説明

減衰バルブ

【課題】低コストで、且つ、小型あって、減衰力調整を正確に行うことができる減衰バルブおよび緩衝器を提供することである。
【解決手段】一方室R1と他方室Rとを連通する流路5の途中に設けた環状の弁座21と、弁座21に遠近可能な弁体22と、弁体22を軸方向に駆動するアクチュエータAとを備えた減衰バルブV、および、この減衰バルブVを備えた緩衝器1において、弁体22は、弁孔Hの内周に摺接するフランジ28aを備えた弁本体28と、バルブケース20に摺動自在に軸支されて弁孔H外へ突出し弁本体28にアクチュエータAの推力を伝達するシャフト29とを有し、弁孔H内に形成される弁座側室Sと反弁座側室Bとを連絡通路Cによって連通し、弁座側室Sと流路5とを絞り通路Pを介して連通した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰力調整を可能とする減衰バルブは、たとえば、二輪車のフロントフォーク等の緩衝器に内蔵されて使用される。
【0003】
そして、緩衝器は、たとえば、アウターチューブに連結されるシリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を圧側室と伸側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されて一端が上記アウターチューブに摺動自在に挿入されるインナーチューブに連結されるとともに他端が上記ピストンに連結されるピストンロッドと、上記した圧側室と伸側室と連通する通路と、当該通路の途中に設けられて圧側室から伸側室へ向かう流れのみを許容するか反対に伸側室から圧側室へ向かう流れのみを許容するチェック弁とを備えて構成される。この緩衝器に使用される減衰バルブは、当該通路の途中に設けた環状の弁座と当該弁座に離着座するニードル状の弁体と、ピストンロッドの他端側に固定されるとともに弁体を駆動するステッピングモータとを備えて構成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
この緩衝器では、伸長時にはピストンに設けたピストンバルブによって作動油の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するだけでなく、収縮時には、シリンダの端部に設けたベースバルブによってシリンダからリザーバへ流出する作動油の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようになっている。
【0005】
これに加えて、この緩衝器にあっては、上記チェック弁の作用によって、伸長時のみ或いは収縮時のみ通路に作動油が流れ、この作動油の流れに弁体で抵抗を与えることで、緩衝器の伸長時或いは収縮時のいずれか一方では減衰バルブも協働して減衰力を発揮するようになっていて、他方の減衰バルブは、弁体をモータで駆動することで流路面積を調節することで、この緩衝器の減衰力を可変にする。
【0006】
つまり、減衰バルブは、緩衝器の伸長時或いは収縮時にのみ減衰機能を発揮することになるが、二輪車の車輪を懸架するフロントフォークは、通常左右一対で車輪を懸架することから、一方のフロントフォークに内蔵される緩衝器の弁体を伸長時に減衰機能を発揮させるようにし、他方のフロントフォークに内蔵される緩衝器のニードル弁を収縮時に減衰機能を発揮させるようにしておいて、左右のフロントフォークの全体として伸長側と収縮側の減衰力を調節することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−14431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した緩衝器では、減衰バルブを通過する作動油の流れは常に一方通行であって安定した流れとなるので、緩衝器で発生する減衰力を正確に調節することができると云う利点がある。
【0009】
ところで、減衰バルブにおける弁体には、緩衝器の伸縮によって圧縮される作動油から大きな圧力が作用するとともに、作動油の流れによる流体力等が作用する。そのため、ステッピングモータは、圧力および流体力に打ち勝って弁体を駆動しなければならないが、トルクが不足する場合には、減衰力調整を正確に行うことが難しくなる。
【0010】
この問題を解消して緩衝器が伸縮作動中であっても減衰力調整を正確に行うには、大トルクを出力可能なステッピングモータを用いることが考えられるが、ステッピングモータに大きなトルクを出力させようとすると、ステッピングモータが大型化するともにコストも高くなってしまい、経済性と車両への搭載性が犠牲となってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上記不具合を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低コストで、且つ、小型あって、減衰力調整を正確に行うことができる減衰バルブを提供することであり、また、同じく低コストで車両への搭載性を犠牲にすることなく減衰力調整を正確に行うことができる緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、一方室と他方室とを連通する流路の途中に設けた環状の弁座と、上記弁座に遠近可能な弁体と、上記弁体を軸方向に駆動するアクチュエータとを備えた減衰バルブにおいて、上記弁体が摺動自在に挿入される弁孔を有するバルブケースを設け、上記弁体は、弁本体と、上記弁本体の反弁座側に配置され上記バルブケースに摺動自在に軸支され上記弁孔外へ突出して当該弁本体に上記アクチュエータの推力を伝達するシャフトとを備え、上記弁本体は、上記弁孔の内周に摺接するフランジと、当該フランジから伸びて弁孔外へ突出する軸部と、当該軸部の先端に設けられて上記弁座に離着座する弁頭とを備え、上記フランジによって上記弁孔内が弁座側室と反弁座側室とに区画され、上記弁座側室と反弁座側室とが連絡通路によって連通され、上記弁座側室と上記流路とが絞り通路によって連通されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の課題解決手段は、シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入されて当該シリンダ内を圧側室と伸側室とに区画するピストンと、上記シリンダ内に挿入されて上記ピストンに連結されるピストンロッドと、上記シリンダ外へ設けたリザーバと、上記圧側室および上記伸側室の一方を上記リザーバへ連通する流路とを備え、当該流路の途中に設けた環状の弁座と、上記弁座に遠近可能な弁体と、上記弁体を軸方向に駆動するアクチュエータとを備えた緩衝器において、上記弁体が摺動自在に挿入される弁孔を有するバルブケースを設け、上記弁体は、弁本体と、上記弁本体の反弁座側に配置され上記バルブケースに摺動自在に軸支され上記弁孔外へ突出して当該弁本体に上記アクチュエータの推力を伝達するシャフトとを備え、上記弁本体は、上記弁孔の内周に摺接するフランジと、当該フランジから伸びて弁孔外へ突出する軸部と、当該軸部の先端に設けられて上記弁座に離着座する弁頭とを備え、上記フランジによって上記弁孔内が弁座側室と反弁座側室とに区画され、上記弁座側室と反弁座側室とが連絡通路によって連通され、上記弁座側室と上記流路とが絞り通路によって連通されることを特徴とする。
【0014】
上記のように減衰バルブ或いは緩衝器が構成されることで、弁体には、弁座側室側からのみではなく反弁座側室側からも同じ圧力が作用するため、弁体に作用する圧力によって、弁体を弁座から遠ざかる方向へ押圧する力は、従来の減衰バルブに比較して小さくなる。これに加えて、液体が流路を通過する際に弁体に作用する流体力も従来の減衰バルブに比較して低減される。
【0015】
したがって、本発明における減衰バルブ或いは緩衝器にあっては、弁体を弁座に接近させる方向へ駆動するに際して、弁体に作用する圧力によって弁体の弁座への接近を抑制する力が小さくなるから、アクチュエータの推力が小さくとも減衰力調整を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、アクチュエータを大出力なものとする必要がなくなり、アクチュエータの大型化を回避しつつ正確な減衰力調整が可能となる。また、本発明の緩衝器によれば、低コストで小型のアクチュエータを用いることができるので、車両への搭載性も損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施の形態における減衰バルブを搭載した緩衝器の断面図である。
【図2】一実施の形態における減衰バルブの拡大断面図である。
【図3】一実施の形態における減衰バルブの弁体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における緩衝器1は、図1に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されてシリンダ2内を圧側室R2と伸側室R1とに区画するピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるピストンロッド4と、シリンダ2外に設けたリザーバRと、伸側室R1とリザーバRとを連通する流路5と、当該流路5の途中に設けた減衰バルブVを備えて構成されている。
【0019】
以下、各部について詳細に説明する。緩衝器1は、この実施の形態では、ピストンロッド4を二輪車などの鞍乗り型車両の図示しない車体に連結される車体側チューブ10と、鞍乗り型車両の図示しない車軸に連結されて車体側チューブ10内へ摺動自在に挿入される車軸側チューブ11とで構成されるフロントフォークF内に収容されている。より詳しくは、緩衝器1は、ピストンロッド4を車体側チューブ10へ連結し、シリンダ2を車軸側チューブ11へ連結して、車体側チューブ10と車軸側チューブ11との間に介装されつつ、車体側チューブ10と車軸側チューブ11で閉鎖されたフロントフォークF内に収容されている。なお、本実施の形態では、フロントフォークFは、車体側チューブ10内に車軸側チューブ11を挿入する倒立型のフロントフォークとされているが、反対に、車体側チューブ10を車軸側チューブ11へ挿入する正立型のフロントフォークとされていてもよい。
【0020】
また、この緩衝器1のピストンロッド4とシリンダ2との間には、懸架ばね12が介装されており、この懸架ばね12は緩衝器1を介して車体側チューブ10と車軸側チューブ11を離間させる方向、つまり、フロントフォークFを伸長させる方向に附勢力を発揮していて、当該懸架ばね12により図外の鞍乗り型車両の車体が弾性支持されるようになっている。また、シリンダ2外であって、車体側チューブ10と車軸側チューブ11とで作られる閉鎖空間を利用してリザーバRが形成されている。
【0021】
また、フロントフォークF内に内蔵されるこの緩衝器1は、上記した構成の他に、ピストン3に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通するとともに通過する流体の流れに抵抗を与える減衰通路13と、シリンダ2の下端に設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう流体の流れに抵抗を与える圧側減衰通路15と、リザーバRから圧側室へ向かう流体の流れのみを許容する吸込通路16とを有するボトム部材14とを備えており、伸側室R1および圧側室R2には流体として作動油等の液体が充満され、リザーバR内には液体と気体が充填されている。
【0022】
より詳しくは、シリンダ2は、下端に嵌合されたボトム部材14を介して有底筒状に形成された車軸側チューブ11の底部に固定されている。また、シリンダ2の上端には、ピストンロッド4を摺動自在に軸支するロッドガイド17が設けられている。ピストンロッド4は、筒状とされて中空部4bを備えたピストンロッド本体4aと、ピストンロッド本体4aの図1中下端に固定されてピストン3を保持するピストン連結部4cとを備えて構成されており、その図1中上端が減衰バルブVを収容するハウジング9を介して車体側チューブ10の上端に固定されている。ピストン連結部4cは、中空部4bと伸側室R1とを連通する連通路4dと、連通路4dの途中に設けられて伸側室R1から中空部4bへ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁4eとを備えて構成されていて、図1中下端に環状のピストン3がピストンナット24を用いて固定されるようになっている。
【0023】
そして、ロッドガイド17とハウジング9の外周に設けた筒状のばね受け18との間に懸架ばね12が介装され、緩衝器1が伸長方向に附勢され、これにより、フロントフォークFも伸長方向に附勢されるようになっている。
【0024】
ピストン3は、ピストンロッド4の図1中下端に固定されており、ピストン3に設けられる減衰通路13は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路13aと、通路13aの途中に設けた減衰弁13bとを備えていて、通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。この場合、減衰弁13bが絞り弁などとされていて、減衰通路13は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れと、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れの双方向の流れを許容するようになっているが、通路を二つ以上設けて一部の通路に伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する減衰弁を設けるとともにそれ以外の通路に圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する減衰弁を設けてもよい。
【0025】
ボトム部材14に形成される圧側減衰通路15は、圧側室R2とリザーバRとを連通する通路15aと、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容して通過する液体の流れに抵抗を与える減衰弁15bとを備えて構成されており、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路とされている。他方、ボトム部材14に形成される吸込通路16は、圧側室R2とリザーバRとを連通する通路16aと、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁16bとを備えて構成されており、圧側減衰通路15とは逆向きにリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路とされている。
【0026】
つづいて、減衰バルブVについて説明する。減衰バルブVは、上述したように、伸側室R1とリザーバRとを連通して伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の通過のみを許容する流路5の途中に設けられており、この実施の形態では、中空であってピストンロッド4の上端に設けられて内部が一方室となる伸側室R1と他方室となるリザーバRとに連通されるハウジング9と、当該ハウジング9内に設けた環状の弁座21と、ハウジング9内に軸方向に移動自在に収容されて弁座21に遠近可能な弁体22と、ハウジング9内に設けられて弁体22が摺動自在に挿入される弁孔Hを有するバルブケース20と、弁体22を軸方向に駆動するアクチュエータAとを備えている。
【0027】
ハウジング9は、図1および図2に示すように、筒状とされており、この場合、図中下端の小径部9aと、図中上端の大径部9bと、小径部9aと大径部9bとの間であって外径が小径部9aの外径よりも大きく大径部9bの外径よりも小さい中径部9cとを備えている。そして、ハウジング9の内周であって小径部9aの途中に内方へ向けて環状の凸部が設けられており、この凸部で環状の弁座21を形成している。また、小径部9a内であって弁座21よりも図中下端側には、ピストンロッド4の上端が螺着される螺子部9dが設けられている。さらに、バルブハウジング9の小径部9aの外周には、軸方向に沿って縦溝9fが設けられ、また、バルブハウジング9には、この縦溝9fを小径部9a内であって弁座21よりも上方側に連通する横孔9gが設けられている。さらに、小径部9aの横孔9gの開口位置よりも上方において、内径が拡径されていて、内部に段部9eが形成されている。大径部9bの内径についても、途中から中径部9cの内径よりも拡径されて大径とされている。
【0028】
このように構成されたハウジング9をピストンロッド4の上端に取り付けると、ハウジング9の小径部9a内がピストンロッド4に設けた中空部4bの上端に臨んで伸側室R1に連通される。また、ハウジング9内は、横孔9gを介してリザーバRに連通される。
【0029】
したがって、流路5は、ピストンロッド4に設けた中空部4bと連通路4dと、ピストンロッド4の図1中上端に連結されるハウジング9の小径部9a内、ハウジング9内をリザーバRへ連通する横孔9gとを備えて構成されて、伸側室R1とリザーバRとを連通するとともに、連通路4dの途中に設けられた逆止弁4eによって、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の通過のみを許容するようになっている。そして、上記した弁座21は、小径部9aの内周であって横孔9gよりもピストンロッド4側に設けられているので、弁座21は、一方室としての伸側室R1と他方室としてのリザーバRとを連通する流路5の途中に設けられている。なお、流路5を一方通行に設定する逆止弁は、ピストン連結部4cに設けるのではなく、他の箇所へ設けてもよく、具体的にはたとえば、ピストンロッド本体4aの中空部4b内に設けてもよいし、ピストンロッド本体4aの図1中上端における中空部4bの開口端に設けるようにしてもよい。
【0030】
つづいて、バルブケース20は、この実施の形態では、有底筒状の絞り形成部材23と、筒状であって内方に絞り形成部材23が開口端側から嵌合されるガイド部材24とを備えて構成されている。
【0031】
絞り形成部材23は、上記したように有底筒状であって、底部23aと、筒部23bとを備えている。底部23aには、挿通孔23cが設けられている。また、筒部23bの外周の途中には、外側へ突出する環状のフランジ23dが設けられている。
【0032】
また、ガイド部材24は、上記したように筒状であって、中間部内方には内周側に突出する環状の軸受部24aが設けられている。軸受部24aの図2中下方には、環状のシール部材25が積層されている。また、ガイド部材24の軸受部24aよりも図2中下方側には段部24bが設けられており、この段部24bには上記したシール部材25の抜けを防止する環状のストッパ26が積層されている。さらに、ガイド部材24の外周には、環状溝24cと螺子部24dが設けられており、環状溝24c内にはシールリング27が装着されている。
【0033】
このように構成された絞り形成部材23を開口端側からガイド部材24の内方に嵌合することでバルブケース20が形成され、絞り形成部材23とガイド部材24との間に作られた空間にて弁孔Hが形成される。なお、ガイド部材24における軸受部24aから下方の軸方向長さは、ガイド部材24の下端が絞り形成部材23のフランジ23dと当接してもストッパ26を絞り形成部材23の開口端とガイド部材24の軸受部24aとで挟持できるように配慮されている。そして、このバルブケース20をハウジング9の中径部9c内に収容しつつ、ガイド部材24の外周に設けた螺子部24dを中径部9cの内周に形成の螺子部(符示せず)に螺着すると、バルブケース20がハウジング9に固定される。なお、絞り形成部材23のフランジ23dは、ハウジング9の段部9eに当接して、ハウジング9の段部9eとガイド部材24とで挟持されるため、絞り形成部材23をガイド部材24に遊嵌するようにしても当該絞り形成部材23をハウジング9内に固定することができるが、この場合、絞り形成部材23の筒部23bをガイド部材24内に圧入するようにしている。
【0034】
このように構成されたバルブケース20は、ハウジング9に固定されると、上記したようにフランジ23dが段部9eに当接して、バルブケース20が流路5に臨むように配置される。
【0035】
他方、弁体22は、弁本体28と、弁本体28の反弁座側である図2中上方側に配置されバルブケース20に摺動自在に軸支され弁孔H外へ突出して弁本体28にアクチュエータAの推力を伝達するシャフト29とを備えて構成されている。
【0036】
弁本体28は、弁孔Hの内周に摺接するフランジ28aと、フランジ28aから伸びて弁孔H外へ突出する軸部28bと、軸部28bの先端に設けられて弁座21に離着座する円錐状の弁頭28cとを備えている。
【0037】
弁本体28は、図3に示すように、フランジ28aの外周の四箇所を切り落として切欠28dを設けてあり、この切欠28dと弁孔Hの内壁との間に、この場合、切欠28dと絞り形成部材23の筒部23bとの間に、連通通路Cを形成している。シャフト29は、一端が弁本体28に一体化されており、他端が軸受部24aの内周に挿通されて弁孔H外へ突出されている。なお、弁頭28cの形状は、任意であって上記した円錐状に限定されるものではない。
【0038】
そして、弁体22は、弁頭28cを弁座21へ向けてフランジ28aの外周を絞り形成部材23の筒部23bの内周に摺接させつつ絞り形成部材23内に軸方向となる図2中上下方向へ移動可能に挿入されていて、軸部28cが絞り形成部材23の底部23aに設けた挿通孔23cに挿通されている。この軸部28bと挿通孔23cとの間には、環状の隙間が設けられ、この実施の形態の減衰バルブVにあっては、この隙間で絞り通路Pを形成している。
【0039】
このように、弁体22は、バルブケース20を構成する絞り形成部材23とガイド部材24とで形成される弁孔H内に移動可能に収容されていて、上述したように、弁孔H内で軸方向にストロークすることができる。そして、この弁孔H内は、フランジ28aによって、図2中、フランジ28aより下方となる弁座側の弁座側室Sとフランジ28aより上方となる反弁座側の反弁座側室Bとに区画されている。
【0040】
弁座側室Sは、上記した絞り通路Pを介して流路5の弁座21よりも他方室側へ通じており、反弁座側室Bは、上記した連絡通路Cを介して弁座側室Sへ通じている。よって、弁座側室S内の圧力が反弁座側室Bへ伝播するようになっている。なお、連絡通路Cは、弁本体28のフランジ28aに切欠28dを設けて形成されるので、弁体22に簡単な加工を施すことで形成することができるが、弁座側室Sと反弁座側室Bを連通していればよいので、上記構成に限定されるものではない。したがって、たとえば、絞り形成部材23の筒部23bの内周に軸方向に沿って連絡通路Cとして機能する溝等を設け、当該溝等で弁座側室Sと反弁座側室Bを連通するようにし、弁体22が弁孔H内でストロークしてもフランジ28aによって弁座側室Sと反弁座側室Bの連通が断たれないようにしてもよい。
【0041】
さらに、フランジ28aとバルブケース20を構成する絞り形成部材23の底部23aとの間には、弾性体としてのコイルばね30が介装されており、このコイルばね30によって、弁体22が弁座21から遠ざかる方向へ附勢されている。なお、弁体22を附勢するにあたり、コイルばね30の他に、皿ばね、ウェーブワッシャやゴム等といった附勢力を発揮可能な弾性体を使用することも可能である。
【0042】
また、弁体22が弁孔H内をストロークすると、シャフト29も軸受部24aに対して軸方向へストロークするが、この実施の形態の場合、このストロークする際にバルブケース20に設けた軸受部24aの内周にシャフト29が摺接する範囲を摺接部29a(図2中網掛け部分)とすると、この摺接部29aの横断面積をフランジ28aの横断面積よりも小さくしてある。ここで、横断面とは、軸方向に対して垂直横方向(図2中では左右方向)へ切断した際の断面であって、この断面の面積を横断面積と定義している。
【0043】
シャフト29の外周形状およびフランジ28aの外周形状は、切欠28dを無視すれば、ともに円形状としているので、この場合、シャフト29の外径をフランジ28aの外径よりも小さくしてある。なお、シャフト29の外周形状およびフランジ28aの外周形状は、これに限定されるものではない。また、シャフト29の外径は、軸方向の全長に亘って等しく円柱状とされているが、外径が変化するものでもよい。つまり、横断面積が軸方向の全長に亘って一定ではないシャフト29を使用することも可能である。
【0044】
アクチュエータAは、この場合、アクチュエータ本体31と、アクチュエータ本体31に対して軸方向に移動可能な可動部32とを備えている。アクチュエータ本体31としては、たとえば、回転型のモータと、モータのロータに連結され回転部材と回転部材の回転によって軸方向の直線運動を呈する直動部材とでなる運動変換機構とを備えて構成されてもよい。運動変換機構としては、たとえば、送り螺子機構やラックアンドピニオンといった機構等を採用できる。また、アクチュエータAは、リニアモータやソレノイドとされてもよく、その場合、ステータをアクチュエータ本体31とし、可動子を可動部32とすればよい。
【0045】
そして、可動部32をバルブケース20側へ向けて、アクチュエータ本体31をハウジング9の大径部9b内に収容し、ハウジング9の大径部9bの開口端内周にリングナット33を螺着することで、アクチュエータ本体31がリングナット33とハウジング9とで挟持されてハウジング9の大径部9b内に固定される。
【0046】
上記のようにアクチュエータ本体31をハウジング9に固定しても、可動部32は、ハウジング9に対しては何ら固定されておらず、ハウジング9内で軸方向に移動することができる。また、可動部32の先端は、シャフト29の他端に当接しており、アクチュエータAが可動部32を弁体22側へ移動させるように推力を与えると、シャフト29を介して弁本体28へ当該推力が伝達され弁体22を弁座21方向へ駆動することができる。なお、この実施の形態の場合、弁体22を弁座21から遠ざかる方向へ附勢する弾性体としてコイルばね30が設けられているので、可動部32とシャフト29とは固定的に連結せずとも、可動部32とシャフト29との接触が保たれ、アクチュエータAの推力の弁体22への伝達が可能であり、また、この場合には、シャフト29と弁本体28とが分離されて互いに独立した部品として構成されてもよい。なお、本実施の形態のようにシャフト29と弁本体28とが一体とされることに加えて、シャフト29を可動部32に固定的に連結する場合、弁体22を附勢する弾性体を要せずにアクチュエータAのみで弁体22を軸方向に駆動して弁座21に対して遠近させることができるので、このような場合には、弾性体を廃止することもできる。
【0047】
そして、アクチュエータAで弁体22を弁座21側へ向けて押し下げ駆動すると、弁体22の弁頭28cが弁座21に着座させることができ、このように弁頭28cが弁座21に着座すると流路5が遮断される。この状態からアクチュエータAにおける可動部32をアクチュエータ本体31側へ駆動すると、弁体22がコイルばね30によって押し上げられるので、弁体22が弁座21から離間する方向へ移動し、弁頭28bと弁座21との間に隙間が生じて流路5が開放されるようになっている。つまり、アクチュエータAを駆動することで、弁体22を弁座21に対して進退させることができ、流路5の流路面積を変化させることができるようになっている。つまり、弁体22と弁座21の位置関係によって流路5の流路面積を変更でき、弁体22を弁座21から最も遠ざけると流路5の流路面積が最大となり弁体22が弁座21に着座する、つまり、弁頭28bが弁座21に当接すると流路5が完全に遮断されて流路面積が0となる。流路5が開放状態である場合、伸側室R1とリザーバRとが連通される状態におかれ、緩衝器1が伸長作動を呈すると、液体は流路5を通過してリザーバRへ排出され、流路5の流路面積に応じて液体の流れに抵抗が与えられる。
【0048】
このように構成された減衰バルブVの各部材を組み立てる手順としては、たとえば、弁体22をコイルばね30とともに絞り形成部材23内に挿入し、シャフト29にストッパ26とシール部材25を装着して、絞り形成部材23を開口端側からガイド部材24内に圧入する。すると、バルブケース20と弁体22とがアッセンブリ化されるので、これをハウジング9に螺着し、アクチュエータAをリングナット33でハウジング9に固定すればよい。このように、バルブケース20と弁体22とがカートリッジ化されるので、緩衝器1への組み付けが容易となり、高圧側ポート23cの口径や弁体22の弁頭28cの形状が異なるカートリッジを複数用意しておくことで、カートリッジ交換を行えば減衰力特性も容易に変更することができる。なお、絞り形成部材23をガイド部材24へ圧入せずに嵌合に留める場合には、弁体22と絞り形成部材23を独立に交換が可能となるので、この場合、減衰力特性の変更は弁体22或いは絞り形成部材23の交換することで行うことが可能となる。
【0049】
なお、この実施の形態の場合、弁体22を構成する弁本体28とシャフト29とが一体化されているので、シャフト29にストッパ26とシール部材25を先んじて組み付けておくことで、これらのガイド部材24に対する調芯が容易となるので、絞り形成部材23のガイド部材24への組み付けも非常に簡単となり、弁体22をバルブケース20にカートリッジ化した後にシャフト29が脱落する心配もない。
【0050】
絞り形成部材23とガイド部材24は、上記構成に限定されるものではなく、シート部材23とガイド部材24とが圧入や螺合等により固定的に締結されるようにしておけば、ケース20と弁体22とがカートリッジ化されて上記の利点を享受することができる。またさらに、本実施の形態におけるバルブケース20がハウジング9と別部品としてあるが、これらを一部品で構成するようにしてもよい。
【0051】
つづいて、上述のように構成された緩衝器1及び減衰バルブVの動作について説明する。この緩衝器1の場合、シリンダ2に対してピストン3が図1中上方へ移動する伸長時には、ピストン3によって圧縮される伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流れに減衰通路13で抵抗を与えるとともに、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れに対して減衰バルブVで抵抗を与えるようになっている。つまり、緩衝器1は、この実施の形態にあっては、伸長時に減衰通路13および減衰バルブVによって伸側減衰力を発揮する。なお、伸長時に拡大する圧側室R2には、ボトム部材14に設けた吸込通路16を介してリザーバRから液体が供給されて、緩衝器1の伸長時にシリンダ2内からピストンロッド4が退出することで生じるシリンダ2内の容積変化が補償される。
【0052】
反対に、シリンダ2に対してピストン3が図1中下方へ移動する収縮時には、ピストン3によって圧縮される圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに減衰通路13で抵抗を与えるとともに、シリンダ2内へピストンロッド4が侵入することで生じるシリンダ2内の容積減少分の液体がボトム部材14の圧側減衰通路15を介してリザーバRへ排出されてシリンダ2内の体積変化が補償されるので、この圧側減衰通路15でも液体の流れに抵抗を与えることになる。よって、緩衝器1の収縮時には、減衰通路13および圧側減衰通路15で圧側減衰力を発揮し、この場合、流路5には、液体が流れないようになっているので、減衰バルブVは圧側減衰力の発生には関与しない。
【0053】
そして、減衰バルブVにおいて、弁体22を駆動することで流路5の流路面積を可変にすることができるので、この緩衝器1では、伸長時における伸側減衰力を調節することができるようになっている。
【0054】
この減衰力調節の際、弁体22が弁座21から離間していて流路5が開放状態にある場合、弁体22には、緩衝器1が伸長作動中であると伸側室R1からの高圧が作用するとともに、流路5を流れる液体の流れによる流体力が作用する。また、緩衝器1が収縮する場合には、車体側チューブ10内に車軸側チューブ11が侵入するためにリザーバRの容積が減少してリザーバR内の圧力が上昇し、この圧力が弁体22に作用する。
【0055】
これらの圧力は、具体的には、弁孔H内であって弁座側室Sに伝播するが、連絡通路Cを介して反弁座側室Bにも伝播する。そして、弁座側室Sに伝播した圧力は、弁体22を図2中上方へ押し上げる、つまり、弁座21から遠ざかる方向へ押し上げるように作用し、その力の大きさは、弁体22のフランジ28aの横断面積に上記圧力を乗じたものとなる。他方、反弁座側室Bに伝播した圧力は、弁体22を図2中下方へ押し下げる、つまり、弁座21へ接近させる方向へ押し下げるように作用し、その力の大きさは、弁体22のフランジ28aの横断面積からシャフト29における摺接部29aの横断面積を引いた値に上記圧力を乗じたものとなる。
【0056】
このように、弁体22には、弁座側室S側からのみではなく反弁座側室B側からも同じ圧力が作用するので、結果的に差し引きして、弁体22にはシャフト29における摺接部29aの横断面積に上記圧力を乗じた値の力が弁座21から遠ざかる方向へ向けて作用することになる。
【0057】
そのため、弁体22に作用する圧力によって、弁体22を弁座21から遠ざかる方向へ押圧する力は、従来の減衰バルブに比較して小さくなる。
【0058】
また、弁座側室Sと流路5とは、絞り通路Pを介して連通されているので、流路5を通過する液体の流れが弁座側室S内のフランジ28aには直接に衝突せず、液体の流れによって弁体22を図2中押し上げる方向へ作用する流体力は弁頭28cにのみ作用するだけであり、従来の減衰バルブのように弁体の全体に流体力が作用しないようになっている。そのため、液体が流路5を通過する際に弁体22に作用する流体力も従来の減衰バルブに比較して低減される。
【0059】
したがって、本発明における減衰バルブVにあっては、弁体22を弁座21に接近させる方向へ駆動する、つまり、流路5における流路面積を減少させるに際して、弁体22に作用する圧力や流体力による弁体22の弁座21への接近を抑制する力が小さくなるので、アクチュエータAの推力が小さくとも減衰力調整を正確に行うことができる。
【0060】
このように、アクチュエータAを大出力なものとする必要がなくなり、アクチュエータAの大型化を回避しつつ正確な減衰力調整が可能となる。そして、小型であって低コストのアクチュエータAを用いることができるので、車両への搭載性も損なわれることがない。
【0061】
つまり、本発明の減衰バルブVによれば、低コストで、且つ、小型あって、減衰力調整を正確に行うことができ、本発明の緩衝器1によれば、アクチュエータAに小型なものを使用できるから、上記した効果に加えて車両への搭載性も損なわれることがない効果をも奏することができる。
【0062】
なお、弁座側室Sは、絞り通路Pを介して流路5に連通されるようになっていればよいので、バルブケース20に設けた挿通孔23cと弁体22における軸部28bとの間の隙間によって形成する以外にも、たとえば、絞り形成部材23の底部23aや筒部23bに別途絞り通路を設けるようにしてもよく、その場合には、挿通孔23cに軸部28bを摺動自在に挿入するようにしてもよい。しかしながら、絞り形成部材23にはもともと弁体22を挿通する挿通孔23cが必要であるから、別途、絞り通路Pをバルブケース20に設ける場合に比較して、挿通孔23cと軸部28bとの間に絞り通路Pを設ける方が加工工数が減るので、その分加工コストが安価となるメリットがある。
【0063】
また、本発明の減衰バルブVにあっては、内部にバルブケース20とアクチュエータAとを着脱自在に収容するハウジング9を備えているので、バルブケース20やアクチュエータAの交換が容易となり、減衰力特性の変更やメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0064】
さらに、本実施の形態の減衰バルブVにあっては、バルブケース20が、挿通孔23cが形成される底部23aと、フランジ28aの外周が摺接する筒部23bとを有する有底筒状の絞り形成部材23と、筒状であって内方にシャフト29を軸支する軸受部29aを備えるとともに内方に絞り形成部材23が開口端側から圧入されるガイド部材24とを備え、絞り形成部材23とガイド部材24とで弁孔Hを形成したので、バルブケース20と弁体22とをアッセンブリしてカートリッジ化することができ、減衰バルブVの組立が簡単となる。また、減衰力特性の変更は、バルブケース20と弁体22のカートリッジを変更するだけでより簡単に行える。
【0065】
そして、本実施の形態の減衰バルブVにあっては、フランジ28aと絞り形成部材23における底部23aとの間に弁体22を弁座21から遠ざかる方向へ附勢する弾性体を設けているので、アクチュエータAと弁体22とを固定的に連結する必要がないため、アクチュエータAと弁体22との調心を高精度に行う必要がなく、加工コストが低減されるとともに、減衰バルブVの厳密な位置決めをせずに組立を行っても減衰力調整を正確に行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態の減衰バルブVにあっては、ガイド部材24の軸受部24aの弁孔H側にシャフト29の摺動部29aの外周に摺接する環状のシール部材25を積層し、ガイド部材24の軸受部24aと絞り形成部材23との間でシール部材25の抜けを防止する環状のストッパ26を挟持したので、シール部材25も弁体22とともにバルブケース20にカートリッジ化されるので、減衰バルブVの組立加工がより一層簡単となる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、上記したところでは、減衰バルブVは、緩衝器1が伸長する際にのみ流路5が流体の通過を許容するようになっており、緩衝器1の伸側減衰力を発生する減衰力発生要素として機能しているので、緩衝器1の伸側減衰力を調整することができるが、緩衝器1が収縮する際にのみ流路5が流体の通過を許容するように設定して、緩衝器1の圧側減衰力を発生する減衰力発生要素として機能して圧側減衰力の調整をするようにしてもよい。ピストン連結部4cに設けられる連通路4dで伸側室R1の代わりに圧側室R2を中空部4bへ連通するようにすれば、減衰バルブVは、圧側減衰力の調整を行うことができる。つまり、減衰バルブVは、伸側室R1と圧側室R2のうちいずれを一方室としてもよいし、その反対に、リザーバRを一方室として、他方室を伸側室R1と圧側室R2の一方としてもよく、また、一方室と他方室を伸側室R1と圧側室R2として、緩衝器1の伸縮の双方にて減衰力調整を行うようにしてもよい。
【0068】
また、ピストンロッド4の先端に弁体22、バルブケース20及びアクチュエータAを収容したハウジング9を設け、流路5は、ピストンロッド4を貫通して緩衝器1内の圧側室R2或いは伸側室R1とシリンダ2外に設けたリザーバRとを連通し、鞍乗り型車両の車体に連結される車体側チューブ10と、鞍乗り型車両の車輪に連結される車輪側チューブ11とを設け、上記ハウジング9を介して緩衝器1におけるピストンロッド4を車体側チューブ10へ連結するとともにシリンダ2を車軸側チューブ11へ連結し、アクチュエータAをハウジング9に固定して車体側チューブ10から突出させて配置することで、弁体22とアクチュエータAとを至近に配置して長尺なコントロールロッドなどを介さずに弁体22を駆動でき、部品点数の削減が図れるとともに弁体22をより正確に駆動できるので減衰力制御性が向上するとともに、アクチュエータAへの外部からの給電も容易となり利便性および汎用性が向上する。
【0069】
また、緩衝器1は、減衰バルブVが緩衝器1の伸長時に減衰力を発揮する場合には、伸長時にのみ減衰力を発揮する構成とされてもよく、また、減衰バルブVが緩衝器1の収縮時に減衰力を発揮する場合には、収縮時にのみ減衰力を発揮する構成を採用しても構わない。
【0070】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は緩衝器に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 緩衝器
2 シリンダ
3 ピストン
4 ピストンロッド
5 流路
9 ハウジング
20 バルブケース
21 弁座
22 弁体
23 絞り形成部材
23a 底部
23b 筒部
23c 挿通孔
24 ガイド部材
24a 軸受部
25 シール部材
26 ストッパ
28 弁体
28a フランジ
28b 軸部
28c 弁頭
29 シャフト
29a 摺動部
30 弾性体としてのコイルばね
A アクチュエータ
B 反弁座側室
C 連絡通路
H 弁孔
P 絞り通路
R 他方室としてのリザーバ
R1 一方室としての伸側室
R2 圧側室
S 弁座側室
V 減衰バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方室と他方室とを連通する流路の途中に設けた環状の弁座と、上記弁座に遠近可能な弁体と、上記弁体を軸方向に駆動するアクチュエータとを備えた減衰バルブにおいて、
上記弁体が摺動自在に挿入される弁孔を有するバルブケースを設け、
上記弁体は、弁本体と、上記弁本体の反弁座側に配置され上記弁孔外へ突出して当該弁本体に上記アクチュエータの推力を伝達するシャフトとを備え、
上記弁本体は、上記弁孔の内周に摺接するフランジと、当該フランジから伸びて弁孔外へ突出する軸部と、当該軸部の先端に設けられて上記弁座に離着座する弁頭とを備え、
上記フランジによって上記弁孔内が弁座側室と反弁座側室とに区画され、
上記弁座側室と反弁座側室とが連絡通路によって連通され、
上記弁座側室と上記流路とが絞り通路によって連通されることを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
上記シャフトの上記バルブケースに摺接する範囲を摺動部として、この摺動部の横断面積を上記フランジの横断面積より小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
上記バルブケースは、上記弁孔に連通して上記弁座に対向するとともに上記軸部が挿通される挿通孔を備え、上記絞り通路を上記挿通孔と上記軸部との間に形成される環状によって形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
内部に上記バルブケースと上記アクチュエータとを着脱自在に収容するとともに上記弁座を有するハウジングを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
上記バルブケースが、
上記挿通孔が形成される底部と、上記フランジの外周が摺接する筒部とを有する有底筒状の絞り形成部材と、筒状であって内方に上記シャフトを軸支する軸受部を備えるとともに内方に上記絞り形成部材が開口端側から圧入されるガイド部材とを備え、上記絞り形成部材と上記ガイド部材とで上記弁孔を形成したことを特徴とする請求項3または4に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
上記フランジと上記絞り形成部材における底部との間に上記弁体を上記弁座から遠ざかる方向へ附勢する弾性体を設けことを特徴とする請求項5に記載の減衰バルブ。
【請求項7】
上記ガイド部材の軸受部の上記弁孔側に上記シャフトの摺動部の外周に摺接する環状のシール部材を積層し、上記ガイド部材の軸受部と絞り形成部材との間で上記シール部材の抜けを防止する環状のストッパを挟持したことを特徴とする請求項5または6に記載の減衰バルブ。
【請求項8】
上記弁本体と上記シャフトは一体化されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項9】
シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入されて当該シリンダ内を圧側室と伸側室とに区画するピストンと、上記シリンダ内に挿入されて上記ピストンに連結されるピストンロッドと、上記シリンダ外へ設けたリザーバと、上記圧側室および上記伸側室の一方を上記リザーバへ連通する流路とを備え、当該流路の途中に設けた環状の弁座と、上記弁座に遠近可能な弁体と、上記弁体を軸方向に駆動するアクチュエータとを備えた緩衝器において、
上記弁体が摺動自在に挿入される弁孔を有するバルブケースを設け、
上記弁体は、弁本体と、上記弁本体の反弁座側に配置され上記バルブケースに摺動自在に軸支され上記弁孔外へ突出して当該弁本体に上記アクチュエータの推力を伝達するシャフトとを備え、
上記弁本体は、上記弁孔の内周に摺接するフランジと、当該フランジから伸びて弁孔外へ突出する軸部と、当該軸部の先端に設けられて上記弁座に離着座する弁頭とを備え、
上記フランジによって上記弁孔内が弁座側室と反弁座側室とに区画され、
上記弁座側室と反弁座側室とが連絡通路によって連通され、
上記弁座側室と上記流路とが絞り通路によって連通され、
上記シャフトの上記バルブケースに摺接する範囲を摺動部として、この摺動部の横断面積を上記フランジの横断面積より小さくしたことを特徴とする緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108580(P2013−108580A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254995(P2011−254995)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】