説明

清浄化剤

【課題】空間のVOC、殺虫剤等の汚染物や空気汚染物が付着・吸着した物体表面や廃棄食品の堆肥化工場、養鶏場、生ゴム工場等の臭気等に噴霧し、化学包接作用で捕接し粒径を増大させ沈降させると共に粒子内で化学反応により解毒することにより清浄化する。
【解決手段】極限粘度法で求めた平均分子量が5×10 以上で、直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミドの0.0001〜0.01重量%の水溶液あるいは水分散液(A)とポリ(ポリメチレンビグアナイド)塩酸塩(B)と、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物(C)とを含んでなる清浄化剤、これを用いた汚染気体又は汚染物体等の清浄化方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄化剤及び清浄化方法に関するものであり、特に生活・作業空間の空気、その他気体及び物体表面に付着・吸着した分子状、エアロゾル状、油性の粘着状の硬化皮膜等で吸入や接触により人畜に致死性、急性、亜急性、慢性、一過性の健康障害、不快感を与え、放出、漏洩、蓄積等により環境汚染等を起こす可能性のある汚染物を系外に分離し除去するための清浄化剤及びこれを用いた汚染気体の清浄化法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚染気体や汚染物が付着する物体表面の清浄化には、汚染物の種類、粒径、気体の濃度・運動性・流速、親水性・疎水性、沸点、反応性等に応じて種々の方法が採用されてきた。
しかし、それぞれ方法には課題や限界があった。
これらの方法の主なものを下記(1)〜(15)に列記する。
(1)燃焼法;大工場のVOCを含む排気を燃焼して排気する方法で、直接燃焼法、触媒燃焼法、蓄積燃焼法等が採用されてきたが、大容量の排気中の低濃度の有機溶剤のような汚染物を除去するためには大量のLPG等の燃料を消費するため、地球温暖化の原因となる高濃度の炭酸ガスを排出したり、油性塗料やグラビアインキのミスト等は完全燃焼できず、排気が強い悪臭を有するため本来不必要な排気の消臭処理が必要な場合が多かった。(2)多孔性物質吸着法;活性炭やゼオライト等の多孔性吸着剤層に汚染物を吸着させる方法で、分子状汚染物は確実に除去することができ、破過したこれら吸着剤は、加熱蒸気などで汚染物を追い出し再生して10回程度繰り返し使用されているが、追い出した汚染物を外部に排出せず回収する技術は未確立であった。また汚染気体が粒径の大きいタール類や塗料ミスト等の場合は、吸着剤が目詰まりして再生不可能である欠点があった。ゼオライトを用いた場合も同じ欠点があるため、急速に破過・失効する欠点があった。
【0003】
(3)光触媒法;酸化チタンが塗装された面に光を照射する方法で、種々の具体的方法が提案されているが、汚染気体の分解作用が極めて緩慢で、触媒面が汚れると効果が低下する欠点があり、実用化できる用途は限られている。
(4)オゾン酸化法;水道水の殺菌や消臭には非常に適した方法であり、悪臭の充満する空間の清浄化などに用いると清浄化効果は即効的であるが、オゾンには強い毒性があり、工場の広範な排気などには不適であり、使用場所や時間が限られ、室内器物の損傷が起こる欠点があった。
(5)既存の集塵法;重く緻密なキャンバスを用い、重力、遠心力、慣性力等を利用するバックフィルター法、静電吸引力を用いる電気集塵法、多孔性粉体を利用する濾過集塵法等が広く採用されている。これらの方法は、粒径0.01μm以上の粘着性のない粉塵などには有効であるが、粒径がこれ以下のウイルス、粘着性の煙草の煙等のエアロゾル、気体状の汚染物等の除去には役に立たなかった。
(6)香料・芳香剤による方法;不快な悪臭、化学品の刺激臭を芳香剤で感覚的に緩和するマスキング法がエアロゾル型スプレー缶やプラスチック製ポンプにより広く実施されている。これら製品の空気汚染物の除塵効果や消臭能力は、科学的に証明または説明できていないものが多く、ホテル客室内で全表面に吸着して、微量ずつ室内に拡散する香水臭は、多くの客が忌避する。香水臭の他に、葉巻臭、線香臭、低級脂肪酸類が主成分のワキガ臭、体臭、ホルムアルデヒド、殺虫剤、塗料等のVOC等の完全消臭が不可能とされる臭気には、無効であった。
【0004】
(7)植物抽出物類による方法;カテキン系あるいはフラボノイド系と称する植物抽出物を含む市販液状品による方法がある。緑茶等カテキン系のものは、生鮮食品の消臭に有効なものがあるが、用途が限られ、複雑な組成の食品廃棄物の分解臭等には効果がなく、これらの使用による複合臭が二次悪臭公害を引き起こす例も多い。
(8)木酢・竹酢による方法;木や竹を乾留して木炭や竹炭を得る時の副産物の木酢及び竹酢を用いて消臭する方法である。この木酢及び竹酢は環境にやさしい万能消臭剤や健康飲料として販売される場合もあるが、これらはメタノール、ギ酸その他低級脂肪酸類、低級アルデヒド類、複雑な組成のタール類等の有害成分、変異原性成分、発癌性が疑われる成分が含まれ、かつこれらは煙草臭等の室内消臭に用いても効果がない。かえって建材に塗布した場合には、これらから発生する刺激臭を脱臭する必要がある場合もある。
(9)既存の水性洗浄液によるスクラバー洗浄法;硫酸、苛性ソーダ、塩素酸化物類、アスコルビン酸と第一鉄塩との複合物、亜硫酸塩等が広く用いられている。これらは、単純な組成で化学反応性のある気体汚染物には有効であるが、酸性、塩基性あるいは酸化性、還元性などの混合悪臭気体や、上記したエアロゾル状の汚染物には、1種類の化合物では清浄化できない。またアンモニア水溶液を希硫酸と常温で混合した場合の反応率は100%であるが、従来型のスクラバーで、洗浄剤の希硫酸中とアンモニアガスと接触させても、清浄化率が50%以下になる場合も多く、この洗浄装置とその運転技術も未確立である。
【0005】
(10)排気ダクト内へ低分子の水性薬液を噴霧する方法;上記(9)と同様の水溶液を排気ダクト内に噴霧しても、気液接触率が不十分で、反応生成の結晶がダクト内に堆積して、気流の通過が困難となる場合が多かった。この場合、エアロゾルは、気体のような運動性がないため、噴霧ミストとの衝突確率が低く、好結果が得られる場合は少なかった。
(11)汚染された物体表面を洗浄するための洗浄型清浄化剤とこれを用いた清浄化方法;表面に種々の汚染物が付着又は密着しているため、随時又は定期的に下記のような薬剤と方法で清拭、洗浄などにより清浄化されている。
A)エアーコンディショナー(以下空調機という):アルミニウム製熱交換機とその周辺部に油煙、油膜、煙草のヤニ、かび菌、細菌、ダニとその死骸、砂塵、体臭等の複合臭と有害エアロゾル類とで汚染された結果、これら汚染物を室内に放出し、熱交換率が低下し電力を消費している場合が多い。近年、このような空調機の定期洗浄業務が普及しつつあるが、現在好評を得ている洗浄法の1例は、洗浄液が通電部分に触れず、機内に漏れないプラスチック袋で覆って養生し、その開口部から3種類の洗浄液を機内に順次加圧噴射して洗浄する。この第1回の洗浄液は、苛性ソーダの希薄水溶液を用い、第2回は希薄リン酸水溶液を用い、第3回は水で洗浄するものである。
しかしこの空調機を用いる方法は、中華料理店、洋食店等の熱交換器全体に上記汚染物と酸化した強固な油膜が形成(以下油汚れという)しているため、これらの洗浄は不可能であった。
【0006】
B)業務用大型空調機のフィルター:ポリエステル繊維の織物や不織布製のフィルターは、定期的に新品と交換され、従来は汚染されたフィルターは廃棄される場合が多かった。
しかし、近年の廃棄物規制の強化により洗浄して繰り返し使用する必要が生じてきた。この洗浄剤は、ナトリウム、カリウム等の水酸化物や炭酸塩等に界面活性剤を加えた高pHの劇物・毒物相当の水溶液で洗浄し水洗する方法が広く実施されているが、油煙、油脂硬化物、かび菌の菌糸、煙草臭の除去等が不完全で洗浄後も悪臭がフィルターに残り、水洗後の油煙や砂塵等の再汚染による黒ずんだ外観、強アルカリ性洗浄液によるポリエステル繊維の溶解、廃液放流時の中和と河川での発泡防止の処置が課題であった。
C)各種繊維製品:これの洗濯には、酵素、過炭酸ソーダなどの酸化剤、ビルダー、界面活性剤、その他の助剤等を配合した粉末状や液状の洗剤が使用されてきた。これらの通常の洗剤により解決していない課題は、商業洗濯の一般の衣類や家庭や介護施設でのオムツや衣類の洗濯・水濯ぎ・遠心脱水後のアイロンがけ時や仕上げ品保管中に発生する強い悪臭、シャツ、ズボン、下着類のワキガ臭とそのシミ、淡色のズボンや下着類の尿による黄色のシミ等の完全除去であった。
D)室内の汚染気体:住宅、事務室、商店、飲食店、宿泊施設等で使用される壁紙類、木質の壁紙類、木質の壁面、化粧合板、木質隔壁材、たたみ、ガラス戸や窓などの表面、床板、天井板、厨房、調理台、浴室内等では、上記した種々の汚染物が付着・吸着しており、室内にこれらの汚染気体を徐放し、さらにたたみ用の殺虫剤、床下に散布したシロアリ駆除剤、乾燥中の塗料等からVOCやSPMが室内に拡散して、居住者にいわゆるシックハウス症候群を発症させる。さらに、上記空調機と同様の油脂複合汚染物が固着した換気扇や内装材を清拭によって完全に美観が回復できる洗浄液が未開発であったため、空調機や内装材そのものを新しいものに交換する必要があったが、交換しても室内全体に染み込んだ悪臭の除去はできなかった。
【0007】
E)液体製品製造ラインの洗浄:飲料や液状調味料製品は、自動充填機により、金属缶、ガラス瓶、耐水性紙容器等の自動ラインで充填されているが、製品が多種類で、季節による品種変更、充填能力に対して各製品の生産ロットが小さいことが多く、同一ラインを使用するため、頻繁な該ラインの洗浄が行われる。この場合、前回の製品が微量でもライン内に残存して次回の製品に混入すると、その製品の味覚と芳香が損なわれて商品価値がなくなる。その微量残存物を除去するために過酷な洗浄が行われる。代表的な例では、6工程の洗浄に要するライン内製品要領の6倍容量の水道水、これを85〜90℃に加熱する熱量と1洗浄工程に3時間の作業時間が必要であるとしている。
しかし、リンゴや桃のジュース、スラリー状の柑橘類を含む調味料等は固有臭を有しこの脱臭は困難であり、完全に脱臭するには、同じ工程を3回以上繰り返すことが多いため、1回の洗浄で確実に脱臭できる洗浄剤や洗浄方法が求められている。
F)電子基盤製造、自動車修理、機械修理、ドライクリーニングなどの工場では、油脂や石油系の親油性と親水性の汚染物を製品、部品、衣類等から除去するため、現在でも引火しやすいガソリンを含む炭化水素系溶剤、苛性ソーダ、界面活性剤の水性洗剤等が使用されているが、低BOD・CODで安全で効果の優れた水性洗浄剤の開発が待望されている。
【0008】
(12)浮遊ウイルスや浮遊菌対策;鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)、その他の病原性ウイルスに対する防疫技術は確立されておらず、大規模養鶏場で少数の感染した鶏を発見すると、数万羽の屠殺処分が行われている。低毒性で効率的にウイルスを失活できる鶏舎とその周辺の消毒薬と消毒技術が求められている。病原性細菌やウイルスによる病院や介護施設内の院内感染の防止も必要で、その防止技術が求められている。浮遊胞子による真菌感染症に対しても消毒・防止の必要性を提唱する専門医が多いが、現在ほとんどその対策が取られていない。
(13)ウイルス感染防止用マスク;ウイルス感染症の大流行(pandemic)期には、通勤者、乗客、外出者はウイルス吸入防止マスクの着用が有効とされているが、軍事用や産業用防毒マスクのように高性能で、通常の綿ガーゼ製のマスクのような軽量で、着用が容易なものはまだ開発されていない。
【0009】
(14)公知文献;
両性及びアルカノールアミン及び中和したアニオン性ポリアクリルアミドの希薄水溶液を空気中に噴霧することにより、気体状及びエアロゾル状の汚染物を除去する技術が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。また有機及び/又は無機洗浄剤とアクリルアミドやその他単量体との共重合体や誘導体で、水溶液は、凝集性を示し、イオン性がアニオン、カチオン、両性のいずれかで、分子量が1,000,000以上の高分子化合物を必須成分とする洗浄剤に関する技術が提案されている(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、希薄水溶液で、繊維など被洗物の水性洗浄後のすすぎ時に発生する油煙や土壌などの土埃などの無機性の微粒子状汚れの被洗物への再汚染を防止することができ、繊維に結合し重合した油汚れも除去することができるとしている。また気体汚染物との化学反応性が100%の洗浄剤を使用し、紙質充填材を内臓したスクラバーによる気体の清浄化技術が提案されている(例えば特許文献5、6参照)。このスクラバーの気液接触率が100%になるように運転条件を調節すれば、清浄化率が100%になるとしている。
【特許文献1】特許第2132366号明細書
【特許文献2】特許第2134708号明細書
【特許文献3】特許第2775162号明細書
【特許文献4】特開平7−2163939号公報
【特許文献5】特開2001−149739号公報
【特許文献6】特開2004−313893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記(1)〜(14)に記載した技術では、下記の課題が未解決である。また前記公知文献に記載された技術によれば、気体汚染物の除去がある程度達成されるが、その清浄化の程度は低いというのが実情であった。 そこで、本発明は、従来の清浄化剤では効果がないか不十分であった次のような課題を解決することを目的とするものである。
【0011】
すなわち
(A)空間のVOC、殺虫剤、防ダニ剤、線香、ホルムアルデヒド等の汚染物:粉類、ハウスダスト、砂塵、菌の胞子等の浮遊微粉塵:生ごみ、香料、線香、香辛料、ワキガ、ニンニク、かび等の固有臭:浮遊細菌、泡沫状細菌、真菌、これらの胞子、ウイルス:火災臭、油煙、木材、ゴム、アスファルト、プラスチック等の熱分解時の固有臭:サリン、タブン、ソマン、ホスゲン、VX等の猛毒性の神経毒ガス等の空間の汚染物に噴霧し、化学包接作用で捕接し粒径を増大させ沈降させると共に粒子内で化学反応により解毒することにより清浄化する。(B)空気汚染物が付着・吸着した物体表面に、汚染物が室内全面に微粉塵状に付着している室内全面へ清浄化液を噴霧したり、ドライクリーニングの代わりに衣類を清拭し衣類に残留している悪臭を除去したり、悪臭を除去しカビ菌の増殖を防ぐため、清浄化液を噴霧し、場合によりブラシ摩擦、超音波振動により、物体表面を清浄化する。
【0012】
(C)喫煙室内、手入れの悪い中古住宅内、中華料理店や揚げ物店内、水産加工場内等の建造物内面や切削、押し出し成型、鍛造等工程油を使用する機械類製作:修理工場での汚染した金属やプラスチックの表面や汚染した繊維製品等の目視できる汚れが付着した物体表面に噴霧し汚れを洗浄により除去し清浄化する。
(D)高濃度のVOCを含む汚染空気に清浄化剤を噴霧し、VOCを捕捉・凝結・除去する。
(E)廃棄食品の堆肥化工場、養鶏場、生ゴム工場等の臭気:牛糞、木質廃材等のバイオガス:微粉塵とタール状汚染物が混合した排気のようなエアロゾル状汚染物及び分子状汚染物の混合した多成分を含む排気に直接噴霧するか又はダクト内で噴霧し、汚染物を清浄化する。
(F)食品工場等で発生する、リンゴや桃のジュース、スラリー状の柑橘類を含む調味料等の有する固有臭を確実に脱臭する。
(G)菌類及びウイルスの感染防止用の簡易マスクを装着することにより着用者の呼気を清浄化する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題について、鋭意検討した結果、特定の平均分子量を有するポリ(メタ)アクリルアミド水溶液あるいは水分散液と特定の除菌・殺菌剤と、溶剤としてモノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールを含む組成物を清浄化剤として用いると、上記課題を解決することができることを発見するに及んで、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、極限粘度法で求めた平均分子量が5×10 以上で、直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミドの0.0001〜0.01重量%水溶液あるいは水分散液(A)と式(1)で示されるポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(B)と、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールと炭素数が1〜3のアルコールとのエーテル及びこれらの炭素数が1〜3の脂肪酸とのエステル、グリシン及びタウリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物(C)とを含んでなる清浄化剤を提供するものである。
式(1)
[−(CH−NH−C(NH)−NH−C(NH)−NH−(CH−]HCl
(式中、m、nが2〜5の整数であり、pは5〜16の整数である。)
また本発明は、汚染物を含む気体に前記清浄化剤を噴霧するか、又は清浄化剤を洗浄液としてスクラバー洗浄することを特徴とする汚染気体の清浄化方法を提供するものである。
【0015】
また本発明は、汚染物が付着した物体表面に前記清浄化剤を噴霧し、汚染物を除去するか、又は前記清浄化剤を含む清拭材で洗浄する汚染物体の清浄化法を提供するものである。
さらに汚染物が付着した繊維製品を前記の清浄化剤に浸漬した後、機械的作用を加えてから、水洗し、乾燥するか、又は清浄化剤を含む清拭材で清拭し、乾燥する繊維製品の清浄化法を提供するものである。
また本発明は、汚染液に前記の清浄化剤を添加する汚染液の清浄化法を提供するものである。
また本発明は、液状の飲食物の充填ラインの稼動が終了した後、前記の清浄化剤を含む熱湯水又は冷水により前記パイプ及びタンク内を定置洗浄し、前記充填ライン中の配管パイプ及び充填タンク内の飲食物の残留成分を除去した後、さらに1回以上熱湯水又は冷水による洗浄・殺菌を行うことを特徴とする清浄化法を提供するものであり、またセルロース繊維織物及び/又は不織布に前記の清浄化剤を含浸し乾燥した材料を用いた簡易防塵マスクを作成し、前記簡易防塵マスクを着用者に装着し、着用者が呼気することにより呼気中の水蒸気によって吸湿性ゲルを形成することを特徴とする清浄化法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の清浄化剤を用いれば、以下の(1)〜(5)の効果を発揮するものである。
(1)気体中に浮遊する汚染物を捕捉し急速沈降させ、気体を清浄化することができる。
(2)ダクト内で汚染物を含む気流に噴霧することにより汚染物を沈降させ、気流を清浄化することができる。
(3)悪臭、有毒ガス発生物、汚れ等の汚染物が付着した物体表面に噴霧し清拭材で摩擦したり、物体表面に加圧噴射し水洗することにより物体表面を清浄化することができる。
(4)有害物、不快物を含む液体中に添加することにより解毒・消臭することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の清浄化剤は、極限粘度法で求めた平均分子量が5×10 以上で、直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミド(以下PAMという)水溶液あるいは水分散液(A)を含むものである。
本発明の清浄化剤中のPAMは、清浄化剤を均一に噴霧することが可能になるように、極限粘度法を用いて測定した値で5×10 以上の平均分子量を有するものである。
本発明に使用するPAMの平均分子量が極限粘度法を用いて測定した値で5×10 以上であれば、他の必須成分と強く抱合し、保水性ゲルの形成能が大きく、本発明の除菌・消臭等の清浄化効果を長期間持続することができる。平均分子量が5×10 未満では、凝集力が不足し、清浄化剤の機能及び持続性が低下する。平均分子量は、1.5×10以上であることが好ましい。平均分子量が5×10未満のものであっても、平均分子量1.0×10 以上のものに低率で混合することにより使用することができる。
本発明に使用するPAMは、水溶液あるいは水分散液の状態で存在しており、水溶液中で一部分散していても、水に分散しその一部が溶解した状態になっていてもよい。
【0018】
本発明の清浄化剤中のPAMは、0.0001〜0.01重量%の水溶液あるいは水分散液として使用するものである。0.0001重量%未満では、ポリ(メタ)アクリルアミドの効果が得られない。また0.01重量%を越えると、粘度が高すぎ、微細な噴霧ミストが得られない。
またPAM水溶液あるいは水分散液は、前記汚染気体の清浄化、浮遊微粉塵の沈降、汚染物体の清浄化、マスク等のゲル形成を伴う用途に用いる場合は、乾燥することにより固形分濃度が上昇し保水性ゲルを形成させることが好ましい。
また本発明のPAMは、分子中に陰性基および陽性基を有する両性荷電重合体であることが好ましい。清浄化剤を噴霧した場合、ミストから水と溶剤が蒸発することにより、陰性基と陽性基とが接近し分子内で造塩架橋し、水不溶性で水膨潤性ゲルとなり、清浄化剤中の除菌・殺菌剤を包摂しマイクロカプセル化するので、除菌・殺菌性及び消臭性を得ることができるとともに、長い持続性を確保することができる。
【0019】
陰性基としては、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、スルホアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、およびこれらのアルカリ塩等が挙げられる。また陽性基としては、例えば第4級アンモニウム塩、ジアルキルアミノアルキル、アミノメチルアクリルアミド、ビニルイミダゾリン等が挙げられる。これらの陰性基と陽性基の合計が例えば30モル%〜70%モルで、陰性基と陽性基との比率が等モルのものに汎用性があるため好ましい。本発明に使用するPAMは、分子中にその他非イオン性のアミド基、イミド等の官能基を有する。
【0020】
かかるPAMは、前記官能基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体を水中でラジカル重合することにより、得ることができる。
<陰性基を有する単量体の例>
1)カルボキシル基を有する単量体:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸あるいはこれらのモノアルキルエステル
2)スルホン酸基、スルホアルキル基、リン酸基あるいはホスホン酸基を有する単量体:ビニルスルホン酸、モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]アシドホスフェート、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−(メタ)アクリルアミドー2−メチルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸
【0021】
<陽性基を有する単量体の例>
3)ジアルキルアミノアルキル、アミノメチルアクリルアミド、ビニルイミダゾリンを有する単量体:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジアリルジメチルアミン、ジアリルジエチルアミン、ビニルベンジルメチルアミン
4)第4級アンモニウム塩構造を有する単量体:上記3)の陽性基を有する単量体に無機酸や有機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、コハク酸、マロン酸、DLリンゴ酸、アスコルビン酸、ほう化グルコン酸、ガラクトグルコン酸、グルコン酸、クエン酸、イソきっそう酸、乳酸、リン酸化乳酸、レブリン酸、プロピオン酸、その他の酸を一種以上を作用させて第四級アンモニウム塩構造を有する単量体としたもので、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-ヒドロキシー3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、あるいはこれらのサルファイド類
【0022】
また油性の汚染物質を吸着させるため、PAM分子中に特定の疎水性基を重量で2〜10%導入することが好ましい。かかる疎水性基としては、炭素数が4〜18のアルキル基、アラルキル基、フロロアルキル基、及びジアルキルシリル基、及び炭素数4〜16のシロキサン基等が挙げられる。これらの官能基を1種以上用いるものである。これらの疎水性基は2〜10重量%含まれることが好ましい。疎水性基の量がこの範囲にあれば前記の効果を発揮することができる。
かかる疎水性基を導入する方法としては、例えば1)エステル基中に炭素数が4〜18の疎水性のアルキル基等を有する(メタ)アクリル酸エステルを単量体として共重合する方法、2)ポリ(メタ)アクリルアミドのアミド基とアルデヒドとを反応させ、ヒドロキシメチル誘導体を生成させた後、アミン及び/又はアルコールとの反応(マンニッヒ反応)によるアルキル基の導入、あるいはポリ(メタ)アクリルアミドのアミドアミノ基にジアセトン基を導入した共重合体のケトン基とを反応させる方法、3)分子中のカルボキシル基を前記1)の共重合等の方法あるいはアミド基を加水分解することにより導入した後、このカルボキシル基をエステル化したり、アミド化する方法等が挙げられる。これらの方法に用いられる疎水性基を有する単量体は分子中にアルコール、アミン、二重結合等の官能基を1〜3個有するものが選ばれる。
【0023】
本発明に使用するPAM水溶液あるいは水分散液は、水溶性アクリル系共重合体を含むことが好ましい。かかる水溶性アクリル系共重合体は、カルボキシル基、スルホン酸基等の陰性基を有する共重合性単量体とその他の共重合性単量体をアンモニア、アミン、アルカノールアミン、水酸化ナトリウム等で中和し水溶化したものである。カルボキシル基を有する共重合性単量体、スルホン酸基を有する単量体としては、前記の陰性基を有する単量体が挙げられる。またその他の共重合性単量体としては、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等のエチレン性不飽和芳香族単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本発明に使用する水溶性アクリル系共重合体は、これらのうち、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。またこの水溶性アクリル系共重合体の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましい。
この水溶性アクリル系共重合体を含むことにより、汚染物を包含するゲル化粒子を効率よく被覆することができる。すなわち、いったん捕捉した汚染物を閉じ込め、再放出することを防ぐことができる。特に本発明のポリ(メタ)アクリルアミド水溶液あるいは水分散液(A)とポリ(ポリメチレンビグアナイド)塩酸塩(B)と化合物(C)とをダクト内で噴霧した後に、かかる水溶性アクリル系共重合体の水溶液を噴霧すると、効果を最大限に発揮することができ、好ましい方法である。
【0024】
また本発明に使用するPAM水溶液あるいは水分散液は水溶性無機塩を含むことが好ましい。かかる水溶性無機塩としては、例えば食塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸のアルカリ金属塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛等の硝酸のアルカリ金属塩、イオウ酸化物の塩、塩化カルシウム等が挙げられる。
イオン性高分子であるPAMは、隣接するイオン間の相互作用を最小限にするように配座を規制するが、イオンの解離は周囲のイオン濃度に依存し、イオン濃度が高いほど高分子化合物中のイオン基の解離度は抑えられ、イオン対として存在する。したがって、隣接するイオン間の相互作用が減少し、分子内でのゲル様集合体を形成しやすくなるため、水溶液中のイオン濃度を効率的に高めることができる。
【0025】
前記のとおり、本発明に使用するPAMは、両性荷電のPAMであることが好ましいが、さらにゲル形成能を高めるため、このPAMに前記ゲル化剤が併用することが好ましい。
かかるゲル化剤としては、例えばアジピン酸ジアンモニウム、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、アミノポリクリルアミド、硝酸マグネシウム、2価のカルボン酸、グリオキザ−ル、グルタルアルデヒド、前記ポリ(メタ)アクリルアミド水溶液と逆荷電を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらのゲル化剤の1種以上をPAMの固形分に対して1〜100重量%を水溶液状で添加するのが好ましいが、20〜80重量%の範囲で添加するのが、最も好ましい。
【0026】
次にPAM水溶液あるいは水分散液の具体例(イ)〜(ト)を示す。
(イ)(メタ)アクリルアミドと分子中にカルボキシル基及び/又はスルホン基、ならびにエチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体及びゲル化剤を含む陰性荷電水溶液あるいは水分散液。
(ロ)(メタ)アクリルアミドを必須成分とするポリ(メタ)アクリルアミド重合体又は共重合体中のアミド基を水中で加水分解し、これにゲル化剤を加えた陰性荷電水溶液あるいは水分散液。
(ハ)前記(イ)及び/又は(ロ)のポリ(メタ)アクリルアミド重合体又は共重合体中のアミド基の10〜90モル%をメチロ−ル化し、更にメチロ−ル化度と当量以上の炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコ−ル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基の1〜3置換アミン類;N−ビニ−ル−2−ピロリドン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、2−メチルピペラジン、ピペリジン、ピラジン、モルホリン及びその1〜3アルキル基置換体の1種以上を反応させて陽性基を導入したポリ(メタ)アクリルアミドの両性荷電水溶液あるいは水分散液、又はこれにゲル化剤を1種以上加えた両性荷電水溶液あるいは水分散液。
【0027】
(ニ)(メタ)アクリルアミドと分子中にカルボキシル基及び/若しくはスルホン基、ならびにエチレン性不飽和結合を有する単量体と分子中にカチオン基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体とに、不活性気体を吹き込み酸素を含まない気流中で、過酸化物の存在下に共重合して得た両性荷電の三元共重合体の水溶液あるいは水分散液、又はこれにゲル化剤を1種以上加えた両性荷電水溶液あるいは水分散液。
(ホ)(メタ)アクリルアミドと分子中にカチオン基とエチレン性不飽和基とを有する単量体とを反応させて陽性基を導入したポリ(メタ)アクリルアミドの陽性荷電水溶液あるいは水分散液にゲル化剤を1種以上加えた水溶液あるいは水分散液。
(ヘ)(メタ)アクリルアミドを必須成分とする無荷電の重合体又は共重合体に陽性基を導入した陽性荷電の重合体及び/又は共重合体の水溶液あるいは水分散液にゲル化剤を1種以上加えた水溶液あるいは水分散液。
【0028】
(ト)カルボキシル基を有する単量体50モル%以下とその他の重合性単量体とに、不活性ガスを吹き込み、過酸化物を含む水、アンモニア水、エチルアルコ−ル中で溶液重合した後、減圧下に未反応単量体とエチルアルコ−ルとを水蒸気蒸留で除き、更にアンモニア水を加えた水溶性の重合物を固形分換算で、(イ)〜(ホ)それぞれの固形分濃算で50重量%以下混合した水溶液あるいは水分散液、又はこれにゲル化剤を1種以上加えた水溶液あるいは水分散液。
【0029】
本発明の清浄化剤は、除菌・殺菌成分として、式(1)で示されるポリ(ポリメチレンビグアナイド)塩酸塩(以下PHMBという)(B)を含むものである。
[−(CH−NH−C(NH)−NH−C(NH)−NH−(CH−]HCl(1)
(式中、m、nが2〜5の整数であり、pは5〜16の整数である。)
本発明のPHMB(B)は、かぎ括弧で表される繰り返し単位を5〜16個有するものであるが、12個有することが好ましい。
また式(1)中のm及びnが3であるポリヘキサメチレングアナミド塩酸塩であることが好ましい。
前記繰返し単位の数が前記範囲であれば、広範囲の微生物に対し強い効力があり、不揮発性であり、低毒性であり、熱安定性に優れる。
式(1)で表されるPHMB(B)の具体例としては、アーチケミカルジャパン(株)の「Proxel lB」等が挙げられる。
本発明に使用する前記PHMB(B)は、清浄化剤中0.0001〜0.1重量%含まれるものであり、0.0001〜0.1重量%であることが好ましい。
またその他の除菌剤、殺菌剤、防カビ剤あるいは静菌剤として、本発明のPHMB(B)以外の化合物を用いることもできる。
【0030】
本発明の清浄化剤は、溶剤としてプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールと炭素数が1〜3のアルコールとのエーテル及びこれらの炭素数が1〜3の脂肪酸とのエステル、グリシン及びタウリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物(C)を含むものである。
これらのうち、前記PHMB(B)の溶解性に優れ、除菌、消臭性を効果的に発揮することができる点で、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又はグリシンであることが好ましく、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリシンが最も好ましい。
【0031】
以上をまとめると、本発明の清浄化剤は、極限粘度法で求めた平均分子量が1.5×10 以上、さらに好ましくは、2.0×10 前後であって両性荷電性のPAMの水溶液であって、使用時は完全な水溶性を保つが、悪臭を放つ物質等に浸透して濃度を上昇させることができるPAM水溶液からなるものであり、濃度を上昇させることにより速やかに強固な保水性ゲルを形成させて悪臭を封じ込める点に特徴を有する。
【0032】
本発明の清浄化剤は、物体表面に吸着した汚染物を除去するために使用することもできる。この場合、脂肪酸
塩及び/又はその誘導体を含むことが好ましい。
かかる脂肪酸塩及び/又はその誘導体は水溶性、水分散性、乳化性、すなわち水性に調製することが好ましく、
その使用量はPAM水溶液あるいは水分散液に対し0.1〜5重量%程度であることが好ましい。
かかる脂肪酸塩は、炭素数が12〜24で、二重結合数を有さないか1個有する不乾性で、低臭性の脂肪酸の塩類が好ましく、特に炭素数が16〜18の脂肪酸塩であることが好ましい。炭素数が16〜18の脂肪酸としては、例えばパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸の塩としては、アミン塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられる。これらの塩のうち、アミン塩が好ましい。特に具体的には、モノイソプロパノ−ルアミン塩、ジイソプロパノ−ルアミン塩、トリイソプロパノ−ルアミン塩が好ましい。アミン塩は汚染物質への浸透性に優れている。また潤剤としては、金属塩が優れているので、これらアミン塩とアルカリ金属塩との併用が最も好ましい。アミン塩、金属塩の具体例としては、アミン石鹸、金属石鹸等が挙げられる。
また、高分子の配座が規制されることが知られていることから、さらに界面活性剤を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の清浄化剤は、さらに相間移動触媒を含むことが好ましい。この相間移動触媒は、二相間を移動して反応を促進することができる任意の触媒をいい、例えば第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、グリコールエーテル、クラウンエーテル等が挙げられる。これらのうち、第四級アンモニウム塩、グリコールエーテル、クラウンエーテルが好ましい。これらの相間移動触媒を用いることにより不均一電子の配位レベルを向上させ、悪臭、汚染物を取り込み、汚染空気や汚染物質を清浄化することができる。
また本発明の清浄化剤は、アルコールアミンを含むことが好ましい。かかるアルコールアミンとしては、例えばエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミン、(ジエチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノクロトン酸メチル、3−アミノ−1−プロパノール等が挙げられる。これらの化合物は、濡れ性が高く、PAMが付着しない面にも付着し、かつイオン対を有しかつ浸透力が高いため、汚染界面に浸透してゆき、イオン対で汚染物、悪臭を挟み込み清浄化するものである。
【0034】
本発明の清浄化剤は、さらに気体中の汚染物を吸着するためには、磁性物質を含むものであることが好ましい。 かかる磁性物質としては、微粉末状の鉄、コバルト、ニッケル、マグネタイト又はこれらを界面活性剤で分散させた磁性流体等が挙げられ、これらが好ましい。
【0035】
<汚染気体を清浄化する方法>
本発明は、汚染物を含む気体に前記清浄化剤を噴霧し、前記清浄化剤で汚染物を捕捉し、前記汚染物を沈降させる汚染気体の清浄化方法に関するものである。前記汚染物を含む気体中の汚染物としては、例えば悪臭、有害ガス、芳香、微粉塵状ダスト、フューム、ミスト、タール、有害微生物、胞子、ウイルス等が挙げられる。次に上記の清浄化剤を用いた汚染気体の清浄化方法について詳しく説明する。汚染気体には、悪臭、有害ガス、芳香、微粉塵状ダスト、フューム、ミスト、タール、有害微生物、胞子、ウイルス等及び/又はこれらが混合した分子状又はエアロゾル状汚染物が浮遊する。
以下具体的な方法について説明する。
1)閉鎖又は半閉鎖空間に汚染気体を取り込み、その上部から、清浄化剤を噴霧器で微粒子状に噴霧し、浮遊汚染物をその包摂作用によりまとめて捕捉・粗大化し、底面に沈降させて、風による再浮遊性が著しく低下した非粘着性の沈降物を電気掃除機による吸引、箒、雑巾等で除去する。
【0036】
2)浮遊汚染物が存在する気体を、送風機を連結した排気ダクトに連結して流速を低下できる容量の槽又は噴霧型スクラバー内で本発明の清浄化剤を噴霧し、汚染物を捕捉し・粗大化し、底部に沈降し凝結した廃液を装置外に排出するか、これと同時に又は別にスクラバー内で洗浄液として本発明の清浄剤を使用して汚染物を補足し底部に沈降し凝結した廃液を装置外に排出する。この場合、清浄化効率から本発明の清浄化剤を噴霧してから清浄化剤を洗浄液としてスクラバー洗浄することが好ましい。
清浄化剤を噴霧するには、超音波振動式噴霧機により連続的又は間欠的に噴霧する。ダクト内で清浄化する場合、外部に排気するまでに、ダクト内の気流の流れと並行又は逆行する方向に、本発明の清浄化剤を噴霧する。また浮遊汚染物が存在する気体を、垂直方向又は水平方向より下方向に傾斜するように設置した延長した場合、排気ダクトか煙突内に、本発明の清浄化剤を噴霧する。
また本発明の清浄化剤を噴霧した後、前記ゲル化剤を噴霧し凝固又は液滴化した液を除去することが好ましい。またその後さらに汚染気体を磁場発生装置に接触又は接近させて汚染物を凝固又は液滴化し除去することがより好ましい。
【0037】
3)浮遊汚染物が存在する高さ2.5m以上の建造物内に、本発明の清浄化剤を、超音波振動式噴霧機により微細なミスト状に噴霧し、ミストの発生面の上部に設置した水平回転式プロペラを回転させて上昇気流を発生させ、噴霧器のミストの上昇可能限界以上の高さにミストを上昇させて空間内に拡散させた後、プロペラを停止して噴霧ミストを室内に拡散・落下させ、浮遊していた汚染物を捕捉し、落下中にミストを粗大化させ、プロペラの回転をミストの落下に要する時間後に再開する間欠回転を行うことが好ましい。この操作により、汚染物をミスト内に閉じ込めることができる。
また汚染気体を清浄化する1)2)3)の場合、汚染気体の相対湿度を75%以下にして実施することが好ましい。この状態を保持することにより、汚染物の捕捉率を高くすることができる。
浮遊汚染物が存在する気体を、本発明の清浄化剤を含浸した吸湿性の紙粒及び/又は吸液性のセラミックを充填した層と本発明の清浄化剤を入れた層とを有する洗浄装置に導入し汚染物を除去することもできる。
【0038】
<汚染物体を清浄化する方法>
本発明は、汚染物が付着した物体を清浄化する方法に関するものである。
疎水性の気体とエアロゾルの混合汚染物、特に油脂・油煙、グリース類が付着・粘着、吸着、酸化し硬化や焦げ付いた疎水性汚染物に、すす、砂塵、金属粉、微生物、昆虫やダニ及びこれらの死骸等が付着混合し、悪臭、好ましくない香り、有害エアロゾルを発散し、美観が低下した汚染物体の表面を清浄化剤を用いて、清浄化する。 汚染物体を清浄化する具体的な方法としては、1)清浄化剤を含ませた清拭材で汚染物体を摩擦して汚染物を除く方法、2)物体表面に清浄化剤を微細なミスト状に噴霧し乾燥する方法、3)物体表面を清浄化剤を加圧噴射するか、この後さらに水洗する方法、4)前記3)の水洗後さらに乾燥する方法、5)繊維製品を洗剤と清浄化剤に浸漬し、機械的作用を加え、水洗・脱水し、アイロンがけ又は乾燥する方法、繊維製品を清浄化剤を含む清拭剤で清拭する方法等がある。
【0039】
<汚染液を清浄化する方法>
本発明は、汚染液に本発明の清浄化剤を添加することにより、汚染液中の汚染物質を捕捉し、除去することにより、汚染液を清浄化するものである。
<簡易マスクを用いた呼気の清浄化方法等>
さらに本発明の清浄化法は、菌類及びウイルスの感染防止用の簡易マスクに用いることができる。具体的には、綿、レーヨン、ビニロン等からなる織布又は不織布に本発明の清浄化剤を含浸・乾燥させたものを除塵布として用いて着用者が呼気中の水蒸気により湿潤して表面に水不溶性・非粘着性のゲル層を形成することにより、着用者が呼気中の分子状・エアロゾル状汚染物を吸入することを遮断するものである。
<その他の清浄化方法>
また食品工場において、液状の飲食物の充填ラインの稼動が終了した後、本発明の清浄化剤を含む熱湯水又は冷水により前記パイプ及びタンク内を定置洗浄し、前記充填ライン中の配管パイプ及び充填タンク内の飲食物の残留成分を除去した後、さらに1回以上熱湯水又は冷水による洗浄・殺菌を行うことを特徴とする配管パイプ及び充填タンクパイの清浄化法も挙げられる。定置洗浄とは、生産設備を分解せずに、簡単な操作で安全に自動洗浄するシステムである。前記の方法により、最小の設備投資・エネルギーで臭気や味覚の強い多品種の清涼飲料を継続して生産することが可能となる。
【実施例】
【0040】
以下本発明をさらに実施例をもって具体的に説明する。実施例中の%は特に断りのない限り、重量%を表すものとする。
<煙突から排出するアスファルト黒煙の清浄化>
本発明の清浄化剤及び清浄化法は、種々の事業所や施設が汚染空気を排出するダクト内、
煙突内、臭突内、これらの間に設置した噴霧室内の気流に本発明の清浄化剤を噴霧して分子状からエアロゾル状の空気汚染物を排気までに下部に沈降させて分離して廃液処理を行い、清浄化し気流は大気中に排出する清浄化方法で、各種生産工場、加工工場あるいは、病院、介護施設、公共施設、高層建造物等の排気にも応用できる。
【0041】
(参考例1)
あるアスファルトのリサイクル工場では、10年以上前に道路舗装に使用し経年劣化したアスファルトを剥離して加熱し、新しいアスファルトをほぼ等量を加熱しながら混合する装置を有し、軟化した状態で、道路舗装現場に出荷する。この工場は操業時に、該装置から発生する強い悪臭のある黒煙の消臭と消煙を目的とする高さ2.5mの地表に設置された横型の水噴霧型スクラバ−を用いて、洗浄後高さ約25mの煙突から大気中に排出していたが、全く効果がなく、工場周辺の平地や山林周辺数十mを黒いタ−ル状物か沈降汚染し、地域住民の苦情が絶えなかった。
【0042】
(実施例1)
参考例1の工場の高さ25mの煙突の下から約3mでの直径が約30cmのマンホ−ルから、アクリル酸20モル%とアクリルアミド80モル%で平均分子量が1.9×10の共重合物1kg中にジメチルアミノメチルアクリルアミド基を20モル%導入した組成の両性高分子化合物のゾル状水溶液を無水物換算で0.0006%、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩を0.001%、グリシンを0.001%、ジイソプロパノ−ルアミンを0.001%と含む水溶液からなる清浄化剤を作成した。この清浄化剤を噴霧液として、ノズルの先端から30cmの距離での平均粒径が15μmである噴霧角が15度の2流体噴霧機で約2分間、120ml/分の割合で気流と並流に煙突のほぼ中心にノズルを挿入して噴霧した。黒煙は噴霧中に直ちに消え、黒煙は下部に落下するか、煙突の内壁に付着したものと推定された。この結果により横型の水噴霧型スクラバ−を縦型とし、底部に沈降するタ−ル分をスクラバ−から容易に取り出し加熱軟化処理装置に投入できるように改造し、上記の噴霧液を使用すると、底部に沈降するタ−ル分をスクラバ−から容易に取り出すことに成功した。
【0043】
<自動車や家電製品の塗装工場の有機揮発性物質と塗料ミストを含む排気の清浄化>
小規模の自動車の補修工場から自動車製造工場や家電製品の塗装工場の小規模塗装ブ−スからの排気は、被塗装面に付着しなかった塗料ミストから分離しつつ濃度を増す有機揮発性物質(VOC)によって汚染している。これを本発明の水性で低濃度の清浄化剤の噴霧によって高度に清浄化する。
(参考例2)
油性塗料の噴霧塗装の場合、被塗装面に付着する塗料分が通常30〜80%であるため、塗装ブ−スからの排気は、通常凝集剤類を含む水性洗浄液を使用してスクラバ−で洗浄して高分子化合物の接着剤や体質顔料と水溶性有機溶剤を分離除去し、水不溶性の有機溶剤を活性炭で吸着する方法が広く行われてきた。
しかし、この方法はスクラバ−の気液接触率が完全でないため、未分離のミストによる活性炭の微細孔の閉塞による早期破過、水溶性有機溶剤の除去不十分による着火の危険性、悪臭が非常に強いこと、破過した活性炭の蒸気処理による再生の困難か不可能となる等の欠点が指摘されてきた。
(参考例3)
油性塗料の噴霧塗装の場合、参考例2と同じの目的に、種々の燃焼法が採用されてきた。しかし、塗装ブ−スからの排気にスクラバ−洗浄を行っても、塗料ミストの除去が不十分な場合が多く、VOCを含む排気を燃焼しても完全燃焼が困難で、燃焼後の気流が通常強い悪臭を有するため、この消臭に活性炭で吸着する必要があり、その破過した活性炭を蒸気副込みで再生するのに新らしい活性炭を使用しなければならない点が矛盾があり、燃焼法による地球環境の変動要因となる炭酸ガスの発生量が非常に大きい等の欠点が指摘されてきた。
【0044】
(参考例4)
油性塗料の噴霧塗装の場合、水性薬液の噴霧法で塗料ミストもVOCも高率除去できなかった。いわゆる植物抽出物の水溶液や香料の水分散液の噴霧も種々試みられたが効果が証明できなかった。
また特許文献1及び2の範囲の一部のポリ(メタ)アクリルアミドを主剤とする組成物の場合、常温で、相対湿度が60%以下では、トルエン、スチレン等一部の水不溶性の溶剤に対して最高清浄化率が30〜40%となることがあるが、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール等水溶性溶剤、高速や高湿度の気流中に噴霧した場合には、ほとんど清浄化できなかった。
(参考例5)
現在自動車補修用の噴霧塗料は、(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン等との共重合体をベヒクルとするストレートアクリルラッカーと、これにニトロセルローズ(NC)やセルローズアセチルブチレート(CAB)を併用したNC変性、またはCAB変性アクリルラッカーが広く国際的にも広く使用されている。これら製品自体と希釈用シンナーには多種類、高濃度の低沸点の希釈溶剤を含むため、被塗装面に付着しなかった塗料ミストと悪臭と共にこれらの工場外への拡散防止が緊急の課題となってきた。この場合、参考例2〜3の方法は技術的に採用が不可能である。
このため、排気ダクト内への水性薬剤による清浄化の要望が高まっている。
【0045】
(比較例1)
世界で最も普及していると信じられる塗料製造会社のストレートアクリルラッカーとその専用のシンナーは、同社の公表している含有溶剤は、表−1のごとくである。
【0046】
【表1】


上記(a)と(b)とをそれぞれ標準混合比の62.5:37.5%に均一に混合し、外気から遮蔽されている噴霧塗装ブ−ス{1.8m(幅)×2.7m(長さ)×1.8m(高さ)、8.7m (容積)}内で、吐出量が一定になるよう20℃に塗料を保温し、噴霧機のトリガ−を固定し、173ml/分の割合で2流体噴霧機により実際と同様に塗装を行ない、該ダクトは、断面が円形で直径800mm、長さ10mのステンレス製で、噴霧ブ−スに連結しており、溶剤を含む塗料のミストを爆発限界以下に保ち、ブ−ス内の作業者の溶剤中毒を防ぐため、労働安全衛生法の規定に従い、送風ファンでブ−ス外の新鮮な空気を風速0.75m/秒(0.377m /秒、22.6m /分)で吸気してブ−ス内の汚染空気を希釈して排気した。この時の該ダクト出口の排気のガスクロマトグラフィ−(GC)分析で、ピ−ク面積計34,887、環境省が採用している三点比較式臭袋法の臭気濃度は5,500であった。この試験中の温度は16〜23℃、相対湿度は50〜55%であった。
【0047】
(比較例2)
比較例1と同じ条件で塗料を噴霧し排気しているダクトの入口で、1L中に実施例1で用いた両性高分子化合物を固形分換算で0・0005%、N−アミノ−1−プロパノ−ルを0.01%、曇点55℃、HLBが12.0のポリオキシエチレンラウリルエ−テル及び防腐剤の0.005%のZn−N−オキサイド1−4チオ−ルの水分散液を含む水性液を清浄化液として、図1に記したダクトの位置と方向に設置された、粒径15〜20μmのミストが得られる3個の噴霧ノズルから、約62ml/分を噴霧しながら、運転中に該ダクトの出口で排気のサンプルを採取して、GC分析を比較例1と同様に測定した結果、ピ−ク面積が24,444(減少率は29.9%)、臭気濃度は3600(減少率:約34.5%)であった。この試験中の温度が19〜24℃、相対湿度は48〜52%であった。
(比較例3)
比較例2と同じ試験を、試験中の温度が27〜32℃、相対湿度が88〜93%の雨天下で行い同じ測定の結果、ピ−ク面積が32,044(減少率:8.1%)、臭気濃度が3,100(減少率:13.91%)であり、高湿下での清浄化率の低下が認められた。
【0048】
(実施例2)
実施例1で用いた両性高分子化合物のゾルを無水物換算で0.0005%、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩を純分換算で0.005%、ジプロピレングリコ−ルを0.02%、2−エチルヘキサノ−ルのエチルグリコ−ル付加物を0.05%、メチルプロピレンジグリコ−ルを0.02%、ブチルジプロピレンジグリコ−ルを0.05%、グリセリンと2−エチルヘキシルアルコ−ルとの1.5モルエ−テル結合物を0.005%及び1モルの五酸化りんに、それぞれ1.5モルのエチルアルコールとオレイルアルコ−ルを付加して、3.3モルのジイソプロパノ−ルアミンで中和し、塩基性に調製したものを0.003%、防かび剤のN−オキサイド1−4チオ−ルの水分散液を純分換算で0.005%を含む水溶液からなる清浄化液を作成した。この清浄化液を比較例2と同様に噴霧しながら採取した排気のサンプルの同じ測定結果は、比較例1との対比で、ピ−ク面積が6,977(減少率は94%)、臭気濃度は1030(減少率:81%)であった。この試験中の温度が18〜24℃、相対湿度は42〜38%であった。
(実施例3)
実施例2と同様に、実施例2と同様の清浄化液に硫酸ナトリウムを無水物換算で0.2%、固形分で0.001%のアクリル酸とメタクリル酸との合計が28モル%とメタクリル酸メチル72モル%のエタノ−ル中で、分子量2.1×10 となるように溶液共重合した後、アンモニア水で中和した水溶性物を固形分として0.001%加えて清浄化液を作成した。この清浄化液を噴霧した。この時の温度範囲は18〜21%、相対湿度範囲は86%〜89%であった。排気サンプルの同じ測定結果は、比較例1との対比で、ピ−ク面積が6,977(減少率は80%)、臭気濃度は1,450(減少率:約73.6%)であった。
【0049】
(実施例4)
実施例2と同様に、試験中の温度が20〜22℃、相対湿度は88〜92%であったが、噴霧ノズルを有するダクト内の2番目と3番目の清浄化液の噴霧ノズルの後2mの位置と、排気口の後部のデミスタ−の前部約50cmの位置にそれぞれ1個の別の噴霧ノズルを設置し、清浄化液の噴霧直後に硫酸ナトリウムの10%水溶液を噴霧し、ゾル状の清浄化液をゲル化させて液滴化し、ダクト外に速やかに排出するようにした。排気サンプルの測定結果は、比較例1との対比で、ピ−ク面積が2,160(減少率:約93.8%)、臭気濃度は275(減少率:約95%)であった。
(実施例5)
試験中の温度が、18〜23℃、相対湿度が88〜94%の条件下に、実施例2の水溶液を清浄化液として噴霧し、ダクト内の2番目と3番目の清浄化液の噴霧ノズルの後2mの位置にダクトの側面に取り付け、噴霧ミストに垂直に粒径15μmで20ml/分の割合で、実施例3で使用した水溶性アクリル系共重合物アンモニア塩の0.001重量%水溶液をゲル化液として噴霧し、ダクト内で液滴化し沈降した液をダクト内のピット経由でダクト外に排出した。排気サンプルの測定結果は、比較例1との対比で、ピ−ク面積が3,488(減少率:約90.0%)、臭気濃度は440(減少率:約92%)であった。
【0050】
(実施例6)
両端を閉じ空気を吹き込んで満たすと、長さ3mで直径30cmの円筒形となるポリエチレン袋の内面の長さ方向に、幅20cm長さ2mの濾紙を、両面粘着フィルムで貼付し、その上にU字形の磁石10個をほぼ等間隔に同じ粘着フィルムで貼付した。該袋の左端に、汚染空気入気用に内径15mmのゴム管と清浄化液の噴霧用に平均粒径16μmのミストが発生する2流体噴霧機のノズルとを挿入し、ひもで縛って固定した。右端の中央部には、排気用の同じゴム管を挿入固定した。試験中の袋内の条件は温度が18〜23℃、相対湿度は88〜90%であった。この袋内に実施例3の汚染空気を入気口から排気口に25L/分の割合で通過させ、実施例1の処方に、平均粒径300nmのマグネタイトを30g、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを5gと水65gとを混練した磁性流体を実施例3の清浄化液に0.0003重量%を添加分散させ、清浄化液とした。この清浄化液を10ml/分の割合で3分間噴霧した。出口のゴム管に取り付けたY字バルブから採取した排気サンプルの臭気濃度は、900(減少率:81%)であり、袋中のU字磁石の両極へのかなりの付着が認められ、磁力線に沿って落下した噴霧ミストの配列が認められた。
【0051】
<タンパク質腐敗臭の消臭と有害微生物の粉塵沈降除去>
(参考例6)
賞味期限切れの弁当(以下原料と記す。)を集め、微生物により嫌気性発酵し堆肥化しているある工場の排気は、GC法による化学分析では、成分組成を正確に把握できない程多数の低臭気閾値の悪臭物質からなっていると推定されたが、GC法では、低級及び中鎖脂肪酸、低級及び中鎖脂肪族アルデヒド、メルカプタン類を含み、その組成も原料の種類の変更と投入後の経過時間によってかなり変化していた。またその作業場内では、原料や製品の切り返し工程で、微生物やその胞子、製品の浮遊粉塵が悪臭と共に著しく飛散するため、作業者がこの菌類の吸入による感染症の発生の可能性が大きく、さらにその消臭・粉塵対策として、毒性が懸念される木酢水溶液を噴霧していたが、その吸入が明らかに有害で、作業者の労働安全対策と、近隣住民への汚染空気の拡散防止の観点から本格的な対策が求められていた。
(比較例4)
実施例1に記載の両性高分子化合物のゾルを無水物換算で0.0006%、0.005%のZn−N−オキサイド1−4チオ−ル(防カビ剤)の水分散液を、無水物換算で0.005%、重炭酸カリウムと炭酸ナトリウムをそれぞれ0.1%含む水溶液を、比較例5の木酢液の代わりに、切り返し機の支柱の高さ3mの位置に下向きに取り付けたミスト径が20μm流体噴霧機により噴霧すると、噴霧後の空間の透明感が増すことから粉塵沈降効果が認められたが、木酢液を使用しないため臭気はかなり低減するが、嗅覚的に消臭は不完全で、噴霧直後の原料より1.5m上の空間のガス検知管分析でも低級脂肪酸の酢酸換算濃度で0.0015容量%(15ppm)、低級アルデヒドのアセトアルデヒド換算値で0.0015容量%(15ppm)が検出された。
【0052】
(実施例7)
実施例1の両性高分子化合物のゾルを無水物換算で0.0005%、ジプロピレングリコ−ルを0.06%,ポリ(ヘキサメチレンビグアナミド)塩酸塩を純分換算で、0.006%、ジイソプロパノ−ルアミンを0.5%を含む水溶液を比較例6と同様に噴霧したところ、粉塵沈降効果がより優れ、酢酸換算の低級脂肪酸濃度は、0.0005%、アセトアルデヒド換算の低級アルデヒドの濃度は、0.0003%であった。しかし、この排気及び工場内の悪臭は依然として強いため、この密閉状態の工場の床から5m高さの壁に直径30cmのアルミニウム製のフレキシブルパイプを取り付け、送風ファンで吸引した汚染気流の排気を、特許文献5及び6に記されている方式のスクラバ−に連結して、上記の清浄化液を入れ循環中の該スクラバ−を通過させたところ、排気の低級脂肪酸濃度及び低級アルデヒド濃度は、いずれもガス検知管による分析でいずれも0であり、簡易三点比較式臭袋法による臭気濃度は30であった。このスクラバ−は、内容量200L、耐水処理を施した紙質充填材の積層高さは30cm、通風量は、約400L/分の試験用で可搬式の試験用であったが、依頼者にこれら噴霧法とスクラバ−洗浄法の併用による小規模試験の好結果に基づき、これら両法の規模を大型化した方式の実行を提案した。
【0053】
(参考例7)
電線、タイヤ、その他の用途の主原料の天然ゴムは、ラテックス凝固剤として加えられた酢酸、3%前後の蛋白質を含むため腐敗し易く、参考例6に類似した多成分の非常に強い悪臭が発生した。またこの素練工程では、この悪臭の他に腐敗菌類と胞子類及び添加さる助剤類、特にカ−ボンブラックの他、ペンタエリスルト−ルエステル、ワックス、炭酸カルシウム等の混合製剤を120℃以上の密閉式混練機による工程、あるいは微粉末状の2−ベンズアミドチオフェノ−ル等の添加剤を加え、65℃以上でオープンロールで行う素練工程で添加されるが、これら微粉末状の流動性向上剤と加熱・混合工程に起因する粉塵、タ−ル状のエアロゾル型の高濃度の汚染物が発生するため、これらが混合した工場の排気は非常に汚染度が高い。あるタイヤ工場の清浄化のため、いわゆるフィトンチッドやポリフェノ−ル型植物抽出物の製剤の水溶液をダクト内に噴霧しても、賦香効果以外の清浄化効果は認められなかった。
(比較例5)
あるゴム素練工場の直径約80cm、排気量約800m /分、それぞれ平均粒径16μmのミストが発生し、噴霧角度30度、噴霧方向が気流と並流の2流体噴霧機が約5m間隔で3基設置されおり、それぞれ噴霧液量が40ml/分である排気と気流の清浄化処理兼用の排気ダクト内に、実施例1で用いた両性高分子化合物のゾルを純分換算で0.0006%、ジイソプロパノ−ルアミンを0.0001%、メチルプロピレンジグリコ−ルを0.002%、0.005%のZn−ピリチオン(防カビ剤)を無水物換算で0.005%含む水分散液を噴霧し、該ダクトの出口と入口での臭気の変化を調べたが、三点比較式臭袋法による臭気濃度の減少率は38%であり、出口の排気は、多少の臭気の低下は感知されたが、なお強い悪臭が感じられた。またダクト内の液的化した廃液のドレインの液溜め部分にねばく、悪臭が強く、濃褐色のタ−ル状の液体の相当量の滞留が認められた。
【0054】
(実施例8)
比較例5と同じ工場の同じ装置で、同一運転条件により、比較例7の噴霧用の水分散液に、更に、ジプロピレングリコ−ルを0.01g,及び、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩を0.04%加えた水分散液を噴霧したところ、排気ダクト出口での悪臭が嗅覚的に著しく低下し、ダクト出口での臭気濃度減少率は95%であった。
(比較例6)
新築住宅、ホテル客室、事務所、病室、介護室、空調機内部、航空機内、艦船内、列車内等の閉鎖状あるいは半閉鎖状室内の表面から発生する空気汚染物は、油性塗料、香水、ホルムアルデヒド、殺虫剤等の有害ガスやVOC類、煙草臭や体臭、有害菌、だに、ウイルス、介護臭等が挙げられるが、これらを一括して完全に消臭、解毒、殺菌、消毒できる技術はなかったが、特許文献a:特許第2,134,708号の方法である、例えば、分子量1.0×10 で分子中にカルボキシル基とジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド基を、それぞれ20モル%が結合した構造の両性高分子化合物のゾルを0.0005%、2−アミノメチル1−プロパノ−ルを0.001%及びZn−ピリチオンの水分散液を純分換算で0.03%含む水溶液を上記の汚染物が吸着した表面に微粒子状で噴霧すると、塩化ビニ−ルクロスの壁紙やポリエステル繊維の内装剤やカ−ペットなど疎水製表面には付着せず乾燥後脱落するため全く効果がなく、綿やウ−ルの毛布など親水製寝具などに浸透した悪臭や一部の体臭は完全に消臭できたが、葉巻臭、香水、VOC類、かび臭、殺虫剤等に対する消臭効果も得られなかった。
【0055】
(実施例9)
実施例1の清浄化液に、更にジプロピレングリコ−ルを0.06%、0.006%、Zn−ピリチオンの水分散液を純分換算で0.03%、重量平均分子量2.0×10 で(メタ)アクリル酸を27モル%とアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを合計で73モル%をエチルアルコ−ル中で溶液共重合した後、エチルアルコ−ルを減圧除去してアンモニアで中和した水溶液を固形分換算で0.001%とを加えた水溶液を、それぞれ汚染物が表面に吸着した、全表積が約33mのホテル客室を、粒径12μmのミストが12.5ml(噴霧液)/分の割合で発生する可動式噴霧器で2分間/室の割合で噴霧後約5時間常温で換気して完全に乾燥させた。乾燥した噴霧ミストのゲルは脱落せず、比較例8等従来法で消臭できなかったワキガ臭も含む体臭、香水臭、葉巻臭、線香臭、かび臭などをほぼ完全に消臭し、しかも、客室の使用条件にもよるが、消臭効果及び防かび効果が6ヶ月から1年以上持続することが、家屋の洗浄業者と空調機の洗浄業者5社の施工で確認された。
【0056】
(実施例10)
ある国の新築の高層集合住宅で入居できないほど刺激臭の強い個室内で、室内の塗装や建材から発生している化学品臭が強い室内の空気を処理前の空気サンプルとして臭袋に採取した。次に実施例7の水溶液を、ノズル先端から30cmで粒径15μmのミストが発生する2流体噴霧器で、被処理面から40〜100cm離れた位置から約2mL/mの割合で室内全面に噴霧し、約24時間自然乾燥後、2時間換気扇で換気してから48時間放置し、この処理前後の空気をガスロマトグラフィ−法で測定して、表−2のような結果を得た。
【0057】
【表2】

【0058】
(参考例8)
使用開始後20年以上経過した事務所、中古住宅、旅館やホテル等の内装表面、特に敷物、厨房設備、空調設備等の、目視できる汚れが付着吸着した物体表面、例えば、(a)自動車の排煙や微細な砂塵やドロの沈着、(b)敷物類に付着したコ−ヒや飲食物のシミ汚れ、(c)室内の通風の悪い部分や敷物類に生息・増殖しているかび菌やダニ、(d)厨房の排気フィルタ−とその周辺及び調理室全面に付着した、排煙と硬化した油膜や調理ミスト、(e)空調機内のアルミニウム製の熱交換機や送風ファン内に沈着した(a)と(c)、(f)昆虫や鳥の糞等の清拭は、ほとんどの場合、pH12以上の強アルカリに種々の界面活性剤を加えた水溶液を被洗浄物の表面に噴霧塗布した後、10kg/cm以上強い水圧で洗浄するため被洗浄物を損傷したり、スクレパ−を用いて掻き落として表面を疵つけたり、変色させる場合が多く、洗浄後も強い悪臭が残留する場合が多かった。特に中華料理店、天麩羅店、焼き肉店などの空調機内に形成した悪臭の強い酸化油膜は、現在までの種々の強アルカリと界面活性剤を配合した洗剤等の洗浄でも清浄化が実質的に効果なく洗浄が不可能とされ、可使期間も1〜2年と短く、電力を空費し、火災発生の危険も伴った。
【0059】
(比較例7)
特許文献3に記載されている、分子量1.5×10 のアクリルアミド90%とアクリル酸10%との共重合物を50g、メタケイ酸ナトリウムを579g、無水硫酸ナトリウムを250g、過炭酸ナトリウムの1水塩を100g、ゼオライト日粉末を10g、パ−フルオロアルキル含有型エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコーポリマー型活性剤との等量混合物を1g、しゅう酸ナトリウムを10gとの洗浄物組成物を実施例7に記した施工業者により汚染物の清拭と洗浄に使用すると、各物体に付着しているスス、ドロ汚れ等微粉塵型の汚れの除去効果は優れていたが、空調機や厨房設備内に形成した酸化油膜、敷物上のシミ、かび菌に対する持続的静菌効果はないという結果を得た。
(実施例11)
1モルのオレイン酸を、0.2モルのトリイソプロパノ−ルアミンと、1モルのジイソプロパノ−ルアミンとを反応して水溶性としたアミン石鹸73g、ジプロピレングルコ−ル50g、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩10g、分子量が2.0×10 で、(メタ)アクリル酸を25モル%、ジメチルアミノメチルアクリルアミド基が25モル%を有する両性のアクリルアミドのゾルを乾燥物換算で0.04g、Zn−ピリチオンを8g、水を加えて1kgとした水溶液30倍容量の約45℃の温湯で希釈した液を、ある巡行客船の食堂の食卓下の敷物に付着し、悪臭を発しており、他の洗剤や洗浄法でできなかった飲食物の汚れシミの部分にまずプラスチック製ハンドスプレ−ホンプで汚れの強い部分に噴霧して30分〜1時間湿潤後、床を液で漏らさず洗浄できる三協アクアシステム製の負圧式ノズルを使用した洗浄機に入れて洗浄して、ほぼ完全にシミとススなどの微粉塵の汚れを除去し、更にいずれも予備試験で確認済みの持続的消臭効果と静菌効果を付与し、食堂の空気の清涼感が改善した。
【0060】
(実施例12)
完工・入居後30年経過したある木造住宅の台所と食堂兼用の部屋のPVC製の壁紙や化粧合板製のドアの全表面が、ススを吸着し従来の洗剤ではほとんど除去効果がなかった硬化し黒く 着色した油膜の汚れが、実施例11と同じ水溶液を雑巾に浸して清拭すると油膜と共にすす、ドロ、かびの増殖部分が完工直後に近い美観が回復し、部屋全体に染み付いた悪臭が消え、洗浄剤の臭気も全く感じなかった。
(実施例13)
ある中華料理店の設置後約2年経過し新品との交換期がきた厨房の壁掛け式の空調機の外面は調理ミストで汚染し、内部のアルミニウム製の熱交換機とプラスチック製のファンは、表面に黒色の油膜を形成し、冷暖房機能が著しく減少し、悪臭が厨房内と店内に強い悪臭を排出していた。この洗浄のため空調機の通電部分を防水性のプラスチィックフイルムで養生・遮断し、該熱交換機の吸気面と排気面及びファン全体をプラスチィックフイルムで覆い下に洗浄液を落下させ貯溜容器を置き、実施例11の清浄化剤の30倍希釈水溶液をミスト径20μmの2流体噴霧器で約2分間噴霧し、該熱交換機とファンの全体を湿潤させ、約30分間放置した後、同じ部分を噴射型洗浄機で同じ希釈水溶液で10kg/cm の水圧で5分間洗浄した。貯溜容器に落下した廃液は濃黒色で、これに反し濃黒色の熱交換機の表面は速やかに洗浄され新品同様に銀白色に戻った。更に水洗203分間行った後、送風乾燥してから、ミスト径径15μmの噴霧機で実施例1の清浄化剤を3分間噴霧して乾燥し、無臭の冷風が排出することを確認した。
【0061】
(比較例8)
購入後約10年間使用し、この間外気と頻繁に接触した2枚のポリステル繊維製のカーテンレースが、砂塵、自動車の排煙、昆虫の分泌液、煙草のヤニなどが付着し、いずれも家庭用の洗濯機で水量40Lと30gの粉末洗剤による10分間の洗濯と5分間のすすぎ後絞らずに竿に広げて乾燥したが、白度が十分回復しなかったが、そのまま乾燥した。
(実施例14)
比較例9で洗濯したカーテンレースと、洗濯前で同じ使用条件にあった2枚のカーテンレース計4枚を実施例8の清浄化剤の30倍希釈10Lの水溶液に10分間浸漬後、同じ洗濯機で水量40Lで10分間水洗し、同様に乾燥したところ著しい白度の向上が認められた。
(実施例15)
あるクリ−ニング業者に依頼して、ワイシャツの洗濯の受託時に、襟と袖の部分及びシミの部分に実施例11の清浄化剤を30倍に希釈した水溶液を、プラスチックスプレイポンプで噴霧し、1時間後から翌日に通常の洗濯を行うと、これら部分の体脂の汚染が消え、繊維の損耗の大きい竹製のササラによる強い摩擦が不要になり、しかも、柔軟剤を使用せずに優れた風合が得られ、ワキガ臭などのにおい移りがなく、次回の洗濯が容易になり、アイロンがけやプレス仕上げ工程での悪臭の発生がなくなり、同業界の共通の課題の解決ができるという結果が得られた。
【0062】
(参考例9)
汚れた衣類、特に毛織物の洋服や絹の着物、ネクタイ等の衣類は、収縮や繊維の劣化が生じるためアルカリ性の水性洗浄ができなかったため、有機溶剤を使用するドライクリ−ニングが一般的に行われている。しかし、油性汚れの除去効果の優れる塩素化エチレンは、毒性が強く、地下水への浸透や大気汚染防止関連の規制強化から、使用は限られ現在は、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素に比較してさらに油脂溶解力の弱いパラフィン系炭化水素、我国では、JISの工業用ガソリン5号(米国のStoddard solvent、 英国のWhite spirtに相当する)が使用され、これに油溶性界面活性剤の水溶液と水とのコソルベントしてアルコ−ルやセロソルブ等を溶解度の範囲で加えドライクリ−ニング用ソ−プとして加えた溶液で洗浄しているが、汚染物の除去率は極めて低く、一部の高級仕上業者を除き、現在のドライクリ−ニングされた衣類にスチ−ムアイロンをかけると悪臭が発生することが多く、そのまま水性の洗濯を行うと洗濯水が黒く汚れ、通風の悪い部屋に収納すると短期間で真菌が増殖する場合が多い。
【0063】
(実施例16〜18)
冬季に着用頻度が多かった下記の衣類を、穴あきパタ−ンで、60%のビニロンと40%のポリエステル繊維との混合サーマルボンドレース、JP4532B−056 OB−SK−P(クラレ製)を二つ折にし、その中間にレ−ヨンとポリエステルの等量混合スパンボンドの不織布を挟み、縫い合わせた清拭布を、実施例11の洗浄化剤の30%の30及び60倍希釈水溶液中に浸漬し、絞り、下記の衣類の表面と裏面の全表面の汚れをよく拭き取りスチ−ムアイロで仕上げるか(A法)か、該水溶液中に浸漬してかるく揉み洗い後絞り竿に吊して風乾した。(B法)
【0064】
【表3】

これらの処理の環境保全に寄与する利点は、蒸留による回収に困難を伴うドライクリ−ニング溶剤を使用しないこと、これら実施例の処理液が極めて低濃度で、必要により酸の添加で油脂分を回収できることである。これら実施例による仕上衣類のシミやスス汚れが完全に除去され、アイロンがけ時にドライクリ−ニングした時に発生する悪臭が全く感知できなかったこと、仕上衣類は、柔軟で肉厚感のある風合いが得られ、薬品臭を発せず、真菌が増殖せず、汚れと悪臭が付着吸収し難く、繰り返し同一処理が可能で、専用機械の開発で生産能率を向上することが可能視されることである。
【0065】
(参考例10)
悪臭や有害ガスが発生し、有害微生物が増殖中の腐敗液やスラリ−の処理は極めて重要な課題である。例えば、(a)多人数の健康診断の検尿の廃液は、まず検査場に内臓や生殖器に疾患がある者の尿が混合して不快な悪臭を発散し、有害な病原菌やウイルスの飛沫を室内に拡散したり、便所や下水にバケツに廃棄する際の飛沫同伴で担当職員に感染させる危険性がある。(b)糖分を高濃度含む清涼飲料の腐敗液は、短期間で腐敗が進行し、アセトアルデヒドや低級脂肪酸、低級脂肪属アルデヒド等臭気閾値の低い極めて臭気濃度の高い混合悪臭を発生し、人畜を刺咬する蜂や蠅等を悪臭発生源に吸引し、周辺に不快と危険を及ぼしてきた。
【0066】
(実施例19及び20)
参考例10に記した(a)〜(c)の各課題は本発明の清浄化剤のように使用することによって殺菌・消毒・消臭が解決された。
【0067】
【表4】

(参考例11)
空調機のエアフィルタ−は、粗大なダストは除去できるが、粉塵、煙草の煙、細菌、ウイルス等有害なエアロゾル型汚染物は除去できず、通常のガ−ゼマスクも粉塵除去効果が不十分であった。また無塵室用の高性能粉塵除去用フィルター(略称HEPA)は、微粉塵は除去できるが、通風抵抗が大きく用途が限られていた。
【0068】
(比較例9、10及び実施例21)
縦9cm×横13cm×6層で綿ガーゼを縫製して、ゴムひもを両耳側にそれぞれ挿入した5.1gの大人用ガ−ゼマスクと、縦7cm×横9.5cmの大きさに折りたたんだ3層のあてガ−ゼ2枚で2.6gの綿ガ−ゼ製の防塵マスクとその内面に入れて使用するガ−ゼを、それぞれ5セットずつ下記の処方の清浄化液に浸漬し、遠心分離機でそれぞれガ−ゼ重量に対して液付着率を250±10%になるよう脱液し、恒温送風乾燥機中で重量が一定になるまで乾燥後常温・常湿で翌日まで放置した。次いで無処理のマスク(A)、比較例10の処理を行ったマスク(B)及び実施例19の処理を行ったマスク(C)を空調機の清掃業者の作業者2人に渡して、マスク(A)〜(C)を毎日1種類を着用して作業し、マスクの汚染状態から判断する粉塵の捕捉性能、悪臭を感じる程度を記録し報告を求め他結果下記の結果を得た。
【0069】
<各試験番号の処方>
比較例9:無処理
比較例10:実施例1の処方で各成分中、ポリ(メチレンビグアナイド)塩酸塩を含まず、それ以外の成分を5倍濃度含む水溶液
実施例21 実施例1の各成分を5倍濃度含む水溶液
<悪臭の感知結果とマスクとあてガ−ゼの汚染状態>
比較例9:着用しない場合と同程度の強い悪臭を感じた。粉塵が少し付着して汚れた。また作業後にマスク着用した部分でも手で触ると粉塵が付着した感触があった。
比較例10:悪臭がかなり弱くなったと感じた。着用中マスクの鼻孔付近の粉塵の付着状況は顕著であった。 実施例21:着用中開始し、マスクの鼻孔付近が呼吸で膨脹して吸水ゲルを形成すると、ほとんど悪臭を感じなくなった。着用中マスクの鼻孔付近の粉塵の付着状況は更に顕著で、有害気体や粉塵をほとんど吸わないことを知り、安心感も生じた。
このように鼻孔から出る高湿度の吐気中の水分により速やかに膨潤したゲル層を速やかに形成し、着用者が有害微粉塵の吸入と作業場所に存在する悪臭や有害ガスによる健康障害や不快感を防止することが確認できた。
【0070】
(比較例11)
清涼飲料、日本茶、乳酸発酵飲料、液状調味料等の生産・充填工場では、1種類の製品を継続して長時間製造することは稀で、1種類の製品を生産・充填した後充填パイプ等を定置洗浄(CIP洗浄)した後、引き続き別の品種の生産・充填を行うことが一般的である。この場合前の製品が充填タンク、配管パイプ等に残存すると、微量でもその芳香や味覚が次の製品に移行しその商品価値が喪失する。ある工場では下記のような工程で洗浄が行われていた。
工程の順番は、(1)熱水洗浄(85℃、30分)→(2)熱水洗浄(85℃、30分)→(3)カセイソーダの2%水溶液→(4)硝酸の2%水溶液→(5)熱水洗浄(85℃、30分)→(6)界面活性剤の1%水溶液→(7)熱水洗浄(85℃、30分)であった。
リンゴジュース(主な香気成分:2−メチルブタン酸メチル、3−メチルブチル、3−メチルヘキシルなどのエステル類)、モモジュース(主な香気成分:4−ブチルブタノリド、γ−カプロラクトン等ラクトン類)、グレープフルーツジュース(主な香気成分:オクタナールやデカナールのアルデヒド類)等の臭気閾値の低い香気成分を含むジュースの上記工程による洗浄をおこなったが、5人の嗅覚と味覚が敏感な専属のパネルが一致して無臭・無味と判定するまで、洗浄工程を5〜10サイクル連続して行わなければならなかった。
(実施例22)
比較例11の工場で、リンゴジュースを生産した後、前記洗浄工程(6)の界面活性剤液の代わりに、実施例1で使用した両性ポリアクリルアミドのゾルを無水物換算で0.001%、ポリ(メチレンビグアナイド)塩酸塩を無水物換算で0.0033%、ジイソプロピレングリコールを0.009%、オレイン酸のトリイソプロパノールアミン塩を0.009%、メチルプロピレングリコールを0.02%、2−エチルヘキシルアルコールを0.0013%、硫酸ソーダを無水物換算で0.027%溶解した水溶液を用いて、85℃、30分間洗浄を行い、1サイクル終了した時点で、5人のパネルに判定してもらったところ、完全に無臭・無味であった。このため直ちに別の品種の清涼飲料の生産が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極限粘度法で求めた平均分子量が5×10 以上で、直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミドの0.0001〜0.01重量%水溶液あるいは水分散液(A)と式(1)で示されるポリ(ポリメチレンビグアナイド)塩酸塩(B)と、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールと炭素数が1〜3のアルコールとのエーテル及びこれらの炭素数が1〜3の脂肪酸とのエステル、グリシン及びタウリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物(C)とを含んでなる清浄化剤。
[−(CH−NH−C(NH)−NH−C(NH)−NH−(CH−]HCl (1)
(式中、m、nが2〜5の整数であり、pは5〜16の整数である。)
【請求項2】
前記ポリ(メタ)アクリルアミド水溶液あるいは水分散液(A)が、乾燥することにより固形分濃度が上昇し、保水性ゲルを形成するものである請求項1記載の清浄化剤。
【請求項3】
前記化合物(C)が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びグリシンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の清浄化剤。
【請求項4】
前記ポリ(メタ)アクリルアミドが、両性荷電重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項5】
水溶性アクリル系共重合体を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項6】
前記水溶性アクリル系共重合体が、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩である請求項5記載の清浄化剤。
【請求項7】
水溶性無機塩を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項8】
ゲル化剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項9】
前記ゲル化剤が、水溶性のアルカリ金属の塩、水溶性の2価のアルカリ土類金属塩、アルミニウム化合物、炭素数が2〜18の2塩基性カルボン酸及びこれらのアンモニウム塩及びこれらのアミン塩及びこれらのアミノアルコール塩、水溶性高分子化合物のジヒドラジド、グルタールアルデヒド、グリオキザールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の清浄化剤。
【請求項10】
前記ゲル化剤が、前記ポリ(メタ)アクリルアミドが陰性荷電重合体又は陽性荷電重合体である場合、いずれも逆荷電のポリ(メタ)アクリルアミド及び/又は他の高分子化合物の塩類の水溶液である請求項8記載の清浄化剤。
【請求項11】
脂肪酸塩又はその誘導体を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項12】
相間移動触媒として、第四級アンモニウム塩、グリコールエーテルまたはクラウンエーテルのいずれかを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項13】
炭素数が4〜12のアルコールアミンを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の清浄化剤。
【請求項14】
磁性物質を含む請求項1〜13のいずれか1項記載の清浄化剤。
【請求項15】
前記磁性物質が、微粉末状の鉄、コバルト、ニッケル、マグネタイト又はこれらの界面活性剤で分散させた磁性流体のいずれか1種以上である請求項14記載の清浄化剤。
【請求項16】
汚染気体に請求項1〜15のいずれかに記載の清浄化剤を噴霧することを特徴とする汚染気体の清浄化法。
【請求項17】
汚染気体を請求項1〜15のいずれかに記載の清浄化剤を洗浄液としてスクラバー洗浄する汚染気体の洗浄方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法を実施し、次いで請求項17に記載の方法を実施する請求項16及び17記載の汚染気体の清浄化法。
【請求項19】
汚染気体に前記清浄化剤を噴霧した後、請求項7〜9のいずれかに記載のゲル化剤を噴霧することにより、凝固又は液滴化した液を除去することを特徴とする汚染気体の清浄化法。
【請求項20】
汚染気体に請求項14又は15記載の清浄化剤を噴霧し、請求項16、17又は19のいずれかの処理を施した後、さらに汚染気体を磁場発生装置に接触又は接近させることにより汚染気体中の汚染物を凝固又は液滴化し、除去することを特徴とする汚染気体の清浄化法。
【請求項21】
汚染気体の相対湿度を75%以下に低下した状態で行う請求項15〜20のいずれか1項に記載の汚染気体の清浄化法。
【請求項22】
汚染物が付着した物体表面に請求項1〜13のいずれかに記載の清浄化剤を噴霧し、汚染物を除去することを特徴とする汚染物体の清浄化法。
【請求項23】
汚染物が付着した物体表面を請求項1〜13のいずれかに記載の清浄化剤を含む清拭材で洗浄することを特徴とする汚染物体の清浄化法。
【請求項24】
前記清浄化後、請求項1〜13のいずれかに記載の噴霧液を室内全面に噴霧する請求項22に記載の汚染物体の清浄化法。
【請求項25】
汚染物が付着した繊維製品を請求項1〜13のいずれかに記載の清浄化剤に浸漬した後、機械的作用を加えてから、水洗し、乾燥することを特徴とする汚染物体の清浄化法。
【請求項26】
前記物体が繊維製品である請求項23記載の汚染物体の清浄化法。
【請求項27】
汚染液に請求項1〜13のいずれか1項に記載の清浄化剤を添加することを特徴とする汚染液の清浄化法。
【請求項28】
液状の飲食物の充填ラインの稼動が終了した後、請求項1〜13のいずれかに記載の清浄化剤を含む熱湯水又は冷水により前記パイプ及びタンク内を定置洗浄し、前記充填ライン中の配管パイプ及び充填タンク内の飲食物の残留成分を除去した後、さらに1回以上熱湯水又は冷水による洗浄・殺菌を行うことを特徴とする清浄化法。
【請求項29】
セルロース繊維織物及び/又は不織布に請求項1〜13のいずれかに記載の清浄化剤を含浸し乾燥した材料を用いた簡易防塵マスクを作成し、前記簡易防塵マスクを着用者に装着し、着用者が呼吸することにより吐く息中の飽和水蒸気によって形成された吸湿性ゲルを通過させることを特徴とする清浄化法。


【公開番号】特開2008−297507(P2008−297507A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147675(P2007−147675)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000102566)エスポ化学株式会社 (7)
【Fターム(参考)】