説明

減圧弁装置

【課題】止水時において減圧弁体によるゴミ等の異物の噛込みを防止できる小型で安価な減圧弁装置を提供する。
【解決手段】減圧弁装置10において、減圧弁体22には止水用弁部92と調圧用弁部90とを設ける一方、弁シート72には対応する止水用シート部74と調圧用シート部76とを設けて、1つの減圧弁機構に、ダイヤフラム36と2次圧調節ばね38とを含む駆動機構34にて共通に駆動される、止水用弁部92と止水用シート部74とを含んで構成される止水弁機構と、調圧用弁部90と調圧用シート部76とを含んで構成される調圧弁機構とを具備させ、調圧時には調圧用弁隙間Sを止水用弁隙間よりも小さく保持し、止水動作時には減圧弁体22を閉弁させた後に止水用弁部92を止水用シート部74に当接させて閉弁させ、止水を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は2次側圧力を1次側圧力よりも低い設定圧力に保持する減圧弁装置に関し、詳しくはゴミ等の異物の噛込みを防止するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2次側の水の圧力を1次側の水の圧力よりも低い一定の設定圧力に保持する減圧弁装置が各種の目的で使用されている。
例えば電気温水器を設置して、電気温水器で加熱した湯を水栓に供給する場合において、電気温水器の温水タンクの上流側に減圧弁装置を設置し、1次側の給水圧を減圧した上で温水タンクに給水するといったことが行われている。
【0003】
図20は、この種減圧弁装置として従来用いられているものの一例を示している(下記特許文献1の従来例として開示)。
同図において200は減圧弁装置で、202はその減圧弁装置200におけるバルブボデーであり、水の流入口204と流出口206とが設けられている。
208は、バルブボデー202の内部に形成され、流入口204と流出口206とを連絡する主通路で、210はその主通路208を流通する水の流量を絞って減圧作用を行う減圧弁機構である。
【0004】
212は、減圧弁機構210における減圧弁体で、この減圧弁体212は弁部214と軸部216とを有しており、図中上下方向の進退移動により弁部214と弁シート218との間の弁隙間(弁開度)を変化させて、主通路208を流通する水の流量を絞り、その際に圧損(圧力損失)を生ぜしめて2次側圧力を1次側圧力よりも減圧状態とする。
【0005】
220は、2次側圧力を受けて図中上向きに変位せしめられるダイヤフラム(感圧動作部材)で、図中下面が2次側圧力を受ける受圧面222とされている。
ダイヤフラム220には、図中上側に配置された2次圧調節ばね224の下端が下向きに当接させられており、かかるダイヤフラム220が、受圧面222に対して上向きに作用する2次側圧力の作用方向とは逆向きに2次圧調節ばね224の付勢力を受けている。
【0006】
上記減圧弁体212は、軸部216がこのダイヤフラム220に連結され、ダイヤフラム220の図中上下の変位に連動して減圧弁体212が図中上下方向に進退移動せしめられる。
【0007】
即ち、減圧弁体212は2次側圧力を上向きに受けるダイヤフラム220と、付勢力を下向きに作用させる2次圧調節ばね224とを有する駆動機構226によって、詳しくは2次側圧力による上向きの力と、2次圧調節ばね224による下向きの力との差によって、ダイヤフラム220の上下の変位に連動して上下方向に進退移動し、弁開度を変化させる。
尚228は異物ろ過のためのストレーナで、230は1次側から2次側への水の流れのみを許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁である。
【0008】
この減圧弁装置200では、ダイヤフラム220に対して上向きに作用する2次側圧力の大小に応じてダイヤフラム220が図中上下方向に感圧変位動作し、減圧弁体212を連動して上下に進退移動させて、減圧弁体212における弁部214と弁シート218との間の弁隙間即ち弁開度を変化させる。
【0009】
即ち、2次側圧力が低いときには2次圧調節ばね224による下向きの付勢力が、ダイヤフラム220に対する2次側圧力の上向きの力に打ち勝って、ダイヤフラム220が図中下向きに変位し、減圧弁体212の弁部214と弁シート218との間の弁隙間(弁開度)を大として、1次側通路208Aから2次側通路208Bに流れる水の流れに対する絞り量を少なくし、水流が減圧弁体212を通過する際の圧損を小さくして2次側圧力を高めるように作用する。
【0010】
また2次側圧力が高まると、2次圧調節ばね224の付勢力に対して2次側圧力が打ち勝つに到って、ダイヤフラム220が図中上向きに移動し、ここにおいて減圧弁体212の弁開度が小となって減圧弁体212での圧損を大とする。
そしてこれらの作用によって2次側圧力を予め設定した圧力の減圧状態に保持する。
【0011】
ところで、この減圧弁装置200では例えば2次側に設置される水栓が通常の水道の蛇口のように大流量で水を吐水するような場合には、減圧弁体212の弁開度が大きくても2次側圧力を所望の圧力に減圧することが可能であるが、その水栓が例えば手洗用の自動水栓であったりすると、その自動水栓の吐水流量が少ないために、小さな弁開度の下で2次側圧力を所望の圧力に減圧させなければならない。
【0012】
この場合減圧弁体212、詳しくは弁部214の弁開度が小さいために、上流側のストレーナ228を通過して流れて来た小さなゴミ等の異物が弁シート218周りで堰き止められてそこに蓄積してしまい、弁部214が閉弁したときに弁部214と弁シート218との間にその異物を噛み込んでしまう。
【0013】
而してこのように閉弁時に弁部214が弁シート218との間に異物を噛み込んでしまうと止水が不十分となって、その後も1次圧が2次側に漏れて2次側圧力が増大し、最終的に2次側圧力が1次側圧力に近くなるか又は等しくなってしまう。
この場合、減圧弁装置200の下流側に電気温水器が設置されていると、その電気温水器の温水タンクの圧力を規定圧力よりも高くしてしまう。
【0014】
尚、特許文献1にはこうした問題の解決を狙いとして、逆止弁を有する弁機構を第2の減圧弁機構として構成し、その第2の減圧弁機構にて1次側圧力を一旦減圧した後、その下流側で図20に示す減圧弁機構210を第2の減圧弁機構としてそこで更に減圧し、即ち第1及び第2の減圧弁機構を用いて1次側圧力を2段階に減圧し、そのことによって第2の減圧弁機構における減圧弁体の弁隙間を大きく確保して、そこでのゴミ等の異物の噛込みを防止するようになした点が開示されている。
【0015】
また下記特許文献2には、同じような考え方の下に主通路に感圧動作部材としてのダイヤフラム及び2次圧調節ばねを備えた第1の減圧弁機構を設けるとともに、その下流側に同じく感圧動作部材としてのダイヤフラムと2次圧調節ばねを備えた第2の減圧弁機構を設け、それら2つの減圧弁機構にて1次側圧力を2段階に減圧して下流側の2次側圧力を所望圧力に減圧するようになし、そのことによって止水機能を有する第1の減圧弁機構において、減圧弁体が止水時にゴミ等の異物を噛み込んでしまうのを防止するようになした点が開示されている。
【0016】
しかしながらこれら特許文献1,特許文献2に開示のものは、互いに別々の独立した駆動機構(ダイヤフラム及び2次圧調節ばねを含んだ駆動機構)をそれぞれ備えて独立に減圧作用する2つの減圧弁機構を設けていることから、全体として構造が複雑化し、また所要の部材数が多くなってコストも高くなってしまい、また減圧弁装置が大型化してしまうといった問題を有する。
【0017】
更にこれらの減圧弁装置では、減圧弁体を進退移動させるための駆動機構が大きな駆動力を発生させなければならず、そのために駆動機構周りの構造も大型化してしまい、ひいてはこのことがまた減圧弁装置を大型化してしまう要因となる問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−234364号公報
【特許文献2】特開2008−243174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は以上のような事情を背景とし、単一の減圧弁機構によって減圧動作を行うことができるとともに、止水時において減圧弁体がゴミ等の異物を噛み込むのを防止でき、1次側圧力と2次側圧力とを良好に遮断状態とすることができる小型で安価な減圧弁装置を提供することを目的としてなされたものである。
また本発明の他の目的は、減圧弁体を僅かな力で進退移動させることができ、減圧弁体を進退移動させるための駆動機構を小型化し得て、そのことにより装置全体を更にコンパクト化し得る減圧弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
而して請求項1のものは、(イ)流入口と流出口とを連絡する主通路上に設けられ、弁部を弁シートに向けて進退移動させて該主通路の水の流量を絞り、減圧作用する減圧弁体と、(ロ)2次側圧力を受ける受圧面を有し、該2次側圧力の変動に応じて感圧変位動作し、前記減圧弁体を進退移動させる感圧動作部材と、(ハ)該感圧動作部材に対して該2次側圧力の作用方向とは逆向きに付勢力を作用させる2次圧調節ばねと、を備えた減圧弁機構を有し、前記感圧動作部材を、前記2次側圧力の増大により前記2次圧調節ばねの付勢力の作用方向と逆方向に感圧変位動作させて前記減圧弁体の弁開度を小とする方向に、また該2次側圧力の減少により該2次圧調節ばねの付勢力の作用方向に感圧変位動作させて該減圧弁体の弁開度を大とする方向に該減圧弁体を移動させ、該2次側圧力を1次側圧力よりも低い減圧状態に保持する減圧弁装置において、前記減圧弁体には止水用弁部と調圧用弁部とを設ける一方、前記弁シートには対応する止水用シート部と調圧用シート部とを設けて、1つの前記弁機構に、前記感圧動作部材と前記2次圧調節ばねとを含む駆動機構にて共通に駆動される、前記止水用弁部と止水用シート部とを含んで構成される止水弁機構と、前記調圧用弁部と前記調圧用シート部とを含んで構成される調圧弁機構とを具備させ、調圧時には、前記調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間を、前記止水用弁部と止水用シート部との間の止水用弁隙間よりも小さく保持して、前記感圧動作部材とともに移動する前記調圧用弁部の進退移動による該調圧用弁隙間の増減変化により、前記主通路における水流に対する絞りを変化させて調圧作用させ、止水動作時には、前記減圧弁体の前進移動により先ず前記調圧用弁部を前記調圧用シート部に当接させ閉弁させた上で、該閉弁状態を保持させたまま前記止水用弁部を前記止水用シートに当接させて閉弁させ、前記主通路を水密に遮断し止水するようになしてあることを特徴とする。
【0021】
請求項2のものは、請求項1において、前記調圧用シート部が前記止水用シート部とは別体に構成されて、前記減圧弁体の移動方向に可動とされた上で、付勢手段にて前記調圧用弁部に向けて付勢されているとともに、前記調圧時において、該調圧用シート部はストッパ機構により前記調圧用弁隙間を前記止水用弁隙間よりも小とする位置に位置保持されていて、該調圧時に前記調圧用弁部の進退移動により該調圧用弁隙間を変化させ、前記2次側圧力を調圧するものとなしてあり、前記止水動作時に、前記減圧弁体の前進移動により先ず該調圧用弁部を該調圧用シート部に当接させ閉弁させた後、更なる該減圧弁体の前進移動により該閉弁状態を保持させたまま前記付勢手段の付勢力に抗して該調圧用弁部により該調圧用シート部を前記前進方向に押動しつつ、前記止水用弁部を前記止水用シート部に当接着座させ閉弁させるようになしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項3のものは、請求項1において、前記調圧用弁部が、前記感圧動作部材にて移動させられる前記止水用弁部とは別体に構成されて、該止水用弁部に対し該止水用弁部の移動方向に可動とされた上で、付勢手段にて前記調圧用シート部に向けて付勢されているとともに、前記調圧時において、該調圧用弁部はストッパ機構により前記調圧用弁隙間を前記止水用弁隙間よりも小とする位置に位置保持されていて、該調圧時に該調圧用弁部を前記止水用弁部とともに進退移動させることで該調圧用弁隙間を変化させ、2次側液圧を調圧するようになしてあり、前記止水動作時に、前記減圧弁体の前進移動により先ず該調圧用弁部を前記調圧用シート部に当接させ閉弁させた後、更なる該減圧弁体の前進移動により該閉弁状態を保持させたまま前記付勢手段の付勢力に抗して該調圧用シート部により該調圧用弁部を前記減圧弁体の後退方向に押動しつつ、前記止水用弁部を前記止水用シート部に当接させ閉弁させるようになしてあることを特徴とする。
【0023】
請求項4のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記付勢手段としてばねを用いていることを特徴とする。
【0024】
請求項5のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記付勢手段として1次側圧力と2次側圧力との差圧を用いていることを特徴とする。
【0025】
請求項6のものは、請求項1において、前記止水用弁部と調圧用弁部とが前記減圧弁体に一体に構成してあるとともに、前記止水用シート部と調圧用シート部とが固定状態に設けてあり、前記調圧時において前記止水用弁隙間に対し前記調圧用弁隙間が小さくされていて、前記止水動作時に前記減圧弁体の前進移動により先ず前記調圧用弁部が前記調圧用シート部に当接し閉弁した後に、該減圧弁体の更なる前進移動により前記止水用弁部が前記止水用シート部に当接し閉弁するようになしてあり、且つ該調圧用弁部は、前記閉弁後に該減圧弁体の更なる前進移動により前記調圧用シート部に嵌入して閉弁状態を保持しつつ、前記減圧弁体とともに前進移動するものとなしてあることを特徴とする。
【0026】
請求項7のものは、請求項6において、前記調圧用弁部と調圧用シート部とは、それぞれ前記止水用弁部と止水用シート部とに対して径方向の異なった位置に設けてあることを特徴とする。
【0027】
請求項8のものは、請求項6において、前記調圧用弁部と調圧用シート部とは、それぞれ前記止水用弁部と止水用シート部とに対して前記減圧弁体の進退方向である軸方向の異なった位置に設けてあることを特徴とする。
【0028】
請求項9のものは、請求項1〜8の何れかにおいて、(a)主弁体としての前記減圧弁体の背後に形成され、内部の圧力を該減圧弁体に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(b)背圧室に連通し、前記主通路の該減圧弁体よりも上流側の1次側の水を該背圧室に導入して圧力上昇させる導入小孔と、(c)該背圧室に連通して設けられ、該背圧室の水を前記主通路の該減圧弁体よりも下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜通路としてのパイロット通路と、(d)前記減圧弁体の進退移動方向且つ該パイロット通路の開度を変化させる方向に進退移動し、該減圧弁体を追従して同方向に進退移動させるパイロット弁と、を有し、該パイロット弁に対して前記感圧動作部材が連結されていて、該感圧動作部材の感圧変位動作により該パイロット弁を移動させることで、前記減圧弁体を進退移動させるようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0029】
以上のように請求項1のものは、減圧弁体に止水用弁部と調節用弁部とを設ける一方、弁シートには対応する止水用シート部と調圧用シート部とを設けて、それら止水用弁部と止水用シート部とを含んで構成される止水弁機構と、調圧用弁部と調圧用シート部とを含んで構成される調圧弁機構とを、1つの減圧弁機構に具備させ、そしてそれらを感圧動作部材と2次圧調節ばねとを含む駆動機構にて共通に駆動するようになし、調圧時には調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間を、止水用弁部と止水用シート部との間の止水用弁隙間よりも小さく保持して、感圧動作部材とともに移動する減圧弁体即ち調圧用弁部の進退移動により調圧用弁部の弁開度を変化させて2次側圧力を調圧作用させるようになし、また一方止水動作時には減圧弁体の前進移動により、先ず調圧用弁部を調圧用シート部に当接させ閉弁させた上で、その閉弁状態を保持させたまま止水用弁部を止水用シート部に当接させて閉弁させ、主通路を止水するようになしたものである。
【0030】
かかる本発明の減圧弁装置にあっては、2次側圧力を1次側圧力よりも小さくするための減圧作用が調圧弁機構、具体的には調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間の変化によって行われる。
止水用弁部と止水用シート部とは、最終の止水時に閉弁動作して止水を行うものであり、従ってこの請求項1の減圧弁装置では、止水用弁シートと止水用シート部との間の弁隙間(止水用弁隙間)を予め大きく設定し、確保しておくことができる。
【0031】
従ってこの本発明の減圧弁装置では、上流側から流れて来た水に微細なゴミ等の異物が含まれている場合、その異物は隙間の小さい調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間の周りで堰き止められてそこに溜まり、蓄積することとなる。
【0032】
従って最終の止水動作時において、減圧弁体の前進移動により止水用弁部と止水用シート部とが当接して閉弁したときに、それら止水用弁部と止水用シート部とがゴミ等の異物を噛み込んでしまうのを防止でき、止水を良好に行うことができる。
【0033】
この結果、1次側の圧力が2次側へと漏出して2次側圧力が止水後において次第に高くなってしまい、1次側圧力に近づいたり或いは1次側圧力と等しくなったりしてしまう問題を解決することができる。
【0034】
本発明の減圧弁装置はまた、1つの減圧弁機構に止水を行うための止水弁機構と、調圧を行うための調圧弁機構とを具備させ、そして感圧動作部材と2次圧調節ばねとを含む駆動機構を共通の駆動機構として、それらを駆動させるようになしている点を特徴としている。
【0035】
その結果として、本発明の減圧弁装置は構造が簡単となるとともに所要の部材数が少なくて済み、減圧弁装置を小型、コンパクトに構成することができるとともに、所要コストを安価となすことができる。
【0036】
本発明では、上記調圧用シート部を止水用シート部とは別体に構成して、減圧弁体の移動方向に可動となし、これを付勢手段にて調圧用弁部に向けて付勢しておくとともに、ストッパ機構により調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間を、止水用弁部と止水用シート部との間の止水用弁隙間よりも小となる位置に位置規定するようになし、調圧時には調圧用弁部の進退移動によりその調圧用弁隙間を変化させて2次側圧力を調圧し、また止水動作時には減圧弁体の前進移動により、先ず調圧用弁部を閉弁させた後、更なる減圧弁体の前進移動により調圧用弁部を閉弁状態に保持したまま、付勢手段の付勢力に抗して調圧用弁部により調圧用シート部をその前進方向に押動しながら、止水用弁部を止水用シート部に接近させた後当接即ち閉弁させるようになしておくことができる(請求項2)。
このようにすることで、1つの減圧弁機構に止水弁機構と調圧弁機構とを容易に具備させることができる。
【0037】
本発明ではまた、調圧用弁部を、感圧動作部材にて移動させられる止水用弁部とは別体に構成して、止水用弁部の移動方向に可動となし、これを付勢手段にて調圧用シート部に向けて付勢しておくとともに、ストッパ機構により、調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間を止水用弁部と止水用シート部との間の止水用弁隙間よりも小となる位置に位置規定するようになし、調圧時には調圧用弁部の進退移動により調圧用弁隙間を変化させて2次側圧力を調圧し、また止水動作時には止水用弁体の前進移動により先ず調圧用弁部を調圧用シート部に着座させて閉弁させた後、更なる減圧弁体の前進移動により、付勢手段の付勢力に抗して調圧用シート部にて調圧用弁部を減圧弁体の後退方向に押動しつつ(閉弁状態を維持しつつ)、止水用弁部を止水用シート部に当接させ、閉弁させるようになしておくことができる(請求項3)。
このようにした場合においても、1つの減圧弁機構に止水弁機構と調圧弁機構とを容易に具備させることができる。
【0038】
これら請求項2,3において、上記付勢手段としてばねを用いることができる(請求項4)。
また付勢手段として、1次側圧力と2次側圧力との差圧を用いることができる(請求項5)。
【0039】
次に請求項6は、止水用弁部と調圧用弁部とを減圧弁体に一体に構成し、また止水用シート部と調圧用シート部とを固定状態に設けておくとともに、止水用弁部と止水用シート部との間の止水用弁隙間に対し、調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間を小さくしておき、止水動作時に減圧弁体の前進移動により、先ず調圧用弁部を調圧用シート部に当接させて閉弁させた後に、減圧弁体の更なる前進移動により、止水用弁部を止水用シート部に当接させて閉弁するようになし、その際に調圧用弁部を閉弁後に減圧弁体の更なる前進移動に伴って調圧用シート部に嵌入して閉弁状態を保持しつつ減圧弁体とともに前進移動させ、止水用弁部を止水用シート部に当接させて閉弁させるようになしておくことができる(請求項6)。
このようになした場合においても、1つの減圧弁機構に止水弁機構と調圧弁機構とを容易に具備させることができる。
【0040】
この場合において、調圧用弁部と調圧用シート部とは、止水用弁部と止水用シート部とに対し、それぞれ径方向の異なった位置に設けておくことができる(請求項7)。
【0041】
或いは請求項6に従って、調圧用弁部と調圧用シート部とを、止水用弁部と止水用シート部とに対して減圧弁体の進退方向である軸方向の異なった位置に設けておくことができる(請求項8)。
【0042】
本発明では、主弁体としての減圧弁体の背後に形成され、内部の圧力を減圧弁体に対し閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、1次側の水を背圧室に導入して圧力上昇させる導入小孔と、背圧室の水を2次側に抜いて圧力低下させる圧抜通路としてのパイロット通路と、減圧弁体の進退移動方向且つパイロット通路の開度を変化させる方向に進退移動し、減圧弁体を追従して同方向に進退移動させるパイロット弁とを設け、そしてそのパイロット弁に対し、上記の感圧動作部材を連結して感圧動作部材の感圧変位動作によりパイロット弁を移動させることで、減圧弁体を進退移動させるようになしておくことができる(請求項9)。
【0043】
この請求項9の減圧弁装置では、パイロット弁の進退移動により背圧室の圧力を増減させる方向に制御し、そしてその背圧室の圧力に基づいて、主弁体としての減圧弁体を進退移動させるようになしていることから、パイロット弁を介して僅かな力で主弁体としての減圧弁体を進退移動させることができる。
従って、感圧動作部材及び2次圧調節ばねを含む駆動機構を小型にコンパクトに構成でき、以て減圧弁装置全体をより一層小型、コンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態である減圧弁装置の図である。
【図2】同実施形態の調圧時の作用説明図である。
【図3】図2に続く作用説明図である。
【図4】同実施形態の止水時の作用説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態の図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図12】同実施形態の作用説明図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図14】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図15】同実施形態の作用説明図である。
【図16】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図17】同実施形態の作用説明図である。
【図18】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図19】同実施形態の作用説明図である。
【図20】従来の減圧弁装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1は、本発明をパイロット弁の移動により主弁体としての減圧弁体を進退移動させるようになしたパイロット式の減圧弁装置に適用した場合の例を示したもので、図中10はその減圧弁装置を、12は減圧弁装置10のバルブボデーを表している。
バルブボデー12には水の流入口14と流出口16、及びそれらを連絡する主通路18が設けられている。
図中18-1,18-2はその主通路18における1次側通路,2次側通路をそれぞれ表している。
【0046】
20は減圧弁機構で、この減圧弁機構20は、主通路18上に設けられた主弁体としての減圧弁体22を有している。
減圧弁体22はダイヤフラム式の弁体で、ゴム等の弾性材から成るダイヤフラム24と、これを保持する硬質の樹脂製の保持部材26とから成っており、そのダイヤフラム24の外周部が全周に亘りバルブボデー12に固定され、保持されている。
【0047】
この減圧弁体22の図中上側の背後には背圧室28が形成されている。この背圧室28は、内部の圧力を減圧弁体22に対して図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0048】
30は、減圧弁体22の中心から偏心した位置で減圧弁体22を貫通して設けられた導入小孔で、この導入小孔30は、1次側通路18-1と背圧室28とを連通させて、1次側通路18-1からの水を背圧室28へと導入し、背圧室28の圧力を上昇させる。
【0049】
減圧弁体22の中心部には、これを貫通して背圧室28と2次側通路18-2とを連通させるパイロット通路32が設けられている。このパイロット通路32は、背圧室28の水を2次側通路18-2へと流出させて背圧室28の圧力を減少させる。
【0050】
34は、減圧弁体22を移動させるための駆動機構で、この駆動機構34は、2次側圧力(2次側通路18-2の圧力)Pに感応して動作する感圧動作部材としてのダイヤフラム36と、コイルばねから成る2次圧調節ばね38とを含んで構成されている。
ダイヤフラム36は、外周部が全周に亘りバルブボデー12に固定され、保持されている。
【0051】
このダイヤフラム36の図中上面は2次側圧力Pを受ける受圧面40とされている。
このダイヤフラム36の図中下側には、連通孔42を通じて大気に開放されたばね室44が形成されていて、そこに上記の2次圧調節ばね38が収容されている。
2次圧調節ばね38は、その上端をばね受46を介してダイヤフラム36に当接させ、その付勢力をダイヤフラム36に対して図中上向きに作用させている。
【0052】
48は、バルブボデー12の図中下端部の開口を閉鎖するプラグで、外周面の雄ねじ50においてバルブボデー12の雌ねじ52に螺合されている。
このプラグ48は、2次圧調節ばね38の下端を受けるとともに、図中上方の内側にばね室44を形成している。
尚このプラグ48には、図中下端に工具係合用の係合溝54が設けられている。
【0053】
ダイヤフラム36の図中上側には、2次圧室56が形成されており、この2次圧室56が、連通孔58を通じて2次側通路18-2と連通させられている。
即ち2次側圧力Pが連通孔58を通じて2次圧室56に導入され、ダイヤフラム36に対してこの2次側圧力Pが図中下向きに、即ち2次圧調節ばね38による図中上向きの付勢力の作用方向とは反対方向に作用せしめられている。
【0054】
ダイヤフラム36は、この2次側圧力Pの変動に感応して図中上下方向に進退移動する。
詳しくは、2次側圧力Pによる図中下向きの力と、2次圧調節ばね38による図中上向きの付勢力との差に応じて中心部が図中上下方向に移動し、感圧動作せしめられる。
【0055】
ダイヤフラム36には軸部60が固定され、かかる軸部60が、ダイヤフラム36から2次側通路18-2を通って図中上向きに延び出している。
軸部60は、減圧弁体22の中心部を貫通して更に上向きに延びており、そして背圧室28内において軸部60の先端部(上端部)に、円柱状をなすパイロット弁62が固定状態に設けられている。
【0056】
パイロット弁62は、減圧弁体22の上面に設けられたパイロット弁座66に向けて、パイロット通路32の開度を増減変化させる方向に進退移動し、以て背圧室28内の圧力制御を行う。
尚、パイロット弁62はバルブボデー12に形成された嵌合孔68に摺動可能に嵌合され、その嵌合孔68によって移動案内されるようになっている。
【0057】
このパイロット弁62の図中上側の背後には水室70が形成されている。この水室70は、パイロット弁62と嵌合孔68内面との間の環状隙間を通じて背圧室28と連通しており、水室70の圧力は背圧室28内の圧力と同圧とされている。
【0058】
72は弁シートで、この弁シート72は内周側の止水用シート部74と、外周側に位置し、2次側圧力Pを減圧作用するための調圧用シート部76とを有している。
止水用シート部74は、バルブボデー12に固定状態に一体に設けられた円筒部78の先端部(図中上端部)にて構成されている。
この円筒部78には、これとは別体をなす円筒部材80が図中上下方向に摺動可能に嵌合されており、そしてこの円筒部材80の図中上端部にて上記の調圧用シート部76が構成されている。
【0059】
ここで円筒部材80は、コイルばね(付勢手段)82により図中上向きに付勢されている。
但しこの円筒部材80は、円筒部78に形成された径方向外向きのフランジ部84と、円筒部材80の下端部に形成された径方向内向きのフランジ部86から成るストッパ機構にて図中上向きの移動端が規定されており、調圧時における調圧用シート部76の位置がこれらフランジ部84と86とが当接する位置に位置規定され、そこに保持されている。
【0060】
尚、円筒部材80におけるフランジ部86の内周面にはリング状のシール材88が保持されており、このシール材88によって円筒部材80の下端部の内周面と円筒部78の外周面との間が水密にシールされている。
【0061】
上記減圧弁体22は、調圧用シート部76に対して図中上下方向に対応する外周側部分が調圧用弁部90を成し、また止水用シート部74に対して図中上下方向に対応する内周側部分が止水用弁部92を成している。
【0062】
図に示しているようにこの実施形態では通常の状態、即ち2次側圧力Pを減圧状態に調圧する調圧時においては、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の弁隙間(調圧用弁隙間)が狭く設定され、そしてこれに対して止水用弁部92と止水用シート部74との間の弁隙間(止水用弁隙間)が大きく設定されている。
【0063】
次にこの実施形態の減圧弁装置10の作用を以下に説明する。
この実施形態の減圧弁装置10では、2次側圧力Pが増大変化すると、これに感応してダイヤフラム36が図中下向きに変位動作し、また逆に2次側圧力Pが減少変化すると、ダイヤフラム36がこれに感応して図中上向きに変位動作する。
そしてこれに伴って、ダイヤフラム36に軸部60を介して一体移動する状態に連結されたパイロット弁62が図中下向きに前進移動し、或いはまた逆に図中上向きに後退移動する。
そしてこのパイロット弁62の進退移動に追従して主弁体としての減圧弁体22が、パイロット弁62の進退移動量と同じ距離だけパイロット弁62と同方向に前進或いは後退移動せしめられる。
【0064】
詳しくは、図2(I),(II)に示すようにパイロット弁62が図中下向きに前進移動すると、パイロット弁62とパイロット弁座66との間の隙間即ちパイロット通路32の開度が一時的に小さくなって、背圧室28からパイロット通路32を通じて2次側通路18-2へと流出する水の量が少なくなり、背圧室28の圧力が増大する。
【0065】
するとその増大した背圧室28の圧力によって、減圧弁体22が図中下向きに前進移動し、そして減圧弁体22を図中下向きに押圧する背圧室28の圧力と、減圧弁体22に対して図中上向きに作用する1次側圧力P及び2次側圧力Pの圧力とが丁度均り合い、バランスしたところで減圧弁体22の前進移動が停止する。
このとき、パイロット弁62と減圧弁体22(詳しくはパイロット弁座66)との間の間隙が一定の微小な追従間隙に保持される。
【0066】
そしてこの減圧弁体22の図中下向きの前進移動により、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間Sが小さくなって(図2(III))、1次側通路18-1から2次側通路18-2へと流れ込む水の流れに対する絞りが大となり、そこでの圧損が増大せしめられる。
即ちその圧損の増大によって2次側圧力Pが減少せしめられる。
【0067】
この状態からパイロット弁62が更に図中下向きに前進移動すると、上記の一定の追従間隙を維持しながら減圧弁体22が更に図中下向きにパイロット弁62に追従して前進移動し、上記の調圧用弁隙間Sを更に小さく変化させる。
これにより上記の調圧用弁部90と調圧用シート部76との間での圧損が更に増大して、2次側圧力Pが更に減少せしめられる(図2(IV))。
【0068】
一方、逆にパイロット弁62が図中上向きに後退移動すると(図3(I),(II))、これに追従して減圧弁体22が図中上向きに後退移動し、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間Sを大きく変化させる(図3(III))。
これによって調圧用弁部90と調圧用シート部76とによる圧損が小さくなって、2次側圧力Pが増大変化せしめられる。
【0069】
パイロット弁62が更に図中上向きに後退移動し、そして減圧弁体22がこれに追従して後退移動すると(図3(IV))、上記の調圧用弁隙間Sは更に大きくなって、調圧用弁部90と調圧用シート部76とによる圧損が更に小さくなり、2次側圧力Pが更に高められる。
尚、止水用弁部92と止水用シート部74との間の止水用弁隙間は大きく設定されているため、減圧作用は調圧用弁部90と調圧用シート部76にて行われる。
【0070】
これらの調圧時において、上流側のストレーナの目を通過して下流側に水とともに流れて来たゴミ等の微細な異物Gは、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間Sが小さく保持されていることによって、図1の部分拡大図に示しているようにその周りで堰き止められて蓄積し、かかる異物Gが止水用弁部92と止水用シート部74との間の部分に流れ込んで来ることはない。
また若し流れ込んで来たとしても、止水用弁部92と止水用シート部74との間の止水用弁隙間が大きく保持されているので、同部分を通過して下流側へと流れて行く。
【0071】
以上は調圧時の作用であるが、この減圧弁装置10は止水時においては次のように作用する。
減圧弁装置10は、2次側圧力Pが一定圧以上に高くなろうとすると、減圧弁体22が大きく図中下向きに前進移動して、止水用弁部92が止水用シート部74に当って閉弁するが、その際、図4(V)に示しているように減圧弁体22は先ず外周側の調圧用弁部90が調圧用シート部76に当接して閉弁し、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間を閉鎖する。
【0072】
この時点で1次側通路18-1と2次側通路18-2とは一応遮断されるが、1次側通路18-1の水は導入小孔30を通じて背圧室28に流入し、更にパイロット通路32を経由して2次側通路18-2へと微小量流出する。
【0073】
そしてこれに伴う2次側圧力Pの微小な圧力上昇に応じて、パイロット弁62が更に図中下向きに前進移動し、またこれに伴って減圧弁体22が更に図中下向きに前進移動し、止水用弁部92が止水用シート部74に向けて接近移動する。
このとき、調圧用弁部90は調圧用シート部76に当って閉弁状態を維持したまま、調圧用シート部76即ち円筒部材80をばね82の付勢力に抗して図中下向きに押動し、前進移動を続行する(図4(VI))。
【0074】
そして減圧弁体22の更なる図中下向きの前進移動により、最終的に止水用弁部92が止水用シート部74に当接して止水状態に閉弁する(図4(VII))。
そしてこれに続いてパイロット弁62が減圧弁体22のパイロット弁座66に当接して閉弁し、ここにおいて1次側通路18-1と2次側通路18-2とが完全に遮断される(図4(VIII))。
【0075】
この止水時においては、前述したように止水用弁部92と止水用シート部74とが異物Gを噛み込んでしまうことはなく、従ってその異物Gの噛込みに起因して止水用弁部92と止水用シート部74との間が止水不良となって、そこから1次側通路18-1の水が2次側通路18-2へと漏出するといったことはなく、従ってその後において、異物Gの噛込みに起因して2次側圧力Pが僅かづつ上昇して行き、最終的に1次側圧力Pに近づいたり、或いは1次側圧力Pと等しくなってしまうといった不具合を生じない。
【0076】
以上のような本実施形態の減圧弁装置10では、1つの減圧弁機構20に、止水用弁部92と止水用シート部74とを含んで構成された止水を行うための止水弁機構と調圧用弁部90と調圧用シート部76とを含んで構成された調圧を行うための調圧弁機構とが備えられ、そして感圧動作部材としてのダイヤフラム36と2次圧調節ばね38とを含む駆動機構34を共通の駆動機構として、それらが駆動されるようになっているため、減圧弁装置10の構造が簡単となるとともに所要の部材数が少なくて済み、減圧弁装置10を小型、コンパクトに構成することができるとともに、所要コストを安価となすことができる。
【0077】
またこの実施形態の減圧弁装置10では、パイロット弁62の進退移動により背圧室28の圧力を増減させる方向に制御し、そしてその背圧室28の圧力に基づいて主弁体としての減圧弁体22を進退移動させるようになしていることから、パイロット弁62を介して僅かな力で主弁体としての減圧弁体22を進退移動させることができる。
従って、ダイヤフラム36及び2次圧調節ばね38を含む駆動機構34を小型にコンパクトに構成でき、以て減圧弁装置10全体をより一層小型、コンパクト化することができる。
【0078】
図5は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態は、円筒部材80をバルブボデー12に固定状態に一体に設けられた円筒部78に対して径方向の内側に配置し、その円筒部材80の上端部にて構成される調圧用シート部76を止水用シート部74の内側に形成し、そしてこれに対応して減圧弁体22の、止水用シート部74に対して上下方向に対向する外周側の部分を止水用弁部92となし、また調圧用シート部76に対して図中上下方向に対向する内周側の部分を調圧用弁部90となした例である。
【0079】
尚、この実施形態では止水用シート部74に対して止水用弁部92がダイヤフラム24において弾性当接し止水するが、調圧用弁部90は、ダイヤフラム24を下側から挟持する樹脂製の保持部材26の円板状の板状部94が直接調圧用シート部76に非弾性当接して閉弁する。
尚他の点については上記実施形態と基本的に同様である。
【0080】
図6は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例では、円筒部78の径方向外側に配置された円筒部材80の下端部がダイヤフラム98にて全周に亘り円筒部78に弾性連結されている。
また円筒部材80は、円筒部78の径方向外向きのフランジ部84と、円筒部材80の段付部96から成るストッパ機構により上昇端が規定される。
【0081】
この実施形態では、外周側の調圧用弁部90が、保持部材26において直接調圧用シート部76に当接するようになしてあり、一方止水用弁部92は、減圧弁体22に設けられた弾性のシール材100において止水用シート部74に当接するようになしてある。
尚他の点については図1に示す実施形態と基本的に同様である。
【0082】
この実施形態では、図7(A)に示しているように円筒部材80、即ち調圧用シート部76は、図中上向きに作用する1次側圧力Pと、下向きに作用する2次側圧力Pとの差圧によって図中上向きに付勢される。
この実施形態では、図1の実施形態のように調圧用シート部76の付勢のためのばね82については設けられていない。
【0083】
この実施形態では、止水動作時に減圧弁体22が図中下向きに前進移動し、そして減圧弁体22が即ち調圧用弁部90が調圧用シート部76に当接した後においては、1次側圧力Pにより円筒部材80即ち調圧用弁部76に対して上向きに働く力と、減圧弁体22に対して1次側圧力(背圧室28の圧力であるが、これは実質的に1次側圧力Pにほぼ等しい)により下向きに働く力によって(円筒部材80に対しては2次側圧力Pが下向きに、また減圧弁体22に対しては2次側圧力Pが上向きに働くために、この2次側圧力Pは互いに相殺される)、図7(B)に示しているように減圧弁体22と円筒部材80即ち調圧用弁部90と調圧用シート部76とが互いに押し付けられた状態の下で、それら減圧弁体22と調圧用シート部76とが一体に図中下向きに移動させられる。
【0084】
詳しくは、止水用シート部74より内側部分の面積S(図6参照)において減圧弁体22に対し図中下向きに働く1次側圧力Pと上向きに働く2次側圧力Pとの差圧により、減圧弁体22と円筒部材80とが互いに押し付けられながら一体に図中下向きに移動する。
【0085】
従ってこの実施形態では、図1に示す実施形態のようにばね82にて調圧用シート部76を付勢する構造に比べて、1次側圧力が低い条件でも減圧弁体22にて調圧用シート部76を押動することができる。
【0086】
図8は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、調圧用シート部76を一体に構成する円筒部材80と、止水用シート部74を構成する円筒部78とをダイヤフラム98で連結し、円筒部材80を1次側圧力Pと2次側圧力Pとの差圧によって図中上向きに付勢し、また円筒部材80の下端の内向きのフランジ部86と、止水用シート部74に径方向外方に突出形成した外向きのフランジ部84とから成るストッパ機構にて、円筒部材80即ち調圧用シート部76の上昇端を規定するようになし、そして減圧弁体22の保持部材26から下向きに突出させた止水用弁部92を止水用シート部74の上面の、ダイヤフラム98にて形成されるシール材102に対して下向きに弾性当接させるようになした例である。
尚、調圧用弁部90は減圧弁体22における硬質の樹脂製の保持部材26から成っており、この調圧用弁部90が円筒部材80の上端の調圧用シート部76に対して非弾性当接するようになしてある。
【0087】
図9及び図10は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例では、減圧弁体22をダイヤフラム24の可撓変形によって移動する第1部分22-1と、これとは別体をなして第1部分22-1に対し図中上下方向に相対移動する第2部分22-2とで構成して、その第1部分22-1に止水用弁部92を設け、これを弾性を有するシール材100の部分で、バルブボデー12に一体に構成した止水用シート部74に弾性当接させるようになし、また第2部分22-2に調圧用弁部90を設けて、これをバルブボデー12に一体に構成した調圧用シート部76に非弾性当接させるようになしている。
【0088】
ここで第2部分22-2は、円筒形状をなす小径部である内筒部104と、大径部106、及びそれらを径方向に連結する連結部108を有しており、また図中上端部には径方向外向きのフランジ部110を有していて、そのフランジ部110が、第1部分22-1の径方向内向きのフランジ部112にて下側から支持されるようになっている。
【0089】
第2部分22-2の内筒部104は、第1部分22-1に設けられた外筒部114に対して、リング状のシール材116による水密シール状態の下で図中上下方向に摺動可能に嵌合されている。
ここで第2部分22-2は、1次側圧力Pと2次側圧力Pとの差圧及びそれらに対する受圧面積の差によって図中下向き、即ち調圧用弁部90を調圧用シート部76に接近させる方向に図中下向きに付勢されている。
場合によってばねを用いてこの第2部分22-2を下向きに付勢するといったことも可能である。
【0090】
この実施形態では、上記各実施形態と同様に、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間に対して、止水用弁部92と止水用シート部74との間の止水用弁隙間が大きくされており、調圧時においては、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用隙間によって減圧作用をなす。
【0091】
また止水動作時には、図10に示しているように減圧弁体22-1の図中下向きの前進移動により先ず調圧用弁部90を調圧用シート部76に当接させて、調圧用弁部90を閉弁させる(図10(A))。
その後、調圧用弁部90を閉弁状態に保ったまま、第2部分22-2を第1部分22-1に対して図中上向き即ち第1部分22-1の後退方向に相対移動させながら、第1部分22-1が図中下向きに前進移動し、そして一定量前進移動したところで止水用弁部92が止水用シート部74に当接して閉弁し(図10(B))、止水を行う。
【0092】
またその後においてパイロット弁62がパイロット弁座66に当接して、パイロット弁62が閉弁状態となる。
尚この実施形態では、背圧室28が、水室70及び連通路117を介して2次側通路18-2に連通させられ、またパイロット弁62がシール材118にて嵌合孔68の内面に水密シール状態に嵌合されている。
【0093】
図11及び図12は、本発明の更に他の実施形態を示している。
この実施形態は、減圧弁体22の中心部に図中下向きの突出部120を設けて、その突出部120の先端部(下端部)に、調圧用弁部90を止水用弁部92と一体に構成し、またバルブボデー12に、止水用シート部74と調圧用シート部76とを円筒部78の部分に一体に固定状態に設けている。
ここで調圧用シート部76には、中心側に向かって図中下方に傾斜する傾斜形状の当接面122が設けてある。
また一方、調圧用弁部90には弾性を有するリング状のシール材(ここではOリングが用いられている)124が保持させてある。
【0094】
この実施形態では、上記のように止水用弁部92と調圧用弁部90とが減圧弁体22に一体に設けてあるとともに、止水用シート部74と調圧用シート部76とがバルブボデー12に固定状態に一体に設けてあり、且つ止水用弁部92と止水用シート部74とは、調圧用弁部90と調圧用シート部76とに対して径方向の異なった位置に設けてある。
同時にこの実施形態では、調圧用弁部90と調圧用シート部76とが、止水用弁部92と止水用シート部74とに対してそれぞれ軸方向の異なった位置に設けてある。
【0095】
この実施形態においても、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間が小さく設定され、そしてこれに対して止水用弁部92と止水用シート部74との間の止水用弁隙間が大きく設定されている点で、上記の各実施形態と同様である。
【0096】
この実施形態では、止水動作時において図12(I)に示すように減圧弁体22が図中下向きに前進移動すると、先ずシール材124が調圧用シート部76の傾斜形状の当接面122に当接し(図12(II))、そして更に減圧弁体22が図中下向きに前進移動するのに伴って、シール材124が傾斜形状の当接面122による案内作用で弾性的に縮径変形し、かかるシール材124が円筒部78の内面に嵌入する。
【0097】
調圧用弁部90は、その閉弁状態を維持したまま減圧弁体22の前進移動にともない図中下向きに移動し、そして減圧弁体22の下向きの前進移動により止水用シート部74に接近した止水用弁部92が、最終的に止水用シート部74に当接して、そこにおいて止水用弁部92が止水状態に閉弁する(図12(III))。
尚他の点については図9に示した実施形態と基本的に同様である。
【0098】
尚この実施形態において、シール材124はシール主目的としたものではなく(この意味ではシール材124は弾性材としてのものである)、自らが弾性変形することにより調圧用弁部90を調圧用シート部76の内周側に嵌入させて、止水用弁部92を止水用シート部74に当接させ閉弁させる働きをなすものである。
【0099】
この意味において、図13に示しているようにシール材124の外周側に、例えば樹脂製のリング部材125を装着し、このリング部材125を傾斜形状の当接面122及びこの当接面122に続く下側の調圧用シート部76における内周面に対して摺動させるようになしても良い。
このようにすれば、調圧用弁部90の調圧用シート部76に対する摺動抵抗を低減することができる。
ここでリング部材125は周方向所定個所にスリット126が設けてあって、このスリット126によって径方向の弾性変形能が高められている。
【0100】
また下端部には径方向内向きに突出したフランジ部128が設けられていて、このフランジ部128においてシール材124をその下側で受けるようになしてある。
尚、図13(B)に示しているように減圧弁体22におけるダイヤフラム24を、内周側において下向きに延長し、その延長部130の下端部を上記のシール材124として働かせるようになすこともできる。
【0101】
次に図14は、本発明を非パイロット式の減圧弁装置に適用した場合の実施形態を示している。
この実施形態では、カバー131の内側にダイヤフラム36と2次圧調節ばね38とを含む駆動機構34が収容されている。
尚、駆動機構34の他の構成については図1に示したものと基本的に同様である。
【0102】
この実施形態では、減圧弁機構20における減圧弁体22が、弁部132と軸部134とを有している。
軸部134にはピストン部136が一体に構成されており、このピストン部136が、バルブボデー12に一体に構成されたシリンダ部138の内面に、シール材140による水密シール状態の下で図中上下方向に摺動可能に嵌合している。
【0103】
尚、減圧弁機構20の上流側には逆止弁142が設けられている。
この逆止弁142は、逆止弁体144と弁シート146とを有しており、逆止弁体144が弁シート146に当接することで、1次側通路18-1と2次側通路18-2とを遮断する。
この逆止弁142は、1次側通路18-1から2次側通路18-2への水の流通のみを許容し、逆方向の流通を遮断作用する。
【0104】
減圧弁機構20の上流側にはまた、異物ろ過のためのストレーナ148が設けられ、更にその図中下側に水抜操作のための操作部150が設けられている。
水抜きの操作は、操作部150を図中上向きに押込操作し、逆止弁体144を強制的に開弁させることで行うことができる。
詳しくは2次側についている水栓を開放し、そして逆止弁142を開弁させることで、2次側の水栓からエアを導入することで1次側配管を水抜きすることができる。
【0105】
図15に示すように、この実施形態において弁シート72は、減圧弁体22における弁部132に対向するようにバルブボデー12に下向きに一体に構成された止水用シート部74を有している。
止水用シート部74は、円筒部78の図中下端部に一体に構成されている。
【0106】
円筒部78には、これとは別体をなす円筒部材80が図中上下方向に摺動可能に嵌合されており、そしてこの円筒部材80の下端部に調圧用シート部76が一体に構成されている。
尚、円筒部材80はリング状のシール材88による水密シール状態の下で円筒部78に対し摺動可能に嵌合している。
また円筒部材80は、コイルばね(付勢手段)82によって図中下向き即ち弁部132に向けて下向きに付勢されている。
【0107】
弁部132は、調圧用シート部76に対応する外周側部分が調圧用弁部90を成しており、また止水用シート部74に対応する内周側部分が止水用弁部92を成している。
尚この実施形態において、弁部132はほぼ全体が弾性を有するシール材にて構成されている。
【0108】
この実施形態においても、上記の各実施形態と同様、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間が小さく設定され、これに対して止水用弁部92と止水用シート部74との間の止水用弁隙間が大きく設定されている。
【0109】
而して2次側圧力Pを減圧するための調圧時においては、調圧用弁部90と調圧用シート部76との間の調圧用弁隙間によって水流が絞られ、またその調圧用弁隙間の変化によって2次側圧力Pが増減変化せしめられ、2次側圧力Pが設定された一定圧力の減圧状態に保持される。
【0110】
この実施形態においても、止水動作時には減圧弁体22の図中上向きの前進移動によって、先ず調圧用弁部90が調圧用シート部76に当接して閉弁し、続いて減圧弁体22の更なる図中上向きの前進移動により、調圧用弁部90が調圧用シート部76即ち円筒部材80をばね82の付勢力に抗して図中上向きに押動しながら、止水用弁部92が止水用シート部74に接近移動し、そして最終的にかかる止水用弁部92が止水用シート部74に当接して水密に閉弁し止水を行う(図15(B))。
【0111】
尚、この実施形態ではピストン部136の径dと、止水用シート部74の径(シート径)、即ち弁部132が止水用シート部74に当接し閉弁したときの止水用シート部74より内側の部分の径が同径のdである。
【0112】
この種従来の減圧弁装置200では、前述したように図20の弁部214と弁シート218との間の弁隙間の大小変化によって、2次側圧力Pを減圧するための調圧作用を行う。
このとき、ピストン部における1次側圧力Pの受圧面積と、弁部214における1次側圧力Pの受圧面積とは等しく、従ってその減圧特性に対して1次側圧力Pは特に影響を及ぼさない。
【0113】
但しこの実施形態では弁部132における調圧用弁部90と調圧用シート部76とによって調圧作用を行うものであり、而してその調圧用シート部76は、止水用シート部74に対してその径(シート径)dが大きいために、調圧作用に対して1次側圧力Pが影響を及ぼす問題が生ずる。
【0114】
更に調圧用弁部90が調圧用シート部76に当接してからは、弁部132がばね82の付勢力に抗して前進移動することとなるため、調圧作用(減圧作用)に際して、駆動機構34の2次圧調節ばね38による付勢力に、このばね82の付勢力の影響が加わることとなって、2次圧調節ばね38だけの場合に対し減圧特性が変化してしまう。
【0115】
この点、図1〜図13に示した上記のパイロット式の減圧弁装置では、パイロット弁62の移動によって減圧弁体22を背圧室28の圧力を利用して移動させるものであるため、調圧特性(減圧特性)に対して影響を及ぼすのは2次圧調節ばね38だけであり、またパイロット弁62の移動に対して調圧用シート部76の位置の如何が影響を及ぼすことがないため、それらの影響を排除して減圧作用を高精度で行うことができ、減圧特性が特に良好である利点を有する。
【0116】
図16及び図17は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例では、止水用シート部74の外周側においてバルブボデー12から深さの浅い円筒部を立ち下げて、その円筒部の下端部に調圧用シート部76を一体に構成し、そしてこの調圧用シート部76と、弁部132における外周側部分の調圧用弁部90との間に調圧用弁隙間を形成し、また止水用シート部74と弁部132の内周側部分の止水用弁部92との間に止水用弁隙間を形成するようになした例である。
【0117】
尚調圧用シート部76には、図11に示したのと同様の傾斜形状の当接面122が形成してある。
この実施形態では、調圧用弁部90と止水用弁部92とが減圧弁体22に一体に構成され、また調圧用シート部76と止水用シート部74とがバルブボデー12に固定状態に一体に構成され、そして調圧用弁部90と調圧用シート部76とが、止水用弁部92と止水用シート部74に対して径方向の異なった位置に設けられている。
尚他の点については図14及び図15に示した実施形態と基本的に同様である。
【0118】
この実施形態では、止水動作時において減圧弁体22が図中上向きに前進移動すると、図17(A)に示すように弁部132における調圧用弁部90が調圧用シート部76の当接面122に当接して閉弁する。
更に減圧弁体22が図中上向きに前進移動すると、図17(B)に示しているように調圧用弁部90が調圧用シート部76の傾斜形状の当接面122に案内されて弾性的に縮径変形し、調圧用シート部76の内面に嵌入するに到る。
このようにして調圧用弁部90が閉弁状態を保ったまま、減圧弁体22が図中上向きに更に前進移動して、最終的に止水用弁部92が止水用シート部74に当接して閉弁し、止水を行う。
【0119】
図18及び図19は、本発明の更に他の実施形態を示している。
この実施形態では、バルブボデー12に一体に構成された止水用シート部74の外周側において、円筒部152がバルブボデー12から立ち下がる状態に一体に構成され、そしてこの円筒部152の図中下端部に、調圧用シート部76が一体に構成されている。
ここで調圧用シート部76は、止水用シート部74と同径(同じシート径)で形成されている。
【0120】
一方減圧弁体22には、図中下端部に調圧用シート部76に対応した調圧用弁部90が設けられ、またこの調圧用弁部90の図中上側位置に、止水用シート部74に対応した止水用弁部92が軸部134に設けられている。
ここで止水用弁部92には、シール材100が保持されている。
【0121】
この実施形態では、図から明らかなように調圧用シート部76及び調圧用弁部90が、止水用シート部74及び止水用弁部92に対してそれぞれ軸方向の異なった位置に設けられている。
この実施形態では、止水動作時において図19(A)に示しているように減圧弁体22の図中上向きの前進移動により、先ず調圧用弁部90が調圧用シート部76の傾斜形状の当接面122に当接して閉弁する。
【0122】
そして減圧弁体22の更なる図中上向きの前進移動とともに、調圧用弁部90が当接面122の案内作用で弾性的に縮径変形して、調圧用シート部76に嵌入する。
このようにして調圧用弁部90が閉弁状態を保持したまま、止水用弁部92が止水用シート部74に接近移動し、そして最終的に止水用弁部92が閉弁して止水を行う(図19(B))。
【0123】
この実施形態の場合、ピストン部136の外径即ちシリンダ部138の内径dに対して、止水用シート部74及び調圧用シート部76のシート径がdで同径であり、従って2次側圧力Pの減圧のための調圧作用時において、1次側圧力Pの影響を排除することができる。
【0124】
更にこの実施形態では、図14及び図15の実施形態に示すような調圧用シート部76の付勢のためのばね82を用いていないため、そのばね82による影響も排除することができる。
但しこの実施形態では、調圧用弁部90が調圧用シート部76内部に嵌入する際及びその後の調圧用弁部90の弾性変形に基づく抵抗が止水動作の際に発生し、止水用弁部92が閉弁する過程でその影響が最終の減圧特性に及ぶ。
【0125】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示である。
例えば本発明は図14〜図19に示す実施形態の減圧弁装置10をパイロット式の減圧弁装置として構成することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0126】
10 減圧弁装置
14 流入口
16 流出口
18 主通路
20 減圧弁機構
22 減圧弁体
28 背圧室
30 導入小孔
32 パイロット通路
34 駆動機構
36 ダイヤフラム
38 2次圧調節ばね
40 受圧面
62 パイロット弁
72 弁シート
74 止水用シート部
76 調圧用シート部
82 コイルばね(付勢手段)
90 調圧用弁部
92 止水用弁部
S 調圧用弁隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)流入口と流出口とを連絡する主通路上に設けられ、弁部を弁シートに向けて進退移動させて該主通路の水の流量を絞り、減圧作用する減圧弁体と、(ロ)2次側圧力を受ける受圧面を有し、該2次側圧力の変動に応じて感圧変位動作し、前記減圧弁体を進退移動させる感圧動作部材と、(ハ)該感圧動作部材に対して該2次側圧力の作用方向とは逆向きに付勢力を作用させる2次圧調節ばねと、を備えた減圧弁機構を有し、前記感圧動作部材を、前記2次側圧力の増大により前記2次圧調節ばねの付勢力の作用方向と逆方向に感圧変位動作させて前記減圧弁体の弁開度を小とする方向に、また該2次側圧力の減少により該2次圧調節ばねの付勢力の作用方向に感圧変位動作させて該減圧弁体の弁開度を大とする方向に該減圧弁体を移動させ、該2次側圧力を1次側圧力よりも低い減圧状態に保持する減圧弁装置において、
前記減圧弁体には止水用弁部と調圧用弁部とを設ける一方、前記弁シートには対応する止水用シート部と調圧用シート部とを設けて、1つの前記弁機構に、前記感圧動作部材と前記2次圧調節ばねとを含む駆動機構にて共通に駆動される、前記止水用弁部と止水用シート部とを含んで構成される止水弁機構と、前記調圧用弁部と前記調圧用シート部とを含んで構成される調圧弁機構とを具備させ、
調圧時には、前記調圧用弁部と調圧用シート部との間の調圧用弁隙間を、前記止水用弁部と止水用シート部との間の止水用弁隙間よりも小さく保持して、前記感圧動作部材とともに移動する前記調圧用弁部の進退移動による該調圧用弁隙間の増減変化により、前記主通路における水流に対する絞りを変化させて調圧作用させ、
止水動作時には、前記減圧弁体の前進移動により先ず前記調圧用弁部を前記調圧用シート部に当接させ閉弁させた上で、該閉弁状態を保持させたまま前記止水用弁部を前記止水用シートに当接させて閉弁させ、前記主通路を水密に遮断し止水するようになしてあることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記調圧用シート部が前記止水用シート部とは別体に構成されて、前記減圧弁体の移動方向に可動とされた上で、付勢手段にて前記調圧用弁部に向けて付勢されているとともに、
前記調圧時において、該調圧用シート部はストッパ機構により前記調圧用弁隙間を前記止水用弁隙間よりも小とする位置に位置保持されていて、該調圧時に前記調圧用弁部の進退移動により該調圧用弁隙間を変化させ、前記2次側圧力を調圧するものとなしてあり、
前記止水動作時に、前記減圧弁体の前進移動により先ず該調圧用弁部を該調圧用シート部に当接させ閉弁させた後、更なる該減圧弁体の前進移動により該閉弁状態を保持させたまま前記付勢手段の付勢力に抗して該調圧用弁部により該調圧用シート部を前記前進方向に押動しつつ、前記止水用弁部を前記止水用シート部に当接着座させ閉弁させるようになしてあることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項3】
請求項1において、前記調圧用弁部が、前記感圧動作部材にて移動させられる前記止水用弁部とは別体に構成されて、該止水用弁部に対し該止水用弁部の移動方向に可動とされた上で、付勢手段にて前記調圧用シート部に向けて付勢されているとともに、
前記調圧時において、該調圧用弁部はストッパ機構により前記調圧用弁隙間を前記止水用弁隙間よりも小とする位置に位置保持されていて、該調圧時に該調圧用弁部を前記止水用弁部とともに進退移動させることで該調圧用弁隙間を変化させ、2次側液圧を調圧するようになしてあり、
前記止水動作時に、前記減圧弁体の前進移動により先ず該調圧用弁部を前記調圧用シート部に当接させ閉弁させた後、更なる該減圧弁体の前進移動により該閉弁状態を保持させたまま前記付勢手段の付勢力に抗して該調圧用シート部により該調圧用弁部を前記減圧弁体の後退方向に押動しつつ、前記止水用弁部を前記止水用シート部に当接させ閉弁させるようになしてあることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項4】
請求項2,3の何れかにおいて、前記付勢手段としてばねを用いていることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項5】
請求項2,3の何れかにおいて、前記付勢手段として1次側圧力と2次側圧力との差圧を用いていることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項6】
請求項1において、前記止水用弁部と調圧用弁部とが前記減圧弁体に一体に構成してあるとともに、前記止水用シート部と調圧用シート部とが固定状態に設けてあり、
前記調圧時において前記止水用弁隙間に対し前記調圧用弁隙間が小さくされていて、前記止水動作時に前記減圧弁体の前進移動により先ず前記調圧用弁部が前記調圧用シート部に当接し閉弁した後に、該減圧弁体の更なる前進移動により前記止水用弁部が前記止水用シート部に当接し閉弁するようになしてあり、
且つ該調圧用弁部は、前記閉弁後に該減圧弁体の更なる前進移動により前記調圧用シート部に嵌入して閉弁状態を保持しつつ、前記減圧弁体とともに前進移動するものとなしてあることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項7】
請求項6において、前記調圧用弁部と調圧用シート部とは、それぞれ前記止水用弁部と止水用シート部とに対して径方向の異なった位置に設けてあることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項8】
請求項6において、前記調圧用弁部と調圧用シート部とは、それぞれ前記止水用弁部と止水用シート部とに対して前記減圧弁体の進退方向である軸方向の異なった位置に設けてあることを特徴とする減圧弁装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかにおいて、(a)主弁体としての前記減圧弁体の背後に形成され、内部の圧力を該減圧弁体に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(b)背圧室に連通し、前記主通路の該減圧弁体よりも上流側の1次側の水を該背圧室に導入して圧力上昇させる導入小孔と、(c)該背圧室に連通して設けられ、該背圧室の水を前記主通路の該減圧弁体よりも下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜通路としてのパイロット通路と、(d)前記減圧弁体の進退移動方向且つ該パイロット通路の開度を変化させる方向に進退移動し、該減圧弁体を追従して同方向に進退移動させるパイロット弁と、を有し、
該パイロット弁に対して前記感圧動作部材が連結されていて、該感圧動作部材の感圧変位動作により該パイロット弁を移動させることで、前記減圧弁体を進退移動させるようになしてあることを特徴とする減圧弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−176229(P2010−176229A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15987(P2009−15987)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】