説明

測定装置及び測定方法

【課題】圧延板材の板幅を高い精度で測定できる測定装置の提供。
【解決手段】熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材101の板幅を測定するための測定装置1である。支持板の下方にあって進行経路と垂直に延びるように敷設された単一のスライドレール3に、進行経路を挟んだ両側に位置する一対の測定部材40が填合している。測定部材の両側にはこれを移動せしめる第1及び第2サーボモータ手段50が位置する。この各回転は制御出段によって制御される一方、回転トルクに対応する各電流値を検出する。ここで、制御手段60は、サーボモータ手段を駆動させて一対の測定部材を近接移動せしめ、圧延板材の一方の側端部に当接して変化する電流値に基づいて、対応するサーボモータ手段の回転を停止させ側端部のスライドレールに対する相対位置を決定する。2つのサーボモータ手段による相対位置から板幅を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延鋼板などの圧延板材の板幅の測定装置及び測定方法に関し、特に、熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延工程において、成形加工された圧延板材の板幅は大型のノギスを用いた手作業で測定し得る。一方、かかる測定を自動化して省力化することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、圧延加工の途中にあって固定的に位置決めされた圧延板材について、その両側部にエアシリンダにより移動する測定子を押し当てて板幅を機械的に測定する測定装置及び方法を開示している。詳細には、圧延板材の進行経路を跨ぐようにして門型の装置本体を設置し、装置本体の両先端部にエアシリンダにより該進行経路に向けた同軸上で移動可能な一対の対向する測定子が設けられている。かかる装置では、まず、測定子を当接するまで互いに近接移動させ、測定基準位置を決定する。その後、両測定子を一旦、離間するように移動させた上で圧延板材を装置本体の両先端部の間に移動させて固定する。続いて、圧延板材の両側部にそれぞれ測定子を順次、押し当てて、測定基準位置からの各測定子の相対的移動量で圧延板材の板幅を測定している。かかる装置及び方法によれば、圧延板材の両側部を1台の測定装置で測定できることから、2台の測定装置で圧延板材のそれぞれの側部を測定する場合と比較して測定誤差の累積を防止でき高い精度で板幅を測定できる、と述べている。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、圧延板材の上方にあって圧延板材の幅方向に移動自在に取り付けられた一対のCCDカメラを含む光学的に板幅を測定する測定装置を開示している。かかる測定装置において、CCDカメラの光学中心軸を圧延板の両側部に位置させるように一対のCCDカメラをそれぞれ移動させ、このCCDカメラ同士の相対距離から圧延板材の板幅を測定している。光学センサー装置であるCCDカメラは直接、圧延板材を撮影して画像解析の如きで寸法を測定するのではなく、圧延板材の両側部を検出するためにのみ使用され、一対のCCDカメラの相対的移動量から圧延板材の板幅を間接的に求めている。これにより圧延板材の外形寸法の大小のいかんにかかわらず、つまり、圧延板材が薄肉であっても厚肉であっても高い精度で板幅を測定できる、と述べている。
【0005】
上記した圧延板材の板幅の機械式及び光学式の測定装置のいずれであっても、更なる測定精度の向上が望まれる。
【0006】
例えば、特許文献3では、コンベアによって水平に搬入されて一時停止させた圧延板材の板幅をより精度良く測定する板幅測定機構を開示している。詳細には、コンベアの一側にその搬送方向と直交する水平レールを設け、ロッド位置検出機能を備えたシリンダをこの水平レールと同軸で水平レールに沿って水平移動自在に配置させる。シリンダの胴部とピストンロッドにはそれぞれ幅測定アームを設け、シリンダを作動させて幅測定アームで圧延板材を両側から挟着させて板幅を測定する。このとき別途構成される厚さ方向に圧延板材を挟着するアームにより上下から圧延板材は固定される。かかる構成により、圧延板材の所要の測定ポイントにて板幅をより高い精度で測定できる、と述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−280543号公報
【特許文献2】特開平7−294219号公報
【特許文献3】特開2003−177001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、熱間圧延工程では圧延板材が高温であるため、例えば、ノギスを用いた測定では熱に対するノギスの校正が必要となる。また、作業の安全性の観点から手作業ではなく自動化による省力化が強く求められる。一方、上記したような光学式の測定装置などによると、高温の圧延板材から放射される赤外線や可視光線などの電磁波による外乱を受け、更に、熱せられた空気や水蒸気による可視光線の屈折などもあって、測定誤差を生じてしまう。また、機械式の測定装置においても、熱による部材の変形などで測定誤差を生じてしまう。
【0009】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を高い精度で測定できる測定装置及び測定方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による測定装置は、熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を測定するための測定装置であって、前記圧延板材の底面を頂平面で支持する支持板と、前記頂平面の下方にあって前記進行経路と垂直に延び且つ前記頂平面と平行に敷設された単一のスライドレールと、前記進行経路を挟んだ両側にそれぞれ位置し互いに対向する当接面を有し前記スライドレールに沿って移動自在に前記スライドレールに填合した一対の測定部材と、一対の前記測定部材のさらに両側にそれぞれ位置するとともに前記測定部材を前記スライドレールに沿ってそれぞれ移動せしめる第1及び第2サーボモータ手段と、前記第1及び第2サーボモータ手段の各回転を制御するとともに各回転トルクに対応する各電流値を検出する制御手段と、を含み、前記制御手段は、前記第1及び第2サーボモータ手段を駆動させて一対の前記測定部材を近接移動せしめ、前記測定部材の前記当接面が前記圧延板材の側端部に当接して変化する前記電流値に基づいて、対応する前記サーボモータ手段の回転を順次停止させ、一対の前記測定部材の前記スライドレールに沿った位置から前記圧延板材の前記側端部の位置を求めて前記板幅を決定することを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、高温である圧延板材の側端部に当接する測定部材、サーボモータ手段、及び、スライドレールが所定に配置されることで熱による影響を受けづらく、しかも測定部材を所定の制御で停止させてから板幅を決定し、熱間圧延ラインに組み込まれて、圧延板材の変形や移動の影響なく、進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を高い精度で測定できるのである。
【0012】
上記した発明において、前記測定部材の前記頂平面と平行な断面において、前記進行経路方向に向けて凸となる曲面を前記当接面に与えられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、測定部材の圧延板材の側端部への当接位置を一定にし得て安定した測定ができるから、熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅をより高い精度で測定できるのである。
【0013】
上記した発明において前記スライドレールは強制水冷されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、スライドレールが熱による影響をより減じられ、熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅をより高い精度で測定できるのである。
【0014】
上記した発明において、前記スライドレールの頂面と前記支持板の前記頂平面との間において前記スライドレールに沿って吹き出し口を有するエアブロワーを設け、前記スライドレールの前記頂面にエアブローを与えることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、スライドレール上に落下したスケール等を除去するエアブロワーで測定部材の移動をスムーズにさせるとともに、スライドレールの圧延材からの輻射熱による加熱を抑制できるから圧延板材の板幅をより高い精度で測定できるのである。
【0015】
さらに、本発明による測定方法は、熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を測定するための測定方法であって、前記圧延板材の底面を頂平面で支持する支持板と、前記頂平面の下方にあって前記進行経路と垂直に延び且つ前記頂平面と平行に敷設された単一のスライドレールと、前記進行経路を挟んだ両側にそれぞれ位置し互いに対向する当接面を有し前記スライドレールに沿って移動自在に前記スライドレールに填合した一対の測定部材と、一対の前記測定部材のさらに両側にそれぞれ位置するとともに前記測定部材を前記スライドレールに沿ってそれぞれ移動せしめる第1及び第2サーボモータ手段と、前記第1及び第2サーボモータ手段の各回転を制御するとともに各回転トルクに対応する各電流値を検出する制御手段と、を含む測定装置において、前記第1及び第2サーボモータ手段を駆動させて一対の前記測定部材を近接移動せしめるステップと、前記測定部材の前記当接面が前記圧延板材の側端部に当接して変化する前記電流値に基づいて、対応する前記サーボモータ手段の回転を順次停止させるモータ停止ステップと、一対の前記測定部材の前記スライドレールに沿った相対位置から前記圧延板材の前記側端部の位置を求めて前記板幅を決定する板幅決定ステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
かかる発明によれば、高温である圧延板材の側端部に当接する測定部材、サーボモータ手段、及び、スライドレールが所定に配置されて熱による影響を受けづらく、しかも測定部材を所定の制御で停止させてから板幅を決定し、熱間圧延ラインに組み込まれて、圧延板材の変形や移動の影響なく、進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を高い精度で測定できるのである。
【0017】
上記した発明において、予め一対の前記測定部材を近接移動せしめて前記当接面同士を当接させて前記スライドレールに対する基準位置を決定するステップを設け、前記板幅決定ステップは前記測定部材の前記基準位置からの前記スライドレールに沿った相対位置を求めて前記板幅を決定することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、基準位置を測定の度に校正できるので、圧延板材の板幅をより高い精度で測定することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による測定装置を含む熱間圧延ラインの上面図である。
【図2】本発明による測定装置の要部の側面図である。
【図3】本発明による測定装置の要部の断面図である。
【図4】本発明による測定装置の要部の斜視図である。
【図5】本発明による測定装置の使用方法を示すフロー図である。
【図6】本発明による測定装置の要部の側面図である。
【図7】本発明による測定装置の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による実施例の1つである測定装置について図1乃至図4を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、測定装置1は、熱間圧延ラインに組み込まれて、移動してくる熱間圧延板101の板幅Hを測定する装置である。この熱間圧延ラインは、熱間圧延板101をガイドレール105の内側において進行経路104に沿って進行させるローラ103と、ローラ103を回転させるローラ用モータ102とを含む。ここで、熱間圧延板101の進行経路104に沿った方向をX方向、これに垂直且つ水平方向をY方向、また、図1の紙面に垂直な方向をZ方向とする。
【0021】
図2を併せて参照すると、測定装置1は、熱間圧延ラインにて製造される熱間圧延板101の底面をその上側主面で支持する支持プレート2と、かかる上側主面より下方(−Z方向)側に設置されたスライドレール3と、進行経路104を挟んで互いに対向するようにスライドレール3に摺動自在に填合された第1測定部材40及び第2測定部材40’とを含む。測定装置1は、さらに第1測定部材40及び第2測定部材40’を移動させるためにこれらにそれぞれ接続される第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’を含み、第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’の動作を制御する制御部60を含む。
【0022】
図3を更に併せて参照すると、スライドレール3は、その長手方向を進行経路104に対し略垂直とし、また、支持プレート2の上側主面に略平行となるようにY方向に延び、略角柱状のスライドレール支持台8の上面に固定されている。スライドレール支持台8は断面略矩形の水冷孔9を有し、これに供給される冷却水によりスライドレール3を強制水冷できる。なお、測定装置1を熱間圧延ラインの高さに合わせて固定するため、支持台8を床面に固定する脚部13が設けられている。
【0023】
図1及び図2を参照すると、スライドレール支持台8のY方向の両端部には第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’が互いに対向して設置される。+Y側に設置される第1サーボ機構50は、スライドレール支持台8のスライドレール3の外側に固定されたサーボ機構支持板54の上に固定されたケース56に、スライダー55を収容させて、これにボールネジ53を螺合し、一方、サーボモータ51がボールネジ53を回転せしめることによりスライダー55をY軸方向に移動させて、第1測定部材40を移動せしめるのである。
【0024】
詳細には、中空の角柱管状であるケース56の内部には、+Y側端部に固定されたサーボモータ51と、サーボモータ51に接続されて−Y方向、つまりケース56の長手方向に延びるボールネジ53とが収容されている。スライダー55は、ボールネジ53を螺合する本体部55aと、本体部55aの−Y側端面からボールネジ53を囲むようにケース56の長手方向に沿って延びる略円筒形状の円筒部55bとを備える。また、円筒部55bの−Y方向の先端は、ケース56の端部より突出しており、コネクタ52を介して第1測定部材40に接続されている。
【0025】
これにより、サーボモータ51を駆動させY方向を回転軸としてボールネジ53を回転させると、ボールネジ53に螺合されたスライダー55がY方向に移動する。ボールネジ53の回転方向によって、スライダー55が−Y側若しくは+Y側に移動し、コネクタ52を介して接続された第1測定部材40も同方向に移動するのである。なお、第2サーボ機構50’による第2測定部材40’の移動についても同様であるので説明を省略する。
【0026】
第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’は、制御部60に電気的に接続されてその動作を制御される。制御部60は内蔵されるプログラムに従って、サーボモータ51、51’の回転角度を制御し、スライドレール3に対するスライダー55、55’の移動距離を制御できる。また、制御部60はサーボモータ51、51’の回転トルクを電流によって検知する電流計を備え、電流値が所定値を超えたとき、つまり、サーボモータ51、51’の回転を止めるような所定値以上の回転(負荷)トルクが生じたときに、回転動作を停止させる。これにより、測定時にサーボモータ51、51’にかかる回転トルクを一定とし、熱間圧延板101への第1測定部材40及び第2測定部材40’からの荷重を一定とし得る。
【0027】
図3を参照すると、第1測定部材40は、正面視で略長方形の断面形状を有する上部42と、上部42の下端中央から下方に連続して延びる略逆T字の断面形状を有する下部43とを有する。一方、スライドレール3は中央に長手方向に沿って延びる溝31を有する。溝31は、スライドレール3の上面32側における開口部の幅を狭く絞るよう突出したスリット状の突出部33を有し、これにより溝31に填合された第1測定部材40の下部43を上方に抜き出せないようにしつつ、上下方向の動きを規制する。よって、第1測定部材40は、前後方向(紙面手前−奥方向)に上面32に沿って摺動自在である。第2測定部材40’も、第1測定部材40と同様の形状を有し、スライドレール3に填合され、スライドレール3の上面32に沿って摺動自在である。つまり、第1サーボ機構50の動作によって第1測定部材40をY方向へ移動させ、第2測定部材40’についても同様に、第2サーボ機構50’の動作によってY方向へ移動させることができる。ここで、第1測定部材40及び第2測定部材40’は、上記したようにスライダー55、55’にコネクタ52、52’を介して接続され、そのスライドレール3に対する移動距離を制御部60により算出可能である。
【0028】
スライドレール3の近傍には、エアブロワー12が設けられ、その吹き出し口であるブロー口10は、スライドレール3の長手方向に沿うように連続して形成され、スライドレール3の上面32に向けて配置されている。エアブロワー12にはエアー配管11が接続され、電磁バルブのような開閉手段によってエアーの吹き出しが操作される。この電磁バルブは図示しない制御盤に接続されて、エアーの吹き出しを制御する。エアブロワー12により、スライドレール3に付着したスケール等を除去し、第1測定部材40及び第2測定部材40’のスムーズな移動を維持し得るが、更に、スライドレール3をエアーにより冷却することもできる。つまり、高温の熱間圧延板101からの輻射熱によるスライドレール103の加熱をエアーにより抑制できる。
【0029】
さらに、図4に示すように、第1測定部材40は、上面視で進行経路104に向けて、すなわち−Y方向へ向けて凸の滑らかな曲面である第1接触面41を有する。第2測定部材40’も同様に、上面視でY方向へ向けて凸の滑らかな曲面である第2接触面41’を有する(図1参照)。この場合、接触面を角形状とした場合に比べ、応力集中による接触面の欠損や摩耗を減ずることができ、測定誤差を小さくし得る。第1測定部材40及び第2測定部材40’は、後述するように、それぞれ第1接触面41及び第2接触面41’を熱間圧延板101の幅方向端部に当接させて板幅Hの測定に使用される。この際に、ノギスでこれを測定する場合と同様に、進行経路104に沿った方向の寸法変化(凹凸)の影響を受けずに曲面である第1接触面41及び第2接触面41’を当接させ、その一方、Z方向の寸法変化に対してはその最大寸法をとるように当接する。つまり、第1接触面41及び第2接触面41’の熱間圧延板101への当接位置を一定にして、ノギスで測定したときと同位置を測定して安定した測定を可能にする。
【0030】
以上、測定装置1によれば、スライドレール3を支持プレート2の上側主面より下方に設置したので、少なくとも高温の熱間圧延板101からの空気の対流による加熱を防止でき、更に、スライドレール3を強制水冷することで熱による変形や熱間圧延板101からの輻射熱などの影響を受けづらく、故に、第1測定部材40及び第2測定部材40’の移動を安定させ、熱による板幅Hの測定誤差をさらに小さくできる。
【0031】
次に、本発明による測定装置1の使用方法について図5に沿って図6及び図7を参照しつつ説明する。
【0032】
まず、第1測定部材40と第2測定部材40’を互いに近接させる方向に移動させ、互いに当接した位置で停止させ、かかる位置を基準位置として記憶する(基準位置測定ステップS1)。詳細には、図6に示すように、制御部60が内蔵されるプログラムに従って第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’の動作を制御し、第1測定部材40及び第2測定部材40’を互いに当接する位置までスライドレール3上を移動させる。すると、第1接触面41及び第2接触面41’が互いに当接し、サーボモータ51及び51’の負荷としての回転トルクを増大させる。かかる回転トルクが所定値を超え、電流値が所定値を超えると制御部60の電流計がこれを検知して、制御部60はサーボモータ51及び51’を停止させる。つまり、第1測定部材40と第2測定部材40’は互いに当接した位置で停止する。制御部60はこの位置を第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’の基準位置である原点Pとして記憶する。
【0033】
次に、図7(a)に示すように、第1測定部材40と第2測定部材40’を互いに離間するように移動させる(離間ステップS2)。このとき、第1接触面41及び第2接触面41’が共にガイドレール105(図1参照)と面一となる位置よりも外側に位置するように移動させると、後述する圧延板移動ステップS3において移動してくる熱間圧延板101に接触することがない。
【0034】
さらに、同図に示すように、ローラ103(図1参照)を回転させて、移動してくる熱間圧延板101をスライドレール3の上を跨ぐ位置まで移動させ、支持プレート2上で支持させる(圧延板移動ステップS3)。特に、熱間圧延板101の板幅Hを測定しようとする位置を第1接触面41及び第2接触面41’の最も突出した部分間に合わせるように位置制御される。
【0035】
続いて、第1測定部材40及び第2測定部材40’を熱間圧延板101の側面に当接するまで移動させる(近接移動ステップS4)。詳細には、制御部60は、内蔵されるプログラムに従って第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’の動作を制御して、第1接触面41及び第2接触面41’が熱間圧延板101の側面に当接する位置まで第1測定部材40及び第2測定部材41’を熱間圧延板101へ向けてスライドレール3上を移動させる。
【0036】
さらに、図7(b)及び(c)に示すように、両測定部材40及び40’を熱間圧延板101の側面に当接するまで移動させつつ、順次その移動を停止させる(モータ停止ステップS5)。詳細には、まず、図7(b)に示すように、第1接触面41が先に熱間圧延板101へ当接したとする。すると、サーボモータ51にかかる回転トルクが上昇し、その結果、かかる回転トルクが所定値を超えると、電流値も所定値を超える。この電流を電流計によって検知した制御部60はサーボモータ51を停止させる。制御部60は第1測定部材40をこの位置で停止させ続けるよう第1サーボ機構50を制御し、一方で、第2測定部材40’の移動を継続させるよう第2サーボ機構50’を制御する。
【0037】
引き続き、図7(c)に示すように、第2測定部材40’を熱間圧延板101の側面に当接させるまで移動させる。すると、第2接触面41’が熱間圧延板101へ当接し、サーボモータ51’の回転トルクが上昇する。この回転トルクが所定値を超え、対応する電流の値が所定値を超えると、この電流を電流計によって検知した制御部60はサーボモータ51’を停止させる。
【0038】
続いて、制御部60は、第1測定部材40の原点Pからの移動距離D1と第2測定部材40’の原点Pからの移動距離D2を算出する(測定ステップS6)。これによって、第1接触面41及び第2接触面41’の原点Pからの相対位置を求めることができる。すなわち、熱間圧延板101の両側端部の位置を求めることができる。
【0039】
最後に、制御部60は、原点Pからの移動距離D1と移動距離D2を加算して熱間圧延板101の板幅Hを算出し、図示しない表示装置等にこれを表示させる(板幅算出ステップS7)。すなわち、スライドレール3に沿った両測定部材の位置から熱間圧延板101の両側端部の位置を求め、これによって板幅Hを決定し、これを表示させるのである。
【0040】
なお、基準位置測定ステップ(S1)は、一度行えば測定の度に行う必要はない。しかしながら、測定の度に行うことで、基準位置、すなわち原点Pの位置の変化を測定の度に校正できるため熱間圧延板101の板幅Hをより高い精度で測定することができる。つまり、装置の各部材の熱膨張や測定部材の摩耗による測定誤差を低減できる。
【0041】
また、測定中は、常に、エアブロワー12によるエアブローをスライドレール3の上面32に対して行うことが好ましい。
【0042】
以上、本実施例によれば、第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’は、熱間圧延板101を挟んで対向する第1測定部材40及び第2測定部材40’よりも、熱間圧延板101から離間した外側に設置されており、高温である熱間圧延板101による輻射熱の影響を受けにくい。また、スライドレール3は、支持プレート2の上側主面より下に位置し、熱間圧延板101からの空気の対流による熱の影響を受けにくい。また、スライドレール3は強制水冷できるから、これによっても熱の影響をより小さくできる。
【0043】
さらに、第1サーボ機構50及び第2サーボ機構50’は、サーボモータ51及び51’に所定値以上の回転トルクがかからないよう、制御部60によって制御し、第1測定部材40及び第2測定部材40’を熱間圧延板101に一定の荷重で当接させて熱間圧延材101を変形させることなく鋏み込むことができる。また、両測定部材40及び40’を近接移動させ、所定の押圧力で順次停止させるので、例えば、進行方向左右に移動しやすい軽量の熱間圧延板であってもその進行経路を移動させることなく鋏み込むことができる。さらに、両測定部材40及び40’を停止させてから幅測定を行うことで、両測定部材の当接する荷重を安定させて測定できる。よって、熱間圧延板101の変形を防止し移動を抑制しつつ、また熱間圧延板101を挟み込む荷重を安定させつつ、板幅Hを測定でき、これによって測定装置1は、高温の熱間圧延板101の板幅Hを、高い精度で測定できる。
【0044】
なお、上記したモータ停止ステップS5において、サーボモータ51及び51’を回転トルク制御によって回転を順次停止させてもよい。例えば、一方の測定部材の当接後に熱間圧延板101が進行方向左右に移動してしまったような場合にあって、一旦停止したサーボモータの回転トルクが下がったとき、再度、所定の回転トルクとなるまで回転させるのである。かかる実施例によれば、熱間圧延板101を挟み込む荷重をより安定させ得るのである。
【0045】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく改変例について説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるだろう。
【符号の説明】
【0046】
1 測定装置
2 支持プレート
3 スライドレール
40 第1測定部材
40’ 第2測定部材
50 第1サーボ機構
50’ 第2サーボ機構
60 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を測定するための測定装置であって、
前記圧延板材の底面を頂平面で支持する支持板と、
前記頂平面の下方にあって前記進行経路と垂直に延び且つ前記頂平面と平行に敷設された単一のスライドレールと、
前記進行経路を挟んだ両側にそれぞれ位置し互いに対向する当接面を有し前記スライドレールに沿って移動自在に前記スライドレールに填合した一対の測定部材と、
一対の前記測定部材のさらに両側にそれぞれ位置するとともに前記測定部材を前記スライドレールに沿ってそれぞれ移動せしめる第1及び第2サーボモータ手段と、
前記第1及び第2サーボモータ手段の各回転を制御するとともに各回転トルクに対応する各電流値を検出する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、前記第1及び第2サーボモータ手段を駆動させて一対の前記測定部材を近接移動せしめ、前記測定部材の前記当接面が前記圧延板材の側端部に当接して変化する前記電流値に基づいて、対応する前記サーボモータ手段の回転を順次停止させ、一対の前記測定部材の前記スライドレールに沿った位置から前記圧延板材の前記側端部の位置を求めて前記板幅を決定することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定部材の前記頂平面と平行な断面において、前記進行経路方向に向けて凸となる曲面を前記当接面に与えられていることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記スライドレールは強制水冷されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記スライドレールの頂面と前記支持板の前記頂平面との間において前記スライドレールに沿って吹き出し口を有するエアブロワーを設け、前記スライドレールの前記頂面にエアブローを与えることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の測定装置。
【請求項5】
熱間圧延ラインに組み込まれて進行経路を進行してきた圧延板材の板幅を測定するための測定方法であって、
前記圧延板材の底面を頂平面で支持する支持板と、前記頂平面の下方にあって前記進行経路と垂直に延び且つ前記頂平面と平行に敷設された単一のスライドレールと、前記進行経路を挟んだ両側にそれぞれ位置し互いに対向する当接面を有し前記スライドレールに沿って移動自在に前記スライドレールに填合した一対の測定部材と、一対の前記測定部材のさらに両側にそれぞれ位置するとともに前記測定部材を前記スライドレールに沿ってそれぞれ移動せしめる第1及び第2サーボモータ手段と、前記第1及び第2サーボモータ手段の各回転を制御するとともに各回転トルクに対応する各電流値を検出する制御手段と、を含む測定装置において、
前記第1及び第2サーボモータ手段を駆動させて一対の前記測定部材を近接移動せしめるステップと、
前記測定部材の前記当接面が前記圧延板材の側端部に当接して変化する前記電流値に基づいて、対応する前記サーボモータ手段の回転を順次停止させるモータ停止ステップと、
一対の前記測定部材の前記スライドレールに沿った位置から前記圧延板材の前記側端部の位置を求めて前記板幅を決定する板幅決定ステップとを含むことを特徴とする測定方法。
【請求項6】
予め一対の前記測定部材を近接移動せしめて前記当接面同士を当接させて前記スライドレールに対する基準位置を決定するステップを設け、前記板幅決定ステップは前記測定部材の前記基準位置からの前記スライドレールに沿った相対位置を求めて前記板幅を決定することを特徴とする請求項5記載の測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107119(P2013−107119A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255624(P2011−255624)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】