説明

測定装置

【課題】電流測定部や電源部等の内部回路の故障を確実に防止し得る測定装置を提供する。
【解決手段】入力端子19を介して入力した電圧Vを測定する電圧測定部11と、入力端子19を介して入力した電流Iを測定する電流測定部12と、切替え操作に応じて入力端子19と各測定部との接続および非接続を切り替える切替え部21と、測定対象体に対する所定電圧以上の電圧供給状態を検出する検出部15と、切替え部21によって入力端子19と電流測定部12とが切り替え接続されている状態において検出部15によって電圧供給状態が検出されたときに入力端子19と電流測定部12との接続を遮断する第1遮断処理を実行する遮断部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力端子を介して入力した電圧を測定する電圧測定部と、入力端子を介して入力した電流を測定する電流測定部と、切替え操作に応じて入力端子と各測定部との接続および非接続を切り替える切替え部とを備えた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、特開平5−249142号公報に開示されているデジタルテスタが知られている。このデジタルテスタは、デジタル表示面、測定切替スイッチ等が組み込まれたテスタ本体と、テスタ本体に接続される測定プローブ等を備えて、測定対象体(被測定回路や部品)についての電圧、電流、抵抗等のパラメータを測定可能に構成されている。このデジタルテスタを用いて測定対象体についての上記のパラメータを測定する際には、測定切替スイッチを操作して測定パラメータを設定する。次いで、測定プローブの先端を測定対象体の被接触部位に接触させる。この際に、測定値がデジタル表示面に表示される。
【特許文献1】特開平5−249142号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のデジタルテスタには、以下の問題点がある。すなわち、このデジタルテスタを含むこの種のデジタルテスタでは、電圧測定を意図して測定切替スイッチを操作した際に、誤って「電流測定」や「抵抗測定」を選択して、その状態で所定値以上の電圧が供給されている測定対象体にプローブを接触させたときには、過大な電流が流れて、電流測定部や抵抗測定用定電流を出力する電源部などの内部回路が故障するおそれがある。また、抵抗測定を意図してプローブを接触させた測定対象体に対して所定値以上の電圧が供給されているときにも、電源部などの内部回路が故障するおそれがある。この場合、このような事態を回避するために内部回路を保護する保護用ヒューズを備えた構成も知られているが、この構成では、ヒューズ交換が煩雑であるという課題が存在する。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、電流測定部や信号出力部等の内部回路の故障を確実に防止し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、入力端子を介して入力した電圧を測定する電圧測定部と、前記入力端子を介して入力した電流を測定する電流測定部と、切替え操作に応じて前記入力端子と前記各測定部との接続および非接続を切り替える切替え部とを備えた測定装置であって、測定対象体に対する所定電圧以上の電圧供給状態を検出する検出部と、前記切替え部によって前記入力端子と前記電流測定部とが切り替え接続されている状態において前記検出部によって前記電圧供給状態が検出されたときに当該入力端子と当該電流測定部との接続を遮断する第1遮断処理を実行する遮断部とを備えている。
【0006】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記遮断部によって前記第1遮断処理が実行されたときにその旨を報知する第1報知部を備えている。
【0007】
また、請求項3記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記遮断部は、前記第1遮断処理を実行した後に前記検出部によって前記所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに、前記入力端子と前記電流測定部との接続を復帰させる。
【0008】
また、請求項4記載の測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の測定装置において、前記遮断部は、前記第1遮断処理を実行した後に所定の指示操作がされたときに、前記入力端子と前記電流測定部との接続を復帰させると共に前記第1遮断処理の実行を停止する。
【0009】
また、請求項5記載の測定装置は、請求項1から4のいずれかに記載の測定装置において、抵抗測定用信号を出力する信号出力部を備え、前記切替え部は、切替え操作に応じて前記入力端子と前記信号出力部との接続および非接続を切り替え可能に構成され、前記遮断部は、前記切替え部によって前記入力端子と前記信号出力部とが切り替え接続されている状態において前記検出部によって前記所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに当該入力端子と当該信号出力部との接続を遮断する第2遮断処理を実行する。
【0010】
また、請求項6記載の測定装置は、請求項5記載の測定装置において、前記遮断部によって前記第2遮断処理が実行されたときにその旨を報知する第2報知部を備えている。
【0011】
また、請求項7記載の測定装置は、請求項5または6記載の測定装置において、前記遮断部は、前記第2遮断処理を実行した後に前記検出部によって前記所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに、前記入力端子と前記信号出力部との接続を復帰させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の測定装置によれば、測定対象体に対する所定電圧以上の電圧供給状態を検出する検出部と、切替え部によって入力端子と電流測定部とが切り替え接続されている状態において検出部によって所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに入力端子と電流測定部との接続を遮断する第1遮断処理を実行する遮断部とを備えたことにより、例えば、電圧測定を意図していたにも拘わらず誤操作によって測定装置を電流測定モードに設定した使用者が、そのことを認識していなかったとしても、所定電圧以上の電圧が供給されている測定対象体にその測定装置を近付けた際に入力端子と電流測定部との接続を自動的にしかも確実に遮断させることができる。したがって、この測定装置によれば、このような誤操作を行ったとしても、過大な電流が流れることによって電流測定部が故障する事態を確実に防止することができる。
【0013】
また、請求項2記載の測定装置によれば、遮断部によって第1遮断処理が実行されたときにその旨を報知する第1報知部を備えたことにより、例えば、電圧測定モードの設定を意図して行った切替え操作の際に、誤って電流測定モードに設定した使用者に対して、その旨を確実に認識させることができる。また、測定装置を電流測定モードに設定した状態において、所定電圧以上の電圧が測定対象体に供給されている旨を使用者に対して確実に認識させることができる。
【0014】
また、請求項3記載の測定装置によれば、遮断部が、第1遮断処理を実行した後に検出部によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに、入力端子と電流測定部との接続を復帰させることにより、特別な操作を行うことなく測定装置を測定対象体から遠ざけるだけで両者の接続を復帰させて電流測定を再開することができるため、操作性を十分に向上させることができる。
【0015】
また、請求項4記載の測定装置によれば、遮断部が、第1遮断処理を実行した後に所定の指示操作がされたときに、入力端子と電流測定部との接続を復帰させると共に第1遮断処理の実行を停止することにより、指示操作を行うことで、所定電圧以上の電圧が供給されている測定対象体に流れる電流を測定することができる。
【0016】
また、請求項5記載の測定装置によれば、遮断部が、入力端子と信号出力部とを接続している状態において測定対象体に対する所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに入力端子と信号出力部との接続を遮断する第2遮断処理を実行することにより、例えば、電圧測定を意図していたにも拘わらず誤操作によって測定装置を抵抗測定モードに設定した使用者が、そのことを認識していなかったり、抵抗測定を意図して測定装置を抵抗測定モードに設定した使用者が、測定対象体に電圧が供給されていることを認識していなかったりしたとしても、所定電圧以上の電圧が供給されている測定対象体にその測定装置を近付けた際に入力端子と信号出力部との接続を自動的にしかも確実に遮断させることができる。したがって、この測定装置によれば、このような状況において、過大な電流が流れることによって信号出力部等の内部回路が故障する事態を確実に防止することができる。
【0017】
また、請求項6記載の測定装置によれば、遮断部によって第2遮断処理が実行されたときにその旨を報知する第2報知部を備えたことにより、例えば、電圧測定モードの設定を意図して行った切替え操作の際に、誤って抵抗測定モードに設定した使用者に対して、その旨を確実に認識させることができる。また、測定装置を抵抗測定モードに設定した状態において、所定電圧以上の電圧が測定対象体に供給されている旨を使用者に対して確実に認識させることができる。
【0018】
また、請求項7記載の測定装置によれば、第2遮断処理を実行した後に検出部によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに入力端子と信号出力部との接続を復帰させることにより、特別な操作を行うことなく測定装置を測定対象体から遠ざけるだけで両者の接続を復帰させて抵抗測定を再開することができるため、操作性を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る測定装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
最初に、テスタ1の構成について説明する。図1に示すテスタ1は、本発明に係る測定装置の一例であって、測定対象体(例えば、同図および図3,4に示す測定対象体100a)に供給されている電圧V、測定対象体(例えば、図5に示す測定対象体100b)に流れている電流I、および測定対象体(例えば、図6,7に示す測定対象体100c:以下、各測定対象体100a,100b,100cを区別しないときには「測定対象体100」ともいう)の抵抗を測定可能に構成されている。具体的には、テスタ1は、図1に示すように、本体部2およびプローブ3,3を備えて構成されている。本体部2は、図2に示すように、電圧測定部11、電流測定部12、電源部13、操作部14、検出部15、遮断部16、表示部17および制御部18を備えて構成されている。また、図1に示すように、本体部2の正面パネルには、プローブ3,3の端子(プラグ)3a,3aを接続可能な入力端子(ジャック)19,19が配設されている。
【0021】
電圧測定部11は、例えば、アナログ−デジタル変換回路および増幅回路などを備えて構成されて、入力端子19,19を介して入力する電圧Vを測定して測定データDvを出力する。電流測定部12は、例えば、アナログ−デジタル変換回路および増幅回路などを備えて構成されて、入力端子19,19を介して入力した電流Iを測定して測定データDiを出力する。電源部13は、本発明における信号出力部に相当し、測定対象体100の抵抗測定の際に用いられる測定用の定電流Im(本発明における抵抗測定用信号の一例)を出力する。
【0022】
操作部14は、切替え部21(図2参照)、電源ボタン22aおよび解除ボタン22b(図1参照:以下、両ボタン22a,22bを区別しないときには「操作ボタン22」ともいう)を備えて構成されている。切替え部21は、本体部2の正面パネルに配設された操作ダイヤル21a(同図参照)を備えて、操作ダイヤル21aの切替え操作に応じて入力端子19,19と電圧測定部11との接続および非接続、並びに入力端子19,19と電流測定部12との接続および非接続を切り替える。また、切替え部21は、操作ダイヤル21aの切替え操作に応じて入力端子19,19と電源部13との接続および非接続を切り替える。さらに、切替え部21は、測定モードを切り替えるモード切替えスイッチとしても機能し、操作ダイヤル21aの切替え操作に応じてモード切替え用の操作信号Soを制御部18に出力する。各操作ボタン22は、本体部2の正面パネルに配設されている。この場合、操作部14は、操作ボタン22が操作されたときにその操作ボタン22に対応する操作信号Soを出力する。
【0023】
検出部15は、例えば、非接触型の電圧検出センサ、および増幅回路を備えて構成され、測定対象体100に10V(本発明における所定電圧の一例)以上の交流または直流の電圧Vが供給されているときに、測定対象体100との間の静電容量に基づいてその電圧Vを非接触で検出して検出信号Sdを出力する。つまり、検出部15は、測定対象体100に対する所定電圧以上の電圧供給状態を検出する。この場合、検出部15は、図1に示すように、本体部2の先端部(同図における上側端部)に配設されている。
【0024】
遮断部16は、図2に示すように、入力端子19,19と切替え部21との間に配置されている。この場合、遮断部16は、切替え部21によって入力端子19,19と電流測定部12とが接続されている状態において検出部15によって測定対象体100に対する所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたとき(検出部15から検出信号Sdが出力されたとき)に入力端子19,19と電流測定部12との接続を遮断する第1遮断処理を実行する。また、遮断部16は、切替え部21によって入力端子19,19と電源部13とが接続されている状態において検出部15によって測定対象体100に対する所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに入力端子19,19と電源部13との接続を遮断する第2遮断処理(以下、第1遮断処理と第2遮断処理とを区別しないときには単に「遮断処理」ともいう)を実行する。また、遮断部16は、遮断処理を実行した際に、その旨を示す電気信号(遮断処理実行信号)Siを制御部18に出力する。また、遮断部16は、遮断処理を実行した後に、検出部15によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに(言い替えれば測定対象体100における電圧供給状態の検出が停止したときに)、入力端子19,19と電流測定部12との遮断状態、および入力端子19,19と電源部13との遮断状態を解除する(つまり接続を復帰させる)。この場合、遮断部16は、遮断状態を解除した際に、その旨を示す電気信号(遮断解除信号)Siを制御部18に出力する。
【0025】
さらに、遮断部16は、第1遮断処理を実行した後に、操作部14の解除ボタン22bが操作されたときに(解除ボタン22bに対応する操作信号Soが出力されたときに)、入力端子19,19と電流測定部12との遮断状態を解除する(つまり両者の接続を復帰させる)と共に、操作部14の操作ダイヤル21aまたは解除ボタン22bの再操作が行われるまで第1遮断処理の実行を停止する。この場合、遮断部16は、第1遮断処理の実行を停止したときに、その旨を示す電気信号(第1遮断処理停止信号)Siを制御部18に出力する。表示部17は、図1に示すように、本体部2の正面パネルに配設されて、制御部18から出力される表示データDdを入力して、各種の測定値や、後述する報知用の文字を表示する。
【0026】
制御部18は、切替え部21から出力される操作信号Soに従って測定モードの切り替え(設定)を行う。この場合、制御部18は、測定モードを電圧測定モードに設定している状態において、電圧測定部11から出力される測定データDvに基づいて電圧値表示用の表示データDdを出力することにより、表示部17に電圧Vの測定値を表示させる。また、制御部18は、測定モードを電流測定モードに設定している状態において、電流測定部12から出力される測定データDiに基づいて電流値表示用の表示データDdを出力することにより、表示部17に電流Iの測定値を表示させる。さらに、制御部18は、測定モードを抵抗測定モードに設定している状態において、電圧測定部11から出力される測定データDv、および電源部13から出力される測定用の定電流Imの値に基づいて抵抗を演算(測定)すると共に、抵抗値表示用の表示データDdを出力することにより、表示部17に抵抗の測定値を表示させる。また、制御部18は、表示部17と共に本発明における第1報知部および第2報知部を構成し、遮断部16によって遮断処理が実行されたときに文字表示用の表示データDdを出力することにより、その旨を報知するための文字(例えば、図3に示す「遮断しました」の文字)を表示部17に表示させる。また、制御部18は、遮断部16による第1遮断処理の実行が停止したときに、その旨を報知するための文字(例えば、図5に示す「注意:遮断処理停止中」の文字)を表示部17に表示させる。
【0027】
次に、テスタ1を用いて、電圧、電流および抵抗を測定する方法、並びにその際のテスタ1における各部の動作について、図面を参照して説明する。
【0028】
最初に、図1に示す測定対象体100aに対して供給されている電圧Vの値を測定する方法について説明する。この場合、測定対象体100aには、100Vの交流電圧が供給されているものとする。まず、測定に先立って初期操作を行う。具体的には、同図に示すように、初期状態のテスタ1における本体部2の入力端子19,19にプローブ3,3の端子3a,3aを接続する。次いで、操作部14の電源ボタン22aを操作してテスタ1を起動させる。続いて、操作部14における切替え部21の操作ダイヤル21aを操作(切替え操作)して、本体部2の正面パネルに記載されている電圧測定を示す文字(同図に示す「ACV」の文字)の位置に操作ダイヤル21aのマークMを位置合わせする。この際に、切替え部21が、操作ダイヤル21aの操作に応じて、入力端子19,19と電圧測定部11とを接続させる。また、切替え部21が、モードの切り替え用の操作信号Soを出力し、制御部18が、その操作信号Soに従って測定モードを電圧測定モードに設定する。
【0029】
続いて、図1に示すように、プローブ3,3の先端部を測定対象体100aの所定部位に接触させる。この際に、電圧測定部11が、測定対象体100aに供給されている電圧V(例えば、交流100Vの電圧V)をプローブ3,3および入力端子19,19を介して入力する。次いで、電圧測定部11は、入力した電圧Vを測定して測定データDvを制御部18に出力する。続いて、制御部18は、電圧測定部11から出力された測定データDvに基づいて電圧値表示用の表示データDdを表示部17に出力する。これにより、同図に示すように、表示部17に電圧Vの測定値が表示される。
【0030】
一方、上記した初期操作の際に、電圧測定を意図していたにも拘わらず、操作ダイヤル21aの誤操作により、電流測定を示す文字(図3に示す「ACA」や「DCA」の文字)の位置にマークMを位置合わせしたときには、切替え部21が、操作ダイヤル21aの操作に応じて、入力端子19,19と電流測定部12とを接続させる。また、切替え部21が、モードの切り替え用の操作信号Soを出力し、制御部18が、その操作信号Soに従って測定モードを電流測定モードに設定する。また、操作ダイヤル21aの誤操作により、抵抗測定を示す文字(同図に示す「Ω」の文字)の位置にマークMを位置合わせしたときには、切替え部21が、操作ダイヤル21aの操作に応じて、入力端子19,19と電圧測定部11とを接続させると共に、入力端子19,19と電源部13とを接続させる。また、制御部18が、切替え部21から出力されたモード切替え用の操作信号Soに従って測定モードを抵抗測定モードに設定する。
【0031】
この場合、検出部15による検出が可能な10V以上の電圧V(この例では100V)が測定対象体100aに供給されている(本発明における、所定電圧以上の電圧供給状態)。このため、上記したように誤操作によって電流測定モードまたは抵抗測定モードにテスタ1を設定し、使用者がそのことに気付かずにテスタ1の本体部2を測定対象体100aに近付けたときには、本体部2の先端部に配設されている検出部15が、その電圧Vを検出して検出信号Sdを出力する。この際に、遮断部16が、検出信号Sdの入力に応じて入力端子19,19と電流測定部12との接続を遮断する第1遮断処理、または検出信号Sdの入力に応じて入力端子19,19と電源部13との接続を遮断する第2遮断処理を実行する。このため、このテスタ1では、誤操作によってテスタ1が電流測定モードまたは抵抗測定モードに設定されていることを使用者が認識していなかったとしても、過大な電流Iが流れることによって電流測定部12や電源部13などの内部回路が故障する事態を確実に回避することが可能となっている。
【0032】
また、遮断部16は、遮断処理を実行したときに、その旨を示す電気信号Siを制御部18に出力する。この際に、制御部18は、その電気信号Siの入力に応じて、文字表示用の表示データDdを表示部17に出力する。これにより、図3に示すように、遮断処理が実行された旨を示す「遮断しました」の文字が表示部17に表示される。この場合、このような報知用の文字が表示されることで、使用者は、電圧測定モードの設定を意図して行った切替え操作の際に、誤操作によってテスタ1が電流測定モードまたは抵抗測定モードに設定されていることを確実に認識することができる。
【0033】
続いて、図4に示すように、テスタ1を測定対象体100aから遠ざけたときには、検出部15によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となり、検出部15からの検出信号Sdの出力が停止する。この際(第1遮断処理または第2遮断処理を実行した後に、検出部15によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったとき)には、遮断部16は、入力端子19,19と電流測定部12との遮断状態、または入力端子19,19と電源部13との遮断状態を解除して、接続を復帰させると共に、遮断状態を解除した旨を示す電気信号Siを制御部18に出力する。これにより、電流測定または抵抗測定が可能な状態に復帰する。また、制御部18は、遮断部16から出力された電気信号Siの入力に応じて、文字表示用の表示データDdの出力を停止する。これにより、遮断処理の実行を示す文字表示が停止する。
【0034】
次に、図5に示すように、100Vの交流電圧が供給されると共に負荷Rが接続されている測定対象体100bに流れている電流Iの値を測定する方法について説明する。この場合、上記したように電流測定が可能な状態に復帰したテスタ1を用いるときにはそのまま測定を開始し、初期状態のテスタ1を用いるときには、測定に先立って上記した初期操作を行った後に測定を開始する。
【0035】
ここで、検出部15による検出が可能な10V以上の電圧V(この例では100V)が測定対象体100bに供給されているため、テスタ1を測定対象体100bに近付けたときに、検出部15が、その電圧Vを検出して検出信号Sdを出力し、遮断部16が、検出信号Sdの入力に応じて上記した第1遮断処理を実行すると共に、その旨を示す電気信号Siを制御部18に出力する。次いで、制御部18が電気信号Siの入力に応じて文字表示用の表示データDdを出力することにより、第1遮断処理の実行を示す文字が表示部17に表示される。これにより、使用者は、測定対象体100に所定電圧以上の電圧Vが供給されていることを認識することができる。
【0036】
この場合、負荷Rが接続されているため測定対象体100bに過大な電流Iが流れていないことを使用者が確認しており、電流測定を継続するときには、操作部14の解除ボタン22bを操作する(本発明における所定の指示操作)。この際に、操作部14が解除ボタン22bに対応する操作信号Soを出力し、これに応じて、遮断部16が入力端子19,19と電流測定部12との遮断状態を解除して両者の接続を復帰させると共に、第1遮断処理の実行を停止する。このため、テスタ1を測定対象体100bに近付けた状態が継続したとしても、第1遮断処理が実行されることなく、電流測定が可能な状態にテスタ1が維持される。また、遮断部16は、第1遮断処理の実行の停止を行ったときに、その旨を示す電気信号Siを制御部18に出力する。この際に、制御部18は、その電気信号Siの入力に応じて、文字表示用の表示データDdを表示部17に出力する。これにより、上記した第1遮断処理の実行を示す文字に代えて、図5に示すように、第1遮断処理の実行が停止している旨を示す文字が表示部17に表示される。
【0037】
次いで、図5に示すように、プローブ3,3の先端部を測定対象体100bの所定部位に接触させる。この際に、電流測定部12が、測定対象体100bに流れている電流Iをプローブ3,3および入力端子19,19を介して入力する。続いて、電流測定部12は、入力した電流Iを測定して測定データDiを制御部18に出力する。次いで、制御部18は、電流測定部12から出力された測定データDiに基づいて電流値表示用の表示データDdを表示部17に出力する。これにより、表示部17に電流Iの測定値が表示される。この場合、遮断部16は、操作ダイヤル21aまたは解除ボタン22bの再操作が行われるまで、第1遮断処理の実行の停止を継続し、これらの再操作が行われたときには、所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに第1遮断処理を実行する通常状態に復帰する。
【0038】
次に、測定対象体100cの抵抗の値を測定する方法について説明する。この場合、上記したように抵抗測定が可能な状態に復帰したテスタ1を用いるときにはそのまま測定を開始し、初期状態のテスタ1を用いるときには、上記した初期操作を行った後に測定を開始する。具体的には、図6に示すように、プローブ3,3の先端部を測定対象体100cの所定部位に接触させる。この際に、電源部13から出力されている測定用の定電流Imが測定対象体100cに供給され、その定電流Imの供給に伴って測定対象体100cの両端間(プローブ3,3の間)に発生する電圧Vを電圧測定部11がプローブ3,3および入力端子19,19を介して入力する。続いて、電圧測定部11は、入力した電圧Vを測定して測定データDvを制御部18に出力する。次いで、制御部18は、電圧測定部11から出力された測定データDvと測定用の定電流Imの値とに基づいて抵抗を演算すると共に、抵抗値表示用の表示データDdを表示部17に出力する。これにより、同図に示すように、表示部17に抵抗の測定値が表示される。
【0039】
一方、図7に示すように、測定対象体100cに電圧Vが供給されている状態において、抵抗測定モードに設定されているテスタ1を測定対象体100cに近付けたときには、検出部15が、検出信号Sdを出力し、遮断部16が、上記した第2遮断処理を実行すると共に第2遮断処理の実行を示す電気信号Siを出力する。このため、このテスタ1では、抵抗測定モードに設定されている状態において、過大な電圧が印加されることによって電源部13などの内部回路が故障する事態を確実に回避することが可能となっている。続いて、制御部18は、遮断部16から出力された電気信号Siの入力に応じて文字表示用の表示データDdを出力することにより、同図に示すように、第2遮断処理が実行された旨を示す文字を表示部17に表示させる。これにより、使用者は、測定対象体100cに電圧Vが供給されている旨を認識することができる。
【0040】
次いで、テスタ1を測定対象体100cから遠ざけたときには、検出部15によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となり、検出部15からの検出信号Sdの出力が停止する。この際には、遮断部16は、入力端子19,19と電源部13との遮断状態を解除して、両者の接続を再開すると共に、遮断状態を解除した旨を示す電気信号Siを制御部18に出力する。これにより、抵抗測定が可能な状態に復帰すると共に、第2遮断処理が実行された旨を示す文字表示が停止する。
【0041】
このように、このテスタ1によれば、入力端子19,19と電流測定部12とを接続している状態において測定対象体100に対する所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに入力端子19,19と電流測定部12との接続を遮断する第1遮断処理を実行することにより、例えば、電圧測定を意図していたにも拘わらず誤操作によってテスタ1を電流測定モードに設定した使用者が、そのことを認識していなかったとしても、所定電圧以上の電圧が供給されている測定対象体100にそのテスタ1を近付けた際に入力端子19,19と電流測定部12との接続を自動的にしかも確実に遮断させることができる。したがって、このテスタ1によれば、このような誤操作を行ったとしても、過大な電流Iが流れることによって電流測定部12が故障する事態を確実に防止することができる。
【0042】
また、このテスタ1によれば、遮断部16によって第1遮断処理が実行されたときにその旨を報知することにより、例えば、電圧測定モードの設定を意図して行った切替え操作の際に、誤って電流測定モードに設定した使用者に対して、その旨を確実に認識させることができる。また、テスタ1を電流測定モードまたは抵抗測定モードに設定した状態において、所定電圧以上の電圧Vが測定対象体100に供給されている旨を使用者に対して確実に認識させることができる。
【0043】
また、このテスタ1によれば、第1遮断処理を実行した後に検出部15によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに入力端子19,19と電流測定部12との接続を復帰させることにより、特別な操作を行うことなくテスタ1(本体部2)を測定対象体100から遠ざけるだけで両者の接続を復帰させて電流測定を再開することができるため、操作性を十分に向上させることができる。
【0044】
さらに、このテスタ1によれば、第1遮断処理を実行した後に解除ボタン22bが操作されたときに入力端子19,19と電流測定部12との接続を復帰させると共に第1遮断処理の実行を停止することにより、解除ボタン22bを操作することで、所定電圧以上の電圧が供給されている測定対象体100に流れる電流を測定することができる。
【0045】
また、このテスタ1によれば、入力端子19,19と電源部13とを接続している状態において測定対象体100に対する所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに入力端子19,19と電源部13との接続を遮断する第2遮断処理を実行することにより、例えば、電圧測定を意図していたにも拘わらず誤操作によってテスタ1を抵抗測定モードに設定した使用者が、そのことを認識していなかったり、抵抗測定を意図してテスタ1を抵抗測定モードに設定した使用者が、測定対象体100に電圧が供給されていることを認識していなかったりしたとしても、所定電圧以上の電圧が供給されている測定対象体100にそのテスタ1を近付けた際に入力端子19,19と電源部13との接続を自動的にしかも確実に遮断させることができる。したがって、このテスタ1によれば、このような状況において、過大な電流Iが流れることによって電源部13が故障する事態を確実に防止することができる。
【0046】
また、このテスタ1によれば、遮断部16によって第2遮断処理が実行されたときにその旨を報知することにより、例えば、電圧測定モードの設定を意図して行った切替え操作の際に、誤って抵抗測定モードに設定した使用者に対して、その旨を確実に認識させることができる。また、テスタ1を抵抗測定モードに設定した状態において、所定電圧以上の電圧Vが測定対象体100に供給されている旨を使用者に対して確実に認識させることができる。
【0047】
また、このテスタ1によれば、第2遮断処理を実行した後に検出部15によって所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに入力端子19,19と電源部13との接続を復帰させることにより、特別な操作を行うことなくテスタ1(本体部2)を測定対象体100から遠ざけるだけで両者の接続を復帰させて抵抗測定を再開することができるため、操作性を十分に向上させることができる。
【0048】
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、所定電圧以上の電圧としての10V以上の電圧Vが供給されているときに検出部15がその電圧Vを検出する例について上記したが、所定電圧は任意に規定することができる。また、検出部15が検出可能な所定電圧の値(つまり、検出部15の感度)を任意に変更可能な構成を採用することもできる。また、報知用の文字を表示部17に表示することによって第1遮断処理が実行された旨を報知する構成例について上記したが、報知部の構成はこれに限定されず、例えば、音声の出力やランプの点灯によって第1遮断処理が実行された旨を報知する構成を採用することもできる。また、音声の出力やランプの点灯と、報知用の文字表示との両者を行う構成を採用することもできる。また、遮断部16を入力端子19,19と切替え部21との間に配置した例について上記したが、切替え部21と電流測定部12との間、および切替え部21と電源部13との間に遮断部16を配置する構成を採用することもできる。さらに、電源部13が抵抗測定用信号としての定電流Imを出力する例について上記したが、抵抗測定用信号としては、必ずしも定電流である必要はなく、非定電流(値が一定でない電流)や電圧を出力する構成を採用することもできる。また、本体部2の先端部に検出部15を配設した例について上記したが、検出部15の配設位置は、これに限定されず、任意に規定することができる。また、プローブ3の内部に検出部15を配設する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】テスタ1の構成を示す平面図である。
【図2】テスタ1の構成を示すブロック図である。
【図3】テスタ1の使用方法を説明するための第1の説明図である。
【図4】テスタ1の使用方法を説明するための第2の説明図である。
【図5】テスタ1の使用方法を説明するための第3の説明図である。
【図6】テスタ1の使用方法を説明するための第4の説明図である。
【図7】テスタ1の使用方法を説明するための第5の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 テスタ
11 電圧測定部
12 電流測定部
13 電源部
15 検出部
16 遮断部
17 表示部
18 制御部
19 入力端子
21 切替え部
21a 操作ダイヤル
22b 解除ボタン
100 測定対象体
Dv 測定データ
Di 測定データ
I 電流
Im 定電流
Sd 検出信号
V 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子を介して入力した電圧を測定する電圧測定部と、前記入力端子を介して入力した電流を測定する電流測定部と、切替え操作に応じて前記入力端子と前記各測定部との接続および非接続を切り替える切替え部とを備えた測定装置であって、
測定対象体に対する所定電圧以上の電圧供給状態を検出する検出部と、前記切替え部によって前記入力端子と前記電流測定部とが切り替え接続されている状態において前記検出部によって前記電圧供給状態が検出されたときに当該入力端子と当該電流測定部との接続を遮断する第1遮断処理を実行する遮断部とを備えている測定装置。
【請求項2】
前記遮断部によって前記第1遮断処理が実行されたときにその旨を報知する第1報知部を備えている請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記遮断部は、前記第1遮断処理を実行した後に前記検出部によって前記所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに、前記入力端子と前記電流測定部との接続を復帰させる請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記遮断部は、前記第1遮断処理を実行した後に所定の指示操作がされたときに、前記入力端子と前記電流測定部との接続を復帰させると共に前記第1遮断処理の実行を停止する請求項1から3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
抵抗測定用信号を出力する信号出力部を備え、
前記切替え部は、切替え操作に応じて前記入力端子と前記信号出力部との接続および非接続を切り替え可能に構成され、
前記遮断部は、前記切替え部によって前記入力端子と前記信号出力部とが切り替え接続されている状態において前記検出部によって前記所定電圧以上の電圧供給状態が検出されたときに当該入力端子と当該信号出力部との接続を遮断する第2遮断処理を実行する請求項1から4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記遮断部によって前記第2遮断処理が実行されたときにその旨を報知する第2報知部を備えている請求項5記載の測定装置。
【請求項7】
前記遮断部は、前記第2遮断処理を実行した後に前記検出部によって前記所定電圧以上の電圧供給状態が非検出となったときに、前記入力端子と前記信号出力部との接続を復帰させる請求項5または6記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−222490(P2009−222490A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65740(P2008−65740)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】