説明

混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法

【課題】本発明の目的は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離性を向上させることができる混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、前記混合樹脂が流動し、前記混合樹脂が前記混床式充填塔の塔頂部に達しない線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Aと、前記混合樹脂が前記混床式樹脂充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Bと、を組み合わせて、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水のイオン交換処理には、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を混合充填した混床式樹脂充填塔で処理する混床法がある。混床式樹脂充填塔の運転は、被処理水を脱塩(イオン交換処理)して脱塩水を製造する脱塩処理工程、充填塔内の混合樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)を分離する分離工程、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂を再生する再生工程、再生後の各樹脂を混合する混合工程を1サイクルとして繰り返される。
【0003】
再生工程では、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂を別々に再生する必要があるため、再生工程前等に、混床式樹脂充填塔の混合樹脂を分離する分離工程が必要となる。分離工程では、一般的に、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比重差を利用して、逆洗を行うことにより混合樹脂の分離を行う。但し、逆洗の際の線流速は混合樹脂の分離が充分に可能な展開率が確保できる値以上で実施される必要がある。展開率は以下のように求められる。展開率(%)=(逆洗時の混合樹脂の層高−静置時の混合樹脂の層高)/静置時の混合樹脂の層高
【0004】
一般的に、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離性を高くしようとすると、充填塔の有効塔高を静置時の混合樹脂の層高と混合樹脂の分離が充分に可能な展開率分の高さとの和以上にする必要があるため、充填塔が大型化し、設備コストが増大する。逆に、設備コストを下げるために、充填塔の有効塔高を静置時の混合樹脂の層高と混合樹脂の分離が充分に可能な展開率分の高さとの和未満にすると、逆洗時に上層の混合樹脂が、充填塔の塔頂部でパックされるため、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離性が低下する。有効塔高とは、逆洗時に樹脂が流動する充填塔内空間の高さであり、実質的には充填された樹脂の底部から充填塔の塔頂部までの高さである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−76840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離性を向上させることができる混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、前記混合樹脂が流動し、前記混合樹脂が前記混床式充填塔の塔頂部に達しない線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Aと、前記混合樹脂が前記混床式樹脂充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Bと、を組み合わせて、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離する。
【0008】
(2)本発明は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、前記混合樹脂が前記混床式樹脂充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程を間欠的に行い、前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離する。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)記載の混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法において、前記混床式樹脂充填塔の有効塔高は、前記混合樹脂の層高に対して1.2〜1.5倍の範囲であることが好ましい。
【0010】
(4)上記(1)記載の混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法において、前記逆洗工程Aを行った後、前記逆洗工程Bを行い、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る混床式樹脂充填塔を含む脱塩処理装置の構成の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る混床式樹脂充填塔を含む脱塩処理装置の構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す脱塩処理装置1は、混床式樹脂充填塔10(以下、単に充填塔と呼ぶ場合がある)、原水槽12、水酸化ナトリウム貯槽14、塩酸貯槽16、処理水槽18、各種ポンプ及び配管を備える。
【0015】
混床式樹脂充填塔10と原水槽12との間は配管20aにより接続され、処理水槽18と混床式樹脂充填塔10との間は配管20bにより接続され、水酸化ナトリウム貯槽14と配管20aとの間は配管20cにより接続され、塩酸貯槽16と配管20bとの間は配管20dにより接続され、処理水槽18と配管20bとの間は配管20eにより接続され、配管20fは配管20bに接続されている。また、混床式樹脂充填塔10には配管20gが接続されている。また、混床式樹脂充填塔10内にはコレクタ24が設置され、コレクタ24には配管20hが接続されている。また、混床式樹脂充填塔10には吸気用の配管20iが接続され、配管20bにはドレーン用の配管20jが接続されている。各配管(20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h,20i,20j)にはバルブが設置され、配管(20a,20c,20d,20e)にはポンプ(22a,22b,22c,22d)が設置されている。混床式樹脂充填塔10内には、アニオン交換樹脂26及びカチオン交換樹脂28の混合樹脂30が充填されている。
【0016】
混床式樹脂充填塔10内には、アニオン交換樹脂26及びカチオン交換樹脂28を含む混合樹脂30が充填されている。本実施形態で用いられるアニオン交換樹脂26は、強塩基性、弱塩基性等特に制限されるものではなく、また、本実施形態で用いられるカチオン交換樹脂28は、強酸性、弱酸性等特に制限されるものではないが、純水、超純水等の脱塩処理(イオン交換処理)を目的とする場合には、強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂を選択することが望ましい。
【0017】
以下に、本実施形態の脱塩処理装置1の動作について説明する。
【0018】
本実施形態の混床式樹脂充填塔10の運転は、原水を脱塩(イオン交換処理)して脱塩水を製造する脱塩処理工程、混床式樹脂充填塔10内の混合樹脂30(アニオン交換樹脂26、カチオン交換樹脂28)を分離する分離工程、アニオン交換樹脂26、カチオン交換樹脂28を再生する再生工程、再生後の各樹脂を混合する混合工程を1サイクルとして繰り返される。
【0019】
<脱塩処理工程>
ポンプ22aを稼働させ、配管20aのバルブ及び配管20bのバルブを開いて、原水槽12内の原水を配管20aから混床式樹脂充填塔10内へ送液する。原水は、混床式樹脂充填塔10内のアニオン交換樹脂26及びカチオン交換樹脂28により脱塩処理(イオン交換処理)される。脱塩処理された処理水は、配管20bを通り処理水槽18に貯留される。
【0020】
<分離工程>
本実施形態では、脱塩処理を所定時間実施した後、配管20aのバルブ及び配管20bのバルブを閉じ、ポンプ22dを稼働させ、配管20eのバルブ及び配管20gのバルブを開いて、脱塩処理した処理水を逆洗水として配管20eから混床式樹脂充填塔10内へ送液し、上向流で混床式樹脂充填塔10内の混合樹脂30を逆洗し、逆洗水を配管20gから系外へ排出する。このような逆洗によって、混床式樹脂充填塔10内の混合樹脂30は所定の高さまで立ち上がりながら流動し、両樹脂の比重差(アニオン交換樹脂26の比重<カチオン交換樹脂28の比重)によって分離し、静置すると混合樹脂30は上層のアニオン交換樹脂層と下層のカチオン交換樹脂層に分離する。
【0021】
混床式樹脂充填塔10内の混合樹脂30を充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)に設定し、逆洗を行うと、混合樹脂30の一部が塔頂部で、逆洗時の水圧により混合樹脂30の状態でパックされてしまうため、その分だけアニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28の分離性が低下する。また、混床式樹脂充填塔10内の混合樹脂30を充填塔の塔頂部に達しない線流速(LV)に設定し、逆洗を行うと、混合樹脂30が充分に流動せず、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28の分離が充分に行われない。
【0022】
そこで、本実施形態では、混合樹脂30が流動し、混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達しない線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Aと、混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Bと、を組み合わせて、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離する。この組み合わせは、逆洗工程Aを行った後、逆洗工程Bを行った場合、逆洗工程Bを行った後、逆洗工程Aを行った場合、これらを複数回行った場合等である。さらに、逆洗工程Aから逆洗工程Bの移行時、又は逆洗工程Bから逆洗工程Aの移行時には、逆洗を止めて所定時間混合樹脂30を静置する時間を設ける場合も含まれる。さらに、本実施形態の他の例では、混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程を間欠的に行い、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離する。この間欠的とは、上記逆洗及び一定時間逆洗の停止を1サイクルとして、これを複数サイクル(少なくとも2サイクル)行うことである。
【0023】
<逆洗工程Aを行った後、逆洗工程Bを行った場合>
まず、混合樹脂30が混床式樹脂充填塔10の塔頂部に達しない線流速(LV)で逆洗を行うことにより(逆洗工程A)、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28とは完全に分離しないものの、比重の小さいアニオン交換樹脂26は、逆洗により流動する樹脂層の上部に移動する。次に、混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行うことにより(逆洗工程B)、樹脂の一部が塔頂部で、逆洗時の水圧によりパックされるが、パックされる樹脂は、逆洗工程Aにより樹脂の上部に移動したアニオン交換樹脂26であり、両樹脂が混合した状態でパックされることが抑制される。また、逆洗工程Bで、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28とが充分に分離される。したがって、本実施形態では、充填塔の上部にアニオン交換樹脂層、充填塔の下部にカチオン交換樹脂層に分離させることができる。
【0024】
<逆洗工程Bを行った後、逆洗工程Aを行った場合>
まず、混合樹脂30が混床式樹脂充填塔10の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う(逆洗工程B)。ここでは、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28との分離は進むが、その一方で、混合樹脂30の一部が塔頂部で、逆洗時の水圧により混合樹脂30の状態でパックされる。次に、混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達しない線流速(LV)で逆洗を行うことにより、パックされた混合樹脂30が流動し、比重の大きいカチオン交換樹脂28が、逆洗により流動する樹脂層の下部に沈降する。したがって、本実施形態では、充填塔の上部にアニオン交換樹脂層、充填塔の下部にカチオン交換樹脂層に分離させることができる。
【0025】
アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28との分離性の点で、逆洗工程Bを行った後に逆洗工程Aを行って混合樹脂30を分離させた場合より、逆洗工程Aを行った後に逆洗工程Bを行って混合樹脂30を分離させた方が好ましい。
【0026】
<逆洗を間欠的に行った場合>
まず、混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う。これにより、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28との分離は進むが、その一方で、混合樹脂30の一部が塔頂部で、逆洗時の水圧により混合樹脂30の状態でパックされる。次に、上記逆洗を停止する。そうすると、両樹脂の比重差によって、樹脂が沈降する際に、混合樹脂30(パックされた混合樹脂30も含む)のうち、比重の大きいカチオン交換樹脂28が樹脂層の下部に沈降する。そして、再度、混合樹脂30が混床式樹脂充填塔10の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う。この時の逆洗では、前段の逆洗の停止の際に、カチオン交換樹脂28は樹脂層の下部に移動しているため、充填塔の塔頂部でパックされる樹脂は、カチオン交換樹脂28の比率が小さく、アニオン交換樹脂26の比率が大きくなっている。したがって、本実施形態では、充填塔の上部にアニオン交換樹脂層、充填塔の下部にカチオン交換樹脂層に分離させることができる。
【0027】
通常、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28とを分離させるためには、混合樹脂30の分離が充分に可能な展開率を50%に設定し、充填塔の有効塔高を静置時の混合樹脂30の層高と混合樹脂30の分離が充分に可能な展開率分の高さとの和以上にする必要がある。すなわち、通常、充填塔の有効塔高は静置時の混合樹脂30の層高に対して1.5倍に設定されるが、このような有効塔高を有する充填塔を用いる場合には、設備コストが増大するという問題がある。しかし、本実施形態では、混床式樹脂充填塔10の有効塔高が静置時の混合樹脂30の層高に対して1.2〜1.5倍未満の範囲でも、逆洗工程Aと逆洗工程Bとの組み合わせや混合樹脂30が充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程を間欠的に実施することにより、アニオン交換樹脂26とカチオン交換樹脂28との分離性を充分に確保することができるため、上記範囲の有効塔高を有する小さい充填塔を用いることが可能となり、設備コストの増大を抑制することができる。
【0028】
<再生工程>
配管20eのバルブ及び配管20gのバルブを閉じ、ポンプ22bを稼働させ、また、配管20cのバルブを開いて、水酸化ナトリウムを配管20c及び配管20aを通して混床式樹脂充填塔10内へ送液する。水酸化ナトリウムは上層のアニオン交換樹脂26と接触し、アニオン交換樹脂26が再生処理され、再生廃液がコレクタ24から配管20hへ送られ、系外へ排出される。なお、本実施形態では、アニオン交換樹脂26はOH形となる。また、配管20dのバルブを開いて、ポンプ22cを稼働させ、塩酸を配管20d及び配管20bを通して混床式樹脂充填塔10内へ送液する。塩酸は下層のカチオン交換樹脂28と接触し、カチオン交換樹脂28が再生され、再生廃液がコレクタ24から配管20hへ送られ、系外へ排出される。なお、本実施形態では、カチオン交換樹脂28はH形となる。なお、水酸化ナトリウム及び塩酸の送液は、別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0029】
<混合工程>
配管20cのバルブ、配管20dのバルブ及び配管20hのバルブを閉じ、配管20iのバルブ及び配管20jのバルブを開け、混床式樹脂充填塔10内の水位調整を実施する(例えば樹脂面+10cm)。次に、配管20fのバルブ及び配管20gのバルブを開け、配管20f及び配管20bを通して混床式樹脂充填塔10内に空気を導入する。空気の供給は配管20fにエアコンプレッサ等を設置する等して行われる。混床式樹脂充填塔10内に導入された空気により、アニオン交換樹脂26及びカチオン交換樹脂28が混合され(以下、エアスクラビングと呼ぶ場合がある)、混合樹脂30(混合樹脂層)が形成される。その後、再度上記説明した脱塩処理工程が行われる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
強酸性カチオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、アーバンライトIR120B)210mLと強塩基性アニオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、アーバンライトIRA−410)420mLを樹脂カラム(サイズ:φ32.6mm×1000mmH)に投入し、エアスクラビングを行って、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを混合し、混合樹脂層を形成した。エアスクラビング後の混合樹脂層の層高は、77cmであった。なお、この混合樹脂の層高及び樹脂カラムのサイズでは、展開率30%以上の線流速(LV)で逆洗を行うと、混合樹脂が樹脂カラムの天井に達して、上部の混合樹脂の一部がパックされることを事前の試験で確認した。
【0032】
逆洗水(水温:23℃)を樹脂カラムの下部から上向流で通水し、樹脂カラムの上部から排出して、逆洗による混合樹脂の分離工程を実施した。実施例1における分離工程では、線流速(LV)5m/h×10分で逆洗を行った(逆洗工程A)後、線流速(LV)12m/h×5分で逆洗を行った(逆洗工程B)。実施例1での逆洗工程Aの展開率は27%であり、逆洗工程Bの展開率は75%である。分離工程後、2分静置及びタッピングを行い、樹脂カラム上部のアニオン交換樹脂層高と樹脂カラム下部のカチオン交換樹脂層高を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0033】
(実施例2)
実施例2は、分離工程が線流速(LV)12m/h×5分で逆洗を行った後、2分間逆洗水の通水を停止し、また、線流速(LV)12m/h×5分で逆洗を行い、逆洗水の通水を停止したものであり、それ以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。実施例2での逆洗時の展開率は75%である。分離工程後、2分静置及びタッピングを行い、樹脂カラム上部のアニオン交換樹脂層高と樹脂カラム下部のカチオン交換樹脂層高を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0034】
(比較例1)
比較例1は、分離工程が線流速(LV)12m/h×15分で逆洗を行ったものであり、それ以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。比較例1での逆洗時の展開率は75%である。分離工程後、2分静置及びタッピングを行い、樹脂カラム上部のアニオン交換樹脂層高と樹脂カラム下部のカチオン交換樹脂層高を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0035】
(比較例2)
比較例2は、分離工程が線流速(LV)5m/h×22分で逆洗を行ったものであり、それ以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。比較例2での逆洗時の展開率は27%である。分離工程後、2分静置及びタッピングを行い、樹脂カラム上部のアニオン交換樹脂層高と樹脂カラム下部のカチオン交換樹脂層高を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0036】
【表1】

【0037】
全樹脂層高が77cmであり、また、樹脂体積比率が2:1(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂)であるから、アニオン交換樹脂層とカチオン交換樹脂層とが完全に分離すると、アニオン交換樹脂層高は51.3cm、カチオン交換樹脂層高は25.7cmとなる。実施例1では、アニオン交換樹脂層高とカチオン交換樹脂層高が、それぞれの樹脂体積比率と同じく、ほぼ2:1(アニオン交換樹脂層高:カチオン交換樹脂層高)に分離されていることから、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が良好に分離されていることがわかった。また、実施例2では、上記のアニオン交換樹脂層とカチオン交換樹脂層とが完全に分離した時の各層高と比較すると、若干カチオン交換樹脂がアニオン交換樹脂層側に混入していると判断できるが、その混入率は1%未満であり、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が良好に分離されたと云える。一方、比較例1及び比較例2では、上記のアニオン交換樹脂層とカチオン交換樹脂層とが完全に分離した時の各層高と比較すると、比較例1の場合にはカチオン交換樹脂がアニオン交換樹脂層側にかなり混入していると判断でき、その混入率は14%以上であった。また、比較例2の場合にはアニオン交換樹脂がカチオン交換樹脂層にかなり混入していると判断でき、その混入率は7%以上であった。このように、比較例1及び2では、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを良好に分離させることが困難であるとわかった。
【符号の説明】
【0038】
1 脱塩処理装置、10 混床式樹脂充填塔、12 原水槽、14 水酸化ナトリウム貯槽、16 塩酸貯槽、18 処理水槽、20a〜20j 配管、22a〜22d ポンプ、24 コレクタ、26 アニオン交換樹脂、28 カチオン交換樹脂、30 混合樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、
前記混合樹脂が流動し、前記混合樹脂が前記混床式樹脂充填塔の塔頂部に達しない線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Aと、前記混合樹脂が前記混床式樹脂充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程Bと、を組み合わせて、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離することを特徴とする混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法。
【請求項2】
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、
前記混合樹脂が前記混床式樹脂充填塔の塔頂部に達する線流速(LV)で逆洗を行う逆洗工程を間欠的に行い、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離することを特徴とする混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、前記混床式樹脂充填塔の有効塔高は、前記混合樹脂の層高に対して1.2〜1.5倍の範囲であることを特徴とする混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法。
【請求項4】
請求項1記載の混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法であって、前記逆洗工程Aを行った後、前記逆洗工程Bを行い、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層に分離することを特徴とする混床式樹脂充填塔の混合樹脂の分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−86123(P2012−86123A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233396(P2010−233396)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)