説明

清掃具及びその製造方法

【課題】軽量かつ安価で耐久性にも勝れ、かつ廃棄処分も容易であるといったように、木製の柄と合成樹脂製の柄との利点を併せ持つ、新規な素材からなる柄を備えた清掃具を提供する。
【解決手段】ごみ又は汚れを除去するための清掃用ヘッド3,3Aと、この清掃用ヘッド3,3Aに取り付けた柄4,4Aとからなる清掃具において、上記柄4,4Aを、セルロース繊維を含有する植物粉末11を合成樹脂12中に均等に練り込んだ植物−樹脂複合材料によって棒状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箒やモップなどの清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみ又は汚れを除去するための箒やモップなどの清掃具は、清掃用ヘッドと、該ヘッドに取り付けられた柄とからなっていて、該柄が、木棒や合成樹脂製パイプあるいはアルミニウム製パイプなどで形成されている。
このうち木製の柄は、軽くて手触りも良いため使い易く、しかも、焼却によって簡単に廃棄することができる利点があるが、吸水性があるため、水を含んで腐ったり黴が生えたりし易く、耐久性に難点がある。
また、合成樹脂製の柄は、木棒より安価で、太さや長さの選択が自由であるといった利点があるものの、木棒よりも重量が重く、軽量化のために肉厚を薄くすると強度が低下し易い。しかも、焼却することができないため廃棄も難しい。
更に、アルミニウム製の柄は、比較的軽くて耐久性にも勝れるため、長期間使用し続けることができる耐用期間の長い清掃具の柄として適しているが、木棒や合成樹脂等に比べて高価であることを考慮に入れると、箒のような比較的耐用期間の短い清掃具の柄として必ずしも適しているとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の目的は、軽量かつ安価で耐久性にも勝れ、かつ廃棄処分も容易であるといったように、木製の柄と合成樹脂製の柄との利点を併せ持つ、新規な素材からなる柄を備えた清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ごみ又は汚れを除去するための清掃用ヘッドと、該ヘッドに取り付けられた柄とからなり、該柄が、セルロース繊維を含有する植物粉末を合成樹脂中に均等に練り込んだ植物−樹脂複合材料によって棒状に形成されていることを特徴とする清掃具が提供される。
【0005】
また、本発明によれば、セルロース繊維を含有する植物粉末を溶融した熱可塑性合成樹脂中に均等に混合し、造粒することにより、植物−樹脂複合材料のペレットを形成する工程、上記ペレットを押出成形機にかけ、加熱、溶融させて連続した棒状に押出成形することにより、植物−樹脂複合材料からなる棒材を形成する工程、上記棒材を必要な寸法に切断して仕上げ加工を施すことにより柄を形成する工程、上記柄を清掃用ヘッドに取り付ける工程、を有することを特徴とする清掃具の製造方法が提供される。
【0006】
本発明において好ましくは、上記植物粉末と合成樹脂との配合割合を、重量比で30:70(%)〜70:30(%)とすることである。
また、上記植物粉末として、木材又は籾殻の粉末を使用することができる。
更に、上記植物−樹脂複合材料中に無水マレイン酸変性ポリプロピレンを添加することが望ましい。
本発明においては、上記柄が、植物−樹脂複合材料からなる中空の外筒の内部に補強用の心材を介在させたものであっても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、清掃具の柄を、セルロース繊維を含有する植物粉末を合成樹脂中に均等に練り込んだ植物−樹脂複合材料によって形成したことにより、該柄を、軽量かつ安価で耐久性にも勝れ、木材などど同様に焼却による廃棄処分も可能であるといったように、木製の柄の利点と合成樹脂製の柄の利点とを兼ね備えたものとして構成することが可能となる。しかも、上記植物粉末の材料として、建築物の廃材や間伐材などの木材、穀物の外皮等を使用し、また、合成樹脂としてリサイクル品を使用することが可能であるため、資源の有効再利用が促進されて省資源に役立つだけでなく、森林伐採やそれに伴う森林破壊を防いで環境破壊防止あるいは環境汚染防止等にもつながるという、非常に勝れた利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る清掃具の第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の清掃具1は箒である。この箒1は、ごみを掃いて除去するための清掃用ヘッド3と、該ヘッド3に取り付けられた柄4とからなっている。
【0009】
上記清掃用ヘッド3は、椰子の葉脈や箒草等の植物繊維かあるいは合成樹脂繊維5などによって形成された穂体6と、この穂体6の基端部に取り付けられた略三角形状をした中空のカバー7とで構成されている。
上記穂体6は、多数の上記繊維5を扁平なプレート状に並べて矩形の繊維プレートを形成し、この繊維プレートを、長さ方向の中央部を折曲部として二つに折り重ねると共に、該折曲部側から穂先側に向けて穂体幅Wを次第に先広がりをなすように広げ、その状態で針金や糸等の止着部材8で止着することにより、穂先の広がった略台形の形に形成したものである。
【0010】
また、上記カバー7は、合成樹脂によって扁平な三角形状に形成され、下面に開口部を有しており、この開口部を通じて穂体6の上端部を該カバー7の内部に挿入し、該カバー7の側面から複数のステープル9を打設することにより、このステープル9でこれらの穂体6とカバー7とが相互に固定されている。
上記カバー7の上端部には、パイプ状をした中空の柄取付部7aが形成され、この柄取付部7a内に上記柄4の先端を差し込んでステープルや接着剤等で固定することにより、該柄4が取り付けられている。
【0011】
上記柄4は、図2に示すように、中空の円筒状をした棒状の部材であって、セルロース繊維を含有する植物粉末11を合成樹脂12中に均等に練り込んだ植物−樹脂複合材料によって形成されている。
【0012】
上記植物粉末11の材料としては、セルロースを多く含んでいるものであればどのような植物材料であっても良いが、簡単かつ安価に入手することが可能で、省資源と環境破壊防止あるいは環境汚染防止につながるものとして、建築物の廃材や間伐材などの木材、穀物の外皮特に籾米の外皮である籾殻などが好適に使用される。そして、このような植物材料が、製粉機に掛けられることにより20〜60メッシュ、好ましくは30〜50メッシュ、より好ましくは40メッシュ程度の植物粉末11とされ、この植物粉末11が合成樹脂12中に均一に練り込まれている。
【0013】
また、上記合成樹脂12の種類は、熱可塑性のものであれば特に制限はなく、例えばABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などが用いられる。この合成樹脂12としても、省資源と環境汚染防止等の観点から、リサイクル品を使用することが望ましい。
【0014】
上記柄4は、次の方法により製造することができる。ここでは、植物材料として籾殻を使用した場合が示されている。
先ず、上記籾殻を篩に掛け、混入した異物や規格外品を取り除くことにより、使用可能な籾殻だけを選別する。
次に、選別された籾殻を製粉機で粉砕し、40メッシュ程度の上記植物粉末11を製造する。
【0015】
続いて、溶融した熱可塑性の合成樹脂12中に上記植物粉末11を混合し、良く撹拌して均一に分散させることにより植物−樹脂複合材料を形成し、この複合材料を造粒機に掛けて造粒することにより、図3に示すようなペレット13を形成する。このペレット13は、直径又は一辺が2〜5mm程度の球形又は短円柱形あるいは短角柱形をしたもので、一般の合成樹脂の押出成形に用いられるペレットと同様のものである。
【0016】
また、上記植物粉末11と合成樹脂12との好ましい配合割合は、重量比で30:70(%)〜70:30(%)の範囲である。この場合、上記合成樹脂12中に、調整材として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)を重量比で0.5〜5%、好ましくは2〜3%程度含ませておくこともできる。このMAPPは、植物−樹脂複合材の硬さを高める働きをするもので、このMAPPの添加により、植物−樹脂複合材からなる柄4に清掃具として必要な形状と強度とを保持させることができるものである。
上記MAPPは、上記合成樹脂12の配合割合に応じてその添加量を変えても良いが、合成樹脂12の配合割合に関係なく常に一定割合(例えば2.5%)を添加しても良い。例えば、合成樹脂12中に2.5%のMAPPを含ませるとすると、植物粉末11と合成樹脂基材(MAPPを除いたもの)12とMAPPとの好ましい配合割合(重量比)は、30:67.5:2.5(%)〜70:27.5:2.5(%)ということになる。
【0017】
続いて、上記ペレット13を押出成形機に掛け、加熱、溶融させて連続した棒状に押出成形することにより、図4に示すような、植物−樹脂複合材料からなる棒材14を形成する。
そして、上記棒材14を必要な長さに切断し、表面をサンディング加工で滑らかに仕上げたり、塗装を施すなどの仕上げ加工を施すことにより、上記柄4を形成し、この柄4を上記清掃用ヘッド3に取り付けることにより上記箒1が完成する。
【0018】
かくして形成された箒1においては、上記柄4が植物−樹脂複合材料で形成されているため、木製の柄の利点と合成樹脂製の柄の利点とを併せ持つことになり、使い易いという特徴がある。即ち、上記柄4は、木製の柄のように軽くて手触りが良く、また、合成樹脂製の柄と同様に吸水性がないため、水を含んで腐ったり黴が生えたりすることがなく、耐久性に勝れ、木材と同様に焼却が可能であるため廃棄処分も簡単である。しかも、アルミニウムなどの金属製の柄に比べて安価に得ることができる。
更に、上記植物粉末11の材料として、建築物の廃材や間伐材などの木材、穀物の外皮等を使用し、また、合成樹脂12としてリサイクル品を使用することにより、資源の有効再利用が促進されて省資源に役立つだけでなく、森林伐採やそれに伴う森林破壊を防いで環境破壊防止あるいは環境汚染防止等にもつながるものである。
【0019】
図5は本発明に係る清掃具の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態の清掃具1Aは、モップである。このモップ1Aは、ごみ又は汚れを拭き取るための清掃用ヘッド3Aと、該ヘッドに取り付けられた柄4Aとで構成されている。
上記清掃用ヘッド3Aは、合成樹脂からなる矩形のヘッド基板20と、このヘッド基板20の下面に接着されたスポンジ板21と、このスポンジ板21を覆うようにヘッド基板20の下面に装着された着脱自在の不織布製の清掃布22とを有するもので、上記ヘッド基板20の上面中央位置に設けられた連結部20aに、上記柄4Aが、上記ヘッド基板20の長手方向の軸線と短手方向の軸線とを中心にして回動自在に連結されることにより、清掃用ヘッド3Aに対してあらゆる方向に傾動自在となっている。
また、上記柄4Aは、上記第1実施形態の柄4と同様に植物−樹脂複合材料からなる中空の円筒状をしたもので、該柄4と同じ方法で製造されるものである。
【0020】
なお、上記各実施形態においては、上記柄4,4Aが中空の円筒状をしているが、該柄4,4Aは必ずしも中空である必要はなく、非中空であっても良く、また、円筒形あるいは円柱形以外の角形の断面形状を有するものであっても構わない。
【0021】
更には、図6及び図7に示すように、上記柄4,4Aが、植物−樹脂複合材料からなる中空の外筒4aの内部に補強用の心材4bを介在させた構成であっても良い。図6に示す柄4,4Aにおいては、上記心材4bとして、竹やアルミニウム製パイプなどの中空の部材が用いられ、図7に示す柄4,4Aにおいては、上記心材4bとして、木棒などの非中空の部材が用いられている。従って、上記心材4bは、外筒4aとは異なる素材、即ち、植物−樹脂複合材料以外の素材からなるものである。
【0022】
上記心材4b入りの柄4,4Aは、上記植物−樹脂複合材料で外筒4aを押出成形する際に、その中心に上記心材4bを配置し、この心材4bの回りに外筒4a押出成形することによって製造することができる。しかし、成形した外筒4a内にあとから心材4bを挿入して接着剤等で固定することにより製造することもできる。
なお、上記心材4bとしてアルミニウム製パイプを用いる場合には、アルミニウム製パイプで柄全体を形成する場合に比べ、小径で薄肉のパイプを用いることができるため、それに要するコストは当然安くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る清掃具の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】図1におけるA−A線での断面図である。
【図3】ペレットの一例を示す斜視図である。
【図4】図3のペレットを用いて押出成形された棒材の一部を示す部分断面図である。
【図5】本発明に係る清掃具の第2実施形態を示す斜視図である。
【図6】柄の異なる構成例を示す断面図である。
【図7】柄の更に異なる構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,1A 清掃具
3,3A 清掃用ヘッド
4,4A 柄
4a 外筒
4b 心材
11 植物粉末
12 合成樹脂
13 ペレット
14 棒材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ又は汚れを除去するための清掃用ヘッドと、該ヘッドに取り付けられた柄とからなり、該柄が、セルロース繊維を含有する植物粉末を合成樹脂中に均等に練り込んだ植物−樹脂複合材料によって棒状に形成されていることを特徴とする清掃具。
【請求項2】
上記植物粉末と合成樹脂との配合割合が重量比で30:70(%)〜70:30(%)であることを特徴とする請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
上記植物粉末が木材又は籾殻の粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃具。
【請求項4】
上記植物−樹脂複合材料中に無水マレイン酸変性ポリプロピレンが添加されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の清掃具。
【請求項5】
上記柄が、植物−樹脂複合材料からなる中空の外筒と、この外筒内に挿入、固定された補強用の心材とからなることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の清掃具。
【請求項6】
セルロース繊維を含有する植物粉末を、溶融した熱可塑性合成樹脂中に均等に混合し、造粒することにより、植物−樹脂複合材料のペレットを形成する工程、
上記ペレットを押出成形機にかけ、加熱、溶融させて連続した棒状に押出成形することにより、植物−樹脂複合材料からなる棒材を形成する工程、
上記棒材を必要な寸法に切断して仕上げ加工を施すことにより柄を形成する工程、
上記柄を清掃用ヘッドに取り付ける工程、
を有することを特徴とする清掃具の製造方法。
【請求項7】
補強用の心材を内部に介在させる工程を含むことをことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
上記植物粉末と合成樹脂とを、重量比で30:70(%)〜70:30(%)の割合に配合することを特徴とする請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記植物粉末として木材又は籾殻の粉末を用いることを特徴とすることを特徴とする請求項6から8の何れかに記載の製造方法。
【請求項10】
上記植物−樹脂複合材料中に無水マレイン酸変性ポリプロピレンを添加することを特徴とする請求項6から9の何れかに記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−106504(P2009−106504A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281732(P2007−281732)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000101363)アズマ工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】