説明

液吐出不良検出装置、インクジェット記録装置および液吐出不良検出方法

【課題】液吐出不良の判別を容易に行うことを可能とする。
【解決手段】液吐出不良検出装置1では、ノズル101から吐出される液滴107の飛行経路に発光素子102から光ビームを照射し、当該光ビームが飛行する液滴に衝突して生じる前方散乱光109を受光部106で受光し、前方散乱光109の光強度の変化に応じた波形データを取得する。吐出制御部111は、N+1(N:自然数)番目に吐出される液滴が光ビームに到達する直前に、N番目に吐出される液滴が光ビームを通過する吐出間隔でノズル101から液滴を吐出させる。データ処理部112は、吐出させた液滴107から取得した波形データを記憶し、複数の液滴107から取得した波形データの特徴量を集計する。不良判定部113は、集計された特徴量に基づいて液吐出不良を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液吐出不良検出装置、インクジェット記録装置および液吐出不良検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、微細なノズルから微小な各色インク滴(液滴)を吐出する各色のインクジェットヘッドを備え、用紙等の記録媒体に対してそのインクジェットヘッドを移動させながら液滴を吐出することで記録媒体上に画像形成を行う。高解像度の画像形成のためにはノズルを微細化して液滴サイズを微小化する必要があるが、ノズルが微細なため、印刷停止時にインクが乾燥する等してノズル詰まりが起きて液滴の吐出不良(液吐出不良)が発生し、画像にドット抜け等が生じて画像品質が低下する問題がある。
【0003】
この問題を解決するため、インクジェット記録装置には、液吐出不良を検出する液吐出不良検出装置が備えられている。例えば、ノズルから吐出する液滴に、レーザダイオード等の発光素子から射出したレーザ光を照射して遮蔽された光(遮蔽光)をフォトダイオード等の受光素子で受光し、受光素子が得る出力電圧と基準電圧値とを比較して、液滴が正常に吐出されたか否かを判定する液吐出不良検出装置が知られている。
【0004】
上述した遮蔽光による液吐出不良検出(遮蔽光方式)では、受光素子が得る出力電圧(受光信号)のS/N比を上げるため、レーザ径内に複数滴入る間隔で液滴を吐出させて、レーザ径内に複数の液滴を入れることでS/N比の改善を図っている(特許文献1、4)。また、遮蔽光方式では、インクの色による透過性の違いにより受光素子で得られる出力電圧が異なることから、インクの色を問わず同等の出力電圧を得るために、インクの色によりレーザ径内に入る液滴の数の変更や、液滴の体積の変更を行うものがある(特許文献5)。また、液吐出不良を判別する方法としては、受光素子が得る出力電圧をコンパレータに入れて判別する方法(特許文献3)、複数の良波形の平均的な波形と検査対象の波形とを比較して判別する方法もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4227395号公報
【特許文献2】特開2002−11871号公報
【特許文献3】特許第3820830号公報
【特許文献4】特許第3876700号公報
【特許文献5】特開2000−233520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の液吐出不良検出装置では、数滴吐出後に滴の軌道が乱れ異常となるものや、ゆるやかな周期で曲がっているため数十滴分のデータを取得しないとデータ上から異常と判別するのが難しい不良には対処することができない。
【0007】
係る問題を、従来の液吐出不良検出装置で解決するには、例えば、特許文献1の装置の場合では、ビーム径内に5滴入る間隔で吐出させる処理を複数回行い、複数の遮光波形を取得し、それらを統計的に判定する方法が有効であるが、上記方法でそれを行う場合、ビーム径内に複数滴入れる間隔で吐出させる制御と、一定時間おいてから再度ビーム径内に複数滴入れる間隔で吐出させる制御の2つの吐出制御を行う必要があり、制御が煩雑になるなどの課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、液吐出不良の判別を容易に行うことを可能とした液吐出不良検出装置、インクジェット記録装置および液吐出不良検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の液吐出不良検出装置は、ノズルから吐出される液滴の飛行経路に発光素子から光ビームを照射し、当該光ビームが飛行する液滴に衝突して生じる散乱光を受光素子で受光し、散乱光の光強度の変化に応じた波形データを取得する取得手段と、N+1(N:自然数)番目に吐出される液滴が光ビームに到達する直前に、N番目に吐出される液滴が光ビームを通過する吐出間隔で、前記ノズルより液滴を吐出する吐出手段と、前記吐出手段が吐出した液滴から取得した前記波形データを記憶する記憶手段と、複数の液滴から取得した前記波形データの特徴量を集計する集計手段と、集計された前記特徴量に基づいて液吐出不良を検出する検出手段と、を備える。
【0010】
また、本発明の液吐出不良検出方法は、取得手段が、ノズルから吐出される液滴の飛行経路に発光素子から光ビームを照射し、当該光ビームが飛行する液滴に衝突して生じる散乱光を受光素子で受光し、散乱光の光強度の変化に応じた波形データを取得する取得ステップと、吐出手段が、N+1(N:自然数)番目に吐出される液滴が光ビームに到達する直前に、N番目に吐出される液滴が光ビームを通過する吐出間隔で、前記ノズルより液滴を吐出する吐出ステップと、記憶手段が、前記吐出手段が吐出した液滴から取得した前記波形データを記憶する記憶ステップと、集計手段が、複数の液滴から取得した前記波形データの特徴量を集計する集計ステップと、検出手段が、集計された前記特徴量に基づいて液吐出不良を検出する検出ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液吐出不良の判別を容易に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、一実施形態に係る液吐出不良検出装置の主要部周辺の一構成例を説明するための説明図である。
【図2】図2は、図1に示す受光部およびデータ処理部の一構成例を説明するための説明図である。
【図3】図3は、液滴を吐出させる吐出クロック、および、その吐出クロックを受けてノズルより吐出された液滴の増幅回路部を通過した後の受光信号を説明する説明図である。
【図4】図4は、良ノズルから吐出された20滴の液滴の受光信号のデジタル信号変換後の波形の一例を説明するための説明図である。
【図5】図5は、吐出毎に異なった方向に曲がる、ばらつきと呼ばれる不良を有する不良ノズルから吐出された20滴の液滴の受光信号のデジタル信号変換後の波形の一例を説明するための説明図である。
【図6】図6は、一定方向に安定して曲がる不良を有する不良ノズルから吐出された20滴の液滴の受光信号のデジタル信号変換後の波形の一例を説明するための説明図である。
【図7】図7は、FFTを用いた場合の不良判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、図4の良波形のFFTスペクトルを説明するための説明図である。
【図9】図9は、図5の不良波形のFFTスペクトルを説明するための説明図である。
【図10】図10は、図6の不良波形のFFTスペクトルを説明するための説明図である。
【図11】図11は、液吐出不良検出装置を備えるインクジェット記録装置の一例の構成を正面から示す概念図である。
【図12】図12は、インクジェット記録装置の一部を斜め上から観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る液吐出不良検出装置、インクジェット記録装置および液吐出不良検出方法の一実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る液吐出不良検出装置1の主要部周辺の一構成例を説明するための説明図である。
【0015】
図1に示すように、液吐出不良検出装置1は、複数のノズル101を有し、各ノズル101からインク滴(液滴)を画像信号に応じて吐き出して記録用紙などの媒体に画像を形成(記録)する記録ヘッド100の液吐出不良を検出する装置であり、インクジェット記録装置(詳細は後述する)に備えられている。
【0016】
具体的には、液吐出不良検出装置1は、複数のノズル101の中で不良判定を行うノズル101より液滴107を吐出させ、その液滴107の飛行経路にレーザダイオード等の発光素子102から平行光に補正するコリメートレンズ103を介して光ビーム104(レーザ光)を照射する。即ち、液滴107の飛行経路の途上では、光ビーム104の光ビーム光軸105が略直交するように交わっている。この時、光ビーム104が飛行する液滴107に衝突して散乱光108、前方散乱光109が生じる。
【0017】
受光部106は、光ビーム光軸105のビーム径から外れた位置で、光ビーム104が液滴107に衝突して角度θで生じる前方散乱光109を受光する。
【0018】
図2は、図1に示す受光部106およびデータ処理部112の一構成例を説明するための説明図である。
【0019】
図2に示すように、液吐出不良を検出する際には、n1〜nNの複数のノズル101の中で、液吐出不良の検出を行うノズル101(nX)から所定の間隔で液滴107(d1〜dK)を吐出させる。吐出された液滴107は、ノズル101から距離HL飛行したところで光ビーム104と交わる。この光ビーム104と液滴107との交わりにより、上述した散乱光108、前方散乱光109が生じる。生じた前方散乱光109は、光ビーム104の下に配置した受光部106により受光される。
【0020】
なお、距離HLは、記録ヘッド100のノズル101が設けられた底面から光ビーム104までの距離であり、具体的には、3mm〜7mm程度であるが、本実施形態では、3mmとしている。また、本実施形態では、ビーム径LLを1mmとしている。
【0021】
受光部(アナログ信号処理部)106は、受光素子1061、電流電圧変換回路部1062、ハイパスフィルタ部1063、増幅回路部1064、A/D変換部1065などを有している。
【0022】
ここで、受光素子1061は、受光した光強度に応じた電流を出力するフォトダイオードなどで構成される。
【0023】
電流電圧変換回路部1062は、入力された電流を電圧に変換する回路などで構成され、受光素子1061が出力する電流を電圧に変換して出力する。
【0024】
ハイパスフィルタ部1063は、電流電圧変換回路部1062より出力される電圧のDC成分(ノイズ成分)を除去または低減する。より具体的には、ハイパスフィルタ部1063は、液滴がビーム径内104を通過していない時でも生じるオフセット電圧の除去や、小さな滴がビーム内を低速度で通過したときに生じるミストによる受光信号成分を除去する。なお、本実施形態では、カットオフ周波数を300Hzとする。
【0025】
増幅回路部1064は、ハイパスフィルタ部1063より出力された電圧を増幅する。
なお、増幅後の出力は、正常なノズルから液滴を吐出させた時、散乱光出力の振幅値が一定の値(本実施形態では、6V程度)となるように調整している。
【0026】
A/D変換部1065は、増幅回路部1064により増幅された電圧(アナログ)をディジタル変換してデータ処理部112へ出力する。
【0027】
これにより、データ処理部112は、前方散乱光109の光強度の変化に応じた電圧値(波形データ)を得る。図1、2では、受光部106は、光ビーム104の下に配置しており、光ビーム径と受光部106の受光面が重ならない位置で、できるだけ光ビーム光軸105の中心近くに受光素子1061を配設することにより、効率の良い検出が可能となる。
【0028】
また、受光部106は、散乱光108、特に散乱光108の中で光強度が強い前方散乱光109を受光することにより、その光強度を電圧値として計測することができ、光ビーム104のビーム径内に1滴の液滴107が入れば十分にS/N比を持った電圧値を得ることができるため、1滴ごとの液滴107の挙動を電圧値の波形として捉えることができる。また、インク色による電圧値の出力差も生じないことから、インク色ごとに吐出条件等を変更する必要もない。
【0029】
データ処理部112では、複数の液滴107を吐出させて液滴107ごとの波形データを記憶手段としてのメモリ1121に記憶し、記憶した波形データの特徴量(詳細は後述する)を集計手段としての演算部1122で集計する。なお、本実施形態では、サンプリングレート100kSとし、20滴分の波形をA/D変換して、メモリ1121に記憶する。
【0030】
即ち、液吐出不良検出装置1では、前記集計した値をもとに液滴107が正常に吐出されたか否かを判定する。
【0031】
上述した動作を制御する構成として、液吐出不良検出装置1は、図1に示すように、制御部(デジタル信号処理部)110、ノズル駆動部120、発光駆動部130を備える。
【0032】
制御部110は、CPU、ROM、RAM、タイマーなどを有するマイクロコンピュータシステムで構成され、ROMに格納されたプログラムをRAM上に展開してCPUが順次実行することで、液吐出不良検出装置1の動作を中央制御する。そして、制御部110は、上述したCPUがプログラムを順次実行することで、吐出制御部111と、データ処理部112と、不良判定部113と、して機能する。
【0033】
吐出制御部111は、ノズル101からの液滴107の吐出を行うノズル駆動部120や、発光素子102の発光を行う発光駆動部130に制御信号を出力して、記録ヘッド100の液吐出不良を検出する際の液滴107の吐出や発光素子102の発光を制御する。具体的には、記録ヘッド100の液吐出不良の検出開始に伴い、発光素子102の発光を開始させ、液吐出不良の検出を行うノズル101からの液滴107の吐き出しを開始させる。
【0034】
なお、本実施形態では、吐出制御部111による液滴107の吐き出し間隔(吐出間隔)は、N+1(N:自然数)番目に吐出される液滴が光ビームに到達する直前に、N番目に吐出される液滴が光ビームを通過する吐出間隔である。
【0035】
より具体的には、前記吐出間隔としては、不良でない正常ノズルからの液滴の吐出時に、正常ノズルから吐出される液滴の速度(スピード)ばらつき範囲において低速で吐出された場合でもビーム径内に2滴以上入らない最短吐出間隔であり、液滴のスピードや、そのスピードのばらつきや、ビーム径や、液滴の径などの設計事項をもとに推定され、工場出荷時などに予め設定された値である。
【0036】
例えば、不良でない正常ノズル(良ノズル)から吐出された滴のスピードを測定し、標準偏差から決めても良いし、取得データ内での上限下限で決めても良いものとする。
【0037】
なお、本実施形態では、正常ノズルから吐出させたときの液滴の平均スピードを「7.94m/s」とし、平均±15%の範囲でばらついているものとした場合、液滴のスピード(Sd)は、7.94±15%[m/s]となる。
【0038】
これにより、不良でない正常ノズルからの液滴の吐出時に、正常ノズルから吐出される液滴の速度(スピード)ばらつき範囲において低速で吐出された場合でもビーム径内に2滴以上入らない最短吐出吐出周波数(Fd)は、Fd=1÷{0.001[m]÷(7.94−7.94×0.15)[m/s]}の式から、6749[Hz]と求まる。なお、ここでは、ビーム径(LL)>>液滴の径と仮定している。
【0039】
データ処理部112は、複数の液滴107を吐出させて液滴107ごとの波形データの特徴量を集計するデータ処理を行う。具体的には、制御部110のRAMに確保された作業領域をメモリ1121として、CPUがプログラムを順次実行することで演算部1122としての機能を実現することで、上述したデータ処理を行う。
【0040】
不良判定部113は、データ処理部112が集計した値をもとに液滴107が正常に吐出されたか否かを判定することで、液吐出不良の検出を行う。
【0041】
図3(a)は、液滴を吐出させる信号(以下、「吐出クロック」という。)を説明するための説明図であり、図3(b)は、吐出クロックを受けてノズル101より吐出された液滴の、増幅回路部1064を通過した後の受光信号を説明する説明図である。
【0042】
図3(a)に示すように、吐出間隔は、吐出周波数Fdの逆数1/Fdである。また、図3(b)に示すように、VPは受光信号出力を示しており、本実施形態では、ノズルが正常ノズルである場合には、VP=6Vとなるようになっている。
【0043】
図4は、正常ノズル(良ノズル)から吐出された20滴の液滴の受光信号のデジタル信号変換後の波形の一例を説明するための説明図であり、図5は、吐出毎に異なった方向に曲がる、ばらつきと呼ばれる不良を有する不良ノズルから吐出された20滴の液滴の受光信号のデジタル信号変換後の波形の一例を説明するための説明図であり、図6は、一定方向に安定して曲がる不良を有する不良ノズルから吐出された20滴の液滴の受光信号のデジタル信号変換後の波形の一例を説明するための説明図である。
【0044】
図4に示すように、正常ノズル(良ノズル)から得られる波形は、各液滴の信号波形が一定(振幅成分が一定)の形状を有しており、隣同士の液滴の信号波形の間に一定の隙間を隔てた良波形となっている。
【0045】
一方、図5に示す不良ノズルから得られる波形は、吐出毎に異なった方向に曲がるばらつきが発生することで、ビームの強度分布上の強い部分や弱い部分を通過するため振幅成分にばらつきが生じ、同時に速度にもばらつきを持つため、速度が遅く吐出されたときは、ビーム径LL内に液滴が2滴以上入ることとなり、隣の液滴の信号波形とくっついた波形が得られる。
【0046】
また、図6に示す不良ノズルから得られる波形は、一定方向に安定して曲がるばらつきが発生することで、液滴速度(スピード)が正常時に比べ遅くなるため、ビーム径LL内に液滴が2滴以上入ることとなり、隣の液滴の信号波形とくっついた波形が得られる。
【0047】
即ち、本実施形態では、図5および図6に示すような波形が得られることで、波形の形状が崩れ、良否の判定が行い易くなる。
【0048】
ここで、図4の良波形と、図5および図6の不良波形とを見分ける方法は複数考えられる。例えば、特徴量を面積とし、面積で良否判定しても良いし、ピークのばらつきを算出してそれを特徴量として良否判定しても良い。また、MT(Mahalanobis Taguchi:マハラノビス タグチ)法等の統計手法を用いて、複数の特徴量から総合的に判定しても良い。
【0049】
なお、本実施形態では、FFT(Fast Furier Transform:高速フーリエ変換)を用いる方法について説明する。具体的には、この判定方法は、20滴の吐出波形全体をFFTし、そのある特定の周波数成分から判定を行う方法である。その方法について図7〜図10を参照して説明する。
【0050】
図7は、FFTを用いた場合の不良判定方法の処理手順を示すフローチャートである。図8は、図4の良波形のFFTスペクトルを説明するための説明図であり、図9は、図5の不良波形のFFTスペクトルを説明するための説明図であり、図10は、図6の不良波形のFFTスペクトルを説明するための説明図である。
【0051】
なお、図7に示すステップS2における吐出周波数付近を、吐出周波数を「6479」とした場合、「6749±800Hz」と定義する。
【0052】
この場合、図8の場合の最大値は「13.33」である。一方、図9の場合の最大値は「3.62」であり、図8の最大値「13.33」と比較して大きく減少している。また、図10の場合の最大値は「6.85」であり、図8の最大値「13.33」と比較して大きく減少している。
【0053】
従って、図7のステップS3における閾値を「6.86」と設定することで、図4の良波形と、図5および図6の不良波形の良否判定が行える。なお、実際に閾値を決める場合には、良品の波形を複数取得し、それぞれ6749±800Hzのピーク情報を求め、その平均と標準偏差から定めるようにしても良い。
【0054】
図7に示すように、まず、データ処理部112は、20滴の吐出波形全体のFFTスペクトルを取得する(ステップS1)。
【0055】
続いて、データ処理部112は、ステップS1で取得したFFTスペクトルから予め定められた吐出周波数付近(例えば、6749±800Hzの範囲)のピーク値を取得する(ステップS2)。
【0056】
続いて、不良判定部113は、ステップS2で取得したピーク値が予め定められている閾値(例えば、6.86)以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0057】
このステップS3の判定の結果、ピーク値が閾値以上であると判定された場合には(ステップS3:Yes)、不良判定部113は、正常判定する、即ち、検査対象のノズルが正常ノズルであると判定し(ステップS4)、ここでの処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS3の判定の結果、ピーク値が閾値未満であると判定された場合には(ステップS3:No)、不良判定部113は、不良判定する、即ち、検査対象のノズルが不良ノズルであると判定し(ステップS5)、ここでの処理を終了する。
【0059】
即ち、本実施形態によれば、液吐出不良の判別を容易に行うことができる。
【0060】
より具体的には、本実施形態によれば、吐出制御部111による液滴107の吐き出し間隔(吐出間隔)を、N+1(N:自然数)番目の液滴が光ビームに到達する直前に、N番目の液滴が光ビームを通過する吐出間隔(前記した最短吐出間隔)としたため、不良ノズルから、速度が遅かったり、ばらついたりして液滴が吐出されるとビーム径内に複数滴入ることになり、波形形状が崩れ良否判定を容易に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、FFTの特定周波数のピーク情報から良否の判定を行っているため、簡易な処理で様々な曲がり不良、欠損不良の良否を判定することができる。
【0062】
ここで、上述した液吐出不良検出装置1を備えるインクジェット記録装置を図11、図12を参照して説明する。図11は、液吐出不良検出装置1を備えるインクジェット記録装置2の一例の構成を正面から示す概念図である。図12は、インクジェット記録装置2の一部を斜め上から観察した図である。
【0063】
図11に示すように、インクジェット記録装置2の筐体10の左右の側板11、12には、ガイドシャフト13とガイド板14とが平行に掛け渡して設けられている。ガイドシャフト13およびガイド板14は、キャリッジ15に摺動可能に貫通される。キャリッジ15には、不図示の無端ベルトが取り付けられる。無端ベルトは、筐体10内の左右に設けられる図示しない駆動プーリと従動プーリに掛けまわされる。そして、駆動プーリの回転と共に従動プーリが従動回転されて無端ベルトを走行させる。これにより、キャリッジ15が、図11の矢印で示されるよう左右に移動される。
【0064】
キャリッジ15には、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクジェットヘッド16y、16c、16m、16b(以下、ヘッド16で代表させて記述する。)が、キャリッジ15の移動方向に並列配置されている。各ヘッド16は、下向きのノズル面に複数のノズルを直線状に並べたノズル列を有する。図示しないが、直線状のノズル列は、キャリッジ15の移動方向と直交する方向に設けられる。
【0065】
そして、キャリッジ15が図11のように右端のホームポジションに存在するときには、各ヘッド16は、筐体10内の底板17上に設置する単独回復装置18と対向する。単独回復装置18は、液吐出不良検出装置1で液吐出不良を検出したノズルからインクを吸い出し、インクジェット記録装置2自身で単独で液体吐出不良を回復する装置である。
【0066】
液吐出不良検出装置1は、筐体10内の底板17上に、単独回復装置18に隣接して配置される。液吐出不良検出装置1は、ヘッド16の各ノズルの液吐出不良を上述した検出処理によって検出する。
【0067】
液吐出不良検出装置1に隣接する位置には、板状のプラテン22を設置する。プラテン22の背面側には、記録媒体である用紙23をプラテン22上に供給する給紙台24が斜めに立てて設けられる。また、図示を省略するが、給紙台24上の用紙23をプラテン22上に送り出す給紙ローラが備えられる。さらに、プラテン22上の用紙23を矢示方向に搬送して正面側に排出する搬送ローラ25が設けられる。
【0068】
筐体10内の底板17上には、さらに左端に駆動装置26が設置される。駆動装置26は、不図示の給紙ローラや搬送ローラ25などを駆動するとともに、上述した駆動プーリを駆動することにより無端ベルトを走行させてキャリッジ15を移動する。
【0069】
そして、記録時は、駆動装置26で駆動されることにより用紙23がプラテン22上に移動され、所定位置に位置決めされる。また、キャリッジ15が移動されて用紙23上を走査され、左方向に移動しながら4色のヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルから液滴が吐出され、用紙23上に画像が記録される。画像記録後、キャリッジ15が右方向に戻されるとともに、用紙23が図12の矢印の方向に所定量搬送される。
【0070】
次いで、再びキャリッジ15が左方向に移動されながら往路で4色のヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルから液滴が吐出され、用紙23上に画像が記録される。そして、同様に画像記録後、キャリッジ15が右方向に戻されるとともに、用紙23が図12の矢印の方向に所定量搬送される。以下同様の動作が繰り返され、1枚の用紙23上に画像が記録される。
【符号の説明】
【0071】
1…液吐出不良検出装置、2…インクジェット記録装置、10…筐体、11…側板、12…側板、13…ガイドシャフト、14…ガイド板、15…キャリッジ、16…ヘッド、17…底板、18…単独回復装置、22…プラテン、23…用紙、24…給紙台、25…搬送ローラ、26…駆動装置、100…記録ヘッド、101…ノズル、102…発光素子、103…コリメートレンズ、104…光ビーム、105…光ビーム光軸、106…受光部、107…液滴、108…散乱光、109…前方散乱光、110…制御部、111…吐出制御部、112…データ処理部、113…不良判定部、120…ノズル駆動部、130…発光駆動部、1061…受光素子、1062…電流電圧変換回路部、1063…ハイパスフィルタ部、1064…増幅回路部、1065…A/D変換部、1121…メモリ、1122…演算部、HL…距離、LL…ビーム径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吐出される液滴の飛行経路に発光素子から光ビームを照射し、当該光ビームが飛行する液滴に衝突して生じる散乱光を受光素子で受光し、散乱光の光強度の変化に応じた波形データを取得する取得手段と、
N+1(N:自然数)番目に吐出される液滴が光ビームに到達する直前に、N番目に吐出される液滴が光ビームを通過する吐出間隔で、前記ノズルより液滴を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段が吐出した液滴から取得した前記波形データを記憶する記憶手段と、
複数の液滴から取得した前記波形データの特徴量を集計する集計手段と、
集計された前記特徴量に基づいて液吐出不良を検出する検出手段と、
を備える液吐出不良検出装置。
【請求項2】
前記特徴量は、前記波形データから算出された周波数スペクトルの吐出周波数付近のピーク情報である、請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液吐出不良検出装置と、
前記ノズルから吐出される液滴で媒体に画像を形成する画像形成部と、
を備えるインクジェット記録装置。
【請求項4】
液吐出不良検出装置で実行される液吐出不良検出方法であって、
取得手段が、ノズルから吐出される液滴の飛行経路に発光素子から光ビームを照射し、当該光ビームが飛行する液滴に衝突して生じる散乱光を受光素子で受光し、散乱光の光強度の変化に応じた波形データを取得する取得ステップと、
吐出手段が、N+1(N:自然数)番目に吐出される液滴が光ビームに到達する直前に、N番目に吐出される液滴が光ビームを通過する吐出間隔で、前記ノズルより液滴を吐出する吐出ステップと、
記憶手段が、前記吐出手段が吐出した液滴から取得した前記波形データを記憶する記憶ステップと、
集計手段が、複数の液滴から取得した前記波形データの特徴量を集計する集計ステップと、
検出手段が、集計された前記特徴量に基づいて液吐出不良を検出する検出ステップと、を含む液吐出不良検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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