説明

液吐出不良検出装置

【課題】液滴が連続して吐出される場合であっても、各液滴の吐出不良を高精度に検出する。
【解決手段】ノズルから吐出されて飛翔する液滴を液滴の吐出方向から撮像するカメラと、撮像された画像上で予め定められた座標系での液滴の座標を算出する座標算出部112と、算出された座標と、正常に吐出されるときの上記座標系での液滴の座標との差分を算出する差分算出部113と、差分と予め定められた閾値とを比較し、差分が閾値より大きい場合に、ノズルによる液滴の吐出不良が生じたと判定する判定部114と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド等から吐出される液滴を検査する液吐出不良検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、微細なノズルから微小な各色インク滴を吐出する各色のインクジェットヘッドを備え、用紙等の記録媒体に対してそのインクジェットヘッドを移動させながらインク滴を吐出することで記録媒体上に画像形成を行う。高精度に画像を形成するには、インク滴が正常な方向に吐出されるように制御する必要がある。
【0003】
このため、工場出荷前に液滴(インク滴)の着弾位置のずれを確認するための検査を行う記録ヘッド検査装置などが利用されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の方法では、吐出面から離間して位置する記録媒体に液滴を着弾させ、吐出口面および記録媒体に着弾した液滴を記録媒体の下方向に配置した画像処理用カメラにより認識して画像処理を行う。そして、着弾した液滴と吐出口の座標とから両者間の水平距離および垂直距離を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−062158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、例えば同一のノズルから連続して複数の液滴を吐出した場合、複数の液滴が記録媒体に重なって着弾するため、各液滴の着弾状況を確認することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液滴が連続して吐出される場合であっても、各液滴の吐出不良を高精度に検出できる液吐出不良検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ノズルから吐出されて飛翔する液滴を前記液滴の吐出方向から撮像する撮像手段と、撮像された画像上で予め定められた座標系での前記液滴の座標を算出する座標算出手段と、算出された前記座標と、正常に吐出されるときの前記座標系での前記液滴の座標との差分を算出する差分算出手段と、前記差分と予め定められた閾値とを比較し、前記差分が前記閾値より大きい場合に、前記ノズルによる前記液滴の吐出不良が生じたと判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液滴が連続して吐出される場合であっても、各液滴の吐出不良を高精度に検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる液吐出不良検出装置の側面図を表す。
【図2】図2は、カメラにより撮像された映像のうち、インク滴が写っている画像の一例を示す図である。
【図3】図3は、液吐出不良検出装置の機能ブロック図である。
【図4】図4は、複数の画像を合成した画像の一例を示す図である。
【図5】図5は、インク滴Bnを基準としてピッチを算出した場合の例を示す図である。
【図6】図6は、ノズル位置と、ノズル位置に対する撮像されたインク滴の位置との差分の一例を示す図である。
【図7】図7は、このように構成した場合に用いる治具の一例を示す図である。
【図8】図8は、インク滴群およびバラツキ範囲の一例を示す図である。
【図9】図9は、図8のようなバラツキ範囲から求められた中心の座標の一例を示す図である。
【図10】図10は、カメラのレンズとインク滴との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液吐出不良検出装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態にかかる液吐出不良検出装置100の側面図を表す。図1に示すように、液吐出不良検出装置100は、台座1と、ヘッド固定シャフト2と、ステージ3a、3bと、ヘッド固定治具4と、レール5と、自動ステージ6と、カメラ7と、ガラス板8と、を備えている。
【0012】
ヘッド固定シャフト2は、台座1に固定されている。ステージ3aは、ヘッド固定シャフト2に固定され、ステージ3bを保持する。ステージ3bは、ステージ3aに対して上下方向に移動可能に保持される。ヘッド固定治具4は、ステージ3aおよび3bを介してヘッド固定シャフト2に接続される。
【0013】
ステージ3aおよび3bは、カメラ7の焦点位置からヘッド200のノズルまでの距離を変更する変更手段として機能する。
【0014】
レール5は、台座1に固定されている。自動ステージ6は、レール5に沿って移動できるようにレール5の上に保持されている。撮像手段として機能するカメラ7は、自動ステージ6の上に取り付けられる。自動ステージ6は、図示しない移動制御部によりインク滴(図1ではインク滴Bn−1、B、Bn+1。以下、ノズルNから吐出されるインク滴をインク滴Bという場合がある)の吐出位置に合わせて移動するように制御される。これにより、例えばヘッド200のノズル列のうち、インク滴が吐出されているノズルからのインク滴を撮像できるようにカメラ7を移動させることができる。このように、自動ステージ6は、カメラ7を移動する移動手段として機能する。自動ステージ6の場合、プログラム等により、自動的にノズルNの位置合わせが可能となる。
【0015】
なお、移動制御部により制御する自動ステージ6の代わりに、手動により移動を制御するための手動ステージを用いるように構成してもよい。また、移動制御部による制御機構と手動による制御機構とを共に備えるように構成してもよい。
【0016】
カメラ7は、上方に設置されるヘッド200の各ノズルから吐出されるインク滴の画像(映像)を撮像するためのレンズ7aを備えている。レンズ7aの倍率は、ノズル間の間隔(ノズル間ピッチ)や、吐出するインク滴の径に合わせて適切なものを選択することが望ましい。
【0017】
本実施の形態では、カメラ7として高速度カメラを使用する。これにより、高速で飛翔するインク滴を撮像することが可能となる。なお、インク滴の速度は約10m/sであるため、カメラ7のフレーム数(シャッターをきるタイミング)は約3万フレーム/s以上が望ましい。
【0018】
ガラス板8は、インク汚れからカメラ7を保護するためにカメラ7の上部に配置される。なお、カメラ7の焦点位置SHは、ガラス板8から外れているため、ガラス板8に付着したインク滴がカメラ7で撮像される画像に与える影響は小さい。ガラス板8を傾け、傾斜の下方向に廃液タンクを配置する方法や、汚れていないガラス面をカメラ7部分に動かす機構を備える方法などにより、長期の吐出時でもインク汚れにより照度が落ちる影響を少なくするように構成してもよい。
【0019】
ヘッド200は、ヘッド固定治具4に設置される。ヘッド200のヘッドノズル面201には、インク滴を吐出するための複数のノズルN(1≦n≦N(Nは自然数))が配置されている。カメラ7は、ヘッド200の下方向(インク滴の吐出方向)に配置される。
【0020】
ヘッド200が設置されるヘッド固定治具4は、上述のように上下方向(インク滴吐出方向)に移動可能なステージ3bに接続されている。このため、ヘッド200は、高さ方向(インク滴吐出方向)の位置を自由に変更できる。以下では、ヘッド200の高さを表すヘッド高さHHを、カメラ7の焦点位置SHからヘッドノズル面201までの距離とする。
【0021】
インク滴の吐出状態を観察する時には、ヘッド高さHHを、ヘッド200をインクジェット記録装置に搭載した場合の、ヘッド200から搬送される記録媒体までの距離を表す所定の基準距離(記録媒体の搬送高さ)と略同一となるように設定する。これにより、実際の印字の様子を再現することができる。なお、ヘッド高さHHを搬送高さより大きくするように構成してもよい。この場合、曲がりが拡大するため、吐出不良の検出を精度良く行うことができる。
【0022】
このように、本実施の形態では、透明部材や用紙に着弾したインク滴を観察するのではなく、インク滴を吐出し、カメラ7の焦点位置SHを通過するインク滴を観察する。言い換えると、着弾後のインク滴ではなく、吐出されて飛翔しているインク滴を観察する。
【0023】
図2は、カメラ7により撮像された映像のうち、インク滴が写っている画像の一例を示す図である。図2は、ノズルNn−1、N、Nn+1から吐出されたインク滴Bn−1、B、Bn+1を含む画像51の例を示している。図2に示すように、インク滴を同時に吐出したときに、各ノズルNに対応するインク滴Bを観察することができる。そして、撮像された映像からインク滴を含む画像51を抜き出し、画像処理を行うことにより、吐出の不良(曲がりや抜け)を判定することができる。吐出不良判定処理の詳細については後述する。
【0024】
また、本実施の形態では、焦点位置SHで観察するため、透明体や用紙への着弾では観察できないサテライト(図1のサテライトBs)も観察することができる。これにより、サテライトによる印写不良の検出が可能となる。サテライトも液径は小さいものの、液の形状を有するためインク滴と同様の方法(図3〜図6参照)で印写不良を検出可能である。サテライトはインク滴の後に焦点位置を通過するため、例えば、撮像のタイミングを遅らせてサテライトのみを捉える方法が利用できる。このとき、所定時間内の映像にサテライトが映っていなければサテライトが発生していないと判断することができる。
【0025】
次に、液吐出不良検出装置100の機能構成について図3を用いて説明する。図3は、液吐出不良検出装置100の機能ブロック図である。図3に示すように、液吐出不良検出装置100は、主な機能構成として、画像処理部111と、座標算出部112と、差分算出部113と、判定部114とを備えている。
【0026】
画像処理部111は、カメラ7により撮像された画像に対する画像処理を行う。例えば、画像処理部111は、連続するフレーム(画像)のうち、インク滴が撮像された画像を抽出する。画像を抽出する方法としては、予め定められたインク滴の画像パターンと照合する方法などの従来から用いられているあらゆる方法を適用できる。
【0027】
座標算出部112は、画像上で予め定められた座標系でのインク滴の座標を算出する。例えば、図2に示すように画像内の任意の位置に原点CGを設定し、原点CGからノズルの配列方向(ノズル列方向)にX軸、ノズルの配列方向の直角の方向にY軸を取った座標系を用いることができる。座標算出部112は、図2のような画像から、画像内の各インク滴の原点CGに対するX方向の距離(X座標)およびY方向の距離(Y座標)を算出する。画像内の各インク滴の位置は、例えばインク滴を含む画像の抽出時に同時に特定できる。
【0028】
差分算出部113は、算出された各インク滴の座標と、正常に吐出されるときの上記座標系でのインク滴の座標との差分を算出する。判定部114は、算出された差分と、予め定められた閾値とを比較し、差分が閾値より大きい場合に、インク滴の吐出不良が生じたと判定する。
【0029】
なお、液吐出不良検出装置100は、この他にカメラ7による撮像を制御する撮像制御部および上述の移動制御部等を備えることも可能であるが図3では省略している。
【0030】
以下に、吐出不良判定処理の詳細について説明する。
【0031】
まず、座標算出部112が、画像処理部111により抽出された図2のような画像から、各インク滴(Bn−1〜Bn+1)の座標を計測する。
【0032】
ここで、インク滴は、各ノズル(Nn−1〜Nn+1)から同時に吐出して撮像する。なお、大きな曲がりが発生している場合、いずれのインク滴(Bn−1〜Bn+1)がいずれのノズル(Nn−1〜Nn+1)から吐出されたものかを判別できない場合がある。そこで、各ノズル(Nn−1〜Nn+1)から順次インク滴を吐出して撮像するように構成してもよい。これにより、各インク滴Bに対応するノズルNを特定することができる。
【0033】
また、ノズルNの数が多く、1つの画面に入りきらない場合は、自動ステージ6によって、カメラ7を任意のピッチで移動させ、移動した位置に対応するノズルNから順次インク滴を吐出して撮像するように構成してもよい。
【0034】
この場合、ヘッド200のノズル列方向と自動ステージ6の進行方向とを平行にする。そして、移動に応じて撮像された複数の画像を、各画像の座標系および自動ステージ6の移動速度等を元に1つの画像に統合する。図4は、複数の画像を合成した画像の一例を示す図である。図4では、仮想原点CKGを原点として複数の画像の座標系を統合した座標系で表される合成画像52の例が示されている。座標算出部112は、このように合成した画像から、各インク滴(Bn−5〜Bn+5)の座標を算出することができる。このような構成により、ラインヘッドなどの長尺ヘッドにも対応可能となる。
【0035】
各インク滴の座標を算出した後、算出された座標をもとにノズルの不良を検出する。最初に、差分算出部113が、各ノズルの位置(ノズル位置)を特定する。以下に、X方向のノズル位置の特定方法の一例を説明する。
【0036】
差分算出部113は、算出された各インク滴の座標のうち、いずれか1つのインク滴の座標(X座標)を基準とし、基準に対する他の座標(X座標)との差分を表すピッチを算出する。図4は、インク滴Bn−5を基準としてピッチ(Pn−5/n−4〜Pn−5/n+5)を算出した場合の例を示している。なお、ピッチPk/lとは、インク滴Bを基準としたときのインク滴BまでのX方向の距離を表す。
【0037】
すなわち、差分算出部113は、例えば図4に示すように、インク滴Bn−5を基準とし、インク滴Bn−5からインク滴Bn−4までのピッチPn−5/n−4を求める。次に、差分算出部113は、インク滴Bn−5からインク滴Bn−3までのピッチPn−5/n−3を求める。差分算出部113は、このような処理を繰り返し、最後にインク滴Bn−5からインク滴Bn+5までのピッチPn−5/n−5を求める。
【0038】
差分算出部113は、さらに異なるインク滴を基準として選択し、同様の処理を繰り返す。すなわち、差分算出部113は、残りの各インク滴(Bn−4〜Bn+5)の座標をそれぞれ基準とし、基準に対する他のインク滴までのピッチを算出する。図5は、インク滴Bnを基準としてピッチ(Pn/n−5〜Pn/n+5)を算出した場合の例を示す図である。
【0039】
次に、差分算出部113は、予め定められたノズル間ピッチの規定値と、求めた各インク滴(Bn−5〜Bn+5)の座標を基準とした時のピッチと比較する。そして、差分算出部113は、一致するピッチが多いインク滴を、正常吐出しているノズルNから吐出されたインク滴であると判定する。一致するピッチが多いか否かは、例えば一致数が所定の閾値(個数閾値)より大きいか否かで判定してもよいし、インク滴の個数に対する一致数の割合が所定の閾値(割合閾値)より大きいか否かで判定してもよい。
【0040】
次に、差分算出部113は、正常に吐出しているノズルNの位置とノズル間ピッチの規定値とから、他のノズルの位置(ノズル位置)をそれぞれ算出する。例えば、差分算出部113は、正常に吐出しているノズルNnの位置から、ノズル間ピッチの規定値の整数倍離れた位置を、他のノズルのノズル位置として算出できる。なお、算出したノズル位置は、正常に吐出されるときに撮像されるインク滴の座標(X座標)を表している。
【0041】
図6は、ノズル位置と、ノズル位置に対する撮像されたインク滴の位置との差分の一例を示す図である。図6では、破線が算出されたノズル位置を表している。
【0042】
次に、差分算出部113は、算出したノズル位置と各インク滴のX座標との差分を算出する。図6では、Pxn−4、Pxn−1、Pxn+1、Pxn+3、およびPxn+5が、それぞれインク滴Bn−4、Bn−1、Bn+1、Bn+3、およびBn+5に対して算出された差分を表している。そして、判定部114が、算出された差分と予め定められた差分の閾値とを比較し、差分が閾値より大きい場合にインク滴の吐出不良が生じたと判定する。
【0043】
なお、同様の処理をY方向に対しても行うことにより、2次元的なノズル位置を特定することができる。また、Y方向の差分とY方向の差分に対して予め定められた閾値とを比較することにより、インク滴の吐出不良が検出できる。
【0044】
なお、上記説明では、撮像した画像からノズル位置を算出していた。これに対し、ヘッド200を上下に動かすことにより、ヘッドノズル面201に焦点を合わせてノズル位置を特定した後、規定のヘッド高さに戻してインク滴を吐出しても良い。
【0045】
また、ヘッド高さを変えずにノズル位置を特定する方法として、ヘッドノズル位置を特定することができるターゲットをカメラ7の焦点位置に配置し、ターゲットとともにインク吐出時の映像を撮像するように構成しても良い。このターゲットは、物体でも光学的なものでも良い。
【0046】
図7は、このように構成した場合に用いる治具の一例を示す図である。まず、ヘッド挟み治具601の基準線632と、各ターゲット611、621の中心612、622を結ぶ基準線631とが直角になるように構成する。
【0047】
そして、その状態のヘッド挟み治具601でヘッド200を挟みこむ。挟み込む際には、基準線632とヘッドノズル列602とが垂直になる。そして、ヘッドノズル列602の延長線上に各ターゲット611、612の中心612、622が位置するようにヘッド挟み治具601を移動する。
【0048】
これらの動作により、ヘッドノズル列602の方向と各ターゲット611、621の中心612、622を結ぶ線の方向とを一致させることができる。この状態でヘッドノズル列の各ノズルからインク滴を吐出し、カメラ7で撮像すると、各インク滴とともに焦点位置に配置されたターゲットを含む画像が撮像できる。したがって、撮像した画像内のターゲット611、621の位置を特定することにより、ノズル位置を特定することができる。また、ヘッドノズル列602からのバラツキ量を簡易的に計測することができる。
【0049】
ここで、ヘッド200がシリアル方式のプリンタ用のヘッドである場合、X方向はノズル列方向であり、用紙の搬送方向となる。また、Y方向はノズル列と直角する方向であり、ヘッド200を走査する方向となる。
【0050】
画像不良の中で顕著に認識できる不良としては、ノズル列方向(X方向)の曲がりが挙げられる。そこで、吐出不良検出を行うときに、X方向の距離(差分)と比較するための閾値(配列方向閾値)を、Y方向の距離(差分)と比較するための閾値(直角方向閾値)より小さくしてもよい。これにより、画像不良となる吐出不良を効率よく検出することが可能となる。
【0051】
これまでは、各ノズルNから1滴のインク滴を吐出して吐出不良の判定を行っていた。しかし、吐出不良には、最初正常吐出しているが、途中から曲がりや欠損が起こる場合や、曲がる方向が一定にならない場合などが存在することが確認されている。
【0052】
そこで、上記と同様の構成で各ノズルNから連続してインク滴Bを吐出し、各インク滴(インク滴群BG)について求めた座標を用いて吐出不良を検出するように構成してもよい。
【0053】
まず、座標算出部112は、連続して吐出された各インク滴(インク滴群BGn−1〜BGn+1)の座標を求め、求めた座標の分布(バラツキ範囲BTn−1〜BTn+1)を算出する。バラツキ範囲は、例えば、各座標を含む最小の矩形として算出する。図8は、インク滴群およびバラツキ範囲の一例を示す図である。
【0054】
次に、座標算出部112は、バラツキ範囲BTn−1〜BTn+1の中心の座標BCn−1〜BCn+1を求める。図9は、図8のようなバラツキ範囲から求められた中心の座標の一例を示す図である。次に、座標算出部112は、求めた中心の座標BCn−1〜BCn+1を各ノズルから吐出されたインク滴の座標として、上記と同様の方法によりノズル位置を計算し、吐出不良を判定する。これにより、吐出不良をより高精度に判定することが可能となる。また、簡易的な吐出不良の判定方法として、バラツキ範囲の大小で比較する方法を用いてもよい。例えば、バラツキ範囲の面積が所定の閾値より大きい場合に、対応するノズルに吐出不良が生じたと判定してもよい。
【0055】
次に、カメラ7により効率的にインク滴Bを観察する方法について図10を用いて説明する。図10は、カメラ7のレンズ7aとインク滴との位置関係を示す図である。インク滴は約10m/sの速さで飛翔しているため、高速度カメラを用いたとしても、利用するレンズ7aの特性によっては、インク滴を適切に観察できないことがある。
【0056】
レンズ7aの特性の1つとして、物体のピントが合っている長さを意味する被写界深度という特性が存在する。被写界深度が小さいと、高速で飛翔するインク滴を適切に撮像できない可能性が生じうる。そこで、インク滴の飛翔速度とカメラ7のシャッタースピード(画像を記憶する時間の間隔)とから算出されたインク滴の飛翔距離以上の被写界深度HSを有するレンズ7aをカメラ7に搭載する。これにより、高速で吐出するインク滴を捉えることが可能となる。
【0057】
カメラ7のシャッタースピードをT(s)、インク滴の飛翔速度をV(m/s)とすると、インク滴は距離K=T×V(m)だけ進むことになる。図10では、時刻Tm−1、T、Tm+1に飛翔するインク滴Bm−1、B、Bm+1それぞれの間隔が距離Kに相当する。
【0058】
そこで、距離K以上の被写界深度HSを有するレンズ7aを用いれば、映像の1コマ(1画像)で、ピントの合ったインク滴を撮像することが可能となる。また、ピントの合った映像から正確なインク滴の径を算出することができるため、吐出量の異常や、形状異常を検出することができる。
【0059】
このように、本実施の形態では、透明部材や用紙に着弾したインク滴を観察するのではなく、カメラの焦点位置を飛翔するインク滴を観察する。このため、液滴が連続して吐出される場合であっても、各液滴の吐出不良を高精度に検出することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 台座
2 ヘッド固定シャフト
3a、3b ステージ
4 ヘッド固定治具
5 レール
6 自動ステージ
7 カメラ
7a レンズ
8 ガラス板
100 液吐出不良検出装置
111 画像処理部
112 座標算出部
113 差分算出部
114 判定部
200 ヘッド
201 ヘッドノズル面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吐出されて飛翔する液滴を前記液滴の吐出方向から撮像する撮像手段と、
撮像された画像上で予め定められた座標系での前記液滴の座標を算出する座標算出手段と、
算出された前記座標と、正常に吐出されるときの前記座標系での前記液滴の座標との差分を算出する差分算出手段と、
前記差分と予め定められた閾値とを比較し、前記差分が前記閾値より大きい場合に、前記ノズルによる前記液滴の吐出不良が生じたと判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする液吐出不良検出装置。
【請求項2】
前記ノズルは、記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置のインクヘッドに搭載可能であり、
前記撮像手段は、前記ノズルから前記撮像手段の焦点位置までの距離が、前記インクヘッドに搭載したときの前記ノズルから前記記録媒体までの距離を表す予め定められた基準距離と略同一であること、
を特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項3】
前記焦点位置から前記ノズルまでの距離を変更する変更手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項2に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、前記ノズルから連続して吐出されて飛翔する複数の前記液滴を撮像し、
前記座標算出手段は、複数の前記液滴それぞれの前記座標を算出して複数の前記座標の分布を求め、求めた前記分布の略中心の座標を算出し、
前記差分算出手段は、前記略中心の座標と、正常に吐出されるときの前記座標系での前記液滴の座標との差分を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、予め定められた配列方向に配列された複数の前記ノズルそれぞれから吐出されて飛翔する複数の前記液滴を撮像し、
前記差分算出手段は、前記配列方向と、前記配列方向の直角方向とのそれぞれについて前記差分を算出し、
前記判定手段は、前記配列方向の前記差分と前記配列方向に対して予め定められた配列方向閾値とを比較し、前記直角方向の前記差分と前記直角方向に対して予め定められた直角方向閾値とを比較し、前記配列方向の前記差分が前記配列方向閾値より大きい場合、または、前記直角方向の前記差分が前記直角方向閾値より大きい場合に、前記ノズルによる前記液滴の吐出不良が生じたと判定すること、
を特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項6】
前記配列方向閾値は、前記直角方向閾値より小さいこと、
を特徴とする請求項5に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項7】
前記撮像手段は、予め定められた配列方向に配列された複数の前記ノズルそれぞれから吐出されて飛翔する複数の前記液滴を撮像し、
前記撮像手段を前記配列方向に移動する移動手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項8】
前記撮像手段は、1秒間に3万画像以上撮像可能な高速度カメラであること、
を特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、被写界深度が、シャッタースピードと液滴の飛翔速度との積より大きいこと、
を特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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