説明

温室用ドア構造体

【課題】少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備えて横断面がほぼ四角形の管状体をなす高強度、高剛性のシート止め材を枠材に使用して、外形が矩形の格子構造に組み立てられたドア構造体を提供する。
【解決手段】温室用ドア構造体の外周枠材a、Bによる四隅部分は、全体として直角に屈曲されたL字形状をなす入れ子型のL型継手1により接合されている。入れ子型のL型継手1は、直角2方向の両端部が、前記外周枠材a、Bにおけるシート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ密接に嵌め込む入れ子部11に形成され、同入れ子部11には外周枠材a、Bにおけるシート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2と一致する配置に雌ネジ部12が設けられて、管状空間a1又はb1内へ嵌め込まれた入れ子部11は、シート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2から入れ子部11の雌ネジ部12へねじ込まれたボルト3で外周枠材a、Bと結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透明又は半透明のプラスチックシートで被覆された、いわゆるビニールハウス(以下、単に温室という場合がある。)における主として出入り口開口を開閉する大型のドア構造体の技術分野に属し、更に言えば、少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備えて横断面がほぼ四角形の管状体をなす高強度、高剛性のシート止め材を枠材に使用して、外形が矩形の格子構造に組み立てられたドア構造体の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、ビニールハウスの出入り口開口を開閉する大型のドア構造体は、強度および剛性等の要請により、一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備えて横断面がほぼ四角形の管状体をなす高強度、高剛性のシート止め材を主たる枠材に使用して、外形を矩形の格子構造体に組み立てられている。
その具体的構造例としては、例えば図11と図12に例示したように、左右の縦枠材a、aと横枠材b、bとしてそれぞれ、上述した一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備えて横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を使用している。左右の縦枠材a、aには、その内周面部における各横枠材bの接合位置に、予め工場加工として略コ字形状(溝形鋼状)の接合金具c…を取り付けておく。横枠材bは、たとえば現場サイト又は工場における組み立て作業として、そのシート止着溝gを縦枠材aのシート止着溝gと共通する方向(例えば図11の正面方向)に向けて配置し、その両端部を前記略コ字形状の接合金具cの内側へ嵌め込み、横枠材bのシート止着溝dの溝底に設けたボルト孔から接合金具cのボルト孔を貫通するようにボルトeを通し、反対側からナットdをねじ込み締結し強固に結合して組み立てられている。
その他にも、スライド式ドア構造体(いわゆる引き戸)に関しては、下記の特許文献1、2にも同様な構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−266266号公報
【特許文献2】特開平8−116799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記図11、図12に示した従来のドア構造体は、それなりに一応の用途、機能を満たすものとして実用に供されている。しかし、略コ字形状の接合金具cを使用しているとはいえ、1本のボルトeとナットdの締結力に依存した接合構造でしかないため、面外力および面内力に対する強度、剛性が不十分との評価、懸念を拭えない。即ち、面内の剪断力に対してはボルトeを中心として回転しやすく剛性が低い。また、面外力に対しても、横枠材bと略コ字形状の接合金具cとの間の嵌め合わせ隙間に起因する緩み(いわゆるがたつき)が剛性を低下させるという問題点がある。
仮にボルトeの本数を増やせば、剛性は向上する。しかし、接合部の組み立て作業の工数は倍増するし、ボルト孔が増える分の断面欠損のために、強度の向上は期待する程ではない。
【0005】
なによりも大きな問題点は、図11の円fを見ると明解なように、既往のドア構造体は、外周枠材である縦枠材aと横枠材bによる四隅部分は、縦枠材aと横枠材bが直角に交わる状態に接合され、縦枠材aおよび横枠材bのシート止着溝gはそれぞれ直角2方向に完全に分離・分断された構成になっていることである。従って、縦枠材aと横枠材bのシート止着溝gを利用して波形状のシート止め線(例えば図2の符号hを参照)でプラスチックシート(図2の符号kを参照)を止着する場合、四隅部分では、波形状の止め線は縦枠材aおよび横枠材bそれぞれのシート止着溝gの終端で完全に分断されてしまい、連続性のあるシート止着は不可能という問題点がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、縦枠材と横枠材の接合を容易、確実に行えて、面外力および面内力に対する強度、剛性が必要十分に高いドア構造体を提供でき、また、外周枠材による四隅部分は、縦枠材と横枠材それぞれのシート止着溝の連続性を確保でき、波形状のシート止め線でプラスチックシートを止着する場合の止め線の連続性を確保でき、連続性のあるシート止着が可能な構成のドア構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る温室用ドア構造体は、
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、前記シート止着溝gを各枠材共に共通方向に向けた配置で矩形の格子構造に組み立てられた温室用ドア構造体において
前記温室用ドア構造体の外周枠材a、Bによる四隅部分は、全体として直角に屈曲されたL字形状をなす入れ子型のL型継手1により接合されている。
前記入れ子型のL型継手1は、直角2方向の両端部が、前記外周枠材a、Bにおける前記シート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ密接に嵌め込む入れ子部11に形成され、同入れ子部11には外周枠材a、Bにおける前記シート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2と一致する配置に雌ネジ部12が設けられており、
管状空間a1又はb1内へ嵌め込まれた入れ子部11は、シート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2から入れ子部11の雌ネジ部12へねじ込まれたボルト3で外周枠材a、Bと結合されていることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、 請求項1に記載した温室用ドア構造体において、
L型継手1は、入れ子部11の内端位置に、外周枠材a、Bの先端が突き当たる段部13が形成され、同直角2方向の突き当たり段部13に至る継手本体部14の横断面外形は外周枠材a、Bの横断面外形と同形、同大とされ、L型継手1の側面に外周枠材a、Bのシート止着溝gを連続させる凹溝部15が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明に係る温室用ドア構造体は、
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、前記シート止着溝gを各枠材共に共通方向に向けた配置で矩形の格子構造に組み立てられた温室用ドア構造体において
前記温室用ドア構造体の外周枠材a(又はB)と、その枠内面に外周枠材aと直交する配置とした中間枠材bとのT型接合部は、双方の枠材をT字形配置に挟み付ける二分割型の継手5により接合されている。
前記二分割型の継手5を構成する一方の継手片51は、外周枠材aのシート止着溝gにおける内側寄りの開口縁部g2へ掛け止める鉤部53を一端部に備え、中間枠材bにおけるシート止着溝gの外周面部から両側面部にかけて密接する断面がコ字形の主部54を備え、同主部54にボルト孔56が設けられている。
他方の継手片52は、外周枠材aにおけるシート止着溝gの後方壁外面へ一定の長さ範囲にわたり密着させ固定する補剛板部57と、中間枠材bにおけるシート止着溝gの背面壁から両側面部にかけて密接する断面がコ字形の主部58を備え、同主部58に雌ネジ孔50が形成されている。
外周枠材aの内周面に先端をT字形に突き合わされた中間枠材bにおけるシート止着溝gの溝底壁に、前記一方の継手片51の主部54に設けられたボルト孔56、および他方の継手片52の主部58に設けられた雌ネジ孔50とそれぞれ一致する位置にボルト孔2が設けられ、双方の枠材a、bをT字形配置に挟み付けた二つの継手片51、52は、前記一方の継手片51のボルト孔56から中間枠材bのボルト孔2へ通したボルト4を、他方の継手片52の雌ネジ孔50へねじ込み締結して外周枠材aと中間枠材bとが結合されていることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した温室用ドア構造体において、
二分割型の継手5を構成する一方の継手片51の主部54には、中間枠材bのシート止着溝gに向かって突き出るようにバーリング加工されたボルト頭沈ませ凹部55が設けられ、同凹部55の底にボルト孔56が設けられており、他方の継手片52における横断面がコ字形の主部58には、外向きに突き出るようにバーリング加工された筒状凸部59が設けられ、同筒状凸部59の内筒面が雌ネジ孔50に形成されており、各継手片51、52の主部54と58は中間枠材bの外周をほぼぴったり包囲して外接する大きさ、形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2の発明に係る温室用ドア構造体は、外周枠材a、Bによる四隅部分の接合に、全体として直角に屈曲されたL字形状をなす入れ子型のL型継手1を使用し、直角2方向の両端部に形成された入れ子部11を外周枠材a、Bにおけるシート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ密接に嵌め込み、外周枠材a、Bにおける前記シート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2から入れ子部11の雌ネジ部12へねじ込んだボルト3で各入れ子部11と外周枠材a、Bとを強固に締結して結合されているので、四隅部分の接合部は、当該温室用ドア構造体に作用する面外力はもとより面内力に対して使用上に必要十分な大きさの剛性と強度を発揮する。
勿論、当該四隅部分における外周枠材a、Bの接合作業も、入れ子型のL型継手1の入れ子部11に対する外周枠材a、Bの嵌め込みと、ボルト3による締結という簡単な作業内容であるから、誰でも熟練を要することなく、簡単、迅速に作業ができる。
そして、この温室用ドア構造体の正面側(図1で見る側)から見る四隅部分には、前記ボルト3が視認されるが、背面側にはボルト3はもとよりナットも現れず、シンプルでスマートな意匠を呈する。入れ子型のL型継手1を使用した接合であるため、2本の外周枠材a、Bはまるで一連に屈曲されて繋がっている形態のスマートな意匠感を呈する。
【0010】
次に、請求項3、4の発明に係る温室用ドア構造体は、外周枠材a(又はB、以下同じ)と、その枠内面に外周枠材aと直交するように配置した中間枠材bとのT型接合部の接合は、双方の枠材aとbをT字形配置に挟み付ける二分割型の継手5を使用して行ない、一方の継手片51は、外周枠材aのシート止着溝gにおける内側寄りの開口縁部g2へ鉤部53を掛け止め、中間枠材bには断面がコ字形の主部54をシート止着溝gの外周面部から両側面部にかけて密接させるが、他方の継手片52は、外周枠材aにおけるシート止着溝gの後方壁外面へ補剛板部57へ一定の長さ範囲にわたり密着させ固定するし、中間枠材bにはコ字形の主部58をシート止着溝gの後方壁外面から両側面部にかけて密接させ、双方の枠材a、bの前後両面並びに両側面をほぼ全周にわたり二つの継手片51と52で挟み付けて、前記一方の継手片51のボルト孔56から中間枠材bのボルト孔2へ通したボルト4を、他方の継手片52の主部58に設けた雌ネジ50へねじ込んで締結し結合されているので、このT型接合部もやはり、当該温室用ドア構造体に作用する面外力および面内力に対して使用上に必要十分な大きさの剛性と強度を発揮する。
しかも当該T型接合部分接合作業は、二分割型の継手5を構成する二つの継手片51と52をT字形に配置した2本の枠材a、bへ当てがい、ボルト止めするという至極簡単な作業内容であるから、誰でも熟練を要することなく、簡単、迅速に作業できる。
【0011】
かくして、本発明の温室用ドア構造体は、一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備え横断面がほぼ四角形の管状体とされ強度、剛性が大きいシート止め材を枠材に使用したことにふさわしく、枠材の各接合部を面外力および面内力に対して使用上に必要十分な大きさの剛性と強度を発揮する構成なので、大型の温室用ドア構造体としての用途、機能に好適な力学性状を発現し、使い勝手が良い。即ち、使用時のふらつきや歪み変形による不便、不都合を来さない。
もっとも、本発明の温室用ドア構造体は、大型用としてのみ実施されるものではない。必要に応じて、開口が小さい窓用或いは天窓用その他の用途格子状構造体としても同様に広く適用することができる。
【0012】
その上、従来例を示した図11の円fと、本願発明に係る温室用ドア構造体の実施例を示す図1の円Iとを見比べると明らかなように、本願発明の温室用ドア構造体における四隅部分は、外周枠材a、Bのシート止着溝gが、L字形状をなす入れ子型のL型継手1における凹溝部15によって直角に一連に連続する構成となるから、同シート止着溝gを利用して波形状の止め線hでプラスチックシートkを止着する処理は、波形状の止め線hを直角2方向に連続させて、断点のないシート止着を行うことができる。よって、この点でも意匠性に優れた温室用ドア構造体を提供できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、前記シート止着溝gを各枠材共に共通方向に向けた配置で矩形の格子構造に組み立てた温室用ドア構造体である。
温室用ドア構造体の外周枠材a、Bによる四隅部分は、全体として直角に屈曲されたL字形状をなす入れ子型のL型継手1により接合する。
前記入れ子型のL型継手1は、直角2方向の両端部が、前記外周枠材a、Bにおける前記シート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ密接に嵌嵌め込む入れ子部11に形成されている。同入れ子部11には外周枠材a、Bにおける前記シート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2と一致する位置に雌ネジ部12が設けられている。
好ましくは入れ子部11の内端位置に、外周枠材a、Bの先端が突き当たる段部13が形成され、前記直角2方向の突き当たり段部13に至る継手本体部14の横断面外形は外周枠材a、Bの横断面外形と同形、同大とされ、L型継手1の側面に外周枠材a、Bのシート止着溝gを連続させる凹溝部15が形成されている。
入れ子型のL型継手1における入れ子部11は、外周枠材a、Bそれぞれのシート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ密接に嵌め込み、シート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2から入れ子部11の雌ネジ部12へねじ込んだボルト3でL型継手1の入れ子部11と外周枠材a、Bとを強固に結合する。
【0014】
また、前記温室用ドア構造体の外周枠材a(又はB、以下同じ)と、その枠内面に外周枠材aと直交するように配置した中間枠材bとのT型接合部は、双方の枠材a、BをT字形配置に挟み付ける二分割型の継手5により接合する。
前記二分割型の継手5を構成する一方の継手片51は、外周枠材aのシート止着溝gにおける内側寄りの開口縁部g2へ掛け止める鉤部53を一端部に備え、中間枠材bにおけるシート止着溝gの外周面部から両側面部にかけて密接する断面がコ字形の主部54を備え、同主部54にボルト孔56が設けられている。
他方の継手片52は、外周枠材aにおけるシート止着溝gの後方壁の外面へ一定の長さ範囲にわたり密着させ固定する補剛板部57と、中間枠材bにおけるシート止着溝gの後方壁の外面から両側面部にかけて密接する断面がコ字形の主部58を備え、同主部58に雌ネジ孔50が形成されている。
外周枠材aの内周面に先端をT字形に突き合わされた中間枠材bにおけるシート止着溝gの溝底壁へ、一方の継手片51の主部54に設けたボルト孔56、および他方の継手片52の主部58に設けた雌ネジ孔50と一致する位置にボルト孔2が設け、双方の枠材a、BをT字形配置に挟み付けた二つの継手片51、52は、一方の継手片51のボルト孔56から中間枠材bのボルト孔2へ通したボルト4を、他方の継手片52の主部58に設けた雌ネジ孔50へねじ込み締結して外周枠材aと中間枠材bとが結合されている。
【実施例1】
【0015】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る温室用ドア構造体の実施例を完成状態で示す。この温室用ドア構造体の特長は、図1中に円Iで特定した外周枠材(縦枠材aと横枠材B)の四隅部分の接合構造、および円IIで特定した外周枠材(縦枠材a)とその枠内面に縦枠材aと直交する配置とした中間枠材b(横枠材)とのT型接合部の接合構造の2点にある。
この温室用ドア構造体に使用する枠材は、外周枠材(縦枠材aと横枠材B)および中間枠材b(横枠材)のいずれも、使用部位に応じて用語を異ならせているが、全て一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備え横断面がほぼ四角形の管状体とされ強度、剛性が大きいシート止め材とされている。なお、図示した実施例の各枠材は、例えば図1の正面側(又は前面)にのみシート止着溝gを備えた構成であるが、この限りではない。背面側又は側面側にもシート止着溝を複数備えた構成のシート止め材を採用して同様に実施できることを予め付言しておく。
上記構成のシート止め材a、B、bは、横断面がほぼ四角形の管状体とされているので、構造材としての強度、剛性が大きく、大型の温室用ドア構造体を高強度、高剛性に製作する材料として適する。因みに、シート止め材を図3の断面方向に見た大きさは、通例、縦方向寸法が43mm、横方向寸法が30mm、板厚が0.8mm程度とされる。この種のシート止め材は、通例、帯鋼板のロールフォーミング加工法と端部を重ね合わせ折り曲げた重ね継ぎカシメ法とにより、或いはアルミニウムの押出し材として無限長に製造される。端部を突き合わせて溶接する製造法も採用可能ではあるが、溶接部が発錆の原因となるので好ましくはない。前記のように製造した連続材は必要長さに切断し枠材として使用される。当然のことながら、各枠材は共に、各々のシート止着溝gを共通方向(横向き方向)に向けた配置として矩形の格子構造をなす温室用ドア構造体が組み立てられている。
【0016】
請求項1、2に係る発明の実施例として、上記温室用ドア構造体の外周枠材a、Bによる四隅部分は、全体として直角に屈曲されたL字形状をなす入れ子型のL型継手1(特には図4を参照)を使用して接合されている。
本発明で言う入れ子型のL型継手1は、図4を参照すると明かな通り、基本形態がH型断面とされ、直角2方向の両端部が、前記外周枠材a、Bにおけるシート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ密接に嵌る(図3を参照)大きさ、形状の入れ子部11に形成されている。同入れ子部11には、外周枠材a、Bにおけるシート止着溝gの溝底壁g1に設けられたボルト孔2と一致する配置で雌ネジ部12が設けられている。本実施例の場合、L型継手1はプラスチックの射出成形品(又はアルミニウムのダイカスト製品)として製造されており、前記雌ネジ部12は、ナット部材をインサート成形して設置されている。
このL型継手1には、入れ子部11の内端位置に、外周枠材a、Bの先端が突き当たる段部13が外周枠材a、Bの板厚と同じ段差で形成されている。そして、同直角2方向の突き当たり段部13、13に至る範囲の継手本体部14の横断面外形は、図2に見るとおり、外周枠材a、Bの横断面外形と同形、同大の形状とされている。このL型継手1において、外周枠材a、Bのシート止着溝gと共通する側面は、H型断面の溝が、同外周枠材a、Bのシート止着溝gを連続させる凹溝部15に形成されている。
したがって、図2に例示したように、外周枠材a、Bのシート止着溝gを利用して波形状の止め線hでプラスチックシートkを止着する処理は、直角2方向に、波形状の止め線hを連続させてきっちりとシート止着を行うことができる。よって、外観の意匠性に優れた温室用ドア構造体を提供できる。
【0017】
本発明の温室用ドア構造体は、外周枠材の四隅部分を上記の構成としたから、外周枠材a、Bによる四隅部分の接合は、外周枠材である縦枠材aおよび横枠材Bをそれぞれのシート止着溝gが共通方向に向いた態様とし、L型継手1の両端の入れ子部11を、前記シート止着溝gの溝底壁g1の背面側の管状空間a1又はb1内へ段部13が突き当たる位置まで密接に嵌め込み、溝底壁g1に予め設けたボルト孔2から入れ子部11の雌ネジ部12へボルト3をねじ込み強く締結することで、L型継手1の入れ子部11と外周枠材a、Bとが強固に結合される。
したがって、この温室用ドア構造体の四隅部分に作用する面内力および面外力に対しては、L型継手1が強く抵抗するし、更に前記ボルト3による締結力が抵抗するので、使用上に必要十分な強度と剛性を発揮する。
しかも締結したボルト3の先端部は、図3に見るとおり、L型継手1の雌ネジ部12を貫通することはあっても、外周枠材a、Bにおける背面側壁の外に露出しないから、背面側の意匠性に優れる。2本の外周枠材a、Bはまるで直角に屈曲して連続する形態に視認される。
【0018】
次に、請求項3、4に係る発明では、上記温室用ドア構造体における図1中に円IIで特定した外周枠材a(縦枠材)と、その枠内面に外周枠材aと直交する配置とした中間枠材bとのT型接合部が、双方の枠材a、bをT字形配置に挟み付ける二分割型の継手5(図5を参照)により結合される。二分割型の継手5を構成する二つの継手片51、52は、例えば鋼板のプレス成形加工品として製造されている。後述するように、形態も比較的簡単で単純なの、製造も容易であり、安価にできる。
上記二分割型の継手5を構成する一方の継手片51は、図7に示したように、外周枠材aのシート止着溝gにおける内側寄りの開口縁部g2へ掛け止める鉤部53(図6を参照)を一端部に備え、中間枠材bにおけるシート止着溝gの外周面部から両側面部にかけて密接(外接)する(図5を参照)断面がコ字形の主部54を備え、同主部54の略中央部位に、中間枠材bのシート止着溝gに向かって突き出るようにバーリング加工されたボルト頭沈ませ凹部55が設けられ、同凹部55の底にボルト孔56が設けられた構成である。
【0019】
他方の継手片52は、外周枠材aにおけるシート止着溝gの後方側壁の外面へ一定の長さ範囲にわたり密着させ、工場におけるリベット止め或いは現場サイトにおけるボルト止め等の方法で固定される略T字形の補剛板部57と、中間枠材bにおけるシート止着溝gの後方側壁の外面から両側面部にかけて密接(外接)させる断面がコ字形の主部58とを備え、同主部58から外向きに突き出るようにバーリング加工された筒状凸部59(図6を参照)の内筒面が雌ネジ孔50に形成されている。
【0020】
上記構成の二分割型の継手5を使用して、外周枠材a(縦枠材)と、その枠内面に外周枠材aと直交する配置とした中間枠材bとのT型接合部を接合するには、先ず縦枠材aにおいて中間枠材bの接合位置に、予め他方の継手片52の補剛板部57を所定の姿勢に固定しておく。また、中間枠材bのシート止着溝gの溝底壁g1には、前記一方の継手片51の主部54に設けられたボルト孔56、および他方の継手片52の主部58に設けられた雌ネジ孔50と一致する位置にボルト孔2を予め設けておく。その上で、外周枠材aの内周面に中間枠材bの先端をT字形に突き合わせ、一方の継手片51はその鉤部53を外周枠材aのシート止着溝gにおける内側寄りの開口縁部g2へ掛け止めて、双方の枠材a、bを、二分割型の継手5を構成する二つの継手片51、52で挟み付ける。そして、前記一方の継手片51のボルト孔56から中間枠材bのボルト孔2へ通したボルト4を、他方の継手片52の主部58に設けた雌ネジ孔50へねじ込んで締め付けることにより、外周枠材aと中間枠材bとが強固に結合される。
そのため上記二分割型の継手5を構成する各継手片51、52における横断面がコ字形の主部54、58は、中間枠材bの外周面をほぼ包囲する大きさ、形状に構成されている。
【0021】
要するに、T字形に突き合わせた各枠材a、bの前後両面並びに両側面をほぼ全周にわたり二つの継手片51、52で挟み付け、その上で前記一方の継手片51の主部54から中間枠材bのボルト孔2へ通したボルト4を、他方の継手片52の主部58に設けた雌ネジ孔50へねじ込んで強固に締結し結合されるので、二つの継手片51、52による拘束力が強く、当該温室用ドア構造体に作用する面外力はもとより面内力に対しても使用上に必要十分な大きさの剛性と強度を発揮する接合部が完成する。
しかも当該T型接合部の接合作業は、二分割型の継手5を構成する二つの継手片51、52を、T字形に突き合わせた双方の枠材a、bへ当てがい、ボルト4で締結するという至極簡単な内容であるから、誰でも熟練を要することなく、簡単、迅速に作業できる。
なお、上記二分割型の継手5によるT字形に突き合わせた枠材の接合は、上記外周枠材aと中間枠材bとの接合に限らず、図1に見られる外周枠材(横枠材B)に対して、その枠内面にT字形配置に突き合わせた縦枠材a(図示は省略した。)を中間枠材とする場合の接合、その他にも同様に適用し実施することができる。
【0022】
最後に、図1中に円IIIで特定し、図8〜図10に具体的に記載したドア用取っ手6の取り付け構造について説明する。
本発明が対象とする温室用ドア構造体は、上記したように、一側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備えて横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用して高強度、高剛性に、且つ大型に組み立てられているので、仮にこれを引き戸として使用する場合には、その押し引き操作に適した取っ手6を予め用意する必要があるので、その一手段を以下に説明する。
図示した取っ手6は、断面をほぼL字形状に押出成形されたアルミニウム押出材を使用上に好適な長さに裁断したに等しいもので、その定着面部61は、外周枠材aのシート止着溝gを持つ前面側幅寸にほぼ等しい幅寸とされている(図9を参照)。また、同定着面部61の裏面には、外周枠材aのシート止着溝gの開口縁の内側へほぼぴったり内接する間隔で2本のリブ62、62が形成されている。同じ定着面部61のほぼ中央部位に、ボルト孔63が設けられている。
一方、上記のボルト孔63へ通すネジ軸64を備えた裏止め板65は、横幅が外周枠材aのシート止着溝gの開口部幅よりも小さく、縦寸は前記シート止着溝gの溝底幅よりは小さいが開口部幅よりも大きいほぼ菱形状に形成されている。
【0023】
要するに、図示したドア用取っ手6の取り付け構造としては、外周枠材aの前面における取っ手取り付け位置に、先ずは裏止め板65を縦に長い姿勢としてシート止着溝gの中へ差し入れ、次いで裏止め板65を約90度回転してシート止着溝gの両側壁に等しく引っ掛かる状態にする。前記の裏止め板65を一方の手の指先で支え、他方の手では取っ手6を持って、その定着面部61のボルト孔63をネジ軸64へ通す。しかる上で、ネジ軸64へ前面側からナット66をねじ込み、強く締結することにより、上記裏止め板65に反力をとってドア用取っ手6を強固に取り付け固定することができる。
かくすることにより、断面がほぼL字形状をなす取っ手6の起立面部67およびその先端部の屈曲部68を、取っ手として当該温室用ドア構造体による引き戸の押し引きに好適に使用することができる。
この取っ手取り付け構造は、外周枠材aにボルト孔その他を形成して傷つけることがないので、断面欠損による強度低下を回避できるし、取っ手6の取り付け位置は外周枠材aのシート止着溝gに沿って上下方向へ自由に変更、調節することができる。
【0024】
以上に本発明を図示した実施例とともに説明したが、もとより本発明の技術的思想は実施例に限定されるものではない。本発明の目的と要旨を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う通常の設計変更や応用・変形を包含するものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例である温室用ドア構造体の一例を示した斜視図である。
【図2】図1中に円Iで特定した四隅部分の接合構造を示した斜視図である。
【図3】図2のイ−イ線に沿って切断した断面図である。
【図4】四隅部分の接合構造を分解状態で示した斜視図である。
【図5】図1中に円IIで特定したT型接合部分の接合構造を示した斜視図である。
【図6】図5のロ−ロ線に沿って切断した断面図である。
【図7】T型接合部分の接合構造を分解状態で示した斜視図である。
【図8】図1中に円IIIで特定した取っ手の取り付け構造を示した斜視図である。
【図9】図8のハ−ハ線に沿って切断した断面図である。
【図10】取っ手取り付け構造を分解状態で示した斜視図である。
【図11】従来の温室用ドア構造体の一例を示した正面図である。
【図12】従来の温室用ドア構造体の組み立て要領を分解状態で示した斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
g シート止着溝
a 外周枠材(縦枠材)
B 外周枠材(横枠材)
1 L型継手
g1 溝底壁
a1、b1 管状空間
11 入れ子部
2 ボルト孔
12 雌ネジ部
3 ボルト
13 段部
14 継手本体部
15 凹溝部
5 二分割型の継手
51 一方の継手片
52 他方の継手片
g2 開口縁部
53 鉤部
54 主部
56 ボルト孔
57 補剛板部
58 主部
50 雌ネジ孔
4 ボルト
55 ボルト頭沈ませ凹部
59 筒状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、前記シート止着溝を各枠材共に共通方向に向けた配置で矩形の格子構造に組み立てられた温室用ドア構造体において
前記温室用ドア構造体の外周枠材による四隅部分は、全体として直角に屈曲されたL字形状をなす入れ子型のL型継手により接合されており、
前記入れ子型のL型継手は、直角2方向の両端部が、前記外周枠材における前記シート止着溝の溝底壁の背面側の管状空間内へ密接に嵌め込む入れ子部に形成され、同入れ子部には外周枠材における前記シート止着溝の溝底壁に設けられたボルト孔と一致する位置に雌ネジ部が設けられており、
管状空間内へ嵌め込まれた入れ子部は、シート止着溝の溝底壁に設けられたボルト孔から入れ子部の前記雌ネジ部へねじ込まれたボルトで外周枠材と結合されていることを特徴とする、温室用ドア構造体。
【請求項2】
入れ子型のL型継手は、入れ子部の内端位置に、外周枠材の先端が突き当たる段部が形成され、同直角2方向の突き当たり段部に至る継手本体部の横断面外形は外周枠材の横断面外形と同形、同大とされ、L型継手の側面には外周枠材のシート止着溝を連続させる凹溝部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載した温室用ドア構造体。
【請求項3】
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、前記シート止着溝を各枠材共に共通方向に向けた配置で矩形の格子構造に組み立てられた温室用ドア構造体において
前記温室用ドア構造体の外周枠材と、その枠内面に外周枠材と直交する配置とした中間枠材とのT型接合部は、双方の枠材をT字形配置に挟み付ける二分割型の継手により接合されており、
前記二分割型の継手を構成する一方の継手片は、外周枠材のシート止着溝における内側寄りの開口縁部へ掛け止める鉤部を一端部に備え、中間枠材におけるシート止着溝の外周面部から両側面部にかけて密接する断面がコ字形の主部を備え、同主部にボルト孔が設けられており、
他方の継手片は、外周枠材におけるシート止着溝の後方壁外面へ一定の長さ範囲にわたり密着させ固定する補剛板部と、中間枠材におけるシート止着溝の後方壁外面から両側面部にかけて密接する断面がコ字形の主部とを備え、同主部に雌ネジ孔が形成されており、
外周枠材の内周面に先端をT字形に突き合わされた中間枠材におけるシート止着溝の溝底壁には、前記一方の継手片の主部に設けられたボルト孔、および他方の継手片の主部に設けた雌ネジ孔とそれそれ一致する位置にボルト孔が設けられ、双方の枠材をT字形配置に挟み付けた二つの継手片は、前記一方の継手片のボルト孔から中間枠材のボルト孔へ通したボルトを、他方の継手片の主部に設けた雌ネジ孔へねじ込み締結して外周枠材と中間枠材とが結合されていることを特徴とする、温室用ドア構造体。
【請求項4】
二分割型の継手を構成する一方の継手片における横断面がコ字形の主部には、中間枠材のシート止着溝に向かって突き出るようにバーリング加工されたボルト頭沈ませ凹部が設けられ、同凹部の底にボルト孔が設けられており、また、他方の継手片における横断面がコ字形の主部には、外向きに突き出るようにバーリング加工された筒状凸部の内筒面が雌ネジ孔に形成されており、双方の継手片における主部はそれぞれ、中間枠材の外周をほぼぴったり包囲し外接する大きさ、形状であることを特徴とする、請求項3に記載した温室用ドア構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−165379(P2009−165379A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5474(P2008−5474)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000221568)東都興業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】