説明

温度制御システム、半導体製造装置及び温度制御方法

【課題】複数の蓄熱タンクおよび循環ポンプを備えた温調ユニットの並設と、タンク内の液体を循環させる循環路を形成した、より安定した温度制御が可能な温度制御システムを提供する。
【解決手段】第1温度の液体を貯蔵する低温温調ユニット74、第1温度より高い第2温度の液体を貯蔵する高温温調ユニット75、低温温調ユニットからの流体を流す低温流路76、高温温調ユニットからの流体を流す高温流路77、流体を循環させるバイパス流路73、合流部PAにて低温流路、高温流路及びバイパス流路の3流路から合流した流体を流す結合流路71、結合流路から流体を流し、半導体製造装置100に用いられる部材を冷却又は加熱する調温部70、合流部の上流側にて前記3流路に取り付けられた可変バルブ79の弁開度を制御し、前記3流路の流量分配比率を調整する制御装置90を有する温度制御システム1が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御システム、半導体製造装置及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャック内のヒータとチラーユニットとを用いて静電チャックに載置された被処理体を温度制御することが一般的に行われている。かかる構成では、チラーの冷媒管に所定温度の冷媒を循環させて冷却するとともに、ヒータに交流電流を印加して加熱する。このようにしてヒータによる加熱とチラーユニットによる冷却とにより、静電チャック上のウエハ温度を所望の温度に調整する。
【0003】
上記構成の場合、チラーユニットには、常に低温冷媒(液体)を一定流量流し続ける。この状態で、温度を上げるためには載置台内に埋設されたヒータを加熱することが必要であるが、チラーユニットの冷却作用により昇温に多くの時間がかかり、温度制御のレスポンスが悪いという課題がある。
【0004】
上記対策としてチラーユニットの低温流体の流量を減らすという方法がある。しかし、それではチラーユニットの冷却能力が下がり、降温速度が低下して温度制御性が悪くなる。別の対策としてヒータの容量を増やすという方法もある。しかし、それでは高周波電力のリーク電流が大きくなる。なぜなら、半導体製造装置では、高周波電力が印加される載置台上の静電チャックにヒータが埋め込まれていると、ヒータ線を通して外部に高周波電力がリークしてしまい、ヒータの容量が大きいほどリーク電流も大きくなるためである。
【0005】
高周波電力をチャンバ内に印加する際、高周波電力がチャンバ外に漏れることは極力避けなければならない。そこで、高周波電力のチャンバ外へのリークを抑えるために、ヒータ線にヒータ電源フィルタを設ける。ところが、ヒータの容量を大きくすると、ヒータ電源フィルタの寸法も大きくする必要がある。また、ヒータ電源フィルタは、ヒータが埋め込まれた部材の直近に設置する必要があるため、ヒータ電源フィルタの寸法が大きくなるとフィルタ設置でスペースを浪費し、他機器の実装スペースに制約が生じる。
【0006】
そこで、ヒータを使用せずに温度制御する方法も考えられる。例えば、特許文献1の温度制御装置は、流体を加熱して調温部に循環させる加熱サイクルと、流体を冷却して調温部に循環させる冷却サイクルとを有し、加熱サイクル、冷却サイクルおよび循環路の流量分配比率を制御することにより静電チャックの温度を制御する温度制御装置が開示されている。特許文献1の温度制御装置では、加熱サイクルと冷却サイクルとは完全に閉じた別系統の配管を循環する。そして、加熱サイクルを循環している高温流体との熱交換、及び冷却サイクルを循環している低温流体との熱交換により、2次的に加熱された高温流体と2次的に冷却された低温流体とを混合させて静電チャック内の管内に流している。このようなシステムの温度制御能力は、各蓄熱タンクにどの程度の流体を常時貯蔵していられるかという能力に依存する。つまり、各蓄熱タンクへ貯蔵される流体の量が温度の安定性を担保できる所定の閾値を超えていることが上記温度制御システムの温度制御能力を維持するために必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−117812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、流体を貯蔵する各サイクルのタンクは、ある程度の量の流体が常時タンク内に貯蔵されている状態を常に保つことができず、貯蔵された流体が設定温度に制御されていない状態が発生し、温度制御性が悪くなる。
【0009】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、複数の蓄熱タンクおよび循環ポンプを備えた温調ユニットの並設と、温調ユニットの蓄熱タンク内の液体を循環させる循環路を形成することにより、必要な蓄熱量が確保でき、より安定した温度制御が可能な、温度制御システム、半導体製造装置及び温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、半導体製造装置に用いられる部材の温度を制御する温度制御システムであって、第1の温度に調温された液体を貯蔵する低温温調ユニットと、前記第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を貯蔵する高温温調ユニットと、前記低温温調ユニットから供給された流体を流す低温流路と、前記高温温調ユニットから供給された流体を流す高温流路と、流体を循環させるバイパス流路と、合流部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と合流し、各流路から合流した流体を流す結合流路と、前記部材またはその近傍に設置され、前記結合流路から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱する調温部と、前記合流部の上流側にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた可変バルブと、前記可変バルブの弁開度を制御し、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路の流量分配比率を調整する制御装置と、を備えることを特徴とする温度制御システムが提供される。
【0011】
前記制御装置は、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた前記可変バルブの弁開度を調整し、前記結合流路を流れる合流流量を均一にするように制御してもよい。
【0012】
前記部材の温度を検出する第1の温度センサと、前記合流部の下流側の前記結合流路の温度を検出する第2の温度センサと、を更に備え、前記制御装置は、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサにより検出された温度に基づき、前記可変バルブの弁開度をフィードバック制御してもよい。
【0013】
前記低温温調ユニット及び前記高温温調ユニット内のタンクの近傍に、各タンク間を連通する液面調整タンクを更に備えることにより制御時に発生する液面バランスを保ってもよい。
【0014】
前記結合流路は、前記調温部に流体を流した後、分岐部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と分岐して流体を循環させる循環路を形成し、前記制御装置は、前記調温部を循環する液体の流量を一定に制御してもよい。
【0015】
前記合流部は、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路をそれぞれ流れる流体を混合する一時タンクを有してもよい。
【0016】
前記制御装置は、昇温時には前記高温流路から前記結合流路に流入される液体を、前記低温流路及び前記バイパス流路から前記結合流路に流入される液体より多くなるように前記可変バルブの弁開度を制御し、降温時には前記低温流路から前記結合流路に流入される液体を、前記高温流路及び前記バイパス流路から前記結合流路に流入される液体より多くなるように前記可変バルブの弁開度を制御してもよい。
【0017】
前記部材は、被処理体が載置される静電チャックであり、前記調温部は、前記静電チャックの中心部に配置された流路と前記静電チャックの周辺部に配置された流路に分離され、前記温度制御システムは、前記静電チャックの中心部に配置された前記調温部の流路に流体を流す第1の温度制御システムと、前記静電チャックの周辺部に配置された前記調温部の流路に流体を流す第2の温度制御システムと、を有してもよい。
【0018】
前記第1及び第2の温度制御システムには、貯蔵タンクおよび循環ポンプを備えた前記低温温調ユニット及び前記高温温調ユニットがそれぞれ別々に設けられていてもよい。
【0019】
前記第1及び第2の温度制御システムには、貯蔵タンクおよび循環ポンプを備えた前記低温温調ユニット及び前記高温温調ユニットが共有して設けられていてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、温度制御システムを用いて内部の部材の温度を制御する半導体製造装置であって、前記温度制御システムは、第1の温度に調温された液体を貯蔵する低温温調ユニットと、前記第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を貯蔵する高温温調ユニットと、前記低温温調ユニットから供給された流体を流す低温流路と、前記高温温調ユニットから供給された流体を流す高温流路と、流体を循環させるバイパス流路と、合流部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と合流し、各流路を流れる流体を流す結合流路と、前記部材またはその近傍に設置され、前記結合流路から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱する調温部と、前記合流部の上流側にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた可変バルブと、前記可変バルブの弁開度を制御し、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路の流量分配比率を調整する制御装置と、を有することを特徴とする温度制御システムを用いた半導体製造装置が提供される。
【0021】
前記半導体製造装置の内部の部材は、静電チャック、上部電極、デポシールド又は処理容器の少なくともいずれかであってもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、半導体製造装置に用いられる部材の温度を制御する方法であって、第1の温度に調温された液体を低温温調ユニットに貯蔵し、前記第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を高温温調ユニットに貯蔵し、前記低温温調ユニットから供給された流体を低温流路に流し、前記高温温調ユニットから供給された流体を高温流路に流し、流体をバイパス流路に循環させ、合流部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と合流し、各流路を流れる流体を結合流路に流し、前記部材またはその近傍に設置された調温部に前記結合流路から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱し、前記合流部の上流側にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた可変バルブの弁開度を制御し、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路の流量分配比率を調整すること、を含むことを特徴とする温度制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、複数の蓄熱タンクおよび循環ポンプを備えた温調ユニットの並設と、温調ユニットの蓄熱タンク内の液体を循環させる循環路を形成することにより、必要な蓄熱量が確保でき、より安定した温度制御が可能な、温度制御システム、半導体製造装置及び温度制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係る温度制御システムの全体構成図。
【図2】一実施形態に係る温度のフィードバック制御のフローチャート。
【図3】一実施形態に係る可変バルブの開閉のタイミングチャート。
【図4】一実施形態と比較例の温度制御システムの概念構成図。
【図5】一実施形態と比較例の冷却能力を説明するためのグラフ。
【図6】一実施形態と比較例の加熱能力を説明するためのグラフ。
【図7】一実施形態の変形例1に係る温度制御システムの全体構成図。
【図8】一実施形態の変形例2に係る温度制御システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
[半導体処理装置及び温度制御システムの全体構成]
(半導体処理装置)
まず、本発明の一実施形態に係る温度制御システムの全体構成について、図1を参照しながら説明する。本実施形態では、温度制御システム1により半導体処理装置100の温度制御が実行される。
【0027】
図1に示した半導体製造装置100は、RIE型のプラズマ処理装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型の処理容器10(チャンバ)を有している。処理容器10は接地されている。処理容器10内には、半導体ウエハW(以下、ウエハWと称呼する)を載置する載置台11が設けられている。載置台11は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部(図示せず)を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。載置台11上の上面にはウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック12が設けられている。静電チャック12は、直流電圧が印加されることによりクーロン力でウエハWをチャック上に吸着保持する。静電チャック12上にはウエハWが載置される。本実施形態では、静電チャック12を温度制御対象の機材の一例として挙げて説明する。本実施形態では、静電チャック12の温度制御によりウエハWを所定の温度に制御する。
【0028】
処理容器10の側壁と筒状支持部16との間には排気路20が形成されている。排気路20は、図示しない排気装置に接続され、真空ポンプを用いて処理容器10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入出口を開閉する搬送用のゲートバルブ30が取り付けられている。
【0029】
載置台11には、整合器34を介してプラズマ生成用の高周波電源32が接続されている。高周波電源32は、たとえば60MHzの高周波電力を載置台11に印加する。このようにして載置台11は下部電極としても機能する。なお、処理容器10の天井部には、後述するシャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。これにより、高周波電源32からの高周波電圧は載置台11とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
【0030】
天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔36aを有する電極板36と、電極板36を着脱可能に支持する電極支持体37とを有する。電極支持体37の内部にはバッファ室35が設けられ、バッファ室35のガス導入口35aにはガス供給配管42を介してガス供給源40が連結されている。これにより、ガス供給源40から処理容器10内に所望のガスが供給される。
【0031】
処理容器10の周囲には、環状または同心状に延在する磁石45が配置されている。処理容器10内において、シャワーヘッド38と載置台11との間のプラズマ生成空間には、高周波電源32により鉛直方向のRF電界が形成される。高周波の放電により、静電チャック12の表面近傍に高密度のプラズマが生成される。生成されたプラズマの作用により、処理容器10内では、所定の温度に制御されたウエハWにエッチング処理が施される。
【0032】
(温度制御システム)
本実施形態に係る温度制御システム1では、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75から形成される2つの蓄熱する循環回路が設けられている。これらの2つの循環回路は、流体を貯蔵可能な大型のタンクと循環ポンプを保有し、各タンクへ貯蔵される流体の量は、常に温度の安定性を担保できる所定量を満たすことができる。このため、温度制御システム1の温度制御能力を維持し、安定した温度制御が可能である。
【0033】
低温温調ユニット74は、低温温調ユニット74に設けられた熱交換部により第1の温度に調温された液体を低温タンクに貯蔵する。高温温調ユニット75は、高温温調ユニット75に設けられた熱交換部により第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を高温温タンクに貯蔵する。第1の温度及び第2の温度は、後述する制御装置90により制御される。低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75は大型であり、半導体製造装置100の周囲に置く必要のある排気装置等の配置スペースを考慮して処理容器10の遠方に配置される。低温温調ユニット74に貯蔵された低温冷媒(液体)は、低温流路76を介して合流部PAに到達し、流体を循環させるバイパス流路73と合流する。高温温調ユニット75に貯蔵された高温冷媒(液体)も同様に、高温流路77を介して合流部PAに到達し、流体を循環させるバイパス流路73と合流する。合流部PAには、低温流路76、高温流路77及びバイパス流路73をそれぞれ流れる流体を混合する一時タンク78が設けられていて、これらの流路を流れる流体を一時的に混合させる。結合流路71は、合流部PAにて、低温流路76、高温流路77及びバイパス流路73と合流し、一時タンク78にて混合された流体を流す。このようにして、結合流路71に流す流体を予めある程度混合された流体とすることにより、調温部70を流れる流体の温度を安定させ、温度制御性を高めることができる。
【0034】
載置台11の内部には流体を流す配管である調温部70が設けられ、結合流路71から液体を流入し、これにより静電チャック12を冷却又は加熱する。調温部70には、流体の入口側及び出口側に結合流路71,72が連結されている。調温部70は、温度制御対象の部材またはその近傍に設置され、結合流路71から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱する調温部の一例である。
【0035】
結合流路71、72は、調温部70に流体を流した後、分岐部PBにて低温流路80、高温流路81及びバイパス流路73と分岐して流体を循環させる循環路を形成する。この循環路に循環させる流体の温度を設定温度にすることにより、調温部70を流れる流体の温度が制御され、ウエハW上が所定の処理温度に調温される。
【0036】
このように本実施形態に係る温度制御システム1では、合流部PAにて高温流路77と低温流路76とを流れる流体は循環ラインに直接的に流入、流出される。
【0037】
バルブユニット79は、合流部PAの上流側に設けられ、可変バルブ79a、79b、79cを含む。可変バルブ79a、79b、79cは、低温流路76、バイパス流路73、高温流路77に取り付けられていて、可変バルブ79a、79b、79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを変えることにより、各流路から結合流路を流れる合流流量を調整するようになっている。バルブユニット79は温度制御対象である静電チャック12の近傍に配置され、これにより温度制御の応答性をよくする。
【0038】
分岐部PBから分岐された低温流路80、高温流路81及びバイパス流路73には、それぞれ逆止弁82,83,84が設けられ、分岐部PBにて分岐して3方向に流れる流体が分岐部PBに向かって逆流しないようになっている。こうして、低温流路80を流れる流体は低温温調ユニット74に戻り、低温温調ユニット74内で再び第1の温度に調温される。バルブ85は、低温流路80と連結する配管88に設けられ、低温流路80から配管88を経て低温温調ユニット74に戻る流体の戻り量を調整する。
【0039】
同様に、高温流路81(紙面上の矢印Aで紙面の右側から左側に接続されている)を流れる流体は高温温調ユニット75に戻り、高温温調ユニット75内で再び第2の温度に調温される。バルブ86は、高温流路81と連結する配管81に設けられ、高温流路81から配管89を経て高温温調ユニット75に戻る流体の戻り量を調整する。
【0040】
制御装置90は、結合流路72に取り付けられたポンプ87のインバータの回転数を調整して、調温部70へ流入される流体の流量を制御する。また、前述したように、制御装置90は、バルブユニット79を制御する。これにより、流体を供給する側の3つの配管76,73,77内の圧力を調圧する。これにより、上記調温部70を含む循環路内の流量は一定に保たれ、分岐部PBにて分岐した流体はバイパス流路73を循環するか又は低温温調ユニット74、高温温調ユニット75に戻る。このようにして低温温調ユニット74と高温温調ユニット75の貯蔵量を同じにすることができる。なお、上記流量調整及び圧力調整には、分岐部PB近傍の配管に取り付けられたフローメータF、圧力計P4、及びバルブユニット79近傍の各配管に取り付けられた圧力計P1、P2,P3が使用される。
【0041】
低温流路80、高温流路81、バイパス流路73にはそれぞれ逆止弁82、83、84が設けられているものの、上記の圧力制御の多少の誤差や、例えば低温温調ユニット74から流体を供給するようなタイミングに流体が高温流路の方へ流れてしまう等の理由により、高温温調ユニット75、低温温調ユニット74の液面に差ができてしまう場合がある。
【0042】
このような場合にも、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75の近傍に設けられた、各ユニット内タンク間を連通する液面調整タンク98の作用により、両液面に差が生じないようになっている。すなわち、3つのタンクの液面はすべて自然と同じ高さになっている。
【0043】
昇温時、高温温調ユニット75から流出される流体の量は、低温温調ユニット74から流出される流体の量より多くなり、高温温調ユニット75の液面は低温温調ユニット74の液面より低くなる。降温時は逆に、低温温調ユニット74の液面は高温温調ユニット75の液面より低くなる。それらの場合、2つのタンクの間で液面が下がったほうに液面調整タンク98に貯蔵されている流体が自然と流れていき、自然と同一液面となる。なお、液面調整タンク98は図示しない液面計を有し、液面調整タンク98の液面を検出することにより異常を検出する。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態に係る温度制御システム1では、ヒータを使わずに温度制御を実現する。そのため、本実施形態に係る温度制御システム1では、2系統の温度流体を設け、静電チャック12の温度が設定温度になるように、低温流体と高温流体の温度を管理し、所定の流量比で混合させて静電チャック12に流す。低温流路と高温流路とは別々の閉じた系ではなく、合流部PAで合流する開かれた系である。低温流路と高温流路とを閉じた系で構成したシステムでは、温度制御中に加熱された流体の供給量、又は冷却された流体の供給量が不足し、温度制御性が悪くなる。特に、加熱された後に供給される流体の量にはある程度上限があるため最初の数秒で高温に加熱された流体の供給量が枯渇してしまい加熱能力が低下してしまう。例えば、後述する図6(加熱能力比較)の右グラフでは、加熱装置の温度Thは、最初の3秒で高温に加熱された流体の供給量が枯渇してしまい加熱能力が低下している。
【0045】
しかしながら、本実施形態に係る温度制御システム1によれば、冷却用及び加熱用に低温温調ユニット74内のタンク及び高温温調ユニット75のタンクを設け、そこから大量の流体を供給することができるためタンク内の流体が枯渇することなく連続して供給できる。これにより、高速な温度調整及び安定した温度制御が可能になる。
【0046】
なお、温度制御システム1には、ユニットパージ機能が設けられており、例えば紙面上の矢印Bから配管内にエアーを入れて流体を各タンクに戻す場合に用いられる。
【0047】
[温度制御方法]
(制御装置の機能構成)
本実施形態に係る温度制御システム1は、制御装置90により制御されている。制御装置90は、温度制御部92、装置制御部94及び記憶部96を有している。
【0048】
温度制御部92は、静電チャック12の温度を制御する。具体的には、温度制御部92は、ポンプ87のインバータの回転数を調整して、バイパス流路73、結合流路71,72、調温部70内を循環する流体の流量が一定になるように制御する。また、温度制御部92は、低温流路76、高温流路77、バイパス流路73の各流路からの結合流路を流れる合流流量を均一にするように可変バルブ79a、79b、79cの弁開度Va,Vb,Vcをそれぞれ調整する。
【0049】
装置制御部94は、記憶部96に記憶されているレシピに基づき半導体製造装置100を制御する。例えば、装置制御部94は、ゲートバルブ30の開閉、ガス供給源40からのガス供給、高周波電源32からの高周波印加のタイミングを制御し、これによりプラズマを生成してウエハWに微細加工を施す。
【0050】
(制御装置のハードウエア構成)
制御装置90は、図示しないCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUはたとえば記憶部96に格納された各種レシピに従ってプロセスを実行する。これにより、CPUによってエッチングプロセスやクリーニングプロセスが制御される。記憶部96は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いてRAM、ROMとして実現されうる。レシピは、記憶媒体に格納して提供され、図示しないドライバを介して記憶部85に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部85に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。なお、制御装置90の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。
【0051】
[フィードバック制御]
温度制御部92は、温度センサT1、温度センサT2及び圧力センサP1、P2,P3をモニターしながら、可変バルブ79a、79b、79cの開閉をフィードバック制御する。制御装置90は、温度センサT2により検出された温度が温度センサT1により検出された温度(目標値)に近づくように可変バルブ79a、79b、79cをフィードバック制御する。
【0052】
温度センサT1は、半導体製造装置100に用いられる部材の温度を検出する第1の温度センサに相当する。ここでは、温度センサT1は、静電チャック12の温度を検出する。また、温度センサT2は、合流部PAの下流側の結合流路71の温度を検出する第2の温度センサに相当する。
【0053】
通常、設定温度が大きく変化しない場合には、制御装置90は、循環路(バイパス流路73→結合流路71→調温部70→結合流路72→バイパス流路73)に流体を流し、各タンク74,75から出入りする流体の流量を少なくして、エネルギー効率よく流体を循環させる。一方、加熱させたいときは、制御装置90は、高温流路77の可変バルブ79cの弁体の開度Vcを開けて高温流体を流入させ、結合流路71に流れる流体の温度を上げる。冷却させたいときは、制御装置90は、低温流路76の可変バルブ79aの弁体の開度Vaを開けて低温流体を流入させ、結合流路71に流れる流体の温度を下げる。
【0054】
昇温時には、制御装置90は、高温流路77から結合流路71に流入される液体を、低温流路76及びバイパス流路73から結合流路71に流入される液体より多くなるように可変バルブ79a,79b,79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを制御する。また、降温時には、制御装置90は、低温流路76から結合流路71に流入される液体を高温流路77及びバイパス流路73から結合流路71に流入される液体より少なくなるように可変バルブ79a,79b,79cの弁体の開度Va,Vb,Vを制御する。
【0055】
制御装置90による温度のフィードバック制御について図2及び図3を参照しながら詳述する。図2は、制御装置90により実行されるフィードバック制御の処理手順を示したフローチャートである。図3は、図2の処理で制御される可変バルブ79a,79b,79cの各操作量(弁開度Va,Vb,Vc)の一例を示す。図2の処理は、制御装置90の温度制御部92により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0056】
処理が開始されると、温度制御部92は、まずステップS10において、温度センサT1の検出値を静電チャック12の温度の目標値Ttとして取得する。また、温度制御部92は、温度センサT2の検出値Tdを合流部PAにて合流後の流体の温度として取得する。
【0057】
温度制御部92は、続くステップS12において、検出値Tdを目標値Ttに近づけるために、検出値Tdに基づき可変バルブ79a,79b,79cの弁開度Va,Vb,Vcをフィードバック制御する。そのために、温度制御部92は、フィードバック制御のための基本操作量MBを算出する。
【0058】
基本操作量MBは、検出値Tdの目標値Ttに対する乖離度合いに基づき算出される量である。詳しくは、本実施形態では、検出値Tdと目標値Ttとの差ΔのPID(比例積分微分)演算によって基本操作量MBを算出する。
【0059】
ついで、温度制御部92は、続くステップS14において、基本操作量MBを、低温側の可変バルブ79a、バイパス流路の可変バルブ79b、及び高温側の可変バルブ79cの各操作量、すなわち各可変バルブ79a,79b,79cの弁開度Va,Vb,Vcに変換する。ここでは、図3に示す可変バルブの弁開度Va,Vb,Vcの関係を用いる。
【0060】
ここで、可変バルブ79aの弁開度Vaは、基本操作量MBがゼロ未満である場合には、基本操作量MBの増加に伴い単調減少し、基本操作量MBがゼロ以上である場合には、「0」となる。これは、検出値Tdが目標値Ttよりも高いほど低温流路76の流量を増加させて、かつ検出値Tdが目標値Tt以下の場合には、低温流路76を用いないための設定である。また、可変バルブ79cの弁開度Vcは、基本操作量MBがゼロより大きい場合には、基本操作量MBの増加に伴い単調増加し、基本操作量MBがゼロ以下である場合には、「0」となる。これは、検出値Tdが目標値Ttよりも低いほど高温流路77の流量を増加させて且つ、検出値Tdが目標値Tt以上の場合には、高温流路77を用いないための設定である。更に、可変バルブ79bの弁開度は、基本操作量MBがゼロから離間するに従い単調減少する。なお、図3において、3つの通路から流出する合計の流量が基本操作量MBの値によって変化しないように各弁開度Va,Vb,Vcを設定することが望ましい。
【0061】
こうした設定によれば、検出値Tdと目標値Ttとの差Δの単一のPID演算によって算出される基本操作量MBに基づき、可変バルブ79a,79b,79cの3つのバルブの操作量を設定することができる。
【0062】
先の図2のステップS14の処理が完了すると、温度制御部92は。ステップS16において、可変バルブ79a,79b,79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを操作する。ステップS18の処理が完了した場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0063】
このようなフィードバック制御により、検出値Tdを目標値Ttに高精度に追従させることができる。
【0064】
[温度制御システムの冷却能力]
次に、図4及び図5を参照しながら本実施形態に係る温度制御システムの冷却能力を説明する。図4の右側は本実施形態に係る温度制御システム1の概略構成図であり、図1の温度制御システム1の概略を示す。図4の左側は、比較例の概略構成図である。図5の右側は本実施形態に係る温度制御システム1による冷却効果を示したグラフである。図5の左側は比較例による冷却効果を示したグラフである。
【0065】
本実施形態に係る温度制御システム1では、4つの温度測定箇所に温度センサが取り付けられている。具体的には、低温温調ユニット74に取り付けられ、温度TCを検出する温度センサ、高温温調ユニット75に取り付けられ、温度Thを検出する温度センサ、載置台の流路入り口に取り付けられ、温度TIを検出する温度センサ、静電チャック12の表面に取り付けられ、温度TSを検出する温度センサである。
【0066】
比較例に係る温度制御システムは、体積吸収タンク274、ポンプ275、加熱装置277、冷却装置279を有している。流路282が循環流路を形成し、流路282上にポンプ275が設けられている。流路282は、ポンプ275の上流側で三方に分岐されており、それぞれ加熱流路283、バイパス流路284、冷却流路285を形成している。加熱流路283の途中には、加熱手段として蓄熱タンクを備える加熱装置277が設けられ、加熱装置277は加熱流路283を流れる流体を加熱する。同様に、冷却流路285の途中には、冷却手段として蓄熱タンクを備える冷却装置279が設けられ、冷却装置279は冷却流路285を流れる流体を冷却する。バルブ283a、284a、285aは、加熱流路283、バイパス流路284、冷却流路285をそれぞれ流れる流体の流量を操作するために用いられる。
【0067】
流体は、温度制御対象である静電チャック280近傍を流れ、これにより、静電チャック280の温度が制御される。静電チャック280近傍を流れた流体は、排出通路281から循環流路へ戻される。
【0068】
比較例に係る温度制御システムにおいても、4つの温度測定箇所に温度センサが取り付けられている。具体的には、冷却装置279に取り付けられ、温度TCを検出する温度センサ、加熱装置277に取り付けられ、温度Thを検出する温度センサ、載置台の流路入り口に取り付けられ、温度TIを検出する温度センサ、静電チャックの表面に取り付けられ、温度TSを検出する温度センサである。
【0069】
かかる構成の温度制御システムを用いて冷却能力について比較した。その結果を図5に示す。サセプタ表面の静電チャックに取り付けられた温度センサにより検出される温度は目標温度TSである。冷却を開始してからサセプタ表面(静電チャックの温度:目標温度TS)の設定温度を60℃から30℃に変更したとき、静電チャックの温度が設定温度にどの程度追従しているかを計測し、目標温度TSが30℃下がるまでの時間を計測した。
【0070】
その結果、図5左のグラフの比較例では、目標温度TSが60℃から30℃までΔt=30℃下がるまでに32秒かかったのに対して、図5右のグラフの本実施形態では、目標温度TSがΔt=30℃下がるまでに21秒しかかからなかった。この結果から、本実施形態に係る温度制御システム1の冷却能力は、比較例の約1.5倍であることがわかった。特に、比較例の冷却装置279及び本実施形態の低温温調ユニット74に取り付けた温度センサの検出値TCの温度の推移を比較すると、比較例では、10℃付近の低温状態が約6秒しか保てなかったのに対して、本実施形態では、10℃付近の低温状態を約35秒保つことができた。以上から、本実施形態に係る温度制御システム1の冷却能力は比較例の1.5倍であり、図5下のグラフにも示した通り、本実施形態の温度制御システム1の温度応答性は、比較例より高いことがわかった。
【0071】
[温度制御システムの加熱能力]
加熱能力についても、図6に示したように同様の効果が得られた。図6の右側は本実施形態に係る温度制御システム1による加熱効果を示したグラフである。図6の左側は比較例による加熱効果を示したグラフである。
【0072】
図6では、低温温調ユニット74又は冷却装置279に取り付けられた温度センサTCの替わりに高温温調ユニット75又は加熱装置277に取り付けられた温度センサThを用いる。セプタの流路入り口の温度センサTI、サセプタ12の表面の温度センサTSはそのまま用いられる。
【0073】
その結果、図6左のグラフの比較例では、3秒間、所望の高温状態を維持された。これに対して、図6右のグラフの本実施形態では、17秒間、高温状態が維持された。以上から、本実施形態に係る温度制御システム1の加熱能力は比較例の5倍以上であり、加熱能力においても、本実施形態の温度制御システム1の温度応答性は、比較例より高いことがわかった。
【0074】
[変形例]
最後に、本実施形態の変形例に係る温度制御システム1について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7に示した変形例によれば、静電チャック12の中心部70a、周辺部70bと場所を分割して温度制御を行う場合、本変形例では、中心部70a用の第1の温度制御システムと、周辺部70b用の第2の温度制御システムというように、同じ構成の2つの温度制御システムを設置する。この場合、2つの低温温調ユニット74a、74bと2つの高温温調ユニット75a、75bが、温度制御システム毎に別々に配置される。
【0075】
一方、図8に示した変形例のように、静電チャック12の中心部70a、周辺部70bと場所を分割して温度制御を行う場合であっても、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75の容量を増加させることにより、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75を2つの温度制御システムに共通して使用することも可能である。図8では、第1及び第2の温度制御システムの低温流路を流れる流体は符号G,Eから同一の低温温調ユニット74に戻る。第1及び第2の温度制御システムの高温流路を流れる流体は符号D,Aから同一の低温温調ユニット74に戻る。これにより、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75を共通化した1つのシステムで温度制御が可能となる。
【0076】
以上に説明した変形例によれば、静電チャックの周辺部と中心部の2ゾーンの温度制御が可能になる。これにより、ウエハW上の温度を均一にすることができる。例えば加熱され易いフォーカスリング近傍の周辺部の温度制御を中央部の温度制御と異なる制御にすることにより、温度制御の精度を向上させることができる。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態及び変形例によれば、複数の蓄熱タンクおよび循環ポンプを備えた温調ユニットの並設とそれらを循環させる循環路を形成することにより、必要な蓄熱量が確保でき、より安定した温度制御が可能な、温度制御システム1が構築できる。これにより、温度制御対象である部材の温度を急速に昇温又は降温できる。このため、レシピステップ間で設定温度を切り替える際の温度安定時間を短縮でき、生産性を高めることができる。
【0078】
また、プロセス中のプラズマエネルギーによる部材の温度の上昇を迅速に抑えることができ、常に安定的にターゲットとなる部材の温度を制御することができ、それにより歩留まりを向上させることができる。
【0079】
<おわりに>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
たとえば、本発明に係る温度制御方法は、半導体製造装置内の静電チャックだけでなく、上部電極、デポシールド(図示せず)又は処理容器の温度制御に使用することができる。
【0081】
また、本発明に係る温度制御が可能なプラズマプロセスはエッチングプロセスに限られず、成膜、アッシング、スパッタリング等、いかなるプロセスでもよい。
【0082】
また、本発明に係る温度制御方法は、平行平板型のエッチング処理装置だけでなく、円筒状のRLSA(Radial Line Slot Antenna)半導体製造装置、ICP(Inductively Coupled Plasma)半導体製造装置、マイクロ波半導体製造装置等いかなる半導体製造装置にも利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 温度制御システム
10 処理容器
12 載置台(下部電極)
32 高周波電源
38 シャワーヘッド(上部電極)
40 ガス供給源
70 調温部
71 結合流路
73 バイパス流路
74 低温温調ユニット
75 高温温調ユニット
79a,79b、79c 可変バルブ
76 低温流路
77 高温流路
78 一時タンク
90 制御装置
92 温度制御部
98 液面調整タンク
100 半導体製造装置
PA 合流部
PB 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に用いられる部材の温度を制御する温度制御システムであって、
第1の温度に調温された液体を貯蔵する低温温調ユニットと、
前記第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を貯蔵する高温温調ユニットと、
前記低温温調ユニットから供給された流体を流す低温流路と、
前記高温温調ユニットから供給された流体を流す高温流路と、
流体を循環させるバイパス流路と、
合流部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と合流し、各流路から合流した流体を流す結合流路と、
前記部材またはその近傍に設置され、前記結合流路から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱する調温部と、
前記合流部の上流側にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた可変バルブと、
前記可変バルブの弁開度を制御し、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路の流量分配比率を調整する制御装置と、
を備えることを特徴とする温度制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた前記可変バルブの弁開度を調整し、前記結合流路を流れる合流流量を均一にするように制御することを特徴とする請求項1に記載の温度制御システム。
【請求項3】
前記部材の温度を検出する第1の温度センサと、
前記合流部の下流側の前記結合流路の温度を検出する第2の温度センサと、を更に備え、
前記制御装置は、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサにより検出された温度に基づき、前記可変バルブの弁開度をフィードバック制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御システム。
【請求項4】
前記低温温調ユニット及び前記高温温調ユニット内のタンクの近傍に、各タンク間を連通する液面調整タンクを更に備えることにより制御時に発生する液面バランスを保つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度制御システム。
【請求項5】
前記結合流路は、
前記調温部に流体を流した後、分岐部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と分岐して流体を循環させる循環路を形成し、
前記制御装置は、前記調温部を循環する液体の流量を一定に制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度制御システム。
【請求項6】
前記合流部は、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路をそれぞれ流れる流体を混合する一時タンクを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
昇温時には前記高温流路から前記結合流路に流入される液体を、前記低温流路及び前記バイパス流路から前記結合流路に流入される液体より多くなるように前記可変バルブの弁開度を制御し、
降温時には前記低温流路から前記結合流路に流入される液体を、前記高温流路及び前記バイパス流路から前記結合流路に流入される液体より多くなるように前記可変バルブの弁開度を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度制御システム。
【請求項8】
前記部材は、被処理体が載置される静電チャックであり、
前記調温部は、前記静電チャックの中心部に配置された流路と前記静電チャックの周辺部に配置された流路に分離され、
前記温度制御システムは、
前記静電チャックの中心部に配置された前記調温部の流路に流体を流す第1の温度制御システムと、前記静電チャックの周辺部に配置された前記調温部の流路に流体を流す第2の温度制御システムと、を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の温度制御システム。
【請求項9】
前記第1及び第2の温度制御システムには、貯蔵タンクおよび循環ポンプを備えた前記低温温調ユニット及び前記高温温調ユニットがそれぞれ別々に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の温度制御システム。
【請求項10】
前記第1及び第2の温度制御システムには、貯蔵タンクおよび循環ポンプを備えた前記低温温調ユニット及び前記高温温調ユニットが共有して設けられていることを特徴とする請求項8に記載の温度制御システム。
【請求項11】
温度制御システムを用いて内部の部材の温度を制御する半導体製造装置であって、
前記温度制御システムは、
第1の温度に調温された液体を貯蔵する低温温調ユニットと、
前記第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を貯蔵する高温温調ユニットと、
前記低温温調ユニットから供給された流体を流す低温流路と、
前記高温温調ユニットから供給された流体を流す高温流路と、
流体を循環させるバイパス流路と、
合流部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と合流し、各流路を流れる流体を流す結合流路と、
前記部材またはその近傍に設置され、前記結合流路から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱する調温部と、
前記合流部の上流側にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた可変バルブと、
前記可変バルブの弁開度を制御し、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路の流量分配比率を調整する制御装置と、
を有することを特徴とする温度制御システムを用いた半導体製造装置。
【請求項12】
前記半導体製造装置の内部の部材は、静電チャック、上部電極、デポシールド又は処理容器の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の半導体製造装置。
【請求項13】
半導体製造装置に用いられる部材の温度を制御する方法であって、
第1の温度に調温された液体を低温温調ユニットに貯蔵し、
前記第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を高温温調ユニットに貯蔵し、
前記低温温調ユニットから供給された流体を低温流路に流し、
前記高温温調ユニットから供給された流体を高温流路に流し、
流体をバイパス流路に循環させ、
合流部にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路と合流し、各流路を流れる流体を結合流路に流し、
前記部材またはその近傍に設置された調温部に前記結合流路から流体を流し、前記部材を冷却又は加熱し、
前記合流部の上流側にて前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路に取り付けられた可変バルブの弁開度を制御し、前記低温流路、前記高温流路及び前記バイパス流路の流量分配比率を調整すること、
を含むことを特徴とする温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105359(P2013−105359A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249360(P2011−249360)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】