説明

液滴堆積のための方法及び装置

インクジェットプリントヘッドのような装置を用いて基材に液滴堆積する方法であって、該装置は流体チャンバーとして機能するチャンネルの配列を備え、該チャンネルは、間隔をおいて配置された壁で区画され、チャンネル内に含まれるインクのような流体の液滴を放出する開口部又はノズルと連通する。前記各壁は隣接する2つのチャンネルを区画し、また、前記各壁は、第1の電圧に応答して変形して、一方のチャンバーの体積を減少させ、他方のチャンバーの体積を増加させ、第2の電圧に応答して変形して、前記隣接するチャンバーに反対の効果をもたらすように動作する。該方法は、画像のピクセルデータのような入力データを受け付ける工程と、前記入力データに基づいて、隣接する流体チャンバーペアを選択する工程と、前記選択された隣接する流体チャンバーペアを発射チャンバーに、残りの流体チャンバーを非発射チャンバーに割り当てる工程とを含む。一般に、発射チャンバーペアは、いくらかの間隔を有するが、発射チャンバーペアの1つは、奇数個の非発射チャンバーによって他の発射チャンバーペアと隔てられる。これらの選択された各ペアにおいて、ペアの隔壁は、前記各発射チャンバーから少なくとも1個の液滴が放出されるように動作する。すべてのペアの動作が時間的に重複し、高いレベルの処理時間又は印刷速度を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴堆積のための方法及び装置に関し、圧電性の可動壁によって分けられた流体チャンバーを備える装置において際立った用途がある。
【0002】
特に例を挙げるならば、本発明はインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0003】
液滴堆積装置の分野では、複数の圧電性の壁によって分けられた流体チャンバーの配列を含むアクチュエータを構築することが知られている。このような構造の多くでは、壁は、電気信号に応答して動くことができ、各壁が接する2つのチャンバーのうちの一方に向かって動く。このような動きは、壁を介して隣接する両方のチャンバーにおける流圧に影響を及ぼし、一方の圧力の増加と他方の圧力の減少をもたらす。
【0004】
流体の塊をチャンバーから排出するために、ノズル又は開口部が、流体が流通するようにチャンバーに設けられる。開口部の流体は、表面張力効果によるメニスカスを形成する傾向があるが、流体の十分な摂動があれば、この表面張力は乗りこえられ、液滴又は流体の塊が開口部を通じてチャンバーから放出される。このため、開口部付近で過剰な陽圧が印加されると、上記のような流体の塊の放出を引き起こす。
【0005】
可動壁によって分けられた細長いチャンバーの配列を備える構造の例が図1に示されている。チャンバーは、可動壁と接するカバー部材によって片側を囲われたチャンネルとして形成される。流体排出のためのノズルは、該カバー部材に設けられる。カバー部材は、金属カバープレートを含むことが多く、該カバープレートは、カバー部材を構造的に支持して、ノズルが形成されたノズルプレートを薄く覆う。
【0006】
図1に示すように、チャンバーの壁が動作すると、開口部を通じてチャンバーから流体が放出される。図1に示された場合には、所定のチャンバーの両方の壁が内側に変形し、この動きによって、そのチャンネル内の流圧が増加し、隣接する2つのチャンネルの圧力が低下する。チャンバー内の圧力の増加は、そのチャンバーの開口部を通る流体の液滴の放出に役立つ。
【0007】
図1のような構造では、全てのチャンバーに開口部が設けられ、いずれのチャンバーも流体を放出できる。しかし、所定の壁の動作は、隣接する2つのチャンネルにおける圧力に異なる影響を及ぼすため、所定の壁で分けられたチャンネルの両方からの流体の同時放出の実現が困難であることは明らかである。
【0008】
異なる時に放出された液滴が同時に基材に到達できるように、装置のデザインにはいくらかの非対称性がある。例えば、ノズルはチャンネルによって異なる位置に置かれる。液滴堆積の間、配列は配列方向に垂直に動かされるので、2つのノズルは、動きの方向に間隔を開けられ、間隔をあけて配置することによって、液滴放出の時間のずれを小さくする。しかし、このような構造上の変更は、アクチュエータで固定されて変更できないので、液滴放出タイミングの特定のパターンだけについて補正を行う。このために、アクチュエータの壁を駆動する、この方法は制限を受ける。
【0009】
2つのチャンバーに共有された壁の動作を原因とするさらなる問題は、動作後に、余った圧力の乱れがチャンバーに留まることである。出願人が実施した実験によれば、図2に示すようなデータ、すなわち隣接する2つのチャンバーを区画する障壁が1回動いた後に続いて発生する該2つのチャンバー内の流体の移動量(流体内の圧力の代用)に関するデータが導かれた。これらのデータから、各チャンバーの圧力は平衡圧(壁が変形していないチャンバーにおける圧力)から振れていて、時間経過に伴って振れの振幅が0に減衰していることが明らかである。振幅が0に減衰するまでにかかる時間は、以下において、システムの緩和時間(T)とされる。
【0010】
理論に縛られるつもりはないが、出願人は、圧力の振れは流体チャンバーの末端で反射された音圧波によって生成された圧力定常波によって生じると考えている。それら定常波の周期(T)は、例えば図2などのグラフから導かれ、チャンバーの音周期として知られる。細長いチャンネルの場合、この周期は、L/cにほぼ等しい。ここで、Lはチャンネルの長さであり、cはチャンネルに沿った該流体中の音伝播の速さである。
【0011】
上述のように、余った圧力波が、壁の両側の2つのチャンバーに、壁の動作後に存在する。このような余った波の存在は、図2に示された、2番目および3番目以下に大きい移動量から明らかである。したがって、所定のチャンバーから流体が放出されたとき、圧力の乱れが隣接するチャンバーの片方又は両方に存在する。例えば、ある動作方式において、所定のチャンバーに接する2つの壁の内側への動きによって流体がそのチャンバーから放出され、隣接する両方のチャンバーの圧力に影響する。これらの圧力の乱れは、「クロストーク」として知られる過程で隣接するチャンバーからの流体放出を妨げることがある。
【0012】
「クロストーク」の問題を改善するために、アクチュエータの構造が提案された。例えば、交互に開口部のないチャンバーが形成され、これらの「非発射」チャンバーは、圧力の乱れから開口部を備えるチャンバー(「発射」チャンバー)を保護する役割を果たす。もちろん、これは、所定のチャンバーのサイズにおいて利用可能な解像力が半減するといった望ましくない結果を招くことが明らかであろう。
【0013】
欧州特許公報0422870号によれば、クロストークを改善するために、3つ又はそれ以上からなるグループ、あるいは「周期」の内の1つに各チャンバーを事前に割り当てる動作方式が提案されている。すなわち、これらグループの中の1つが周期的に当番チャンバーとして割り付けられるので、各グループは一定の間隔をあけたチャンバーの副配列となる。動作中は、常時、1つのグループだけが機能していて、流体を堆積させるチャンバーは、常に、少なくとも2つのチャンバーによって間隔があけられ、その間隔は、グループの数に依存する。使用者が入力したデータが、各グループ内のどのチャンバーが動作されるかを決める。より詳細には、周期チャンバー内のチャンバーは、それぞれチャンバーによって放出される液滴の数に対応する異なる数のパルスを受け取り、各チャンバーからの液滴は、基材上の1つの点又は印刷画素を形成するために混合される。
【0014】
この方式では、常に、チャンバーの総数の1/3(又は1/nであって、nは周期の数)だけが動作するため、処理速度が大幅に低下することが明らかであろう。
【0015】
加えて、異なるグループの発射間の時間を遅らせることによって、基材上の対応するドットが、基材と開口部の相対的な動きの方向に間隔をあけることができる。上記で簡単に述べたように、ある構造を備える装置では、この問題を解決するために、各周期においてノズルをずらして配置する。そのため、各周期に属する複数のノズルは、それぞれ1直線に配列され、該ノズルの配列は、基材の動きの方向に間隔を置いて配置される。多くの場合、この特別な問題の影響は十分に弱められるが、一般的に、この構造は、ノズルを順々に配列して発射する方式に限定される。
【0016】
欧州特許公報0422870号もまた、アクチュエータを提案しており、該アクチュエータでは、チャンバーが2つのグループに、つまり奇数と偶数のチャンバーに分けられている。チャンバーの各グループは、グループ内のどのチャンバーが発射されるべきかを規定する所定の入力データで、同時に発射するように同期されている。その開示によれば、チャンバーの共鳴周波数での2つのグループ間の切り替えも検討されており、隣接するチャンバーは逆位相で発射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許公報0422870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記文献によれば、この方式によって高速処理が可能なことが記載されているが、生成されるパターンは制限される。例えば、この方式では、白−黒−白を印刷することはできるが、黒−白−黒を印刷することはできない。
【0019】
そのために、処理速度が向上されて、生成されるパターンの制限が少ない液滴堆積装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
欧州特許公報0422870号に開示された奇数−偶数チャンネルシステムの場合、2つのグループにチャンバーを分けることによって、隣接するチャンバーで余った圧力の変動が有利に働いて、流体の排出が促進されることを、出願人は認識した。また、独立した隣接する1個のチャンバーペアが該チャンバーの共振周波数あるいはそれに近い周波数で動作した場合に限って、同じく根本的な利益が得られ、処理速度が向上することを、出願人は認識した。このため、チャンバーの配列の動作がこのような複数の隣接するチャンバーペアの動作から構成されるシステムが考案される。
【0021】
また、欧州特許公報0422870号における対称性の奇数−偶数チャンネル方式では、所定のチャンネルに係る両方の壁が対称的に変形するため、液滴の排出が可能となるが、この対称性が印刷パターンを制限する一因であることも、出願人は認識した。
【0022】
そこで、本発明の第1の観点によれば、間隔をおいて配置された壁で区画された流体チャンバーの配列を備え、前記各流体チャンバーは、流体の液滴を放出する開口部と連通し、前記各壁は、隣接する2つのチャンバーを区画し、また、前記各壁は、第1の電圧に応答して変形して、一方のチャンバーの体積を減少させ、他方のチャンバーの体積を増加させ、第2の電圧に応答して変形して、前記隣接するチャンバーに反対の効果をもたらすように動作する装置を用いて、基材に液滴堆積する方法であって、入力データを受け付ける工程と、前記入力データに基づいて、隣接する流体チャンバーペアを選択する工程と、前記選択された隣接する流体チャンバーペアを発射チャンバーに、残りの流体チャンバーを非発射チャンバーに割り当て、前記発射チャンバーペアの1つが奇数個の非発射チャンバーによって他の前記発射チャンバーペアと隔てられる工程と、前記選択された各流体チャンバーペアにおいて、前記各発射チャンバーから少なくとも1個の液滴が放出されるように前記発射チャンバーペアの隔壁を動作させる工程と、を含み、前記選択された流体チャンバーペアの前記動作は、時間的に重複する方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
隣接する流体チャンバーペアの隔壁を動作させて液滴堆積することによって、都合のよいことに、該ペアは1つのチャンバーだけで間隔があけられる。このため、黒−白−黒を印刷することが可能となり、生成されるパターンが増える。また、選択されたペアの間隔をあけるチャンバーは、何個であってもよい。そのため、奇数のチャンバーと偶数のチャンバーに割り当てる必要がない。この違いは、該ペアが奇数個のチャンバーで隔てられる場合に明確となる。
【0024】
また、入力データを考慮することによって選択されるべきペアを決定するので、手順が最適化され、パターンに対する余計な制限の影響を最小化できる。
【0025】
上記既知の装置とは違って、都合のよいことに、本発明に係る方法を実行するように適合された装置は、一列に配列された流体チャンバーの実質的に全てに、開口部を備える。そのため、プリントヘッド又はその他の液滴堆積装置を、プリンタ又はその他の大きなシステムに組み込むことがとても簡単であり、また、本発明の範囲に属する各種の動作方式を使用することができる。
【0026】
これより、添付の図面を参照しながら本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】既知の液滴堆積装置の構造を示す。
【図2】隣接する2つのチャンバーにおいて、チャンバーを区画する壁の変形に続いて生じる圧力の応答を示す。
【図3】図3(a)は、異なる一連の動作を行う図1の液滴堆積装置を示す。図3(b)は、同じ一連の動作を簡略化した図である。
【図4】図4(a)は、各チャンバーの対向する両端をマニホールドに向けて開放した液滴堆積装置に係る代表的な構造の端面図を示す。図4(b)は、その側面図を示す。
【図5】図5(a)は、各チャンバーの一端だけをマニホールドに向けて開放した液滴堆積装置に係る代表的な構造の端面図を示す。図5(b)は、その側面図を示す。
【図6】図6(a)は、小さな通路が各チャンバーをマニホールドにつなぐ液滴堆積装置に係る代表的な構造の端面図を示す。図6(b)は、その側面図を示す。
【図7】図7は、本発明に係る第1の実施形態における入力データの動作への変換方法を示す。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、図7の実施形態における液滴堆積装置の動作の方法を示す。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、本発明に係る他の実施形態における液滴堆積装置の動作の方法を示し、図7及び図8と同じ入力データを用いるが、全ての壁が常時機能している。
【図10】図10は、本発明に係る他の実施形態に係る入力データの動作への変換方法を示す。1つの液滴が選択されたチャンバーペアから放出される。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、図10の実施形態における液滴堆積装置の動作の方法を示す。
【図12】図12は、本発明における入力データの変換方法のテキスト及び画像への効果を示す。
【図13】図13は、本発明における入力データの変換方法のテキスト及び画像への効果を示す。
【図14】図14は、図8の方法で動作するチャンバーペアに適用される電圧波形を示す。
【図15】図15は、本発明のさらに他の実施形態における電圧波形を示し、交互の正領域と負領域を含む。
【図16】図16は、本発明のさらに他の実施形態における電圧波形を示し、非排出領域が一連の正領域と負領域に先行する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示された装置は、本発明に係る液滴堆積方法を実行するために使用される。該装置は、チャンネルあるいは細長いチャンバーを形成する流体チャンバーの配列を備え、該配列は配列方向に拡がる。該流体チャンバーのそれぞれは、チャンネルが伸びる方向に伸びる長軸を備える。該チャンネルが伸びる方向は、前記配列の方向に垂直であることが望ましい。チャンネルは、対応する細長い壁の配列によって区画され、該壁は圧電性物質(例えば、PZT)で形成される。その結果、各チャンネルには、それぞれ、2面の対向配置された壁が備えられ、該壁はチャンバーの長さ方向に動く。
【0029】
液滴堆積の密度を最大にするために、使用中の配列の全てのチャンネルあるいはチャンバーは、例えばインクのような、排出流体で満たされると好ましく、また、該流体を排出するために開口部又はノズルが設けられる。
【0030】
図1に示されたような装置は、流体チャンバーの側面にノズルがあるために、一般に、「サイドシュータ」と呼ばれる。このような構造では、チャンネルの末端は、多くの場合、開放されていて、全てのチャンネルが1つ又は複数の共通の流体マニホールドに通じている。さらにこれによって、装置の使用中に、流れがチャンネルの長さに沿って調整され、流体の沈滞が防止され、ノズルから放出された流体内の残渣を一掃できる。多くの場合、チャンネルの長さに沿ったこの流れをインク放出によってノズルを通過する流量より大きくすることが有利であることが見出され、この流れを、少なくとも5倍かそれ以上にするのが好ましく、10倍以上がさらに好ましい。
【0031】
この特定の構造においては、このようなチャンネルはそれぞれ、その内面に金属層がメッキされ、該金属層は電極として機能する。該電極はチャンバーの壁の電圧に印加するために使用され、そのため、該壁は圧電効果によって、歪んだり動いたりする。そのため、該壁に印加される電圧によって、隣接するチャンネルの間で当該チャンネルに働く信号に違いが生じる。壁が変形していない場合は、その壁の表面と裏面との間で電位差がない。言うまでもなく、このような状態は、隣接するチャンネル電極のいずれにも信号を印加しないことによって作り出されるが、両方のチャンネルにも同じ信号を印加することによっても作り出される。
【0032】
圧電性の壁は、上半部と下半部で構成されるのが好ましく、上半部と下半部は、配列方向とチャンネルが伸びる方向でもって定義される平面で分けられる。圧電性の壁の上半部と下半部は、チャンネルが伸びる方向及び配列方向に垂直な方向に互いに逆向きに分極し、配列方向に垂直な壁に電圧が印加されると、上半部と下半部は、「剪断モード」で、流体チャンバーの一方に向かって歪む。歪みによって生じる形状は山形紋に似ている。
【0033】
電極と分極した壁を提供する他の方法が提案されていて、同様の曲げ動作で壁を歪めることができる。例えば、各壁が、配列方向に垂直な平面で2つの半部に分割され、該半部が互いに逆方向に分極される。このような構造では、各壁の最上部と最下部に電極が取り付けられる。当業者は、種々の電極機構に取り替えても所望の効果が得られること、及び、特定の用途における要求に応じて、複数の電極が備えられることを理解するだろう。
【0034】
図3(a)は、一連の異なる動作を行う図1の装置を示し、2つのチャンバーは、両方の壁が内側に動くことによって該チャンバーの体積が減少し、圧力が増加する。また、この図に示されるところでは、この内側の動きは、隣接するチャンバーの圧力の減少を引き起こす。なぜなら、この壁の動きは、それらチャンバーの体積を増加するように作用するからである。図3(b)は、簡略化した表現で同じ一連の動作を示し、壁が斜めの又は垂直の線で表されている。壁の歪みの方向は、線が引かれた方向によって表され、変形してない壁は、垂直の線で表されている。
【0035】
本発明が、特定の構造を備えるアクチュエータで使用されるものに限定されず、むしろ一般的に、配列内にあって隣接するチャンバーに共有されて、変形可能な壁を備える液滴堆積装置の動作に、関係することは、抽象概念のレベルにおいて明らかである。変形の本質は、あるチャンバーにおいて他のチャンバーよりも大きな体積が排除されることにある。言い換えると、変形していない、又は歪みが生じていない形状と比べると、このように変形した壁は、他方のチャンバーにおける空間よりも大きな空間を一方のチャンバーで占有する。
【0036】
図1に示されたような装置は、流体チャンバーのほぼ側面にノズルがあるために、一般に、「サイドシュータ」と呼ばれる。一般に、該ノズルは、各末端から等距離に設けられる。このような構造では、チャンネルの末端は、多くの場合、開放されていて、全てのチャンネルが1つ又は複数の共通の流体マニホールドに通じている。さらにこれによって、装置の使用中に、チャンネルの長さに沿って流れが調整され、流体の沈滞が防止され、ノズルから放出された流体内の残渣を一掃できる。チャンネルの長さに沿ったこの流れを、流体放出によってノズルを通過する最大の流量より大きくすることは、有利であることが多い。言い換えると、装置が最大排出頻度で動作するとき、各ノズルを通過する流体の平均流量は、各チャンネルに沿った流量よりも小さい。この流れは、流体放出によってノズルを通過する最大の流量の少なくとも5倍かそれ以上が好ましく、10倍以上がさらに好ましい。
【0037】
図4(a)と図4(b)は、「サイドシュータ」構造の他の例を示し、カバープレートがチャンバーの配列を囲み、ノズルプレートがこのカバープレートを覆っている。各チャンバーでは、対応する排出ポートがカバープレートに設けられ、該排出ポートは、チャンバーとノズルに通じていて、そのチャンバーからノズルを介して流体を排出できる。チャンバーは、その両端が共通の流体供給マニホールドに向けて開放されていて、該流体供給マニホールドは、各端部にそれぞれ取り付けられる共通マニホールド、又は両端に取り付けられる単一の共通マニホールドに分類される。チャンバーの配列を区画する圧電性の壁が動くと、チャンバー内で音波が発生し、該音波は、断面積の違いにより、チャンバーと共通のマニホールドの間の境界で反射される。これらの反射波は、境界の「開放した」性質のために、チャンネル末端に入射する波に対して反対方向の波になる。また、各チャンバーに沿った流体の流れは、図1に記載されたように調整され、図4(b)には、チャンネルの配列に沿った図が示されている。
【0038】
図5(a)と図5(b)は、「エンドシュータ」構造の例を示し、ノズルは、各チャンバーの一端に近いノズルプレートに形成され、各チャンバーの他端は、全チャンバーに共通の流体供給マニホールドに向けて開放されている。特定の「エンドシュータ」構造、例えば、国際公開公報WO2007/007074号に開示されたものでは、小さなチャンネルが、チャンバーからの流体の出口のためのノズル付近の基部に形成される。チャンネルは、チャンバーよりもずっと小さい横断面を備え、チャンバー内の音波を効果的に防げる。流体の流れは、各チャンバーの長さに沿って調整され、流体が共通のマニホールドから流入し、各ノズル付近に設けられた小さいチャンネルを介して流出する。
【0039】
図6(a)と図6(b)は、液滴堆積装置のさらに他の例を示し、該装置が本発明に応じて用いられる。この構造は、図4(a)と図4(b)に記載されたものに類似するノズルプレート及びカバープレートを備えるが、各ノズルは、対応するチャンバーの側面の一端に与えられる。支持部材は、各チャンネルの土台部分を形成し、チャンバーの長軸の両端を、ノズルとは反対側のチャンバーの端部に設けられた小チャンネルを除いて、実質的に閉鎖する。小チャンネルは、ノズルを介してチャンバーから排出される流体の進入を可能にするが、音波がチャンバー内で供給マニホールドに達することを妨げるために、チャンバーそのものよりもずっと小さい横断面を備える。このため、圧電性の壁の動きによって発生した音波はいずれも、同じ方向の波としてチャンバーの両端で反射される。
【0040】
本発明は、上述された全ての装置、さらに一般的には、可動壁によって分けられるチャンバーの配列を含み、各チャンバーには、液滴排出のための開口部が設けられている装置での使用が可能であることが理解されるであろう。
【0041】
上記のように、可動壁によって分けられる流体チャンバーにおける配列のノズルから流体を排出するために、多くの方式が提案された。
【0042】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る液滴堆積の方法の概要図を示す。これらには画像ピクセルデータの列が示されており、この特定の実施形態では、該画像ピクセルデータは黒か白かのいずれかである。そして、画像ピクセルデータのこの列は、「選択される」か又は図7に示されたアクチュエータの配列に対する一連のコマンドに変換される。アクチュエータの流体チャンバーが図7に図式的に示され、水平線がチャンネルの隔壁を示す。
【0043】
流体チャンバーペアは、前記選択手順にしたがって選ばれ、これらのペアの位置が「黒い」画像画素の位置に対応する。流体チャンバーペアのそれぞれでは、中央の隔壁が動作し、図8及び図9に示すように、チャンバー間で後方及び前方に動き、基材上に液滴のペアを放出する。
【0044】
この図から明らかなように、全てのペアが区画され、区別され、各流体チャンバーは、多くても1つのペアだけを構成する。このように、各ペアの動作は、他のペアの動作から物理的に独立している。該ペアを隔てる非発射チャンバーは何個であってもよい。本発明の有用性は、奇数個の非発射チャンバーで隔てられた発射チャンバーペアの間隔で発揮される。これによれは、一般に、基材上に格子状に配置されたドットのパターンが形成され、該基材には、ドットが一定の間隔で配置された2つの領域があって、該領域は、それぞれ偶数個のドットで構成され、2つの該領域は、格子状のギャップで隔てられ、該ギャップは、奇数個のドットの不存在に対応する。例えば、これには、黒−黒−白−黒−黒のパターンが基材上に形成される状態が含まれる。
【0045】
壁の振動の周期がチャンバーの緩和時間よりも短いほうが有利であるのは、前の壁の動きで余った音波エネルギーを用いることで、液滴の放出が促進されるからである。これらのアクティブペアのそれぞれは、図7において、該ペアを構成するチャンバーの下に下線を付して示される。それ以外のチャンバー、つまりイナクティブチャンバーは、「X」で示される。アクティブペアは、基材上に形成されるパターンのドットのペアに対応する。
【0046】
さらに詳細には、図8及び図9はどちらも、チャンバーの壁の2つの異なる動作方法を示し、図7の画像の表現ができる。両方の方法では、ペアの外壁は、液滴の排出の直接の原因とならないが、別の目的のために用いられ、この目的とは、例えば、排出の補強、流体の沈滞の防止、又はクロストークの抑制である。
【0047】
図8(a)及び図8(b)は、動作周期が半周期離れた2つの異なる時点におけるチャンバーの壁を示す。選択されたペアの中央の隔壁が動作する一方で、残りの壁が動作しないことが明らかである。このように、各ペアの外壁は実質的に動かず、中央の壁の動作中に変形しない。このようにして、外壁は、中央の壁の動作によって生じる圧力の乱れに対するバリアとして機能し、ペアの外側のチャンバーとのクロストークを防止する。単一電極が各チャンネルに取り付けられる構造では、静止させる壁の両側のチャンネル電極に同一の信号が印加されることが求められる。
【0048】
図9(a)及び図9(b)も、半周期離れた2つの時点におけるチャンバーを示すが、全ての壁が動作する動作方式におけるものである。本実施形態によれば、非発射チャンバーの全ての壁、ひいては選択されたペアの外壁は、常に同位相で動作する。この動きは、非発射チャンバー内の流体の沈滞を防ぐ。さもなければ、この沈滞がそれらのチャンバーの開口部の障害となる。発射ペアの隔壁は、この動きの反対に動き、各チャンバーからの排出を促す。これは、発射動作を補強する非発射の壁によって与えられる付加的なエネルギーによるものである。
【0049】
3個の黒い画像画素が一緒に現れると、これらは選択されて1個あるいは2個のアクティブペアになることは明白である。図7の実施形態では、3個の画素が2個のアクティブペアで表され、画像中の2個の空白画素に相当する領域の1つは余分な液滴で埋められる。該選択手順において、連続する空白領域の大きさを考慮するようにして、印刷パターン中のエラーを視認できないものに留めることができる。例えば、1個の「白い」画像画素が液滴で表現されることを防止することができる。本実施形態では、印刷可能な最も狭い領域が2つの液滴の大きさであることが理解されるが、結果として得られる印刷された画像の質の低下は、ほとんど無視できることが見出された。
【0050】
例えば、図12及び図13は、複数の印刷画素のペアが選択された場合の、文字「A」及び円の縁をそれぞれ示すものである。この変換における誤差は、この拡大されたレベルでさえ無視でき、基材上に形成されたパターンの誤差は、ほとんど認知できないことがわかる。場合によっては、このような印刷方法において画像を最適化するために、画像が前処理されてもよく、例えば、テキストが印刷される場合には、最適なフォントが使われてもよい。
【0051】
あるペアから1滴の液滴だけを液滴堆積することができない状況においては、1個の画素を表現する場合に、そこに液滴のペアが堆積される、あるいは液滴が全く堆積されないという、固有のエラーが生じる。選択アルゴリズムは、ディザリングのような誤差分配処理によって、このエラーを画像データにおいて隣接する線に転嫁する。
【0052】
先に提案されたある動作方式とは対照的に、都合のよいことに、この動作は十分高い頻度で発生し、流体の液滴がチャンバーにおける緩和時間より短い時間差で2つのチャンバーから放出される。チャンバーがこの方式でペアになった場合、壁が第1のチャンバーに向かって動いたときに生成された余りの圧力波が、該ペアの第2のチャンバーの開口部でメニスカスを摂動するのに用いられると有利であることを、出願人は認識した。適切な時間に第2のチャンバーに向かう隔壁の動きによって、干渉又は「クロストーク」よりも、むしろ圧力波が制御された流体放出を促進する。
【0053】
壁が第1のチャンバーから第2のチャンバーまで動くのにかかる時間周期と、さらに戻る時間周期、すなわち動作周期は、音周期の0.5倍から1.5倍の範囲から選ばれるのが好ましい。図2に示されたように、第2のチャンバーにおける圧力が最大か、最大圧力に近い時点で、好適に制御されて排出される。音周期の近傍であって、音周期と異なる動作周期を用いることが好ましいのは、チャンバー内での共振挙動を避けることができるからである。共鳴状態で動作すると、状況によっては、速度を増しながら、流体の液滴が放出されるため、不安定な液滴堆積となることが分かっている。
【0054】
上述のように、チャンバーの音周期は、動作壁がチャンバーに向かって1回動いて、チャンバーに振動を加えることによって決定される。つまり、チャンバー内の圧力変動の周期が音周期である。長さをLとする細長いチャンバー又はチャンネルにおける音周期は、ほぼL/cであって、cは流体内の音の速度である。
【0055】
図15は、図7から図11に示された実施形態に係る隔壁に用いられる電圧波形を示す。図1に示された電極構造の場合、この波形は、隣接するチャンネル電極における信号間の電位差に相当する。このような構造において壁の表面と裏面の間に2極性の電圧を生成することが要求される場合、この要求は、隣接する電極のそれぞれに、1つの単極信号を印加することによって実現され、一方の信号は壁に電圧の正の部分を与え、他方の信号は負の部分を与える。
【0056】
壁にかかる電圧と壁の位置との間には直接的な関係がある。電圧差が0に保持された場合、壁は変形しない。電圧差が正の値に保持された場合、壁は第1のチャンバーに向かって変形し、電圧差が負の値に保持された場合、壁は第2のチャンバーに向かって変形する。壁の動作は、システムの応答時間のために電圧信号に遅れる。
【0057】
隔壁に印加される信号は、2つの方形波領域からなる。第1の領域、つまり正領域は、壁を未変形の状態から第1のチャンバーに向かって動かし、未変形の状態に戻す。そして、第2の領域、つまり負領域は、壁を未変形の状態から第2のチャンバーに向かって動かし、再び未変形の状態に戻す。第1と第2の領域間の時間間隔がシステムの応答時間の長さと同じような場合、壁は、第1のチャンバーの方への変形から第2のチャンバーの方への変形に直接移行し、未変形の状態にほとんど止まらず、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの1つの連続的な動作とみなされる。
【0058】
図14に示されたように、第2の方形波領域の開始は、第1の方形波の開始から1音周期後である。図2から明らかなように、これによって、第2のチャンバーに向かう壁の動きの大きさを、前記第1のパルスによって第2のチャンバーに生じた最大の圧力の大きさと一致させることができる。
【0059】
より詳細には、第1のチャンバーに向かう初期の変形は、第1のチャンバーの圧力の瞬間的な増加と第2のチャンバーの圧力の減少の原因となるだけでなく、第2のチャンネルの開放された端部において、内側に向けて伝播する正の圧力音波を生成する。これらの音波は、内側に向けて伝播し、音周期の半周期(音周期の半周期は、波がチャンネルの中央に達するまでの時間に一致し、該チャンネルの中央にはノズルが配置されている)経過後に第2のチャンネルのノズルに集まる。この点は、図2に示された圧力が最大になるところに一致する。そして、隔壁が第2のチャンネルの方に戻り、瞬間的に第2のチャンネルの圧力が増加し、第1のチャンネルの圧力が減少する。第2のチャンネルでは、正の音波の組み合わせがノズルに存在し、壁の動きによって生成された正の圧力は、液滴を放出させるのに十分である。
【0060】
このような電圧信号を生成する電子装置に所定の適切な柔軟性を与えると、第1及び第2のチャンバーによって生成される流体の液滴の相対的な速度を変えることができる。例えば、図14の電圧波形では、第2の方形波領域の振幅と長さの両方が、第1の方形波領域のそれらよりも大きい。動作中において、基材上に流体の液滴を配置している間は、流体チャンバーの配列が基材に対して動かされる。ここで、方形波のパラメータの適切に変更すれば、液滴の速度のずれと液滴放出の時間のずれとを確実に釣り合わせることができる。このようにして、所定の動作速度において、基材上の1本の直線にドットが形成されるように、液滴を配置することができる。
【0061】
もちろん、ここでは、基材と装置の相対的な動きの方向にドットの多少の小さなずれが残るかもしれないが、これは、形成されたドットの直径に比較すれば小さく、あるいは、少なくとも、基材の動きの方向にドットを分けるような間隔はできない。
【0062】
反対に、実際には、基材上の液滴によって形成されたドット間に相当の間隔があることが好ましい状況もあるかもしれない。このように形成されたドットは、基材の動きの方向に対して角度をもった列になる。とはいえ、配列内のペアによって形成されたドットは、印刷線の方向に基材上に配置され、各ペアにおける該ドットは印刷線の方向に対して角度があるため、画像は複数の「斜め画素」で形成される。該角度は、30度又は45度が好ましく、さらにある実施形態では、該角度はペアによって異なってもよい。これらの「斜め画素」は、調整され、また間隔があけられると好都合であり、その結果、全てのチャンバーによる印刷が格子状のパターンとなる。この配置は、濃淡又はディザリングパターンの形成において有用性を示す。
【0063】
また、上記の柔軟性は、2つのチャンバーから体積の異なる流体が排出されることも可能にする。例えば、これは第1及び第2の2つの正方波の相対的な振幅と時間を変えることで実現される。各チャンバーペアは実質的には独立したシステムなので、それぞれ別個のものと考えてよく、ペアが体積の異なる2つの液滴を放出できるように波形が調整されれば、この同じ波形を配列内の他のペアに実質同時に印加して、ペアの動作を全て時間的に重複させることができる。
【0064】
また、波形の「群」を構築することもでき、該「群」はそれぞれ、固有のサイズで基材上にドットのペアを形成する。ペアは配列の中から選択手順を使って選択され、そして波形の群の中から好適な波形が1つ選択され、その結果、好適なサイズの2個のドットが生成される。チャンネルペアはそれぞれ孤立しているので、該方法によれば、都合のよいことに、配列内のすべてのチャンバーに該波形の群と同一の群を使用することができ、その一方で、クロストークは実質的に防止される。
【0065】
また、波形の群を構成する波形のそれぞれは、体積の異なる2個のかかる液滴の速度が調節されて、前記液滴堆積の着地点が基材の移動する方向に対して垂直な方向に一列に並ぶように構成されてもよい。
【0066】
かかる波形の「群」によれば、各ペアは、様々なサイズのドットを組み合わせて、基材上にドットを形成することができる。本願の技術分野においては、該ドットのサイズは階調レベルとして知られている。図7及び図10に示された選択工程は、ペア中のチャンバーのそれぞれで利用できる階調レベルに応じて適合させることができる。
【0067】
図7及び図10に示された方法は黒と白の画素(バイナリ画像)だけに関係するが、この方法が多数の階調レベルを有する画素に容易に拡張できることは当業者に理解される。もちろん、これは、同じサイズの液滴のペアを堆積することしかできない状況であっても、このことは当てはまるが、選択工程において分配しなければならない誤差の量が非常に大きくなる。ペア中の液滴の体積についての柔軟性が大きければ、分配しなければならない誤差は小さくなり、その違いは原理と同程度になる。
【0068】
図15は、本発明のまた別の実施形態に係る方法での使用に適合した電圧信号を示す。図14の実施形態は、1つの正の正方波領域と1つの負の正方波形領域だけで構成されたが、本実施形態は、複数の該正方波形で構成される。各正方波形は、各流体チャンバーの開口部から流体の液滴を放出させ、液滴の列を開口部において拡大するが、決定的なことに、十分なエネルギーを与えないので、最後の動作までにこの列を中断できない。
【0069】
本実施形態に係る正方波の数は、液滴の列の総量におおよそ比例し、一連の正方波のそれぞれが流体量を加える。さらに、このことによれば、様々な範囲のサイズのドットを有する波形の「群」の形成が可能になる。この特定の実施形態では、正と負の正方波領域それぞれの数の差が最大で1になるように群を制約してもよい。このため、このような技術で形成された画像は、2個の液滴の幅が一定であるのに、階調が様々に異なる画素を含む。
【0070】
本実施形態のように、各ペアは、当該ペアの一方のチャンバーから液滴を放出するか、当該ペアの他方のチャンバーから液滴を放出するかを選択できる。全てのペアの動作を時間的に重複させることができ、発射周期の長さを最小にできる。このように放出された液滴の列それぞれは、基材上で離れたドットを形成し、ドットの印刷加重又は印刷密度とドットを構成する液滴の数とは正相関する。
【0071】
前記配列内のペアの相互の動作を同期させるために、液滴の個数、つまり発射チャンバーのそれぞれが1回に連続して排出する液滴の個数の最大値Nをあらかじめ定める。全てのペアの動作が同時になるように調整され、例えば、各ペアによって放出される最初の又は最後の液滴は同時に放出される。より詳細には、図15の実施形態に示された正の正方波領域は、負の正方波領域より持続時間が短く、該正の方形波が液滴に与えるエネルギー、つまり第1のノズルにおいて該液滴を大きくするエネルギーは小さい。正方波領域の幅は、上述のように選択され、2つのチャンバーから放出された液滴が基材上に整列される。
【0072】
図16は、本発明のまた別の実施形態に係る方法での使用に適合した他の電圧信号を示す。該信号は、図15に示されたものと実質的に同じであるが、正と負の正方波領域が実質的に近似している。本実施形態では、前記正方波は短い負の正方波パルスに先行され、該負の正方波パルスは、直ちには排出を導かないが、第2のチャンバーで音波を生成し、第2のチャンバーから放出される液滴のエネルギーは該音波によって増大する。該音波によって追加されたエネルギーは、基材上に2個の液滴を配列するのに使用され、あるいは、前述したように、2個のドットの間の間隔を制御するために使用される。
【0073】
本発明は、図14に示された実施形態に係る様々なパルスを組み合わせるとともに、図15に示されたパルスの数を変更して、実施されてもよい。これによっても、チャンバーペアで生成された2個のドットを基材上に配列することができるし、また、それらの間隔を適切に制御できる。
【0074】
さらに他の実施形態では、発射チャンバーは常に同じ数の液滴を放出する。そのため、基材上に形成されるドットのサイズが原則的に固定される。基材上に形成されるドットのサイズに多様性がないことは明らかだが、本質的に2元(白と黒)の印刷工程になるので、多くの場合、所定の体積の液滴の列が形成され、該液滴の列は同じ体積の1個の液滴に比べて大きな信頼性をもって、基材に液滴堆積することが分かった。このため、2元印刷が許容できる場合、上記のような工程は、全ての実施形態において、信頼性を向上させ、印刷処理速度を増加させる。
【0075】
上記の例示的な実施形態は、方形波領域を含む波形に言及したが、三角、台形、又は正弦関数のような様々な形の波形領域が、特定の液滴堆積装置に応じて適切に用いられることが、当業者によって理解されるであろう。
【0076】
また、上述のように本発明は、「サイドシュータ」又は「エンドシュータ」型の装置のどちらにも適用され、より一般的には、可動壁によって区画されたチャンバーの配列を備えるいかなる装置にも適用される。
【0077】
また、画素の階調レベルについて言及する場合に、それが必ずしも、黒いインクあるいは何らかの黒い色素の使用を、意味しないことは明らかである。例えば、シアン、マゼンタ、黄、黒の組み合わせはカラー画像だとされ、各画素の色調は、これら4色の「階調レベル」で表現される。さらに一般的に流体の液滴について言えば、階調レベルは液滴の体積を示すものであって、流体自体の性質には関係しない。もちろん、本発明は、印刷画像が色素又はインクジェットプリンタを用いるインクで形成される場合の描画用途において特定の利益をもたらすが、本発明の利点は、電子部品を形成可能な機能的流体、広い領域の均一なコーティング(例えば、ニス)及び3次元部品の製作を含む、多くの液滴堆積装置、基材及び排出流体に提供されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて配置された壁で区画された流体チャンバーの配列を備え、
前記各流体チャンバーは、流体の液滴を放出する開口部と連通し、
前記各壁は、隣接する2つのチャンバーを区画し、
また、前記各壁は、第1の電圧に応答して変形して、一方のチャンバーの体積を減少させ、他方のチャンバーの体積を増加させ、第2の電圧に応答して変形して、前記隣接するチャンバーの体積に反対の効果をもたらすように動作する
装置を用いた基材に液滴を堆積する方法であって、
入力データを受け付ける工程と、
前記入力データに基づいて、隣接する流体チャンバーペアを選択する工程と、
前記選択された隣接する流体チャンバーペアを発射チャンバーに、残りの流体チャンバーを非発射チャンバーに割り当て、前記発射チャンバーのペアの1つが奇数個の非発射チャンバーによって他の前記発射チャンバーペアと隔てられる工程と、
前記選択された各流体チャンバーペアにおいて、前記各発射チャンバーから少なくとも1個の液滴が放出されるように前記発射チャンバーペアの隔壁を動作させる工程と、
を含み、
前記選択された流体チャンバーペアの前記動作は、時間的に重複する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
選択された流体チャンバーペア内の各発射チャンバーは、前記入力データに応じて、1からN個の液滴の列を放出し、各列は、基材上に対応するドットを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択された流体チャンバーペア内の発射チャンバーによって放出された液滴の列は、液滴の数の差が最大で1、望ましくは同じである、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各発射チャンバーは、正確にN(Nは、1より大きい整数)個の液滴の列を放出し、前記各列は、対応するドットを基材上に形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ドットは、基材上で第1の直線に配置される、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記入力データは、画像のピクセルデータの2次元配列に対応し、前記第1の線の前記ドットは、前記2次元配列内の画像のピクセルデータの1つの線の値の描写である、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
流体の液滴の列による画像のピクセルデータの1つの線の描写における、あらゆる固有の誤差は、画像のピクセルデータの別の線に再分配される、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
隣接する流体チャンバーペアを選択する工程と、前記選択された隣接する流体チャンバーペアを発射チャンバーに、残りの流体チャンバーを非発射チャンバーに割り当て、前記発射チャンバーペアの1個が奇数の非発射チャンバーによって他の前記発射チャンバーペアと隔てられる工程と、前記各選択された流体チャンバーペアにおいて、前記各発射チャンバーから少なくとも1個の液滴が放出されるように前記発射チャンバーペアの隔壁を動作させる工程の繰り返す工程をさらに含み、
基材上で複数の平行する直線に配置されたドットを形成し、各線が前記2次元配列内の画像のピクセルデータの線に対応する明度を表す、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
選択された流体チャンバーペアの隔壁の前記動作の周期は、各チャンバーにおける音周期の0.5から1.5倍の間である、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
選択された各流体チャンバーペアにおいて、各流体チャンバーペアの隔壁の動作中に、該流体チャンバーペアの境界となる2つの壁が動かない、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
液滴が放出されないように、選択されないチャンバーの全ての壁が互いに同位相で動作する、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
選択された流体チャンバーペアの隔壁の前記動作の位相が、選択されないチャンバーの壁の動作の位相とずれる、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
間隔をおいて配置された壁で区画された流体チャンバーの配列を備え、
前記各流体チャンバーは、流体の液滴を放出する開口部と連通し、
前記各壁は、隣接する2つのチャンバーを区画し、
また、前記各壁は、第1の電圧に応答して変形して、一方のチャンバーの体積を減少させ、他方のチャンバーの体積を増加させ、第2の電圧に応答して変形して、前記隣接するチャンバーの体積に反対の効果をもたらすように動作する
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法の実行に適合した液滴堆積装置。
【請求項14】
実質的に全ての流体チャンバーにおける開口部が1つの線上に配置される、
ことを特徴とする請求項13に記載の液滴堆積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−508123(P2012−508123A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535170(P2011−535170)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051526
【国際公開番号】WO2010/055344
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(301055608)ザール テクノロジー リミテッド (31)
【Fターム(参考)】