説明

温熱具

【課題】基材を伸長させることにより、所望のタイミングで容易に粘着剤を露出させて使用することができ、構造が簡易で製造の容易な温熱具を提供する。
【解決手段】温熱具1Aは、酸化反応を利用する発熱物質20を非肌面側シート21,肌面側シート22で包囲した発熱体2と、該発熱体2を肌に貼り付けるための粘着剤4を保持した伸長性の基材3とを有し、基材3は、粘着剤4を発熱体2側に向けて発熱体2の背面側に配されており、発熱体2は、粘着剤4と接する面に剥離処理部23を有している。温熱具1Aは、基材3を伸長させることにより、剥離処理部23に接していた接着剤4を、基材3を引っ張る方向に位置する発熱体2の相対向する2辺25,25それぞれから引き出して露出させることができるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化反応を利用する発熱物質をシートで包囲した発熱体を、粘着剤によって直接肌に貼り付けるタイプの温熱具(例えば、特許文献1のシート状温熱化粧用具)や衣類等に貼り付けるタイプの温熱具が知られている。
このような温熱具の使用者は、通常、使用時に温熱具の粘着剤配設部分から剥離紙を剥がして粘着剤を露出させてから、身体の所望の位置に発熱体を当てて、露出した粘着剤を肌に貼り付ける。このように温熱具の粘着剤を露出させた状態で発熱体の位置決めをする場合、所望の位置からずれた位置に貼りつけてしまう位置ずれが起こりやすい。いったん位置ずれが起こると、貼り直しをしなくてはならず、温熱具の粘着力が低下してしまう。特に首や背中等、使用者が背後に手を回して温熱具を貼る場合には、所望の位置に一回で的確に貼ることが難しい。また、使用者の髪がある程度長いと、発熱体を首に当てる際に露出した粘着剤が髪についてしまい、発熱体を、粘着剤に付着した髪ごと肌に貼りつけてしまうという不具合(髪の巻き込み)が起こりやすい。
【0003】
特許文献2には、カイロ本体に、シート状の貼着用テープを折り畳んで粘着面を内側に密着させた状態で付設すると共に、貼着用テープを剥離して展開することにより、該展開部分の粘着面が露出するようにした使い捨てカイロが記載されている。該使い捨てカイロについて、特許文献2には、カイロ本体を使用者の肌等の希望位置に当てながら粘着テープを貼着することができるので、カイロ本体の装着を正確かつ簡単に行うことができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−051486号公報
【特許文献2】特開2008−188356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の使い捨てカイロにおいて、折り畳んだ貼着用テープを展開して粘着剤を露出させる作業は、複雑で誤使用を招きやすい上、手間もかかり作業性もよくない。このため、特許文献2の使い捨てカイロを首や背中等に貼りつける場合、使用者によってはカイロ本体を見ながら折り畳んだ貼着用テープを展開せざるを得ず、結局、粘着剤を露出させてから患部にカイロ本体を当てることになり、位置ズレや髪の巻き込み等の問題を解消できない。また、特許文献2の使い捨てカイロは、折り畳まれた貼着用テープを有することによって構造が複雑となり、製造が難しく製造コストも大きくなってしまう。
【0006】
本発明の課題は、基材を伸長させることにより、所望のタイミングで容易に粘着剤を露出させて使用することができ、構造が簡易で製造の容易な温熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸化反応を利用する発熱物質をシートで包囲した発熱体と、該発熱体を肌に貼り付けるための粘着剤を保持した伸長性の基材とを有し、前記基材は、前記粘着剤を前記発熱体側に向けて発熱体の非肌当接面側に配されており、前記発熱体は、前記粘着剤と接する面に剥離処理部を有しており、前記基材を伸長させることにより、前記剥離処理部に接していた前記粘着剤を、前記基材を引っ張る方向に位置する前記発熱体の相対向する2辺それぞれから引き出して露出させることができるようになされている、温熱具を提供するものである(以下、第1発明というときは、この発明をいう)。
【0008】
また、本発明は、酸化反応を利用する発熱物質をシートで包囲した発熱体と、該発熱体を肌に貼り付けるための粘着剤を保持した伸長性の基材とを有し、前記基材は、前記粘着剤を前記発熱体側に向けて発熱体の非肌当接面側に配されており、前記発熱体は複数の分割発熱体に分割されており、複数の該分割発熱体それぞれが、前記粘着剤と接する面に剥離処理部を有しており、前記基材を伸長させることにより前記分割発熱体同士の間から前記粘着剤を露出させることができるようになされている、温熱具を提供するものである(以下、第2発明というときは、この発明をいう)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材を伸長させることにより、所望のタイミングで容易に粘着剤を露出させて使用することができ、構造が簡易で製造の容易な温熱具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の第1実施形態である温熱具の使用前の状態を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I線断面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示す温熱具の基材を伸長させて粘着剤を露出させた状態を示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)のII−II線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す温熱具を首に貼り付ける様子を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す温熱具の製造方法の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態である温熱具の使用前の状態を示す断面図であり、図1(a)相当図である。
【図6】図6(a)は、図5に示す温熱具の基材を伸長させて粘着剤を露出させた状態を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)のIII−III線断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第3実施形態(第2発明の一実施形態)である温熱具の使用前の状態を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)のIV−IV線断面図である。
【図8】図8は、図7に示す温熱具の基材を伸長させて粘着剤を露出させた状態を示す平面図である。
【図9】図9は、図7に示す温熱具を膝に貼り付けた状態を示す斜視図である。
【0011】
以下、本発明の温熱具を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の第1実施形態(第1発明の一実施形態)である温熱具1Aについて、図1〜図5に基づいて説明する。
第1実施形態の温熱具1Aは、図1(a)及び図1(b)に示すように、酸化反応を利用する発熱物質20を非肌面側シート21,肌面側シート22で包囲した扁平状の発熱体2と、該発熱体2を肌に貼り付けるための粘着剤4を保持した伸長性の基材3とを有し、基材3は、粘着剤4を発熱体2側に向けて発熱体2の背面側(非肌当接面側)に配されており、発熱体2は、粘着剤4と接する面に剥離処理部23を有している。図2(a)及び図2(b)に示すように、温熱具1Aは、基材3を伸長させることにより、剥離処理部23に接していた接着剤4を、基材3を引っ張る方向に位置する発熱体2の相対向する2辺25,25それぞれから引き出して露出させることができるようになされている。
以下、前記2辺25,25が対向する方向をX方向,当該X方向と直交する方向をY方向という。
【0012】
第1実施形態の温熱具1Aについて詳述する。
温熱具1Aにおける発熱体2は、図1(a)に示すように、平面視して各端部が丸みを帯びた略長方形状をしており、該長方形の相対向する短辺25,25が、粘着剤4を保持した基材3を引き出す2辺であり、該長方形の長手方向がX方向となっている。温熱具1Aは、X方向に長い形状をしている。
図1(b)に示すように、発熱体2は扁平な形状をしている。図1(b)に示すように、発熱体2は、発熱物質20が、発熱体2の非肌当接面側の面を構成する非肌面側シート21、及び発熱体2の肌当接面側の面を構成する肌面側シート22に包囲されて形成されている。非肌面側シート21は発熱物質20の非肌当接面側を覆い、肌面側シート22は発熱物質20の肌当接面側を覆う。第1実施形態において、肌当接面(側)は、温熱具1Aの使用時に使用者の肌に向けられる面(側)であり、非肌当接面(側)は、温熱具1Aの使用時に使用者の肌とは反対側に向けられる面(側)である。図1(a)に示すように、非肌面側シート21と肌面側シート22とは、貼り合わされて発熱物質20の収容空間28を形成している。第1〜第3実施形態において、非肌当接面側は背面側と同義である。
【0013】
発熱物質20は化学エネルギーを利用して発熱を起こさせる物質である。利用し得る化学エネルギーとしては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱、酸とアルカリの中和熱、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト等)の水和熱などが挙げられる。これらのうち、取り扱い性が良好であることや、発熱量が比較的大きいこと等から、本実施形態においては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いている。
【0014】
被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いる場合の、発熱物質20の具体的な例としては、被酸化性金属粉(例えば、鉄粉、アルミニウム粉等)、触媒となる塩類(例えば、塩化ナトリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物等)及び水を含有した発熱組成物が挙げられる。この発熱組成物には、更に保水剤(例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル等)、反応促進剤(例えば、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等)等を含有させることができる。
【0015】
発熱物質20は、抄紙発熱体又は発熱粉体の形態となっていることが好ましい。特に抄紙発熱体の形態になっていることが、被酸化性金属等の偏りを防止でき、均一な発熱を行い得る点から好ましい。抄紙発熱体としては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような抄紙発熱体は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
【0016】
肌面側シート22及び非肌面側シート21は、通気性でも非通気性でも良く、透湿性でも非透湿性でも良いが、発熱物質20が、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱により発熱するものである場合、肌面側シート22及び非肌面側シート21は、酸素を取り込む観点から、少なくともいずれか一方が、通気性を有していることが好ましい。その場合、他方は、非通気性のシートでも良く、両シート21,22とも通気性を有していてもよい。温熱具1Aは、発熱物質20から発生する水蒸気を肌に当てる場合には、肌面側シート22として、通気性シートと肌触りの良い不織布や布とを一体化したシートを用いることが好ましい。
【0017】
図1(b)に示すように、基材3は、片面に粘着剤4を保持した状態で、発熱体2の背面側(非肌当接面側)に配されている。図1(a)に示すように、基材3も、略長方形の形状を有し、X方向に長い形状をしている。基材3は、X方向の長さが、発熱体2の同方向の長さとほぼ等しいか、発熱体2の同方向の長さより僅かに小さい。
図1(a)及び図1(b)に示すように、基材3は、更に発熱体2の前記2辺25,25から延出した延出部31,31を有し、該延出部31,31は、図2(a)及び図2(b)のように基材3を伸長させる際に摘むツマミTを形成する。延出部31,31は、基材3におけるX方向の両端部からなり、その端縁が円弧状に形成されている。
【0018】
基材3は、少なくともX方向に伸びる伸長性を有しているが、2方向以上に伸びてもよい。第1実施形態においては、基材3は、伸縮性を有していることが、発熱体2が使用者の肌に良好にフィットするため好ましい。基材3は、伸縮性を有していることが好ましく、X方向に伸縮性を有していることがより好ましい。基材3としては、不織布やフィルム、それらの複合シート等が用いられる。不織布を用いる場合、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブロン不織布等の各種不織布を用いることができる。不織布の伸縮性を向上させるため、該不織布は構成繊維に立体捲縮繊維やエラストマー繊維等が用いられていることが好ましい。基材3としては、例えば、日東メディカル(株)製のキネシオロジーテープ、(株)ペティグロウブ製のカバーロールストレッチテープなど、市販の伸縮テープやテーピング材を用いることができる。
【0019】
図1(b)に示すように、基材3には、発熱体2側の面に粘着剤4からなる層が設けられており、これにより基材3に粘着剤4が保持されている。該粘着剤4としては、例えば、当該技術分野において用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、従来公知の天然又は合成ゴム系、(メタ)アクリル酸エステル系、シリコーン系、ウレタン系などの粘着剤が選定され、それらの剤型は溶液、ホットメルト、両面テープなど特に問わない。
【0020】
粘着剤4は、少なくとも、基材3のうち、発熱体2の背面側における、発熱体2の前記2辺25,25の近傍に保持されていることが好ましい。粘着剤4は、X方向において、辺25の位置から発熱体2の全長L(図1(b)参照)の10%以上内側の位置までに配されていることが好ましく、20%以上内側の位置までに配されていることがより好ましい。第1実施形態においては、基材3の発熱体2側の面の全体を粘着剤4が覆っている。
例えば、粘着剤4は、基材3に塗工されることにより、基材3に保持させることができる。その場合、粘着剤4は基材3にベタ塗りされていることが好ましいが、ストライプや波状、ドット状、霧状等のパターンでパターン塗工されていてもよい。
【0021】
図2に示すように、温熱具1Aは、基材3をX方向に伸長させることにより発熱体2の前記2辺25,25から引き出される引き出し粘着部E(図2(a)及び図2(b)参照)よりX方向の外方に、基材3を伸長させる際に手で摘むことのできるツマミT,Tを有している。
温熱具1AにおけるツマミTは、図1(a)及び図1(b)に示すように、基材3における発熱体2の前記2辺25,25の各辺から延出した延出部31と、該延出部31に保持された粘着剤4と、該粘着剤4上に貼り付けられた剥離紙5とからなる。即ち、粘着剤4は、引き出し粘着部Eのみならず、ツマミT,Tを形成する基材3の延出部31,31にも保持されており、適宜のタイミングで剥離紙5を剥がして、その部分も粘着剤4を介して肌などに固定可能である。引き出し粘着部Eは、基材3を伸長させない状態においては、発熱体2の非肌当接面側に隠れているが、図2(a)及び図2(b)に示すように、基材3を伸長させることによって発熱体2の辺25から引き出され、それによって、保持していた粘着剤4が露出した状態となる部分である。本実施形態の温熱具1Aにおける引き出し粘着部Eは、伸長性の基材3の一部及び該一部に保持された粘着剤からなる。また、剥離紙5は、円弧状の延出部31,31の形状に合わせて弓状の形状を有している。
【0022】
図1(b)に示すように、発熱体2の背面側(非肌当接面側)の面は、粘着剤4と接している。発熱体2は、該背面側の面に剥離処理部23を有している。剥離処理部23は、発熱体2の背面側の面の、X方向の両端側(2辺25,25側)それぞれに設けられている。図1(a)に示す例では、剥離処理部23は、X方向において、発熱体の背面側の面の、辺25から所定幅L23に亘って設けられている。X方向において、剥離処理部23の幅L23(図1(b)参照)は、発熱体2の背面側の面の全長L(図1(b)参照)に対し、片側で20〜45%であることが好ましく、より好ましくは30〜40%である。
【0023】
剥離処理部23は、発熱体2の背面側の面における剥離処理が施された部分、又は発熱体2の背面側の面にシート状の剥離材を貼り合わせた部分である。剥離処理としては、例えば発熱体2の背面側の面に、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、四フッ化エチレン系樹脂等の公知の剥離剤を塗工する。剥離剤の塗工には、例えばダイ塗工や、グラビア塗工、リバース塗工、スプレー塗工などの方法により、表面に薄い皮膜を形成する方法、さらに紫外線照射や熱処理により、剥離皮膜を安定化させる方法等を用いることができる。なお、シート状剥離材としては、紙やフィルムに、上述の剥離剤を塗布する等して剥離処理したものを用いることができる。
【0024】
また、図1(b)に示すように、発熱体2は、その非肌当接面側の面の剥離処理部23以外の部分に、基材3と接合された接合部6を有している。図1(b)に示すように、第1実施形態において、発熱体2は、背面側の面のうち剥離処理部23以外の部分のほぼ全体が、粘着剤4を介して基材3と接合された接合部6となっている。接合部6は、非肌当接面側の面の離間した剥離処理部23、23間でX方向中央部に存する。
【0025】
図1及び図2に示すように、上記構成の温熱具1Aを使用する際には、フィルム容器から温熱具1Aを取り出した後に、発熱体2の前記2辺25,25の両側に位置するツマミT,Tを摘んで、X方向に引っ張る。図2(a)及び図2(b)に示すように、これにより基材3が伸長し、基材3に保持された粘着剤4のうち、発熱体2の剥離処理部23に接していた部分が剥離処理部23から剥れて、辺25,25から引き出されて露出する。基材3の延出部31,31に保持された粘着剤4上の剥離紙5を剥がすことにより、基材3の伸長後に辺25,25から延出した基材3上の粘着剤4全体が露出する。
【0026】
このように温熱具1Aは、基材3を伸長させることにより粘着剤4を所望のタイミングで容易に露出させることができる。このため、粘着剤4が露出していない状態で発熱体2を肌の所望の位置に当てて位置決めし、その後に基材3を伸長させて粘着剤4を露出させることができる。例えば、図3に示す使用者Mは、温熱具1Aを見ない状態で発熱体2を首の後ろに当ててから、基材3の両端を引っ張ることにより、容易に発熱体2を貼りつけることができる。図3に示す使用者Mの髪は首にかかる程長いが、発熱体2を肌に当てた状態で粘着剤4を露出させるため、粘着剤4が使用者の髪に付着して、使用者の髪ごと発熱体2を貼り付けてしまう恐れが大きく低減する。
【0027】
また温熱具1Aは、基材3を発熱体2の背面側に配した簡易な構成によって温熱具1Aに上記の機能を持たせることが可能であるため、製造コストの抑制と、上記の位置ズレ防止や髪の巻き込み防止等の効果とを両立させることができる。更に、伸長性の基材を用いることにより、温熱具1Aの材料の使用量を低減できる。また、粘着剤4は、発熱体2の背面に設けた剥離処理部23に接しているため、剥離紙の使用量を大幅に低減させることができる。しかも、温熱具1Aの使用前に粘着剤4が発熱体2の背面に隠れているため、温熱具1Aをコンパクトに形成できる。
【0028】
また、温熱具1Aは、X方向における引き出し粘着部Eより外方にツマミT,Tを有するため、使用者は、ツマミT,Tを摘んで基材3を容易に伸長させることができる。
【0029】
また、一般的に、粘着剤を保持する基材を肌に貼り付ける場合、その端部から剥がれやすい。しかしながら温熱具1Aは、ツマミT,Tが、基材3の延出部31,31と、該延出部31,31に保持された粘着剤4と、粘着剤4上に貼り付けられた剥離紙5からなるため、基材3の端部まで粘着剤4を保持することができる。このため基材3が使用者の肌から剥がれにくく、温熱具1Aの肌への固定力が向上する。
なお、ツマミTは、後述する第2実施形態の温熱具1B(図5参照)のように、伸長性の基材3のみから構成されていても良いし、伸長性の基材3に連結した非伸長性のシート材から構成されていても良い。
【0030】
また、発熱体2は、その非肌当接面側の面における剥離処理部23以外の部分に、基材3と接合された接合部6を有しているため、発熱体2を貼り付ける作業中に基材3から発熱体2が脱落してしまう問題等が起こらず、貼り付け作業がしやすく、温熱具1Aの取り扱いが容易である。また、基材3が伸縮性を有している場合でも、発熱体2は基材3の一部にのみ接合されているため、基材3の伸縮機能が失われず、基材3が伸縮性を有することによるフィット性向上効果と、温熱具1Aの取り扱いの容易性とを両立させることができる。
更に、発熱体2は、粘着剤4を介して基材3と接合しているため、基材3と発熱体2とを接合させるための別の接着剤が不要となり、基材3の構成がより簡易なものとなるため、製造工程を簡略化できる。
【0031】
また、基材3は折り畳まれていないため、温熱具1Aの構造が更に簡易なものとなり、温熱具1Aの製造コストを更に低減できる。
【0032】
温熱具1Aは、手で引っ張ることにより、X方向の全長L2(図2(b)参照)が、使用前のX方向の全長L1(図1(b)参照)に対して1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上となるまで伸長させ得ることが好ましい。温熱具1AのX方向の最大伸長長さは、特に制限されないが、例えば、使用前のX方向の全長L1の2倍以下、より好ましくは1.7倍以下である。
なお、使用前の前記全長L1は、例えば50〜200mmであり、好ましくは80〜160mmである。
【0033】
また、温熱具1Aは、手で引っ張ることにより、辺25,25から引き出すことのできる粘着剤4のX方向の長さLe(引き出し粘着部Eの長さ,図2参照)が、5mm以上であることが好ましく、より好ましくは10mm以上である。また、辺25,25の外方に露出させ得る粘着剤4のX方向の長さL4(剥離紙5の剥離により露出する粘着剤の長さを含む,図2参照)は、10mm以上であることが好ましく、より好ましくは15mm以上である。
なお、前記長さLe及び前記長さL4に、特に上限はないが、例えば、80mm以下である。
【0034】
上述した温熱具1Aは、以下の方法により効率的に製造することができる。
以下で説明する温熱具1Aの製造方法は、図4に示すように、発熱体2の非肌当接面側の面を構成する非肌面側シート21の原反である第1帯状シート121に剥離処理部123,123を設ける工程と、発熱体2の肌当接面側の面を構成する肌面側シート22の原反である第2帯状シート122と前記第1帯状シート121とを、発熱物質20を介在させた状態で貼り合わせて発熱体連続体102を得る工程と、基材3の原反である帯状基材シート103を、粘着剤4を保持した状態で発熱体連続体102と貼り合わせて温熱具連続体101を得る工程と、温熱具連続体101を所定長さで切断して温熱具1Aを得る工程と、を含む。
なお、温熱具1Aの長手方向(X方向)は、温熱具連続体101を構成する各帯状シートの長手方向と直行する方向である。
【0035】
図4に示すように、剥離処理部123,123は、第1帯状シート121の長手方向の両側縁部121a,121aに、上記幅L23を有するように設けられる。剥離処理部123,123は、第1帯状シート121の長手方向の両側縁に沿って連続して設けられている。剥離処理部123,123は、第1帯状シート121に、上述した剥離処理を施したり、上述のシート状剥離材を貼り付けたりすることにより設けることができる。
【0036】
第1帯状シート121は、剥離処理部123,123を有する面とは反対側の面が、第2帯状シート122と発熱物質20を介在させた状態で貼りあわされ、これによって発熱体連続体102が得られる。発熱物質20は、抄紙発熱体の形態であり、図4に示すように、帯状シート状の抄紙発熱体120を所定長さに切断してなる。
【0037】
帯状基材シート103の、発熱体連続体102と貼り合わされる片面には、その貼り合わせの前に、粘着剤4を保持させる処理がなされる。図4に示す例では、粘着剤4は、ダイ塗工や、グラビア塗工、リバース塗工、スプレー塗工などの公知技術を用いて基材シート103上にベタ塗りされている。発熱体連続体102は、第1帯状シート121の剥離処理部123を有する面が、帯状基材シート103と貼りあわされる。なお、帯状基材シート103の幅は、発熱体連続体102の幅よりも大きく、帯状基材シート103と発熱体連続体102との貼り合わせの後、帯状基材シート103の両側縁部に保持された粘着剤4が露出する。該露出した粘着剤4上には、細帯状の一対の剥離紙105,105が貼りあわされる。図4に示す例においては、以上の工程により、温熱具連続体101が得られる。
その後、上記の温熱具連続体101を所定長さに切断することにより、温熱具1Aが得られる。なお、温熱具連続体101を所定長さに切断する際に、温熱具1AのツマミT,T(延出部31,31)が円弧状に形成されるように温熱具連続体101の長手方向の両側縁部を切断する。温熱具連続体101の切断には、ロータリーダイカッター等、公知の切断手段を用いることができる。
【0038】
上記方法によれば、温熱具1Aを容易に且つ効率的に製造することができる。
【0039】
次に、本発明の第2,第3実施形態の温熱具1B,1Cについて、図5〜図9を参照して説明する。第2,第3実施形態の温熱具1B,1Cについては、第1実施形態との相違点について主として説明し、同様の点については説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態と同様である。図5〜図9には、第1実施形態の温熱具1Aの構成要素等と同様の構成要素等に同一の符号を付してある。
【0040】
図5〜図6に基づいて、本発明の第2実施形態(第1発明の一実施形態)の温熱具1Bについて説明する。
図5に示すように、温熱具1Bの粘着剤4は、X方向において、基材3上の、発熱体2の辺25と接する位置から、該辺25よりも所定幅内側の位置までに亘って保持されている。なお、図5に示す例では、粘着剤4が配されたX方向幅は剥離処理部23が配されたX方向幅L23とほぼ等しいが、異なっていてよい。
発熱体2は、その背面側の面の剥離処理部23が設けられていないX方向中央部において、接着剤8を介して基材3に接合された接合部6を有している。接着剤8は、粘着剤4と同じ剤を用いてもよいし、異なるものであってもよい。粘着剤4と異なる剤を用いる場合、一般的なゴム系接着剤、樹脂系接着剤を用いることができ、それらの剤型は溶液、ホットメルト、両面テープなど特に問わない。また、別の固定手段として、ヒートシールや超音波シールなどを用いてもよい。図5に示すように、粘着剤4は、基材3における接合部6から離間した部分に保持されている。接合部6と粘着剤4との間に、発熱体2と基材3との間が接合も粘着もされていない領域9,9を設けることは、粘着剤4を削減して製造コストを削減させる点や、基材3の伸長を阻害しないようにする点から好ましい。
【0041】
図5に示すように、温熱具1Bにおいて、基材3に保持された粘着剤4はその全体が発熱体2の背面側に位置しており、辺25,25から露出したX方向の延出部31,31が、粘着剤4を保持していない。温熱具1BのツマミTは、粘着剤4を保持していない基材3の延出部31,31から形成されている。このような構成の温熱具1Bは、剥離紙の使用量を更に低減できる。
【0042】
図6に示すように、温熱具1Bにおいても、使用時に基材3を伸長させることにより、発熱体2の相対向する2辺それぞれから粘着剤4が露出する。このように、第2実施形態の温熱具1Bも温熱具1Aと同様の構成を有しており、温熱具1Aと同様の効果を奏する。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態である温熱具1Cについて図7〜図9に基づいて説明する。第3実施形態の温熱具1Cは、第1発明の一実施形態であると共に、第2発明の一実施形態でもある。
温熱具1Cの発熱体2は、2つの分割発熱体2a,2bに分割されている。2つの分割発熱体2a,2bは略同形の略矩形状である。図7(a)及び図7(b)に示すように、温熱具1Cの使用前の状態においては、2つの分割発熱体2a,2bは、各々の辺25’,25’が近接した状態でX方向に並んでいる。両者の僅かな隙間は、基材3のX方向中央部と厚み方向に重なっている。
【0044】
図7(b)に示すように、分割発熱体2a,2bそれぞれが、その背面側の面の両者の隙間の近傍に、剥離処理部24を有している。剥離処理部24の構成は、第1実施形態で説明した剥離処理部23の構成と同様であり、以下では剥離処理部23と異なる点を説明する。剥離処理部24,24は、X方向において、各分割発熱体2a,2bそれぞれの背面側の面における、隣の分割発熱体側の辺25’から、各分割発熱体2a,2bの内側の所定位置までに亘って設けられている。各分割発熱体2a,2bにおいて、剥離処理部24の配設されたX方向幅L24(図7(b)参照)は、発熱体のX方向の全長Lに対して、5〜10%であることが好ましい。
【0045】
図7(b)に示すように、粘着剤4は、基材3の発熱体2側の面において、X方向中央部と、X方向の両端部側とに分離して保持されている。発熱体2の剥離処理部23,23は、第1実施形態と同様、X方向の両端部側の粘着剤4と接している。一方、剥離処理部24,24は、基材3のX方向中央部に保持された粘着剤4と接している。基材3のX方向中央部に保持された粘着剤4は、分割発熱体2a,2bの剥離処理部24,24を跨ぐように、剥離処理部24,24の隙間に対向する部分にも連続して配されている。
【0046】
発熱体2は、背面側の面の剥離処理部23,24以外の部分において、接着剤8を介して基材3に接合された接合部6,6を有している。接合部6,6は、X方向において、中央部の剥離処理部24と、両端側の剥離処理部23との間に設けられており、分割発熱体2a,2bそれぞれは各接合部6において基材3に接合している。基材3において、粘着剤4は、接合部6と離間した部分に保持されている。
【0047】
図7(a)及び図8に示すように、基材3は、それを伸長させた際に2辺25,25から引き出す部分35,35が、該2辺25,25の方向(Y方向)に分割可能になされている。具体的には、基材3は、X方向の両端部それぞれから、X方向に延びる切り込み32,32を有する。図7(a)及び図8に示す例では、切り込み32は、基材3における、前記の引き出す部分35,35に一つずつ設けられているが、切り込み32は基材3に3つ以上設けられていてもよい。図7(a)に示す例においては、基材3は略矩形状に形成されて、発熱体2の2辺25,25と平行な辺33,33を有しており、切り込み32は、辺33から延びて辺33と直交する線状に形成されている。なお、温熱具1Cの切り込み32は連続的な線状であるが、ミシン目状でもよい。
【0048】
図8に示すように、温熱具1Cを使用する際には、X方向に基材3を伸長させることにより、発熱体2の対向する2辺25,25から粘着剤4が露出するだけでなく、分割発熱体2a,2bの間からも粘着剤4が露出する。このように、温熱具1Cは、X方向の中央部における粘着剤4によって発熱体2を肌に固定できるため、肌への固定力が格段に向上する。また、発熱体2を分割することにより、発熱体2が使用者の肌に沿って曲がりやすく、更にフィット性が向上する。このようなフィット性は、図9に示すように、温熱具1Cを膝やその他の関節部等の可動の大きい部位に貼り付ける場合に有効である。
【0049】
しかも、温熱具1Cは基材3の引き出す部分35,35がY方向に分割可能になされているため、図8に示すように、基材3をX方向に伸長させる際に、分割された引き出す部分35a,35aが発熱体2の四方に広がった状態となる。図9に示すように、温熱具1Cは、当該状態の各部分35aに保持された粘着剤4によって発熱体2を肌に貼り付けるため、発熱体2を膝等の可動が大きい部位に貼り付ける場合でも、発熱体2を肌にしっかりと固定させると共に、良好に肌にフィットさせることができる。
【0050】
また、仮に基材3が伸長性を有さず、分割発熱体2a,2b同士の間から露出する粘着剤4を剥離紙で覆っていた場合には、その剥離紙が邪魔になって、分割発熱体2a,2bの間の隙間部分で温熱具を折り畳むことができない。しかし、温熱具1Cは、剥離紙を使用せずに該粘着剤4を分割発熱体2a,2bの背面に隠しておくことができるため、分割発熱体2a,2bの間の隙間部分で温熱具1Cを折ることができ、それによって温熱具1Cをコンパクトに収納できる。
【0051】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
【0052】
例えば、発熱体2のシートの構成は、上記で説明したものに限られず、一枚物のシートで発熱物質の両面を覆っていてもよい。また、発熱体2の剥離処理部23,24に通着性の孔を複数開口させて、発熱体2の通気性を向上させてもよい。その通気性の孔は、微細なものであることが好ましい。
また、発熱体2は、2辺25,25の対向方向に長い形状に限られず、該対向方向において短い形状であってもよい。基材3の形状は、図に示すものに限られず、例えばX方向の中央部が括れた砂時計形状、楕円形状等であってもよい。
また、発熱体2を分割させる際には、2つではなく、3つ以上に分割させていてもよい。
【0053】
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
例えば、第1実施形態の温熱具1Aについて、第3実施形態の温熱具1Cのように、基材3の引き出す部分35を分割可能とすることもできるし、第2実施形態の温熱具1BのようにツマミTが粘着剤4を有しないものとすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B,1C 温熱具
2,2a,2b 発熱体
20 発熱物質
21 非肌面側シート
22 肌面側シート
23,24 剥離処理部
25,25 基材を引っ張る方向に位置し粘着剤が引き出される2辺
3 基材
31 延出部
32 切り込み
35 基材の伸長時に引き出す部分
4 粘着剤
5 剥離紙
6 接合部
101 温熱具連続体
102 発熱体連続体
103 帯状基材シート
121 第1帯状シート
122 第2帯状シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化反応を利用する発熱物質をシートで包囲した発熱体と、該発熱体を肌に貼り付けるための粘着剤を保持した伸長性の基材とを有し、
前記基材は、前記粘着剤を前記発熱体側に向けて発熱体の非肌当接面側に配されており、
前記発熱体は、前記粘着剤と接する面に剥離処理部を有しており、
前記基材を伸長させることにより、前記剥離処理部に接していた前記粘着剤を、前記基材を引っ張る方向に位置する前記発熱体の相対向する2辺それぞれから引き出して露出させることができるようになされている、温熱具。
【請求項2】
前記温熱具は、前記2辺から引き出される引き出し粘着部より外方に、前記基材を伸長させる際に摘むツマミを有している、請求項1記載の温熱具。
【請求項3】
前記ツマミは、前記基材における前記2辺の各辺から延出した延出部と、該延出部に保持された粘着剤と、該粘着剤上に貼り付けられた剥離紙とからなる、請求項2記載の温熱具。
【請求項4】
前記発熱体は、その非肌当接面側の面における前記剥離処理部以外の部分に、前記基材に接合された接合部を有している、請求項1〜3の何れか1項記載の温熱具。
【請求項5】
前記発熱体は複数の分割発熱体に分割されており、
前記基材を伸長させることにより前記分割発熱体同士の間から前記粘着剤を露出させることができるようになされている、請求項1〜4の何れか1項記載の温熱具
【請求項6】
前記基材は、前記2辺から引き出す部分が、該2辺の方向に分割可能になされている、請求項1〜5の何れか1項記載の温熱具。
【請求項7】
前記基材が折り畳まれていない、請求項1〜6の何れか1項記載の温熱具。
【請求項8】
酸化反応を利用する発熱物質をシートで包囲した発熱体と、該発熱体を肌に貼り付けるための粘着剤を保持した伸長性の基材とを有し、
前記基材は、前記粘着剤を前記発熱体側に向けて発熱体の非肌当接面側に配されており、
前記発熱体は複数の分割発熱体に分割されており、複数の該分割発熱体それぞれが、前記粘着剤と接する面に剥離処理部を有しており、
前記基材を伸長させることにより前記分割発熱体同士の間から前記粘着剤を露出させることができるようになされている、温熱具。
【請求項9】
請求項1記載の温熱具の製造方法であって、
前記発熱体の非肌当接面側の面を構成するシートの原反である第1帯状シートに剥離処理部を設ける工程と、
前記発熱体の肌当接面側の面を構成するシートの原反である第2帯状シートと、前記第1帯状シートとを、前記発熱物質を介在させた状態で貼り合わせて発熱体連続体を得る工程と、
前記基材の原反である帯状基材シートを、粘着剤を保持した状態で前記発熱体連続体と貼り合わせて温熱具連続体を得る工程と、
前記温熱具連続体を所定長さで切断して温熱具を得る工程と、を含む、温熱具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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