説明

液圧制御ユニット

【課題】本発明はハウジングの開孔内をさらに加工することなく、ピストンポンプ周囲の圧力媒体の流れを最適化できる液圧制御ユニットの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の液圧制御ユニットは、ハウジング30に形成される開孔31fと、開孔31fに収容されて圧力媒体を圧送するピストンポンプと、ピストンポンプを前記ハウジング30に密封すると共に圧力媒体を導くポンプクロージングカバー55と、ポンプクロージングカバー55から流れる圧力媒体を受け入れるようにハウジング30内に形成される流路11bとを有する。ポンプクロージングカバー55が、その内部から流路11bに圧力媒体を流すために複数の外周溝部55bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪車用の液圧制御ユニットに関し、より詳細には、液圧制御ユニット内の流路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車用の液圧制御ユニットは、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に配設され、マスタシリンダからホイールシリンダへ供給される圧力媒体(ブレーキ液)の圧力を制御し、ホイールがロックすると車両のアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)で制動を行う。さらに、液圧制御ユニットは、マスタシリンダとホイールシリンダとを連結する流路と、流路内を流れる圧力媒体の流れを切替える複数の電磁切替弁と、この電磁切替弁を制御して圧力媒体の圧力を制御する電子制御ユニットと、圧力媒体をホイールシリンダからマスタシリンダへ戻すためのポンプと、を備える。
【0003】
特開2011−51359号公報は、本出願人による出願であり、図1に示すような液圧制御ユニット10を備えている。図1に加えて図2〜図4を参照して、本発明の前提となる液圧制御ユニットの構造を説明する。
【0004】
図1は、液圧制御ユニット10の構成を示す分解斜視図である。液圧制御ユニット10は、ハウジング30と、前輪用EV弁1と、前輪用AV弁2と、後輪用EV弁3と、後輪用AV弁4と、圧力媒体圧を検出する圧力センサ13と、圧力媒体を加圧する一対のピストンポンプ5a、5bと、弁1〜4等を駆動制御するECU8と、ピストンポンプ5a、5bを駆動するモータ7と、圧力媒体を受け入れるリザーバ9、12とを備える。
【0005】
ハウジング30は、例えば、アルミニウム等の金属製であり、略直方体形状のブロックから形成される。また、ハウジング30の内部には、前輪用流路と後輪用流路とからなる流路が形成される。また、ハウジング30の複数の側面には、前輪用及び後輪用流路に連通する複数の取付孔が形成される。
【0006】
図2は、図1の液圧制御ユニットの流路構造を示す要部断面図である。図2において、前輪用の液圧回路に関する断面構造のみを示している。図2で省略された後輪側の液圧回路に関する断面構造は、図2に示す断面の右辺を中心線としてほぼ線対称の構造である。
【0007】
図2において、ハウジング30には、その一側面30bに形成されたピストンポンプ収容開孔31fと、モータ7の回転を偏心動に変えるピストン駆動部材(偏心カム)51と、ピストン駆動部材51に接触しその動きに連動して往復動するピストン52と、ピストン52の左端側を収容するピストン収容部材53と、ピストン収容部材53内に配置されリザーバ9から圧力媒体を吸入する吸入弁60と、ピストン収容部材53に設けられる吸入弁60と、ピストン収容部材53に設けられ流路11aから吸入弁60に流れる圧力媒体をフィルタリングするフィルター61と、ピストン収容部材53の左端側に取り付けられるポンプクロージングカバー55と、ピストン収容部材53及びポンプクロージングカバー55との間に設けられる吐出弁70とを備える。なお、図1のピストンポンプ5aは、図2のピストン駆動部材51、ピストン52、吸入弁60、フィルター61、ピストン収容部材53、吐出弁70から構成される。
【0008】
圧力媒体は、リザーバ9から流路11aを通って、開孔31fとピストン収容部材53との間の空間に流入し、当該空間から、フィルター61、吸入弁60、吐出弁70を通って、後述のリセス部32を介して下流流路11bに流出する。
【0009】
圧力媒体は、ラジアルピストンポンプ5aの動作により吐出された下流流路11bに送られるが、設計の制約上、ポンプ吐出部と液圧回路の下流流路11bとは直接接続できない場合が生じる。このようにピストンポンプにより圧力媒体の流路が遮蔽される場合に、金属製ブロックであるハウジング30側で開孔31f内面を切削加工してリセス部(アンダーカット部)32を形成して流路としていた。
【0010】
図3は、ハウジング30の側面30bに形成されたピストンポンプ収容開孔31fの拡大斜視図である。図3において、開孔31fは円柱状空間であるが、その内面にリセス部32が形成されている。
【0011】
図4は、リセス部32の周囲を流れる圧力媒体を示すハウジング30の切欠拡大図である。圧力媒体は、図4に矢印で示すように、有底筒状のポンプクロージングカバー55の内面に形成されたポンプ吐出部55aからリセス部32を通って下流流路11bに流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−51359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図4のような構造では、リセス部31aを形成するために追加の加工刃具及び追加の切削工程が必要となり、加工時間や費用も増加する。また、リセス部を切削形成するためにハウジング内にスペースが必要となり、リセス部周囲の流路の配置等のデザインが制約されるおそれが生じる。
【0014】
そこで、本発明はハウジングの開孔内をさらに加工することなく、ピストンポンプ周囲の圧力媒体の流れを最適化できる液圧制御ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の液圧制御ユニットは、ハウジングに形成される開孔と、前記開孔に収容されて圧力媒体を圧送するピストンポンプと、前記ピストンポンプを前記ハウジングに密封すると共に前記圧力媒体を導くポンプクロージングカバーと、前記ポンプクロージングカバーから流れる前記圧力媒体を受け入れるように前記ハウジング内に形成される流路と、を有する液圧制御ユニットにおいて、前記ポンプクロージングカバーが、その内部から前記流路に前記圧力媒体を流すために複数の外周溝部を備える。
【0016】
前記複数の外周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの外周面に等間隔で設けられる。前記複数の外周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの長手方向軸線と平行に設けられる。前記複数の外周溝部は、前記ポンプクロージングカバーの開口端部側に設けられる。
【0017】
前記ポンプクロージングカバーが、前記吐出弁から前記外周溝部に前記圧力媒体を流すために複数の内周溝部を備える。前記複数の内周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの内周面に等間隔で設けられる。前記複数の内周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの長手方向軸線と平行に設けられる。前記複数の内周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの開口端部側に設けられる。前記ポンプクロージングカバーが、前記複数の外周溝部の間に小径部を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液圧制御ユニットによれば、ポンプクロージングカバー側に圧力媒体の流路を設けることで、流路確保のためのハウジング側のリセス加工を不要としてハウジング加工用の治具及び工数を削減しつつ、従来に劣らないレイアウトの自由度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の液圧制御ユニットの分解斜視図である。
【図2】図1の液圧制御ユニット内の流路を示す要部断面図である。
【図3】図1のピストンポンプ用開孔を示す要部拡大図である。
【図4】図2のリセス部周囲の圧力媒体の流れを示す切欠斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るポンプクロージングカバーの正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るポンプクロージングカバーの側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るポンプクロージングカバー周囲の圧力媒体の流れを示す切欠斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の液圧制御ユニットに係る実施形態を、以下、図5〜図7を参照しつつ説明する。なお、図1〜図4に示した部材に対応する部材には同一符号を付して説明を省略する。
図5及び図6に示すように、本実施形態に係るポンプクロージングカバー55は、有底筒状であり、複数の内周溝部55aと、複数の外周溝部55bとが交互に形成されている。内周溝部55aは、細長い溝であり、ポンプクロージングカバー55の内周面に等間隔で6つ形成されている。外周溝部55bは、細長い溝であり、ポンプクロージングカバー55の外周面に等間隔で6つ形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、内周溝部55a及び外周溝部55bの数は、それぞれ6つとしたが、ユニットの組立時にポンプクロージングカバー55の周方向における位置決め工程を不要とするものであるため、その数は6つに限定されず適切な流量を確保できればいい。また、内周溝部55a、外周溝部55bは、ポンプクロージングカバー55の中心軸線(長手方向軸線)Aに対して互いに平行であるが、中心軸線Aに対して螺旋状に曲がって形成されてもよい。
【0022】
さらに、図6に示すように、ポンプクロージングカバー55は、その開口端部55d側の外周面の外周溝部55bが形成されていない部分に、小径部55cが設けられている。ポンプクロージングカバー55が開孔31fに装着されると、小径部55c表面は、開孔31f内面に当接しない状態で、ポンプクロージングカバー55の他の外周面が開孔31fと当接して固定される。
【0023】
液圧制御ユニットの作動時に、圧力媒体は、吐出弁70からポンプクロージングカバー55の内面に流出する。図7に矢印で示すように、圧力媒体は、内周溝部55aとピストン収容部材53との間を通って、ポンプクロージングカバー55の開口端部55dに流れる。さらに、圧力媒体は、ポンプクロージングカバー55の開口端部55dから、外周溝部55bと、ピストンポンプ収容開孔31との間の空間を通って、ハウジング30に形成された下流回路側の流路11bに流れる。
【符号の説明】
【0024】
31f ピストンポンプ収容開孔
55 ポンプクロージングカバー
55a 内周溝部
55b 外周溝部
55c 小径部
55d 開口端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに形成される開孔と、前記開孔に収容されて圧力媒体を圧送するピストンポンプと、前記ピストンポンプを前記ハウジングに密封すると共に前記圧力媒体を導くポンプクロージングカバーと、前記ポンプクロージングカバーから流れる前記圧力媒体を受け入れるように前記ハウジング内に形成される流路と、を有する液圧制御ユニットにおいて、
前記ポンプクロージングカバーが、その内部から前記流路に前記圧力媒体を流すために複数の外周溝部を備えることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記複数の外周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの外周面に等間隔で設けられることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記複数の外周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの長手方向軸線と平行に設けられることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記複数の外周溝部は、前記ポンプクロージングカバーの開口端部側に設けられることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記ポンプクロージングカバーが、前記吐出弁から前記外周溝部に前記圧力媒体を流すために複数の内周溝部を備えることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記複数の内周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの内周面に等間隔で設けられることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記複数の内周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの長手方向軸線と平行に設けられることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項8】
請求項5に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記複数の内周溝部が、前記ポンプクロージングカバーの開口端部側に設けられることを特徴とする液圧制御ユニット。
【請求項9】
請求項1に記載の液圧制御ユニットにおいて、
前記ポンプクロージングカバーが、前記複数の外周溝部の間に小径部を備えることを特徴とする液圧制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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