説明

温室用暖房装置

【課題】食廃油を有効利用して環境に優しい温室暖房を実現する。
【解決手段】気化燃焼室2、及び気化燃焼室の上方に連続形成した燃焼室3、及び燃焼室からの排気ガスを通過させる熱交換器4を、熱交換器に臨ませると共に吸気口11に配設した送風ファン12及び排気口13を設けた外殻体1に収納して温室内に設置する温室用暖房装置であって、前記気化燃焼室2を、底面21を蒸発皿とし、内壁に多数の小孔を穿設すると共に、コンプレッサーと接続した二重周壁22に形成し、前記気化燃焼室に熱保持体23を内置すると共に、灯油を40%以上混合した食廃油の燃料を蒸発皿に滴下する燃料供給部24、及び空気及び点火燃料を噴射する点火用バーナ25を付設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウス等の園芸栽培用の温室内を暖房する温室用暖房装置に関するもので、特に天ぷら油の廃油(食廃油)を使用する装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
温室暖房装置は、燃焼排気ガスを直接温室内に放出して温室内温度を高める手段(特開2003−134945号公報)と、熱交換器を通して燃焼排気ガスを室外に排出し、温室内空気を前記熱交換器で昇温させる手段(特許文献1:特開2009−195227号公報)が知られている。
【0003】
また食廃油を燃料として使用する処理方法としては、特許文献2(特開2008−62212号公報)に、食廃油と灯油とを混合し、20〜80℃に加温し混合燃料液を空気と混入しながらバーナノズルから噴射させながら点火燃焼する手法が開示されている。
【0004】
また一般的な廃油の燃焼処理として、燃料皿に燃料を滴下し、当該燃料の燃焼熱で燃料の気化を行い、燃焼を継続するもので、燃料の気化が効率的になされるように燃焼高温ガスが燃料供給個所を通過するように構成したり(特許文献3:特開2005−282969号公報)、未燃物室の燃焼を確実に行うために燃焼皿の上方に赤熱体を配置するなどの構成を採用している(特許文献4:特開2007−218572号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−195227号公報。
【特許文献2】特開2008−62212号公報。
【特許文献3】特開2005−282969号公報。
【特許文献4】特開2007−218572号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温室暖房用の燃料として食廃油を使用する場合には、栽培食物の安全性を考慮すると、熱交換方式を採用する必要がある。更に温室内設置するので、コンパクトに配置できるのが望ましく、且つメンテナンスも簡易であることが望ましい。
【0007】
しかし食廃油をそのまま燃焼させるには、低温時固形分が含まれているので燃料供給管が詰まってしまう虞があり、特許文献2で開示されているように灯油と混合して使用することが良好であるが、態々燃料を加温して供給する方式を採用したのでは、装置の複雑化を招く。
【0008】
また燃料を加温せずに燃焼室内の蒸発皿に滴下する燃焼方式を採用した場合に、気化を促進させるために、燃焼室の中空個所に蒸発皿を配置して高温燃焼ガスで気化する方式は、高温燃焼を対象とする工業用廃油に適するが、低温燃焼を行う食廃油の場合には、燃焼ガスの燃焼室内の対流は、燃焼室の下方隅部に煤が付いてしまい、そのメンテナンスの回数が多くなってしまう。また中空蒸発皿を採用する装置全体が嵩張ってしまう。
【0009】
そこで本発明は、食廃油を有効に使用できる温室用暖房装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る温室用暖房装置は、気化燃焼室、及び気化燃焼室の上方に連続し、気化燃焼室より充分に容積を大きく形成した燃焼室、及び燃焼室からの排気ガスを通過させる熱交換器を、熱交換器に臨ませると共に吸気口に配設した送風ファン及び排気口を設けた外殻体に収納して温室内に設置する温室用暖房装置であって、前記気化燃焼室を、底面を蒸発皿とし、内壁に多数の小孔を穿設すると共に、コンプレッサーと接続した二重周壁に形成し、前記気化燃焼室に熱保持体を内置すると共に、灯油を40%以上混合した食廃油の燃料を蒸発皿に滴下する燃料供給部、及び空気及び点火燃料を噴射する点火用バーナを付設してなることを特徴とするものである。
【0011】
而して前記装置は、排気ガスを温室外に放出する煙突を接続して温室内に設置されるもので、コンプレッサーを作動させて、燃焼用空気を気化燃焼室の周壁から噴射し、燃料供給部から所定の燃料を蒸発皿に滴下すると共に、点火用バーナから点火炎を吹き出して燃料に点火し、燃料の燃焼が継続すると点火用バーナの点火炎を止める。
【0012】
燃焼の継続は、気化燃焼室において燃料の一部が燃焼し、熱保持体が赤熱して、気化燃焼室を所定の温度以上(食廃油の気化が為される温度)に維持し、滴下燃料の気化を促進すると共に、燃焼用空気と混合し、燃焼室内で未燃焼ガスが火炎となって燃焼する。更に燃焼室内の燃焼による温度上昇によって熱保持体も当然加熱されるので、更に気化が促進され燃焼が容易に継続することになる。
【0013】
燃焼室で完全燃焼した燃焼排気ガスは熱交換器を通って温室外に排出されるが、前記の気化燃焼室、燃焼室及び熱交換器の全体が外殻体に包まれているので、送風ファンの作動で温室内空気が外殻体内に取り入れられると共に、熱交換器を通過し、更に気化燃焼室及び燃焼室の外面と接触して通過して温められ、排気口から放出して温室内暖房を実現するものである。
【0014】
更に気化燃焼室より充分容積の大きな燃焼室を備えることで、大量の空気供給に伴って燃焼室内での燃料の完全燃焼が実現すると共に、大量の燃焼排気ガスを発生することになり、熱交換効率も高められるものである。
【0015】
また本発明(請求項2)は、更に気化燃焼室の底面と蒸発皿の隅部をアール状面に形成してなるもので、気化燃焼室の空気の流れが底隅部において滞留する虞が無く、且つ燃料も当該隅部に溜まってしまうことが無い。
【0016】
更に本発明(請求項3)は、燃焼排気ガスを多数のパイプに分流させる熱交換器を、燃焼室の上方に配置すると共に、燃焼室の壁部に上方から下方に燃焼排気ガスを流す排出路を形成し、前記排出路と前記熱交換器を接続する排出筒部を設けてなるもので、排出筒部を設けた分、外殻体に取り入れた温室内空気との接触面積が大きくなり、熱交換効率が高められる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成は上記のとおりで、温室用暖房に食廃油を有効に利用することができたと共に、灯油との混合使用に際して、燃料加温を必要としない簡易な構造で、且つ温室暖房用空気を暖める熱交換用熱源として適する大量の燃焼排気ガスを効率的に作り出すことができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の使用状態(温室設置)の説明図。
【図2】同装置全体の断面図。
【図3】同気化室の断面図。
【図4】同点火用バーナの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した温室用暖房装置は、外殻体1と、外殻体1内に収納される気化燃焼室2、及び燃焼室3、及び熱交換器4と、外殻体1の外側に配置される煙突5と、コンプレッサー6と、燃料ポンプ7と、燃料タンク8とで構成される。
【0020】
外殻体1は、下方から気化燃焼室2、燃焼室3、熱交換器4を積層配置した全体を、適宜な間隔をあけて包み込むように形成したもので、上面部に吸気口11を設けると共に、前記吸気口11に熱交換器4に臨ませた送風ファン12を取り付け、下方側面適宜位置に排気口13を設けたものである。
【0021】
気化燃焼室2は、燃料の蒸発皿とした底面21と二重周壁22で形成し、熱保持体23を内置すると共に、燃料供給部24と、点火用バーナ25を付設してなるものである。
【0022】
底面21と二重周壁22との境界部分はR状面に形成し、二重周壁22の内側壁には多数の小孔221を穿設し、二重周壁22内とコンプレッサー6との間を空気供給管222で接続してなる。
【0023】
熱保持体23は、外周部分と中央部分で燃料気化ガスが通過できるようにした輪状板231を上下二段に配置し、多数の透孔を穿設した筒状脚部232で支持して気化燃焼室2に内置したものである。また燃料供給部24は、燃料用ポンプ7を介して、燃料タンク8からの燃料を気化燃焼室2内に滴下供給するものである。
【0024】
点火用バーナ25は、図4に示すようにノズル251先端が気化燃焼室2内に位置し、前記ノズル251内に、点火用灯油供給管252、及びコンプレッサー6と接続した空気供給管253を接続し、更に点火用灯油供給管252の滴下面に、網状油溜まり254を設けると共に、点火電極(スパーク電極)255を臨ませてなる。
【0025】
燃焼室3は、気化燃焼室2の上方に連続し、且つ気化燃焼室2より充分容積を大きく形成(容積比で7倍以上)したもので、燃焼室3の壁部の一部を二重構造とし、上方内側に入口を開口し、下方外側に出口を解雇した燃焼排気ガスを流す排出路31を形成し、前記出口には排出筒部32を連結して、熱交換器4と接続してなるものである。更に燃焼室3内の上部には孔明き筒体からなる熱保持体33を設けてなる。
【0026】
熱交換器4は、燃焼室3の上方位置で、吸気口11の下方に配置したもので、入口側に分煙部41を設け、出口側に集煙部42を設けると共に、分煙部41と集煙部42との間を、多数の煙管43で接続して形成したもので、分煙部41は排出筒部32と接続し、集煙部42は煙突5と接続してなるものである。
【0027】
而して前記装置は、気化燃焼室2、及び燃焼室3、及び熱交換器4を収納した外殻体1と、コンプレッサー6と、燃料ポンプ7を温室A内に設置し、温室A外には、燃料タンク8を配置し、煙突5の排煙口を温室A外に突出させてなるものである。
【0028】
前記の装置による暖房について説明すると、燃料タンク8に収納した燃料Bを気化燃焼室2に供給し、燃料Bを気化させて燃焼用空気Cと混合して燃焼し、燃焼排気ガスDは熱交換器4を通して外気に放出される。そして前記の燃焼熱を、送風ファン12を作動させて、温室内空気Eを外殻体1内に取り込み、前記熱交換器4と接触させて通過させると共に、外殻体1内の気化燃焼室2及び燃焼室3の表面と接触させて前記の取り込み空気Eを暖めることで回収し、この温めた空気(暖房用空気)Fを排気口13から温室A内に放出して温室Aの暖房を実現するものである。
【0029】
特に前記の装置は燃料として濾過して不純固形物を除去した食廃油を使用するものである。しかし濾過した食廃油でも低温固形分を含んでいるので、長期間使用すると燃料供給管が詰まってしまうので、灯油と混合して流動性を確保して使用するもので、混合割合は4:6〜6:4の範囲で、好ましくは5:5程度が良い。
【0030】
さらにこの混合燃料は、気化し難いし、且つ点火も容易に行われない食廃油を使用していること、さらに燃焼ガスを直接使用するものではなく、熱交換器4を介して熱利用を行うものであるから、外気に放出される燃焼排気ガスDが高温でない方が望ましいので、燃焼温度も著しく高温とならない工夫が必要である。
【0031】
そこで前記の構成を採用したもので、その燃焼形態について以下に説明する。燃焼用空気Cはコンプレッサー6の作動によって気化燃焼室2に供給されるものであるが、その供給は点火用バーナ25のノズル251からの噴射と、二重周壁22の小孔221からの噴射でなされる。
【0032】
燃料Bの供給は、燃料ポンプ7の作動で、適宜量を燃料供給部24から気化燃焼室3の底面(蒸発皿)21に滴下して行う。
【0033】
而して最初の点火は、ノズル251内において、点火用灯油供給管252から網状油溜まり254に点火用灯油Gを滴下し、点火電極255のスパークで点火用灯油Gの発火を行い、ノズル先端から火炎を気化燃焼室3に吹き込む、この点火用バーナ25の火炎によって蒸発皿21上の燃料Bは加熱され、気化すると共に燃焼を開始する。前記の燃焼が開始すると、点火用灯油Gの供給を停止する。
【0034】
燃焼の継続は、燃料Bの燃焼によって気化燃焼室3内の温度が上昇して、燃料Bの気化が継続して燃焼が継続されるものであるが、特に熱保持体23,33が赤熱して、気化燃焼室2及び燃焼室3内を適度な温度(気温)を維持することで、滴下燃料Bの気化を促進すると共に、燃焼用空気Bと混合し、燃焼室3内での完全燃焼を実現するものである。
【0035】
従って食廃油混合燃料の気化が確実に行われ、且つ充分に容積の大きな燃焼室3での完全燃焼を行うことで、燃焼ガスDの著しい高温化が避けられ、効率的な熱交換が実現するもので、灯油専焼の装置に比較して食廃油の使用によって環境悪化への軽減がされると共に、経済的な利点も大きいものである。
【符号の説明】
【0036】
1 外殻体
11 吸気口
12 送風ファン
13 排気口
2 気化燃焼室
21 底面(蒸発皿)
22 二重周壁
221 小孔
222 空気供給管
23 熱保持体
231 輪状板
232 筒状脚部
24 燃料供給部
25 点火用バーナ
251 ノズル
252 点火用灯油供給管
253 空気供給管
254 網状油溜まり
255 点火電極(スパーク電極)
3 燃焼室
31 排出路
32 排出筒部
33 熱保持体
4 熱交換器
41 分煙部
42 集煙部
43 煙管
5 煙突
6 コンプレッサー
7 燃料ポンプ
8 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化燃焼室、及び気化燃焼室の上方に連続し、気化燃焼室より充分に容積を大きく形成した燃焼室、及び燃焼室からの排気ガスを通過させる熱交換器を、熱交換器に臨ませると共に吸気口に配設した送風ファン及び排気口を設けた外殻体に収納して温室内に設置する温室用暖房装置であって、前記気化燃焼室を、底面を蒸発皿とし、内壁に多数の小孔を穿設すると共に、コンプレッサーと接続した二重周壁に形成し、前記気化燃焼室に熱保持体を内置すると共に、灯油を40%以上混合した食廃油の燃料を蒸発皿に滴下する燃料供給部、及び空気及び点火燃料を噴射する点火用バーナを付設してなることを特徴とする温室用暖房装置。
【請求項2】
気化燃焼室の底面と蒸発皿の隅部をアール状面に形成してなる請求項1記載の温室用暖房装置。
【請求項3】
燃焼排気ガスを多数のパイプに分流させる熱交換器を、燃焼室の上方に配置すると共に、燃焼室の壁部に上方から下方に燃焼排気ガスを流す排出路を形成し、前記排出路と前記熱交換器を接続する排出筒部を設けてなる請求項1又は2記載の温室用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177138(P2011−177138A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46547(P2010−46547)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(510058988)有限会社遠藤工業所 (1)
【Fターム(参考)】