説明

温水器、及び、真空ジャケット

【課題】断熱性能が低下するのを防止することが可能な温水器および真空ジャケットを得る。
【解決手段】温水器100は、タンク10と、タンク10の内部に配置されるヒータ30と、下側が開口24した筒状であってタンク10を覆う真空ジャケット20と、真空ジャケット20の開口24側においてヒータ30からの伝導熱を受熱する箇所に設けられる温度過昇防止装置40と、を備える。また、温水器100は、真空ジャケット20の開24口を閉塞する遮蔽板と、を備えていても良い。また、真空ジャケット20には、内筒21および外筒22の少なくとも一方の先端を延ばした部分26にネジ孔27が設けられていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機により加熱された水を一時的に貯留するタンクを有する温水器、及び、当該タンクを覆う真空ジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンクを真空ジャケットで覆う温水器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、温水容器と真空ジャケットとを一体的に構成した温水器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−542447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な温水器には、空炊き防止のために温度過昇防止装置が設けられている。この温度過昇防止装置が作動した場合、使用者が安全性を確認した上で、当該温度過昇防止装置を手動で復帰させる必要がある。温水器において、温度過昇防止装置は、通常、タンクの上面に取り付けられているが、手動復帰のためには、真空ジャケットに温度過昇防止装置を操作するための貫通孔を設けなければならない。しかしながら、真空ジャケットに貫通孔を設けると、当該真空ジャケットによる断熱性能が低下するという問題があった。また、真空ジャケットの真空構造を担保しながら貫通孔を設けることは、真空ジャケットの構造が複雑になると共に、真空ジャケットのコストアップにつながっていた。
【0005】
そこで、本発明は、断熱性能が低下するのを防止することが可能な温水器および真空ジャケットを提供することを目的とする。また、本発明のもう一つの目的は、真空ジャケットのコストダウンを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る温水器は、タンクと、ヒータと、真空ジャケットと、温度過昇防止装置とを備えている。ヒータは、タンクの内部に配置される。真空ジャケットは、下側が開口した筒状であってタンクを覆っている。温度過昇防止装置は、真空ジャケットの開口側においてヒータからの伝導熱を受熱する箇所に設けられる。
【0007】
上記構成によれば、真空ジャケットの開口側に温度過昇防止装置が設けられるので、当該真空ジャケットに温度過昇防止装置を操作するための貫通孔を設ける必要がない。これにより、真空ジャケットの断熱性が低下するのを防止することができる。
また、貫通孔を設ける工程を省略できるので、真空ジャケットのコストダウンを図ることができる。
また、上記構成によれば、温度過昇防止装置をヒータからの伝導熱を受熱する箇所に設けることによって、真空ジャケットに貫通孔を設けなくても、ヒータの温度過昇を検知することができる。
【0008】
(2)
また、本発明に係る真空ジャケットには、内筒および外筒の少なくとも一方の先端を延ばした部分に固定部が設けられる。
【0009】
上記構成によれば、真空ジャケットの端部を固定部として利用することができる。これにより、真空ジャケットを直接的に固定することができるので、真空ジャケットの固定強度が向上する。また、真空ジャケットの固定構造が簡単になるので、組立性が向上すると共に、メンテナンス性が向上する。
【0010】
(3)
また、本発明に係る温水器は、タンクと、下側が開口した筒状であってタンクを覆う真空ジャケットと、真空ジャケットの開口を閉塞する遮蔽板と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、真空ジャケットの開口を遮蔽板により閉塞することができる。これにより、真空ジャケットとタンクとの間に存在する空気の対流を抑制することができるので、真空ジャケットによる断熱性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る温水器の内部構成を示した断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る温水器の内部構成を示した断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る温水器の内部構成を示した断面図である。
【図4】本発明の変形例に係る真空ジャケットの延在部分と本体との取付構造を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る温水器について図面を参照しながら説明する。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る温水器100は、洗面化粧台の下部に設置され、給湯機(図示せず)により加熱された水を一時的に貯留する装置である。温水器100に貯留される温水は、洗面化粧台の蛇口から放出される。この温水器100は、図1に示すように、主として、給湯機により加熱された水を貯留するタンク10と、タンク10を覆う真空ジャケット20と、タンク10の下部に配置されるヒータ30と、空炊きを防止するための温度過昇防止装置40と、を備えている。
【0015】
タンク10の下部には、給湯機により加熱された水をタンク10内に導入するためのバルブ50が接続されている。このタンク10の下部には、ヒータ30が設けられており、ヒータ30の加熱部がタンク10の内部に配置されている。これにより、タンク10の下部の水がヒータ30により加熱される。このヒータ30は、給湯機により加熱された水を一定温度に保つための補助的なヒータであって、ヒータ30の通電のONおよびOFFは、タンク10の側面に取り付けられる自動温度調節器60により制御される。
【0016】
上記したタンク10は、真空ジャケット20により覆われている。この真空ジャケット20は、図1の拡大図に示すように、内筒21と外筒22とを有している。そして、内筒21と外筒22との間には、真空層23が形成されている。真空ジャケット20は、下部が開口した円筒形状を呈している。そして、真空ジャケット20の開口24(図1の2点鎖線参照)は、タンク10の下端位置Bより下方に配置されている。そして、本実施形態では、真空ジャケット20の真空層23は、タンク10の下端位置Bより下方まで延在する(真空層23の下端位置Cを参照)。すなわち、タンク10は、真空ジャケット20の真空層23により、側面部分および天面部分が覆われる。
【0017】
ここで、本実施形態では、図1の拡大図に示すように、真空ジャケット20の内筒21は、外筒22との接合部分25より下側に延在している。そして、内筒21の延在部分26には、ネジ80を締結するためのネジ孔27が形成されている。真空ジャケット20は、上記したバルブ50等を収容する本体70に固定される。具体的には、本体70の側壁71と真空ジャケット20の延在部分26とを重ねた状態で、側壁71のネジ通過孔72を介して延在部分26のネジ孔27にネジ80を締結する。これにより、真空ジャケット20と本体70とが固定される。
【0018】
また、本実施形態では、真空ジャケット20の開口24側においてヒータ30からの伝導熱を受熱する箇所に温度過昇防止装置40が設けられている。具体的には、タンク10の下部に設けられるヒータ30の端子部31に、金属製の伝熱板90が固定されており、当該伝熱板90にサーモ固定板91が接合される。そして、当該サーモ固定板91に温度過昇防止装置40が固定される。これにより、ヒータ30に係る熱が、ヒータ30の端子部31、伝熱板90およびサーモ固定板91を介して、温度過昇防止装置40に伝達される。その結果、温度過昇防止装置40がヒータ30の温度過昇を検知可能となる。
【0019】
この温度過昇防止装置40は、ヒータ30による空炊きを防止する機能を有しており、空炊きが発生した場合に、ヒータ30の通電を停止させる。このヒータ30の通電停止を解除するには(正常状態に戻すには)、温度過昇防止装置40を手動で操作する必要がある。なお、本体70の側壁71には、温度過昇防止装置40を手動で操作するための貫通孔73が形成されており、使用者は当該貫通孔73から温度過昇防止装置40を操作する。
【0020】
<第1実施形態の温水器及び真空ジャケットの効果>
上記した第1実施形態において、温水器100は、真空ジャケット20の開口24側に温度過昇防止装置40が設けられるので、当該真空ジャケット20に温度過昇防止装置40を操作するための貫通孔(貫通孔73に相当するもの)を設ける必要がない。これにより、真空ジャケット20の断熱性が低下するのを防止することができる。
【0021】
また、本実施形態では、真空ジャケット20に貫通孔(貫通孔73に相当するもの)を設ける工程を省略することができるので、真空ジャケット20のコストダウンを図ることができる。本実施形態では、貫通孔73が本体70に設けられるので、真空を担保しなければならない真空ジャケット20に貫通孔を形成するのに比べて、貫通孔73を形成することが非常に容易になる。
【0022】
また、本実施形態において、温度過昇防止装置40をヒータ30からの伝導熱を受熱する箇所に設けることによって、貫通孔の無い真空ジャケット20を用いても、ヒータ30の温度過昇を検知することができる。
【0023】
また、本実施形態において、真空ジャケット20の延在部分26にネジ孔27を形成することによって、延在部分26を本体70との固定手段として利用することができる。これにより、真空ジャケット20を直接的に本体70に固定することができるので、真空ジャケット20の固定強度が向上する。
【0024】
また、本実施形態において、真空ジャケット20の延在部分26に固定部(ネジ孔27)を設けることによって、真空ジャケット20の固定構造が簡単になり、組立性が向上すると共にメンテナンス性が向上する。
【0025】
また、本実施形態において、水圧が加わるタンク10と真空ジャケット20とを別体で構成することによって、タンク10と真空ジャケット20とを一体的に構成するのに比べて、品質安全性が向上する。
【0026】
また、本実施形態において、温度過昇防止装置40をタンク10の下部側に配置することにより、ヒータ30の端子部31の近傍に温度過昇防止装置40が配置される。これにより、配線の引き回しが簡単になる。
【0027】
<第2実施形態>
次に、図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る温水器100aについて説明する。この第2実施形態に係る温水器100aは、真空ジャケット20の開口24を閉塞する遮蔽板95aを取り付けたこと以外は、上記した第1実施形態に係る温水器100と同様であるので、遮蔽板95a以外の構成は、第1実施形態と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
第2実施形態の温水器100aは、図2の拡大図に示すように、真空ジャケット20の開口24を閉塞する遮蔽板95aを備えている。この遮蔽板95aは、タンク10の下端位置Bより下側、且つ、真空ジャケット20の下端(開口24の位置(図2中の2点鎖線で示す位置))より上側、に設けられている。
【0029】
<第2実施形態の温水器及び真空ジャケットの効果>
上記構成により、第2実施形態の温水器100aでは、真空ジャケット20の開口24を遮蔽板95aにより閉塞することができる。これにより、真空ジャケット20とタンク10との間に存在する空気の対流を抑制することができるので、真空ジャケット20による断熱性能が向上する。
【0030】
また、第2実施形態の温水器100aは、第1実施形態の温水器100と同様の特徴を有しているので、第1実施形態の温水器100の効果と同様の効果を奏する。
【0031】
<第3実施形態>
次に、図3を参照して、本発明の第3実施形態に係る温水器100bについて説明する。この第3実施形態に係る温水器100bは、温度過昇防止装置40の取付位置をタンク10に近接させたこと以外は、上記した第2実施形態に係る温水器100aと同様であるので、温度過昇防止装置40の取付位置以外の構成は、第2実施形態と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
第3実施形態の温水器100bでは、真空ジャケット20の開口24側においてヒータ30からの伝導熱を受熱する箇所に温度過昇防止装置40が設けられている。具体的には、タンク10の下部に設けられるヒータ30の端子部31に、金属製の伝熱板90bが固定されており、当該伝熱板90bにサーモ固定板91が接合される。そして、当該サーモ固定板91に温度過昇防止装置40が固定される。
【0033】
そして、本実施形態では、図3の拡大図に示すように、伝熱板90bの温度過昇防止装置40が取り付けられる部分96bが、タンク10に近接するように屈曲されている。これにより、温度過昇防止装置40がタンク10に近接して、温度過昇防止装置40がタンク10の輻射熱の影響を受ける。なお、屈曲部分96bに取り付けられる温度過昇防止装置40は、遮蔽板95aより上側に取り付けられている。すなわち、温度過昇防止装置40は、真空ジャケット20および遮蔽板95aにより囲まれる領域に配置される。
【0034】
<第3実施形態の温水器及び真空ジャケットの効果>
上記構成により、第3実施形態の温水器100bでは、温度過昇防止装置40をタンク10に近接させることができるので、温度過昇防止装置40がヒータ30からの伝導熱だけでなくタンク10からの輻射熱を受熱する。これにより、第3実施形態の温度過昇防止装置40は、第1実施形態および第2実施形態の温度過昇防止装置40に比べて、ヒータ30およびタンク10の温度過昇を即座に検知することができるので、感熱応答性が良好となる。
【0035】
また、第3実施形態の温水器100bは、第2実施形態の温水器100aと同様の特徴を有しているので、第2実施形態の温水器100aの効果と同様の効果を奏する。
【0036】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係>
上記実施形態においては、温水器100,100a,100bが「温水器」に相当し、タンク10が「タンク」に相当し、ヒータ30が「ヒータ」に相当し、真空ジャケット20および後述する真空ジャケット20cが「真空ジャケット」に相当し、温度過昇防止装置40が「温度過昇防止装置」に相当し、内筒21が「内筒」に相当し、外筒22が「外筒」に相当し、延在部分26および後述する延在部分26cが「内筒および外筒の少なくとも一方の先端を延ばした部分」に相当し、ネジ孔27および後述するネジ部27cが「固定部」に相当し、遮蔽板95aが「遮蔽板」に相当する。
【0037】
以上、本発明の実施形態および実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0038】
例えば、第1実施形態では、延在部分26にネジ孔27を設ける例について説明したが、本発明はこれに限らず、図4に示した変形例に示すように、内筒および外筒の少なくとも一方を延ばした延在部分26cの外周面にネジ部(雄ネジ)27cを形成しても良い。この真空ジャケット20cを用いる場合、本体70cの取付部73cの内周面にも、ネジ部(雌ネジ)74cを形成する必要がある。
【0039】
図4に示した変形例の構成によれば、真空ジャケット20cの一部である延在部分26cを本体70cとの固定手段として利用することができる。これにより、真空ジャケット20cを直接的に本体70cに固定することができるので、真空ジャケット20cの固定強度が向上する。
【0040】
また、第1実施形態では、真空ジャケット20の内筒21を外筒22より下側に延在させることにより延在部分26を形成したが、本発明はこれに限らず、外筒22を内筒21より下側に延在させても良いし、内筒21および外筒22の両方を下側に延在させても良い。そして、当該延在部分にネジ孔又はネジ部(雄ネジまたは雌ネジ)を設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明を利用することによって、断熱性能が低下するのを防止することが可能な温水器を得ることができる。また、本発明を利用することによって、真空ジャケットのコストダウンを図ることができる。また、本発明を利用することによって、組立性が向上すると共に、メンテナンス性が向上する。
【符号の説明】
【0042】
100,100a,100b 温水器
10 タンク
20,20c 真空ジャケット
21 内筒
22 外筒
26,26c 延在部分
27 ネジ孔
27c ネジ部
30 ヒータ
40 温度過昇防止装置
70 本体
73 貫通孔
90,90b 伝熱板
91 サーモ固定板
95a 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、
前記タンクの内部に配置されるヒータと、
下側が開口した筒状であって前記タンクを覆う真空ジャケットと、
前記真空ジャケットの開口側において前記ヒータからの伝導熱を受熱する箇所に設けられる温度過昇防止装置と、を備えることを特徴とする、温水器。
【請求項2】
内筒および外筒の少なくとも一方の先端を延ばした部分に固定部を設けることを特徴とする、真空ジャケット。
【請求項3】
タンクと、
下側が開口した筒状であって前記タンクを覆う真空ジャケットと、
前記真空ジャケットの開口を閉塞する遮蔽板と、を備えることを特徴とする、温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193917(P2012−193917A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59240(P2011−59240)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】