説明

温室による植物栽培システム

【課題】生ごみを主成分とする廃棄物を発生源として植物の成長に欠かせない有機肥料とCO2を生成し、両者を温室効果と相俟って温室内植物の成長と増産に寄与せしめる、温室による植物栽培システムを提供する。
【解決手段】生ごみを主成分とする廃棄物4をバクテリアにより分解して有機肥料7を生成し、上記バクテリアによる分解に至らない未分解物4′を燃焼してCO2を発生し、該未分解物4′の燃焼により得られたCO2を温室1内空間に供し温室内植物2の光合成を促し、上記バクテリア分解により生成された有機肥料7を温室1内土壌3に施肥する構成を有する温室による植物栽培システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生ごみを主成分とする廃棄物を温室内の植物の育成に有効に利用する、温室による植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の作動によって発生するCO2、又は空気調和設備による空気調和域内で発生するCO2、或いは大気中から吸収したCO2を植物育成工場に供給し、植物の成長(光合成)を促進するシステムは下記の特許文献等に示されるように既知である。
【0003】
他方、生ごみをバクテリアの介在下で分解処理して有機肥料を生成し、植物の育成に資することも既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−272039号公報
【特許文献2】特開平5−135783号公報
【特許文献3】特開平2−163007号公報
【特許文献4】特開2006−340683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、CO2を燃料電池等を発生源として植物育成工場に供給する発想と、生ごみを発生源として得られた有機肥料を植物育成に用いる技術は、個々の技術として既知であり、両者を併用すれば植物の光合成に不可欠なCO2供給と有機肥料供給とが行え、植物の成長を促進し増産を図る目的が有効に達成できる。
【0006】
然しながら、CO2の発生源として燃料電池や空気調和設備、大気中からCO2を吸収する装置等の特別な設備と条件が必要であり、これに加えて生ごみ処理施設の導入が必要であり、発生源が夫々異なる二つの装置を相互に関連なく設備せねばならず、実際には産業上の利用が困難である。
【0007】
本発明は、生ごみを主成分とする廃棄物を上記有機肥料とCO2の発生源として有効利用し、温室における植物の成長、植物増産に寄与する温室による植物栽培システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要述すると、本発明は生ごみを主成分とする廃棄物をバクテリアにより分解して有機肥料を生成する一方、該バクテリアによる分解に至らない未分解物を燃焼してCO2を発生し、該未分解物の燃焼により得られたCO2と、上記バクテリア分解により得られた有機肥料を温室内に供給し、温室内で栽培している植物の葉のCO2吸収・光合成を促進しつつ、植物の根による有機肥料の吸収を促し、よって温室内で栽培する植物の活性で健全なる成長を得て増産目的を達成する温室による植物栽培システムを提供するものである。
【0009】
又上記バクテリアによる生ごみの分解過程で発生するCO2を上記未分解物の燃焼により発生したCO2と併せ温室内に供給し、温室内植物の光合成を増進すると共に、大気中へのCO2の放出を有効に防止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は生ごみを主成分とする廃棄物を発生源として植物の成長に欠かせない有機肥料とCO2を生成し、両者を温室効果と相俟って温室内植物の成長と増産に寄与せしめる、温室による植物栽培システムを有効に実現し、同時に生ごみの埋立処理や燃焼処理によるコスト負担等を軽減し、生ごみを資源として温室内植物の育成に再利用し自然に還元する循環型環境作り社会の形成と、温暖化防止に貢献せしめるシステムとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る温室による植物栽培システム(基本システム)を概示するフローチャート。
【図2】上記基本システムを使用した他例を示す温室による植物栽培システムのフローチャート。
【図3】上記基本システムを使用した更に他例を示す温室による植物栽培システムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る温室による植物栽培システムを図1乃至図3に基づいて詳述する。図1は本発明の第一実施例(基本実施例)、図2は同第二実施例、図3は第三実施例を示す。
【0013】
<第一、第二、第三実施例に共通な説明>
太陽光透過材で囲まれた温室1は風雨を適当に遮断しつつ、太陽光による植物2の光合成環境と温暖化環境を提供することができ、通年の植物栽培が可能である。
【0014】
本発明は上記温室1による野菜や果樹等の植物2の栽培システムに係り、該温室栽培における植物2の活性なる成長と増産を図ることを目的としている。
【0015】
その手段として、植物2の成長に不可欠なCO2(二酸化炭素)と肥料(有機肥料)7を、生ごみを主成分とする廃棄物4を発生源として生成し、該CO2と有機肥料を上記温室1内空間と温室1内土壌3に供給して、上記温室効果と相俟って温室1で栽培する植物2の成長を促進し増産を図る目的が達成できるようにしたものである。
【0016】
上記生ごみは町や農村等の地域の家庭、ホテル、レストラン、学校等から毎日発生し、該生ごみは相当量のプラスチック類、紙、木竹、繊維等の異物が含まれていることが多い。これら生ごみを主成分とする廃棄物4は上記地域乃至地域外において焼却処理や埋立処理されている。
【0017】
上記地域において発生した生ごみを主成分とする廃棄物4を回収し、図1、図2に示す生ごみ貯留施設5に貯留する。
【0018】
上記生ごみを主成分とする廃棄物4を生ごみ貯留施設5から随時取り出して生ごみ分解処理施設6に投入し、該投入された生ごみを主成分とする廃棄物4を該生ごみ分解処理施設6内においてバクテリア(好気性バクテリア)による分解を促して顆粒状の有機肥料(バクテリア分解物)7を生成する。
【0019】
他方、生ごみ分解処理施設6において所定の処理時間内にバクテリアによる分解に至らなかった未分解物4′、即ちバクテリア分解が可能であるが分解しきれなかった生ごみ残渣と共に、バクテリア分解が困難なプラスチック類、紙、木竹、繊維等を生ごみ分解処理施設6から取り出し、これを燃焼施設(CO2発生装置)8に投入して燃焼し、CO2を発生せしめる。
【0020】
好ましくは、上記燃焼施設8においては未分解物4′を燃焼する手段としてガスや石油等の燃料、電力を用いずに、未分解物4′に直接点火し空気を送って燃焼を促す自己燃焼方式を採る。
【0021】
但し、適当量の燃料を用いることを妨げない。適例として、図2に示す生ごみを発生源とするバイオガス(メタンガス)14を燃料として用いることができる。
【0022】
燃焼施設8における燃焼残渣は極めて限定された量であり、生ごみを主成分とする廃棄物4の絶対量は大幅に減量され、略完全な処理を行うことができる。
【0023】
燃焼施設8と温室1間をパイプライン(送気路)9で結び、上記未分解物燃焼施設8における未分解物4′の燃焼によって得られたCO2をパイプライン9を通じて温室1内空間に供し、温室1内植物2の光合成を促す。
【0024】
上記パイプライン9にはCO2制御弁11を設け、各温室1内空間に供給するCO2の供給停止と同解除と供給量を制御する。
【0025】
他方、上記バクテリア分解により生成された有機肥料7を温室1内土壌3に施肥する。生ごみ分解処理施設6と温室1間を搬送手段で結び、該搬送手段を介して有機肥料7を温室1内又は温室1に近接した場所に搬送し、随時施肥することができる。
【0026】
又上記生ごみ分解処理施設6におけるバクテリア分解によって発生するCO2を、上記燃焼施設8から得られたCO2と併せ、上記パイプライン9を通じ上記温室1内空間に供給し、両CO2を温室栽培植物2の光合成に資する。
【0027】
上記第一実施例において説明した構成は以下に述べる第二、第三実施例においても共通する。即ち、第二、第三実施例は上記第一実施例で説明した基本構成を内在する。
【0028】
<第二実施例>
図2に示す第二実施例は上記第一実施例の構成を内在しつつ、これにバイオガス発生用の第二生ごみ分解処理施設13を併備して温室による植物栽培システムを構成した実施例を示している。第一実施例における6は第一生ごみ分解処理施設とする。
【0029】
即ち、生ごみを主成分とする廃棄物4を酸素と光を遮断せずに好気性バクテリアによる分解を行い有機肥料7を生成する第一生ごみ分解処理施設6と、生ごみを主成分とする廃棄物4を酸素と光を遮断して嫌気性バクテリア(メタンバクテリア)による分解を行いバイオガス14を生成する第二生ごみ分解処理施設13とを併備し、該第二生ごみ分解処理施設13から得られたバイオガス14を燃焼施設8の前記未分解物4′の燃焼用燃料として供給する実施例を示している。
【0030】
上記バイオガス発生用の生ごみ分解処理施設13においては、バイオガス14(7割程度のメタンガス)と、CO2と、消化液15が得られ、分解残渣としてバクテリア分解が可能であるが分解しきれなかった生ごみ残渣と共にバクテリア分解が困難なプラスチック類、紙、木竹、繊維等の未分解物4′が得られる。
【0031】
上記第二生ごみ分解処理施設13から得られた未分解物4′を燃焼施設8に供給し、上記第一生ごみ分解処理施設6から得られた未分解物4′と一緒に燃焼し、CO2を発生せしめる。
【0032】
他方、第二生ごみ分解処理施設13から得られた上記バイオガス14を、第二生ごみ分解処理施設13と燃焼施設8間を結ぶパイプライン(送気路)16を通じて燃焼施設8に供給し、燃料として用いる。
【0033】
更に上記第二生ごみ分解処理施設13において得られた消化液15(有機肥料)は第一生ごみ分解処理施設6で得られた有機肥料7と同様に、温室1内土壌3の施肥に供する。
【0034】
<第三実施例>
図3に示す第三実施例は第一実施例の基本構成を内在しており、該第一実施例の基本構成に加え、燃焼施設8から発生する高温気体20を温室1に必要なエネルギーに変換する設備を付加している。
【0035】
上記未分解物4′の燃焼施設8では大量のCO2を含む高温気体が発生する。この高温気体20を熱交換施設17に供給し、該熱交換施設17において熱交換した温水又は加熱気体又は蒸気等の加温媒体18を温室1内の暖房パイプ19に供するか、温室1内空間に吐出して暖気環境を作る。
【0036】
熱交換施設17で熱交換を行った高温気体20は図3中矢印で示すように、熱交換施設17から燃焼施設8へ環流する。
【0037】
又は上記燃焼施設8から得られる高温気体20を熱交換施設17において電力に変換し、温室1内の光源の電力として使用することができる。
【0038】
又燃焼施設8から得られる高温気体でヒートポンプ等を作動し、得られた加熱気体又は温水又は冷気等の加温又は冷却媒体18を温室1に供する。
【0039】
上記熱交換施設17、発電機、ヒートポンプ等は温室1における太陽光による暖房が期待できない夜間の暖房手段、光供給手段、或いは夏場における冷気供給手段として有効である。
【0040】
上記第三実施例は生ごみ分解処理施設6を設けた第一実施例をベースとして記載したが、生ごみ分解処理施設6,13を設けた第二実施例に上記第三実施例を実施できること、又第三実施例で述べた熱交換施設17に関連する構成を第一、第二実施例において実施できることは勿論である。
【0041】
本発明は、第一、第二、第三実施例において生ごみ分解処理施設6,13から得られた分解物(有機肥料7)と未分解物4′、燃焼施設8と生ごみ分解処理施設6,13から得られたCO2等は夫々一旦貯留施設に貯留してから供給することができ、又上記システムは生ごみ分解処理施設6,13、燃焼施設8、熱交換施設17等は何れも既知の装置を使用して構築可能である。
【0042】
又図示しないが、既知のCO2精製装置、バイオガスの精製装置、有機肥料の精製装置、乾燥装置、選別装置等の各種装置を組み込んでシステムを構築できる。
【符号の説明】
【0043】
1…温室、2…植物、3…土壌、4…廃棄物、4′…未分解物、5…生ごみ貯留施設、6…生ごみ分解処理施設(第一生ごみ分解処理施設)、7…有機肥料、8…燃焼施設、9…パイプライン、11…CO2制御弁、13…第二生ごみ分解処理施設、14…バイオガス、15…消化液、16…パイプライン、17…熱交換施設、18…加温媒体又は冷却媒体、19…暖房パイプ、20…高温気体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみを主成分とする廃棄物をバクテリアにより分解して有機肥料を生成し、上記バクテリアによる分解に至らない未分解物を燃焼してCO2を発生し、該未分解物の燃焼により得られたCO2を温室内空間に供し温室内植物の光合成を促し、上記バクテリア分解により生成された有機肥料を温室内土壌に施肥する構成を有することを特徴とする温室による植物栽培システム。
【請求項2】
植物を栽培する温室を備え、生ごみを主成分とする廃棄物をバクテリアで分解して有機肥料を生成する生ごみ分解処理施設を備え、該生ごみ分解処理施設からバクテリア分解に至らない未分解物を回収して燃焼しCO2を発生する燃焼施設を備え、該燃焼施設で得られたCO2を温室内空間に供し温室内植物の光合成を促し、上記生ごみ分解処理施設で得られた有機肥料を上記温室内土壌に施肥することを特徴とする温室による植物栽培システム。
【請求項3】
上記バクテリア分解過程で発生するCO2と上記未分解物の燃焼により得られたCO2とを温室内空間に供給することを特徴とする請求項1又は2記載の温室による植物栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−213587(P2010−213587A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61336(P2009−61336)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(507062484)浦安電設株式会社 (3)
【Fターム(参考)】