説明

液晶パネル用支持部材

【課題】容器内における液晶パネルの支持構造を工夫することで、液晶ディスプレイを収納する容器の小型化、軽量化及び低コスト化を実現できるとともに、画面の明度を高くする。
【解決手段】絶縁性樹脂を素材とする支持部材3に、液晶モジュール収納部31、導光板収納部32、バックライト収納部33及び隔壁7を一体に形成した。隔壁7は、液晶モジュール収納部31に収納された液晶モジュール1の板金43とバックライト収納部33に収納されたバックライト6の基板62との間に位置する。板金43と基板62との間に所定の沿面距離及び固体離隔距離を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、危険区域内で使用される防爆形液晶表示装置内で液晶パネルを支持する液晶パネル用支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
引火性ガス雰囲気等の危険区域内で、制御対象の機器に対して動作条件等を設定入力する際には、機器の状態等の情報を参照する必要がある。また、機器の現在の設定内容等の情報を確認する必要もある。このような情報を作業者に認識させるために、防爆構造の容器内に液晶パネルを収納した表示装置が用いられる。
【0003】
防爆性能を確保するために消費電流を十分に低減するためには、画面の小さい小型の液晶パネルを用いる必要がある。ところが、小型の液晶パネルでは、1度に表示できる情報量が限られ、表示すべき情報量の多いアプリケーションに対応することができない。
【0004】
そこで、画面が比較的大きな大型の液晶パネルを耐圧防爆構造の容器に収納することで、危険区域内でも多量の情報を表示できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。液晶パネルは、一般に、液晶パネル用の駆動回路及び制御回路を実装した基板とともに板金に取り付けられて液晶モジュールを構成した状態で、バックライト、バックライト用の駆動回路を実装した基板等とともに金属製の支持部材に収納されている。
【特許文献1】特開2005−276045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶パネルを防爆構造の容器内に収納して危険区域で使用する場合、防爆構造の規格上、液晶モジュールに含まれる各電気部品間に所定の沿面距離及び固体離隔距離が与えられていることが要求される。液晶モジュールパネルの支持部材に導電性の金属材料を用いた場合、液晶パネル用の基板とバックライト用の基板とを十分に離間させなければならず、支持部材が大型化する。特に、多量の情報を表示させるべく大型の液晶パネルを用いる場合には、支持部材がさらに大型化し、これを収納した上で堅牢な構造とする必要がある防爆構造の容器も大型化し、重く高価になる。また、液晶モジュールの周縁部とバックライトとが離間して配置されるため、バックライトから照射された光の光量が減衰し、液晶パネルの画面が暗くなる。
【0006】
この発明の目的は、容器内における液晶パネルの支持構造を工夫することで、液晶ディスプレイを収納する容器の小型化、軽量化及び低コスト化を実現できるとともに、画面の明度を高くすることができる液晶パネル用支持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、この発明の液晶パネル用支持部材は、液晶モジュール収納部、導光板収納部、バックライト収納部、隔壁を絶縁性樹脂により一体的に形成されている。液晶モジュール収納部は、前面に開放して液晶モジュールを収納する。液晶モジュールは、液晶パネルと少なくとも液晶パネルの駆動回路を実装した第1の基板とを板金上に取り付けて構成されている。導光板収納部は、液晶モジュール収納部の背面側で導光板を収納する。バックライト収納部は、導光板収納部に収納された導光板の一端面に対向する位置にバックライトを収納する。隔壁は、液晶モジュール収納部に収納された液晶モジュールの周縁部とバックライト収納部に収納されたバックライトとの間に位置する。
【0008】
この構成では、液晶モジュール収納部に収納された液晶モジュールの周縁部とバックライト収納部に収納されたバックライトとの間に絶縁性樹脂で構成された隔壁が位置するので、液晶モジュールとバックライトとを接近させて配置した場合にも、両者の間に所定の沿面距離及び固体離隔距離が確保される。
【0009】
この構成において、隔壁をバックライト収納部の背面に対して平行に形成し、隔壁の端部を導光板収納部に収納された導光板の一端面に当接させてもよい。隔壁がバックライト収納部の背面と共にバックライトのリフレクタとして機能し、導光板の一端面から内部に十分な光量の光を導入することができ、液晶パネルの画面の明度を高くすることができる。
【0010】
また、バックライト収納部を導光板収納部に収納された導光板の面方向に沿って外部に開放し、複数のLEDを一端面に沿って一定の間隔で第2の基板に実装したバックライトを導光板の面方向に沿ってバックライト収納部に挿入するようにしてもよい。バックライトをバックライト収納部に容易に収納することができ、液晶ディスプレイの組立作業が簡略化される。
【0011】
さらに、背面に、液晶パネルの制御回路を実装した第3の基板を、液晶パネルと平行に収納する制御基板収納部を設けてもよい。液晶モジュールが駆動回路を実装した第1の基板とは別に制御回路を実装した第3の基板を備えている場合に、液晶モジュールを小型に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、液晶モジュール収納部に収納された液晶モジュールの周縁部とバックライト収納部に収納されたバックライトとの間に位置する絶縁性樹脂の隔壁により、液晶モジュールとバックライトとの間に所定の沿面距離及び固体離隔距離を確保することができる。防爆構造に要求される所定の沿面距離及び固体離隔距離を確保した上で、液晶モジュールとバックライトとを接近させて配置することができる。これによって、液晶ディスプレイを収納する容器の小型化、軽量化及び低コスト化を実現できるとともに、画面の明度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の実施形態に係る液晶パネル用支持部材が適用される防爆形液晶表示装置の外観図である。一例として、防爆形液晶表示装置10は、危険区域内に設置されている機器に制御データを設定する際に使用される教示用ペンダントである。
【0014】
防爆形液晶表示装置10は、本質安全防爆構造の容器4内に液晶ディスプレイを収納して構成されている。なお、液晶ディスプレイとは、液晶パネル、駆動回路、制御回路及びケースを含むものである。容器4は、本体4Aと裏蓋4Bとからなる。本体4は、前面に窓部4C及びキースイッチ4Dを備えている。窓部4Cは、全面が硬質ガラス板で覆われており、硬質ガラス板の内側面には内部に収納した液晶パネル41が対向する。窓部4Cを覆う部材は、硬質ガラス板に限らず、透明であって液晶パネル41を保護できるものであれば樹脂等の種々の材料を用いることができる。
【0015】
液晶パネル41は、画像データに基づいて機器の動作状態や制御内容等の情報を表示する。窓部4Cには、硬質ガラスに代えて透明タッチパネルを備えることもできる。この場合に、液晶パネル41は、キースイッチの画像を表示する。
【0016】
図2(A)〜(F)は、上記液晶パネル用支持部材の正面図、右側面図及び背面図、本体の正面図、S1−S1部拡大断面図、S2−S2部拡大断面図である。
【0017】
液晶パネル用支持部材3は、液晶モジュール収納部31、導光板収納部32、バックライト収納部33、制御基板収納部34を、絶縁性樹脂材料によって一体的に形成した薄型筐体である。支持部材3には前面に開放した凹部が形成されており、この凹部に液晶モジュール収納部31及び導光板収納部32が前面側から背面側に向かってこの順に連続して形成されている。
【0018】
液晶モジュール収納部31は、液晶モジュール1を収納する。この実施形態では、液晶モジュール1は、液晶パネル41と駆動基板42とを板金43に取り付けて構成されている。駆動基板42には、駆動データに基づいて液晶パネル41を駆動する駆動回路が実装されている。板金43は、金属板を素材としてプレス加工により形成した枠体である。
【0019】
導光板収納部32は、液晶モジュール収納部31の背面側に位置し、導光板5を収納する。導光板5は、端面から入射した光を内部で拡散及び反射させて前面から均一の輝度で照射する。
【0020】
バックライト収納部33は、導光板収納部32の上下に位置し、バックライト6を収納する。この実施形態では、バックライト6は、一例として18個のLED61を基板62に等間隔で一列に実装して構成されている。基板62は、この発明の第2の基板である。バックライト収納部33は、複数のLED61の配列方向が導光板収納部32に収納された導光板5の上端面及び下端面に沿って対向する状態でバックライト6を収納する。バックライト収納部33は、支持部材3の上下の端面から外部に開放している。バックライト6は、支持部材3の上下の端面からバックライト収納部33内に挿入される。
【0021】
制御基板収納部34は、支持部材3の背面に形成されており、制御基板11を液晶パネル41に平行にして収納する。制御基板収納部34には、2個の係止片34A及び2個のネジ孔34Bが形成されている。制御基板11の上端を係止面34Aに係合させた後に、ネジ孔34Bに取付ネジ34Cを螺合させて制御基板11を固定する。
【0022】
この実施形態では、画像データに基づいて液晶パネル41の駆動データを駆動回路に供給する制御回路を、駆動基板42とは別の制御基板11に実装している。制御基板11は、駆動基板12とフレキシブルプリント基板によって接続されている。制御回路を液晶パネル41の背面に平行に配置することで、液晶モジュール1を小型に形成することができる。
【0023】
なお、制御基板収納部34を支持部材3の背面に形成する必要は必ずしもない。また、制御回路が駆動基板42に駆動回路とともに実装されている場合には、制御基板収納部34を省略できる。
【0024】
液晶モジュール収納部31は、導光板収納部32に比較して少なくとも上下方向に広く形成されており、上下の端部は上下方向についてバックライト収納部33の一部とオーバラップしている。液晶モジュール収納部31の上下の端部でバックライト収納部33とオーバラップする領域には、液晶モジュール1の駆動基板42及び板金43が位置する。
【0025】
この領域には、隔壁7が位置する。隔壁7は、支持部材3の周縁部の内側面から延出して支持部材3に一体的に形成されている。隔壁7の前面側には、液晶モジュール収納部31に収納された液晶モジュール1の板金43の端部で基板42の端部よりも外側に露出した部分が位置する。隔壁7の背面側には、バックライト収納部33に収納されたバックライト6が位置する。
【0026】
図2(F)に示すように、板金43の露出部分とバックライト6の基板62との間に絶縁体の隔壁7が位置する。これによって、バックライト6を液晶パネル1及び導光板5に近接させて配置しても、基板62と板金43との間に所定の沿面距離及び固体離隔距離が確保でき、支持部材3を介して液晶パネル41を防爆形液晶表示装置10に適用することができる。
【0027】
また、隔壁7の端面の一部は導光板5の一端面に近接している。このため、LED61から照射された光の略全てが、隔壁7の背面と支持部材3の背面の前面側とをリフレクタとして導光板5の一端面から内部に入射し、導光板5の前面から液晶パネル1に十分な光量の光が照射される。液晶パネル1に十分な明度の画像を表示することができる。
【0028】
図2(D)に示すように、隔壁7には、支持部材3の樹脂成形時の型抜きのために、導光板5の一端面に沿う方向の一部にスリット71が形成されている。図2(E)に示すように、スリット71が形成されている部分でも、隔壁7の屈曲部分によって基板62と板金43との間に十分な沿面距離が形成される。
【0029】
なお、スリット71は、導光板5の一端面に沿う方向で、隣接する2個のLED61の間隙に位置している。このため、隔壁7のリフレクタとしての機能がスリット71によって著しく低下することはない。
【0030】
図3(A)〜(C)は、上記液晶パネル用支持部材が適用される液晶ディスプレイの組立作業を示す図である。先ず、支持部材3の前面側から導光板収納部32に導光板5を挿入する。導光板5は、裏面を両面テープ51を介して支持部材3の背面に貼付する(図3(A)参照)。
【0031】
次いで、導光板収納部32の上下に位置するバックライト収納部33に、支持部材3の上下の端面からバックライト6を挿入する。この時、先にバックライト6の両端から延出している導電線64を支持部材3の背面を貫通して形成されている孔部36に挿入しておく(図3(B)参照。)。
【0032】
最後に、液晶モジュール1を支持部材3の前面側から支持部材収納部31に挿入し、止めネジ11を板金43の孔部に貫通させた後に支持体3のネジ孔38に螺合させる(図3(C)参照。)。これによって、液晶モジュール1、導光板5及びバックライト6が支持体3内に収納された状態で固定される。
【0033】
バックライト6は、係止片33Aの弾性力によってバックライト収納部33内に収納された状態が維持される。係止片33Aの弾性変形は、板金43の爪43Aによって阻止される。このため、板金43を支持部材3に固定した後には、バックライト6がバックライト収納部33から外れることがない。
【0034】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施形態に係る液晶パネル用支持部材が適用される防爆形液晶表示装置の外観図である。
【図2】上記液晶パネル用支持部材の正面図、右側面図及び背面図、本体の正面図、S1−S1部拡大断面図、S2−S2部拡大断面図である。
【図3】上記液晶パネル用支持部材が適用される液晶ディスプレイの組立作業を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 液晶モジュール
3 支持部材
4 容器
5 導光板
6 バックライト
11 制御基板(第3の基板)
31 液晶パネル収納部
32 導光板収納部
33 バックライト収納部
41 液晶パネル
42 駆動基板(第1の基板)
43 板金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開放した液晶モジュール収納部であって、液晶パネルと少なくとも前記液晶パネルの駆動回路を実装した第1の基板とを板金上に取り付けて構成された液晶モジュールを収納する液晶モジュール収納部と、
前記液晶モジュール収納部の背面側で導光板を収納する導光板収納部と、
前記導光板収納部に収納された導光板の一端面に対向する位置にバックライトを収納するバックライト収納部と、
前記液晶モジュール収納部に収納された液晶モジュールの周縁部と前記バックライト収納部に収納されたバックライトとの間に位置する隔壁と、
を絶縁性樹脂で一体的に形成した液晶パネル用支持部材。
【請求項2】
前記隔壁は、前記バックライト収納部の背面に対して平行に形成され、端部が前記導光板収納部に収納された導光板の前記一端面に当接する請求項1に記載の液晶パネル用支持部材。
【請求項3】
前記バックライト収納部は、前記導光板収納部に収納された導光板の面方向に沿って外部に開放しており、複数のLEDを前記一端面に沿って一定の間隔で第2の基板に実装したバックライトが前記面方向に沿って挿入される請求項1又は2に記載の液晶パネル用支持部材。
【請求項4】
背面に、前記液晶パネルの制御回路を実装した第3の基板を、前記液晶パネルと平行に収納する制御基板収納部をさらに設けた請求項1乃至3の何れかに記載の液晶パネル用支持部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−310274(P2008−310274A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160685(P2007−160685)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】