説明

液圧発生装置及び駆動装置

【課題】装置全体の大型化を抑制しつつポンプ駆動軸の支持精度を適切に確保することが可能な液圧発生装置を実現する。
【解決手段】ポンプケース21,22は、ポンプ駆動軸35を相対回転可能に径方向に支持する突出部30を備え、2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれの内輪が互いに一体化されて共通内輪43を形成しており、2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれの外輪41a,42aは、互いに独立に形成されているとともに互いに異なるポンプ駆動部材によりそれぞれ駆動され、さらに共通内輪43に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向が互いに同一とされ、共通内輪43は、ポンプ駆動軸35に連結される連結部44と、連結部44から軸第二方向L2側へ延び、突出部30に対して径方向外側にあって当該突出部30と同じ軸方向位置となる部分を有する本体部45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプケース及びポンプ駆動軸を備えるポンプと、ポンプケースに対してポンプ駆動軸の軸方向一方側である軸第一方向側にて、ポンプ駆動軸と同軸状に軸方向に並べて配置される2つのワンウェイクラッチと、を備えた液圧発生装置、及び当該液圧発生装置を備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液圧発生装置の一例である油圧発生装置の従来例として、例えば下記の特許文献1や特許文献2に記載された油圧発生装置がある。具体的には、特許文献1及び特許文献2の双方には、内輪に対する外輪の相対回転が規制される当該相対回転の方向(以下、この背景技術の説明において「対象方向」という。)が互いに同一となるように2つのワンウェイクラッチが配置されるとともに、双方のワンウェイクラッチの内輪が共にポンプ駆動軸に連結された構成が開示されている。これにより、2つのワンウェイクラッチの内の一方の外輪のみが上記対象方向に回転している場合には、当該一方の外輪の回転によりオイルポンプが駆動される。また、2つのワンウェイクラッチの双方の外輪が上記対象方向に回転している場合には、当該双方の外輪の内の回転速度が高い方の外輪の回転によりオイルポンプが駆動される。
【0003】
そして、特許文献1及び特許文献2の双方には、上記のような油圧発生装置を、内燃機関及び回転電機の双方を駆動力源として利用して走行可能なハイブリッド車両用の駆動装置に備える構成が開示されている。具体的には、一方のワンウェイクラッチの外輪と内燃機関とを駆動連結するとともに、他方のワンウェイクラッチの外輪と回転電機とを駆動連結する構成とする。これにより、車両の走行状態に応じて内燃機関或いは回転電機のトルクによりオイルポンプを駆動し、油を必要とする部位に適切に油を供給することが可能とされている。
【0004】
ところで、上記のように2つのワンウェイクラッチの双方の内輪がポンプ駆動軸に連結される構成においては、ポンプの液密性及び耐久性やワンウェイクラッチの機能及び耐久性を良好に確保することができる程度に、ポンプ駆動軸の支持精度を確保する必要がある。また、ポンプ駆動軸の支持精度は、液圧発生装置の大型化が抑制される形態で確保されることが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2には、ポンプ駆動軸の支持精度に言及した記載はない。そのため、上記特許文献1及び特許文献2には、当然ながら、液圧発生装置の大型化が抑制される形態でポンプ駆動軸の支持精度を確保することに言及した記載はなく、液圧発生装置の大型化を抑制しつつポンプ駆動軸の支持精度を適切に確保することが可能な構成は未だ判明していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−67238号公報
【特許文献2】特開2003−336725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、装置全体の大型化を抑制しつつポンプ駆動軸の支持精度を適切に確保することが可能な液圧発生装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、ポンプケース及びポンプ駆動軸を備えるポンプと、前記ポンプケースに対して前記ポンプ駆動軸の軸方向一方側である軸第一方向側にて、前記ポンプ駆動軸と同軸状に軸方向に並べて配置される2つのワンウェイクラッチと、を備えた液圧発生装置の特徴構成は、前記ポンプケースは、当該ポンプケースから前記軸第一方向側に突出して、前記ポンプ駆動軸に対して径方向外側から当該ポンプ駆動軸を相対回転可能に径方向に支持する突出部を備え、前記2つのワンウェイクラッチのそれぞれの内輪が互いに一体化されて共通内輪を形成しており、前記2つのワンウェイクラッチのそれぞれの外輪は、互いに独立に形成されているとともに互いに異なるポンプ駆動部材によりそれぞれ駆動され、さらに前記共通内輪に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向が互いに同一とされ、前記共通内輪は、前記突出部に対して前記軸第一方向側にて前記ポンプ駆動軸に連結される連結部と、前記連結部から前記軸第一方向とは反対側の軸第二方向側へ延び、前記突出部に対して径方向外側にあって当該突出部と同じ軸方向位置となる部分を有する本体部と、を備える点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、ポンプ駆動軸がポンプケースの突出部により径方向に支持されるため、ポンプ駆動軸を軸方向の広い領域で径方向に支持することができる。よって、ポンプ駆動軸を軸方向片側で径方向に支持する構成として、ポンプ駆動軸の支持精度を高めることが可能となっている。
補足説明すると、ポンプ駆動軸を軸方向両側で径方向に支持する構成では、軸方向両側の支持部材の双方の組付精度を考慮した大きいクリアランスが必要となり、ポンプ駆動軸が軸方向に対して傾き得る傾斜の程度や径方向へ移動し得る変位の程度が大きくなりやすい。これに対し、ポンプ駆動軸を軸方向片側で径方向に支持する構成では、軸方向両側で径方向に支持する構成に比べクリアランスを小さくすることができる。その上で、上記のようにポンプ駆動軸を軸方向の広い領域で径方向に支持することにより、上記の傾斜の程度や変位の程度を小さく抑えることができ、結果、ポンプ駆動軸の支持精度を高めることができる。
【0010】
そして、上記の特徴構成によれば、共通内輪の本体部が、突出部に対して径方向外側であって当該突出部と同じ軸方向位置となる部分を有するように配置される。よって、2つのワンウェイクラッチとポンプ軸支持用の突出部とを軸方向に並べて配置する場合に比べて、2つのワンウェイクラッチとポンプとを配置するために必要な軸方向スペースを小さくすることができる。すなわち、液圧発生装置の軸方向における大型化を抑制しつつポンプケースに突出部を設け、ポンプ駆動軸の支持精度を確保することが可能となっている。また、ポンプ駆動軸のポンプケースによる支持点と、ポンプ駆動軸に対する2つのワンウェイクラッチの荷重点との間の軸方向のオフセットを低減することができ、ポンプ駆動軸の傾斜や変形を抑制してポンプの寿命を向上することも可能となっている。
【0011】
ここで、前記突出部及び前記本体部の双方は、前記ポンプ駆動軸と同軸の円筒状に形成され、前記本体部の前記軸第二方向側部分は、前記突出部の前記軸第一方向側部分を径方向外側から覆うように配置され、前記2つのワンウェイクラッチのそれぞれは、前記外輪の内径が互いに同一とされていると好適である。
【0012】
この構成によれば、本体部が円筒状に形成されるため、2つのワンウェイクラッチの双方を周方向の全域で径方向内側から支持することができ、2つのワンウェイクラッチをより高い精度で支持することができる。また、突出部と本体部との双方が円筒状に形成されるため、突出部と本体部との間の径方向の隙間を狭くすることができる。よって、強度を確保しつつ、共通内輪を小径化して軽量化を図ることができる。
【0013】
また、前記ポンプ駆動軸は、軸方向に対して交差する方向に延びる面を有して、前記ポンプの駆動時に前記軸第一方向側への液圧を受ける受圧部を備え、前記共通内輪と、前記共通内輪を前記軸第一方向側から支持する支持部との間に、軸方向の荷重を受けるスラスト軸受が配置されていると好適である。
【0014】
この構成によれば、ポンプの駆動時に発生する液圧を利用してポンプ駆動軸を軸第二方向側から軸方向に支持するとともに、共通内輪がスラスト軸受を介して支持部から受ける、上記液圧の大きさに応じた抗力によりポンプ駆動軸を軸第一方向側から軸方向に支持することができる。すなわち、ポンプ駆動軸を軸方向両側から適切に軸方向に支持することができる。そして、ポンプ駆動軸及びこれに連結された共通内輪の双方を、軸方向に適切に位置決めすることができる。
また、この構成では、共通内輪を軸第二方向側から支持するスラスト軸受を省略することができ、製造コストの抑制や製造工程の簡略化を図ることができる。
【0015】
本発明に係る駆動装置の第一の特徴構成は、上述したような液圧発生装置と、駆動力源に駆動連結される第一ポンプ駆動部材と、車輪に駆動連結される第二ポンプ駆動部材と、前記第一ポンプ駆動部材と前記第二ポンプ駆動部材との間で選択的に駆動力を伝達する駆動伝達装置と、を備え、前記2つのワンウェイクラッチの内の一方である第一ワンウェイクラッチの外輪は前記第一ポンプ駆動部材により駆動され、他方である第二ワンウェイクラッチの外輪は前記第二ポンプ駆動部材により駆動される点にある。
【0016】
本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
【0017】
また、本願において「駆動力源」とは、例えば回転電機、内燃機関、或いはこれらの組み合わせ等、駆動力を発生させることができる各種動力源のことであり、好ましくは車両の駆動力源となり得るものである。
【0018】
この第一の特徴構成によれば、駆動力源の出力回転軸及び車輪の少なくとも何れかが回転していれば、ポンプを駆動して液圧を発生させることができる。例えば液圧発生装置が油圧を発生する油圧発生装置である場合には、車輪が停止し駆動力源が動作している状態や、車輪が回転し駆動力源が停止している状態等の様々な車両の走行状態で、駆動装置内における油を必要とする部位に油を供給することが容易となる。
【0019】
本発明に係る駆動装置の第二の特徴構成は、上述したような液圧発生装置と、第一駆動力源に駆動連結される第一ポンプ駆動部材と、第二駆動力源に駆動連結される第二ポンプ駆動部材と、前記第一ポンプ駆動部材と前記第二ポンプ駆動部材との間で選択的に駆動力を伝達する駆動伝達装置と、を備え、前記2つのワンウェイクラッチの内の一方である第一ワンウェイクラッチの外輪は前記第一ポンプ駆動部材により駆動され、他方である第二ワンウェイクラッチの外輪は前記第二ポンプ駆動部材により駆動される点にある。
【0020】
この第二の特徴構成によれば、第一駆動力源の出力回転軸及び第二駆動力源の出力回転軸の少なくとも何れかが回転していれば、ポンプを駆動して液圧を発生させることができる。例えば液圧発生装置が油圧を発生する油圧発生装置である場合には、第一駆動力源が動作し第二駆動力源が停止している状態や、第一駆動力源が停止し第二駆動力源が動作している状態等の様々な車両の走行状態で、駆動装置内における油を必要とする部位に油を供給することが容易となる。
【0021】
ここで、上記第一の特徴構成又は上記第二の特徴構成を備える駆動装置において、駆動力源として第一回転電機及び第二回転電機を備え、前記駆動伝達装置は、少なくとも第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素の3つの回転要素を有する差動歯車機構を備え、前記第一回転要素に前記第一回転電機が駆動連結され、前記第二回転要素に内燃機関が駆動連結され、前記第三回転要素に前記第二回転電機及び車輪が駆動連結され、前記第一ポンプ駆動部材は前記内燃機関により駆動され、前記第二ポンプ駆動部材は前記車輪又は前記第二回転電機により駆動されると好適である。
【0022】
本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0023】
また、上記のように差動歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
【0024】
この構成によれば、いわゆる2モータスプリットタイプのハイブリッド駆動装置を適切に実現できる。そして、2モータスプリットタイプのハイブリッド駆動装置において、内燃機関の出力回転軸、及び第二回転電機の回転軸又は車輪、の少なくとも何れかが回転していれば、ポンプを駆動して液圧を発生させることができる。
【0025】
また、上記各構成の駆動装置において、前記第一ワンウェイクラッチの外輪に形成されるとともに前記第一ポンプ駆動部材に駆動連結されるギヤと噛み合う第一ギヤは、前記第二ワンウェイクラッチの外輪に形成されるとともに前記第二ポンプ駆動部材に駆動連結されるギヤと噛み合う第二ギヤに対して前記軸第一方向側に配置され、前記第一ギヤは、前記連結部と同じ軸方向位置となる部分を少なくとも一部に有するように配置されていると好適である。
【0026】
この構成によれば、第一ギヤが連結部に対して軸第二方向側に位置する場合に比べ、液圧発生装置の軸方向長さを短く抑えることができる。また、この構成は、第一ポンプ駆動部材に駆動連結される駆動力源が内燃機関である場合に特に適している。なぜなら、このような場合には、第一ポンプ駆動部材に駆動連結されるギヤと噛み合う第一ギヤには内燃機関の振動が伝わりやすいが、第一ギヤを上記のように配置することで、第一ギヤを共通内輪の中で支持強度が高い部分に配置することができ、共通内輪が内燃機関の振動により振動するのを抑制することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧発生装置を軸方向に沿って切断した断面図及びその一部拡大図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る駆動装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る液圧発生装置及び駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る液圧発生装置を、油圧を発生する油圧発生装置に適用し、本発明に係る駆動装置が、当該油圧発生装置を備えた車両用駆動装置である場合を例として説明する。本実施形態に係る油圧発生装置1は、図1に示すように、ポンプケース21,22がポンプ駆動軸35を径方向に支持する突出部30を備えるとともに、2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれの内輪が互いに一体化されてなる共通内輪43が、突出部30に対して径方向外側であって当該突出部30と同じ軸方向位置となる部分を有する本体部45を備える点に特徴を有している。これにより、装置全体の大型化を抑制しつつポンプ駆動軸35の支持精度を適切に確保することが可能となっている。以下、本実施形態に係る油圧発生装置1及び車両用駆動装置2の構成について詳細に説明する。なお、本実施形態では、油圧発生装置1及び車両用駆動装置2が、それぞれ、本発明における「液圧発生装置」及び「駆動装置」に相当する。
【0029】
以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向」、「周方向」、「径方向」は、ポンプ駆動軸35の軸心を基準として定義している。また、以下の説明では、「軸第一方向L1」は図1における軸方向に沿った左方を表し、「軸第二方向L2」は図1における軸方向に沿った右方を表すものとする。また、「周第一方向C1」は図2における反時計回り方向を表し、「周第二方向C2」は図2における時計回り方向を表すものとする。
【0030】
また、以下の説明では、第一ワンウェイクラッチ41と第二ワンウェイクラッチ42とを区別する必要がない場合には、これらを総称してワンウェイクラッチ41,42という。第一回転電機11と第二回転電機12とを区別する必要がない場合には、これらを総称して回転電機11,12という。第一外輪41aと第二外輪42aとを特に区別する必要がない場合には、これらを総称して外輪41a,42aという。第一駆動力伝達部材41cと第二駆動力伝達部材42cとを特に区別する必要がない場合には、これらを総称して駆動力伝達部材41c,42cという。第一ブロックベアリング41dと第二ブロックベアリング42dとを特に区別する必要がない場合には、これらを総称してブロックベアリング41d,42dという。
【0031】
1.油圧発生装置の構成
本実施形態に係る油圧発生装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。なお、図2は、図1におけるII−II断面図であるが、発明の理解を容易にするため、後述する本体部45に関しては、軸方向における貫通孔47の形成位置での断面を示している。図1に示すように、油圧発生装置1は、オイルポンプ20と、2つのワンウェイクラッチ41,42とを備えている。そして、油圧発生装置1は、オイルポンプ20を駆動することで図示しないオイルパンから油(潤滑液の一例)を吸入して油圧を発生させ、潤滑や冷却等のために油を必要とする箇所に油を供給する。なお、本実施形態では、オイルポンプ20が本発明における「ポンプ」に相当する。
【0032】
オイルポンプ20は、ポンプカバー21、ポンプボディ22、ポンプ駆動軸35、及びポンプロータ(インナロータ20a及びアウタロータ20b)を備えている。ポンプボディ22は、軸方向から見て断面円形状のポンプ室形成用凹部25を備えている。ポンプカバー21は、ポンプボディ22に形成されたポンプ室形成用凹部25の軸第一方向L1側の開口を閉じる壁面26と、ポンプ駆動軸35の挿通孔27と、を備えている。そして、ポンプボディ22とポンプカバー21とが互いに接合された状態で壁面26がポンプ室形成用凹部25の軸第一方向L1側の開口を閉じ、ポンプ室形成用凹部25と壁面26とによりポンプロータを収容するポンプ室が形成される。本実施形態では、互いに接合されるポンプカバー21及びポンプボディ22が、本発明における「ポンプケース」を構成している。なお、ポンプケース(ポンプカバー21及びポンプボディ22)は、油圧発生装置1が備えるケース(本例では、後述する駆動装置ケース)と一体的に形成されるか、或いは当該ケースに直接又は別の部材を介して固定される。
【0033】
本実施形態では、オイルポンプ20は内接歯車ポンプとされている。そして、ポンプロータを構成するインナロータ20aとアウタロータ20bとが、ポンプ室形成用凹部25と壁面26とにより形成される上記ポンプ室に収容されている。インナロータ20aは、ポンプ駆動軸35と一体回転するように駆動連結されており、ポンプ駆動軸35の回転によりオイルポンプ20が駆動される。なお、オイルポンプ20の構成はこれに限定されるものではなく、また、ポンプの形式としても、外接歯車ポンプやベーンポンプ等としても好適である。
【0034】
ポンプ駆動軸35は、オイルポンプ20を駆動するための軸である。ポンプ駆動軸35は、ポンプケース(本例ではポンプカバー21)に形成された挿通孔27の径方向内側に、当該ポンプケースに対して相対回転可能に配置されている。詳細は後述するが、ポンプ駆動軸35の内部には軸心油路(後述する第一流路31)が形成されており、この軸心油路を介して、オイルポンプ20から吐出された油がワンウェイクラッチ41,42に供給され、ワンウェイクラッチ41,42の潤滑が行われる。
【0035】
図1に示すように、ポンプ駆動軸35は、ポンプケース(本例ではポンプカバー21)により径方向に支持されている。具体的には、ポンプカバー21は、当該ポンプカバー21から軸第一方向L1側に突出して、ポンプ駆動軸35に対して径方向外側から当該ポンプ駆動軸35を相対回転可能に径方向に支持する突出部30を備えている。そして、ポンプ駆動軸35は、突出部30を備えたポンプカバー21により、軸方向の広い領域で径方向に支持されている。なお、本実施形態では、突出部30は、ポンプ駆動軸35と同軸の円筒状に形成されている。
【0036】
そして、ポンプ駆動軸35が上記のようにポンプケースにより軸方向の広い領域で径方向に支持されることにより、ポンプ駆動軸35を軸方向片側で支持する構成を実現している。具体的には、ポンプ駆動軸35は、ポンプケース(本例ではポンプカバー21)のみによって径方向に支持されている。これにより、ポンプ駆動軸35を軸方向両側で径方向に支持する構成に比べ、ポンプ駆動軸35の支持精度を高めることが可能となっている。
【0037】
補足説明すると、ポンプ駆動軸35を径方向に支持する部材に設定されるクリアランスが大きいと、ポンプ駆動軸35が軸方向に対して傾き得る傾斜の程度や径方向へ移動し得る変位の程度が大きくなりやすい。そして、ポンプ駆動軸35を軸方向両側で径方向に支持する構成では、軸方向両側の支持部材の双方の組付精度を考慮した大きいクリアランスが必要となる。これに対し、本実施形態では、ポンプ駆動軸35を軸方向片側で支持する構成を採用することで、ポンプ駆動軸35を径方向に支持する部材であるポンプカバー21に設けられるクリアランスを小さくすることができる。そして、上記のように、ポンプ駆動軸35は、ポンプケースにより軸方向の広い領域で径方向に支持される。よって、本実施形態では、ポンプ駆動軸35が軸方向に対して傾き得る傾斜の程度や径方向へ移動し得る変位の程度を小さく抑えることができ、結果、ポンプ駆動軸35の支持精度を高めることが可能となっている。
【0038】
ワンウェイクラッチ41,42は、ポンプカバー21及びポンプボディ22に対して軸第一方向L1側にて、ポンプ駆動軸35と同軸状に軸方向に並べて配置されている。具体的には、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、第一ワンウェイクラッチ41、第二ワンウェイクラッチ42の順に配置されている。
【0039】
第一ワンウェイクラッチ41及び第二ワンウェイクラッチ42は、それぞれの内輪が互いに一体化された共通内輪43を備えている。そして、第一ワンウェイクラッチ41は、共通内輪43と同軸状に配置された外輪41aと、共通内輪43と外輪41aとの間で選択的にトルク(駆動力)の伝達を行う駆動力伝達部材41cと、共通内輪43と外輪41aとの間隔を保持するためのブロックベアリング41dと、を備えている。また、第二ワンウェイクラッチ42は、共通内輪43と同軸状に配置された外輪42aと、共通内輪43と外輪42aとの間で選択的にトルク(駆動力)の伝達を行う駆動力伝達部材42cと、共通内輪43と外輪42aとの間隔を保持するためのブロックベアリング42dと、を備えている。
【0040】
以下では、第一ワンウェイクラッチ41が備える外輪41a、駆動力伝達部材41c、及びブロックベアリング41dを、それぞれ、「第一外輪41a」、「第一駆動力伝達部材41c」、及び「第一ブロックベアリング41d」という。また、第二ワンウェイクラッチ42が備える外輪42a、駆動力伝達部材42c、及びブロックベアリング42dを、それぞれ、「第二外輪42a」、「第二駆動力伝達部材42c」、及び「第二ブロックベアリング42d」という。
【0041】
共通内輪43は、連結部44と、本体部45と、保持器(ケージ)70と、を備えている。連結部44は、突出部30に対して軸第一方向L1側にてポンプ駆動軸35に連結(駆動連結)される部分であり、径方向に延びるように形成されている。なお、連結部44は、ポンプ駆動軸35に対して軸方向及び周方向の相対移動が規制される状態でポンプ駆動軸35に固定されており、ポンプ駆動軸35と一体回転する。連結部44は、例えば溶接等でポンプ駆動軸35に固定される。
【0042】
本体部45は、ポンプ駆動軸35より径方向外側で、連結部44から軸第二方向L2側へ延びるように形成されている。具体的には、本体部45は、連結部44から軸第二方向L2側へ延び、突出部30に対して径方向外側にあって当該突出部30と同じ軸方向位置となる部分を有するように配置されている。すなわち、本体部45は、径方向に見て突出部30と重複する部分を有するように配置されている。そして、本実施形態では、本体部45は、ポンプ駆動軸35と同軸の筒状(具体的には円筒状)に形成されており、本体部45の軸第二方向L2側部分が、突出部30の軸第一方向L1側部分を径方向外側から覆うように配置されている。なお、本明細書では、2つの部材の配置に関して「ある方向に見て重複する部分を有する」とは、当該方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを意味する。
【0043】
上記のように、本体部45を、径方向に見て突出部30と重複する部分を有するように配置することで、油圧発生装置1の軸方向における大型化を抑制しつつポンプケース(本例ではポンプカバー21)に突出部30を設け、ポンプ駆動軸35の支持精度を確保することが可能となっている。なお、本発明では、第一ワンウェイクラッチ41の内輪と第二ワンウェイクラッチ42の内輪とを一体的に形成することで、図1に示すように、共通内輪43とポンプ駆動軸35との間に軸方向に延びる空間を形成して当該空間に突出部30を配置する構成を実現している。
【0044】
ところで、後述するように、オイルポンプ20の駆動時には、本体部45に対して径方向内側から油が供給される。そして、本体部45は、径方向内側から供給される油を効率的にワンウェイクラッチ41,42の内部に導くべく、図1における拡大図に示すように、貯留用凹部46と貫通孔47とを有している。貯留用凹部46は、本体部45の内周面に形成された径方向外側へ窪んだ凹部であり、軸第二方向L2側が堰部45cにより区画されている。このような貯留用凹部46を備えることで、オイルポンプ20の駆動時に径方向内側から供給された油が本体部45の軸第二方向L2側にある本体部45とポンプケース21との間の隙間を介して径方向外側に流れるのを堰部45cによって抑制して、油を貯留用凹部46に効率的に捕集することが可能となっている。なお、本実施形態では、貯留用凹部46は周方向の全域に形成されている。また、貯留用凹部46の軸第一方向L1側の端部は、連結部44の軸第二方向L2側の端部と同じ軸方向位置とされている。
【0045】
貫通孔47は、図1及び図2に示すように、貯留用凹部46と本体部45の外周面である本体部外周面45aとを連通するように形成されている。そして、このような貫通孔47を備えるため、オイルポンプ20の駆動時に径方向内側から供給された油の多くは、遠心力により貯留用凹部46を介して貫通孔47に流入し、貫通孔47の本体部外周面45aにおける開口部48に到達する。なお、本例では、図1に示すように、貫通孔47は軸方向に対して直交する方向に延びるように形成されている。また、図2に示すように、貫通孔47は径方向にほぼ平行な方向に延びるように、具体的には、径方向内側から径方向外側に向かうに従って僅かに周第二方向C2側に向かうように形成されている。なお、油の流れについての詳細は後述する。
【0046】
保持器70は、駆動力伝達部材41c,42c、ブロックベアリング41d,42d、及び付勢部材49(図2参照)が収容される収容室を備えている。保持器70は、本体部45の径方向外側に固定され、本体部45と一体回転する。なお、保持器70は、例えば金属や合成樹脂等で形成される。
【0047】
本実施形態では、第一ワンウェイクラッチ41及び第二ワンウェイクラッチ42の双方は、ローラ型のワンウェイクラッチとされている。よって、第一駆動力伝達部材41c及び第二駆動力伝達部材42cの双方は、図1及び図2に示すように、軸心が軸方向に平行に配置された円柱状部材とされている。そして、これらの駆動力伝達部材41c,42cとブロックベアリング41d,42dとが、保持器70に形成された収容室に配置されている。なお、本例では、保持器70に形成される収容室は、径方向の両側に開口部を有しており、径方向内側の開口は本体部45の本体部外周面45aにより閉じられる。また、保持器70に形成される収容室の径方向外側の開口は、外輪41a,42aの内周面により実質的に閉じられる。
【0048】
具体的には、図2に示すように、保持器70は、第一駆動力伝達部材41cを収容する収容室である第一収容室43aと、第一ブロックベアリング41dを収容する収容室とを、周方向に沿って交互に備えている。図2に示す例では、保持器70は、第一収容室43aと、第一ブロックベアリング41dを収容する収容室とを、それぞれ5個ずつ備えている。
【0049】
そして、各第一収容室43aには、第一駆動力伝達部材41cを周第一方向C1側に付勢する付勢部材49(例えばバネ等の弾性部材)が配置されている。また、各第一収容室43aの径方向内側の境界を規定する本体部外周面45aには、径方向内側に窪んだ外周凹部45bが形成されている。外周凹部45bは、周第一方向C1側に向かうに従って径方向外側に向かう傾斜面を有する。よって、本例では、第一外輪41aの共通内輪43に対する周第一方向C1側への相対回転が規制され、第一外輪41aの共通内輪43に対する周第二方向C2側への相対回転が許容される。
【0050】
同様に、保持器70は、第二駆動力伝達部材42cを収容する収容室である第二収容室43b(図1参照)と、第二ブロックベアリング42dを収容する収容室とを、周方向に沿って交互に備えている。図示は省略するが、第二収容室43bは、先に図2を参照して説明した第一収容室43aと同様に配置され、付勢部材49や外周凹部45bも同様に備えられている。そのため、第二外輪42aの共通内輪43に対する周第一方向C1側への相対回転が規制され、第二外輪42aの共通内輪43に対する周第二方向C2側への相対回転が許容される。このように、2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれの外輪41a,42aは、共通内輪43に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向が互いに同一(本例では周第一方向C1)とされている。
【0051】
また、同じく図示は省略するが、第二ブロックベアリング42dを収容する収容室も、先に図2を参照して説明した第一ブロックベアリング41dを収容する収容室と同様に配置されている。すなわち、本例では、保持器70は、第二収容室43bと、第二ブロックベアリング42dを収容する収容室とを、それぞれ5個ずつ備えている。
【0052】
そして、本実施形態では、図1に示すように、第一駆動力伝達部材41cを収容する第一収容室43aと、第二駆動力伝達部材42cを収容する第二収容室43bとが、同じ周方向位置に形成されている。また、第一ブロックベアリング41dを収容する収容室と、第二ブロックベアリング42dを収容する収容室とが、同じ周方向位置に形成されている。
【0053】
なお、第一外輪41aが共通内輪43に対して周第二方向C2側へ相対回転する際には、第一ブロックベアリング41dの径方向外側面が、第一外輪41aの内周面との間の摺動面となる。また、第二外輪42aが共通内輪43に対して周第二方向C2側へ相対回転する際には、第二ブロックベアリング42dの径方向外側面が、第二外輪42aの内周面との間の摺動面となる。そして、本実施形態では、後述するように、これらの摺動面に対してオイルポンプ20が発生した油圧により油が供給される構成を備えている。なお、ブロックベアリング41d,42dは、例えば含油焼結合金等で形成される。
【0054】
2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれの外輪41a,42aは、互いに独立に形成されているとともに、互いに異なるポンプ駆動部材によりそれぞれ駆動される。具体的には、図1に示すように、第一ワンウェイクラッチ41の外輪(第一外輪)41aと第二ワンウェイクラッチ42の外輪(第二外輪)42aとは互いに独立に形成されている。そして、第一外輪41aの外周面には、第一駆動ギヤ51aと噛み合う第一従動ギヤ41bが形成されており、第一ワンウェイクラッチ41の外輪41aは第一駆動ギヤ51aにより駆動される。また、第二外輪42aの外周面には、第二駆動ギヤ52aと噛み合う第二従動ギヤ42bが形成されており、第二ワンウェイクラッチ42の外輪42aは第二駆動ギヤ52aにより駆動される。なお、後述するように、第一駆動ギヤ51aは第一ポンプ駆動部材51(図3参照)に駆動連結されており、第二駆動ギヤ52aは第二ポンプ駆動部材52(図3参照)に駆動連結されている。本実施形態では、第一従動ギヤ41b及び第二従動ギヤ42bが、それぞれ本発明における「第一ギヤ」及び「第二ギヤ」に相当する。
【0055】
なお、本実施形態では、図1に示すように、第二従動ギヤ42bに対して軸第一方向L1側に配置される第一従動ギヤ41bが、連結部44と同じ軸方向位置となる部分を有するように配置されている。また、第一外輪41a、第一駆動力伝達部材41c、及び第一ブロックベアリング41dも、連結部44と同じ軸方向位置となる部分を有するように配置されている。なお、第一従動ギヤ41b、第一外輪41a、第一駆動力伝達部材41c、及び第一ブロックベアリング41dの少なくとも何れかを、連結部44と同じ軸方向位置となる部分を有さないように、連結部44に対して軸方向にずらして配置することも可能である。
【0056】
上記のように、第一ワンウェイクラッチ41の第一外輪41aは、共通内輪43に対する周第一方向C1側への相対回転が規制されるとともに、第二ワンウェイクラッチ42の第二外輪42aも、共通内輪43に対する周第一方向C1側への相対回転が規制される。よって、第一外輪41a及び第二外輪42aの一方の外輪のみが周第一方向C1側に回転している場合には、当該一方の外輪の回転によりオイルポンプ20が駆動される。また、第一外輪41a及び第二外輪42aの双方の外輪が周第一方向C1側に回転している場合には、当該双方の外輪の内の回転速度が高い方の外輪の回転によりオイルポンプ20が駆動される。
【0057】
本実施形態では、2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれは、外輪41a,42aの内径が互いに同一とされている。また、共通内輪43が備える本体部45は、本実施形態では円筒状に形成されているため、本体部外周面45aは円筒状とされている。言い換えれば、本体部45は、図1に示すように、外周面が軸方向に一様に形成されている。よって、第一ワンウェイクラッチ41と第二ワンウェイクラッチ42とで駆動力伝達部材41c,42c、ブロックベアリング41d,42d、及び付勢部材49をそれぞれ共通の部品とすることができ、部品点数の抑制が可能となっている。なお、第一外輪41aの内径と、第二外輪42aの内径とを互いに異なる値に設定することも可能である。
【0058】
また、本例では、図1に示すように、第一外輪41aの外径は、第二外輪42aの外径よりも僅かに大きく形成されているが、第一外輪41aの外径と第二外輪42aの外径とを互いに等しい値として、第一ワンウェイクラッチ41と第二ワンウェイクラッチ42とで外輪41a,42aを共通の部品とすることも可能である。
【0059】
ところで、ポンプ駆動軸35は、図1に示すように、軸方向に対して交差する方向に延びる面を有して、オイルポンプ20の駆動時に軸第一方向L1側への液圧(本例では油圧)を受ける受圧部35aを備えている。本例では、受圧部35aは、法線方向が軸方向(軸第二方向L2)と平行となる面を備えている。具体的には、ポンプ駆動軸35のインナロータ20aと係合する部分は、軸方向に直交する面に沿って切断した断面が、互いに対向する周縁部のそれぞれが直線状に切りかかれた形状となるように形成されている。一方、ポンプ駆動軸35のポンプカバー21内に配置される部分は、軸方向に直交する面に沿って切断した断面が円形とされている。ポンプ駆動軸35をこのように構成することで、ポンプ駆動軸35におけるインナロータ20aと係合する部分とポンプカバー21内に配置される部分との間に、法線方向が軸第二方向L2と平行となる面を有する受圧部35aが形成される。なお、この受圧部35aは、図1に示すようにポンプ室に連通する部分に形成されるため、オイルポンプ20の駆動時に当該オイルポンプ20が発生する油圧が受圧部35aに対して作用し、受圧部35aは軸第一方向L1側へ向かう押圧力を受けることになる。
【0060】
一方、オイルポンプ20及びワンウェイクラッチ41,42に対して軸第一方向L1側には、共通内輪43を軸第一方向L1側から支持する支持部50が配置されている。支持部50は、油圧発生装置1が備える不図示のケース(本例では駆動装置ケース)に固定されている。具体的には、本例では、支持部50は、駆動装置ケースが内部の空間を軸方向に区画するために備える隔壁により構成されている。そして、共通内輪43と、支持部50との間には、軸方向の荷重を受ける第一スラストワッシャ61が配置されている。第一スラストワッシャ61は、本例では、図示しない係合部により、支持部50に対する周方向の相対回転が規制された状態で支持部50に固定されている。本実施形態では、第一スラストワッシャ61が、本発明における「スラスト軸受」に相当する。
【0061】
以上のような構成を備えるため、ポンプ駆動軸35は、オイルポンプ20の駆動時に発生する油圧により軸第二方向L2側から軸方向に支持されるとともに、共通内輪43がス第一スラストワッシャ61を介して支持部50から受ける、上記油圧の大きさに応じた抗力により軸第一方向L1側から軸方向に支持される。そして、ポンプ駆動軸35及びこれに連結された共通内輪43の双方は、共通内輪43が第一スラストワッシャ61に当接する状態で軸方向に位置決めされる。
【0062】
本実施形態では、上記のように、オイルポンプ20の駆動時に発生する油圧によりポンプ駆動軸35を軸第二方向L2側から軸方向に支持する構成を採用することで、共通内輪43を軸第二方向L2側から支持するスラスト軸受を省略することが可能となっている。これにより、図1における拡大図に示すように、共通内輪43の連結部44とポンプカバー21に形成された突出部30の軸方向の先端部30aとの間に隙間Gを形成することが可能となっている。
【0063】
具体的には、本実施形態では、共通内輪43が受圧部35aで受圧して支持部50により軸第一方向L1側から支持された状態で、突出部30の先端部30aと連結部44との間に、油が径方向に流通可能な隙間Gが形成される。すなわち、この隙間Gは、オイルポンプ20の駆動時に油が径方向に流通可能な軸方向幅を有する。なお、本例では、突出部30の軸方向の先端部30aは、本体部45の径方向内側にあって径方向に見て貯留用凹部46と重複する位置に配置されている。そして、詳細は後述するが、この隙間Gを利用して、ワンウェイクラッチ41,42に対して潤滑のための油を良好に供給することが可能となっている。
【0064】
軸方向における第一外輪41aと第二外輪42aとの間には、第二スラストワッシャ62が配設されている。第二スラストワッシャ62は、本例では、係合部62aにより第一外輪41aに対する周方向の相対回転が規制された状態で第一外輪41aに固定されている。さらに、軸方向における第二外輪42aとポンプカバー21の軸第一方向L1側面との間には、第三スラストワッシャ63が配設されている。第三スラストワッシャ63は、本例では、図示しない係合部によりポンプカバー21に対する相対回転が規制された状態でポンプカバー21に固定されている。
【0065】
また、本実施形態では、ポンプ駆動軸35の軸第一方向L1側には、ポンプカバー21内に配置される部分に対して小径の先端部35bが形成されている。そして、ポンプ駆動軸35の先端部35bは、支持部50に形成された軸方向に延びる孔(本例では貫通孔)の内部に配置されている。なお、本実施形態では、ポンプ駆動軸35はポンプケース21により高精度に径方向に支持されており、更に先端部35bの外周面と上記孔の内周面との間には軸受が省略されて隙間が形成されている。
【0066】
ところで、上記のように、本実施形態では、油圧発生装置1の軸方向における大型化を抑制しつつポンプ駆動軸35の支持精度を適切に確保すべく、本体部45を径方向に見て突出部30と重複する部分を有するように配置する構成を採用している。そして、このような配置構成を採用することで、ポンプ駆動軸35のポンプケースによる支持点と、ポンプ駆動軸35に対する2つのワンウェイクラッチ41,42の荷重点との間の軸方向のオフセットを低減することも可能となっている。すなわち、ポンプ駆動軸35の傾斜や変形を抑制してオイルポンプ20の寿命を向上することが可能な構成となっている。
【0067】
さらに、本実施形態では、上記のように、突出部30及び本体部45の双方が円筒状に形成されている。よって、突出部30と本体部45との間の径方向の隙間を狭くすることができ、強度を確保しつつ、共通内輪43を小径化して軽量化を図ることも可能となっている。
【0068】
2.油路の構成
次に、本実施形態に係る油圧発生装置1が備える、ワンウェイクラッチ41,42を潤滑するための油路の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、ポンプケース(本例ではポンプカバー21)は、オイルポンプ20の吐出口23と連通するポンプケース内流路24を備えている。また、ポンプ駆動軸35は、第一流路31と、第二流路32と、第三流路33とを備えている。そして、これらの流路により、オイルポンプ20から吐出された油をワンウェイクラッチ41,42やスラストワッシャ61〜63に供給するための油路が形成されている。なお、図1及び図2においては、オイルポンプ20の動作時における油の流れを、破線矢印で概念的に表している。
【0069】
具体的には、ポンプケース内流路24は、吐出口23から軸第一方向L1側に延びる第一流路部と、当該第一流路部に連通するとともに径方向に延び、挿通孔27の内周面に開口する第二流路部と、を備えている。そして、オイルポンプ20の動作時には、これら第一流路部及び第二流路部を介して、油が第二流路部の挿通孔27の内周面における開口部に供給される。
【0070】
第一流路31は、ポンプケース内流路24と受け渡し部34を介して連通するとともに軸方向に延びるように形成されている。本例では、受け渡し部34は、ポンプ駆動軸35の外周面に形成されており、具体的には、所定の軸方向幅で径方向内側に窪んだ凹部とされている。本実施形態では、受け渡し部34を構成する凹部は、周方向の全域に亘って周方向に延びる溝状部とされ、その軸方向位置は、ポンプケース内流路24が備える上記第二流路部の挿通孔27の内周面における開口部と同じ位置とされている。そして、第一流路31は、受け渡し部34から径方向内側に延びる径方向延在部と、ポンプ駆動軸35の軸心に配置され、当該径方向延在部からポンプ駆動軸35の先端部35bまで軸第一方向L1側に延びる軸方向延在部と、を備えている。なお、ここでは受け渡し部34がポンプ駆動軸35に形成される場合を例として示したが、受け渡し部34と同様の機能を有する部分をポンプケース側に形成する構成としたり、ポンプケース内流路24と第一流路31とが直接連通するように形成された構成としたりすることもできる。
【0071】
第二流路32は、第一流路31と連通するとともに径方向に延びてポンプ駆動軸35の外周面に開口するように形成されている。図1及び図2に示すように、第二流路32は、第一流路31の軸方向延在部から径方向に沿って径方向外側に向かうように形成されており、本例では、周方向位置が互いに180度異なる2つの位置のそれぞれに第二流路32が形成されている。そして、第二流路32のポンプ駆動軸35の外周面における開口部が、図1に示すように、本体部45に形成された貯留用凹部46への油の供給部32aとされている。この供給部32aは、貯留用凹部46の径方向内側に設けられている。具体的には、供給部32aは、径方向に見て貯留用凹部46と重複する部分を有するように配置されている。
【0072】
そして、供給部32aの径方向外側には、突出部30の先端部30aと連結部44との間に形成された、油が径方向に流通可能な隙間Gが位置する。よって、供給部32aに供給された油は、遠心力の作用により径方向外側に流れ、隙間Gを介して貯留用凹部46に供給される。このように、ポンプケース内流路24、受け渡し部34、第一流路31、及び第二流路32が、オイルポンプ20から吐出された油を貯留用凹部46に供給するための油路を形成しており、オイルポンプ20の駆動時に、ポンプ駆動軸35の回転に伴う遠心力を利用して、油を貯留用凹部46に供給することが可能となっている。
【0073】
ところで、上記のように、本体部45は、貯留用凹部46と本体部外周面45aとを連通する貫通孔47を有している。そして、図1における拡大図に示すように、共通内輪43は、貫通孔47の本体部外周面45aにおける開口部48と第一収容室43aとを連通する第一連通路43cと、貫通孔47の本体部外周面45aにおける開口部48と第二収容室43bとを連通する第二連通路43dと、を備えている。これにより、供給部32aから貯留用凹部46に供給された油を、貫通孔47及び第一連通路43cを介して第一収容室43aに供給するとともに、貫通孔47及び第二連通路43dを介して第二収容室43bに供給することが可能となっている。
【0074】
本実施形態では、本体部45の外周面である本体部外周面45aは円筒状に形成されている。そして、図1に示すように、本体部外周面45aは、図2に示す外周凹部45bも含めて、その形状が軸方向に一様とされている。すなわち、外周凹部45bは、互いに同じ周方向位置に配置された第一収容室43a及び第二収容室43bのそれぞれの内部だけでなく、軸方向における第一収容室43aと第二収容室43bとの間にも形成されている。
【0075】
一方、本体部45の外周面に固定されている保持器70の、軸方向両側における本体部45との係止部を除く軸方向中央部分の内周面は、本実施形態では、軸方向に一様な円筒面とされている。よって、図1における拡大図に示すように、軸方向における第一収容室43aと第二収容室43bとの間であって、第一収容室43a及び第二収容室43bと同じ周方向位置(より正確には、外周凹部45bと同じ周方向位置)において、本体部外周面45aと保持器70の内周面との間に空間(以下、「内輪内空間S」という。)が形成される。そして、この内輪内空間Sに連通するように、貫通孔47の開口部48が形成されている。すなわち、本例では、貫通孔47の開口部48は、第一収容室43a及び第二収容室43bと同じ周方向位置(より正確には、外周凹部45bと同じ周方向位置)に配置されている。そして、開口部48から軸第一方向L1側に向かって第一収容室43aに至る第一連通路43cと、開口部48から軸第二方向L2側に向かって第二収容室43bに至る第二連通路43dとが、内輪内空間Sに形成されている。
【0076】
なお、本例では、図1及び図2に示すように、本体部45には1つの貫通孔47のみが形成されており、第一収容室43a及び第二収容室43bは、互いに共通の貫通孔47である共通貫通孔47aと連通するように構成されている。なお、共通貫通孔47aの本体部外周面45aにおける開口部48である共通開口部48aは、軸方向における第一収容室43aと第二収容室43bとの間(本例では、第一収容室43aと第二収容室43bとから軸方向に均等に離れた中央部)に形成されている。そのため、第一連通路43cと第二連通路43dとは、共通開口部48aから軸方向で互いに反対側に延びるように形成されている。
【0077】
そして、第一連通路43cを介して第一収容室43aに供給された油は、遠心力により図2に示すように第一収容室43a内を径方向内側から径方向外側に向かって流れ、第一収容室43aの径方向外側の開口部(第一外輪41aの内周面)に到達する。そして、第一外輪41aが共通内輪43に対して周第二方向C2側に相対回転している状態では、図2に示すように、第一収容室43aの径方向外側の開口部(第一外輪41aの内周面)に到達した油は、共通内輪43に対して周第二方向C2側に流れ、第一ブロックベアリング41dの径方向外側面と第一外輪41aの内周面との間の隙間に供給される。これにより、第一外輪41aが共通内輪43に対して周第二方向C2側に相対回転している状態で、摺動面である第一ブロックベアリング41dの径方向外側面及び第一外輪41aの内周面の潤滑を行うことができる。
【0078】
図示は省略するが、第二連通路43dを介して第二収容室43bに供給された油も、同様に、第二収容室43b内を径方向内側から径方向外側に向かって流れ、第二収容室43bの径方向外側の開口部(第二外輪42aの内周面)に到達する。そして、第二外輪42aが共通内輪43に対して周第二方向C2側に相対回転している状態では、第二収容室43bの径方向外側の開口部(第二外輪42aの内周面)に到達した油は、共通内輪43に対して周第二方向C2側に流れ、第二ブロックベアリング42dの径方向外側面と第二外輪42aの内周面との間の隙間に供給される。これにより、第二外輪42aが共通内輪43に対して周第二方向C2側に相対回転している状態で、摺動面である第二ブロックベアリング42dの径方向外側面及び第二外輪42aの内周面の潤滑を行うことができる。
【0079】
そして、第一収容室43aや第二収容室43bに供給された油の一部は、図1に示すように、保持器70の軸方向中央部分の外周面と外輪41a,42aの内周面との間の隙間を介して第二スラストワッシャ62に径方向内側から供給される。また、第二収容室43bに供給された油の一部は、図1に示すように、保持器70の軸第二方向L2側部分の外周面と第二外輪42aの内周面との間の隙間を介して第三スラストワッシャ63に径方向内側から供給される。また、供給部32aから貯留用凹部46に供給される油の量が多い場合には、その一部は貫通孔47に供給されずに堰部45cを越え、本体部45の軸第二方向L2側にある本体部45とポンプカバー21との間の隙間を介して第三スラストワッシャ63に対して径方向内側から供給される。これにより、第二スラストワッシャ62や第三スラストワッシャ63の潤滑が行われる。また、第二スラストワッシャ62や第三スラストワッシャ63に供給された油の一部は、第一従動ギヤ41bや第二従動ギヤ42bに供給され、第一従動ギヤ41bと第一駆動ギヤ51aとの噛み合い部や、第二従動ギヤ42bと第二駆動ギヤ52aとの噛み合い部の潤滑が行われる。
【0080】
ポンプ駆動軸35が備える第三流路33は、第二流路32に対して軸第一方向L1側に形成され、第一流路31と連通するとともに径方向に延びてポンプ駆動軸35の外周面であって第一スラストワッシャ61の径方向内側に開口するように形成されている。図1に示すように、第三流路33は、第一流路31の軸方向延在部から径方向に沿って径方向外側に向かうように形成されている。また、本例では、第三流路33は、ポンプ駆動軸35の軸第一方向L1側の小径の先端部35bに形成されている。そして、ポンプケース内流路24、受け渡し部34、第一流路31、及び第三流路33が、オイルポンプ20から吐出された油を第一スラストワッシャ61に供給するための油路を形成しており、オイルポンプ20の駆動時に、ポンプ駆動軸35の回転に伴う遠心力を利用して、油を第一スラストワッシャ61に供給することが可能となっている。
【0081】
なお、上記のように、ポンプ駆動軸35の先端部35bの外周面と、支持部50に設けられた貫通孔の内周面との間には、隙間が形成されている。そして、この隙間は、油の軸第一方向L1側への流れが制限されるような大きさとされている。また、第三流路33から支持部50と共通内輪43との間の隙間に供給される油は、ポンプ駆動軸35の回転速度に応じた遠心力を受けている。よって、第三流路33から支持部50と共通内輪43との間の隙間に供給される油が、ポンプ駆動軸35の先端部35bの外周面と支持部50に設けられた貫通孔の内周面との間の隙間を介して第一方向L1側へ流れることは抑制され、第三流路33から供給された油の大部分は、第一スラストワッシャ61に対して径方向内側から供給され、当該第一スラストワッシャ61の潤滑に供される。
【0082】
3.駆動装置の構成
次に、本実施形態に係る車両用駆動装置2の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置2は、車両の駆動力源として内燃機関10及び回転電機11,12の一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置である。すなわち、車両用駆動装置2は、駆動力源として第一回転電機11及び第二回転電機12を備えた、いわゆる2モータスプリットタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている。
【0083】
車両用駆動装置2は、内燃機関10に駆動連結される入力軸90と、車輪19に駆動連結される出力軸94と、入力軸90と出力軸94との間で選択的に駆動力を伝達する駆動伝達装置13とを備え、更に、第一回転電機11と、第二回転電機12と、変速装置15と、出力用差動歯車装置17とを備えている。また、車両用駆動装置2は、上述した油圧発生装置1を備えており、入力軸90が第一ワンウェイクラッチ41の外輪を駆動する第一ポンプ駆動部材51として機能し、出力軸94が第二ワンウェイクラッチ42の外輪を駆動する第二ポンプ駆動部材52として機能するように構成されている。これにより、車両用駆動装置2は、車両用駆動装置2の各部位に潤滑や冷却等のために油を供給することが可能に構成されている。
【0084】
なお、車両用駆動装置2が備える上記の各構成は、車体に固定される不図示の駆動装置ケース内に収容されている。そして、駆動装置ケースが備える隔壁が、上述した支持部50(図1参照)を構成している。また、本例では、図3に示すように、入力軸90、出力軸94、第一回転電機11、第二回転電機12、駆動伝達装置13、及び変速装置15が同軸状に配置されているとともに、油圧発生装置1(具体的にはポンプ駆動軸35)は、入力軸90等が配置される軸とは異なる軸上に配置されている。そして、駆動伝達装置13が第一差動歯車機構14を備え、変速装置15が第二差動歯車機構16を備えている。本実施形態では、第一差動歯車機構14が、本発明における「差動歯車機構」に相当する。以下、本実施形態に係る車両用駆動装置2の構成について詳細に説明する。
【0085】
入力軸90は、内燃機関10に駆動連結される。ここで、内燃機関10は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、入力軸90は、内燃機関10のクランクシャフト等の出力回転軸と一体回転するように駆動連結されている。なお、入力軸90が、内燃機関10の出力回転軸に対して、ダンパやクラッチ等の他の部材を介して駆動連結される構成とすることもできる。
【0086】
第一回転電機11は、駆動装置ケースに固定されたステータ11aと、このステータ11aの径方向内側に回転自在に支持されたロータ11bと、を有している。この第一回転電機11のロータ11bは、第一ロータ軸91に固定されており、第一回転電機11のロータ11bは、この第一ロータ軸91を介して第一差動歯車機構14のサンギヤ14aと一体回転するように駆動連結されている。また、第二回転電機12は、駆動装置ケースに固定されたステータ12aと、このステータ12aの径方向内側に回転自在に支持されたロータ12bと、を有している。この第二回転電機12のロータ12bは、第二ロータ軸92に固定されており、第二回転電機12のロータ12bは、この第二ロータ軸92を介して第二差動歯車機構16のサンギヤ16aと一体回転するように駆動連結されている。第一回転電機11及び第二回転電機12は、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。蓄電装置は、例えば、バッテリやキャパシタ等を用いて構成される。
【0087】
第一回転電機11及び第二回転電機12は、それぞれ電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。ここで、第一回転電機11及び第二回転電機12は、ジェネレータとして機能する場合には、内燃機関10のトルクや車両の慣性力により発電を行い、蓄電装置を充電し、或いはモータとして機能する他方の回転電機11,12を駆動するための電力を供給する。一方、第一回転電機11及び第二回転電機12は、モータとして機能する場合には、蓄電装置に充電され、或いはジェネレータとして機能する他方の回転電機11,12により発電された電力の供給を受けて力行する。
【0088】
駆動伝達装置13は、入力軸90と同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構である第一差動歯車機構14を備えている。第一差動歯車機構14は、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤ14bと、ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤ14a及びリングギヤ14cとを回転要素として有している。すなわち、第一差動歯車機構14は、3つの回転要素を備えている。サンギヤ14aは、第一回転電機11に駆動連結されている。具体的には、サンギヤ14aは、第一回転電機11のロータ11bに固定された第一ロータ軸91と一体回転するように駆動連結されている。キャリヤ14bは、内燃機関10に駆動連結されている。具体的には、キャリヤ14bは、入力軸90と一体回転するように駆動連結されている。リングギヤ14cは、第二回転電機12及び車輪19に駆動連結されている。具体的には、リングギヤ14cは、駆動伝達装置13(第一差動歯車機構14)の出力回転要素とされており、出力軸94と一体回転するように駆動連結されている。また、リングギヤ14cは、変速装置15を介して、第二回転電機12のロータ12bに固定された第二ロータ軸92に駆動連結されている。これら3つの回転要素は、回転速度の順にサンギヤ14a、キャリヤ14b、及びリングギヤ14cとなっている。従って、本実施形態では、サンギヤ14a、キャリヤ14b、及びリングギヤ14cが、それぞれ、本発明における「第一回転要素」、「第二回転要素」、及び「第三回転要素」に相当する。
【0089】
本実施形態では、図1にも示すように、リングギヤ14cは、分配出力部材18の内周面に形成されている。ここで、分配出力部材18は、第一差動歯車機構14の径方向外側を包囲するように設けられた円筒状の部材であり、出力軸94と一体回転するように駆動連結されている。また、分配出力部材18の外周面には、第二ワンウェイクラッチ42の外輪42aに形成された第二従動ギヤ42bと噛み合うギヤである第二駆動ギヤ52aが形成されている。また、キャリヤ14bは、第一ワンウェイクラッチ41の外輪41aに形成された第一従動ギヤ41bと噛み合うギヤである第一駆動ギヤ51aに連結されている。
【0090】
そして、駆動伝達装置13は、入力軸90を介して入力される内燃機関10のトルクを第一回転電機11と分配出力部材18(出力軸94)とに分配する動力分配装置としての機能を果たす。また、この駆動伝達装置13(第一差動歯車機構14)のキャリヤ14bに入力軸90(内燃機関10)のトルクが入力された状態で、第一回転電機11の回転速度及びトルクを制御することにより、入力軸90の回転速度を無段階に変速してリングギヤ14c及び分配出力部材18(出力軸94)に伝達することができる。よって、これらの入力軸90、駆動伝達装置13、及び第一回転電機11により、電気的無段変速機構が構成される。
【0091】
変速装置15は、出力軸94と同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構である第二差動歯車機構16を備えている。すなわち、第二差動歯車機構16は、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤ16bと、ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤ16a及びリングギヤ16cとを回転要素として有している。サンギヤ16aは、第二回転電機12のロータ12bに固定された第二ロータ軸92と一体回転するように駆動連結されている。キャリヤ16bは、出力軸94と一体回転するように駆動連結されている。リングギヤ16cは、駆動装置ケースに固定されている。本実施形態では、変速装置15が上記のように構成されているため、サンギヤ16aとリングギヤ16cとの歯数比に応じて、第二回転電機12の回転速度が減速されるとともにそのトルクが増幅され、出力軸94に伝達される。すなわち、変速装置15は一段の減速段を有する減速装置として機能する。なお、変速装置15が備える変速機構として、変速機構として周知のあらゆる変速機構を採用することができ、一段の増速段を有する変速機構や、複数の変速段(減速段及び増速段の一方或いは双方)を有する有段変速機構、或いは、無段変速機構により変速装置15を構成することもできる。また、車両用駆動装置2が変速装置15を備えず、第二ロータ軸92と出力軸94とが一体回転するように駆動連結された構成とすることもできる。
【0092】
出力軸94は、駆動伝達装置13(第一差動歯車機構14)のリングギヤ14cと一体回転するように駆動連結されるとともに、変速装置15(第二差動歯車機構16)のキャリヤ16bと一体回転するように駆動連結される。また、出力軸94は、出力用差動歯車装置17を介して車輪19に駆動連結される。出力用差動歯車装置17は、例えば、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いて構成される。そして、出力軸94には、上記のように、駆動伝達装置13を介して分配された内燃機関10のトルクが伝達されるとともに、変速装置15により増幅された第二回転電機12のトルクが伝達される。そして、出力軸94に伝達されるこれらのトルクが車輪19に伝達されることで、車両が走行する。
【0093】
以上のような構成を備えることで、本実施形態に係る車両用駆動装置2は、内燃機関10と回転電機11,12の双方の出力トルクにより走行するハイブリッド走行モードと、内燃機関10を停止した状態で、第二回転電機12の出力トルクにより走行するEV(電動)走行モードと、を選択可能に備えている。ハイブリッド走行モードでは、内燃機関10が動作状態とされ、内燃機関10のトルクが駆動伝達装置13により第一回転電機11と分配出力部材18とに分配される状態となる。EV走行モードでは、内燃機関10の内部の摩擦力により内燃機関10の出力回転軸の回転速度はゼロとなる。すなわち、入力軸90の回転速度がゼロとなる。また、EV走行モードにおいては、第一回転電機11は出力トルクがゼロになるように制御され、第一回転電機11のロータ11bを支持する第一ロータ軸91は、自由に回転可能な状態とされる。
【0094】
図3に示すように、本実施形態では、第一駆動ギヤ51aは、内燃機関10に駆動連結された入力軸90に駆動連結されている。具体的には、第一駆動ギヤ51aは、入力軸90と一体回転するように駆動連結されている。そのため、内燃機関10の動作時(内燃機関10の駆動力発生時であって、内燃機関10の出力回転軸の正転時)には、入力軸90が内燃機関10により駆動されるとともに、第一駆動ギヤ51aが入力軸90により駆動される。よって、本実施形態では、入力軸90が、第一外輪41aを駆動する第一ポンプ駆動部材51として機能する。
【0095】
また、第二駆動ギヤ52aは、車輪19に駆動連結された出力軸94に駆動連結されている。具体的には、出力軸94は、出力用差動歯車装置17を介して車輪19に駆動連結されており、車輪19の回転時には出力軸94も回転し、車輪19の非回転時には出力軸94も回転しないように構成されている。また、第二駆動ギヤ52aは、出力軸94と一体回転するように駆動連結されている。そのため、車輪19(出力軸94)の回転時には、第二駆動ギヤ52aが出力軸94により駆動される。よって、本実施形態では、出力軸94が、第二外輪42aを駆動する第二ポンプ駆動部材52として機能する。
【0096】
ところで、本実施形態では、変速装置15が上記のように構成されているため、出力軸94の回転時には、第二ロータ軸92も回転する。すなわち、本例では、第二ポンプ駆動部材52としての出力軸94の回転時には、車輪19及び第二ロータ軸92の双方が回転する。よって、車両の走行状態に応じて、第二ポンプ駆動部材52としての出力軸94が、車輪19により駆動される状態と、第二回転電機12により駆動される状態との双方の状態をとり得る。
【0097】
このように、本実施形態では、第二ポンプ駆動部材52が車輪19及び第二回転電機12の双方に駆動連結されている。そして、第二ポンプ駆動部材52が車輪19に駆動連結されているという観点では、内燃機関10が本発明における「駆動力源」に相当し、第二ポンプ駆動部材52が第二回転電機12に駆動連結されているという観点では、内燃機関10及び第二回転電機12がそれぞれ本発明における「第一駆動力源」及び「第二駆動力源」に相当する。
【0098】
なお、上記のように、2つのワンウェイクラッチ41,42のそれぞれの外輪41a,42aは、共通内輪43に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向が互いに同一(本例では周第一方向C1)とされている。そして、内燃機関10の動作中では、第一外輪41aは周第一方向C1側に駆動されるように構成されている。すなわち、内燃機関10と第一ポンプ駆動部材51とは、内燃機関10の動作中(すなわち駆動力発生時)における第一ポンプ駆動部材51による第一外輪41aの駆動方向が、共通内輪43に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向(本例では周第一方向C1)となるように駆動連結されている。
【0099】
また、車両の前進走行時(車輪19の正転時)には、第二外輪42aは周第一方向C1側に駆動されるように構成されている。すなわち、車輪19と第二ポンプ駆動部材52とは、車両の前進走行時(すなわち車輪19の正転時)における第二ポンプ駆動部材52による第二外輪42aの駆動方向が、共通内輪43に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向(本例では周第一方向C1)となるように駆動連結されている。第二回転電機12との関係で見ると、第二回転電機12と第二ポンプ駆動部材52とは、第二回転電機12の正転時(すなわち車輪19の正転時)における第二ポンプ駆動部材52による第二外輪42aの駆動方向が、共通内輪43に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向(本例では周第一方向C1)となるように駆動連結されている。
【0100】
第一ポンプ駆動部材51としての入力軸90と、第二ポンプ駆動部材52としての出力軸94との間では、駆動伝達装置13を介して選択的に駆動力の伝達が行われるように構成されているため、第一ポンプ駆動部材51と第二ポンプ駆動部材52とは互いに独立に回転する状態をとり得る。そして、入力軸90及び出力軸94の少なくとも何れかがオイルポンプ20を駆動する側に回転していれば、オイルポンプ20を駆動して油圧を発生させることができる。これにより、車輪19が停止し内燃機関10が動作している状態や、車輪19が回転し内燃機関10が停止している状態等の様々な車両の走行状態で、車両用駆動装置2内における油を必要とする部位に油を供給することが可能となっている。
【0101】
具体的には、車両が停止中或いは後進中で内燃機関10が動作している状態では、オイルポンプ20は第一駆動ギヤ51a(第一ポンプ駆動部材51)により駆動される。この状態では、第一ポンプ駆動部材51としての入力軸90は、内燃機関10により駆動される。
【0102】
また、車両が前進走行中で内燃機関10が停止した状態では、オイルポンプ20は第二駆動ギヤ52a(第二ポンプ駆動部材52)により駆動される。例えば車両用駆動装置2がEVモードを選択した場合等に、このような状態となる。そして、この状態では、車両が第二回転電機12のトルクにより前進走行している場合には、第二ポンプ駆動部材52としての出力軸94は第二回転電機12のトルクにより駆動され、車両が慣性力により前進走行している場合には、第二ポンプ駆動部材52としての出力軸94は車輪19の回転により駆動される。
【0103】
そして、車両が前進走行中であり且つ内燃機関10が動作中である場合には、第一外輪41a及び第二外輪42aの回転速度に応じて、オイルポンプ20を駆動する駆動ギヤ(ポンプ駆動部材)が切り替わる。すなわち、第一外輪41aの回転速度が第二外輪42aの回転速度より高い場合には、オイルポンプ20は第一駆動ギヤ51a(第一ポンプ駆動部材51)により駆動され、第一外輪41aの回転速度が第二外輪42aの回転速度より低い場合には、オイルポンプ20は第二駆動ギヤ52a(第二ポンプ駆動部材52)により駆動される。また、第一外輪41aの回転速度と第二外輪42aの回転速度とが等しい場合には、オイルポンプ20は第一駆動ギヤ51a(第一ポンプ駆動部材51)及び第二駆動ギヤ52a(第二ポンプ駆動部材52)の双方により駆動されることになる。
【0104】
ところで、上記のように、本実施形態では、内燃機関10に駆動連結されたポンプ駆動部材により外輪が駆動されるワンウェイクラッチは、第一ワンウェイクラッチ41とされている。言い換えれば、第一ワンウェイクラッチ41の外輪41aを駆動する第一ポンプ駆動部材51は、内燃機関10に駆動連結されている。そして、上記のように、第一ポンプ駆動部材51に駆動連結された第一駆動ギヤ51aと噛み合う第一従動ギヤ41bは、連結部44と同じ軸方向位置となる部分を有するように配置されている(図1参照)。従って、本例では、内燃機関10の振動が伝わりやすい第一従動ギヤ41bが、共通内輪43の中で支持強度が高い部分(連結部44に軸方向位置が近い部分)に配置される。これにより、内燃機関10の振動により共通内輪43が振動するのを抑制することが可能となっている。
【0105】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態を説明する。なお、以下の各々の実施形態で開示される特徴は、その実施形態でのみ利用できるものではなく、矛盾が生じない限り、別の実施形態にも適用可能である。
【0106】
(1)上記の実施形態では、ポンプ駆動軸35が受圧部35aを備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ポンプ駆動軸35が受圧部35aを備えない構成とすることもできる。このような構成では、共通内輪43を軸第二方向L2側から軸方向に支持するスラスト軸受を、共通内輪43とポンプケースとの間に配設する構成とすることができる。
【0107】
(2)上記の実施形態では、内輪(共通内輪43)が保持器70を備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、外輪41a,42aが保持器を備える構成とすることもできる。この場合、第一外輪41aと第二外輪42aとが個別に保持器を備える構成となり、第一外輪41aが備える保持器は第一外輪41aと一体回転し、第二外輪42aが備える保持器は第二外輪42aと一体回転する。そして、このような構成では、保持器に配置されたブロックベアリングの径方向内側面が摺動面となるため、上記実施形態のごとく保持器に形成された収容室を介することなく、摺動面に油を供給することができる。すなわち、このような構成では、第一連通路43cや第二連通路43dを備えない構成とすることができる。
【0108】
(3)上記の実施形態では、共通内輪43と支持部50との間に第一スラストワッシャ61が配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一スラストワッシャ61を設けず、支持部50の軸第二方向L2側面が、共通内輪43との間の摺動面である構成とすることもできる。すなわち、共通内輪43の軸第一方向L1側面と、支持部50の軸第二方向L2側面とが当接する構成とすることができる。
【0109】
(4)上記の実施形態では、第一連通路43cと第二連通路43dとを形成するための内輪内空間Sが、本体部外周面45aの外周凹部45bにより形成される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、内輪内空間Sが、保持器70の内周面に設けた径方向外側に窪んだ凹部と外周凹部45bとにより形成される構成としたり、保持器70の内周面に設けた径方向外側に窪んだ凹部のみにより形成される構成としたりすることもできる。
【0110】
(5)上記の実施形態では、突出部30及び本体部45の双方が円筒状に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、突出部30及び本体部45の少なくとも一方を円筒状以外の形状とすることも可能である。例えば、突出部30を、外周面の軸方向に直交する面における断面が多角形の筒状部材とすることができる。また、例えば、本体部45を、内周面の軸方向に直交する面における断面が多角形の筒状部材とすることができる。
【0111】
(6)上記の実施形態では、共通内輪43と支持部50との間に第一スラストワッシャ61が配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、共通内輪43が固定されたポンプ駆動軸35と支持部50との間に、軸方向の荷重を受けるスラスト軸受が配置されている構成とすることもできる。
【0112】
(7)上記の実施形態では、貯留用凹部46に対する油の供給部32aが、ポンプ駆動軸35に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、貯留用凹部46に対する油の供給部を、貯留用凹部46の径方向内側に位置するポンプケースの部分に形成する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成では、吐出口23から当該供給部に至る油の経路中に、上記実施形態と同様にポンプ駆動軸35の内部に形成された流路が含まれる構成としても良いし、ポンプ駆動軸35の内部に形成された流路が含まれない構成としても良い。後者の場合には、吐出口23から当該供給部に至る油の経路を、ポンプケース内の流路のみにより形成することができる。
【0113】
(8)上記の実施形態では、ワンウェイクラッチ41,42がブロックベアリング41d,42dを備える構成を例として説明したが、ワンウェイクラッチ41,42がブロックベアリング41d,42dを備えない構成とすることもできる。このような構成では、保持器70の径方向外側面が、外輪41a,42aとの間の摺動面となる。
【0114】
(9)上記の実施形態では、ポンプ駆動軸35とポンプロータ(インナロータ20a)とが同軸状に配置されている構成を例として説明したが、ポンプ駆動軸35とポンプロータとが互いに異なる軸上に配置される構成とすることもできる。このような構成では、互いに異なる軸上に配置される、連結部44が固定されたポンプ駆動軸35と、ポンプロータが固定されたポンプロータ支持軸とを、歯車機構等で駆動連結する構成とすることができる。
【0115】
(10)上記の実施形態では、貯留用凹部46が周方向の全域に形成されているとともに、貯留用凹部46の軸第一方向L1側の端部が、連結部44の軸第二方向L2側の端部と同じ軸方向位置とされている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、貯留用凹部46が本体部45の内周面における周方向の一部の領域に形成されている構成としたり、貯留用凹部46の軸第一方向L1側の端部が、連結部44の軸第二方向L2側の端部より軸第二方向L2側に位置する構成としたりすることもできる。そして、後者の構成では、上記実施形態とは異なり、突出部30の軸方向の先端部30aが、径方向に見て貯留用凹部46より軸第一方向L1側の位置に配置されている構成とすることができる。なお、この場合において、突出部30の先端部30aを軸第二方向L2側の部分に対して小径にすることもできる。
【0116】
(11)上記の実施形態では、第一スラスト軸受、第二スラスト軸受、及び第三スラスト軸受の全てが、滑り軸受(スラストワッシャ)である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一スラスト軸受、第二スラスト軸受、及び第三スラスト軸受の少なくとも何れかが、転動体(玉やころ等)を備えた転がり軸受である構成とすることも可能である。
【0117】
(12)上記の実施形態では、第一ワンウェイクラッチ41及び第二ワンウェイクラッチ42の双方が、ローラ型のワンウェイクラッチである構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一ワンウェイクラッチ41及び第二ワンウェイクラッチ42の少なくとも一方を、ローラ型以外(例えばスプラグ型)のワンウェイクラッチとすることもできる。すなわち、第一駆動力伝達部材41cや第二駆動力伝達部材42cは、スプラグや球状部材等とすることができる。
【0118】
(13)上記の実施形態では、ポンプ駆動軸35の先端部35bが支持部50に形成された孔の内部に配置される構成を例として示した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、支持部50が先端部35bを挿入するための孔を備えず、ポンプ駆動軸35の先端部35bの軸第一方向L1側面が、支持部50の軸第二方向L2側面と軸方向に対向するようにポンプ駆動軸35が配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、上記の実施形態では、ポンプ駆動軸35の先端部35bが、ポンプカバー21内に配置される部分に対して小径に形成されている構成を例として説明したが、先端部35bを、ポンプカバー21内に配置される部分と同径或いは当該部分に対して大径に形成することも可能である。
【0119】
(14)上記の実施形態では、第二駆動ギヤ52aが、出力軸94と一体回転するように駆動連結されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二駆動ギヤ52aが、第二ロータ軸92と一体回転するように駆動連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この構成では、第二ロータ軸92が第二ポンプ駆動部材52として機能する。
【0120】
(15)上記の実施形態では、第二ポンプ駆動部材52が、駆動力の伝達を行わない状態をとり得る機構を介さずに、車輪19及び第二回転電機12の双方に駆動連結されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二ポンプ駆動部材52が、車輪19及び第二回転電機12の少なくとも一方に対して、駆動力の伝達を行わない状態をとり得る機構(例えばクラッチを含む機構)を介して駆動連結されている構成とすることもできる。
【0121】
(16)上記の実施形態では、第一駆動ギヤ51aが、入力軸90と一体回転するように駆動連結されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一駆動ギヤ51aが第一ロータ軸91と一体回転するように駆動連結された構成とすることも可能である。この構成では、第一ロータ軸91が第一ポンプ駆動部材51として機能し、第一ポンプ駆動部材51は、第一回転電機11に駆動連結される。このような構成では、第一回転電機11及び第二回転電機12が、それぞれ、本発明における「第一駆動力源」及び「第二駆動力源」となる。
【0122】
(17)上記の実施形態では、車両用駆動装置2が、駆動力源として第一回転電機11及び第二回転電機12を備えた、いわゆる2モータスプリットタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、駆動力源として内燃機関及び単一の回転電機の一方又は双方を用いる車両用駆動装置(1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置等)に、本発明を適用することもできる。このような構成では、第一ポンプ駆動部材51が内燃機関により駆動され、第二ポンプ駆動部材52が当該単一の回転電機又は車輪により駆動される構成とすることができる。また、本発明を、駆動力源としての内燃機関を備えない車両(電気自動車等)用の駆動装置に適用することも可能である。
【0123】
(18)上記の実施形態において説明した駆動伝達装置13や変速装置15等の構成は単なる例示であり、上記以外の構成によっても本発明の構成を実現することが可能な全ての構成が、本発明の範囲に含まれる。例えば、駆動伝達装置13や変速装置15を、ダブルピニオン型の遊星歯車機構や、4つ以上の回転要素を有する差動歯車機構等により構成することができる。
【0124】
(19)上記の実施形態では、本発明を車両用の駆動装置に適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ケース内に駆動力の伝達機構を備えるあらゆる駆動装置に本発明を適用することができる。また、上記の実施形態では、油圧発生装置が駆動装置に備えられる構成を例として説明したが、油圧発生装置が駆動装置以外の装置に備えられる構成とすることもできる。
【0125】
(20)上記の実施形態では、本発明に係る液圧発生装置が、油圧を発生する油圧発生装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明を、油以外の潤滑液や、潤滑液以外の液体に対して液圧を発生する液圧発生装置に適用することも可能である。
【0126】
(21)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、ポンプケース及びポンプ駆動軸を備えるポンプと、ポンプケースに対してポンプ駆動軸の軸方向一方側である軸第一方向側にて、ポンプ駆動軸と同軸状に軸方向に並べて配置される2つのワンウェイクラッチと、を備えた液圧発生装置、及び当該液圧発生装置を備えた駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1:油圧発生装置(液圧発生装置)
2:車両用駆動装置(駆動装置)
10:内燃機関(駆動力源、第一駆動力源)
11:第一回転電機
12:第二回転電機(第二駆動力源)
13:駆動伝達装置
14:第一差動歯車機構(差動歯車機構)
14a:サンギヤ(第一回転要素)
14b:キャリヤ(第二回転要素)
14c:リングギヤ(第三回転要素)
19:車輪
20:オイルポンプ(ポンプ)
21:ポンプカバー(ポンプケース)
22:ポンプボディ(ポンプケース)
30:突出部
35:ポンプ駆動軸
35a:受圧部
41:第一ワンウェイクラッチ
41a:第一外輪
41b:第一従動ギヤ(第一ギヤ)
42:第二ワンウェイクラッチ
42a:第二外輪
42b:第二従動ギヤ(第二ギヤ)
43:共通内輪
44:連結部
45:本体部
50:支持部
51:第一ポンプ駆動部材
52:第二ポンプ駆動部材
61:第一スラストワッシャ(スラスト軸受)
L1:軸第一方向
L2:軸第二方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプケース及びポンプ駆動軸を備えるポンプと、前記ポンプケースに対して前記ポンプ駆動軸の軸方向一方側である軸第一方向側にて、前記ポンプ駆動軸と同軸状に軸方向に並べて配置される2つのワンウェイクラッチと、を備えた液圧発生装置であって、
前記ポンプケースは、当該ポンプケースから前記軸第一方向側に突出して、前記ポンプ駆動軸に対して径方向外側から当該ポンプ駆動軸を相対回転可能に径方向に支持する突出部を備え、
前記2つのワンウェイクラッチのそれぞれの内輪が互いに一体化されて共通内輪を形成しており、
前記2つのワンウェイクラッチのそれぞれの外輪は、互いに独立に形成されているとともに互いに異なるポンプ駆動部材によりそれぞれ駆動され、さらに前記共通内輪に対する相対回転が規制される当該相対回転の方向が互いに同一とされ、
前記共通内輪は、前記突出部に対して前記軸第一方向側にて前記ポンプ駆動軸に連結される連結部と、前記連結部から前記軸第一方向とは反対側の軸第二方向側へ延び、前記突出部に対して径方向外側にあって当該突出部と同じ軸方向位置となる部分を有する本体部と、を備える液圧発生装置。
【請求項2】
前記突出部及び前記本体部の双方は、前記ポンプ駆動軸と同軸の円筒状に形成され、
前記本体部の前記軸第二方向側部分は、前記突出部の前記軸第一方向側部分を径方向外側から覆うように配置され、
前記2つのワンウェイクラッチのそれぞれは、前記外輪の内径が互いに同一とされている請求項1に記載の液圧発生装置。
【請求項3】
前記ポンプ駆動軸は、軸方向に対して交差する方向に延びる面を有して、前記ポンプの駆動時に前記軸第一方向側への液圧を受ける受圧部を備え、
前記共通内輪と、前記共通内輪を前記軸第一方向側から支持する支持部との間に、軸方向の荷重を受けるスラスト軸受が配置されている請求項1又は2に記載の液圧発生装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液圧発生装置と、駆動力源に駆動連結される第一ポンプ駆動部材と、車輪に駆動連結される第二ポンプ駆動部材と、前記第一ポンプ駆動部材と前記第二ポンプ駆動部材との間で選択的に駆動力を伝達する駆動伝達装置と、を備え、
前記2つのワンウェイクラッチの内の一方である第一ワンウェイクラッチの外輪は前記第一ポンプ駆動部材により駆動され、他方である第二ワンウェイクラッチの外輪は前記第二ポンプ駆動部材により駆動される駆動装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液圧発生装置と、第一駆動力源に駆動連結される第一ポンプ駆動部材と、第二駆動力源に駆動連結される第二ポンプ駆動部材と、前記第一ポンプ駆動部材と前記第二ポンプ駆動部材との間で選択的に駆動力を伝達する駆動伝達装置と、を備え、
前記2つのワンウェイクラッチの内の一方である第一ワンウェイクラッチの外輪は前記第一ポンプ駆動部材により駆動され、他方である第二ワンウェイクラッチの外輪は前記第二ポンプ駆動部材により駆動される駆動装置。
【請求項6】
駆動力源として第一回転電機及び第二回転電機を備え、
前記駆動伝達装置は、少なくとも第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素の3つの回転要素を有する差動歯車機構を備え、
前記第一回転要素に前記第一回転電機が駆動連結され、前記第二回転要素に内燃機関が駆動連結され、前記第三回転要素に前記第二回転電機及び車輪が駆動連結され、
前記第一ポンプ駆動部材は前記内燃機関により駆動され、前記第二ポンプ駆動部材は前記車輪又は前記第二回転電機により駆動される請求項4又は5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第一ワンウェイクラッチの外輪に形成されるとともに前記第一ポンプ駆動部材に駆動連結されるギヤと噛み合う第一ギヤは、前記第二ワンウェイクラッチの外輪に形成されるとともに前記第二ポンプ駆動部材に駆動連結されるギヤと噛み合う第二ギヤに対して前記軸第一方向側に配置され、
前記第一ギヤは、前記連結部と同じ軸方向位置となる部分を少なくとも一部に有するように配置されている請求項4から6のいずれか一項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67861(P2012−67861A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213945(P2010−213945)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000102784)NSKワーナー株式会社 (149)
【Fターム(参考)】