説明

測定装置、測定方法、およびプログラム

【課題】異常曲げが発生している異常箇所を迅速に特定する測定装置、測定方法、プログラムを提供する。
【解決手段】光ファイバ芯線の入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、前記入射端で測定する光パワー測定部と、前記光パワー測定部が測定した前記複数の波長のそれぞれについての前記光パワーと、前記複数の波長とを用いて、前記光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する特性算出部と、前記波長対損失特性の傾きと、前記複数の波長に応じて定められる損失基準値とを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する異常箇所特定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げによる光損失が発生している光ファイバ芯線、さらには光ファイバ芯線の損失発生箇所を特定する測定装置、測定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光時間領域反射測定器(OTDR)を用いて光ファイバ芯線の光損失を測定して修繕の要否を判断することが知られている。また、光ファイバ芯線に異なる波長の光を入射して、出射部における波長ごとの光損失の差から光ファイバ芯線の屈曲度を算出することで、OTDRを用いることなく光ファイバ芯線の劣化状態を検出することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−337766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なOTDRを用いることで、屈曲度が高く、そのため光損失が大きい光ファイバ芯線を特定することができても、光ファイバ芯線のどの部分にその強い曲げが生じているのかを特定できない。また、光ファイバ芯線の接続損失が大きい接続部分を特定することができても、その接続損失が、敷設時の融着接続不良によるものなのか、クリーピング等により事後的に発生した異常曲げによる光損失なのかを特定できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、測定装置であって、光ファイバ芯線の入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、入射端で測定する光パワー測定部と、光パワー測定部が測定した複数の波長のそれぞれについての光パワーと、複数の波長とを用いて、光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する特性算出部と、波長対損失特性の傾きと損失基準値とを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する異常箇所特定部とを備える。
【0006】
光パワー測定部が測定した光パワーに基づいて、光パワーが単位距離当りで所定値以上値が減少する変化箇所を検出する変化箇所検出部と、複数の波長のそれぞれについて、変化箇所における光パワーの変化量を算出する変化量算出部とをさらに備えてよく、特性算出部は、複数の波長と複数の波長のそれぞれにおける変化量とを用いて変化箇所の波長対損失特性を算出してよい。
【0007】
複数の位置における波長対損失特性の傾きが、単位距離当りで所定値以上値が変化する変化箇所を検出する変化箇所検出部と、変化箇所における波長対損失特性の傾きの変化量を算出する変化量算出部とを更に備えてよく、異常箇所特定部は、変化量と損失基準値と比較することで、異常箇所を特定してよい。
【0008】
特性算出部は、3以上の波長と3以上の波長のそれぞれについての光パワーとに基づいて、最小二乗法を用いて、波長対損失特性を求めてよい。
【0009】
異常箇所特定部は、複数の波長および光ファイバ芯線の種類に応じて定められる損失基準値を用いて、異常箇所を特定してよい。
【0010】
複数の波長にそれぞれ対応する屈折率と、入射端から入射した光が後方散乱光として入射端に戻ってくる時間と基づいて、複数の波長のそれぞれについての後方散乱光が、どの距離からの後方散乱光であるかを算出する距離算出部をさらに備えてよい。
【0011】
入射端から入射した光が後方散乱光として入射端に戻ってくる時間に基づいて、複数の波長のそれぞれについての後方散乱光が、どの距離からの後方散乱光であるかを算出する距離算出部と、複数の波長の少なくとも1つの波長の波長分散値または群遅延を用いて、複数の波長の少なくとも1つの波長の後方散乱光が発生した位置までの距離を補正する距離補正部とをさらに備えてよい。
【0012】
異常箇所における波長対損失特性の傾きに基づいて、複数の光ファイバ芯線の光接続部を収容する複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定する修繕順序決定部を更に備えてよく、光パワー測定部は、複数の光ファイバ芯線のうち、2以上の光ファイバ芯線について、2以上の光ファイバ芯線のそれぞれの入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、それぞれの入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、それぞれの入射端で測定し、特性算出部は、2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、波長対損失特性を算出し、異常箇所特定部は、2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、異常箇所を特定してよい。
【0013】
修繕順序決定部は、複数の収容部のそれぞれが収容する光ファイバ芯線の重要度、冗長度、伝送容量、種類、および、それぞれの収容部における使用されている光ファイバ芯線の数、ならびに、複数の収容部のそれぞれに含まれる異常箇所における波長対損失特性の傾きからなる群から選ばれる少なくとも1つによって重み付けされた異常箇所における波長対損失特性の傾きに基づいて、複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定してよい。
【0014】
修繕順序決定部は、複数の収容部のそれぞれについて、2以上の光ファイバ芯線の異常箇所における波長対損失特性の傾きの和を算出し、波長対損失特性の傾きの和が大きい順に修繕することを決定してよい。2以上の光ファイバ芯線は、それぞれ、異なる多心光ファイバケーブルを構成してよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様においては、測定装置であって、光ファイバ芯線の少なくとも一部を通過する光の光パワーを測定する光パワー測定部と、光パワー測定部が所定期間以上の間に繰り返し測定した光パワーの変動量が所定値以上である場合に、光ファイバ芯線に異常曲げが発生していると判断する異常曲げ判断部とを備える。
【0016】
光パワー測定部は、光ファイバ芯線の入射端から入射された光の後方散乱光の光パワーを、入射端からの距離が異なる複数の位置毎に入射端で測定し、異常曲げ判断部は、光パワー測定部が所定期間以上の間に複数の位置毎に繰り返し測定した光パワーの変動量が所定値以上である箇所に異常曲げが発生していると判断してよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】異常曲げが発生している箇所を含む光ファイバ芯線の波長1550nmにおける光パワーの測定結果の一例を示す。
【図2】図1に示したものと同一の光ファイバ芯線の波長1625nmにおける光パワーの測定結果の一例を示す。
【図3】異常曲げが発生している光ファイバ芯線における時間に対する光損失の測定結果の一例を示す。
【図4】測定装置100の一例を示す。
【図5】変化箇所における波長対損失特性の一例を示す。
【図6】測定装置200の一例を示す。
【図7】光ファイバ芯線における位置と、波長対損失特性の傾きとの関係を求めた結果を示す。
【図8】光ファイバネットワーク800の一例を示す。
【図9】測定装置900の一例を示す。
【図10】光ファイバネットワーク800の各光ファイバ芯線の、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、異常曲げが発生している箇所を含む光ファイバ芯線の波長1550nmにおける光パワーの測定結果の一例を示す。図1に示す光ファイバ芯線は、融着接続不良により光損失が発生している接続点aと、異常曲げが発生している接続点bとを含む。接続点aおよび接続点bは、光接続部の一例であってよい。
【0021】
異常曲げが生じる原因の一つとして、クリーピングによるものがある。ここで、クリーピングとは、車両の通行によって起こる振動等により光ファイバ芯線が移動する現象のことをいう。このクリーピングによって光ファイバ芯線に曲率半径を小さくする曲げが生じてしまう。
【0022】
光時間領域反射測定器(OTDR)を用いて光ファイバ芯線の光パワーを測定する場合、光ファイバ芯線の一端である入射端から光を入射させ、入射端に戻ってくる後方散乱光を入射端で計測することで光パワーを検出する。また、光時間領域反射測定器を用いて、複数の波長の光を入射端に入射させ、複数の波長の後方散乱光の光パワーを測定してもよく、光ファイバ芯線の少なくとも一部を通過する光の光パワーを測定してもよい。
【0023】
図1の測定結果は、横軸が距離を示し、縦軸が光パワーを示す。光時間領域反射測定器は、光ファイバ芯線の入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを測定する。後方散乱光の光パワーは、入射端からの距離に応じて減少していく。つまり、入射端から遠い距離からの後方散乱光ほど光パワーが小さくなる。
【0024】
また、光パワーが急激に減少している箇所aおよび箇所bがある。つまり、光パワーが単位距離当りで所定値以上減少している箇所aおよび箇所bがある。光パワーが急激に減少している箇所aおよび箇所bは、光ファイバ芯線の接続部分であるクロージャー部で発生する。接続部分の数が多いほど、光パワーが急激に減少している箇所が多くなる。クロージャー部は、収容部の一例であってよい。クロージャー部は、光ファイバ芯線の光接続部および余長とを収容する。光パワーの減少具合は、光ファイバ芯線の光損失の大きさを表している。光パワーの変化量L11が箇所aの光損失の量を示し、光パワーの変化量L12が箇所bの光損失の量を示す。
【0025】
図1の測定結果だけからでは、箇所aと箇所bとについて、光損失L11と光損失L12とは同程度であり、光損失の発生原因が接続部分の融着接続が不良であることによるものか、異常曲げが発生していることによるものかを判別できない。即ち、光時間領域反射測定器で単に光ファイバ芯線による後方散乱光の光パワーを検出しても、異常曲げによる光損失が発生しているか否かを簡単に判断できない。
【0026】
図2は、図1に示したものと同一の光ファイバ芯線の波長1625nmにおける光パワーの測定結果の一例を示す。図1の測定結果は、横軸が距離を示し、縦軸が光パワーを示す。図2においても、図1と同様に、光パワーが急激に減少している箇所aおよび箇所bがある。光パワーの変化量L21が箇所aの光損失の量を示し、変化量L22が箇所bの光損失の量を示す。
【0027】
図1の測定結果と図2の測定結果とを比較すると、接続部分の融着接続が不良であることによる箇所aの光損失は、波長1550nmにおける光損失L11と波長1625nmにおける光損失L21がほぼ同等であるのに対して、異常曲げが発生している箇所bの光損失は、波長1550nmにおける光損失L12と比べて、波長1625nmにおける光損失L22が大きくなっている。実施の形態では、このような測定結果を利用することで、異常曲げによる光損失が発生しているか否かを簡単に判断できる測定装置について説明する。
【0028】
図3は、異常曲げが発生している光ファイバ芯線における時間に対する光損失の測定結果の一例を示す。図3の測定結果は、横軸が時間を示し、縦軸が光損失を示す。図3に示すように、異常曲げが発生している光ファイバ芯線においては、光損失の経時変動が観測される。このように、異常曲げが発生している場合には、時間の経過にともなう光損失変動が起こり、最悪の場合、光通信ができなくなる期間も生じてしまう。異常曲げによる光損失が時間の経過にともなって変動する理由として、温度変動による光ファイバ芯線の伸縮等による光ファイバ芯線の曲げの曲率半径の変動が挙げられる。一方、異常曲げが発生していない光ファイバ芯線においては、通常、このような光損失の経時変動は観測されない。
【0029】
このように、所定期間以上の間、繰り返し後方散乱光の光パワーを検出することで、異常曲げによる光損失か、異常曲げによらない光損失かを判断できる。また、異常曲げによる光損失が発生している箇所がどこであるかを判断できるので、異常曲げによる光損失が発生している箇所のみを工事することで、異常曲げを改善できる。
【0030】
図4は、実施の形態に係る測定装置100の一例を示す。測定装置100は、光パワー測定部101、変化箇所検出部102、変化量算出部103、および異常曲げ判断部104を備える。測定装置100は、光ファイバ芯線の複数の位置における光損失を繰り返し測定し、光損失の変動から異常曲げが発生している光ファイバ芯線における箇所を判断する。
【0031】
光パワー測定部101は、光ファイバ芯線の少なくとも一部を通過する光の光パワーを測定する。光パワー測定部101は、光ファイバ芯線の入射端から入射された光の後方散乱光の光パワーを、入射端からの距離が異なる複数の位置毎に、入射端で測定する。つまり、入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを入射端で測定する。光パワー測定部101は、所定期間以上の間に、複数の位置からの後方散乱光の光パワーを繰り返し測定してよい。
【0032】
光パワー測定部101は、光ファイバ芯線の入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを入射端で測定してよい。光パワー測定部101によって測定された光パワーの変化が、光ファイバ芯線のそれぞれの箇所における光損失を示す。
【0033】
光パワー測定部101は、測定した複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、変化箇所検出部102および変化量算出部103に出力する。光パワー測定部101は、測定した複数の位置からの後方散乱光の光パワーと波長とを異常曲げ判断部104に出力する。なお、光パワー測定部101は、光時間領域反射測定器であってよい。
【0034】
変化箇所検出部102は、光パワー測定部101が測定した複数の位置からの後方散乱光の光パワーに基づいて、光パワーが単位距離当りで所定値以上減少する変化箇所を検出する。例えば、変化箇所検出部102は、図1および図2に示すような、光パワーが急激に減少している箇所aおよび箇所bを検出する。変化箇所検出部102は、光パワー測定部101で所定期間以上の間に繰り返し測定される毎に、複数の位置からの後方散乱光の光パワーに基づいて、光パワーが単位距離当りで所定値以上減少する変化箇所を検出してよい。
【0035】
変化箇所検出部102は、光パワー測定部101が測定した複数の波長のそれぞれについての複数の位置からの後方散乱光の光パワーに基づいて、光パワーが単位距離当りで所定値以上減少する変化箇所を検出してよい。変化箇所検出部102は、光パワーが急激に減少している箇所が複数ある場合は、複数の変化箇所を検出する。変化箇所検出部102は、検出した変化箇所を変化量算出部103に出力する。なお、変化箇所検出部102は、光時間領域反射測定器の中に設けられてもよい。
【0036】
変化量算出部103は、変化箇所検出部102が検出した変化箇所における光パワーの変化量を算出する。例えば、図1に示す箇所aが変化箇所として検出された場合、変化量はL11となり、図2に示す箇所bが変化箇所として検出された場合、変化量はL22となる。変化量算出部103は、光パワー測定部101で所定期間以上の間に繰り返し測定される毎に検出された変化箇所の変化量を算出する。変化量算出部103は、複数の波長のそれぞれについて、変化箇所における光パワーの変化量を算出してよい。変化量算出部103は、算出した変化量を異常曲げ判断部104に出力する。なお、変化量算出部103は、光時間領域反射測定器の中に設けられてもよい。
【0037】
異常曲げ判断部104は、光パワー測定部101で繰り返し測定される毎に検出された変化箇所の変化量に基づいて、変化量算出部103で算出された光パワーが急激に減少している変化箇所の変化量の変動が所定値以上である変化箇所に異常が発生していると判断する。異常曲げ判断部104は、変化量算出部103で算出された光パワーが急激に減少している変化箇所の変化量を記録してよい。
【0038】
異常曲げ判断部104は、変化量算出部103で算出された光パワーが急激に減少している変化箇所の変化量の最大値と最小値との差が一定値以上である変化箇所に異常曲げが発生していると判断してよい。異常曲げ判断部104は、変化量算出部103で算出された光パワーが急激に減少している変化箇所の変化量の変動が一定値以上である判断した時点で、直ちに異常曲げが発生していると判断してよい。異常曲げ判断部104は、変化箇所の複数の波長毎の変化量のうち、1つでも変化量の変動が所定値以上であると判断した場合は、変化箇所は異常曲げが発生していると判断してよい。異常曲げ判断部104は、検出された複数の変化箇所のうち、変化量の変動が所定値以上である変化箇所に異常曲げが発生していると判断してよい。なお、異常曲げ判断部104は、光時間領域反射測定器の中に設けられてもよい。
【0039】
上記実施の形態では、後方散乱光の光パワーが急激に減少する変化箇所を検出して、変化箇所における変化量の変動を見ることで、異常曲げが発生している箇所を判断するようにしたが、単に後方散乱光の光パワーを繰り返し測定していき、光パワーの変動量が所定値以上となる箇所に異常曲げが発生していると判断してよい。つまり、異常曲げ判断部104は、光パワー測定部101が所定期間以上の間に繰り返し測定した複数の位置毎の光パワーの変動量に基づいて、光パワーの変動量が所定値以上である箇所に異常曲げが発生していると判断してよい。
【0040】
この場合、ある光ファイバ芯線の箇所に異常曲げが発生していなくても、その箇所より入射端に近い箇所に異常曲げが発生していると、異常曲げが発生している箇所の光パワーの変動に影響を受けて、異常曲げが発生していない箇所にも光パワーの変動が生じてしまうので、これを考慮して異常曲げが発生している箇所を特定してもよい。測定されたある位置の光パワーの変動量が、この位置の前後にある測定された位置の光パワーの変動量と同じである場合は、この位置には異常曲げが発生していないと判断してもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、後方散乱光の光パワーが急激に減少する変化箇所を検出して、変化箇所における変化量の変動を見ることで、異常曲げが発生している光ファイバ芯線における箇所を判断するようにしたが、光ファイバ芯線を通過した光が光ファイバ芯線から出射する出射端からの出射光の光パワーの変動量が所定値以上である場合は、異常曲げが発生している光ファイバ芯線と判断してよい。つまり、異常曲げ判断部104は、光パワー測定部101が所定期間以上の間に繰り返し測定した出射端からの出射光の光パワーの変動量が所定値以上である場合に、光ファイバ芯線に異常曲げが発生していると判断してよい。
【0042】
光ファイバ芯線の出射端からの出射光の光パワーを検出することで、光ファイバ芯線の全体の光損失を見ることができる。つまり、光ファイバ芯線全体の光損失の変動が所定値以上の場合は、光ファイバ芯線は異常曲げが発生している光ファイバ芯線と判断できる。この場合、光パワー測定部101は、光時間領域反射測定器に代えて、光を光ファイバ芯線の入射端から入射させ、出射端から出射した出射光の光パワーを測定する機器であってもよい。
【0043】
ここで、図1および図2に示すように、異常曲げが生じていて光パワーが単位距離当りで所定値以上減少している箇所bでは、光パワーの変化量が波長に応じて変わる。特に、長波長と短波長とではその変化量の差が大きい。この特性を利用して、異常曲げが発生している光ファイバ芯線の箇所を特定できる。
【0044】
具体的には、変化箇所における波長対損失特性を求め、波長対損失特性の傾きと損失基準値kとを比較することで、異常曲げが発生している箇所を特定する。波長対損失特性は、複数の波長と、複数の波長における変化箇所の光パワーの変化量との関係を示す。複数の波長は、光パワーが測定された光の波長を示す。損失基準値kは、光パワーの測定に用いられた複数の波長に応じて定まる。波長対損失特性の傾きが損失基準値より大きい変化箇所を、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している箇所を、異常曲げが生じている異常箇所として特定する。
【0045】
図5は、変化箇所における波長対損失特性の一例を示す。変化箇所における波長λの光パワーの変化量をS11とし、波長λの光パワーの変化量をS12とする。ここで、λ>λとする。波長λと変化量S11とで定められる点と、波長λと変化量S12とで定められる点とが示す波長対損失特性の傾きが、損失基準値kより大きければ、その変化箇所は異常箇所となり、損失基準値k以下であれば変化箇所は予め定められた光損失以下の光損失が発生している正常箇所となる。つまり、(S12−S11)/(λ−λ)>kである変化箇所が異常箇所となる。この場合の損失基準値kは、波長λおよび波長λに応じて定められる。
【0046】
なお、3つ以上の波長と、3つ以上の波長のそれぞれにおける変化箇所の変化量とに基づいて、波長対損失特性を算出する場合、最小二乗法を用いて波長対損失特性を算出してよい。そして、算出した波長対損失特性の傾きが損失基準値より大きければ、その変化箇所を異常箇所として特定する。
【0047】
ここで、光ファイバ芯線の入射端から入射した光が後方散乱光として入射端に戻ってくる時間に応じて、後方散乱光がどの距離からの後方散乱光であるかを算出できる。しかし、同じ距離からの後方散乱光であっても、波長に応じて光ファイバ芯線の屈折率が異なるので、入射端に戻ってくる時間が異なる。これにより、測定した後方散乱光がどの距離から戻ってきた後方散乱光であるかを正確に特定できない。例えば、シングルモード光ファイバ(SMF)の場合、同じ屈折率で、波長1550nmと波長1625nmとで後方散乱光が発生した位置までの距離を求めた場合、10kmの伝送距離において3m程度の誤差が生じてしまう。また、光ファイバ芯線の種類によっても算出される距離に誤差がでてしまう。
【0048】
このようなことから、波長間における距離の誤差を低減させる必要がある。以下、波長間の誤差が生じないように距離を測定する方法について述べる。第1の方法としては、測定する後方散乱光の波長に対応する屈折率と、測定するそれぞれの位置からの後方散乱光の戻り時間とに基づいて、後方散乱光が発生したそれぞれの位置までの距離を算出する。
【0049】
第2の方法としては、予め定められた屈折率を用いて複数の波長の後方散乱光が発生した位置までの距離を求め、求めた距離を補正する。予め定められた屈折率は、複数の波長のうちいずれか一つの波長に対応する屈折率であってよい。予め定められた屈折率で複数の波長毎のそれぞれの位置からの後方散乱光の戻り時間から、複数の波長のそれぞれについての後方散乱光が発生した位置までの距離を算出する。そして、算出された距離を、後方散乱光の波長の波長分散値または群遅延を用いて補正する。
【0050】
具体的には、後方散乱光が発生した位置までの距離を、後方散乱光の波長の波長分散値または群遅延と、距離を算出するために用いた屈折率に対応する波長の波長分散値または群遅延とを用いて補正する。例えば、予め定められた屈折率として用いられた屈折率が波長Bの屈折率であり、波長Aの後方散乱光が発生した位置までの距離を補正する場合、波長Bの分散値または群遅延と、波長Aの波長分散値または群遅延とを用いて、波長Aの後方散乱光が発生した位置までの距離を補正する。なお、予め定められた屈折率として複数の波長のいずれか1つの波長に対応する屈折率で複数の波長の後方散乱光が発生した位置までの距離を求めた場合は、その屈折率に対応する波長の後方散乱光が発生した位置までの距離は補正しない。この複数の波長に対応する波長分散値または群遅延は、予め記録しておいてもよく、測定してもよい。
【0051】
具体的には、補正後の距離をL´とすると、L´=L/(1+ΔGD×c/n)という関係式で距離Lを補正できる。cは光速、nは屈折率、Lは測定された距離を示す。波長分散値を用いてΔGDを表すと、ΔGD=(CD(λ)−CD(λ))×Δλ/2となり、群遅延を用いて表すと、ΔGD=GD(λ)−GD(λ)となる。CD(λ)は、波長λにおける波長分散値を表しており、GD(λ)は、波長λにおける群遅延を表している。Δλは、Δλ=λ−λで表される。
【0052】
図6は、他の実施の形態の測定装置200の一例を示す。図4に示した測定装置100によれば、異常曲げによる曲げが発生した光ファイバ芯線および光ファイバ芯線の箇所を特定できる。しかしながら、少なくとも1日以上の時間を要してしまい、異常曲げが発生している光ファイバ芯線の箇所を短時間で特定できない。一方で、図6に示した測定装置200によれば、後述のように、短時間で簡便に異常曲げが発生している光ファイバ芯線の箇所を特定できる。
【0053】
測定装置200は、光パワー測定部201、距離算出部202、距離補正部203、変化箇所検出部204、変化量算出部205、特性算出部206、および異常箇所特定部207を備える。なお、光パワー測定部101、変化箇所検出部204、および変化量算出部205は、以下に説明する部分を除き、図4において説明した光パワー測定部101、変化箇所検出部102、および変化量算出部103と同一の機能を有する。
【0054】
光パワー測定部201は、複数の位置からの後方散乱光の光パワーを測定し、変化箇所検出部204、変化量算出部205、およびを特性算出部206に出力する。
【0055】
距離算出部202は、光ファイバ芯線の入射端から入射して後方散乱光として入射端に戻ってくる時間に基づいて、複数の波長のそれぞれについての後方散乱光が、どの距離からの後方散乱光であるかを算出する。距離算出部202は、予め定められた屈折率を用いて、複数の波長のそれぞれの位置からの後方散乱光が、どの距離からの後方散乱光であるかを算出する。予め定められた屈折率は、複数の波長のうち、いずれか1つの波長に対応する屈折率であってよい。距離算出部202は、複数の波長のそれぞれの後方散乱光が発生した位置までの距離を距離補正部203に出力する。
【0056】
距離補正部203は、複数の波長の少なくとも1つの波長の波長分散値または群遅延を用いて、複数の波長の少なくとも1つの波長の後方散乱光が発生した位置までの距離を補正する。距離補正部203は、予め定められた屈折率に対応する波長とは異なる波長の後方散乱光が発生した位置までの距離を補正する。また、距離補正部203は、予め定められた屈折率に対応する波長とは異なる波長の後方散乱光が発生した位置までの距離を、予め定められた屈折率に対応する波長の波長分散値または群遅延と、予め定められた屈折率に対応する波長とは異なる波長の波長分散値または群遅延とを用いて補正する。距離補正部203は、波長毎の後方散乱光が発生した位置までの距離を補正し、補正した距離を変化箇所検出部204、変化量算出部205、および特性算出部206に出力する。
【0057】
これにより、変化箇所検出部204、変化量算出部205、および特性算出部206において、測定されたそれぞれの後方散乱光が、どの位置からの後方散乱光であるかを精度よく特定できる。なお、距離算出部202が、測定する後方散乱光の波長に応じた屈折率を用いて、後方散乱光が発生した位置までの距離を算出してもよい。この場合、測定装置200は、距離補正部203を有しなくてよい。また、距離補正部203は、複数の波長のそれぞれの波長分散値または群遅延を記録したメモリを有してよい。また、距離補正部203は、測定された複数の波長のそれぞれの波長分散値または群遅延を外部から取得してもよい。
【0058】
変化箇所検出部204は、光パワー測定部201が測定した複数の波長のそれぞれについての複数の位置からの後方散乱光の光パワーが単位距離当りで所定値以上減少する変化箇所を検出する。変化箇所検出部204は、検出した変化箇所を変化量算出部205に出力する。
【0059】
変化量算出部205は、変化箇所検出部204が検出した変化箇所における複数の波長のそれぞれについての光パワーの変化量を算出する。変化量算出部205は、算出した変化量を特性算出部206に出力する。なお、変化量算出部205は、光時間領域反射測定器の中に設けられてもよい。
【0060】
特性算出部206は、光パワー測定部201が測定した複数の波長のそれぞれについての光パワーと、複数の波長とを用いて、光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する。具体的には、特性算出部206は、複数の波長と、複数の波長のそれぞれにおける変化箇所の変化量とに基づいて、変化箇所の波長対損失特性を算出する。特性算出部206は、変化箇所が複数ある場合は、それぞれの変化箇所における波長対損失特性を算出する。
【0061】
特性算出部206は、2つの波長と、2つの波長のそれぞれにおける変化箇所の変化量とに基づいて、変化箇所の波長対損失特性の傾きを算出する場合は、(S12−S11)/(λ−λ)、の関係式によって算出してよい。λ>λとする。また、S11は波長λの光パワーの変化箇所での変化量を示し、S12は波長λの光パワーの変化箇所での変化量を示す。特性算出部206は、3以上の波長と、3以上の波長のそれぞれについての変化箇所の変化量とに基づいて、最小二乗法を用いて、波長対損失特性を求めてよい。
【0062】
異常箇所特定部207は、波長対損失特性の傾きと、複数の波長に応じて定められる損失基準値kとを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する。異常箇所特定部207は、変化箇所における波長対損失特性の傾きと損失基準値kとを比較し、波長対損失特性の傾きが損失基準値kより大きい場合、その変化箇所を異常箇所として特定する。なお、波長対損失特性の傾きが損失基準値kより大きくない変化箇所は正常箇所となる。また、光ファイバ芯線の種類によって曲げ耐性が異なるので、異常箇所特定部207は、複数の波長および光ファイバ芯線の種類に応じて定められる損失基準値に基づいて、異常箇所を特定してもよい。
【0063】
このように、波長対損失特性と損失基準値kとを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定するので、短時間に異常曲げが発生している光ファイバ芯線の中で異常箇所を特定できる。また、異常曲げが生じている異常箇所を特定できるので、異常箇所をのみを工事することで、異常曲げを無くすことができる。
【0064】
なお、以下のような方法によって異常箇所を特定してもよい。特性算出部206は、光パワー測定部201が測定した複数の波長のそれぞれのついての光パワーと、複数の波長とを用いて、光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する。特性算出部206は、複数の位置からの複数の波長のそれぞれについての光パワーと、複数の波長とを用いて、それぞれの位置における波長対損失特性を算出する。さらに、特性算出部206は、それぞれの位置における波長対損失特性の傾きを算出してもよい。
【0065】
特性算出部206は、2つの波長と、2つの波長のそれぞれにおける距離における光パワーとに基づいて、それぞれの位置における波長対損失特性の傾きを算出する場合は、|P−P|/(λ−λ)、の関係式によって算出してよい。λ>λとする。また、Pは波長λの光パワーを示し、Pは波長λの光パワーを示す。特性算出部206は、3つ以上の波長と、3つ以上の波長のそれぞれについての光パワーとに基づいて、最小二乗法を用いて波長対損失特性を求めてよい。特性算出部206は、算出したそれぞれの距離における波長対損失特性の傾きを変化箇所検出部204に出力する。
【0066】
変化箇所検出部204は、複数の位置における波長対損失特性の傾きが、単位距離当りで所定値以上変化する変化箇所を検出する。つまり、波長対損失特性の傾きが急激に変化している変化箇所を検出する。変化箇所検出部204は、検出した変化箇所を変化量算出部205に出力する。変化量算出部205は、変化箇所検出部204が検出した変化箇所における傾きの変化量を算出する。変化量算出部205は、複数の変化箇所が検出された場合は、複数の変化箇所のそれぞれに波長対損失特性の傾きの変化量を算出してよい。変化量算出部205は、算出した変化箇所の変化量を異常箇所特定部207に出力する。
【0067】
異常箇所特定部207は、変化箇所の波長対損失特性の傾きの変化量と損失基準値kとを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する。異常箇所特定部207は、変化箇所の傾きの変化量が損失基準値kより大きい場合、変化箇所を異常箇所として特定する。変化箇所が複数ある場合、異常箇所特定部207は、傾きの変化量が損失基準値より大きい変化箇所を異常箇所として特定する。
【0068】
図7は、図1および図2に示した測定結果について、光ファイバ芯線における位置と、波長対損失特性の傾きと関係を求めた結果を示す。図7において、縦軸が波長対損失特性の傾きを示し、横軸が距離を示す。箇所bは、波長対損失特性の傾きが急激に変化している、つまり、単位距離当りで所定値以上変化している変化箇所である。箇所bの変化量S3が損失基準値kより大きく変化している場合は、変化箇所bを異常箇所として特定する。これにより、光パワーが急激に減少する変化箇所が、ある波長では検出できたが、他の波長では検出できないといった場合でも異常箇所を正確に特定できる。
【0069】
上述のとおり、異常曲げの発生による光損失は、主にクロージャー部の中で発生する。そこで、異常箇所の位置を特定することで、どのクロージャー部において異常曲げが発生しているかを特定することができる。光ファイバ芯線が1本だけであれば、大きな異常曲げが発生しているクロージャー部から順番に修繕を開始してもよい。しかし、通常、クロージャー部は複数の光ファイバ芯線の光接続部を収容しており、優先順位を決めずにクロージャー部を修繕することは効率的でない。そこで、複数のクロージャー部のうち、いずれのクロージャー部における光ファイバ芯線の異常から優先的に修繕するかを決定することが望まれる。
【0070】
図8は、光ファイバネットワーク800の一例を示す。光ファイバネットワーク800を例として、修繕計画の立案方法について説明する。光ファイバネットワーク800は、多心光ファイバケーブル810、多心光ファイバケーブル830、多心光ファイバケーブル850および多心光ファイバケーブル870と、クロージャー部890、クロージャー部892、クロージャー部894、クロージャー部896、クロージャー部898とを備える。
【0071】
本実施形態において、多心光ファイバケーブル810は4心光ファイバケーブルであり、光ファイバ芯線812、光ファイバ芯線814、光ファイバ芯線816および光ファイバ芯線818を有する。多心光ファイバケーブル810の種類は、特に限定されるものではない。多心光ファイバケーブル810は、複数の光ファイバ芯線を樹脂で覆ったテープ芯線であってもよく、複数の光ファイバ芯線または複数のテープ芯線をシースで覆った光ケーブルであってもよい。光ファイバ芯線812、光ファイバ芯線814、光ファイバ芯線816および光ファイバ芯線818は、それぞれ、光接続部822、光接続部824、光接続部826および光接続部828を有する。
【0072】
同様に、多心光ファイバケーブル830は、光ファイバ芯線832、光ファイバ芯線834、光ファイバ芯線836および光ファイバ芯線838と、光接続部842、光接続部844、光接続部846および光接続部848とを有する。多心光ファイバケーブル850は、光ファイバ芯線852、光ファイバ芯線854、光ファイバ芯線856および光ファイバ芯線858と、光接続部862、光接続部864、光接続部866および光接続部868とを有する。多心光ファイバケーブル870は、光ファイバ芯線872、光ファイバ芯線874、光ファイバ芯線876および光ファイバ芯線878と、光接続部882、光接続部884、光接続部886および光接続部888とを有する。
【0073】
クロージャー部890は、多心光ファイバケーブル810、多心光ファイバケーブル830、多心光ファイバケーブル850および多心光ファイバケーブル870の光接続部を収容する。クロージャー部890は、各多心光ファイバケーブルの余長を収容してよい。クロージャー部892、クロージャー部894、クロージャー部896およびクロージャー部898も、クロージャー部890と同様の構成を有する。
【0074】
図9は、測定装置900の一例を示す。測定装置900は、修繕順序決定部910を備える以外は、測定装置200と同様の構成を有してよい。そこで、測定装置900については、測定装置200との相違点を中心に説明し、重複する説明については省略する場合がある。
【0075】
本実施形態において、光パワー測定部201は、複数の光ファイバ芯線のうち、2以上の光ファイバ芯線について、後方散乱光の光パワーを測定してよい。このとき、光パワー測定部201は、2以上の光ファイバ芯線のそれぞれの入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、それぞれの入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、それぞれの入射端で測定する。
【0076】
ここで、現実の使用に供されている光ファイバ芯線(現用回線と称する場合がある。)については、後方散乱光の光パワーを測定することはできない。そこで、多心光ファイバケーブル810、多心光ファイバケーブル830、多心光ファイバケーブル850および多心光ファイバケーブル870に含まれる光ファイバ芯線の中から、現実の使用に供されていない光ファイバ芯線を選択して、選択した光ファイバ芯線について後方散乱光の光パワーを測定してよい。
【0077】
一例として、多心光ファイバケーブルのそれぞれについて、現実の使用に供されていない光ファイバ芯線を1本ずつ選択してもよい。この場合、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線と同一の多心光ファイバケーブルに含まれる光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きは、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きに基づいて算出してよい。
【0078】
例えば、波長対損失特性の傾きは光ファイバ芯線の種類によって異なる。そこで、光ファイバ芯線の種類が異なる場合における、波長対損失特性の傾きの換算係数を予め求めておき、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線の種類および波長対損失特性の傾きと、当該換算係数とを用いて、後方散乱光の光パワーを測定していない光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きを算出してよい。これにより、光ファイバ芯線が現実の使用に供されており、後方散乱光の光パワーを測定することができない場合であっても、当該光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きを算出することができる。
【0079】
本実施形態において、特性算出部206は、上記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、波長対損失特性を算出してよい。また、異常箇所特定部207は、上記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、異常箇所を特定してよい。
【0080】
なお、本実施形態において、光パワー測定部201により後方散乱光の光パワーを測定した2以上の光ファイバ芯線が、それぞれ、異なる多心光ファイバケーブルを構成する場合について説明した。しかし、光パワー測定部201による後方散乱光の光パワーの測定方法はこれに限定されない。
【0081】
光パワー測定部201は、多心光ファイバケーブルのそれぞれについて、当該多心光ファイバケーブルに含まれる光ファイバ芯線の中から、現実の使用に供されていない光ファイバ芯線を複数選択して、選択した光ファイバ芯線について後方散乱光の光パワーを測定してもよい。この場合、同一の多心光ファイバケーブルに含まれる光ファイバ芯線のうち、実際に光パワーを測定した複数の光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きに基づいて、光パワーを測定していない光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きを算出してよい。例えば、実際に光パワーを測定した複数の光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きの統計値を用いて、光パワーを測定していない光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きを算出することができる。
【0082】
修繕順序決定部910は、異常箇所における波長対損失特性の傾きに基づいて、複数のクロージャー部のうち、いずれのクロージャー部における光ファイバ芯線の異常から修復作業を開始するかを決定する。本実施形態において、修繕順序決定部910は、異常箇所特定部207から、光パワーを測定した光ファイバ芯線に関する情報と、当該光ファイバ芯線のそれぞれについて、各異常箇所における波長対損失特性の傾きおよび各異常箇所の位置に関する情報とを受け取る。
【0083】
修繕順序決定部910は、クロージャー部890、クロージャー部892、クロージャー部894、クロージャー部896およびクロージャー部898のそれぞれについて、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの和を算出してよい。修繕順序決定部910は、光パワー測定部201により後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線の異常箇所における波長対損失特性の傾きを加算して、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの和を算出してもよい。各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの和は、例えば、以下の手順により算出できる。
【0084】
修繕順序決定部910は、まず、光パワーを測定した光ファイバ芯線に関する情報と、各クロージャー部が収容する光ファイバ芯線の情報と、各異常箇所の位置に関する情報とに基づいて、各異常箇所と各クロージャー部とを対応づける。これにより、各異常箇所における波長対損失特性の傾きがどのクロージャー部における波長対損失特性の傾きであるかを判断することができる。次に、修繕順序決定部910は、複数のクロージャー部のそれぞれについて、各クロージャー部に含まれる各異常箇所おける波長対損失特性の傾きを加算して、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの和を算出する。
【0085】
修繕順序決定部910による波長対損失特性の傾きの和の算出方法の他の例としては、以下を例示できる。修繕順序決定部910は、まず、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線のそれぞれについて、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きを算出する。次に、後方散乱光の光パワーを測定していない光ファイバ芯線の各クロージャー部における波長対損失特性の傾きを、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線の当該クロージャー部における波長対損失特性の傾きに基づいて算出する。その後、クロージャー部ごとに、全ての光ファイバ芯線の各クロージャー部における波長対損失特性の傾きを加算して、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの和を算出する。
【0086】
修繕順序決定部910は、波長対損失特性の傾きの和を算出するときに、光ファイバ芯線ごとに重み付けされた波長対損失特性の傾きの値を用いて、波長対損失特性の傾きの和を算出してよい。修繕順序決定部910は、それぞれの光ファイバ芯線の重要度、冗長度、伝送容量および種類に基づいて、当該光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きを重み付けしてよい。重み付けは、それぞれの光ファイバ芯線の重要度、冗長度、伝送容量および種類に基づいて重み付け係数を算出して、波長対損失特性の傾きに重み付け係数を加算または乗算することで実施してよい。
【0087】
光ファイバ芯線の重要度は、当該光ファイバ芯線の使用目的、当該光ファイバ芯線が利用できなくなった場合に生じる損害の程度、または、同一の多心光ファイバケーブルに現用回線が含まれるか否かに基づいて算出してよい。例えば、使用目的等を数値に換算することで、重要度を算出できる。
【0088】
光ファイバ芯線の使用目的としては、光ファイバ芯線が伝送するコンテンツの内容、パックアップ回線か通常回線か等を例示できる。例えば、リアルタイム映像を伝送する目的で使用されている光ファイバ芯線は重要度が高いので、重み付け係数の値を大きくすることが考えられる。通常回線はバックアップ回線と比較して重要度が高いので、通常回線の重み付け係数をバックアップ回線の重み付け係数と比較して大きくしてよい。
【0089】
光ファイバ芯線が利用できなくなった場合に生じる損害の程度の例としては、損害の規模、損害額の大小または復旧までに要する時間を例示できる。例えば、ある光ファイバ芯線についてバックアップ回線に障害が生じている場合には、当該光ファイバ芯線の重み付け係数を大きくしてよい。これにより、当該光ファイバ芯線の異常箇所を優先的に修繕することができる。
【0090】
同一の多心光ファイバケーブルに含まれる光ファイバ芯線には、同程度の曲げが生じる場合が多い。そこで、光パワーを測定した光ファイバ芯線と同一の多心光ファイバケーブルに他の現用回線が含まれる場合には、光パワーを測定した光ファイバ芯線の重み付け係数を大きくしてよい。これにより、当該現用回線の異常箇所を優先的に修繕することができる。また、多心光ファイバケーブルがテープ芯線を収容している場合には、テープ芯線単位で取り扱われたり、テープ芯線単位で曲げが発生したりする場合が多い。そこで、光パワーを測定した光ファイバ芯線と同一のテープ芯線に他の現用回線が含まれる場合に、光パワーを測定した光ファイバ芯線の重み付け係数を大きくしてよい。これにより、当該現用回線の異常箇所を優先的に修繕することができる。
【0091】
光ファイバ芯線の冗長度は、当該光ファイバ芯線が利用できなくなった場合のバックアップ回線の数、復旧することができる伝送容量、回線の復旧方法または回線の復旧に要する時間に基づいて算出してよい。例えば、バックアップ回線の数等を数値に換算することで、冗長度を算出できる。伝送装置を用いて現用回線とパックアップ回線とを瞬時に切り替える復旧方法を採用している場合と、復旧ルートを探索した後、現用回線とパックアップ回線とを切り替える復旧方法を採用している場合とでは、復旧に要する時間が異なる。そこで、回線の復旧方法または回線の復旧に要する時間に応じて、冗長度の重み付け係数を決定してよい。
【0092】
修繕順序決定部910は、それぞれのクロージャー部における使用されている光ファイバ芯線の数に基づいて、当該クロージャー部に収容している光ファイバ芯線の、当該クロージャー部における波長対損失特性の傾きを重み付けしてよい。例えば、重要度の高い光ファイバ芯線のバックアップ回線のように、重要度は高くても、現在、使用されていない光ファイバ芯線も存在する。しかし、上記構成を採用することで、修繕の優先順位が低い光ファイバ芯線により、修繕順序決定部910の判断の精度が低下することを防ぐことができる。
【0093】
修繕順序決定部910は、各異常箇所における波長対損失特性の傾きの値に基づいて、当該波長対損失特性の傾きを重み付けしてよい。一例としては、波長対損失特性の傾きが一定値以上であれば、当該波長対損失特性の傾きに重みを付けて、波長対損失特性の傾きの和を算出してよい。
【0094】
修繕順序決定部910は、各光ファイバ芯線または各クロージャー部の過去の履歴に基づいて、当該波長対損失特性の傾きを重み付けしてよい。例えば、過去の履歴を数値に換算することで、重要度を算出できる。一例としては、各光ファイバ芯線または各クロージャー部における異常曲げの発生頻度、または、過去の修繕内容が恒久的な処置であるか若しくは応急処置であるかに基づいて、当該波長対損失特性の傾きを重み付けしてよい。
【0095】
修繕順序決定部910は、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線の各クロージャー部における波長対損失特性の傾きを加算して、波長対損失特性の傾きの和を算出する場合には、光パワーを測定した光ファイバ芯線の重み付け係数として、同一の多心光ファイバケーブルに含まれる光ファイバ芯線の重み付け係数のうち、最も大きな重み付け係数を用いてもよい。多心光ファイバケーブルがテープ芯線を収容している場合には、光パワーを測定した光ファイバ芯線の重み付け係数として、同一のテープ芯線に含まれる光ファイバ芯線の重み付け係数のうち、最も大きな重み付け係数を用いてもよい。
【0096】
同一の多心光ファイバケーブルに含まれる光ファイバ芯線には、同程度の曲げが生じる場合が多い。上記の構成を採用することで、後方散乱光の光パワーを測定した光ファイバ芯線自体の重み付け係数が小さい場合であっても、同一の多心光ファイバケーブルに含まれる重み付け係数の大きな光ファイバ芯線を優先的に修繕することができる。
【0097】
修繕順序決定部910は、各クロージャー部毎に算出した波長対損失特性の傾きの和に基づいて、クロージャー部890、クロージャー部892、クロージャー部894、クロージャー部896およびクロージャー部898のうち、どのクロージャー部から順に修繕するかを決定してよい。修繕順序決定部910は、クロージャー部890、クロージャー部892、クロージャー部894、クロージャー部896およびクロージャー部898のうち、波長対損失特性の傾きの和が大きいクロージャー部から順に修繕することを決定してよい。
【0098】
波長対損失特性の傾きの和を用いて修繕順序を決定することで、異常曲げの程度を考慮して修繕順位を決定することができる。これにより、順位付けの精度を向上させることができる。例えば、光ファイバ芯線の種類によっては、大きな異常曲げが発生していても小さな光損失しか測定されない場合がある。このような場合であっても、波長対損失特性の傾きの和を用いて修繕順序を決定することで、異常曲げの程度に応じて修繕順位を決定することができる。
【0099】
図10は、光ファイバネットワーク800の各光ファイバ芯線の、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きの一例を示す。図10を用いて、クロージャー部ごとに各光ファイバ芯線の各異常箇所における波長対損失特性の傾きの和を算出し、波長対損失特性の傾きの和に基づいて、複数のクロージャー部のうち、いずれのクロージャー部における異常から修繕するかを決定する方法について説明する。
【0100】
図10は、光パワー測定部201が、多心光ファイバケーブル810の光ファイバ芯線812、多心光ファイバケーブル830の光ファイバ芯線836、多心光ファイバケーブル850の光ファイバ芯線854、および、多心光ファイバケーブル870の光ファイバ芯線878のそれぞれについて後方散乱光の光パワーを測定した場合における、特性算出部206により算出された波長対損失特性の傾き[dB/nm]を示す。
【0101】
図10の各行は、各光ファイバ芯線の、各クロージャー部における波長対損失特性の傾きを示す。例えば、図10の2行目の記載から、光ファイバ芯線836は、クロージャー部890およびクロージャー部898において異常曲げによる光損失が生じており、波長対損失特性の傾きは、それぞれ、0.044および0.150[dB/nm]であることがわかる。なお、図10には、各光ファイバ芯線の種類を合わせて示す。また、図中のCTFは、光ファイバの局内終局架(Cable Terminating Frame)を示す。
【0102】
図10に示すとおり、クロージャー部ごとに、当該クロージャ部における光ファイバ芯線の波長対損失特性の傾きを加算すると、波長対損失特性の傾きの和が大きい順に、クロージャー部898、クロージャー部890、クロージャー部896、クロージャー部892、クロージャー部894となる。よって、修繕順序決定部910は、この順にクロージャー部を修繕すべきことを決定することができる。修繕順序決定部910は、波長対損失特性の傾きの和が一定値以下であるクロージャー部については、修繕しないことを決定してもよい。
【0103】
なお、本実施形態において、複数の波長と、複数の波長のそれぞれにおける距離における光パワーとに基づいて算出された波長対損失特性の傾き[dB/nm]を用いて、修繕順序を決定する方法について説明した。しかし、修繕順序を決定する方法はこれに限定されない。修繕順序を決定する他の例としては、複数の波長と、複数の波長のそれぞれの変化箇所における変化量とに基づいて算出された波長対損失特性の傾き[dB/nm・m]を用いて、修繕順序を決定してもよい。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
例えば、測定装置100は、コンピュータにプログラムを読み込ませることで実現できる。また、測定装置100および測定装置200は、光パワー測定部101または光パワー測定部201を備えなくてもよい。この場合、外部に設けられた光パワー測定部が測定した光パワーを、測定装置100および測定装置200が備える光パワー取得部が取得する。また、測定装置100は、後方散乱光の波長に応じて屈折率を変えて距離を算出する距離算出部202を備えてもよい。また、測定装置100は、距離算出部202および距離補正部203を備えてもよい。このようにして、測定装置100でも、測定装置200と同様に精度よく距離を測定できる。測定装置200および測定装置900についても同様に、コンピュータにプログラムを読み込ませることで実現してもよい。
【0106】
上記コンピュータは、測定装置100、測定装置200または測定装置900に特化したコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータ等の汎用の情報処理装置であってもよい。例えば、CPU、ROM、RAM、通信インターフェース等を有するデータ処理装置と、入力装置と、出力装置と、記憶装置とを備えた一般的な構成の情報処理装置において、測定装置100、測定装置200または測定装置900の各部の動作を規定したソフトウエアを起動することにより、測定装置100、測定装置200または測定装置900を実現できる。なお、上記特化したシステムおよび上記情報処理装置は、単一のコンピュータにより構成されてもよく、ネットワーク上に分散した複数のコンピュータにより構成されてもよい。
【0107】
以上の記載によれば、本願明細書に以下の事項が記載されていることは明らかである。即ち、本願明細書には、複数の光ファイバ芯線の異常箇所における波長対損失特性の傾きに基づいて、複数の光ファイバ芯線の光接続部を収容する複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定する修繕順序決定装置または修繕順序決定方法が記載されている。また、上記装置を実現するプログラムが記載されている。
【0108】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0109】
100 測定装置、101 光パワー測定部、102 変化箇所検出部、103 変化量算出部、104 異常曲げ判断部、200 測定装置、201 光パワー測定部、202 距離算出部、203 距離補正部、204 変化箇所検出部、205 変化量算出部、206 特性算出部、207 異常箇所特定部、800 光ファイバネットワーク、810 多心光ファイバケーブル、812 光ファイバ芯線、814 光ファイバ芯線、816 光ファイバ芯線、818 光ファイバ芯線、822 光接続部、824 光接続部、826 光接続部、828 光接続部、830 多心光ファイバケーブル、832 光ファイバ芯線、834 光ファイバ芯線、836 光ファイバ芯線、838 光ファイバ芯線、842 光接続部、844 光接続部、846 光接続部、848 光接続部、850 多心光ファイバケーブル、852 光ファイバ芯線、854 光ファイバ芯線、856 光ファイバ芯線、858 光ファイバ芯線、862 光接続部、864 光接続部、866 光接続部、868 光接続部、870 多心光ファイバケーブル、872 光ファイバ芯線、874 光ファイバ芯線、876 光ファイバ芯線、878 光ファイバ芯線、882 光接続部、884 光接続部、886 光接続部、888 光接続部、890 クロージャー部、892 クロージャー部、894 クロージャー部、896 クロージャー部、898 クロージャー部、900 測定装置、910 修繕順序決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ芯線の入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、前記入射端で測定する光パワー測定部と、
前記光パワー測定部が測定した前記複数の波長のそれぞれについての前記光パワーと、前記複数の波長とを用いて、前記光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する特性算出部と、
前記波長対損失特性の傾きと、前記複数の波長に応じて定められる損失基準値とを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する異常箇所特定部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記光パワー測定部が測定した前記光パワーに基づいて、前記光パワーが単位距離当りで所定値以上減少する変化箇所を検出する変化箇所検出部と、
前記複数の波長のそれぞれについて、前記変化箇所における前記光パワーの変化量を算出する変化量算出部と
をさらに備え、
前記特性算出部は、前記複数の波長と、前記複数の波長のそれぞれにおける前記変化量とを用いて前記変化箇所の前記波長対損失特性を算出する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記複数の位置における波長対損失特性の傾きが、単位距離当りで所定値以上値が変化する変化箇所を検出する変化箇所検出部と、
前記変化箇所における前記波長対損失特性の傾きの変化量を算出する変化量算出部と
を更に備え、
前記異常箇所特定部は、前記変化量と前記損失基準値と比較することで、異常箇所を特定する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記特性算出部は、3以上の波長と前記3以上の波長のそれぞれについての前記光パワーとに基づいて、最小二乗法を用いて、前記波長対損失特性を算出する、
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記異常箇所特定部は、前記複数の波長および前記光ファイバ芯線の種類に応じて定められる前記損失基準値を用いて、前記異常箇所を特定する、
請求項1から4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記複数の波長にそれぞれ対応する屈折率と、前記入射端から入射した光が後方散乱光として前記入射端に戻ってくる時間と基づいて、前記複数の波長のそれぞれについての前記後方散乱光が、どの距離からの後方散乱光であるかを算出する距離算出部をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載の測定装置。
【請求項7】
前記入射端から入射した光が後方散乱光として前記入射端に戻ってくる時間に基づいて、前記複数の波長のそれぞれについての後方散乱光が、どの距離からの後方散乱光であるかを算出する距離算出部と、
前記複数の波長の少なくとも1つの波長の波長分散値または群遅延を用いて、前記複数の波長の少なくとも一つの波長の前記後方散乱光の前記距離を補正する距離補正部と、
をさらに備える
請求項1から5のいずれかに記載の測定装置。
【請求項8】
前記異常箇所における前記波長対損失特性の傾きに基づいて、複数の光ファイバ芯線の光接続部を収容する複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定する修繕順序決定部を更に備え、
前記光パワー測定部は、前記複数の光ファイバ芯線のうち、2以上の光ファイバ芯線について、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれの入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記それぞれの入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、前記それぞれの入射端で測定し、
前記特性算出部は、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、前記波長対損失特性を算出し、
前記異常箇所特定部は、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、前記異常箇所を特定する、
請求項1から7のいずれかに記載の測定装置。
【請求項9】
前記修繕順序決定部は、
前記複数の収容部のそれぞれが収容する光ファイバ芯線の重要度、冗長度、伝送容量、種類、および、それぞれの収容部における使用されている光ファイバ芯線の数、ならびに、前記複数の収容部のそれぞれに含まれる前記異常箇所における前記波長対損失特性の傾きの値からなる群から選ばれる少なくとも1つによって重み付けされた前記異常箇所における前記波長対損失特性の傾きに基づいて、前記複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定する、
請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記修繕順序決定部は、
前記複数の収容部のそれぞれについて、前記2以上の光ファイバ芯線の前記異常箇所における前記波長対損失特性の傾きの和を算出し、
前記波長対損失特性の傾きの和が大きい順に修繕することを決定する、
請求項8または9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記2以上の光ファイバ芯線は、それぞれ、異なる多心光ファイバケーブルを構成する、
請求項8から10のいずれかに記載の測定装置。
【請求項12】
光ファイバ芯線の入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、前記入射端で測定する光パワー測定段階と、
前記光パワー測定段階が測定した前記複数の波長のそれぞれについての前記光パワーと、前記複数の波長とを用いて、前記光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する特性算出段階と、
前記波長対損失特性の傾きと、前記複数の波長に応じて定められる損失基準値とを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する異常箇所特定段階と、
を備える測定方法。
【請求項13】
前記異常箇所における前記波長対損失特性の傾きに基づいて、複数の光ファイバ芯線の光接続部を収容する複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定する修繕順序決定段階を更に備え、
前記光パワー測定段階は、前記複数の光ファイバ芯線のうち、2以上の光ファイバ芯線について、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれの入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記それぞれの入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを、前記それぞれの入射端で測定する段階を有し、
前記特性算出段階は、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、前記波長対損失特性を算出する段階を有し、
前記異常箇所特定段階は、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、前記異常箇所を特定する段階を有する、
請求項12に記載の測定方法。
【請求項14】
コンピュータを、
光ファイバ芯線の入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記入射端で測定された前記入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを取得する光パワー取得部、
前記光パワー取得部が測定した前記複数の波長のそれぞれについての前記光パワーと、前記複数の波長とを用いて、前記光ファイバ芯線の波長対損失特性を算出する特性算出部、
前記波長対損失特性の傾きと、前記複数の波長に応じて定められる損失基準値とを比較することで、予め定められた光損失より大きい光損失が発生している異常箇所を特定する異常箇所特定部、
として機能させるプログラム。
【請求項15】
コンピュータを、
前記異常箇所における前記波長対損失特性の傾きに基づいて、複数の光ファイバ芯線の光接続部を収容する複数の収容部のうち、いずれの収容部における異常から修繕するかを決定する修繕順序決定部として更に機能させ、
前記光パワー取得部を、前記複数の光ファイバ芯線のうち、2以上の光ファイバ芯線について、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれの入射端から入射された光に含まれる複数の波長のそれぞれについて、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれの入射端で測定された、前記それぞれの入射端からの距離が異なる複数の位置からの後方散乱光の光パワーを取得するよう機能させ、
前記特性算出部を、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、前記波長対損失特性を算出するよう機能させ、
前記異常箇所特定部を、前記2以上の光ファイバ芯線のそれぞれについて、前記異常箇所を特定するよう機能させる、
請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
光ファイバ芯線の入射端から入射された光の後方散乱光の光パワーを、前記入射端からの距離が異なる複数の位置毎に前記入射端で測定する光パワー測定部と、光パワー測定部と、
前記光パワー測定部が所定期間以上の間に前記複数の位置毎に繰り返し測定した前記光パワーの変動量が所定値以上である箇所に異常曲げが発生していると判断する異常曲げ判断部と、
を備える測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−47914(P2011−47914A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265513(P2009−265513)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(307022424)ソフトバンクテレコム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】