説明

湯伸びが抑制された風味付け春雨とその製造方法

【課題】長期保存しても退色せず、湯戻し後の湯伸びが抑制された風味付け春雨及びその製造方法を提供する。
【解決手段】馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉を主原料とする乾燥春雨の製造方法において、でん粉の混合生地中に1〜80μmの粒子径を有する食品粉末を、でん粉100重量部に対して、0.1〜6.0重量部練り込む。食品粉末とは、ひじき、昆布、わかめ、もずく等の海草粉末と、黒ごま、黒豆、黒松の実、黒かりん、黒米、竹炭、イカ墨、ココア、唐辛子、ほうれん草、カラメル色素等を粉末化したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、春雨及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、春雨の製造方法としては、澱粉に水を加えて混合し、成形して熱湯に投入し、乾燥するのが一般的であった。
しかし、従来の春雨は、前述のとおり澱粉主体で製造され独特の食感を有しているが、一般的に弾性が強く粘りがないので、伸ばすと簡単に切れてしまい、いわゆる「コシ、粘り」という食感に乏しい。さらに、春雨は、一般的に水分を吸収しやすいという性質があり、そのため、時間の経過とともに水分を吸収して伸びきったいわゆる「湯伸び」状態になりやすく、おいしい麺の条件であるコシ、粘りがないという、麺としては致命的な問題があった。
この問題を解決するために、様々の方法が提案されている。
【0003】
特許文献1はカードランを2〜5重量%を添加することで調理後の湯伸びを抑制でき、ワカメなどのパウダーを入れても調理中に溶出しないと記載されているが、カードランを使用すると弾力性が付与されてしまうため、春雨本来の食感が損なわれてしまうという欠点があった。
【0004】
また、特許文献2は、野菜類、果実類、野草類または海草類の微細化したものを澱粉糊に添加する春雨について記載されており、食品粉末を春雨に添加することについて開示されている。特許文献2は、その粒子径が麺の太さの2分の1以下にしないと麺が折れやすく、春雨の感触が損なわれると記載されているが、一般的な麺の太さである700μmの2分の1である350μm程度では、製麺は可能であるが春雨の腰が非常に弱くなり、本発明の効果は全く得られない。さらに本発明で見出された1〜80μmの麺に関しては実施例等で記載も示唆もされていない。
【特許文献1】特開2006-141279号公報
【特許文献2】特開昭61-25453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、湯戻し後に、湯伸びが抑制された春雨を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明者は、馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉に、粒子径が1〜80μmの粉末を練り込むことで、湯戻し後に、湯伸びが抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は例えば以下の手段を提供する。
項1.馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉を主原料とする春雨において、粒子径が1〜80μmの食品粉末をでん粉100重量部に対して、0.1〜6.0重量部含む、春雨。
項2.食品粉末が海草である、項1記載の春雨。
項3.食品粉末が、ひじきである、項1記載の春雨。
項4.食品粉末が、唐辛子である、請求項1記載の春雨。
項5.馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉を主原料とする春雨において、粒子径が1〜80μmの食品粉末をでん粉100重量部に対して、0.1〜6.0重量部含む、春雨の製造方法。
項6.食品粉末が海草である、項5記載の春雨の製造方法。
項7.食品粉末が、ひじきである、項5記載の春雨の製造方法。
項8.食品粉末が、唐辛子である、項5記載の春雨の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉を主原料とする春雨において、でん粉中に食品粉末を練り込むことで、春雨の湯戻し後に、春雨本来の食感を残しつつ、湯のびが抑制された腰のある春雨にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、春雨の原料となる澱粉は、緑豆澱粉或いは馬鈴薯澱粉が主原料であればよく、他の澱粉類としては澱粉の部分分解物、加工澱粉を含むこれらの誘導体も用いることができる。
【0010】
本発明において、食品粉末とは、食品原料を黒ごま、黒豆、黒松の実、黒かりん、黒米、ひじき、昆布、わかめ、もずく、竹炭、イカ墨、ココア、唐辛子、ほうれん草、カラメル色素等を粉末化したものをいう。
【0011】
また、本発明において海草粉末とは、ひじき、昆布、わかめ、もずく等を粉末化したものをいい、唐辛子とは、ナス科トウガラシ属の一年草(熱帯地方では多年草あるいは低木になる)、またはその果実、あるいは果実を加工した香辛料のことをいう。
【0012】
食品原料の粉末化は、粉砕機を用いて所定の粒度に粉砕するという方法でもよいが、特許2883602号にあるように食品原料を水又は湯に漬け込み、その水分を切った後真空条件のもとで、加熱・撹拌と蒸し・乾燥を連続的に付与することで、水分を低下させると共に柔軟化させ、引き続き冷却条件のもとで粉砕するという方法が好ましい。
【0013】
食品粉末は、粒径が1〜80μmのものが好ましく、さらに好ましくは3〜10μmのものが好ましい。粒径が1μm以下になると、食品粉末が春雨から溶け出しやすくなって、湯戻し後の湯伸び抑制への効果が発揮されないため適さない。一方、その粒径が80μm以上になると、食品粉末が春雨内の澱粉どうしの結合の妨げになって、湯戻し後の湯伸びが起こりやすくなり、麺のこしが弱くなる。さらに、麺状にした際の春雨の外観が著しく悪くなる。
【0014】
また、春雨への食品粉末の添加量は、上記最適な粒径の粉末を使用しても、馬鈴薯でん粉と緑豆でん粉の合計100重量部に対して、0.1重量部〜6.0重量部であることが好ましい。添加量が0.1重量部未満であると、湯伸びの抑制効果が得られにくく、6重量部より多く練りこむと澱粉同士の結合を妨げるため、麺生地の状態が悪くなり、同様に湯伸びの抑制効果が得られなくなる。
【0015】
本発明の春雨の製造は、緑豆でん粉や馬鈴薯でん粉を主原料としたものに、予めアルファ化させておいた一部の緑豆澱粉を、ニーダーで水と混合しておいたでん粉生地に加えて均一化し、続いてひじき粉末を投入し、均一となり程よい粘りとなった時点で、真空脱気させ、麺線状に押し出して熱湯中に投入し、水洗いをして冷却することにより製造する。さらに必要に応じて、この冷却した麺線を竿に掛けて冷凍庫で冷凍した後、解凍し、所定の長さに切断し計量後、熱風乾燥して乾燥春雨にすることができる。
【0016】
なお、食品粉末投入は、液体に分散させるか予め澱粉に混合・分散させておくか、或いは直接投入するなど、その方法は問わない。
【0017】
(実施例1〜14、比較例1〜5)
以下に、本発明に係る春雨について記載する。
緑豆澱粉15重量部を40重量部の水で溶解した後、75℃になるまで加熱・撹拌をして緑豆澱粉をアルファ化させ、縦型ミキサーに投入した。次に緑豆澱粉7.5重量部と馬鈴薯澱粉35重量部及び下記表にある食品粉末を順次投入後、40℃のぬるま湯を35重量部添加し、60rpmで2分間撹拌混合した。さらに緑豆澱粉7.5重量部と馬鈴薯澱粉35重量部をさらに添加した後40℃のぬるま湯30重量部を添加して約3分間撹拌を行った。撹拌後、10mm径のパンチングから熱水(97℃)中に押し出して、15秒間熱水中に浸してから冷水中に移送して水切りを行った。次に水切りしたものを冷凍下(−18℃以下)で24時間放置してから常温で8時間解凍を行った。解凍された春雨は、長さ150mm×太さ0.7mmとなるようカッティングし、乾燥工程(60〜80℃で1〜2時間)を経て乾燥春雨サンプルを得た。
【0018】
なお、湯戻し後のこしの評価は得られた各サンプルを10倍量の熱湯で湯戻しを行い、湯戻し10分後のこしを専門パネラーにより官能評価を行なった。
評価基準は◎非常によい、○よい、△やや悪い、×悪いとした。
官能評価の結果、粒径が1〜80μm以内の食品粉末を緑豆でん粉と馬鈴薯でん粉の合計100重量部に対して、0.5〜6.0重量部添加した場合は、湯戻し後の麺のこしが良好であることがわかった。
【0019】
なお、表1において、添加量は、食品粉末の添加量は緑豆でん粉と馬鈴薯でん粉の合計100重量部に対する重量部を表した。
また、粒径の測定は、HOLIBA LA−700粒度分布計で測定を行った。10mgの粉末をイオン交換水215〜250mlに分散・撹拌させ、超音波で1分処理したものを透明セルに移送し、レーザー光を当てて検体の粒径を測定することにより行った。表中の値はその範囲の粒径の粉末が90%以上含まれていることを示している。
(表1)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉を主原料とする春雨において、粒子径が1〜80μmの食品粉末をでん粉100重量部に対して、0.1〜6.0重量部含む、春雨。
【請求項2】
食品粉末が海草粉末である、請求項1記載の春雨。
【請求項3】
食品粉末が、ひじきである、請求項1記載の春雨。
【請求項4】
食品粉末が、唐辛子である、請求項1記載の春雨。
【請求項5】
馬鈴薯でん粉や緑豆でん粉を主原料とする春雨において、粒子径が1〜80μmの食品粉末をでん粉100重量部に対して、0.1〜6.0重量部含む、春雨の製造方法。
【請求項6】
食品粉末が海草である、請求項5記載の春雨の製造方法。
【請求項7】
食品粉末が、ひじきである、請求項5記載の春雨の製造方法。
【請求項8】
食品粉末が、唐辛子である、請求項5記載の春雨の製造方法。