説明

渦流量計

【目的】 分解能が優れ、ディジタルオリフィスとなり製作容易なリング渦流量計とする。
【構成】 上流側から、順に、ノズル部3と、キャビティ部5と、オリフィス部6とを構成してノズル開口4aとオリフィス開口6aとの面積を等しくして一体に組立て、流管2,2に配設する。流管2内の流速分布Fの流れは、ノズル4により均一な流速分布Fpの円形ジェットとなり、キャビティ部5を通りオリフィス開口6aに当る。ここで発生する圧力がノズル開口4aにフィードバックされて生ずる自励振動によりオリフィス開口6aからほぼ流量に比例した高い周波数のリング渦RVが放出される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、渦流量計に関し、より詳細には、キャビティを利用してリング渦を発生させる渦流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】渦流量計は、周知のように被測定流路内に流れに対向して渦発生体を配設し、単位時間に発生する渦の数から流量を検知する流量計であり、渦発生体と流路との寸法比が所定範囲のとき安定で強力な渦が発生し、この時の渦周波数は流速と渦発生体の代表長さの比に比例することを利用したもので、比例係数であるストローハル数は所定レイノルズ数範囲で定数と見做される。しかし、渦発生の状況をみると、渦は両端部を流路内の壁面に固着された渦発生体の両側にほぼ平行した渦管として渦発生体の両側面より交互に剥離し、流出するが、この渦管は両端部が開放された渦端を有している。
【0003】更に、渦発生体は柱状体であり、該柱状体の渦発生体に対して長手方向の流路内の流れは均一でない流速分布をもっていて渦管は所定条件でのみ渦発生体に平行な柱状となり剥離する。通常の柱状な渦発生体を有する渦流量計は上述の如き問題点を有しているが、これに対し渦管を安定した閉曲線とするために渦発生体をリング状とし、該リング状の渦発生体を円形流路に同心に配設したリング渦流量計がある。
【0004】図5は、従来のリング渦流量計の、一例による流れ方向断面図であり、流管21内にリング状の渦発生体22が板状の支持板23により流管21と同軸に支持されている。支持板23は、一端が流管21内壁に他端がリング状の渦発生体22に固着され内壁から中心軸に向けて放射状となるように配設されている。リング状の渦発生体22の断面形状は、流れに面して底辺を有する二等辺三角形であり、安定した径の異なる強力なリング渦RVが対をなして流出する。
【0005】図6は、従来のリング渦流量計の、他の例による流れ方向断面図であり、流管31内同軸にコーン状の中心構造体34が板状のベーン35で支持されており、環状流路36を構成している。リング状の渦発生体32は支持板33を介してベーン35の上流側の環状流路36内中央に位置するように同心円状に中心構造体34に支持されている。中心構造体34は、流管31内を流れる流速分布Fをした流れをリング状の渦発生体32に流入するとき環状流路36では均一な流速分布FPとするためのもので、リング渦RVは対をなし環状流路36内を流出する。
【0006】図5,6に示した、従来のリング渦流量計は、共に、円形断面の流管内に流管軸に対して直角な面となるように同軸に配設されたリング(ドーナツ)状物体から規則的に放出されるリング渦の周波数が主流速度に対して直線(比例)関係にあることを利用したものであり、特に、図6に示した中心構造体34を有するリング渦流量計は流管内を流れる流体を均一な流速分布に矯正しているが広いレイノルズ数範囲で直線性を保つことができなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、従来のリング渦流量計は、広いレイノルズ数範囲で流量とリング渦周波数との関係を直線関係に保つことができず、しかも、リング渦周波数は低いので流量分解能は悪かった。また、従来のリング渦流量計は、リング状の渦発生体を流管内に同軸に支持するための支持板と、更には、ベーンが必要である。支持板およびベーンは、共にリング状の渦発生体から放出される連続したリング渦を切断しリング渦を不安定にし悪影響を及ぼす。また、支持板やベーンの長さ寸法は予め定められて等しい長さに加工されているが、実際のリング状の渦発生体の固着作業においては流管の中心軸に対する芯だしが容易でなく熟練を要し、非能率であった。
【0008】本発明においては、従来のリング渦流量計に比べて、リング渦発生周波数が高く、広いレイノルズ数範囲において流量・器差特性が直線性を有する加工および組み付け、特に芯だしが容易でディジタルオリフィスとなる渦流量計を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、(1)流体が流れる流管の上流側から下流側に向け、順に、下流側が絞られた開口を有するノズル部と、該ノズル部のノズル開口より大口径で流れ方向に所定長さを有するキャビティ部と、前記ノズル開口と略等しい口径のオリフィス開口を有するオリフィス部とで構成し、流れにより前記オリフィス部に発生するリング渦の単位時間当りの数から流量を求めること、更には、(2)前記(1)において、オリフィス部を、上流側のオリフィス開口がノズル部のノズル開口と略等しく下流側に向けて拡がりをもつテーパ管とし、前記オリフィス開口がエッジを有すること、更には、(3)前記(1)において、面平行な一体部材の面に直角な一方向を流れ方向とし、該流れ方向に穿孔されたノズル断面形状を上流側から中央に向けて連続して絞られ、中央から下流側に向け再び拡がるノズル曲線とし、該ノズル曲線の前記中央位置にキャビティ部を穿設しノズル部とキャビティ部とオリフィス部とを構成したことを特徴とするものである。以下、本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
【作用】上流側から、順に、ノズルと、キャビティと、オリフィスを同軸に配列して、ノズルに流入する流体の流れを均一な流速分布をもつ円形ジェットとし、この円形ジェットをキャビティを通ってオリフィス開口に当てる。ここで発生した圧力波はノズル開口にフィードバックされ、円形ジェット噴出時のせん断層の乱れを制御して流体に自励振動を発生させ、この自励振動に応じ、流量に比例したリング渦をオリフィスから流出する。
【0011】
【実施例】図1は、本発明による渦流量計の一実施例を説明するための流れ方向断面図であり、図中、1は渦流量計、2は流管、3はノズル部、4はノズル、5はキャビティ部、6はオリフィス部、7は押えリング、8,9は導圧孔、10はOリングである。図示の如く、渦流量計1は流体が流れる矢印Flow方向から、ノズル部3と、キャビティ部5と、オリフィス部6とが順次配設され一体に構成される。ノズル部3は、端面4c,4dを有する円柱体からなり上流側の端面4cから軸O−O′に同軸なノズル4を有している。ノズル4は、上流側の端面4c側が大口径で後流側に向け軸対称に絞られる連続曲面を有して開口し、ノズル開口4aを有している。
【0012】更に、円柱体のノズル4のノズル開口4aの後流側にはキャビティ部5となるノズル開口4aより大口径でノズル4と同軸な円柱状空洞が穿設され、ノズル開口4aと前記円柱状空洞である空洞端面5aとはエッジ4bを構成する。円柱状空洞の後流側空洞端面に相当する位置には、空洞端面5aと平行にオリフィス部6が固着される。オリフィス部6は、ノズル4のノズル開口4aと同一口径又は略等しい口径のエッジを有するオリフィス孔6aが同軸に開口しており、円柱状空洞と同一内径の押えリング7でノズル部3の本体に押圧固着される。この結果、円柱状空洞は空洞端面5aとオリフィス部6とでキャビティ部5が構成される。また、オリフィス部6の上流側と下流側には導圧孔8,9が開口している。
【0013】以上の如く、渦流量計1は、上流側に端面4cを有し下流側に端面4dを有する円柱体に、ノズル部3と、キャビティ部5と、オリフィス部6とが一体に構成され、フランジ2a,2aを有する流管2,2にOリング10でシールされ同軸に配設される。渦流量計1に軸対称な流速分布Fを有する流体が流入すると、ノズル4のノズル開口4aの面積と流管2の断面積とが所定比となったときノズル開口4aから流出する流れは均一な流速分布Fpを有する円形ジェットとなる。この円形ジェットがキャビティ部5を通ってキャビティ部5内部にキャビィティ深さおよび長さにより定まる1又は複数の渦Vが発生する。更に、渦Vの影響を受けた円形ジェットは、オリフィス孔6aに当たることにより圧力波が発生し、この圧力波はノズル開口4aにフィードバックされ円形ジェット噴出時のせん断層の乱れを制御する。
【0014】このように構成されたフィードバックループにより、流体は自励振動してオリフィス孔6aからリング渦RVとして流出する。自励振動の周波数は、リング渦RVの周波数と等しく、キャビティ部5の流れ方向の長さに反比例し、流速に比例し、マッハ数の逆関数となる。従って、マッハ数の小さい流速の低い領域では、キャビティ部5の深さと長さが一定であれば自励振動周波数は流速に略比例し、マッハ数が増加するに従って、流量に対する振動周波数の変化率が小さくなる。なお、リング渦は、自励振動の周波数と等しいので、導圧孔8、9間の圧力差として圧電素子やひずみゲージ等の威圧素子を有する圧力検出器で検知する。
【0015】図2は、本発明による渦流量計の他の実施例を説明するための流れ方向の断面図であり、図中、11はテーパ部、12はスペーサで、図1と同じ作用をする部分には図1と等しい符号を付している。図2の渦流量計は、図1に示した渦流量計のオリフィス部6をテーパ部11に換えたものである。テーパ部11は、上流側がノズル開口4aと略等しいテーパ開口11aを有してエッジ部11cを形成し、大口径の流出側端面11bを有しており、スペーサ12によりノズル開口4aとテーパ開口11aとの間に空洞を作りキャビティ部5を構成し、ノズル4との間にエッジ部4bを形成している。
【0016】図4は、本発明による渦流量計の流量対渦周波数特性の一例を示すもので、横軸に流量(m3/h)縦軸に渦周波数(Hz)がとってある。試験流体は空気であり、基準流量計として、複数の、流量の異なる音速ノズルを用いて、比較試験を行ったものである。図3R>3に示した渦流量計の特性をみると流量の小さい20m3/h以下の流量、すなわちマッハ数の小さい流量範囲では、直線性が優れているが、流量が上記流量を越えると流量に対する周波数の変化率が小さくなり非直線性を示す。しかし、周波数は高く、高い周波数分解能をもっている。なお、直線範囲はキャビティ部の大きさ等により変化する。
【0017】図3は、本発明による渦流量計の、更に他の実施例を説明するための図であり、図中、13は本体部、14はノズル曲線、15はノズル部、16はキャビティ部、17はオリフィス部、18は円形凹陥部であり、図1と同じ作用をする部分には図1と等しい符号を付してある。
【0018】図3に示した渦流量計は、一体部材からなる本体部13に、ノズル部15と、キャビティ部16、およびオリフィス部17とを穿設したものであり、ノズル部15とオリフィス部17とはキャビティ部16により区画される。ノズル部15のノズル開口15aと、オリフィス部17のオリフィス孔17aとの開口面積は等しく選ぶために、本体1の軸方向に穿孔するノズル断面形状、すなわち、ノズル曲線14は、ノズル部15となる上流側から中央に向けては連続して絞られ、キャビティ部16を穿設する中央部ではキャビティ部16を挟んだノズル開口15aとオリフィス開口17aとが等しい面積となるようになっている。
【0019】更に、オリフィス部17は、後流側に向け拡がるテーパ面が必要であるため、キャビティ部16からオリフィス部17に向けたノズル曲線14は、後流側に向け拡がる曲線となっている。また、円形凹陥部18はオリフィス17の厚さを定めるために穿設されるもので、必ずしも必要とはしない。図3に示す渦流量計によると、一体部材の円柱体から切削加工のみで製作が可能であり、単純化され、ディジタルオリフィスとして流量計測が可能となる。
【0020】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、以下に示す効果がある。
(1)従来のリング渦を利用した渦流量計に比べて、加工および組立てが容易であり、特に芯出しが容易であるから一定の特性をもった渦流量計を安価に提供することができる。
(2)流量に対する渦周波数が高いので、高い流量分解能が得られる。
(3)ディジタルオリフィスとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による渦流量計の一実施例を説明するための流れ方向断面図である。
【図2】 本発明の渦流量計による他の実施例を説明するための流れ方向の断面図である。
【図3】 本発明による渦流量計の更に他の実施例を説明するための図である。
【図4】 本発明による渦流量計の流量対渦周波数の一例を示すものである。
【図5】 従来のリング渦流量計の一実施例による流れ方向断面図である。
【図6】 従来のリング渦流量計の他の実施例による流れ方向断面図である。
【符号の説明】
1…渦流量計、2…流管、3…ノズル部、4…ノズル、5…キャビティ部、6…オリフィス部、7…押えリング、8,9…導圧孔、10…Oリング、11…テーパ部、12…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 流体が流れる流管の上流側から下流側に向け、順に、下流側が絞られた開口を有するノズル部と、該ノズル部のノズル開口より大口径で流れ方向に所定長さを有するキャビティ部と、前記ノズル開口と略等しい口径のオリフィス開口を有するオリフィス部とで構成し、流れにより前記オリフィス部に発生するリング渦の単位時間当りの数から流量を求めることを特徴とする渦流量計。
【請求項2】 オリフィス部を、上流側のオリフィス開口がノズル部のノズル開口と略等しく下流側に向けて拡がりをもつテーパ管とし、前記オリフィス開口がエッジを有することを特徴とする請求項1記載の渦流量計。
【請求項3】 面平行な一体部材の面に直角な一方向を流れ方向とし、該流れ方向に穿孔されたノズル断面形状を、上流側から中央に向けて連続して絞られ中央から下流側に向け再び拡がるノズル曲線とし、該ノズル曲線の前記中央位置にキャビティ部を穿設しノズル部とキャビティ部とオリフィス部とを構成したことを特徴とする請求項1記載の渦流量計。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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