両支持バー31に吊り板33によって支持されている。固定押え板32は4本配置され、図3中において、チェーンコンベア上を搬送されてくるトレイ14に収納された栽培容器12の右肩部位置となるように配置されている。すなわち、栽培容器12は、その右肩部が固定押え板32に沿うように搬送されてくる。
ストッパ26によってトレイ14が停止した際、各固定押え板32は、各列4本の栽培容器12の右肩部に対応位置している。
【0015】
符号34は可動押え板である。可動押え板34も図3の紙面に垂直な方向に4本配置されている。可動押え板34は、支持バー31と、支持バー31と平行に配置された可動ロッド35と、リンク板36とで構成される平行四辺形リンクのリンク板36の下端に固定されている。リンク板36は、軸37、38によりそれぞれ支持バー31、可動ロッド35に回動自在に軸支されている。可動ロッド35は、常時はスプリング39によって引かれ、これにより、吊り板33とリンク板36とはほぼ平行となり、栽培容器12は、固定押え板32と可動押え板34との間に進入可能である。
キャップ11が脱着される際は、可動ロッド35が電磁ソレノイド40によってスプリング39の付勢力に抗して引かれる。これにより可動押え板34が図3中において右方に移動し、固定押え板32との間で栽培容器12の肩部を押さえ込むことが理解される。
【0016】
図4、図5、図6はキャップ脱着機構を示す図である。なお、図5、図6においては、説明の都合上、固定押え板32と可動押え板34の図示を省略している点に注意されたい。
図4において、符号45は枠状をなす(ハッチング部)可動台であり、ストッパ26によって停止しているトレイ14の上方の水平面内で、トレイ14の搬送方向に対して45度の斜め方向に往復移動可能となっている。符号47はそのガイドポールである。ガイドポール47は、その軸線をトレイ14の搬送方向に対して水平面内で45度の角度をなすようにして基台22上に取り付けられている。可動台45は、その両側に位置する取り付けステー48の下面側に取付けられたガイドブッシュ49にガイドポール47が摺入することによって斜め方向に移動自在にガイドされる。
【0017】
そして、軸50を中心に回動可能に設けられたL字状のレバー51の一端側にカム52が作用することによって、レバー51の他端側が揺動される。このレバー51の他端側の二股部に、取り付けステー48の上面側に設けられたピン53が入り込んでいる。レバー51の他端側が揺動することによって、ピン53を介して可動台45がトレイ14の搬送方向に対して45度の角度で往復動される。カム52はモータ54(図2)によって駆動される。なお、基台22とガイドブッシュ49との間にはスプリング49a(図4)が配設され、レバー51の一端側が常時カム52に当接するように付勢している。
ガイドポール47、ガイドブッシュ49、レバー51、カム52、モータ54等によってスライド機構が構成される。
【0018】
可動台45の中央上方にカムシャフト55が軸線を中心として回転自在に可動台45上で軸受を介して支持されている。カムシャフト55はトレイ14の搬送方向と直交する方向に配設されている。
このカムシャフト55は、取り付けステー48上に配置されたモータ56によって回転駆動される。
また、可動台45の両端側には、図5、図6に示すように、ガイドブッシュ58が固定され、このガイドブッシュ58を挿通して上下動可能にロッド59が設けられている。
ロッド59は、可動台の各両端側に2本ずつ、計4本配設される。両端側の各2本のロッド59の上端部は連結板80によって連結されている。
【0019】
図5において、符号60はキャップ押え板であり、取付板61の下面側に取り付けられ、スプリング62(図6)によって下方に付勢されている。取付板61は、図4に示すようにトレイ14の搬送方向に間隔をおいて4本設けられ、各取付板61の両端部は共通の支持板64に固定されている。
各支持板64は、ガイドブッシュ66を介して、ロッド59により上下動自在にガイドされている。
キャップ押え板60は、各取付板61に4個ずつ設けられ、16本すべての栽培容器12のキャップ11に対応している。
【0020】
支持板64の上端側にはカムフォロワ67が取り付けられ、このカムフォロワ67に、カムシャフト55に設けられたカム68が作用する。
また、支持板64の下端には、一端が可動台45に固定されたスプリング70(図6)の他端が取付けられ、このスプリング70に付勢されて、カムフォロワ67はカム68に圧接される。
キャップ11の非脱着時には、図5に示すように、キャップ押え板60はキャップ11の上方に位置している。
【0021】
次に、符号72は掛止板であり、逆T字状に設けられて、取付板61の下方に位置する取付板73に固定されている。掛止板72は5本、図5、図6で紙面に垂直な方向に延びて配設され、逆T字の部分は、キャップ11上部の大径部であるフランジ部の下方側に進入するようになっている。
トレイ14に収容されてチェーンコンベア上を搬送されてくる栽培容器12は、そのキャップ11が、隣接する掛止板72の間を通過可能になっている。
【0022】
取付板73の両端側はそれぞれ支持板74に固定され、各支持板74は、可動台45の両端側の2本ずつのロッド59を連結するようにロッド59の下端に固定されている。
また、ロッド59の上端側にはカムフォロワ75が設けられ、このカムフォロワ75の下面側に、カムシャフト55に設けられたカム76が下方から当接している。
符号77は液体種菌を供給するノズルであり、各栽培容器12の上方に位置するようにして、合計16本設けられている。
【0023】
続いてキャップ11の脱着動作について説明する。
トレイ14が搬送機構により搬送されてストッパ26によって停止された際、制御部(図示せず)は、まず前記のように電磁ソレノイド40を作動させ、平行四辺形をなすリンク機構により固定押え板32と可動押え板34を作動させて栽培容器12の肩部を両側から押さえ込む。
【0024】
次いで制御部はモータ56を駆動して、カムシャフト55を回転させる。するとカム68が回転し、カムフォロワ67をスプリング70の付勢力に抗して下方に押し下げる。これにより支持板64、取付板61を介してキャップ押え板60が下方に押し下げられ、キャップ押え板60がキャップ11の上面をスプリング62の力によって押さえ込むことになる。
このときカム76も同時に回転するが、キャップ押え板60がキャップ11を押さえ込むまでは、カム76はカムフォロワ75を上昇させるようには作用しない(この部分のカム76は円形に形成されている)。
【0025】
キャップ押え板60がキャップ11を押え込むようになった段階で、カム76がカムフォロワ75を上方に押し上げるようにカムフォロワ75に作用する。これによりロッド59が上昇し、支持板74、取付板73を介して掛止板74が上昇し、キャップ11のフランジ部下面に当接し、フランジ部を押し上げる。キャップ11の上面側はキャップ押え板60によって押圧されており、掛止板74はスプリング62を圧縮するようにしてなおも一定高さ上昇し、キャップ押え板60と掛止板74とでキャップ11を挟みこんだ状態で、キャップ11を栽培容器12の口部上方に外す。
【0026】
上記のようにしてキャップ11が栽培容器12の口部上方に外される。このときカム68、76は共に半回転した状態であり、この状態で制御部がモータ56を停止させる。
次いで制御部によりモータ54が駆動され、カム52が回転してレバー51が揺動し、可動台45を、トレイ14の搬送方向に対して45度斜め方向に、トレイ14内における栽培容器12の配設ピッチの半ピッチ分スライド移動させる。この状態で制御部がモータ54を一時停止させる。
キャップ脱着機構は可動台45上に載っているので、キャップ11は、キャップ押え板60と掛止板74とで挟みこまれ、保持された状態で斜め方向にスライド移動する。
【0027】
図7は、キャップ11が移動する前における栽培容器12の状態を示す平面図である。また、図8はキャップ11が斜め方向に移動した後の栽培容器12の状態を示す平面図である。なお、図7において、符号82は、取付板73に設けたノズル進入用の孔である。
図8に示すように、キャップ11がトレイ14の上空を斜め方向にスライド移動した際、キャップ11は栽培容器12の口部からは外れた位置となる。またそのとき、ノズル進入用の孔82が栽培容器12の口部上方の位置となり、栽培容器12の口部が開放される。
次いで、後記するようにノズル77が栽培容器12の口部に向かって下降して栽培容器12内に所要量の液体種菌を接種するのである。
【0028】
液体種菌接種終了後、制御部によりモータ54が駆動され、可動台45がトレイ14の上方位置にくるように斜め方向にスライド移動される。
次いで、制御部によりモータ56が再駆動され、カムシャフト55が回転し、カム76、68がさらに半回転することにより、キャップ11が栽培容器12の口部に嵌着される。
すなわち、カム76が回転されることによって、キャップ押え板60と掛止板74とでキャップ11が保持されたままキャップ11が下降し、キャップ押え板60によってキャップ11が押圧され、掛止板74がキャップ11のフランジ部の下方に移動してキャップ11が栽培容器12の口部に嵌められる。さらにカム68が回転することにより、キャップ押え板60が待機位置まで上昇するのである。
【0029】
キャップ11が栽培容器12の口部に嵌着されると、制御部によりストッパ26が下降されると共に、モータ25が駆動されチェーンコンベアが作動し、トレイ14が搬送され、オペレータなどによりチェーンコンベアの出口から取り出される。なお、キャップ押え板60の押圧力のみでは、キャップ11を十分に栽培容器12の口部に押し嵌められない場合があるので、ストッパ26の前方に、キャップ11を上方から押圧するローラ83を備えたローラ装置84が配設されている(図4)。トレイ14に収容された栽培容器12がローラ装置84の下を通過する際にキャップ11がこのローラ83で押圧され、キャップ11が栽培容器12の口部に完全に嵌められるようになっている。
【0030】
続いてノズル機構20について説明する。
ノズル機構20はキャップ脱着機構18の上方に位置して設けられ、前記のように、トレイ14に収容された栽培容器12内の培地に一斉に液体種菌を接種するように、本実施形態においては16本のノズル77を有している。
ノズル77は内周面の径寸法が上側から下側に徐々に拡径するラッパ型に形成されている(図示せず)。ノズル77の内周面には、内壁面に沿って螺旋状の溝(図示せず)が形成されている。後述するように、送液機構であるチューブポンプにより液体種菌のみをノズル77に送液する場合においても、ノズル77の内周面に設けた螺旋状の溝に沿って液体種菌がノズル77の内周面を円滑に流下するので、液体種菌を栽培容器11内の培地に適切に滴下することができるのである。
【0031】
各ノズル77は、図9に示すように上下動板85に固定されている。上下動板85は、下端が上下動板85に連結された2本のロッド86が、基台22のガイド87に上下動自在に案内されることによって上下動する。2本のロッド86の上端間は連結板88によって連結され、この連結板88が、制御部により動作が制御されているクランク機構89によって上下動される。上下動機構であるクランク機構89は、基台22上に配設されたモータ90によって駆動される。
【0032】
液体種菌は、図示しないタンク内(種菌収容器)に貯留されており、図示しないチューブポンプにより送液管であるチューブ92(図10)により分配管93に送液される。チューブポンプの動作もまた、制御部により制御されている。
分配管93は図11に示すように2本設けられ、各分配管93から8本のチューブ94(これもまた送液管である)が分岐され、各チューブ94の各々がノズル77に接続されている。
チューブポンプは、液体種菌が充填されているチューブをローラによって順次押しつぶすことにより送液する公知の機構が採用され、液体種菌に非接触の状態で送液できるので、雑菌を嫌うきのこの種菌を供給するのに最適である。
【0033】
チューブ92、94には柔らかいシリコンチューブを用いると好適である。
液体種菌を定量供給するために、チューブ94の中途位置に電磁バルブやボールバルブ等の各種バルブを配設することももちろん可能ではあるが、本実施の形態では、液体種菌にできるだけ非接触とするために、図9に示すバルブ装置96を採用している。
【0034】
このバルブ装置96は、枠状に連結された4列の押圧板97(ハッチングの部位)を有する。押圧板97は支持板98の下面側に支持されていて、図9中において左右方向にスライド可能である。また押圧板97はスプリング99によって図9の左方に付勢されている。スプリング99の付勢力に抗して、制御部により動作が制御されているモータ100(駆動手段)によりカム101を駆動し、スプリング99の付勢力に抗して押圧板97が右方に移動可能になっている。この押圧板97によりチューブ94を当板102に押しつけ、チューブ94を潰すことにより液体種菌が落下しないようにすることができるようになっている。
【0035】
また、図9に示すように、当板102の板厚寸法は押圧板97の板厚寸法よりも厚く形成されていて、押圧板97が当接する部分に押圧板97を当板102に進入させるための凹部102Aが形成されている。シリコンチューブ94は、当板102に形成された図示しない板厚方向の貫通孔に挿通されていて、凹部102Aから進入してきた押圧板97により押圧される。
このような形態を採用することにより、当板102の上下2箇所でシリコンチューブ94を挟持することができるため、ノズル77への余分な液体種菌の流入を好適に防止することができる。
【0036】
上記のように、可動台45が斜め方向に移動して、栽培容器12の口部が開放されると、モータ90が駆動され、ノズル77が口部内にまで下降する。そして制御部によりチューブポンプが駆動されると共に、モータ100が駆動し、押圧板97が図9中において左方に移動してチューブ94が開放され、所定量の液体種菌がノズル77より培地上に供給される。液体種菌接種後、制御部がモータ90を駆動させることによりノズル77を待機位置まで上昇させると共に、モータ100を駆動して押圧板97によってチューブ94が潰され、規定量を超える液体種菌の落下が防止される。
【0037】
液体種菌の接種装置10は上記のように構成されている。
種菌の接種動作は次のようになされる。
栽培容器12を収容したトレイ14が搬送機構16によって搬送される。トレイ14はオペレータによりチェーンコンベア上に載置されるが、別途コンベアを介して自動搬入されるようにしてもよい。
トレイ14がキャップ脱着機構18の直下に位置すると、ストッパ26により停止される。
【0038】
そして前記したように、固定押え板32と可動押え板34とにより、栽培容器12の肩部が押えられ、次いで、キャップ押え板60が下降、掛止板74が上昇して、両者間でキャップ11を挟み込んでキャップ11を口部から外す。次いで、可動台45と共に、キャップ11がキャップ押え板60と掛止板74とにより挟みこまれた状態で保持されたまま、トレイ14の搬送方向に対して斜め方向に移動し、口部上方が開放される。そして、ノズル77が下降し、栽培容器12内の培地上に所定量の液体種菌が接種されるのである。
上記一連の動作は、図示しない制御部によって制御される。
【0039】
以上に実施形態に基づいて発明を詳細に説明してきたが、本願発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、他の形態を採用することができるのはもちろんである。
例えば、実施形態においては、縦横にそれぞれ4本ずつ整列させた栽培容器12をトレイ14に収容した状態で、トレイ14内の全ての栽培容器12に同時に液体種菌を接種する形態について説明しているが、トレイ14に収容されている栽培容器12に対して一本ずつ又は複数本ずつ接種する形態とすることもできるし、栽培容器12をトレイ14に収容することなく、栽培容器12単体を搬送する途中において液体種菌を接種する形態とすることももちろん可能である。
また、本実施形態における可動台45(キャップ11)のスライド方向は、トレイ14の搬送方向に対し、その水平面内方向に45度傾斜させた方向としているが、可動台45を他の角度方向にスライド移動させることももちろん可能である。要は、栽培容器12から離脱させたキャップ11と栽培容器12の口部との間にノズル77を進入させることができるような状態にすることができればよいのである。
【0040】
また、以上に説明した実施形態においては、クランク機構89やスライド機構およびバルブ装置96の駆動機構としては、モータとモータおよびカムを用いた実施形態について開示しているが、これらに替えて流体シリンダ等を採用することももちろん可能である。
また、バルブ装置96を構成する当板102を押圧板97よりも板厚となるように形成すると共に、当板102に凹部102Aを形成し、押圧板97を当板102の凹部102Aに進入させることでシリコンチューブ94の流路を閉塞する形態を示しているが、押圧板97を当板102よりも板厚に形成し、押圧板97の当板102が当接する部分に凹部を形成し、押圧板97に形成された凹部と当板102の隙間部分でシリコンチューブ94を挟持することもできる。
さらに、当板102または押圧板97において、互いに対向する面シリコンチューブ94を配設し、当板102に押圧板97を単純に当接させてシリコンチューブ94の流路の開閉を制御するバルブ装置96とすることももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】種菌接種機の側面図である。
【図2】種菌接種機の正面図(搬出路の出口側から臨んだ図)である。
【図3】キャップの肩部押え機構の説明図である。
【図4】キャップ脱着機構の可動台の移動機構の説明図である。
【図5】キャップ脱着機構のキャップ取り外し前の状態の説明図である。
【図6】キャップ脱着機構のキャップ取り外し中の状態の説明図である。
【図7】キャップ脱着機構の斜め移動前の状態の説明図である。
【図8】キャップ脱着機構の斜め移動後の状態の説明図である。
【図9】ノズル機構の説明図である。
【図10】ノズル機構の説明図である。
【図11】ノズル機構の分配管の説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10 種菌接種機
11 キャップ
12 栽培容器
14 トレイ
16 搬送機構
18 キャップ脱着機構
20 ノズル機構
22 基台
26 ストッパ
30 肩部押え機構
31 支持バー
32 固定押え板
34 可動押え板
35 可動ロッド
36 リンク板
39 スプリング
40 モータ
45 可動板
47 ガイドポール
48 取り付けステー
49 ガイドブッシュ
49a スプリング
51 レバー
52 カム
53 ピン
54 モータ
55 カムシャフト
56 モータ
58 ガイドブッシュ
59 ロッド
60 キャップ押え板
61 取付板
62 スプリング
64 支持板
67 カムフォロワ
68 カム
70 スプリング
72 掛止板
73 取付板
74 支持板
75 カムフォロワ
76 カム
77 ノズル
83 ローラ
84 ローラ装置
85 ロッド
87 ガイド
89 クランク機構
90 モータ
92、94 チューブ
93 分配管
96 バルブ装置
97 押圧板
99 スプリング
100 モータ
101 カム
102 当板
102A 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培用の培地が充てんされた栽培容器内に液体種菌を接種する液体種菌接種機であって、
液体種菌を収容する種菌収容器と、
前記栽培容器に前記種菌収容器に収容されている液体種菌を滴下するノズルと、
前記種菌収容器と前記ノズルとを接続する送液管と、
前記種菌収容器から前記送液管を経由させて前記ノズルに液体種菌を送液するチューブポンプと、を具備していることを特徴とする液体種菌接種機。
【請求項2】
前記送液管には、前記ノズルの直前位置において送液管を送液管の外側から挟持し、送液管を弾性変形させることにより、液体種菌の流路を閉塞するバルブ装置が配設されていることを特徴とする請求項1記載の液体種菌接種機。
【請求項3】
前記バルブ装置は、当板と、該当板に対して往復動する押圧板と、該押圧板を駆動する駆動手段と、により構成されていて、
前記駆動手段が、前記押圧板によって前記送液管を前記当板に押し付けることにより、前記送液管の流路を閉塞することを特徴とする請求項2記載の液体種菌接種機。
【請求項4】
前記当板には、前記押圧板と当接する部分に、弾性変形させた前記送液管と前記押圧板とが進入可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の液体種菌接種機。
【請求項5】
前記押圧板には、前記当板と当接する部分に、弾性変形させた送液管と前記当板とが進入可能な凹部が形成されていることを請求項3記載の液体種菌接種機。
【請求項6】
前記送液管はシリコンチューブであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の種菌接種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−72159(P2009−72159A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246305(P2007−246305)
【出願日】平成19年9月22日(2007.9.22)
【出願人】(391047880)オギワラ精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】