説明

温水床暖房装置

【課題】複雑な制御を行うことなく所望の温度による床暖房運転が行える構造簡単で安価な温水床暖房装置を提供する。
【解決手段】床に設置される床放熱器3と、床放熱器3に床暖房用温水を供給する熱源機1とで構成される。熱源機1は、床放熱器3に接続して床暖房用温水を供給する接続配管4と、接続配管4に付設されて床暖房用温水の供給をON/OFFするスイッチ接続用信号線7とを備える。床放熱器3は、床放熱器3から発生する温度が検出可能な位置に設けられてスイッチ接続用信号線7に並列に接続されたON/OFF動作温度の異なる複数の温度スイッチ16,17,18と、これらの温度スイッチを手動操作により選択的に切換える選択スイッチ15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外の熱源機から室内の床放熱器に温水を供給して、室内を暖房する温水床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室外に設置された熱源機により加熱した温水を、室内の床に設置された床暖房パネル等の床放熱器に供給して室内を暖房する温水床暖房装置が知られている。この種の温水床暖房装置は、床暖房運転を室内から行えるように、熱源機を遠隔操作するリモコンが設けられる(例えば、特許文献1参照)。リモコンには、床暖房温度を設定操作するための温度設定手段が設けられ、リモコンと熱源機とは家屋の壁を貫通させた信号ケーブルにより接続される。熱源機は、使用者がリモコンの温度設定手段により所望の温度を設定することで、設定温度に応じた運転(床暖房用温水の供給・停止)を行う。
【0003】
使用者が温度設定手段により設定した温度に基づく制御は、床暖房の運転のために設けた温度制御装置により行われる。この温度制御装置は、温度設定手段の温度設定値と、室温を検出する室温検出センサの検出値や床暖房パネルの温水の温度を検出する水温検出センサの検出値とを比較して、この温度比較値が温度設定値になるように制御を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−19282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の温水床暖房装置では、リモコンの温度設定手段の設定値や室温検出センサ及び水温検出センサの検出値といった複数の数値を用いて、前記温度制御装置による演算処理が行われる。しかし、温度制御装置とリモコンとの間や温度制御装置と熱源機との間で上記の各値に関する複数のデータを送受信しなければならず、温度制御装置、熱源機、及びリモコンを多数の信号線で接続する必要がある。このため、施工時の作業に手間がかかり、既存の住宅等に温水床暖房装置を増設する場合に設置作業にかかるコストが高くなる不都合がある。また、前記温度制御装置は、一般に、上記演算を行うマイクロコンピュータを備えるが、温度制御のための複雑な制御プログラムが必要であるため、それにかかるコストも削減することができない不都合がある。
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、複雑な制御を行うことなく所望の温度による床暖房運転が行える構造簡単で安価な温水床暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明は、室内の床に設置されて床暖房用温水が循環する床放熱器と、該床放熱器に床暖房用温水を供給する熱源機とで構成される温水床暖房装置において、前記熱源機は、前記床放熱器に接続して床暖房用温水を供給する接続配管と、該接続配管に付設されて床暖房用温水の供給をON/OFFするスイッチ接続用信号線とを備え、前記床放熱器は、該床放熱器から発生する温度が検出可能な位置に設けられて前記スイッチ接続用信号線に並列に接続されたON/OFF動作温度の異なる複数の温度スイッチと、これらの温度スイッチを手動操作により選択的に切換える選択スイッチとを備えることを特徴とする。
【0008】
各温度スイッチは、ON/OFF動作温度になると、スイッチ接続用信号線を介して前記熱源機による床暖房用温水の供給をON/OFFさせる。本発明によれば、ON/OFF動作温度の異なる複数の温度スイッチのうち、所望の床暖房温度に対応する温度スイッチを選択スイッチによって選択するだけで、所望の床暖房温度による床暖房運転を得ることができる。
【0009】
具体的には、例えば、床暖房運転を開始すると、前記床放熱器から発生する温度が、前記選択スイッチにより選択された温度スイッチのOFF動作温度に達するまで、熱源機からの床暖房用温水の供給が行われる。これに伴い床温度が上昇して床放熱器からの放熱により床暖房が行われる。当該温度スイッチがOFF動作すると、熱源機からの床暖房用温水の供給が停止するので、床放熱器から発生する温度が低下する。しかしその後、当該温度スイッチのON動作温度まで低下すると、熱源機からの床暖房用温水の供給が再開され、床温度が上昇する。
【0010】
このように、選択した温度スイッチのON/OFF動作温度に応じて、熱源機からの床暖房用温水の供給が行われ、温度スイッチのOFF動作温度からON動作温度までの範囲とその近傍において床暖房温度が得られる。従って、従来のようなマイクロコンピュータ等による温度制御装置を不要として所望の床温度による暖房運転を行うことができる。
【0011】
しかも、各温度スイッチは、熱源機から延びるスイッチ接続用信号線に並列に接続するだけでよいので、構成が極めて簡単であるだけでなく、既存の住宅等に設置する場合であっても設置作業が容易となる。従って、本発明によれば、複雑な制御を行うことなく床放熱器から発生する温度を制御することができ、構造簡単で安価な温水床暖房装置を提供することができる。
【0012】
また、本発明において、前記温度スイッチは、前記床放熱器に設けられた床暖房用温水が流動する温水管の往路と復路との中間位置に配設することが好ましい。前記床放熱器の温水管の往路には、比較的高い温度の床暖房用温水が通過し、温水管の復路には放熱後に熱源機に戻る比較的低い温度の床暖房用温水が通過する。温水管の往路と復路との中間位置に各温度スイッチを配設したことにより、各温度スイッチの検出温度が高温と低温との何れか一方に偏ることが防止できる。これにより、各温度スイッチによるON/OFF動作の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の温水床暖房装置の構成を示す説明図。
【図2】本実施形態の温水床暖房装置の要部を示す平面説明図。
【図3】操作部の概略回路図。
【図4】各温度スイッチの動作温度を示す図。
【図5】床温度と温度スイッチの作動との関係を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の温水床暖房装置は、図1に示すように、室外に設けられた熱源機1と、室内の床2の上に載置された床暖房パネル3(床放熱器)とによって構成されている。
【0015】
熱源機1は、温水床暖房用の温水を供給する往き管と戻り管とからなる接続配管4を備えている。熱源機1は、図示しないが、内部にガスバーナとこのガスバーナにより温水を生成する熱交換器とを備え、熱交換器には、前記接続配管4が接続されている。室内の壁面には、壁5を貫通させた接続配管4の先端に取り付けた温水コンセント6が設けられている。また、温水コンセント6には、熱源機1の接続配管4と共に延出されるスイッチ接続用信号線7の先端に取り付けた接続端子(図示せず)が設けられている。
【0016】
スイッチ接続用信号線7は、接続及び遮断(ON/OFF)を行うスイッチを接続するものであり、熱源機1は、スイッチ接続用信号線7に接続されるスイッチの操作に応じて運転をON/OFFするようになっている。
【0017】
温水コンセント6には、床暖房パネル3が備える一対の接続ホース8、及び信号用ケーブル9が接続される。これにより、熱源機1の接続配管4とスイッチ接続用信号線7との夫々が、床暖房パネル3の接続ホース8と信号用ケーブル9とに接続される。
【0018】
床暖房パネル3は、図2に一部を示すように、発泡ポリスチレン等の断熱材料で作られたマット10と、マット10に埋設された温水管11と、マット10の上部を覆うカーペット12と、操作部13を備えている。
【0019】
温水管11は、始端から終端にかけて連続する循環水路を形成しており、その始端側が、接続ホース8及び温水コンセント6を介して熱源機1の接続配管4の往き管に接続される往路11aとされ、その終端側が、接続配管4の戻り管に接続される復路11bとされている。温水管11を床暖房用温水が循環することにより、床暖房パネル3が放熱して室内を暖房する。
【0020】
操作部13は、図2に示すように、メインスイッチ14と、暖房の強弱を選択する選択スイッチ15とを備えている。メインスイッチ14は、その操作により、熱源機1の運転をON/OFFする。
【0021】
選択スイッチ15は、図3に示すように、3接点のスイッチであり、3つの温度スイッチ(第1温度スイッチ16、第2温度スイッチ17、及び第3温度スイッチ18)を切換えるものである。第1温度スイッチ16、第2温度スイッチ17、及び第3温度スイッチ18は、熱源機1のスイッチ接続用信号線7に並列に接続され、選択スイッチ15の切換え操作により、何れか1つの温度スイッチが選択される。
【0022】
第1温度スイッチ16、第2温度スイッチ17、及び第3温度スイッチ18は、夫々、ON/OFF動作温度が異なるバイメタルによるサーモスタットが採用されている。即ち、本実施形態においては、図4に示すように、第1温度スイッチ16は、外部から伝達された温度が42℃であるときOFF動作して、42℃以上となってもOFF状態を維持し、外部から伝達された温度が40℃であるときON動作し、40℃以下でON状態を維持する。第2温度スイッチ17は、外部から伝達された温度が35℃であるときOFF動作して、35℃以上となってもOFF状態を維持し、外部から伝達された温度が33℃であるときON動作し、33℃以下でON状態を維持する。第3温度スイッチ18は、外部から伝達された温度が30℃であるときOFF動作して、30℃以上となってもOFF状態を維持し、外部から伝達された温度が28℃であるときON動作し、28℃以下でON状態を維持する。そして、選択スイッチ15で暖房温度「強」を選択すると、第1温度スイッチ16が接続され、選択スイッチ15で暖房温度「中」を選択すると、第2温度スイッチ17が接続され、選択スイッチ15で暖房温度「弱」を選択すると、第3温度スイッチ18が接続される。
【0023】
また、第1温度スイッチ16、第2温度スイッチ17、及び第3温度スイッチ18は、図2に示すように、床暖房パネル3における温水管11の往路11aと復路11bとの中間位置に配設されている。温水管11の往路11aには、熱源機1から供給される比較的温度の高い状態の床暖房用温水が流動し、温水管11の復路11bには、室内での放熱後により温度が低下した床暖房用温水が流動する。温水管11の往路11aと復路11bとの中間位置に各温度スイッチ16,17,18を配設することにより、温水管11の往路11aと復路11bとの何れか一方のみの温度に偏った各温度スイッチ16,17,18のON/OFF動作が防止できる。更に、各温度スイッチ16,17,18は温水管11に非接触とされているので、床暖房パネル3による床温度に近い温度で各温度スイッチ16,17,18を作動させることができる。
【0024】
以上の構成による温水床暖房装置によって室内の暖房を行うとき、先ず、図2に示すメインスイッチ14をON側に移動させ、選択スイッチ15により暖房強度(設定温度)を選択する。これにより、熱源機1により所定温度(例えば80℃)に加熱された床暖房用温水が床暖房パネル3に供給される。
【0025】
ここで、選択スイッチ15により「高」を選択して運転を行った場合について説明すれば、図3及び図4に示すように、メインスイッチ14がONとされて第1温度スイッチ16がスイッチ接続用信号線7に接続されると、図5に示すように、熱源機1の運転ONの状態となり、床暖房パネル3に床暖房用温水が供給されることにより床温度が上昇する。そして、床温度が42℃に上昇すると、これを感知した第1温度スイッチ16がOFF動作し、熱源機1の運転OFFの状態となる。これにより床暖房用温水の供給が停止するので、床温度が低下する。その後、床温度が40℃に低下すると、第1温度スイッチ16がON動作し、熱源機1の運転ONの状態となって再び床温度が上昇する。メインスイッチ14のON状態が維持されている場合、以上のように、第1温度スイッチ16がON/OFF動作を繰り返して床温度が42℃〜40℃の近傍範囲に保たれる。
【0026】
このように、本実施形態によれば、複雑な温度調節制御を行うことなく、所望の温度の暖房が得られ、また、構造も簡単なので、温水床暖房装置を安価に設けることができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、3つの温度スイッチ16,17,18を切換える構成を示したが、これに対して、温度スイッチを1つのみ設けておくことも考えられる。具体的には、例えば、温度スイッチとして、外部から伝達された温度が42℃であるときOFF動作し、40℃以下でON状態を維持するものを1つのみ設けることによって、床温度が42℃を超えて過剰な暖房状態となることが防止できる。これによれば、選択スイッチ15が不要となり、部品点数が削減できる。しかし、単一の温度スイッチのみであると、複数段階の暖房温度の調節が行えない。従って、本発明のように複数の温度スイッチ(本実施形態では3つの温度スイッチ16,17,18)を設けてこれを切換えることで、所望の床温度に調節することができて使い勝手が良いものとなる。
【0028】
また、本実施形態で示した3つの温度スイッチ16,17,18を切換える構成以外に、温度スイッチは2つ或いは4つ以上設けて、夫々のON/OFF動作温度毎に切換えるようにしてもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、メインスイッチ14と選択スイッチ15とを独立させて設けたが、例えば図示しないが、4極ロータリスイッチ等の多接点の選択スイッチを用いて、温度スイッチ16,17,18による温度の選択に加えてOFF状態を選択できるようにしてもよい。これによれば、部品点数を削減してコストを一層低減できる。
【符号の説明】
【0030】
1…熱源機、2…床、3…床暖房パネル(床放熱器)、4…接続配管、7…スイッチ接続用信号線、11…温水管、11a…往路、11b…復路、15…選択スイッチ、16,17,18…温度スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の床に設置されて床暖房用温水が循環する床放熱器と、該床放熱器に床暖房用温水を供給する熱源機とで構成される温水床暖房装置において、
前記熱源機は、前記床放熱器に接続して床暖房用温水を供給する接続配管と、該接続配管に付設されて床暖房用温水の供給をON/OFFするスイッチ接続用信号線とを備え、
前記床放熱器は、該床放熱器から発生する温度が検出可能な位置に設けられて前記スイッチ接続用信号線に並列に接続されたON/OFF動作温度の異なる複数の温度スイッチと、これらの温度スイッチを手動操作により選択的に切換える選択スイッチとを備えることを特徴とする温水床暖房装置。
【請求項2】
前記温度スイッチは、前記床放熱器に設けられた床暖房用温水が流動する温水管の往路と復路との中間位置に配設されていることを特徴とする請求項1記載の温水床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104655(P2013−104655A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251291(P2011−251291)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】