説明

液晶組成物および液晶表示素子

【課題】ネマチック相の広い温度範囲、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな弾性定数比、しきい値電圧の小さな温度依存性、誘電率異方性の小さな周波数依存性、短いらせんピッチなどの特性において、少なくとも1つまたは少なくとも2つの特性を有する液晶組成物を提供する。短い応答時間、大きなコントラスト比、低いしきい値電圧、小さい消費電力、急峻な電圧−透過率曲線、少ない光漏れなどの特性を有するSTN素子を提供する。
【解決手段】第一成分として例えば下式で例示される光学活性化合物


および第二成分として正に大きな誘電率異方性を有する特定の化合物を含有し、第三成分として大きな上限温度、または小さな粘度を有する特定の化合物、および第四成分として正に大きな誘電率異方性を有する特定の化合物を含有してもよい液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、STN(super twisted nematic)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するSTN素子などに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、PSA(polymer sustained alignment)モードなどである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するSTN素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているSTN素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は−20℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
【0004】

【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。この場合、組成物における光学異方性は主に0.10〜0.20の範囲である。組成物における大きな誘電率異方性は、素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな弾性定数比(K33/K11)は、素子における急峻な電圧−透過率曲線、大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな弾性定数比が好ましい。
【0006】
STN素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。正の誘電率異方性を有する液晶組成物の例は次の特許文献に開示されている。光学活性化合物を含有した液晶組成物の例は、特許文献3に記載されているが、らせんピッチが充分に短くはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−67232号公報
【特許文献2】特開平5−229979号公報
【特許文献3】特開平6−200251号公報
【0008】
STN素子の特性を向上させるため、高いネマチック相の上限温度、低いネマチック相の下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな弾性定数比を有し、しきい値電圧の小さな温度依存性、そして高い温度から低い温度に至り、誘電率異方性の小さな周波数依存性を有する組成物が特に望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな弾性定数比、しきい値電圧の小さな温度依存性、誘電率異方性の小さな周波数依存性、短いらせんピッチなどの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きなコントラスト比、低いしきい値電圧、小さい消費電力、急峻な電圧−透過率曲線、少ない光漏れなどを有するSTN素子である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一成分として、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの光学活性化合物、および第二成分として、式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;RおよびRは互いに異なって、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;R4は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Zは独立して、カルボニルオキシ、ジフルオロメチレンオキシ、または単結合であり;mは、1,2または3であり;XおよびXは独立して、水素またはフッ素である。
式(1)で表される化合物を2つ以上組み合わせて使用する場合、組成物のらせんピッチを短くするため、および式(1)で表される化合物の添加量を少なくするために、同一のねじれ方向を持つ化合物を使用することが好ましい。ただし、組成物のらせんピッチの温度依存性を調整するために、同一のねじれ方向を持つ、及び逆向きのねじれ化合物を組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな弾性定数比、しきい値電圧の小さな温度依存性、誘電率異方性の小さな周波数依存性、短いらせんピッチなどの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きなコントラスト比、低いしきい値電圧、小さい消費電力、急峻な電圧−透過率曲線、少ない光漏れを有するSTN素子である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。本発明の液晶組成物または本発明の液晶表示素子をそれぞれ「組成物」または「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物または液晶相を有さないが組成物の成分として有用な化合物を意味する。このような化合物は例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。第一成分以外の光学活性な化合物または重合可能な化合物は組成物に添加されることがある。これらの化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは添加物として分類される。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。
【0013】
ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。光学異方性などの特性を説明するときは、実施例に記載した測定方法で得られた値を用いる。第一成分は、1つの化合物または2つ以上の化合物である。「第一成分の割合」は、第一成分を除く液晶組成物の重量を100としたときの第一成分の重量比率(重量部)を意味する。「第二成分の割合」は、第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいた第二成分の重量百分率(重量%)を意味する。「第三成分の割合」および「第四成分の割合」は「第二成分の割合」と同様である。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)または重量百万分率(ppm)を意味する。
【0014】
成分化合物の化学式において、Rの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、このうちの任意の2つのRの意味は同じであっても、異なってもよい。例えば、化合物(1−1)のRがエチルであり、化合物(1−2)のRがエチルであるケースがある。化合物(1−1)のRがエチルであり、化合物(1−2)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、R、Xなどにも適用される。化学式において、「CL」は塩素を表す。
【0015】
本発明は、下記の項などである。
1. 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの光学活性化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;RおよびRは互いに異なって、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;R4は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Zは、カルボニルオキシ、ジフルオロメチレンオキシ、または単結合であり;mは、1、2または3であり;XおよびXは独立して、水素またはフッ素である。
【0016】
2. 式(1)において、RおよびRの炭素数の和が3〜10の整数である、項1に記載の液晶組成物。
【0017】
3. 第一成分が式(1−1)から式(1−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1または2に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0018】
4. 第一成分を除く液晶組成物100重量部に対して、第一成分の割合が0.01重量部から5重量部の範囲である項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0019】
5. 第二成分が、式(2−1)から式(2−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。



ここで、R4は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;XおよびXはそれぞれ独立して、水素またはフッ素である。
【0020】
6. 第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5に記載の液晶組成物。
【0021】
7. 第二成分が式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5に記載の液晶組成物。
【0022】
8. 第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物および式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項5に記載の液晶組成物。
【0023】
9. 第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が5重量%から70重量%の範囲である項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0024】
10. 第三成分として、式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルコキシメチルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロー1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは独立して、エチレン、エチニレン、カルボニルオキシ、または単結合であり;nは、1、2または3である。
【0025】
11. 第三成分が、式(3−1)から式(3−17)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項10に記載の液晶組成物。




ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルコキシメチルである。
【0026】
12. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項11に記載の液晶組成物。
【0027】
13. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【0028】
14. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【0029】
15. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【0030】
16. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(3−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【0031】
17. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(3−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【0032】
18. 第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第三成分の割合が30重量%から95重量%の範囲である項10から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0033】
19. 第四成分として、式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Fは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは独立して、カルボニルオキシまたは単結合であり;oは1または2であり;XおよびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは塩素またはフッ素である。
【0034】
20. 第四成分が、式(4−1)から式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項19に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0035】
21. 第四成分が式(4−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項20に記載の液晶組成物。
【0036】
22. 第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である項19から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0037】
23. 項1から22のいずれか1項に記載される液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子。
【0038】
本発明は、次の項も含む。1)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、そしてネマチック相の下限温度が−20℃以下である上記の組成物、2)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、3)上記の組成物を含有するSTN素子、4)上記の組成物を含有する透過型または反射型の素子、5)上記の組成物のネマチック相を有する組成物としての使用、6)上記の組成物の光学活性な組成物としての使用。
【0039】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0040】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された化合物に加えて、その他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような液晶性化合物は、特性を調整する目的で組成物に混合される。添加物は、第一成分以外の光学活性化合物、色素、酸化防止剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。GH(guest host)モードの素子に適合させるために色素が組成物に混合される。空気中で加熱による比抵抗の低下を防止するために、酸化防止剤が組成物に混合される。不純物は成分化合物の製造工程などにおいて混入した化合物などである。この化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは不純物として分類される。
【0041】
組成物Bは、実質的に、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物および不純物を含有してもよいが、これらの成分化合物と異なる液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって物性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0042】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は値がほぼゼロであることを意味する。
【0043】
表2 化合物の物性

【0044】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)はピッチを短くする。化合物(2)は誘電率異方性を上げる。化合物(3)は光学異方性を上げる、または粘度を下げる。化合物(4)は下限温度を下げる。
【0045】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第二成分+第三成分、第一成分+第二成分+第四成分、および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。組成物における成分の好ましい組み合わせは、第一成分+第二成分+第三成分である。
【0046】
第一成分の好ましい割合は、0.01重量部以上であり、5重量部以下である。さらに好ましい割合は0.05重量部から3重量部の範囲である。特に好ましい割合は0.1重量部から2重量部の範囲である。
【0047】
第二成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために5重量%以上であり、下限温度を下げるために70重量%以下である。さらに好ましい割合は10重量%から65重量%の範囲である。特に好ましい割合は15重量%から60重量%の範囲である。
【0048】
第三成分の好ましい割合は、光学異方性を上げる、または粘度を下げるために30重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために95重量%以下である。さらに好ましい割合は35重量%から90重量%の範囲である。特に好ましい割合は40重量%から85重量%の範囲である。
【0049】
第四成分の好ましい割合は、下限温度を下げるために、5重量%以上であり、粘度を下げるために50重量%以下である。さらに好ましい割合は5重量%から45重量%の範囲 である。特に好ましい割合は5重量%から40重量%の範囲である。
【0050】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRまたはRは、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRまたはRは、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRは、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルコキシメチルである。好ましいRは下限温度を下げるため、または粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRは、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。
【0051】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0052】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0053】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0054】
任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0055】
好ましいアルコキシメチルは、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、またはペンチルオキシメチルである。さらに好ましいアルコキシメチルは、化合物の粘度を下げるために、メトキシメチルである。
【0056】
環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレンである。好ましい環Aまたは環Bは、下限温度を下げるために、1,4−シクロへキシレンである。環Cは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。mが2または3である時、任意の2つの環Cは同じであっても、異なっていてもよい。好ましい環Cは、上限温度を上げ、または粘度を下げるために、1,4−シクロヘキシレンである。環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロー1,4−フェニレン、または2,5−ピリミジンである。nが2または3である時、任意の2つの環Dは同じであっても、異なっていてもよい。好ましい環Dまたは環Eは、粘度を下げるために1,4−シクロヘキシレンであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。環Fは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンである。oが2または3である時、任意の2つの環Fは同じであっても、異なっていてもよい。好ましい環Fは、上限温度を上げ、または粘度を下げるために、1,4−シクロヘキシレンである。
【0057】
は、カルボニルオキシ、ジフルオロメチレンオキシ、または単結合であり、mが2または3である時、任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは、粘度を下げるために単結合である。Zは、エチレン、エチニレン、カルボニルオキシ、または単結合であり、nが2または3である時、任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは、粘度を下げるために単結合である。Zは独立して、カルボニルオキシまたは単結合であり、oが2である時の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは、上限温度を上げるためにカルボニルオキシである。
【0058】
、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素である。好ましいX、X、X、またはXは、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。
【0059】
は塩素またはフッ素である。好ましいYは、下限温度を下げるためにフッ素である。
【0060】
mは、1,2または3である。好ましいmは、粘度を下げるために1である。nは、1、2または3である。好ましいnは、粘度を下げるために1である。oは、1または2である。好ましいoは、下限温度を下げるために2である。
【0061】
第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R、R15、R16、およびR20は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルである。R、R12、R13、およびR19は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から12を有する直鎖のアルケニルである。R10は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から12を有する直鎖のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。R11、R14、およびR18は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシである。R17は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキル、炭素数2から12を有する直鎖のアルケニル、または炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシメチルである。これらの化合物において1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0062】
好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1)から化合物(1−3−1)である。さらに好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1)および化合物(1−2−1)である。特に好ましい化合物(1)は化合物(1−2−1)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)から化合物(2−1−3)、化合物(2−2−1)、化合物(2−3−1)から化合物(2−3−3)、化合物(2−4−1)、化合物(2−5−1)、化合物(2−6−1)から化合物(2−6−2)、および化合物(2−7−1)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)、化合物(2−1−2)、および化合物(2−3−3)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)および化合物(2−3−3)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−17−1)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)、化合物(3−2−1)、化合物(3−4−1)、化合物(3−6−1)、化合物(3−11−1)、および化合物(3−12−1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)、化合物(3−6−1)、化合物(3−11−1)、および化合物(3−12−1)である。好ましい化合物(4)は、化合物(4−1−1)から化合物(4−6−1)である。さらに好ましい化合物(4)は化合物(4−4−1)である。
【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】
第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、第一成分以外の光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。光学活性な化合物の例は、化合物(5−1)から化合物(5−5)である。光学活性な化合物の好ましい割合は5重量%以下である。さらに好ましい割合は0.01重量%から2重量%の範囲である。


【0069】
第一成分以外の光学活性な化合物を添加する場合、組成物のらせんピッチを短くするために、第一成分すなわち化合物(1)と同一のねじれ方向を持つ光学活性な化合物を使用することが好ましい。ただし、組成物のらせんピッチの温度依存性を調整するために、化合物(1)と逆向きのねじれ方向を持つ化合物を組み合わせることができる。
【0070】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に混合される。
【0071】
酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(6)などである。化合物(6)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは1または7である。nが1である化合物(6)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。nが7である化合物(6)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように600ppm以下である。さらに好ましい割合は、100ppmから300ppmの範囲である。

【0072】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤または安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように10000ppm以下である。さらに好ましい割合は100ppmから10000ppmの範囲である。
【0073】
GH(guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、0.01重量%から10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に混合される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、1ppmから500ppmの範囲である。
【0074】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。化合物(1−1−1)は、特開平6−200251号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−1−1)は、特開昭53−023957号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−3−3)は、特開平4−300861号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1−1)および化合物(3−6−1)は、特公平4−30382号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−11−1)および化合物(3−12−1)は、特開昭63−152334号公報に記載された方法で合成する。化合物(4−4−1)は、特開昭56−135445号公報に記載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(6)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(6)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0075】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調整される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0076】
最後に、組成物の用途を説明する。本発明の組成物は主として、−20℃以下の下限温度、70℃以上の上限温度、そして0.10から0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物はSTN素子に適する。この組成物は透過型、反射型、半透過型のSTN素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、0.11から0.25の光学異方性を有する組成物、さらには0.13から0.30の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0077】
本発明の組成物は、さらにAM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、ECB、OCB、IPS、VAなどのモードを有する素子への使用も可能である。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【実施例】
【0078】
組成物および組成物に含有させる化合物の特性を評価するために、組成物およびこの化合物を測定目的物とする。測定目的物が組成物のときはそのままを試料として測定し、得られた値を記載した。測定目的物が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(測定用試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。
【0079】
母液晶の成分は下記のとおりである。各成分の割合は、重量%である。

【0080】
特性の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0081】
らせんのねじれ方向:母液晶100重量部に試料を1重量部添加した組成物のらせんピッチ(P)を測定した。次に、母液晶に標準光学活性化合物(右ねじれ)を添加した組成物のらせんピッチがPと同程度となる標準光学活性化合物の添加量を計算しておき、母液晶に標準光学活性化合物をこの計算した量添加した組成物のらせんピッチ(P)を測定した。さらに、これらの組成物を同量ずつ混ぜた混合物のらせんピッチ(Pmix)を測定した。Pmixが、PとPの中間ならば、右ねじれと判定し、PmixがPとPよりも明らかに大きくなったら、左ねじれと判定した。
【0082】
標準光学活性化合物は下記のとおりである。

【0083】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1 ℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0084】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30 ℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0085】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0086】
粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文中の40頁記載の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0087】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0088】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0089】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ:d)と組成物の光学異方性(Δn)の積(Δn×d)が0.85μmとなるようなdを選択し、ツイスト角が240度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のSTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(矩形波、70Hz)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0090】
急峻性(γ;25℃で測定):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ:d)と組成物の光学異方性(Δn)の積(Δn×d)が0.85μmとなるようなdを選択し、ツイスト角が240度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のSTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(矩形波、70Hz)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。急峻性は、透過率が20%になったときの電圧を透過率が80%になったときの電圧で割った値である。
【0091】
応答時間(τ;25℃で測定;ミリ秒):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は100Hzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ:d)と組成物の光学異方性(Δn)の積(Δn×d)が0.85μmとなるようなdを選択し、ツイスト角が240度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のSTN素子に試料を入れた。この素子に1/32 duty-1/6 bias、1/64 duty-1/8 bias、1/100 duty-1/11 bias、1/160 duty-1/13 biasまたは1/240 duty-1/16 biasのOFF波形(70Hz、V−max、1秒)を印加した。次に、この素子に1/32 duty-1/6 bias、1/64 duty-1/8 bias、1/100 duty-1/11 bias、1/160 duty-1/13 biasまたは1/240 duty-1/16 biasのON波形(70Hz、V−max、1秒)を印加した。次に、この素子に1/32 duty-1/6 bias、1/64 duty-1/8 bias、1/100 duty-1/11 bias、1/160 duty-1/13 biasまたは1/240 duty-1/16 biasのOFF波形(70Hz、V−max、1秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。立ち上がり時間(τr:rise time)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立下がり時間(τf:fall time)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立上がり時間と立下り時間との和である。
【0092】
しきい値電圧の温度依存性(Vth;−20℃、0℃、20℃、40℃、60℃、80℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ:d)と組成物の光学異方性(Δn)の積(Δn×d)が0.85μmとなるようなdを選択し、ツイスト角が240度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のSTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(矩形波、70Hz)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧の温度依存性は、各温度における透過率が50%になったときの電圧で評価した。
【0093】
らせんピッチ(P;室温で測定;μm):らせんピッチはくさび法にて測定した(液晶便覧196頁(2000年発行、丸善))。試料をくさび形セルに注入し、室温で2時間静置した後、ディスクリネーションラインの間隔(d2−d1)を偏光顕微鏡(ニコン(株)、商品名MM40/60シリーズ)にて観察した。らせんピッチ(P)は、くさびセルの角度をθとあらわした次の式から算出した。
P=2×(d2−d1)×tanθ
【0094】
誘電率異方性の周波数依存性(Δε(5kHz)/Δε(50Hz):−20℃):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子を−20℃に冷却し、5kHzのサイン波で10ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。5kHzのサイン波で0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性[Δε(5kHz)]の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。次に、50Hzのサイン波を印加し、同様にして誘電率異方性[Δε(50Hz)]の値を求めた。周波数依存性は、これらの値の比である。この比が1に近いとき、周波数依存性は小さい、すなわち、周波数依存性が優れる。誘電率異方性の周波数依存性を「周波数依存性」と略すことがある。
【0095】
弾性定数比(K33/K11;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向セルに試料を入れた。このセルに0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を『液晶デバイスハンドブック』(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。弾性定数比は、このようにして求めたK33をK11で割った値である。
【0096】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0097】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0098】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル比)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量比)は、ピークの面積比から算出する。
【0099】
実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0100】

【0101】
[比較例1]
3−HB(F)−C (2−1−2) 27%
1V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 9%
VFF−HHB−1 (3−6−1) 10%
VFF2−HHB−1 (3−6−1) 22%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 6%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 6%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 4%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 4%
1O1−HBBH−4 (3−13−1) 5%
1O1−HBBH−5 (3−13−1) 7%
上記組成物100重量部に本発明の第一成分とは異なる下記化合物(右ねじれ)を1重量部添加した。


NI=112.2℃;Tc≦−30℃;Δn=0.150;Δε=10.8;Vth=1.65V;η=31.4mPa・s;γ1=213.8mPa・s;P=95.2μm.
【0102】
[実施例1]
3−HB−C (2−1−1) 8%
V2−HB−C (2−1−1) 8%
1V2−HB−C (2−1−1) 8%
3−BEB(F)−C (2−3−2) 8%
V−HH−3 (3−1−1) 14%
1V−HH−3 (3−1−1) 7%
3−HB−O2 (3−2−1) 3%
V−HHB−1 (3−6−1) 8%
V2−HHB−1 (3−6−1) 7%
3−HHB−1 (3−6−1) 5%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 6%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 6%
3−H2BTB−4 (3−12−1) 5%
3−HHEB−F (4−4−1) 7%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1;左ねじれ)を1重量部添加した。


NI=97.7℃;Tc≦−30℃;Δn=0.132;Δε=5.2;Vth=2・19V;η=12.6mPa・s;γ1=85.4mPa・s;P=14.7μm.
【0103】
[実施例2]
3−HB−C (2−1−1) 30%
2−BB−C (2−2−1) 10%
2−BEB−C (2−3−1) 4%
2−HHB(F)−C (2−6−2) 3%
3−HHB(F)−C (2−6−2) 4%
3−HB−O2 (3−2−1) 10%
3−HHB−1 (3−6−1) 4%
VFF−HHB−1 (3−6−1) 3%
VFF2−HHB−1 (3−6−1) 18%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 5%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 5%
3−HB(F)TB−4 (3−11−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;左ねじれ)を1重量部添加した。


NI=89.8℃;Tc≦−30℃;Δn=0.155;Δε=7.2;Vth=1.95V;η=19.4mPa・s;γ1=134.6mPa・s;P=14.2μm.
【0104】
[実施例3]
2−HB−C (2−1−1) 5%
3−HB−C (2−1−1) 12%
3−HB−O2 (3−2−1) 15%
1−BTB−3 (3−4−1) 3%
3−HHB−1 (3−6−1) 8%
3−HHB−O1 (3−6−1) 5%
3−HHB−3 (3−6−1) 14%
3−HHB−F (4−3−1) 4%
3−HHEB−F (4−4−1) 4%
5−HHEB−F (4−4−1) 4%
2−HHB(F)−F (4−5−1) 7%
3−HHB(F)−F (4−5−1) 7%
5−HHB(F)−F (4−5−1) 7%
3−HHB(F,F)−F (4−6−1) 5%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−3−1;左ねじれ)を0.8重量部添加した。


NI=94.0 ℃;Tc≦−30 ℃;Δn=0.107;Δε=3.3;Vth=2.64V;η=16.9mPa・s;γ1=116.4mPa・s;P=20.4μm.
【0105】
[実施例4]
3−HB(F,F)−C (2−1−3) 8%
V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 9%
VFF−HH−3 (3−1−1) 12%
2−BTB−1 (3−4−1) 5%
2−BTB−O1 (3−4−1) 4%
2−HHB−1 (3−6−1) 5%
3−HHB−1 (3−6−1) 5%
VFF2−HHB−1 (3−6−1) 17%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 8%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 7%
3−HB(F)TB−4 (3−11−1) 7%
2−H2BTB−2 (3−12−1) 3%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 5%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 5%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1;左ねじれ)を0.4重量部添加した。


NI=98.6℃;Tc≦−30℃;Δn=0.163;Δε=8.6;Vth=1.92V;η=13.2mPa・s;γ1=91.9mPa・s;P=36.4μm.
【0106】
[実施例5]
1V2−HB−C (2−1−1) 11%
3−HB−C (2−1−1) 30%
1V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 5%
2−HHB−C (2−6−1) 5%
3−HHB−C (2−6−1) 5%
VFF−HH−5 (3−1−1) 13%
3−HH−4 (3−1−1) 8%
3−HHB−1 (3−6−1) 6%
3−HHB−O1 (3−6−1) 3%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 7%
1O1−HBBH−4 (3−13−1) 3%
1O1−HBBH−5 (3−13−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;左ねじり)を0.7重量部添加した。


NI=96.9℃;Tc≦−30℃;Δn=0.135;Δε=7.9;Vth=2.06V;η=21.2mPa・s;γ1=133.7mPa・s;P=20.5μm.
【0107】
[実施例6]
3−HB(F)−C (2−1−2) 24%
1V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 8%
2−HB(F)EB(F)−C (2−7−1) 3%
3−HB(F)EB(F)−C (2−7−1) 3%
3−HH−4 (3−1−1) 20%
1−BTB−3 (3−4−1) 5%
VFF−HHB−1 (3−6−1) 6%
VFF2−HHB−1 (3−6−1) 9%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 6%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 6%
5−HBBH−3 (3−13−1) 4%
3−HHEB−F (4−4−1) 3%
5−HHEB−F (4−4−1) 3%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1;左ねじれ)を0.6重量部添加した。


NI=82.1℃;Tc≦−20℃;Δn=0.125;Δε=11.3;Vth=1.65V;η=20.9mPa・s;γ1=128.5mPa・s;P=26.2μm.
【0108】
[実施例7]
3−HB−C (2−1−1) 25%
2−HB(F)−C (2−1−2) 7%
3−HB(F)−C (2−1−2) 15%
2−BTB−1 (3−4−1) 9%
3−HHB−1 (3−6−1) 8%
3−HHB−3 (3−6−1) 11%
3−HHB−O1 (3−6−1) 4%
3−HBPy−2 (3−10−1) 5%
3−HBPy−3 (3−10−1) 4%
3−HBPy−4 (3−10−1) 4%
3−HHB−CL (4−2−1) 4%
5−HHB−CL (4−2−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;右ねじり)を0.3重量部添加した。


NI=81.4℃;Tc≦−20℃;Δn=0.134;Δε=6.4;Vth=2.05V;η=20.4mPa・s;γ1=125.4mPa・s;P=49.3μm.
【0109】
[実施例8]
3−HB−C (2−1−1) 16%
1V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 10%
3−HEB(F,F)−C (2−5−1) 8%
VFF−HH−5 (3−1−1) 25%
7−HB−1 (3−2−1) 5%
VFF−HHB−1 (3−6−1) 5%
VFF2−HHB−1 (3−6−1) 12%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 5%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 4%
5−HBB(F)B−2 (3−14−1) 5%
5−HBB(F)B−3 (3−14−1) 5%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;左ねじれ)を0.5重量部添加した。


NI=80.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.127;Δε=10.3;Vth=1.63V;η=15.9mPa・s;γ1=98.9mPa・s;P=31.3μm.
【0110】
[実施例9]
3−HB−C (2−1−1) 15%
3−BEB(F)−C (2−3−2) 5%
5−BEB(F)−C (2−3−2) 5%
5−B(F,F)EB(F)−C (2−4−1) 5%
3−HH−4 (3−1−1) 8%
V2−BB−1 (3−3−1) 4%
2−BTB−1 (3−4−1) 7%
3−HHB−1 (3−6−1) 4%
3−HHB−3 (3−6−1) 4%
5−HBB−2 (3−7−1) 4%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 6%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 6%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 5%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 4%
3−H2BTB−4 (3−12−1) 4%
5−HB−CL (4−1−1) 4%
3−HHEB−F (4−4−1) 5%
5−HHEB−F (4−4−1) 5%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1;左ねじれ)を0.7重量部、下記化合物(1−2−1;左ねじり)を0.7重量部添加した。


NI=89.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.156;Δε=7.6;Vth=1.99V;η=16.2mPa・s;γ1=99.8mPa・s;P=9.1μm.
【0111】
[実施例10]
3−HB−C (2−1−1) 20%
3−HB(F)−C (2−1−2) 18%
1V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 5%
VFF−HH−5 (3−1−1) 18%
3−HHEH−3 (3−5−1) 3%
3−HHEH−5 (3−5−1) 3%
2−BB(F)B−3 (3−8−1) 4%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 6%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 6%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 4%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 4%
3−HHEBH−3 (3−15−1) 3%
3−HHEBH−4 (3−15−1) 3%
3−HHEBH−5 (3−15−1) 3%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;左ねじれ)を0.4重量部添加した。


NI=88.5℃;Tc≦−20℃;Δn=0.135;Δε=8.4;Vth=1.88V;η=20.7mPa・s;γ1=129.5mPa・s;P=37.9μm.
【0112】
[実施例11]
3−HB(F)−C (2−1−2) 30%
V2−BEB(F,F)−C (2−3−3) 8%
V−HH−3 (3−1−1) 20%
V−HHB−1 (3−6−1) 9%
1−BB(F)B−2V (3−8−1) 6%
2−BB(F)B−2V (3−8−1) 4%
2−BBB(2F)−3 (3−9−1) 4%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 3%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 3%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 3%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 3%
3−HB(F)HH−5 (3−17−1) 7%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−3−1;左ねじれ)を0.6重量部添加した。


NI=76.5℃;Tc≦−20℃;Δn=0.133;Δε=10.0;Vth=1.85V;η=15.4mPa・s;γ1=97.6mPa・s;P=26.5μm.
【0113】
[実施例12]
1V2−HB−C (2−1−1) 5%
3−HB(F)−C (2−1−2) 24%
VFF−HH−5 (3−1−1) 27%
2−BTB−1 (3−4−1) 3%
3−HHB−1 (3−6−1) 6%
3−HHB−3 (3−6−1) 9%
3−HHB−O1 (3−6−1) 3%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 6%
3−HB(F)TB−3 (3−11−1) 5%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 4%
3−HB(F)BH−3 (3−16−1) 4%
5−HB(F)BH−3 (3−16−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;左ねじれ)を0.8重量部添加した。


NI=89.2℃;Tc≦−30℃;Δn=0.124;Δε=5.4;Vth=2.42V;η=13.3mPa・s;γ1=86.4mPa・s;P=19.2μm;.
【0114】
[実施例13]
3−HB−C (2−1−1) 18%
5−HBXB(F,F)−C (2) 3%
3−HB(F,F)XB(F,F)−C (2) 3%
VFF−HH−5 (3−1−1) 30%
2−BTB−1 (3−4−1) 10%
VFF−HHB−1 (3−6−1) 8%
VFF2−HHB−1 (3−6−1) 11%
3−HHB−1 (3−6−1) 4%
3−H2BTB−2 (3−12−1) 5%
3−H2BTB−3 (3−12−1) 4%
3−H2BTB−4 (3−12−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1;左ねじれ)を0.7重量部添加した。


NI=82.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.130;Δε=4.2;Vth=2.55V;η=12.3mPa・s;γ1=79.5mPa・s;P=21.6μm.
【0115】
[実施例14]
3−HB−C (2−1−1) 25%
2−BB−C (2−2−1) 9%
2−HHB−C (2−6−1) 4%
3−HHB−C (2−6−1) 4%
3−HH−4 (3−1−1) 12%
3−HB−O2 (3−2−1) 12%
3−HHB−1 (3−6−1) 7%
3−HHB−3 (3−6−1) 10%
3−HB(F)TB−2 (3−11−1) 8%
3−HHB(F)−F (4−5−1) 5%
3−PyBB−F (−) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1;左ねじれ)を0.4重量部添加した。


NI=90.2℃;Tc≦−30℃;Δn=0.135;Δε=4.8;Vth=2.45V;η=15.5mPa・s;γ1=101.2mPa・s;P=37.8μm.
【0116】
実施例1から実施例14の組成物は、比較例1のそれと比べて短いらせんピッチ、および小さな粘度を有する。よって、本発明による液晶組成物は、比較例1および比較例2に示された液晶組成物よりも、さらに優れた特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな弾性定数比、しきい値電圧の小さな温度依存性、誘電率異方性の小さな周波数依存性、短いらせんピッチなどの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物であり、この組成物を用いた液晶表示素子は、短い応答時間、大きなコントラスト比、低いしきい値電圧、小さい消費電力、急峻な電圧−透過率曲線、少ない光漏れなどの特性を有し、STN素子に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの光学活性化合物、および第二成分として、式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;RおよびRは互いに異なって、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;R4は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Zは独立して、カルボニルオキシ、ジフルオロメチレンオキシ、または単結合であり;mは、1、2または3であり;XおよびXは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項2】
式(1)において、RおよびRの炭素数の和が3〜10の整数である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
第一成分が、式(1−1)から式(1−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1または2に記載の液晶組成物。



ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項4】
第一成分を除く液晶組成物100重量部に対して、第一成分の割合が0.01重量部から5重量部の範囲である請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
第二成分が、式(2−1)から式(2−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R4は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり、;XおよびXはそれぞれ独立して、水素またはフッ素である。
【請求項6】
第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
第二成分が式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5に記載の液晶組成物。
【請求項8】
第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物および式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項5に記載の液晶組成物。
【請求項9】
第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が5重量%から70重量%の範囲である請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
第三成分として、式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルコキシメチルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5ジイルであり;Zは独立して、エチレン、エチニレン、カルボニルオキシ、または単結合であり;nは、1、2または3である。
【請求項11】
第三成分が、式(3−1)から式(3−17)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項10に記載の液晶組成物。




ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルコキシメチルである。
【請求項12】
第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項11に記載の液晶組成物。
【請求項13】
13. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【請求項14】
14. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【請求項15】
15. 第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【請求項16】
第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(3−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【請求項17】
第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(3−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項11に記載の液晶組成物。
【請求項18】
第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第三成分の割合が30重量%から95重量%の範囲である請求項10から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項19】
第四成分として、式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Fは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは独立して、カルボニルオキシまたは単結合であり;oは1または2であり;XおよびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは塩素またはフッ素である。
【請求項20】
第四成分が、式(4−1)から式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項10に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項21】
第四成分が式(4−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項20に記載の液晶組成物。
【請求項22】
第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項19から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載される液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−84730(P2011−84730A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184084(P2010−184084)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】