説明

液晶モジュール及び可搬型表示操作装置

【課題】液晶パネルの駆動用の制御回路を実装した基板を液晶パネルの背面側の下方に配置し、装置の重心位置が上方に偏ることを防止する。
【解決手段】液晶パネル1を基板、導光板、バックライト等とともに収納する本体モジュール3の背面の下部に、基板用モジュール4が装着される装着部32を形成した。基板用モジュール4は、液晶パネル1の駆動用の制御回路を実装した基板を収納する。基板用モジュール4を装着部32に装着すると、基板用モジュール4の下部は本体モジュール3の下端部の下方に露出する。したがって、基板用モジュール4は、本体モジュールに収納された液晶パネル1の背面の下部よりも下方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場内に設置されている機器に対する制御データの入力操作に用いられる教示用ペンダント等の可搬型表示操作装置に適用される液晶モジュール、及びこの液晶モジュールを備えた可搬型表示操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作者が把持した状態で使用される可搬型装置として、工場内で使用される教示用ペンダントのように、入力操作を受け付けるキースイッチを有する操作部と、操作内容等を表示するディスプレイを有する表示部と、を備えた可搬型表示操作装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
操作者は、可搬型表示操作装置を使用する際に、片手又は両手で装置を把持し、表示部の表示内容を視認しつつ操作部を手指で操作する。このとき、装置は、ディスプレイの視認性やキースイッチの操作性に適した角度となるように、上部が下部よりも操作者から離れる方向に傾斜させた状態で把持される。表示部は、装置を把持する手やキースイッチを操作する手指がディスプレイを遮ることのないように、装置内で把持部及び操作部の上方に配置される。
【0004】
ディスプレイは、表示情報の多様化、及び視認性の向上を図るべく、大型化の要請が強い。このため、従来の可搬型表示操作装置では、前面の上部に大型のディスプレイが配置され、側面の下部に把持部が形成されるとともに前面の下部にキースイッチが配置されている。
【0005】
また、ディスプレイには、薄型化が容易で駆動電力量が小さいことから、近年、液晶パネルが多用されている。液晶パネルは、バックライト、拡散板及び回路基板とともに保持部材に一体的に保持させた液晶モジュールとして、装置内部に収納される。
【特許文献1】特公平6−88219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置前面の上部に比較的大型の液晶パネルを配置すると、装置の重心位置が上方に偏り、把持部よりも上方の部分が重くなり、液晶パネルの視認性やキースイッチの操作性に適した角度で傾斜させて把持することが困難になる問題がある。上部が下部よりも操作者から離れる方向に傾斜されて装置を把持する場合、上部が重いと手首が前傾しやすく、手首を後傾させて装置を把持する場合に比べて腕が疲れやすいためである。
【0007】
特に、引火性ガス雰囲気等の危険区域内で使用される可搬型表示操作装置では、液晶パネルの防爆性能を確保するために駆動回路及び制御回路を構成する部品点数が増加し、これらの回路を実装する基板の重量が重くなり、装置の重心位置がより上方に偏り易い。
【0008】
この発明の目的は、液晶パネルの駆動用の制御回路を実装した基板を液晶パネルの背面側の下方に配置することで、装置の重心位置が上方に偏ることを防止できる液晶モジュール及び可搬型表示操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、この発明の液晶モジュールは、本体モジュール及び基板用モジュールを備えている。本体モジュールは、前面に液晶パネルを露出させて保持する。基板用モジュールは、液晶パネルの駆動用の制御回路を実装した本質安全防爆構造の基板を、本体モジュールの背面の下部より下方で保持する。
【0010】
この構成では、液晶パネルの駆動用の制御回路を実装した本質安全防爆構造の基板が、液晶パネルを保持した本体モジュールの背面の下部よりも下方で保持される。したがって、液晶モジュールの重心が液晶パネルの上下方向の中心位置よりも下方に位置する。また、本質安全防爆構造の回路はツェナダイオードや抵抗からなる安全保持回路を含むとともに樹脂モールドされる場合もある。このため、本質安全防爆構造の回路を実装した基板は、本質安全防爆構造の回路を実装していない基板よりも重いため、液晶モジュールの重心がより下方に位置することになり、液晶モジュールを上部に配置した可搬型表示操作装置の重心位置が装置の上部に偏ることがない。
【0011】
この構成は、前面の上部に液晶パネルを露出させる第1の開口と、前面の下部にキースイッチを露出させる第2の開口と、を備えた可搬型表示操作装置に適用される液晶モジュールとして好適である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、液晶パネルの駆動用の制御回路を実装した本質安全防爆構造の基板を液晶パネルの背面側の下方に配置することができ、液晶モジュールを上部に収納した装置の重心位置が上方に偏ることを防止できる。液晶パネルの下方に把持部及び操作部を配置した可搬型表示操作装置を、上部を下部よりも操作者から離した状態に傾斜させて把持する場合にも、装置の自重が装置を前傾させる方向に作用することを防止でき、液晶パネルの視認性を損なうことなく操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の実施形態に係る液晶モジュールが適用される可搬型表示操作装置10の外観図である。一例として、可搬型表示操作装置10は、危険区域内に設置されている機器に制御データを設定する際に使用される教示用ペンダントである。
【0014】
可搬型表示操作装置10は、本質安全防爆構造の筐体11の前面の上部に第1の開口12を備え、下部に第2の開口13を備えている。第1の開口12は、透光性の樹脂板で被覆されており、液晶パネル1が露出している。第2の開口13には、キースイッチ14が露出している。
【0015】
筐体11の略上半分の表示部11Aは、上部を前面側にして傾斜しており、略下半分の操作部11Bよりも幅を広くされている。操作者に表示すべき情報の多様化に伴い、液晶パネルの大型化に対応するためである。
【0016】
操作部11Bの側面及び背面は、操作者が片手又は両手で把持する把持部11Cにされている。操作者は、把持部11Cを把持している手の拇指又は把持していない手の指でキースイッチを操作する。
【0017】
図2は、上記液晶モジュール2の正面図、右側面図及び背面図である。液晶モジュール2は、本体モジュール3及び基板用モジュール4からなる。
【0018】
本体モジュール3は、絶縁性樹脂材料によって一体的に形成した薄型筐体であり、液晶パネル1を基板、導光板、バックライト等とともに収納する。本体モジュール3には、前面に開放した凹部が形成されており、この凹部に液晶パネル1が導光板とともに前面側から背面側に向かって収納される。液晶パネル1は、駆動基板とともに板金に取り付けて構成されている。駆動基板には、駆動データに基づいて液晶パネル1を駆動する駆動回路が実装されている。
【0019】
基板用モジュール4は、液晶パネル1の駆動用の制御回路を実装した制御基板を収納する。本体モジュール3の背面の下部には、基板用モジュール4の装着部32が形成されている。基板用モジュール4は、装着部32に装着される。基板用モジュール4を装着部32に装着すると、基板用モジュール4の下部は本体モジュール3の下端部の下方に露出する。したがって、基板用モジュール4は、本体モジュールに収納された液晶パネル1の背面の下部よりも下方に配置される。
【0020】
装着部32は、支持部材3の背面で、基板用モジュール4を液晶パネル1に平行にして収納する。装着部32には、2個の係止片32A及び2個のネジ孔32Bが形成されている。基板用モジュール4の上端を係止片32Aに係合させた後に、ネジ孔32Bに取付ネジ32Cを螺合させて基板用モジュール4を固定する。
【0021】
この実施形態では、画像データに基づいて液晶パネル1の駆動データを駆動回路に供給する制御回路を、駆動基板とは別の制御基板に実装している。制御基板は、駆動基板とフレキシブルプリント基板によって接続されている。制御回路を実装した制御基板を液晶パネル1の背面に平行に配置することで、本体モジュール3を小型に形成することができる。
【0022】
図3は、可搬型表示操作装置10の開蓋状態を示す背面方向の斜視図である。可搬型表示操作装置10の筐体11は、背面を開閉自在に被覆する蓋体を備えている。筐体11の内部には、上部の表示部11Aに液晶モジュール2が収納されており、下部の操作部11Bにキースイッチ4用の回路基板21が収納されている。
【0023】
表示部11Aに収納される液晶モジュール2の基板用モジュール4は、本体モジュール3の背面の下部よりも下方に配置されているため、筐体11の内部で表示部11Aと操作部11Bとの境界部分に位置する。
【0024】
このため、筐体11は上部の表示部11Aの幅を下部の操作部11Bの幅よりも広く形成されているが、可搬型表示操作装置10の重心位置は表示部11A側に偏ることがない。
【0025】
なお、基板用モジュール4が収納する基板には、液晶パネル1の駆動用の制御回路だけでなく、操作部11Bのキースイッチ14用の回路等の他の回路の一部を実装することもできる。
【0026】
図4は、可搬型表示操作装置10の使用状態を説明する側面図である。可搬型表示操作装置10の使用時に、操作者は、図4に示すように上部が下部よりも操作者から離れるように傾斜させて、把持部11Cを把持する。
【0027】
可搬型表示操作装置10の重心が上部にあると、可搬型表示操作装置10の自重が可搬型表示操作装置10を矢印A方向に前傾させる方向に作用する。このため、操作者の手首に前傾方向の力が作用し、操作者の腕が疲労し易くなる。
【0028】
しかし、上述のように、可搬型表示操作装置10の重心位置は表示部11A側に偏ることがないため、可搬型表示操作装置10の自重が可搬型表示操作装置10を矢印A方向に前傾させる方向に作用することがない。このため、操作者の手首に前傾方向の力が作用せず、可搬形表示操作装置10を把持する操作者の腕の疲労が軽減される。このため、液晶パネル1の視認性、及びキースイッチ14の操作性を損なうことなく、可搬型表示操作装置10を長時間にわたって把持することができ、操作者の作業性を向上することができる。
【0029】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態に係る液晶モジュールが適用される可搬型表示操作装置の外観図である。
【図2】上記液晶モジュールの正面図、右側面図及び背面図である。
【図3】上記可搬型表示操作装置の背面の開蓋状態を示す斜視図である。
【図4】上記可搬型表示操作装置の使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 液晶パネル
2 液晶モジュール
3 本体モジュール
4 基板用モジュール
11 筐体
11A 表示部
11B 操作部
11C 把持部
31 凹部
32 装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に液晶パネルを露出させて本体モジュール内に保持する液晶モジュールであって、前記液晶パネルの駆動用の制御回路を実装した本質安全防爆構造の基板を保持する基板用モジュールを前記本体モジュールの背面の下部より下方で保持する液晶モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶モジュールの液晶パネルが前面の上部に露出する第1の開口を含む表示部と、
前記前面の前記第1の開口の下方にキースイッチが露出する第2の開口を含む操作部と、を備えた可搬型表示操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−128880(P2009−128880A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307229(P2007−307229)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】